(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】混合キシレンを分離する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 7/12 20060101AFI20240531BHJP
C07C 15/08 20060101ALI20240531BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20240531BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20240531BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20240531BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20240531BHJP
C07C 50/28 20060101ALN20240531BHJP
【FI】
C07C7/12
C07C15/08
B01D15/00 101A
B01D53/04
B01J20/22 A
B01J20/22 C
B01J20/34 H
C07C50/28
(21)【出願番号】P 2022573776
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(86)【国際出願番号】 CN2021075102
(87)【国際公開番号】W WO2022165677
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鮑宗必
(72)【発明者】
【氏名】李良英
(72)【発明者】
【氏名】任其竜
(72)【発明者】
【氏名】郭立東
(72)【発明者】
【氏名】楊啓▲うぇい▼
(72)【発明者】
【氏名】張治国
(72)【発明者】
【氏名】楊亦文
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/048378(WO,A1)
【文献】特開2017-014146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0159713(US,A1)
【文献】Chemistry - A European Journal,2020年,26,P.4209-4213
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 7/
C07C 15/
B01D 15/
B01D 53/
B01J 20/
C07C 50/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合キシレンを分離する方法であって、混合キシレンを金属有機フレーム材料を含む吸着剤で吸着分離することにより、キシレン異性体を分離することを含み、
前記金属有機フレーム材料は金属イオン及び有機配位子を含み、前記有機配位子は2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノンを含
み、
前記金属イオンは、亜鉛イオン、マンガンイオン、コバルトイオン、及びマグネシウムイオンから選択される一種又は複数種を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記混合キシレンは気体又は液体であり、エチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン及びp-キシレンのうちの二種又は複数種を含み、前記キシレン異性体はo-キシレン、m-キシレン及びp-キシレンのうちの一種又は複数種から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属有機フレーム材料の孔径は4Å以上であり
、前記金属有機フレーム材料の比表面積は300-2000m
2/gであることを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属有機フレーム材料の孔径は4-15Åであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属有機フレーム材料の孔径は4-10Åであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記吸着分離の温度は-5℃乃至300℃で
あることを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記吸着分離の温度は25℃乃至250℃であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記吸着分離の温度は30℃乃至150℃であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記吸着分離の圧力は0.01MPa-10MPaで
あることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記吸着分離の圧力は0.1MPa-6MPaであることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記吸着分離は固定床を用いて行われ、ここで、前記吸着剤は前記固定床の吸着カラムに充填さ
れることを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記吸着分離は、下記ステップを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
(1)混合キシレンとキャリアガスで形成された混合キシレン蒸気を固定床の吸着カラムに通過させ、混合キシレン中の強吸着のキシレン異性体を前記吸着剤に吸着させ、混合キシレン中の弱吸着のキシレン異性体が前記吸着カラムを透過し、弱吸着のキシレン異性体が得られるステップ
(2)強吸着のキシレン異性体を吸着剤から脱着させ、強吸着のキシレン異性体が得られるステップ
【請求項13】
