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  • 特許-凍結乾燥プロバイオティクス食品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】凍結乾燥プロバイオティクス食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20240531BHJP
   A23L 3/44 20060101ALI20240531BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20240531BHJP
【FI】
A23L33/135
A23L3/44
A23L19/00 A
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022126047
(22)【出願日】2022-08-08
(62)【分割の表示】P 2020550701の分割
【原出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2022166120
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】16/356,692
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/761,335
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518190271
【氏名又は名称】イマジリン テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】リン ジー‐ジュー
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-516062(JP,A)
【文献】国際公開第2015/186998(WO,A1)
【文献】特表2009-531448(JP,A)
【文献】特表2017-522048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/135
A23L 3/44
A23L 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)凍結乾燥食品の断片、及び
(b)前記断片に固着する凍結乾燥プロバイオティクスを含む被覆層を含み、前記プロバイオティクスはペディオコッカス・アシディラクティシである、組成物。
【請求項2】
前記食品は、果物、野菜、食肉、ナッツ、及び乳製品からなる群から選択される少なくとも1種の品目である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに防腐剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
酸化防止剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の1g当たりに少なくとも1×10CFUの細菌を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
最終製品は凍結乾燥されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
哺乳動物にプロバイオティクスを投与するために用いる、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物を製造する方法であって、
(1)食品断片の表面に凍結乾燥プロバイオティクスを塗布する工程、次に
(2)工程(1)の生成物を凍結乾燥する工程を含む、前記方法。
【請求項9】
前記工程(1)において、前記凍結乾燥プロバイオティクスは、プロバイオティクス含有粉末又はプロバイオティクス含有溶液にて塗布される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記食品は乾燥した野菜、食肉、果実、又はナッツであり、
前記食品に塗布する凍結乾燥プロバイオティクスは、プロバイオティクス含有粉末又はプロバイオティクス含有溶液であり、
前記組成物は前記凍結乾燥プロバイオティクスを含むものである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物を製造する方法であって、
(1)食品断片の表面に、乳製品中に混合されたプロバイオティクスを含む組成物を塗布する工程、次に
(2)前記工程(1)の生成物を凍結乾燥する工程を含む、前記方法。
【請求項12】
前記食品は、工程(1)の前に、前記プロバイオティクスの塗布に先立って、塩漬け、加熱、及び酢漬けから選択される少なくとも1つの処理に供されている、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
(1)果物、野菜、食肉、又はナッツから選択された少なくとも1つの食品を凍結乾燥プロバイオティクスと混合する工程、及び
(2)次に工程(1)の生成物を凍結乾燥する工程により製造された製品の製造方法であり、
前記製品が、
(a)凍結乾燥食品の断片、及び
(b)前記断片に固着する凍結乾燥プロバイオティクスを含む被覆層を含み、前記プロバイオティクスはペディオコッカス・アシディラクティシを含むものである、
前記方法。
【請求項14】
前記工程(1)の前記食品は、新鮮な果物、新鮮な野菜、又はナッツである、請求項13に記載の製品の製造方法。
【請求項15】
前記工程(1)において、前記食品は、調理あるいは塩漬け処理された、有害な微生物を死滅させた食肉製品である、請求項13に記載の製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の詳細>
本出願は2018年3月19日に出願の「室温及び高温で貯蔵可能な新規の乾燥プロバイオティクス食品」と題する米国仮出願第62/761,335号の利益を主張する、2019年3月18日に出願の米国特許出願第16356,692号の優先権を主張し、その全体が参照により
本明細書に取り込まれる。
【0002】
<発明の分野>
