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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】リドカイン含有貼付剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/167 20060101AFI20240531BHJP
   A61P 23/02 20060101ALI20240531BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240531BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240531BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240531BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240531BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240531BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
A61K31/167
A61P23/02
A61K9/70 401
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/32
A61P25/04
A61P29/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021516103
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2020017075
(87)【国際公開番号】W WO2020218249
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2019082678
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019122757
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302005628
【氏名又は名称】株式会社 メドレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(72)【発明者】
【氏名】石橋 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】濱本 英利
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/060629(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/027786(WO,A1)
【文献】特開2016-014052(JP,A)
【文献】国際公開第2013/027840(WO,A1)
【文献】特開2012-036170(JP,A)
【文献】国際公開第2011/118604(WO,A1)
【文献】特開2001-302501(JP,A)
【文献】特開2002-080350(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230687(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0142024(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/167
A61K 9/70
A61K 47/12
A61K 47/14
A61K 47/32
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、粘着剤層および剥離ライナーから構成される貼付剤であって、粘着剤層が、リドカインまたはその塩、乳酸、炭素数4~6のヒドロキシ酸エステル類およびエラストマーを含み、水を含まず、乳酸の含有量が、リドカインまたはその塩1モルに対して、0.6~1.2モルであり、ステル類が、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸メチル、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、炭酸プロピレンまたはそれらの混合物であり、そして、エラストマーが、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)である、貼付剤。
【請求項2】
支持体、粘着剤層および剥離ライナーから構成される貼付剤であって、粘着剤層が、リドカインまたはその塩、乳酸、炭素数4~6のヒドロキシ酸およびエラストマーを含み、水を含まず、乳酸の含有量が、リドカインまたはその塩1モルに対して、0.6~1.2モルであり、そして、エラストマーが、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)である、貼付剤。
【請求項3】
前記炭素数4~6のヒドロキシ酸が、クエン酸または酒石酸である、請求項1または2記載の貼付剤。
【請求項4】
前記炭素数4~6のヒドロキシ酸が、酒石酸である、請求項1~3のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項5】
乳酸の含有量が、リドカインまたはその塩1モルに対して、1.0~1.2モルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項6】
リドカインまたはその塩の含有量が、5~50重量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項7】
リドカインまたはその塩の含有量が、10~40重量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項8】
リドカインまたはその塩の含有量が、10~20重量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項9】