前記吸着分離は模擬移動床を用いて行われ、ここで、前記吸着剤は模擬移動床の吸着領域床層に充填さ
れることを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記吸着分離は、下記ステップを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
(3)混合キシレン液体を液相模擬移動床により吸着分離し、それによりp-キシレン、o-キシレン及び/又はm-キシレンをそれぞれ異なる床層で抽出するステップ
【請求項15】
前記混合キシレン蒸気が固定床の吸着カラムを通過する流速は40-200mL/min/g吸着剤であり、前記模擬移動床の吸着剤床層は4-32個であり、吸着領域床層/脱着領域床層は1.0~1.5であることを特徴とする請求項
12又は
14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、さらに、吸着分離が完了した後、前記吸着剤を再生することを含
むことを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記再生は真空又は不活性雰囲気条件下で吸着剤を50~300℃に加熱し、20~120時間保持することを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合キシレンを分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
混合キシレンの各異性体は、p-キシレン(PX)、o-キシレン(OX)及びm-キシレン(MX)を含み、いずれも非常に重要な工業合成原料物質である。例えば、p-キシレン(PX)は重要な有機化学工業原料であり、主にテレフタル酸(PTA)又はテレフタル酸ジメチル(DMT)を合成し、さらにポリエチレンテレフタレート(PET)を製造することに用いられ、該ポリエステルは性能に優れ、繊維、フィルム及び樹脂の製造に広く用いられ、非常に重要な合成繊維及びプラスチックの原料である。o-キシレン(OX)は主にo-ジ安息香酸無水物(PA)、染料、殺虫剤等の化学工業原料を製造することに用いられ、その誘導体のオルトフタルアルデヒトはフタル酸エステル可塑剤を製造することに用いることができる。m-キシレン(MX)は主に医薬、香料及び染料中間体原料及びカラー映画油溶性発色剤に用いられる。純粋な成分のキシレンは各化学工業、医薬の分野に広く応用されているが、混合キシレン(p-キシレン、m-キシレン、o-キシレン)における各成分の密度が近く、沸点の差異が極めて小さく(p-キシレンの沸点が138.5℃であり、o-キシレンが144.4℃であり、m-キシレンが139.2℃である)、及び分子動力学的サイズが近く(p-キシレンの分子動力学的サイズが5.8Åであり、o-キシレンが6.8Åであり、m-キシレンが6.8Åである)、混合キシレン系を分離して単一成分のキシレンを得ることは極めて困難であり、依然として早急に解決すべき課題である。
【0003】
現段階では、工業的に混合キシレンを効果的に分離する方法が少なく、主に精密精留法、常圧低温結晶化法、極低温結晶化法及び加圧結晶化法、錯形成法及び吸着分離法がある。精密精留法は複数の塔を用いて連続精留操作を行うものであるが、該プロセスに必要な設備が高価であり、操作が複雑であり、かつm-キシレンとp-キシレンを完全に分離することができず、また精留過程において巨大なエネルギー消費及び中小規模設備への優しくなさによってその普及及び運用が制限されている。常圧低温結晶化法は主に常圧で、混合物における各異性体の凝固点及び溶解度の差異に基づいて、異なる温度区間で対応して析出させるものである。しかし、混合キシレンは多元液相混合系であり、各異性体の固-液相図が重なって交差し、単一の温度で純粋な成分のキシレンを取得しにくい。極低温結晶化法又は加圧結晶化法も各異性体の物理的性質及び化学的性質の差異に基づくものであり、そのうち最も主にそれぞれの凝固点の異なりに基づいて、異なる相変化に基づいてキシレン混合物を加圧又は降温分離する。この方式の分離の周期が短く、プロセス全体のエネルギー消費が低く、操作しやすいが、必要な高圧及び極低温条件は装置及び操作に対する要求が高く、実際の製造において好ましくない。錯抽出法は、炭化水素類の塩基性と錯抽出剤の酸性とにより酸塩基錯体を形成して分離する方法である。錯化剤は一般的にHF-BF3を採用しており、キシレン中の3種類の異性体の相対的塩基度が明らかに異なり、例えば、p-キシレンを1とすると、o-キシレンが2、m-キシレンが100となるため、相対的塩基度が異なることを利用して混合キシレンから純粋な成分のキシレンを分離することができる。しかし、錯化剤はこの過程で錯抽出剤として作用するだけでなく、液相異性化反応の触媒でもあり、この過程は操作が複雑でかつ錯化剤回収のためのエネルギー消費が大きい。
【0004】
したがって、現在依然としてより経済的で省エネルギーの分離手段でp-キシレン、o-キシレン及びm-キシレンを分離精製する必要がある。対照的に、吸着分離法は操作しやすく、エネルギー消費が小さく、コストが低いなどの特徴を有するが、キシレンの吸着分離の最も重要なことは有意な吸着量及び高い吸着選択性を有する吸着剤を選択することである。一般的な吸着剤は活性炭、粘土、分子篩、シリカゲルなどを含む。しかし、このような材料の内部孔構造が均一で孔路化学環境を修飾しにくいため、吸着容量及び分離選択性が工業応用レベルに達することができない。
【発明の概要】
【0005】
本願の発明者らは、多くの研究により、特定の金属有機フレーム材料を採用してキシレン異性体(o-キシレン、m-キシレン及びp-キシレン)に対して高い吸着選択性を有するため、混合キシレンから純粋な異性体成分を効果的に分離することができることを発見した。この発見に基づいて、本願を提出する。
【0006】
したがって、本発明は、混合キシレンを分離するための方法であって、混合キシレンを金属有機フレーム材料を含む吸着剤で吸着分離することにより、キシレン異性体のうちの一種又は複数種を分離することを含み、ここで、前記金属有機フレーム材料中の有機配位子は2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノンである、方法を提供する。