本発明は食品技術の分野、より詳細にはプロバイオティクス製品、それら製品の製造、及びそれら製品の使用の分野に関する。関連する発明の対象を教示かつ請求する先行特許は、ペディオコッカス・アシディラクティシ(以下P.アシディラクティシとも呼ぶ)NRRL B-50517を教示・請求する米国特許第9,289,008 B1号、及びP.アシディラクティシプロバイオティクスを用いる炎症性疾患あるいは症状を治療する組成物及び方法を教示する米国特許第10,195,237号であり、その全体が参照により複製されて本明細書に取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
プロバイオティクスは生きている微生物であり、適切な量が投与されると、宿主に健康上の利点を付与する。抗生物質誘発性下痢症、急性下痢症、旅行者下痢症、アレルギー、呼吸器感染症及び尿路感染症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、大腸癌及び膀胱癌、関節リウマチ症、肥満症、並びに2型糖尿病による症状の緩和などの多くのプロバイオティクス関連の健康上の利点が報告されている。標的を絞った健康上の利点を提供する食品には特に人気がある。適切な母材中に十分な濃度で共生微生物を提供する食品には特に関心が深い。現在、乳製品は、プロバイオティクスを送達するのに用いられる主要な食品群である。いくつかの現状の規則では、国際酪農連盟(IDF)が発行する規則のように、10~10CFU/g又はCFU/mLの生細菌量の最小値を定めている。乳製品は依然としてプロバイオティクスを組込むのに用いられる好ましい製品ではあるが、欠点がある。それは、乳糖とコレステロールの含有量が高いために、冷蔵を必要とすることである。さらに現在では多くの消費者が菜食主義の食事を好むので、菜食主義者系のプロバイオティクス含有製品の需要が存在し、今後間違いなくその需要は増加していく。結論として、今までにない風味と舌触りを持つ製品への要求が常に存在している。
【0004】
食品の加工には、多くの様々な手法が含まれてもよい。本発明の実施では、最終製品の調製に使用される工程がプロバイオティクスの活性に悪影響を及ぼさないことが不可欠である。従って、混合、圧送、低温殺菌、及び冷凍の工程を、プロバイオティクスの生存率の過度な低下を避けるように、注意して管理する必要がある。さらに重要なこととして、室温で保管する際、時にはより高い温度での輸送、保管、及び操作の際には、プロバイオティクス製品を安定に保つ必要がある。これは、芽胞を形成しないプロバイオティクスを用いる作業時には特に重要なことであり、またこれは規制遵守及び安全性の観点から好ましいことである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、プロバイオティクスである微生物を送達する凍結乾燥プロバイオティクス食品、及びその製品を製造する手段を提供することにある。
【0006】
本発明の製品は、最終製品を多くの場合に冷蔵せずに長期間保存できるので、現状で利用可能なプロバイオティクス食品よりも多くの利点を提供する。多くの凍結乾燥プロバイオティクス製品は乾燥形態で販売されるために、容易に輸送及び保管が可能である。これにより、軽食としてのその使用及び食品調理用の材料としての使用がより経済的で便利なものになる。本発明の製品として、プロバイオティクスが食品に組込まれている食品、又はプロバイオティクスが食品に付着している食品が挙げられる。本発明は、プロバイオティクスのために「担体(carriers)」として使用しうるあらゆる食品を含むが、当該食品として、特に興味深い食品は、凍結乾燥した果物、野菜及びナッツなどの凍結乾燥食品、あるいは例えば凍結乾燥した牛肉などの乾燥肉である。
【0007】
本発明の組成物の製造では、プロバイオティクスが塗布又は添加される食肉、果物、ナッツ、あるいはその他の材料にかかわらず、担体の調製が必要となる。殆どのプロバイオティクスは温度に敏感であるので、プロバイオティクスが塗布され又は組み込まれて最終製品となる間に、かつ最終製品となった後に、温度を管理する必要がある。プロバイオティクスを添加する食品に、その食品に該当する規制に従って洗浄及び消毒を実施する必要がある。
【0008】
プロバイオティクス食品は凍結乾燥によって調製される。凍結乾燥工程により、摂取の後までプロバイオティクスを本質的に不活性とする。ラクトバチルス(乳酸桿菌)属を凍結乾燥したプロバイオティクス食品に適用できるが、本発明の実施に用いる好ましい微生物は、ペディオコッカス属である。特に好ましい菌株は、ペディオコッカス・アシディラクティシNRRL B-50517である。本発明の食品は、乾燥した果物、野菜又はナッツなどの軽食として提供されてもよく、又は販売された製品を、サラダやデザートなどのより複雑な混合物の調製中に添加してもよい。容易に包装かつ輸送できる乾燥製品が特に望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、プロバイオティクス凍結乾燥食品の調製物の断面概略図である。
図2図2は、本発明の実施に用いることが可能ないくつかの工程の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<詳細な説明>
本発明は、摂取後も生存可能であり、プロバイオティクス微生物の投与に関連する所望の利益を提供する任意のプロバイオティクス微生物を用いて実施できる。本発明の実施に用いられる微生物は、プロバイオティクスの調製及び使用に知識を有する当業者の技能の範囲内で選択される。本発明の実施に用いられる食品として、果物、野菜、乳製品、及びその他の食品が挙げられる。唯一の条件は、食品が凍結乾燥工程に耐えられることである。プロバイオティクスによる処理に使用できる食品には、食品業界で用いられる酸化防止剤、塩、砂糖、防腐剤、及び担体により処理された食品が含まれる。プロバイオティクスで処理される食品は、加熱処理、冷気への曝露(冷凍食品など)、又は凍結乾燥を受けたものでもよい。種々の軽食などの食品にさらに、本発明の方法に用いて、プロバイオティクスを塗布する工程を行ってもよい。

【0011】