炭素数4~6のヒドロキシ酸の含有量が、0.2~5重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項10】
炭素数4~6のヒドロキシ酸の含有量が、0.3~0.8重量%である、請求項1~9のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項11】
粘着剤層が、界面活性剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項12】
界面活性剤が、HLB値が4~14の範囲にある非イオン性界面活性剤である、請求項11記載の貼付剤。
【請求項13】
貼付剤の厚みが、0.50~2.00mmである、請求項1~12のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項14】
粘着剤層の表面積が、100~200cmである、請求項1~13のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項15】
リドカインまたはその塩、乳酸および炭素数4~6のヒドロキシ酸を含み、水を含まない貼付剤の製造方法であって、
(a)リドカインまたはその塩1モルに対して0.6~1.2モル量の乳酸と炭素数4~6のヒドロキシ酸を混合する工程;および
(b)工程(a)で得られた混合物にリドカインまたはその塩を添加して、均一な組成物を得る工程
を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リドカイン含有貼付剤、より詳細には、リドカインまたはその塩、乳酸および炭素数4~6のヒドロキシ酸を含む貼付剤であって、乳酸の含有量が、リドカインまたはその塩1モルに対して0.6~1.2モルである、貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
局所麻酔薬であるリドカインに関しては、従来から様々な外用製剤が検討されており、リドカインを有効成分とする貼付剤がいくつか上市されている。例えば、米国において、Lidoderm(登録商標)(5%リドカイン含有パップ製剤)やZTlido(登録商標)(1.8%リドカイン含有テープ製剤)が販売されている。
【0003】
リドカイン含有貼付剤では、リドカインの結晶が粘着剤層中に析出することで、粘着剤層中に未溶解のリドカインが分散して、皮膚に貼付しても十分な薬物量が体内に吸収されず、十分な効果が得られないという問題があった。皮膚透過性については、リドカインと乳酸とを等モル量で反応させて、イオン液体化したリドカイン-乳酸の等モル塩を形成させることにより、リドカインの皮膚透過性は向上するとの報告がある(特許文献1)。しかしながら、特許文献1には、リドカインの皮膚透過性を向上させることに注力され、皮膚への持続的な薬物透過については検討されていない。
【0004】
さらに、リドカインは、心臓に影響を及ぼす薬剤であり、高濃度で長期使用すると、ショック、発赤、刺激感等の副作用をもたらすやリドカイン中毒を引き起こすことが知られている。そのため、高濃度のリドカインを配合する場合には、既存製剤、例えばLidodermと生物学的に同等であることを立証して、有効性および安全性を確保する必要があった。
【0005】
例えば、特許文献2には、粘着剤層を構成する各成分の含有量を調整し、さらに、粘着剤層の質量(厚み)を所定範囲にすることによって、長期間、持続的な薬物透過を可能にすることが記載されている。しかしながら、特許文献2の製剤では、局所麻酔薬(リドカイン)の配合量は低濃度に調整され、高濃度での使用は行われていない。
【0006】
また、リドカイン含有製剤において、特定のモル比率のリドカインまたはその塩と乳酸、および酒石酸などの炭素数4~6のヒドロキシ酸を使用することで、高濃度のリドカインを配合した場合であっても低濃度のリドカインを含有する製剤と同等の皮膚透過性および粘着性をもたらし、より持続的なリドカインの吸収が達成できるとの報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2009/060629号パンフレット
【文献】国際公開第2018/052039号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
貼付剤において、膏体(粘着剤層)に配合した薬物量の30~40%が皮膚に吸収されると吸収速度が低下し、薬物の持続的な吸収を達成できなくなる。そのため、より高濃度の薬物を膏体に配合することによって、低濃度の薬物に比べて長時間にわたり持続的な吸収を達成することができる。
一方で、常法で製造されたリドカイン含有製剤、例えば、特許文献2に記載の方法(ホットメルト法)で製造されたリドカイン含有製剤は、酒石酸などの有機酸を含み、リドカインの吸収量を制御できるとされている。しかしながら、分子量の小さい有機酸(例えば、酒石酸)は水溶性が高いため、リドカインの濃度を増大させると、親油性基剤を含む膏体にリドカインと塩を形成するのに必要な量の有機酸を配合することはできない。その結果、リドカインは、膏体中に有機酸と塩を形成しない結晶性の高いフリー体として存在し、そして、長期保存中に結晶として析出するという問題を生じる。そのため、リドカインと分子量の小さい有機酸とを含有する製剤では、リドカインの濃度を低濃度に調整する必要があり、リドカインの持続的な吸収を長時間達成する上で課題があった。また、高濃度のリドカインの長期使用はリドカイン中毒を引き起こすことから、リドカインの濃度を増大させた場合であっても有効性および安全性を確保するという大きな課題もあった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、皮膚への貼付時のリドカインの皮膚透過速度が適正な範囲であってリドカインの治療効果を長時間にわたり持続的に発揮させ、またより高濃度のリドカインを配合しても既存製剤と生物学的に同等である安全性が高い、リドカイン含有貼付剤を提供することにある。