【0007】
本発明において、「混合キシレン」という用語は、二種類又は三種類のキシレン異性体を含む混合物を意味する。キシレン異性体以外、「混合キシレン」は、さらに、エチルベンゼン、スチレン、トルエン、ベンゼンなどの他の成分を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、前記混合キシレンは80%以上のキシレン異性体を含む。いくつかの実施形態によれば、前記混合キシレンは90%以上のキシレン異性体を含む。いくつかの実施形態によれば、前記混合キシレンは95%以上のキシレン異性体を含む。
【0008】
本発明において、「キシレン異性体」という用語は、o-キシレン、m-キシレン及びp-キシレンを意味する。
【0009】
いくつかの実施例によれば、前記混合キシレンはp-キシレンを含み、その含有量は5-95%であってもよい。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記混合キシレンにおいて、p-キシレンが占める体積は5%~95%である。好ましくは、前記キシレンの混合蒸気体又は混合液体にp-キシレンが占める体積比は10%~85%である。いくつかの実施例によれば、前記混合キシレンにおいて、p-キシレンが占める体積は5%、15%、25%、35%、50%、60%、70%、80%又は90%である。
【0010】
いくつかの実施例によれば、前記混合キシレンはp-キシレン及びo-キシレンを含む。いくつかの実施例によれば、前記混合キシレンはp-キシレン及びm-キシレンを含む。いくつかの実施例によれば、前記混合キシレンはp-キシレン、m-キシレン及びo-キシレンを含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記混合キシレンはo-キシレン及びp-キシレンを含む。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記金属有機フレーム材料中の金属イオンは遷移金属イオン及びアルカリ土類金属イオンから選択される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記金属有機フレーム材料中の金属イオンは遷移金属イオン及びアルカリ土類金属イオンから選択される。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記金属イオンは、亜鉛イオン、マンガンイオン、コバルトイオン、マグネシウムイオン、バナジウムイオン、ジルコニウムイオン、カルシウムイオン、モリブデンイオン、クロムイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、銅イオン、スズイオン、ニオブイオン、チタンイオン及びスカンジウムイオンから選択される一種又は複数種を含む。
【0014】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、前記金属イオンは、亜鉛イオン、コバルトイオン、マグネシウムイオン及びマンガンイオンから選択される一種又は複数種を含む。
【0015】
本発明のいくつかのより好ましい実施形態によれば、前記金属イオンはマンガンイオンを含む。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記金属有機フレーム材料の孔径は4Å以上であり、好ましくは4-15Åである。より好ましくは、前記金属有機フレーム材料の孔径は4-10Åである。
【0017】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、前記金属有機フレーム材料の比表面積は300-2000m2/gであり、例えば300-1000m2/gである。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記吸着分離の温度は-5℃乃至300℃であり、好ましくは25℃乃至250℃であり、さらに好ましくは30℃乃至150℃である。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記吸着分離の圧力は0.01MPa-10MPaであり、好ましくは0.1MPa-6MPaである。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記吸着分離は固定床を用いて行われ、ここで、前記吸着剤は前記固定床の吸着カラムに充填され、具体的には、以下のステップを含むことができる。(1)混合キシレンとキャリアガスで形成された混合キシレン蒸気を固定床の吸着カラムに通過させ、混合キシレン中の強吸着のキシレン異性体を前記吸着剤に吸着させ、混合キシレン中の弱吸着のキシレン異性体が前記吸着カラムを透過し、弱吸着のキシレン異性体が得られること、(2)強吸着のキシレン異性体を吸着剤から脱着させ、強吸着のキシレン異性体が得られること。いくつかの実施例によれば、ステップ(1)において、強吸着のキシレン異性体はp-キシレンであり、弱吸着のキシレン異性体はo-キシレン及び/又はm-キシレンである。本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、前記混合キシレン蒸気が固定床の吸着カラムを通過する流速は40-200mL/min/g吸着剤である。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記吸着分離は模擬移動床を用いて行われ、ここで、前記吸着剤は模擬移動床の吸着領域床層に充填され、好ましくは以下のステップを含む。
【0022】