本発明の工程で用いられるプロバイオティクス組成物には、限定はされないが、水、糖溶液、塩溶液、又は他の任意の液体のいずれかに溶解した凍結乾燥プロバイオティクスの混合物であってもよいプロバイオティクス溶液が含まれ、この溶液は消化管に到達してもプロバイオティクスの活性に悪影響を及ぼさない。同様に、MRS培養液で増殖させたプロバイオティクスなどの発酵培養物中のプロバイオティクス、回収されたプロバイオティクス培養物中のプロバイオティクス、及び、水、砂糖溶液又は塩溶液のいずれかと混合した培養物中のプロバイオティクスを用いてもよい。プロバイオティクス培養物はまた、豆乳を含む乳などの乳製品中での発酵によって調製されてもよい。凍結乾燥したプロバイオティクスはまた、粉末状で用いることができる。本発明の方法を用いて、最大10CFU/gまでプロバイオティクス含有量を増殖することが可能である。ペディオコッカス属及びラクトバチルス属の微生物が提示かつ例示されているが、本発明の方法では他の微生物を使用してもよい。
【0012】
凍結乾燥の前に、食品にプロバイオティクスを塗布するのに用いられる方法には、限定はされないが、プロバイオティクスを含む溶液に食品を浸漬する工程、食品にプロバイオティクス含有溶液を噴霧する工程、及び食品に乾燥粉末をまぶす工程が含まれる。多くの場合に、最も望まれることは食品が室温で安定なことである。
【0013】
本発明の好ましい方法では、凍結乾燥食品の断片を、細菌が食品断片に固着するような手法で、凍結乾燥プロバイオティクスの層で被覆する。実施例によっては、ペディオコッカス属の細菌を用いた。アシディラクティシ種のその細菌(例えば、ペディオコッカス・アシディラクティシNRRL B-50517)を、これら実施例では例として示した。ただし、凍結乾燥プロバイオティクスを混合して食品内に取り込むこともまた適切である。
【0014】
この被覆層中に防腐剤を含むこともまた有益な場合がある。ビタミンCなどの酸化防止剤を処理中に製品に添加してもよい。
【0015】
イチゴ、ブルーベリー、ラズベリーなどの果物を、本明細書に開示される方法に従って用いてもよく、最終製品の調製には丸ごとを用いてもよい。マンゴー、バナナ、リンゴ、ナシなどのより大きな果物は、小断片に切断してもよい。全ての果物製品は、必須ではないが、プロバイオティクスで被覆する前に乾燥してもよい。サツマイモ、ジャガイモ、料理用バナナなどの野菜は、通常、より小さな断片に切断して処理するが、エンドウ豆や大豆などのより小さな野菜は、丸ごとを処理して本発明の方法に用いてもよい。
【0016】
<材料及び方法>
【0017】
本明細書及び添付の特許請求範囲の目的のために、用語「食肉」には、牛肉、家禽肉(例えば、鶏、七面鳥、ガチョウ、アヒルなど)、豚肉、及び魚肉、並びに食肉用の任意の種からの食用臓器が含まれる。本明細書及び添付の特許請求範囲の目的のために、用語「乳製品」には、限定はされないが、ヨーグルト、及び、ラブネ、ポットチーズ、ファーマーズチーズ、カッテージチーズなどのソフトチーズが含まれる。
【0018】
本発明の実施には、いくつかの工程を必要とする。果物や野菜などの材料を、プロバイオティクスに曝す前に食品業界で一般的な方法により洗浄する。(凍結乾燥を含む)乾燥などの追加の工程を、最終製品に使用する食品の加工に用いてもよい。食肉製品は、病因微生物を死滅させるために、ヒトが消費する食品の調製に用いる通常の方法に従って、調理又は(塩水などで)塩漬けして、かつ乾燥させてもよい。実施例で用いられる方法及び材料は、機能的に同一の結果となり、かつ/あるいは同様の結果をもたらす材料及び方法を用いる他の設定に置き換えてもよい。同等の結果が得られるのなら、装置は、入手し易さによって本発明の方法での使用可否が決まる。大規模生産のためにこれらの方法を使用しても、同等の結果が得られると思われる。最も好ましいのは、出荷及び貯蔵が容易な最終製品である。ただし、これらの方法は、乳製品などのより腐敗しやすい製品に適用しても、良い効果が得られる。
【0019】
食肉の前処理:牛肉又は鶏肉のレバーを大量の水で濯ぎ、紙タオルで乾燥させ、1/8インチ~2インチの立方体に切断して、オリーブオイルで熱をかけ焼いた。焼いた立方体を取り出し、紙タオルの上に置いて室温まで冷却した。冷却した立方体を、以下に詳述するようにプロバイオティクス粉末又はプロバイオティクス溶液により処理し均一に混合して、その後凍結乾燥用のトレイに置いた。
【0020】
あるいは、食肉を塩で処理、凍結乾燥、又は抗酸化処理を施して、有害微生物を死滅させてもよい。
【0021】
プロバイオティクス粉末(以下5051粉末と呼ぶ)による被覆:食品断片(例えば、上記のように焼いて冷却した立方体)をプロバイオティクス粉末(200g~1kgの食品に対して、40g~80gの100億CFU/gのP.アシディラクティシNRRL B-50517粉末)を有する容器内に入れた。これら断片を被覆するために、断片をプロバイオティクス含有粉末中でまぶし、次いで凍結乾燥用のトレイに移した。実施例によっては、トレイは硫酸紙で覆われていた。
【0022】
プロバイオティクス溶液(以下5051溶液と呼ぶ)による被覆:食品断片(例えば、上記のように焼いて冷却した立方体)を、ペディオコッカス・アシディラクティシNRRL B-50517溶液(20gの凍結乾燥粉末のペディオコッカス発酵プロバイオティクス:カタログ番号PA-5051FD、Imagilin Technology, LLCを水80mLと混合した溶液)を有する容器内に入れた。これら断片をこの溶液中で45秒~1分間混合し、その後トレイに移して凍結乾燥させた。多くの場合に、トレイは硫酸紙で覆われていた。あるいは、食品断片を、プロバイオティクスを含有するプロバイオティクス発酵培養物又はヨーグルトで被覆してもよい。
【0023】
CFUの計算:本発明の実施例によっては、0.2g~0.4gのプロバイオティクスで被覆した食品を、5mLの生理食塩水内に移してよく混合した。一連の希釈液を調製して、100μLの分量でMRS皿に播種し一晩培養した。次にコロニー数を計測した。CFUの決定を、凍結乾燥の前後かつ/あるいは工程のその他の段階で実施した。
【0024】
図面に特に示すように、図1は、食品に凍結乾燥プロバイオティクスを塗布するために、食品を調製するのに用いることが可能な本発明の工程の流れ図である。図面に示すように、(1)は食品の調製工程への入口となる。洗浄工程は、(2)非加熱処理又は(3)加熱処理を用いて始めてもよい。(2)非加熱処理された食品を、その後に(4)冷凍しても、(5)冷凍しなくてもよい。別の流れとして、(3)熱処理の流れに入ると、食品を後で(6)冷凍しなくても、(7)冷凍してもよい。最後に準備工程からの全ての食品を、続いて(8)プロバイオティクス含有材料を添加する工程に移す。プロバイオティクスを、(9)ヨーグルトプロバイオティクス組成物、(10)発酵増殖プロバイオティクス組成物、(11)プロバイオティクス含有溶液、又は(12)プロバイオティクス粉末組成物として塗布してもよい。(9)、(10)、(11)、及び(12)の流れからの全ての製品を、直ちに(13)凍結乾燥工程に通して、(14)凍結乾燥プロバイオティクス製品を作製する。