さらに、リドカインの結晶析出を阻止することにより、皮膚に対する粘着力が低下することなく、運動しても剥がれにくい特性をもたらすことも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、リドカイン含有貼付剤について、リドカイン-乳酸の等モル塩(イオン液体)を形成させることにより、テープ基剤中で高濃度であってもリドカインを溶解状態に保つことを可能とし、リドカインの皮膚透過性を向上させることに成功したが、長期使用を考慮した場合には、時間当たりのリドカインの皮膚透過量を抑えて、リドカインの皮膚透過速度を適正な範囲に調整する必要であると考えた。しかし、リドカインの配合量を少なくする方法では皮膚透過量は制御できるものの、リドカインの配合量が少ないと長時間の持続的な皮膚透過が損なわれる可能性があるため、リドカインの配合量はある程度高濃度に保ちながら皮膚透過量を適切に制御することが必要であるとの知見を見出した。そこで、本発明者らは、リドカイン-乳酸の等モル塩に、炭素数4~6のヒドロキシ酸(例えば、酒石酸)を添加して、皮膚透過量を制御することを試みたが、炭素数4~6のヒドロキシ酸は溶解せず目的を達成することができなかったため、さらに鋭意検討を行った結果、特定量の乳酸と酒石酸の混合物を予め調製し、次いで、そこに特定のモル比率のリドカインを添加することによって均一な組成物を得ることに成功した。さらに、得られた組成物を含む貼付剤は、リドカインの皮膚透過速度を適正に調整でき、皮膚透過性、粘着性に優れ、また、米国で販売されているLidodermと生物学的同等性を担保できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を提供するものである。
[1] リドカインまたはその塩、乳酸、および炭素数4~6のヒドロキシ酸を含む貼付剤であって、乳酸の含有量が、リドカインまたはその塩1モルに対して0.6~1.2モルである、貼付剤。
[2] 前記炭素数4~6のヒドロキシ酸が、クエン酸または酒石酸である、[1]記載の貼付剤。
[3] 前記炭素数4~6のヒドロキシ酸が、酒石酸である、[1]または[2]記載の貼付剤。
[4] 乳酸の含有量が、リドカインまたはその塩1モルに対して1.0~1.2モルである、[1]~[3]のいずれかに記載の貼付剤。
[5] リドカインまたはその塩の含有量が、5~50%である、[1]~[4]のいずれかに記載の貼付剤。
[6] リドカインまたはその塩の含有量が、10~40%である、[1]~[5]のいずれかに記載の貼付剤。
[7] リドカインまたはその塩の含有量が、10~20%である、[1]~[6]のいずれかに記載の貼付剤。
[8] 炭素数4~6のヒドロキシ酸の含有量が、0.2~5%である、[1]~[7]のいずれかに記載の貼付剤。
[9] 炭素数4~6のヒドロキシ酸の含有量が、0.3~0.8%である、[1]~[8]のいずれかに記載の貼付剤。
[10] 支持体、粘着剤層および剥離ライナーから構成され、粘着剤層中に、リドカインまたはその塩、乳酸、および炭素数4~6のヒドロキシ酸が含まれる、[1]~[9]のいずれかに記載の貼付剤。
[11] 粘着剤層が、エステル類をさらに含む、[10]記載の貼付剤。
[12] エステル類が、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸メチル、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、炭酸プロピレンまたはそれらの混合物である、[11]記載の貼付剤。
[13] 粘着剤層が、界面活性剤をさらに含む、[10]~[12]のいずれかに記載の貼付剤。
[14] 界面活性剤が、HLB値が4~14の範囲にある非イオン性界面活性剤である、[13]記載の貼付剤。
[15] 粘着剤層が、エラストマーをさらに含む、[10]~[14]のいずれかに記載の貼付剤。
[16] エラストマーが、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)である、[15]記載の貼付剤。
[17] 貼付剤の厚みが、0.50~2.00mmである、[10]~[16]のいずれかに記載の貼付剤。
[18] 粘着剤層の表面積が、100~200cmである、[10]~[17]のいずれかに記載の貼付剤。
[19] [1]~[18]のいずれかに記載の貼付剤の製造方法であって、
(a)リドカインまたはその塩1モルに対して0.6~1.2モル量の乳酸と炭素数4~6のヒドロキシ酸を混合する工程;および
(b)工程(a)で得られた混合物にリドカインまたはその塩を添加して、均一な組成物を得る工程;
を含む、製造方法。
【0011】
さらに、本発明は、以下の態様を提供する。
[20] 治療が必要な患者に、治療上の有効量の[1]~[18]のいずれかに記載の貼付剤を投与することを特徴とする、疼痛の治療方法。
[21] 疼痛の治療に使用する、[1]~[18]のいずれかに記載の貼付剤。
[22] 疼痛を治療するための医薬を製造するための、[1]~[18]のいずれかに記載の貼付剤の使用。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、皮膚への貼付時のリドカインの皮膚透過速度が適正な範囲となり、リドカインの治療効果を長時間にわたり持続的に発揮することができる。また、より高濃度のリドカインを配合した場合にも、既存のリドカイン含有貼付剤と生物学的同等性を担保することから、これまでのリドカイン含有貼付剤に比べて、長時間にわたり治療効果を維持することが可能となり、そして、長期使用による副作用の発現リスクを抑えることが可能となる。
本発明の貼付剤は、リドカインの結晶析出がなく、皮膚に対する粘着力が低下しないことから、運動時に使用することができる。さらに、長期使用に対する安全性を担保できることから、使用回数を減らすことも期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】in vitroにおける皮膚透過性試験における、実施例1~3の製剤および比較例1の製剤のリドカイン累積皮膚透過量(μg/cm)を示すグラフである。
図2】比較例1の製剤のリドカイン皮膚透過量を100%とした場合の、実施例1~3の製剤のリドカイン皮膚透過量の割合(%)を示す。
図3】in vitroにおける皮膚透過性試験における、実施例4~8の製剤および比較例2の製剤のリドカイン累積透過量(μg/cm)を示すグラフである。