(3)混合キシレン液体を液相模擬移動床により吸着分離し、それによりp-キシレン、o-キシレン及び/又はm-キシレンをそれぞれ異なる床層で抽出する。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記模擬移動床の吸着剤床層は4-32個であり、吸着領域床層/脱着領域床層は1.0~1.5である。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記吸着分離において、吸着剤及び混合キシレンは-5~300℃にあり、好ましくは25-250℃であり、さらに好ましくは30-150℃の温度である。いくつかの実施例によれば、吸着剤及び混合キシレンは30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、110℃又は120℃にある。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、混合キシレンは混合キシレン蒸気又は液体の形式で吸着分離される。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記吸着分離において、吸着剤及び混合キシレン蒸気は100-1200kPaにあり、好ましくは100-1000kPaの圧力である。いくつかの実施例によれば、吸着剤及び混合キシレン蒸気は100-600kPaの圧力にある。いくつかの実施例によれば、吸着剤及び混合キシレン液体は1.1-2.5MPaにある。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記混合キシレン蒸気は混合キシレン及びキャリアで構成される。いくつかの実施例によれば、前記キャリアガスは窒素ガス及び/又はヘリウムガスである。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記吸着剤と前記混合キシレンとの重量比は1-20であり、好ましくは1-10であり、より好ましくは1-5である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記金属有機フレーム材料の形状は立方体、針状又は棒状である。本発明に使用される金属有機フレーム材料は異なる加工プロセスにより球形、柱状、粒子等の吸着分離材料に製造することができる。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記吸着分離は混合キシレン蒸気又は液体の全圧を変更するか又は吸着剤の吸着温度を変更するか、又は両者を同時に変更する条件で行われる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記吸着分離において、前記吸着剤を30℃乃至60℃未満の温度にする。発明者らは、吸着剤の作動温度が<60℃の場合、o-キシレンが飽和蒸気圧<900Paの場合、o-キシレンと吸着剤との間の相互作用力が非常に弱く、吸着剤から迅速に脱着し、これにより純粋なo-キシレン製品が得られ、この条件でm-キシレン及びp-キシレンと吸着剤との相互作用が強く、一定の時間で保留した後に吸着剤から脱着することを発見した。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記吸着分離において、前記吸着剤を60℃乃至110℃未満にする。発明者らは、吸着剤の作動温度が110℃>T>60℃の場合、この条件でm-キシレンと吸着剤との相互作用力はo-キシレンより強く、吸着剤での保持時間が相対的に長く流出して純粋な成分のm-キシレン製品を取得するのに対して、p-キシレンと吸着剤との相互作用力が相対的に最も強く、吸着が飽和に達した後に最後に吸着剤からゆっくりと脱着するため、純粋な成分のp-キシレンが得られることを発見した。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記吸着分離において、前記吸着剤を110℃-200℃にし、好ましくは110-150℃に昇温してp-キシレンを分離する。発明者らは、吸着剤の作動温度が>110℃の場合、o-キシレン及びm-キシレンと吸着剤との間の作用力が弱く、吸着剤での保持時間が短くて迅速に析出し、p-キシレンは吸着剤と依然として強い相互作用が存在し、それにより保持時間が異なり単一の製品が得られることを発見した。
【0032】
本発明の吸着分離過程は簡単であり、一定の圧力での混合蒸気又は混合液体を、該吸着剤が充填された吸着塔又は吸着カラムを通過させればよく、さらに、吸着塔は一つ又は複数で構成されてもよく、従来の圧力スイング吸着又は真空圧力スイング吸着又は温度スイング吸着を採用して分離を実現する。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記方法は、さらに、吸着分離が完了した後、前記吸着剤を再生することを含み、好ましくは、前記再生は真空又は不活性雰囲気条件下で吸着剤を50~300℃に加熱し、20~120時間保持することを含む。温度が高すぎる、又は時間が長すぎると吸着剤構造の破壊を引き起こし、温度が低すぎる、又は時間が短すぎると、吸着剤内に残留した吸着質を全て除去することができない。
【0034】
本発明によれば、金属有機フレーム材料は遷移金属イオン又はアルカリ土類金属イオンと有機配位子(2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン)が配位結合又は分子間作用力により形成された三次元又は二次元ネットワークフレーム構造である。
【0035】
本発明において、使用される金属有機フレーム材料の孔路の幾何学的構造は、異なる温度で、対応するキシレン分子の幾何学的構造に適合し、かつ材料構造が層状のフレームは層の間の水素結合作用によりネットワーク状の材料を形成する。この材料中の配位子分子が金属と配位した後に形成された層状平面に大量のπ電子雲が含まれ、p-キシレン、o-キシレン及びm-キシレン中のベンゼン環平面と対応するπ-π電子雲堆積を形成して強い相互作用を発生させる。p-キシレンの分子の幾何学的構造及び線形構造に鑑み、該分子は材料の層状表面及び適合する孔路とは強い相互作用を形成する。熱力学及び動力学の結果により、これらの二つの要因により、三種類のキシレン異性体分子の材料表面での吸着容量に顕著な差異があり、混合蒸気又は混合液体が吸着塔を通過する時、o-キシレンの作用が最も弱く吸着容量が最も小さく、最初に吸着剤又は吸着分離装置から離脱し、m-キシレンの作用力及び吸着容量がそれに次ぎ、吸着剤又は吸着分離装置から離脱するのに必要な時間がo-キシレンより長く、p-キシレンは分子サイズ及び材料の幾何学的孔径が一致しており、かつ吸着容量が最も大きく、吸着剤又は吸着分離装置から離脱するのに必要な時間が最も長く、それによりp-キシレン、m-キシレン及びo-キシレンという三種類のC8芳香族炭化水素異性体の分離を実現する。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記金属有機フレーム材料は以下のステップを含む方法で製造される。