【0025】
図2は、工程の別の流れ図をまとめたものである。食品を(15)洗浄し、次に(16)加熱処理してもよく、あるいは(17)加熱を伴わずに処理してもよい。次に、流れ(16)の生成物を(21)冷凍しても、(20)冷凍しなくてもよい。同様に流れ(17)の製品を、(19)冷凍された後に、あるいは(18)冷凍せずに、製造工程内に送る。次に、(22)調製された食品の流れは、凍結乾燥したプロバイオティクスの塗布又は組込み工程に送ることができる。プロバイオティクスの塗布又は組込みは、(23)ヨーグルト調製製品、(24)発酵増殖プロバイオティクス、(25)プロバイオティクス溶液、又は(26)プロバイオティクス粉末の形態で実施されてもよい。プロバイオティクスの塗布手段に関係なく、流れ(23)、(24)、(25)、及び(26)の全ての製品は、その後(27)凍結乾燥されて、(28)プロバイオティクス凍結乾燥最終製品を提供する。
【実施例
【0026】
実施例1:ペディオコッカス属の凍結乾燥した牛肉及び鶏のレバーからの生存プロバイオティクスの検出
【0027】
焼いた牛肉及び/又は鶏のレバーを、プロバイオティクスによる被覆のために準備した。牛肉又は鶏のレバーに上述の「肉への前処理」を施して、次に5051粉末又は5051溶液(上記を参照)で被覆して凍結乾燥した。CFU/gを、凍結乾燥後に測定した。結果を表1にまとめる。
【0028】
【表1】
【0029】
表1の結果は、加熱処理した牛肉及び/又は鶏のレバーを凍結乾燥した後も細菌が生存し続けることを示している。
【0030】
実施例2:ラクトバチルス・ファーメンタム及びペディオコッカス・アシディラクティシNRRL B-50517の塗布
【0031】
ペディオコッカス・アシディラクティシNRRL B-50517以外の菌株からの細菌に凍結乾燥を適用できるかを判断するために、プロバイオティクスであるラクトバチルス・ファーメンタムを用いる類似の調製方法を使用した。生きているラクトバチルス・ファーメンタム及びP.アシディラクティシの両方を、室温のラクトバチルス凍結乾燥薄切りリンゴ及びペディオコッカス凍結乾燥リンゴ、あるいは65℃で10分間処理したこれらのリンゴから検出した。凍結乾燥工程を経たP.アシディラクティシNRRL B-50517の生存率は、ラクトバチルス・ファーメンタムよりも540倍高く、プロバイオティクス凍結乾燥製品を65℃の高温(elevated temperature)で10分間処理すると、2,850倍も高くなった(表2)。これらの結果では、異なるプロバイオティクスを用いても類似の調製方法が適用可能であることを示していた。しかしラクトバチルス・ファーメンタムの生存率は、P.アシディラクティシNRRL B-50517の生存率よりもはるかに低い(約1,000分の1と低い)。結果を表2にまとめる。
【0032】
【表2】
【0033】
:リンゴを1/4インチの薄片に切り、次にそれらの断片を半分に切断した。リンゴの薄片を(100億CFU/gの凍結乾燥粉末であるラクトバチルス発酵プロバイオティクスの20gを80mLの水と混合した)ラクトバチルス・ファーメンタム溶液内に移し、次にこのプロバイオティクス溶液と45秒~1分間混合し、その後にラクトバチルス属で被覆したリンゴを硫酸紙で覆われた凍結乾燥トレイに移して、凍結乾燥した。
**:リンゴを1/4インチの薄片に切り、次にそれらを半分に切断した。リンゴの薄片を(100億CFU/gの凍結乾燥粉末であるペディオコッカス発酵プロバイオティクスの20gを80mLの水と混合した)ペディオコッカス・アシディラクティシNRRL B-50517溶液内に移し、リンゴの薄片をプロバイオティクス溶液と45秒~1分間混合し、ペディオコッカス属で被覆したリンゴを硫酸紙で覆われた凍結乾燥トレイ上に移して、凍結乾燥した。
:0.2g~0.4gのラクトバチルスプロバイオティクス凍結乾燥リンゴ薄片又はペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥リンゴ薄片を秤量し、このリンゴ薄片を5mLの生理食塩水中に移してよく攪拌した。一連の希釈を実行し、100μLの所望の希釈溶液をMRS皿に播種して、一晩培養した後にコロニー数を計測した。
【0034】
実施例3:被覆する細菌の保持量の増大
【0035】
凍結乾燥リンゴのg当たりのCFU量の増大が可能かを調べるために、凍結乾燥の前に保持量を増やした。
【0036】
ヒトがより多くの生存プロバイオティクスを摂取すると、特に消化器疾患に罹患している患者にとって有益な効果がより早期に観察されるので、この保持量の増大は重要である。凍結乾燥工程で調製した製品により多くの量のP.アシディラクティシNRRL B-50517を塗布すると、それに比例してより多くの生存ペディオコッカス属の検出が見られた。これらの結果は、凍結乾燥前の塗布濃度に依存して、任意の所望量の生細菌を有するプロバイオティクス凍結乾燥製品を製造できる可能性を示している。結果を表3にまとめる。
【0037】
【表3】
【0038】
:リンゴを1/4インチの薄片に切り、次にそれら断片を半分に切断し、続いてリンゴの薄片を(凍結乾燥粉末である種々の濃度のペディオコッカス発酵プロバイオティクスの20gを80mLの水と混合した)ペディオコッカス・アシディラクティシNRRL B-50517溶液内に移し、リンゴ薄片とプロバイオティクス溶液を45秒~1分間混合し、ペディオコッカス属で被覆されたリンゴを硫酸紙で覆われた凍結乾燥トレイ上に移して、凍結乾燥した。
**:0.2g~0.4gのペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥リンゴを秤量し、そのリンゴ薄片を5mLの生理食塩水中に移してよく攪拌した。一連の希釈を実行し、100μLの所望の希釈溶液をMRS皿に播種して、一晩培養した後にコロニー数を計測した。
【0039】
実施例4:リンゴの前処理は、プロバイオティクス凍結乾燥食品のプロバイオティクスの生存率に明白な影響を与えない
【0040】