図4】比較例2の製剤のリドカイン透過量を100%とした場合の、実施例4~8の製剤のリドカイン透過量の割合(%)を示す。
図5】実施例1の製剤(n=32)およびLidoderm(登録商標)(n=28)をヒトの背中に貼付した後の平均血中濃度対時間プロファイルを示すグラフである(平均値±標準偏差)。
図6】実施例1の製剤(n=45)およびLidoderm(登録商標)(n=45)の平均残存貼付エリア(%)の経時的変化を示す。
図7】実施例1の製剤(n=45)およびLidoderm(登録商標)(n=45)の平均貼付スコアの経時的変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、「リドカイン」は、フリー体でも塩形態であってもよい。リドカインの塩として、特に限定されないが、無機酸との塩および有機酸の塩が挙げられる。
無機酸塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩などが挙げられ、有機酸塩の例としては、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩などが挙げられる。
本発明において、リドカインまたはその塩は、リドカイン(フリー体)を使用することが好ましい。
【0015】
リドカインまたはその塩の含有量は、特に限定されないが、製剤全体に対して1~50重量%、5~50重量%、5~45重量%、10~50重量%、10~40重量%、10~35重量%、10~30重量%、10~25重量%、10~20重量%、または10~15重量%であってもよい。また、リドカインまたはその塩の含有量は、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、または50重量%であってもよい。
【0016】
本発明において、リドカイン(フリー体)は、製剤中、乳酸とイオン対を形成してリドカイン乳酸塩として存在することができ、また、炭素数4~6のヒドロキシ酸、例えば、クエン酸または酒石酸と塩を形成して存在することができる。
【0017】
本発明において、「乳酸」は、等モル量のリドカインとイオン対を形成してリドカイン乳酸塩(等モル塩)を形成することに寄与する。
【0018】
本発明において、乳酸の含有量は、リドカインまたはその塩1モルに対して、0.6~1.2モルであり、好ましくは1.0~1.2モルである。
【0019】
本発明において、「リドカイン乳酸塩」は、リドカインと乳酸とが等モル量でイオン対を形成することにより得られるイオン液体(常温溶融塩)であり、常温で粘稠液体である。
【0020】
リドカイン乳酸塩は、例えば1~50重量%の量で存在していてもよく、5~50重量%、10~50重量%、10~40重量%、10~35重量%、10~30重量%、10~20重量%、または10~15重量%の量であってもよい。また、リドカイン乳酸塩は、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%の量で存在していてもよい。
【0021】
リドカイン乳酸塩は、溶媒の存在下または非存在下においてリドカインと乳酸を混合し、加熱することによって(例えば、80℃で)リドカインと乳酸との等モル塩として得ることができる。また、リドカイン乳酸塩は、室温で混合することにより得ることができる。
【0022】
本発明において、リドカイン乳酸塩は、リドカインの一部と乳酸の一部が反応して等モル塩を形成してもよい。そのため、製剤中、未反応のリドカインおよび乳酸が存在していてもよい。
【0023】
本発明において、「炭素数4~6のヒドロキシ酸」とは、4~6個の炭素原子を有する、直鎖状または分枝状のヒドロキシ基を併せ持つカルボン酸を意味する。その例として、これらに限定されないが、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。
【0024】
炭素数4~6のヒドロキシ酸の含有量は、特に限定されないが、製剤全体に対して0.1~10重量%、0.2~5重量%、0.25~4重量%、0.25~3重量%、0.3~2重量%、0.3~1重量%、0.3~0.8重量%、0.35~0.8重量%、または0.4~0.8重量%であってもよい。また、炭素数4~6のヒドロキシ酸の含有量は、0.1重量%、0.15重量%、0.2重量%、0.25重量%、0.3重量%、0.35重量%、0.4重量%、0.45重量%、0.5重量%、0.55重量%、0.6重量%、0.65重量%、0.7重量%、0.75重量%、0.8重量%、0.85重量%、0.9重量%、0.95重量%、1重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%、5.5重量%、6重量%、6.5重量%、7重量%、7.5重量%、8重量%、8.5重量%、9重量%、9.5重量%、または10重量%であってもよい。
【0025】
本発明の貼付剤は、必要に応じて界面活性剤、アルコール類、エステル類、カルボン酸類(炭素数4~6のヒドロキシ酸を除く)、アミン類を含みうる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤が含まれる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
非イオン系界面活性剤の例としては、これらに限定されないが、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンセスキオレート、グリセロールモノオレエート、グリセロールモノステアレート、デカグリセリルモノラウレート、ヘキサグリセリンポリリシノレート、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(4,2)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(7,5)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オイレルアミン、ポリオキシ(5)オレイルアミン、ポリオキシ(5)オレイン酸アミド、ポリオキシエチレン(2)モノラウレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンヒマシ油(硬化ヒマシ油)等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