【0037】
(a)無機塩、有機配位子及び脱イオン水を混合し、反応させる。前記無機塩は金属イオンの塩化塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、硫酸塩又は過塩素酸塩である。前記有機配位子は2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノンである。
【0038】
(b)工程(a)で得られた反応生成物を洗浄し、乾燥する。
【0039】
該金属有機フレーム材料の製造過程において、2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノンを有機配位子とし、一連の金属無機塩と純水で反応させ、有毒で、揮発しやすい有機溶剤を使用する必要がなく、製造に必要な原料は価格が低く、合成条件が温和で、操作しやすく、後処理しやすく、材料合成コストが低い。
【0040】
本発明の方法において、金属有機フレーム材料はp-キシレン/m-キシレン、p-キシレン/o-キシレン及びm-キシレン/o-キシレンに対して高い吸着容量及び分離選択性を有し、かつ材料構造及び吸着性能が安定し、耐水性が高く、良好な工業化応用の将来性を有する。
【0041】
上記方法で製造された吸着剤は構造性能が安定し、粒子形状が規則的であり、キシレン混合蒸気又は混合液体に対して、非常に高い分離選択性及び吸着量を有する。
【0042】
さらに好ましくは、前記有機配位子と無機塩のモル比は1:(0.5~10)である。脱イオン水を溶媒とし、体積容量が10~2000mLである。さらに好ましくは、無機塩がコバルト塩、亜鉛塩、鉄塩、マンガン塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、スズ塩又はスカンジウム塩である場合、前記有機配位子と無機塩のモル比が1:(0.5~10)であり、脱イオン水を溶媒とし、体積容量が10~2000mLである。無機塩が亜鉛塩、コバルト塩、マグネシウム塩又はマンガン塩である場合、有機配位子と無機塩のモル比が1:(1~10)であり、水を溶媒とし、体積容量が20~2000mLである。
【0043】
さらに好ましくは、無機塩がコバルト塩、ニッケル塩、亜鉛塩、鉄塩、マンガン塩、スズ塩又はスカンジウム塩である場合、前記無機塩、有機配位子、脱イオン水の配合比率は1mmol:1mmol:5~40mLである。金属塩がマグネシウム塩、マンガン塩である場合、前記有機配位子、無機塩、脱イオン水の配合比率は1.5mmol:1.5~6mmol:10~2000mLである。金属塩、有機配位子及び脱イオン水の配合比率を変更すると、結晶の大きさ、結晶形、規則性等が変わり、同時に該材料のp-キシレン、m-キシレン及びo-キシレンに対する吸着量及び分離選択性能に影響を与える。
【0044】
最も好ましくは、前記無機塩は、酢酸亜鉛二水和物、塩化コバルト六水和物、硝酸スカンジウム水和物、塩化スズ二水和物、酢酸マグネシウム水和物、酢酸マンガン四水和物及び塩化第二鉄六水和物である場合、金属塩、有機配位子、脱イオン水の配合比率は150mmol:150mmol:1000mLである。無機塩が無水塩化マンガンである場合、金属塩、有機配位子、脱イオン水の配合比率は4mmol:3mmol:30mLである。無機塩が無水硫酸マグネシウムである場合、金属塩、有機配位子、脱イオン水の配合比率は6mmol:1.5mmol:400mLである。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記混合は撹拌下で行われ、撹拌条件は、200~1000回転/分で5~72時間撹拌し、反応溶液を均一に混合して反応させる。混合が不均一であるか又は反応が不完全であることにより、反応して得られた結晶の結晶型が不規則となり、それにより材料のキシレン異性体への吸着分離性能に影響を与える。
【0046】
さらに好ましくは、前記反応の反応温度は10~50℃であり、反応時間は5~70時間である。さらに好ましくは、25~40℃で8~48時間反応させる。反応温度は結晶の生成に影響を与え、高すぎても低すぎても結晶を生成できないことをもたらす。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、反応が完了した後の製品を脱イオン水で複数回遠心洗浄し、孔路内に残留した配位子及び無機塩を置換する。
【0048】
さらに好ましくは、徹底的に洗浄された製品を真空又は不活性ガス(例えば、窒素ガス、ヘリウムガスなど)でパージしてサンプルを活性化させ、活性化の温度が50~250℃であり、時間が12~24時間である。
【0049】
従来の技術に比べて、本発明は以下の利点を有する。
【0050】
本発明に使用される金属有機フレーム材料の製造に使用される有機配位子及び金属塩はいずれも安価で入手しやすく、合成条件が温和であり、精製ステップが簡単であり、操作及び増幅が容易である。
【0051】
本発明の方法において、使用される金属有機フレーム材料は構造が安定し、p-キシレン/m-キシレン、p-キシレン/o-キシレン、m-キシレン/o-キシレンの混合蒸気又は混合液体に対して非常に高い吸着分離選択性を有する。
【0052】
本発明に使用される金属有機フレーム材料は性能が安定し、複数回の吸着-再生を繰り返した後も、吸着性能は依然として従来の効果を保持している。
【0053】