食品の煮沸及び/又は冷凍がプロバイオティクスを被覆した凍結乾燥食品を作る能力に及ぼす影響を判断するために、リンゴで実験を実施した。表4にまとめた結果は、P.アシディラクティシNRRL B-50517を、冷凍リンゴ、熱処理リンゴ、及び熱処理後冷凍リンゴを被覆するように塗布した場合に、凍結乾燥を生き延びることが可能なことを示している。より重要なことに、プロバイオティクスの同等の生存率が、冷凍リンゴ、熱処理リンゴ、及び熱処理後凍結リンゴから得られた。これにより、P.アシディラクティシNRRL B-50517は、種々の前処理が施された食品で、凍結乾燥工程を生き延びることが可能なことを示している。
【0041】
【表4】
【0042】
-煮沸リンゴ-リンゴの薄片を90℃に加熱した生理食塩水に30秒~1分間移し、リンゴの薄片を取り出して室温まで冷却し、その後に上述の5051プロバイオティクス溶液で被覆した。
-冷凍リンゴ-リンゴの薄片を10%のショ糖溶液に移して均一に混合し、-20℃の冷凍庫に移して一晩~1週間かけてリンゴを凍結し、凍結リンゴの薄片を取り出して、その後に上述の5051プロバイオティクス溶液で被覆した。
-煮沸・冷凍リンゴ-リンゴの薄片を90℃に加熱した生理食塩水に30秒~1分間移し、リンゴの薄片を取り出して室温まで冷却した。このリンゴの薄片を10%のショ糖溶液に移して均一に混合し、-20℃の冷凍庫に移して一晩~1週間かけてリンゴを冷凍し、煮沸・冷凍リンゴの薄片を取り出して、その後に上述の5051プロバイオティクス溶液で被覆した。
:0.2g~0.4gのペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥リンゴを秤量し、そのリンゴ薄片を5mLの生理食塩水中に移してよく攪拌した。一連の希釈を実行し、100μLの所望の希釈溶液をMRS皿に播種して、培養器で一晩培養した後にコロニー数を計測した。
【0043】
実施例5:被覆剤としての粉末と溶液の比較
【0044】
粉体被覆と溶液被覆の間に有意差があるか否かを判断するために、複数の食品を基体として用いる直接比較を実施した。この実験を実施する動機の一つは、工業的な生産工程の中には、食品に粉末を直接に噴霧又は被覆するのを選ぶものもあるということにある。この実験では、ペディオコッカス溶液又はプロバイオティクス粉末のいずれかをブルーベリー、イチゴの薄片、インゲンマメの薄片、及びサツマイモの薄片に直接塗布した後に凍結乾燥して、P.アシディラクティシNRRL B-50517の生存率を調べた。次に凍結乾燥製品からCFUを測定した。
【0045】
結果を表5にまとめる。この結果は、ペディオコッカスプロバイオティクス粉末を直接用いて調製した凍結乾燥製品中に、多量のペディオコッカス属細菌が生存していることを示している。
【0046】
【表5】
【0047】
:ブルーベリー、イチゴの薄片、インゲンマメの薄片、及び調理済みのサツマイモの薄片を、上述の5051粉末を有する容器中に入れた。ペディオコッカス属を被覆したブルーベリー、イチゴ、インゲマメ、サツマイモを、硫酸紙で覆われた別々のトレイに置いて凍結乾燥した。
:ブルーベリーの断片、イチゴの薄片、インゲンマメの薄片、及び調理済みのサツマイモの薄片を、上述の5051溶液中に移した。ペディオコッカス属を被覆したブルーベリー、イチゴ薄片、インゲンマメ薄片、調理済みのサツマイモ薄片を、硫酸紙で覆われた別々のトレイに置いて凍結乾燥した。
【0048】
実施例6:プロバイオティクス発酵培養液の被覆食品への使用
【0049】
室温で様々な時間に亘って貯蔵された発酵培養液が5051溶液又は5051粉末に代わるプロバイオティクス被覆の供給源として機能できるかを判断するために、追加の実験を実施した。結果を表6にまとめる。
【0050】
培養液から直接プロバイオティクスの細菌を調製し、凍結乾燥の前に食品に塗布することにより、プロバイオティクス被覆凍結乾燥製品を調製する効率を高め、かつ/あるいはコストを低減できる。
【0051】
この可能性を調べるために、P.アシディラクティシNRRL B-50517の新たな培養液を発酵槽中で調製し、プロバイオティクスを採取して、凍結防御溶液内に再懸濁した。これらのプロバイオティクス溶液をガラリンゴ薄片及びフジリンゴ薄片に塗布した後に凍結乾燥した。本発明者らは、これらのプロバイオティクスを塗布したフジリンゴ及びガラリンゴから生存プロバイオティクスを検出することに成功した。
【0052】
表6にまとめた結果は、室温64日間の貯蔵後もP.アシディラクティシNRRL B-50517の生存能力が殆ど低下しなかったことを示している。このことは、新たに調製したペディオコッカスプロバイオティクスがプロバイオティクス凍結乾燥製品を調製する材料に塗布でき、これらのプロバイオティクス凍結乾燥製品が室温貯蔵に安定であることを示している。
【0053】
【表6】
【0054】
:リンゴを1/4インチの薄片に切り、次にそれらを半分に切断した。リンゴの薄片を、発酵槽から採取された新たに調製したペディオコッカス・アシディラクティシNRRL B-50517中に移した。発酵槽から採取されたP.アシディラクティシNRRL B-50517培養液は以下のように調製された。10mLずつのMRS培養液に分けた10個のウェルを50mLのファルコン管の中に移して45℃で一晩培養し、10mLの一晩の細菌培養液を2Lの発酵槽に移して、100rpmかつ45℃で一晩培養し、遠心分離により一晩の細菌培養液を採取し、7%のショ糖及び7.5%レシチンの150mL溶液を添加して、細菌培養液を均一に再懸濁した。リンゴ薄片をペディオコッカス発酵培養液と混合した後に、リンゴの薄片をトレイに均等に置いて完全に凍結乾燥させた。
**:室温に所望の時間で貯蔵した0.2g~0.4gのペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥リンゴを秤量し、このリンゴ薄片を5mLの生理食塩水中に移してよく混合した。一連の希釈を実行して、100μLの所望の希釈溶液をMRS皿に播種し、培養器で一晩培養してコロニー数を計測した。
【0055】
実施例7:ヨーグルトによる被覆
【0056】