アニオン系界面活性剤の例としては、これらに限定されないが、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、セチル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(5)セチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(6)オイレルエーテルリン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
カチオン系界面活性剤の例としては、これらに限定されないが、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
両性界面活性剤の例としては、これらに限定されないが、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。上記以外のものとして、ラウロイルジエタノールアミドも使用可能である。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明の界面活性剤は、好ましくはHLB値が4~14の範囲のものであり、より好ましくは一種以上の非イオン性界面活性剤からなり、HLB値が4~14の範囲のものであり、さらに好ましくはステアリン酸モノグリセリドとポリオキシエチレンヒマシ油(硬化ヒマシ油)からなる、HLB値が6~12の範囲のものである。
界面活性剤の含有量は、例えば0.01~2重量%であり、好ましくは0.01~1重量%である。
【0029】
アルコール類の例としては、これらに限定されないが、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどの低級アルコール;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコールなどの高級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール(1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール)、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどの2価アルコール;グリセリン、ヘキサントリオールなどの3価アルコール;サリチル酸グリコール、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコールが挙げられる。本発明のアルコール類は、好ましくはプロピレングリコール、1,3-ブタンジオールおよびグリセリンである。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルコール類の含有量は、例えば0.01~2重量%であり、好ましくは0.01~1重量%である。
【0030】
エステル類の例としては、限定されるものではないが、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ブチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、オリーブオレイン酸エチル、ミリスチン酸ミリスチル、イソクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸レチノール、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、カプロン酸メチル、パルミチン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、モノオレイン酸グリセリン、モノカプリン酸グリセリン、ジオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸プロピレングリコール、デカオレイン酸デカグリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、パルミチン酸アスコルビル、没食子酸n-プロピル、アジピン酸ジイソプロピル、炭酸プロピレン、N-メチル-2-ピロリドンなどのピロリドン誘導体などが挙げられる。本発明のエステル類は、好ましくはミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、炭酸プロピレンおよびN-メチル-2-ピロリドンであり、さらに好ましくは炭酸プロピレンおよびN-メチル-2-ピロリドンである。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エステル類の含有量は、例えば0.01~2重量%であり、好ましくは0.01~1重量%である。
【0031】
カルボン酸類の例としては、限定されるものではないが、オレイン酸、パルミチン酸、コハク酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、デカン酸などの脂肪酸;レブリン酸などのケト酸などが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カルボン酸類の含有量は、例えば0.01~2重量%であり、好ましくは0.01~1重量%である。
【0032】
アミン類の例としては、限定されるものではないが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタンなどが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン類の含有量は、例えば0.01~2重量%であり、好ましくは0.01~1重量%である。
【0033】
本発明の貼付剤は、アルコール類、エステル類、カルボン酸類およびアミン類の総量が30重量%を超えると、貼付剤の粘着剤層が軟化して、製剤化が困難となることがある。
【0034】
本発明の貼付剤は、支持体、リドカインまたはその塩を含む粘着剤層および剥離ライナーで構成される3層構造を取ることができる。例えば、支持体の片面に粘着剤層を積層し、さらに粘着剤層の支持体に接する面の反対側の面上に剥離ライナーを積層した構造を取ることができる。