キシレン異性体の吸着分離の面で、本発明で製造された吸着剤は従来の多くの固体吸着剤よりはるかに優れ、特にキシレン混合系の精製により単一成分のキシレンを取得する、又は単一成分のキシレンを濃縮する面で優位性を占めている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】実施例1で製造された金属有機フレーム材料のXRD図である。
【
図2】実施例2で用いた模擬移動床の模式図である。
【
図3】実施例2で製造された金属有機フレーム材料のXRD図である。
【
図4】実施例3で製造された金属有機フレーム材料のXRD図である。
【
図5】実施例4で製造された金属有機フレーム材料のXRD図である。
【
図6】実施例1で製造された金属有機フレーム材料の30℃でのキシレンの吸着等温曲線図である。
【
図7】実施例2で製造された金属有機フレーム材料の60℃でのキシレンの吸着等温曲線図である。
【
図8】実施例2で製造された金属有機フレーム材料の120℃でのキシレンの吸着等温曲線図である。
【
図9】実施例2で製造された金属有機フレーム材料の30℃でのo-キシレン/m-キシレンの透過曲線図である。
【
図10】実施例2で製造された金属有機フレーム材料の90℃でのm-キシレン/p-キシレンの透過曲線図である。
【
図11】実施例1-4及び比較例1-2で製造された金属有機フレーム材料の0℃でのCO
2の吸着等温曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下の実施例は本発明をさらに説明するが、本発明の内容はこれらの実施例にまったく限定されるものではない。
【0056】
実施例1
300mmolの酢酸亜鉛二水和物、300mmolの2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン、1000mLの脱イオン水を混合し、室温で12~48時間撹拌して反応させた。反応が完了した後、反応して得られた固体製品を脱イオン水で複数回遠心洗浄し、上澄液が清澄で透明になるまで停止し、精製された金属有機フレーム材料が得られ、77KでのN2の吸着-脱着等温線を測定することにより、分析して得られた比表面積が441.7m2/gであり、平均孔径が5.47-5.51Åであった。精製された金属有機フレーム材料を150℃で12時間真空活性化して溶媒が除去された吸着剤が得られ、次にキシレン異性体の蒸気吸着測定を行った。
【0057】
上記合成された金属有機フレーム材料の吸着分離性能を測定するために、上記吸着剤を用いてp-キシレン、o-キシレン、m-キシレンの単一成分の吸着等温線を行った。適量の吸着剤を取り、吸着温度は30℃、60℃、90℃及び120℃であった。試験により、30℃及び単一成分飽和蒸気圧が1000Paである場合、p-キシレンの吸着量は200mg/gに達し、o-キシレンの吸着量は78mg/gのみであり、m-キシレンの吸着量は51mg/gのみであった。吸着等温曲線図を
図5に示す。60℃及び単一成分飽和蒸気圧が1000Paである場合、p-キシレンの吸着量は165mg/gであり、o-キシレンの吸着量は25mg/gであり、m-キシレンの吸着量は30mg/gである。90℃及び単一成分飽和蒸気圧が1000Paである場合、p-キシレンの吸着量は66mg/gであり、o-キシレンの吸着量は17mg/gであり、m-キシレンの吸着量は18mg/gであった。120℃及び単一成分飽和蒸気圧が1000Paである場合、p-キシレンの吸着量は19mg/gであり、o-キシレンの吸着量は22mg/gであり、m-キシレンの吸着量は25mg/gであった。
【0058】
上記合成された金属有機フレーム材料を用いてキシレンを分離混合する具体的な過程は以下のとおりである。
【0059】
上記合成された吸着剤を使用してまず成形を行い、成形過程に必要な接着剤の使用量は吸着剤の質量の3%-10%を占めた。成形後の吸着剤を用いてキシレン混合蒸気の透過試験を行った。本実施例において吸着分離されたのはp-キシレン/m-キシレン/o-キシレンのうちの三種類又は二種類の混合蒸気であり、各単一成分のキシレン飽和蒸気圧の比は1:1:1又は1:1であり、混合蒸気の総圧力は0.1MPaであり、充填された充填カラムの仕様は10mmI.D.×50mmであり、充填成形された吸着剤の質量は約2.2gであった。試験により、吸着剤の温度が30℃である場合、o-キシレン/m-キシレン/p-キシレンの飽和蒸気圧比が1:1:1である場合、o-キシレンとm-キシレンは初期の8分間で透過し始め、p-キシレンは充填カラムに約120分間保持して初めて透過析出し始めた。このような大きな保持時間の差異は混合キシレンが効果的に分離されたことを示す。該金属有機フレーム材料は5回のこの吸着-再生サイクルを経ても、吸着性能が依然として安定した。再生条件は真空又は不活性雰囲気条件で吸着剤を150℃に加熱し、72時間保持した。
【0060】
実施例2
600mmolの酢酸マンガン四水和物、600mmolの2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン、2000mLの脱イオン水を混合し、室温で24~48時間撹拌して反応させた。反応が完了した後、反応して得られた固体を脱イオン水で複数回遠心洗浄して精製された金属有機フレーム材料が得られ、77KでのN2の吸着-脱着等温線を測定することにより、分析して得られた比表面積が428.9m2/gであり、平均孔径が5.48-5.63Åであった。精製された金属有機フレーム材料を150℃で12時間真空脱気して溶媒が除去された吸着剤が得られ、次に蒸気吸着測定を行った。
【0061】
上記合成された金属有機フレーム材料の吸着分離性能を測定するために、上記金属有機フレーム材料を吸着剤としてp-キシレン、m-キシレン及びo-キシレンの単一成分吸着等温線を行った。適量の吸着剤を取り、吸着温度は30℃、60℃、90℃及び120℃であった。試験により、30℃及び単一成分飽和蒸気圧が1000Paである場合、p-キシレンの吸着量は208mg/gに達し、o-キシレンの吸着量は170mg/gであり、m-キシレンの吸着容量は204mg/gであった。60℃及び単一成分飽和蒸気圧が1000Paである場合、p-キシレンの吸着量は185mg/gに達し、o-キシレンの吸着量は23mg/gのみであり、m-キシレンの吸着容量は159mg/gであった。90℃及び単一成分飽和蒸気圧が1000Paである場合、p-キシレンの吸着量は160mg/gに達し、o-キシレンの吸着量は22mg/gのみであり、m-キシレンの吸着容量は69mg/gであった。120℃及び単一成分飽和蒸気圧が1000Paである場合、p-キシレンの吸着量は141mg/gに達し、o-キシレンの吸着量は23mg/gのみであり、m-キシレンの吸着容量は17mg/gのみであった。吸着等温曲線図は