プロバイオティクスの最も一般的な用途は、牛乳からのヨーグルトの調製である。P.アシディラクティシNRRL B-50517の単一培養液を用いてヨーグルトを作製できる。従来のヨーグルトの開始培養液、すなわちヨーグルトの生成後に死滅するストレプトコッカス・サーモフィルス及びラクトバチルス・デルブリュッキイ亜種ブルガリクスとは異なり、P.アシディラクティシNRRL B-50517は、ヨーグルトの生成後も冷蔵庫で数ヶ月生存し続ける。この推奨されるヨーグルトを、凍結乾燥前に食品に塗布するペディオコッカスプロバイオティクスの供給源としてもよい。この提案を検証するために、ヨーグルトをP.アシディラクティシNRRL B-50517を用いて調製し、リンゴの薄片に直接塗布した後に、凍結乾燥によりペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥リンゴを作製した。
【0057】
表7に示される結果は、ペディオコッカス属のヨーグルトで処理された凍結乾燥リンゴ中の生存P.アシディラクティシNRRL B-50517を示している。これらの結果は、凍結乾燥食品にペディオコッカスプロバイオティクスを導入する別の方法を示唆し、かつ/あるいはその他の食品に乳製品を導入する手法を提供する。
【0058】
【表7】
【0059】
:リンゴを1/4の薄片に切り、次にそれらを半分に切断した。P.アシディラクティシNRRL B-50517により調製したヨーグルト中にリンゴの薄片を移し、リンゴの薄片をペディオコッカスヨーグルトと均一に混合し、硫酸紙で覆われた凍結乾燥トレイにペディオコッカスヨーグルトを被覆したリンゴを移して凍結乾燥した。
ペディオコッカスヨーグルトの調製:
**:0.2g~0.4gのペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥リンゴを秤量し、このリンゴ薄片を5mLの生理食塩水中に移してよく混合した。一連の希釈を実行して、100μLの所望の希釈溶液をMRS皿に播種し、培養器で一晩培養してコロニー数を計測した。
【0060】
実施例8:凍結乾燥基体の被覆及び再凍結乾燥
【0061】
凍結乾燥した基体を5051溶液で被覆し再び凍結乾燥する可能性を調べるために、リンゴを用いて実験した。表8にまとめた結果は、凍結乾燥の結果として、生存細菌数が100分の1に減少したことを示している。
【0062】
【表8】
【0063】
:リンゴを1/4インチの薄片に切り、次にそれらを半分に切断した。硫酸紙で覆われた凍結乾燥トレイの上にリンゴの薄片を移し、凍結乾燥してトレイを取り外し、かつ凍結乾燥したリンゴにペディオコッカス5051プロバイオティクス溶液を噴霧して再び凍結乾燥した。
**:0.2g~0.4gのペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥リンゴを秤量し、このリンゴ薄片を5mLの生理食塩水中に移してよく混合した。一連の希釈を実行して、100μLの所望の希釈溶液をMRS皿に播種し、培養器で一晩培養してコロニー数を計測した。
【0064】
実施例9:プロバイオティクス凍結乾燥食肉製品の熱処理
【0065】
P.アシディラクティシNRRL B-50517は、(85℃までの)高温、高浸透応力(以下の実施例11)、及び低pH処理(以下の実施例10)の後でも生存できることが分かっている。それはまた、抗生物質処理(以下の実施例12)に対してもより高い耐性がある。
【0066】
凍結乾燥後にP.アシディラクティシNRRL B-50517が所望の品質を維持できるかを判断するために、一連の実験を行った。
【0067】
ペディオコッカス属を被覆し凍結乾燥した牛肉及びペディオコッカスプロバイオティクスを被覆し凍結乾燥した鶏レバーの両方を65℃の培養器で30分間培養した後に、ペディオコッカスプロバイオティクス牛肉及びペディオコッカスプロバイオティクス鶏レバーの両方から、生存P.アシディラクティシNRRL B-50517を検出する。さらに、これらのペディオコッカスプロバイオティクスを65℃で30分間の培養に続いて85℃で10分間及び30分間で処理した後に、室温のみで貯蔵したこれらプロバイオティクスとの対比で、20~30%のP.アシディラクティシNRRL B-50517の生存率が検出された(表9)。表9にまとめた結果は、P.アシディラクティシNRRL B-50517が、凍結乾燥工程中も生存できるだけでなく高温耐性の独自の特性をも維持することを示している。
【0068】
【表9】
【0069】
:ペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥牛肉又はペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥鶏レバーを、高温(elevated temperature)で、すなわち、65℃で30分間で、又は65℃で30分間かつその後に85℃でさらに10分間あるいは85℃でさらに30分間で、培養し、その後に表7に説明するプロバイオティクスの検出を実施した。対照として、高温処理は行わずに、室温のペディオコッカス凍結乾燥牛肉又はペディオコッカス凍結乾燥鶏レバーを採取して、プロバイオティクスを直接検出した。
【0070】
実施例10:低pH処理
【0071】
プロバイオティクス凍結乾燥製品が胃酸に対して生き延びることを実証するために、5051プロバイオティクスの凍結乾燥リンゴをpH7.0、5.0、3.0、及び2.0に調整された水中に入れて、室温で30分~3時間培養した。表10にまとめた結果は、5051の凍結乾燥したリンゴをpH3.0で1.5時間まで培養した場合に、検出可能な生存細菌が存在しないことを示している。ただし、室温でpH2.0の30分間の培養ではプロバイオティクスの生存率は約1.0%であったが、pH2.0の最大3時間の培養ではさらなる低下は検出されなかった(実施例10)。これらの結果は、ペディオコッカス・アシディラクティシNRRL B-50517を凍結乾燥工程により食品中に取り込むことができ、なおかつ胃の酸性環境に対する耐性を維持できることを示している。
【0072】
【表10】
【0073】
:0.2g~0.4gのペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥リンゴを秤量し、このリンゴ薄片をHClにより所望のpHに調整した15mLのファルコン管中の5mLの滅菌水内に移してよく混合し、室温で30分間、1.5時間、及び3時間培養した。培養後に、ファルコン管から100μLの溶液を移し、一連の希釈を実行して、100μLの所望の希釈溶液をMRS皿に播種し、培養器で一晩培養してコロニー数を計測した。これら数値は2回の繰返し実験の平均であった。
【0074】
実施例11:浸透応力
【0075】