本発明の貼付剤は、粘着剤層にリドカイン、乳酸および炭素数4~6のヒドロキシ酸を含む。また、界面活性剤、界面活性剤、アルコール類、エステル類、カルボン酸類(炭素数4~6のヒドロキシ酸を除く)、アミン類などもまた、粘着剤層に含まれる。
【0035】
本発明の貼付剤において、粘着剤層中に適当なエラストマー(ポリマー)が含まれる。
【0036】
本発明の貼付剤は、リドカインまたはその塩を含む溶液をエラストマーを含む粘着剤層に分散させて、マトリクス型貼付剤として調製することができる。本発明の貼付剤がマトリクス型貼付剤である場合、リドカイン乳酸塩の含有量は、粘着剤層の総乾燥重量の、1~50重量%、10~50重量%、10~40重量%、10~35重量%、10~30重量%、10~20重量%、または10~15重量%の範囲であってもよい。
【0037】
本発明のエラストマーとしては、これらに限定されないが、ゴム系ポリマー、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ビニルエーテル系ポリマー等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0038】
ゴム系ポリマーの例としては、これらに限定されないが、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(以下、「SIS」と称する場合がある)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブタジエンゴム・スチレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエンゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブテンなどの合成ゴム;天然ゴム等が挙げられる。
【0039】
アクリル系ポリマーの例としては、これらに限定されないが、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2-エチルエキシル・N-ビニル-2-ピロリドン・ジメタクリル酸-1,6-ヘキサングリコール共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2-エチルヘキシル・アクリル酸2-ヒドロキシエチル・酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0040】
シリコーン系ポリマーの例として、これらに限定されないが、シリコーンゴム、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0041】
本発明の貼付剤において、粘着剤層は、粘着付与剤、軟化剤、充填剤、抗酸化剤などの他の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0042】
粘着付与剤の例として、これらに限定されないが、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、DCPD(ジシクロペンタジエン)系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂などが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
粘着付与剤の含有量は、例えば0.01~50重量%であり、好ましくは10~40重量%であり,さらに好ましくは20~40重量%である。
【0043】
軟化剤の例として、これらに限定されないが、プロセスオイル、ポリブテンなどの石油系軟化剤、ヒマシ油、ヤシ油などの脂肪油系年化剤、精製ラノリン、流動パラフィン、ゲル化炭化水素などが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
軟化剤の含有量は、例えば0.01~50重量%であり、好ましくは10~40重量%であり、さらに好ましくは20~40重量%である。
【0044】
充填剤の例として、これらに限定されないが、カオリン、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩、ケイ酸、アルミニウム水和物、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。これらの充填剤は、粘着剤層が柔軟になり過ぎた場合に適度な硬さに調整することができる。
充填剤の含有量は、例えば0.01~5重量%であり、好ましくは0.01~3重量%である。
【0045】
抗酸化剤の例としては、これらに限定されないが、ジブチルヒドロキシルトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
抗酸化剤の含有量は、例えば0.01~2重量%であり、好ましくは0.01~1重量%である。
【0046】
本発明の貼付剤における支持体には、薬物不透過性で伸縮性または非伸縮性の支持体を使用することができる。このような支持体としては、医薬品の分野において通常用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)、ナイロン、ポリウレタンなどの合成樹脂フィルムもしくはシートまたはこれらの積層体、多孔質体、発泡体、フィルムにアルミニウムを蒸着させたもの、紙、織布、不織布などが挙げられる。
【0047】
本発明の貼付剤における剥離ライナーは、外用剤を皮膚に適用するまで粘着剤層を保護することができる。本発明の外用剤を包装するための包材には、アルミラミネートフィルムを使用することができる。アルミラミネートフィルムの最内層にはポリアクリルニトリル、ポリエチレンテレフタレート系、ポリエチレン等を使用することができる。
【0048】
本発明の貼付剤の調製方法としては、公知の方法、例えば溶剤塗工法、ホットメルト塗工法等によって製造することができる。