図6-7を参照する。
【0062】
上記合成された金属有機フレーム材料で混合キシレンを分離する具体的な過程は以下のとおりである。
【0063】
上記合成された吸着剤を使用してまず成形を行い、成形過程に必要な接着剤の使用量は吸着剤の質量の3%-10%を占めた。成形後の吸着剤を用いてキシレン混合蒸気の透過試験を行う。本実施例において吸着分離されたのはp-キシレン/m-キシレン/o-キシレンのうちの三種類又は二種類の混合蒸気であり、各単一成分のキシレン飽和蒸気圧の比は1:1:1又は1:1であり、混合蒸気の総圧力は0.1MPaであり、充填された充填カラムの仕様は10mmI.D.×50mmであり、充填成形された吸着剤の質量は約2.3gであった。透過曲線は
図8-9を参照する。試験により、吸着剤の温度が30℃である場合、o-キシレン/m-キシレンの飽和蒸気圧比が50:50である場合、o-キシレンは45分間で透過し、m-キシレンは275分間で透過し始める。このような大きな保持時間の差異は二種類のキシレン異性体が効果的に分離されたことを示す。また、吸着剤の温度が90℃である場合、m-キシレン/p-キシレンの飽和蒸気圧比が50:50である場合、m-キシレンは25分間で透過し、p-キシレンは315分間で透過し始める。このような大きな保持時間の差異はm-キシレンとp-キシレンがこの条件で効果的に分離されたことを示す。該金属有機フレーム材料は5回の吸着-再生サイクルを経ても、吸着性能が依然として安定した。再生条件は真空又は不活性雰囲気条件で吸着剤を150℃に加熱し、72時間保持した。
【0064】
連続して逆流する小型模擬移動床で上記吸着剤で吸着分離する。
【0065】
前記小型模擬移動床装置は12本の直列接続された吸着カラムを含み、各カラムの長さが150mmであり、カラムの内径が10mmであり、吸着剤の総充填量が140mLである。
図2に示されるように、直列接続された12本のカラムの首尾両端に循環ポンプで接続して閉鎖されたループを構成する。
図2において、吸着原料、脱着剤、抽出液、ラフィネートの四つの供給、排出物質によって、12本の吸着カラムが四つの領域に分けられ、すなわち、吸着原料(カラム8)とラフィネート(カラム10)との間の3本の吸着カラムは吸着領域であり、抽出液(カラム4)と吸着原料(カラム7)との間の4本の吸着カラムは精製領域であり、脱着剤(カラム1)と抽出液(カラム3)との間の3本の吸着カラムは脱着領域であり、ラフィネート(カラム11)と脱着剤(カラム12)との間の2本の吸着カラムは緩衝領域である。吸着システム全体の温度が150℃に制御され、圧力が0.5MPaである。
【0066】
操作過程において、それぞれ130mL/h及び100mL/hの流量で上記模擬移動床装置に脱着剤であるp-ジエチルベンゼン及び吸着原料を連続的に注入し、80mL/hの流量で抽出液を装置から抽出し、150mL/hの流量でラフィネートを装置から抽出する。前記吸着原料の組成は、エチルベンゼン10wt%、p-キシレン20wt%、m-キシレン50wt%、o-キシレン20wt%である。循環ポンプ流量を270mL/hに設定し、模擬逆流クロマトグラフィーの原理に基づいて、70秒ごとに四つの物質の位置を液体の流れ方向と同じ方向に沿って1本の吸着カラムに前進させる。安定した操作状態で得られたp-キシレンの純度は99.75-99.9wt%であり、回収率は98.0-99.0wt%である。
【0067】
実施例3
30mmolの塩化コバルト六水和物、30mmolの2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン、200mLの脱イオン水を混合し、室温で12~24時間撹拌して反応させた。反応が完了した後、反応して得られた固体を脱イオン水で複数回遠心洗浄して精製された金属有機フレーム材料が得られ、77KでのN2の吸着-脱着等温線を測定することにより、分析して得られた比表面積は412.5m2/gであり、平均孔径は5.47-5.54Åであった。精製された金属有機フレーム材料を150℃で12時間真空脱気して溶媒が除去された吸着剤が得られ、次に蒸気吸着測定を行った。
【0068】
上記合成された金属有機フレーム材料の吸着分離性能を測定するために、上記金属有機フレーム材料を吸着剤としてp-キシレン、m-キシレン、o-キシレンの単一成分吸着等温線を行った。適量の吸着剤を取り、吸着温度は30℃、60℃、90℃及び120℃であった。30℃及び単一成分飽和蒸気圧が1000Paである場合、p-キシレンの吸着量は43mg/gに達し、m-キシレンの吸着量は35mg/gであり、o-キシレンの吸着容量は22mg/gであった。60℃及び単一成分飽和蒸気圧が1000Paである場合、p-キシレンの吸着量は23mg/gに達し、m-キシレンの吸着量は23mg/gであり、o-キシレンの吸着容量は11mg/gであった。90℃及び単一成分飽和蒸気圧が1000Paである場合、p-キシレンの吸着量は14mg/gであり、o-キシレンの吸着量は5mg/gであり、m-キシレンの吸着量は14mg/gであった。120℃及び単一成分飽和蒸気圧が1000Paである場合、p-キシレンの吸着量は8mg/gであり、o-キシレンの吸着量は1mg/gであり、m-キシレンの吸着量は8mg/gである。
【0069】
上記合成された金属有機フレーム材料で混合キシレンを分離する具体的な過程は以下のとおりである。
【0070】