哺乳動物の消化器系は、プロバイオティクスの細菌がGI管の関連部分に到達して有益な効果を発揮する能力を阻害する可能性がある胆汁酸塩及び胃酸を含有している。5051の凍結乾燥製品が高塩分での処理に耐性があるかを確認するために、5051の凍結乾燥リンゴを、0.1%(生理食塩水)、1.0%、5.0%、10.0%、及び20.0%の塩化ナトリウム濃度を有する水中で、30分、1時間、2時間、一晩に亘って室温で培養した。表11にまとめた結果は、室温で2時間までの培養では、0.1%~20%のNaCl溶液からのP.アシディラクティシNRRL B-50517での検出可能な生存率に差異がないことを示している。20%のNaCl溶液で一晩培養した後でも、22%を超える生存率が観察されている。したがって、P.アシディラクティシNRRL B-50517凍結乾燥製品は、高塩分処理に対するペディオコッカスプロバイオティクスの高い耐性を維持している。
【0076】
【表11】
【0077】
:0.2g~0.4gのペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥リンゴを秤量し、このリンゴ薄片を5mLの(0.1%、1.0%、5.0%、10.0%、及び20.0%の)異なる塩濃度に調整した溶液中に移してよく混合し、室温で30分、1.5時間、及び3時間培養した。培養後に、ファルコン管からの100μLの溶液を移して一連の希釈を実行し、100μLの所望の希釈溶液をMRS皿に播種し、培養器で一晩培養してコロニー数を計測した。これら数値は2回の繰返し実験の平均であった。
【0078】
実施例12:抗生物質との両立性
【0079】
抗生物質は、感染症の予防と治療のために頻繁に処方される。特に抗生物質を長期間服用する必要がある患者では、抗生物質の副作用が報告されることが多い。プロバイオティクスは、特に消化器疾患に関連する抗生物質の副作用を軽減すると報告されている。ペディオコッカス・アシディラクティシは、抗生物質の殺菌効果に対してより耐性があり、抗生物質治療の補助剤として推奨されている。
【0080】
凍結乾燥がこの抗生物質との両立性を妨害するかを判断するために、ペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥製品を、10μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、及び500μg/mLのアモキシシリンに曝露し、45℃で4時間培養してペディオコッカス・アシディラクティシNRRL B-50517の生存率を確認した。全ての抗生物質処理では、500μg/mLという高濃度のアモキシシリン処理でも、1mLのMRS培養液中に7億を超えるペディオコッカス・アシディラクティシNNRL B-50517が生存したことが、表12にまとめられた結果に示されている。この結果は、ペディオコッカス凍結乾燥製品が、ペディオコッカス・アシディラクティシNRRL B-50517の発酵粉末製品の代替物として、抗生物質処理と併用可能であることを示唆している。比較として、大腸菌の500μg/mLのアモキシシリンでの生存率は0%であった(データは示さず)。
【0081】
【表12】
【0082】
:0.2g~0.4gのペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥リンゴを秤量し、このリンゴ薄片を0μg/mL、10μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、500μg/mLのアモキシシリンを有する5mLのMRS培養液中に移し、45℃で4時間培養してP.アシディラクティシNRRL B-50517の生存率の検出を実施した。培養後に、ファルコン管から100μLの溶液を移して一連の希釈を実行し、100μLの所望の希釈溶液をMRS皿に播種し、培養器で一晩培養してコロニー数を計測した。これら数値は2回の繰返し実験の平均であった。
【0083】
プロバイオティクス凍結乾燥製品を高温、低pH、高塩濃度、及び抗生物質に曝露した後でも、処理済みの凍結乾燥プロバイオティクスから妥当な量の生存プロバイオティクスを検出することができる。これらの結果から、プロバイオティクス凍結乾燥製品をヒト及び動物へのプロバイオティクスの従来と異なる送達手段にできることが分かる。
【0084】
実施例13:凍結乾燥リンゴ
【0085】
凍結乾燥細菌の送達用基体として機能する種々の市販リンゴ株の適合性を判断するために、比較試験を実施した。表13にまとめた結果は、レッド・デリシャス、フジ、ガラの各リンゴに有意差が無いことを示している。
【0086】
【表13】
【0087】
:リンゴを1/4の薄片に切り、次にそれらを半分に切断した。リンゴの薄片をペディオコッカス・アシディラクティシNRRL B-50517溶液(20gの凍結乾燥粉末のペディオコッカス発酵プロバイオティクス:カタログ番号PA-5051FD、Imagilin Technology, LLCを水80mLと混合した溶液)に移し、リンゴ薄片とプロバイオティクス溶液を45秒~1分間混合し、硫酸紙で覆われた凍結乾燥トレイにペディオコッカス菌で被覆されたリンゴを移して凍結乾燥した。
**:0.2g~0.4gのペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥リンゴを秤量し、リンゴ薄片を5mLの生理食塩水に移してよく混合した。一連の希釈を実行して、100μLの所望の希釈溶液をMRS皿に播種し、培養器で一晩培養してコロニー数を計測した。
【0088】
実施例14:凍結乾燥リンゴの熱処理
【0089】
食品表面に凍結乾燥させたプロバイオティクス細菌への高温処理の影響を判断するために、異なる温度条件での実験を実施した。表14にまとめた結果は、65℃で30分間に続いて85℃で30分間の処理後のP.アシディラクティシNNRL B-50517の生存率が約73%であったことを示している。
【0090】
【表14】
【0091】
:ペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥リンゴを、高温(elevated temperature)で、すなわち65℃で30分間で、又は65℃30分間に続いて85℃でさらに10分間あるいは85℃でさらに30分間で、培養して、その後に表1の説明のようにプロバイオティクスを検出した。
【0092】