溶剤塗工法としては、リドカイン乳酸塩等を含有する粘着剤層組成物を調製し、これに直接支持体上に塗工、乾燥する方法が挙げられる。また、前記粘着剤層組成物を一旦剥離紙上に塗工、乾燥した後、剥離して支持体に転写密着させる方法も使用可能である。ホットメルト塗工法としては、前記粘着剤層組成物を加熱溶融し、これを直接支持体上に塗工、乾燥する方法が挙げられる。また、ホットメルト塗工法では、前記粘着剤層組成物を加熱溶融して一旦剥離紙上に塗工、乾燥した後、剥離して支持体に転写密着させる方法も使用可能である。
【0049】
また、本発明の貼付剤の粘着剤層組成物は粘着剤層の各成分を混合して、それらを撹拌することにより調製することができる。例えば、エラストマーおよび粘着付与剤をトルエンに溶解し、界面活性剤などの他の添加剤およびエステル類などの溶媒を加え、加熱混合して溶解した後、リドカイン、乳酸および炭素数4~6のヒドロキシ酸を加えて、撹拌することにより粘着剤層組成物を得ることができる。リドカインは、乳酸と炭素数4~6のヒドロキシ酸を混合して得られた混合溶液に加えてもよい。
【0050】
本発明において、貼付剤の厚みは、約0.50~約2.00mmが好ましく、約0.55~約1.00mmがより好ましい。貼付剤の厚みは、例えば、約0.50mm、約0.51mm、約0.52mm、約0.53mm、約0.54mm、約0.55mm、約0.56mm、約0.57mm、約0.58mm、約0.59mm、約0.60mm、約0.61mm、約0.62mm、約0.63mm、約0.64mm、約0.65mm、約0.66mm、約0.67mm、約0.68mm、約0.69mm、約0.70mm、約0.71mm、約0.72mm、約0.73mm、約0.74mm、約0.75mm、約0.76mm、約0.77mm、約0.78mm、約0.79mm、約0.80mm、約0.85mm、約0.90mm、約0.95mm、約1.00mm、約1.10mm、約1.20mm、約1.30mm、約1.40mm、約1.50mm、約1.60mm、約1.70mm、約1.80mm、約1.90mm、約2.00mmであってもよい。
リドカインの配合量を変えずに貼付剤、特に粘着剤層の厚みを大きくすると、リドカインの濃度が低くなるため吸収量を制御することが可能であるが、剥離時に皮膚に粘着剤が多量に残留する、残留する溶媒により皮膚刺激性が高まるなどの問題が生じる可能性がある。
【0051】
本発明において、貼付剤の粘着剤層の表面積は、100~200cmが好ましく、120~180cmがより好ましく、130~160cmがさらに好ましい。また、本発明において、粘着剤層の単位面積当たりのリドカイン乳酸塩の含有量は、例えば1~5mg/cmであり、好ましくは1~2mg/cmであり、より好ましくは1~1.5mg/cmである。
【0052】
本発明の貼付剤は、粘着剤層中でのリドカインの結晶析出がなく、粘着力を維持することができる。本発明の貼付剤は、運動しても剥がれにくく、運動時に使用することができる。
【0053】
本発明の貼付剤の使用回数は、患者の症状や年齢などにより異なるが、成人に対して1日1回、2日に1回、3日に1回または1週間に1回が好ましく、1日1回がより好ましい。なお、本発明の貼付剤の使用回数は、症状によって使用回数を増やすことができる。
【0054】
本発明の貼付剤は、皮膚深部の神経因性疼痛(例えば、帯状疱疹後神経痛)、頸肩腕症候群、三叉神経由来の偏頭痛などの種々の疼痛の治療または緩和に有用である。
【0055】
本発明において、「治療」とは、疼痛またはそれに伴う症状のあらゆる治療、例えば、疼痛を治癒または改善すること、疼痛に伴う症状を緩和または抑制することをいう。また、疼痛の再発の防止も含まれる。
【0056】
本発明において、「患者」とは、ヒトおよび動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマなどをいう。その中でも、ヒトが好ましい。
【0057】
本発明において、「治療上の有効量」とは、未治療対象と比べて、疼痛およびその症状の治癒、改善および/または軽減をもたらす量を意味する。該用語は、その範囲内に、正常な生理的機能を促進するのに有効な量も含む。
【実施例
【0058】
以下に、実施例および試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されない。
【0059】
実施例1~3
下表1に示す含有量で各成分を秤量し、実施例1~3の製剤を調製した。具体的には、溶媒法によりスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)およびテルペン樹脂をトルエンに溶解させ、次いで、モノステアリン酸グリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、炭酸プロピレン、およびゲル化炭化水素を加え、加熱混合して溶解し粘着剤層を調製した。また、別に、乳酸(純度90%)と酒石酸を混合させ、その混合溶液にリドカインを加えて、均一な組成物を調製し、これを上記粘着剤層に混合して、均一な粘着剤層組成物を得た。得られた粘着剤層組成物をシリコーン塗布したPETフィルムに塗工し乾燥させ、トルエンを除去し、支持体上に貼り合わせて、10cm×14cmに裁断して製剤を調製した。
【表1】
【0060】
比較例1
下表2に示す含有量で各成分を秤量し、酒石酸を添加しないこと以外は実施例1~3の製剤と同様の方法にしたがって、比較例1の製剤を調製した。
【表2】
【0061】
試験例1:炭素数4~6のヒドロキシ酸添加によるリドカインの皮膚透過性の検討(1)
以下の方法にしたがって、実施例1~3の製剤および比較例1の製剤のリドカイン皮膚透過量を測定した。
フランツセルをセットし、生理食塩水で満たしたものを32℃付近で保温した。解凍したミニブタ皮膚の裏側にφ24 mmのメンブランフィルターにφ15 mmの穴をあけたディスクを張り付け、φ24 mmのポンチで皮を打ち抜き、フランツセルにセットして周囲および皮膚上面の余分な水分を拭き取った。20分程度皮膚を順化させたら一度取り外し、中央部にφ12 mmに打ち抜いた各製剤を貼付し、再度フランツセルにセットした。次いで、周囲の余分な水分を拭き取り、φ24 mmに打ち抜いたろ紙を皮膚の上に置いて、蓋をクリップで止め、1、2.5、6、9および12時間後にサンプリングを行い、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。なお、平均値を求めた(n=3)。
【0062】