上記合成された吸着剤を使用してまず成形を行い、成形過程に必要な接着剤の使用量は吸着剤の質量の3%-10%を占めた。成形後の吸着剤を用いてキシレン混合蒸気の透過試験を行った。本実施例において吸着分離されたのはp-キシレン/m-キシレン/o-キシレンのうちの三種類又は二種類の混合蒸気であり、各単一成分のキシレン飽和蒸気圧の比は1:1:1又は1:1であり、混合蒸気の総圧力は0.1MPaであり、充填された充填カラムの仕様は10mmI.D.×50mmであり、充填成形された吸着剤の質量は約3.1gであった。試験により、吸着剤の温度が60℃である場合、o-キシレン/m-キシレン/p-キシレンの飽和蒸気圧比が1:1:1である場合、o-キシレンとm-キシレンは初期の15分間で透過し始め、p-キシレンは充填カラムに約100分間保持して初めて透過析出し始めた。このような大きな保持時間の差異は混合キシレンが効果的に分離されたことを示す。該金属有機フレーム材料は5回の吸着-再生サイクルを経ても、吸着性能が依然として安定した。再生条件は真空又は不活性雰囲気条件で吸着剤を150℃に加熱し、72時間保持した。
【0071】
実施例4
30mmolの酢酸マグネシウム水和物、30mmolの2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン、300mLの脱イオン水を混合し、室温で24~72時間撹拌して反応させた。反応が完了した後、反応して得られた固体を脱イオン水で複数回遠心洗浄して精製された金属有機フレーム材料が得られ、77KでのN2の吸着-脱着等温線を測定することにより、分析して得られた比表面積が577.2m2/gであり、平均孔径が5.38-5.53Åであった。精製された金属有機フレーム材料を150℃で12時間真空脱気して溶媒が除去された吸着剤が得られ、次に蒸気吸着測定を行った。
【0072】
上記合成された金属有機フレーム材料の吸着分離性能を測定するために、上記金属有機フレーム材料を吸着剤としてp-キシレン、m-キシレン、o-キシレンの単一成分吸着等温線を行った。適量の吸着剤を取り、吸着温度は30℃、60℃、90℃及び120℃であった。30℃及び単一成分飽和蒸気圧が1000Paである場合、p-キシレンの吸着量は79mg/gに達し、o-キシレンの吸着量は22mg/gであり、m-キシレンの吸着容量は49mg/gであった。60℃及び単一成分飽和蒸気圧が1000Paである場合、p-キシレンの吸着量は39mg/gに達し、o-キシレンの吸着量は12mg/gであり、m-キシレンの吸着容量は29mg/gであった。90℃及び単一成分飽和蒸気圧が1000Paである場合、p-キシレンの吸着量は24mg/gであり、o-キシレンの吸着量は6mg/gであり、m-キシレンの吸着量は19mg/gであった。120℃及び単一成分飽和蒸気圧が1000Paである場合、p-キシレンの吸着量は13mg/gであり、o-キシレンの吸着量は2mg/gであり、m-キシレンの吸着量は12mg/gであった。
【0073】
上記合成された金属有機フレーム材料で混合キシレンを分離する具体的な過程は以下のとおりである。
【0074】
上記合成された吸着剤を使用してまず成形を行い、成形過程に必要な接着剤の使用量は吸着剤の質量の3%-10%を占めた。成形後の吸着剤を用いてキシレン混合蒸気の透過試験を行った。本実施例において吸着分離されたのはp-キシレン/m-キシレン/o-キシレンのうちの二種類又は三種類の混合蒸気であり、各単一成分のキシレン飽和蒸気圧の比は1:1:1又は1:1であり、混合蒸気の総圧力は0.1MPaであり、充填された充填カラムの仕様は10mmI.D.×50mmであり、充填成形された吸着剤の質量は約1.8gであった。試験により、吸着剤の温度が30℃である場合、o-キシレン/m-キシレン/p-キシレンの飽和蒸気圧比が1:1:1である場合、o-キシレンとm-キシレンは初期の23分間で透過し始め、p-キシレンは充填カラムに約96分間保持して初めて透過析出し始めた。このような大きな保持時間の差異は混合キシレンが効果的に分離されたことを示す。再生条件は真空又は不活性雰囲気条件で吸着剤を150℃に加熱し、72時間保持した。
【0075】
比較例1
15mmolの酢酸ニッケル水和物、15mmolの2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン、200mLの脱イオン水を混合し、室温で24~72時間撹拌して反応させた。反応が完了した後、反応して得られた固体を脱イオン水で複数回遠心洗浄して精製された金属有機フレーム材料が得られた。精製された金属有機フレーム材料を150℃で12時間真空脱気して溶媒が除去された吸着剤が得られ、次に蒸気吸着測定を行った。
【0076】
上記合成された金属有機フレーム材料の吸着分離性能を測定するために、まず該材料に空隙が存在するか否かに対して材料が273KでのCO
2吸着-脱着等温線を検証した。
図10に示されるように、該金属-有機フレーム材料はCO
2小分子ガス(動力学的サイズが3.3Åである)に対して吸着容量を有せず、該材料が適切な孔径を有しないか又は実際に材料内部にキシレンの吸着分離のための隙間が存在しないことを示した。
【0077】
比較例2
1.5mmolの塩化銅水和物、1.5mmolの2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン、30mLの脱イオン水を混合し、室温で24~48時間撹拌して反応させた。反応が完了した後、反応して得られた固体を脱イオン水で複数回遠心洗浄して精製された金属有機フレーム材料が得られた。精製された金属有機フレーム材料を150℃で12時間真空脱気して溶媒が除去された吸着剤が得られ、次に蒸気吸着測定を行った。
【0078】
上記合成された銅金属有機フレーム材料の吸着分離性能を測定するために、まず該材料に空隙が存在するか否かに対して材料が273KでのCO
2吸着-脱着等温線を検証した。
図10に示されるように、該金属有機フレーム材料は比較例1におけるニッケル金属有機フレーム材料と同様に、273KでCO
2に対する吸着容量が0に近く、結果は該材料が適切な孔径を有しないか又は実際に材料内部にキシレンの吸着分離のための空隙が存在しないことを示した。
【0079】
以上は本出願の具体的な実施例だけであり、本出願の技術的特徴はこれに限定されず、任意の関連分野の当業者が本発明の分野内で行った変更又は修飾はいずれも本出願の特許請求の範囲に含まれる。