対照として、ペディオコッカス凍結乾燥リンゴの薄片を高温処理せずに室温で採取し、プロバイオティクスを直接検出した。
【0093】
実施例15:凍結乾燥サツマイモの熱処理
【0094】
実施例14の結果を追認するために、サツマイモを基体に用いて追加の実験を行った。表15にまとめた結果は、65℃で30分間に続いて85℃で30分間の処理後のP.アシディラクティシNNRL B-50517の生存率が約61%であったことを示している。
【0095】
【表15】
【0096】
:ペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥サツマイモを、高温で、すなわち65℃で30分間、又は65℃で30分間に続いて85℃でさらに10分間あるいは続いて85℃でさらに30分間培養して、その後に表1の説明のようにプロバイオティクスを検出した。対照として、ペディオコッカス凍結乾燥リンゴの薄片を高温で処理せずに室温で採取し、プロバイオティクスを直接検出した。
【0097】
実施例16:40℃に貯蔵された凍結乾燥リンゴ
【0098】
食品表面に凍結乾燥されたプロバイオティクス細菌への40℃の貯蔵温度の影響を判断するために、基体にリンゴを用いて実験を実施した。表16にまとめた結果は、P.アシディラクティシNNRL B-50517が最長12日間まで40℃に曝露しても悪影響が無いことを示している。
【0099】
【表16】
【0100】
:ペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥リンゴを40℃の高温培養器で培養した。4日間、7日間、及び12日間の培養後に、高温処理されたペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥リンゴを取り出し、表1に記載のプロバイオティクスの検出を実施した。対照として、ペディオコッカス凍結乾燥リンゴの薄片を高温で処理せずに室温で採取し、プロバイオティクスを直接検出した。
【0101】
実施例17:65℃に貯蔵された凍結乾燥リンゴ
【0102】
食品表面に凍結乾燥されたプロバイオティクス細菌への65℃の貯蔵温度の影響を判断するために、基体にリンゴを用いて実験を実施した。表17にまとめた結果は、P.アシディラクティシNNRL B-50517の7~12日後の生存率が1%~2%であることを示している。
【0103】
【表17】
【0104】
:ペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥リンゴを高温65℃の培養器で培養した。4日間、7日間、12日間の培養後に、高温処理されたペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥リンゴを取り出し、表1に記載のプロバイオティクスの検出測定を実施した。対照として、ペディオコッカス凍結乾燥リンゴの薄片を高温で処理せずに室温で採取し、プロバイオティクスを直接検出した。
【0105】
実施例18:種々の基体での細菌の生存率
【0106】
凍結乾燥細菌を送達する基体として機能する様々な種類の果物及び野菜の適合性を判断するために、比較試験を実施した。表18にまとめた結果は、ブルーベリー、イチゴ、インゲンマメ、及びサツマイモの全てが、凍結乾燥プロバイオティクス細菌の送達に適する基体であることを示している。
【0107】
【表18】
【0108】
:0.2g~0.4gのペディオコッカスプロバイオティクス凍結乾燥のブルーベリー、グリーンベリー、イチゴ、又はサツマイモを秤量し、リンゴの断片を5mLの生理食塩水中に移してよく混合した。一連の希釈を実行して、100μLの所望の希釈溶液をMRS皿に播種し、培養器で一晩培養してコロニー数を計測した。
【0109】
当然のことながら、本明細書とともに提供される請求項は、本発明の全てを網羅する主張にはなっておらず、さらなる請求項を追加することもできる。
・〔1〕(a)凍結乾燥食品の断片、及び(b)前記断片に固着する凍結乾燥プロバイオティクス細菌を含む被覆層を含む組成物。
・〔2〕前記プロバイオティクス細菌は、ペディオコッカス属又はラクトバチルス属細菌である、前記〔1〕に記載の組成物。
・〔3〕前記食品は、果物、野菜、食肉、ナッツ、及び乳製品からなる群から選択される少なくとも1種の品目である、前記〔1〕に記載の組成物。
・〔4〕さらに防腐剤を含む、前記〔1〕に記載の組成物。
・〔5〕前記〔1〕に記載の組成物の投与により、哺乳動物にプロバイオティクス微生物を提供する方法。
・〔6〕酸化防止剤を含む、前記〔1〕に記載の組成物。
・〔7〕前記組成物の1g当たりに少なくとも1×105CFUの細菌を含む、前記〔1〕に記載の組成物。
・〔8〕前記〔1〕に記載の組成物を製造する方法であって、
(1)食品の表面また内部にプロバイオティクスを塗布されるあるいは混合する工程、次に(2)工程(1)の生成物を凍結乾燥する工程を含む、方法。
・〔9〕工程(1)において、前記プロバイオティクス微生物を、プロバイオティクス含有粉末又はプロバイオティクス含有溶液中で塗布する、前記〔8〕に記載の方法。
・〔10〕前記食品は乾燥した野菜、食肉、果実、又はナッツであり、前記凍結乾燥されたプロバイオティクス微生物を含む前記組成物は、粉末又は前記食品に、塗布される溶液である、前記〔8〕に記載の方法。
・〔11〕前記食品は乳製品であり、プロバイオティクス微生物を含む前記組成物は前記乳製品中に混合される、前記〔8〕に記載の方法。
・〔12〕工程(2)の生成物を次に凍結乾燥する、前記〔8〕に記載の方法。
・〔13〕前記食品は、工程(1)の前に、前記プロバイオティクス微生物の塗布に先立って、塩漬け、加熱、及び酢漬けから選択される少なくとも1つの処理に供されている、前記〔10〕に記載の方法。
・〔14〕前記細菌はペディオコッカス属細菌である、前記〔1〕に記載の組成物。
・〔15〕最終製品は凍結乾燥されている、前記〔1〕に記載の組成物。
・〔16〕(1)果物、野菜、食肉、又はナッツから選択された少なくとも1つの食品をプロバイオティクスと混合する工程、及び(2)次に工程(1)の生成物を凍結乾燥する工程により製造された製品。
・〔17〕工程(1)の前記食品は、新鮮な果物、新鮮な野菜、又はナッツである、前記〔16〕に記載の製品。
・〔18〕工程(1)において、前記食品は、調理あるいは塩漬け処理された、有害な微生物を死滅させた食肉製品である、前記〔16〕に記載の製品。
図1
図2