1、2.5、6、9および12時間後の各製剤のリドカインの累積皮膚透過量(μg/cm)を、表3および図1に示す。また、12時間後の比較例1の製剤のリドカイン皮膚透過量に対する実施例1~3の製剤のリドカイン皮膚透過量の割合(%)を、図2に示す。
【表3】
【0063】
酒石酸の添加によって、リドカインの皮膚透過量を抑えられることが示された(表3および図1~2)。
【0064】
試験例2:炭素数4~6のヒドロキシ酸添加によるリドカインの皮膚透過性の検討(2)
炭素数4~6のヒドロキシ酸として、酒石酸およびクエン酸を用いたリドカイン含有製剤の皮膚透過性について検討した。
下表に示す含有量で各成分を秤量し、実施例1~3の製剤と同様の方法にしたがって、実施例4~8の製剤を調製し、また、比較例1と同様の方法にしたがって比較例2の製剤を調製した。次いで、ミニブタ皮膚の代わりにStrat-M(登録商標)メンブレン(Merck社製)を用い、そして、1、3、6、9および12時間後にサンプリングを行うこと以外は、試験例1と同様の方法にしたがって、実施例4~8および比較例2の製剤のリドカイン透過量を測定した。なお、平均値を求めた(n=3)。
【表4】
【0065】
1、3、6、9および12時間後の各製剤のリドカインの累積透過量(μg/cm)を、表5および図3に示す。また、12時間後の比較例2の製剤のリドカイン皮膚透過量に対する実施例4~8の製剤のリドカイン透過量の割合(%)を、図4に示す。
【表5】
【0066】
酒石酸に加えてクエン酸の添加によっても、リドカインの皮膚透過量を制御できることが示された(表5および図3~4)。
【0067】
試験例3:in vivoにおける本発明の製剤と既存製剤(Lidoderm(登録商標))の薬物動態学的検討
以下の方法にしたがって、実施例1の製剤および米国において販売されているリドカイン貼付剤(Lidoderm(登録商標))の血漿中リドカイン濃度を測定した。また、薬物動態的解析を行い、既存薬剤との生物学的同等性を評価した。
32人の健常人(男性および女性、19~65歳)を被験者とした。各被験者の背中に2枚のLidodermまたは実施例1の製剤(サイズ:10cm×14cm)を貼付して、12時間後に剥離した。各製剤の貼付後1、2、3、4、6、8、10、11、12、13、14、16、18、20、24、28、36および44時間の時点で採血を行って、血漿中のリドカイン濃度をLC/MS/MSを用いて測定した。また、血漿中リドカイン濃度の推移から、ノンコンパートメント薬物動態学的解析をPhoenix WinNonlin Version 7.0を用いて実施し、AUC(血中濃度曲線下面積)およびCmax(最高血中濃度)を算出した。また、実施例1およびLidodermのAUCとCmaxの幾何平均比率も算出した。なお、Lidodermを貼付した4人の被験者については試験途中で製剤が剥がれたため、試験から除外した。
【0068】
血漿中リドカイン濃度の推移(平均値±標準偏差)を、図5に示す。算出されたAUCおよびCmaxを、表6に示す。AUCおよびCmaxの幾何平均比率に関する90%の信頼区間は許容された80%~125%の範囲内であった。
【表6】
【0069】
実施例1の製剤は、Lidodermとほぼ同等の薬物動態(PK)プロファイルを示すことが確認された(表6および図5)。すなわち、本発明の製剤は、Lidodermと生物学的に同等であることが示された。
また、12時間貼付時のリドカイン利用率が29%であることから、製剤中には約70%のリドカインが残存しており、持続的に使用できることが示された。すなわち、本発明の製剤は、Lidodermと比べて長時間にわたって持続的にリドカインの治療効果を発揮しうる。
【0070】
試験例4:本発明の製剤と既存製剤(Lidoderm(登録商標))の貼付試験
以下の方法にしたがって、実施例1の製剤および米国において販売されているリドカイン貼付剤(Lidoderm(登録商標))のヒトに対する貼付試験を行い、残存貼付エリア(%)を測定し、そして、FDAガイダンス(Assessing Adhesion With Transdermal and Topical Delivery Systems for ANDAs Guidance for Industry (DRAFT GUIDANCE) October 2018)に則り、貼付スコア(0:残存貼付エリアが90%以上、1:残存貼付エリアが75%以上90%未満、2:残存貼付エリアが50%以上75%未満、3:残存貼付エリアが0%超50%未満、4:残存貼付エリアが0%)を算出して、製剤の粘着持続性を評価した。
45人の健常人(あらゆる人種の男性および女性)を被験者とした。各被験者の背中に実施例1の製剤(サイズ:10cm×14cm)またはLidodermをそれぞれ1枚貼付した。各々の貼付部位が解剖学的に同等となるようにした。試験開始後3、6、9および12時間の時点での平均残存貼付エリア(%)および平均貼付スコアに基づき、製剤の粘着持続性を評価した。
【0071】
各製剤の平均残存貼付エリア(%)の経時的変化を図6に示す。また、各製剤の平均貼付スコアの経時的変化を図7に示す。
本発明の製剤では、貼付12時間後において被験者45人中44人の貼付スコアが0、1人の貼付スコアが1であった。そのため、本発明の製剤は、長時間にわたり剥がれが生じにくく、運動しても剥がれにくい特性を有することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、皮膚への貼付時のリドカインの皮膚透過速度が適正な範囲となり、リドカインの治療効果を長時間にわたり持続的に発揮することができる。また、高濃度のリドカインを配合した場合にも、既存のリドカイン含有貼付剤と生物学的同等性を担保することから、これまでのリドカイン含有貼付剤に比べて、長時間にわたり治療効果を維持することが可能となり、また、長期使用による副作用の発現リスクを抑えることが可能となる。
本発明の貼付剤は、リドカインの結晶析出がなく、皮膚に対する粘着力が低下しないことから、運動時に使用することができる。さらに、長期使用に対する安全性を担保できることから、使用回数を減らすことも期待できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7