(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】切断ユニットおよび切断装置
(51)【国際特許分類】
B28D 1/08 20060101AFI20240531BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20240531BHJP
B23D 55/00 20060101ALI20240531BHJP
B23D 61/18 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B28D1/08
E04G23/08 D
B23D55/00 C
B23D61/18
(21)【出願番号】P 2023137870
(22)【出願日】2023-08-28
【審査請求日】2023-09-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼実施日 令和4年9月8日 ▲2▼実施場所 高松赤十字病院新東館建築等工事(香川県高松市番町4-1-1) ▲3▼実施者 西村 武尚 ▲4▼実施内容 西村武尚が、板東仁成および西村武尚が発明した切断ユニットおよび切断装置について、上記実施場所において公然実施した。
(73)【特許権者】
【識別番号】517436796
【氏名又は名称】バンドーレテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板東 仁成
(72)【発明者】
【氏名】西村 武尚
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/227072(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104842008(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0345431(US,A1)
【文献】実開昭62-166005(JP,U)
【文献】特公平06-084009(JP,B2)
【文献】特許第3064270(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2020/0180052(US,A1)
【文献】特表2018-503521(JP,A)
【文献】特開2006-123331(JP,A)
【文献】特開2019-018263(JP,A)
【文献】特開2012-135872(JP,A)
【文献】特開2002-113652(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第03622482(DE,A1)
【文献】実開平03-081707(JP,U)
【文献】特開2004-224015(JP,A)
【文献】実公平05-029849(JP,Y2)
【文献】欧州特許出願公開第02168704(EP,A1)
【文献】特開2002-166347(JP,A)
【文献】特許第4017937(JP,B2)
【文献】特開2002-086441(JP,A)
【文献】特開2014-037676(JP,A)
【文献】特開2004-114562(JP,A)
【文献】特開2007-176071(JP,A)
【文献】特許第4504637(JP,B2)
【文献】特表2002-540993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/08
E04G 23/08
B23D 55/00
B23D 61/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機構を有する下部フレームと、該下部フレームの上側に設けられ、前記下部フレームに対して水平面内で旋回可能な上部フレームと、前記上部フレームに設けられた揺動アームと、を有する切断装置に用いられる切断ユニットであって、
前記揺動アームに結合するためのベース部と、
該ベース部に設けられ、無端ループ状のワイヤーソーを駆動する駆動プーリと、
前記ワイヤーソーの前記駆動プーリから被加工物への動作を案内し、前記ベース部から延伸する第1サポートに支持された第1ガイドプーリと、
前記ワイヤーソーの前記被加工物から前記駆動プーリへの動作を案内し、前記ベース部から延伸する第2サポートに支持された第2ガイドプーリと、を含んで構成され、
前記ワイヤーソーによる加工により、前記第1ガイドプーリと前記第2ガイドプーリとが離間する方向へ力が働くように、前記ワイヤーソーは、前記第1ガイドプーリと前記第2ガイドプーリとの間を通過するように掛け回され、
前記第1サポートと前記第2サポートの間に、前記第1サポートと前記第2サポートとを近接する方向に近接力を負荷する付勢部材が設けられている、
ことを特徴とする切断ユニット。
【請求項2】
前記付勢部材がコイルバネである、
ことを特徴とする請求項1に記載の切断ユニット。
【請求項3】
前記付勢部材に付加される前記近接力を検出する検出装置と、
該検出装置からの検出信号により、前記近接力を前記切断装置の使用者に覚知させる覚知装置と、が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の切断ユニット。
【請求項4】
走行機構を有する下部フレームと、
該下部フレームの上側に設けられ、前記下部フレームに対して水平面内で旋回可能な上部フレームと、
前記上部フレームに設けられた揺動アームと、
前記揺動アームの先端に備えられる、請求項1に記載の切断ユニットと、を備える、
ことを特徴とする切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断ユニットおよび切断装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、ワイヤーソーを有する切断ユニット、およびこの切断ユニットを備えた切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
RC造(鉄筋コンクリート造)またはSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)などのコンクリート部材の解体では、破砕工法、および引き倒し工法が多く用いられている。詳しく説明すると、作業者は、柱状のコンクリート部材の下端部のコンクリートをブレーカなどの削岩機を用いて破壊し、露出した鉄筋および鉄骨をガス溶断によって切断する(破砕工法)。そして、この作業の際、鉄筋または鉄骨の全てを溶断しないようにし、その後作業者は重機を用いて、コンクリート部材の上端部を把持して引き倒す(引き倒し工法)。コンクリート部材が数メートルから数十メートルの高い位置にある場合、破砕工法を実施すると、引き倒す側と反対側にコンクリートの破片が飛び散ることを防止する必要があり、その対策のための養生の作業負荷が大きいという問題があった。
【0003】
これに対し、引き倒し工法の前段階で、特許文献1に示すようなワイヤーソーを用いる引き切り工法が開示されている。引き切り工法を行うことでコンクリートの破片が飛散することを防止でき、養生のための作業負荷を軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1で開示されているワイヤーソー用のアタッチメントは、重量が非常に重く、また構造が複雑になっている。このアタッチメントは、重機のアームの先端に装着されるため、重量が重くなると、重機を操作する際の応答が遅くなるなどの問題がある。具体的に説明すると、特許文献1のアタッチメント部分では、ワイヤーソーを駆動するための機構と、コンクリート部材への切込み位置を変更するための位置調整機構と、を備えている。そしてワイヤーソーによる引き切り加工を行っている際、ベースとなるガイドフレームは、動作させずに、位置調整機構によりワイヤーソーの切込み位置が変更される。
【0006】
このようにアタッチメントに位置調整機構が含まれるため、アタッチメントの重量が重くなる。このアタッチメントは重機のアームの先端に装着されるものであるため、その操作の応答が遅くなるという問題がある。また、アタッチメントに位置調整機構が含まれることにより、アタッチメントの構成が複雑になり、製造コストが高くなる、その使用方法が複雑になり、その操作に技量が必要になる、また故障する頻度が高くなるという問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、使用する切断装置の応答を速くすることができ、コストを抑えるなどが可能な切断ユニットおよびこれを利用した切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の切断ユニットは、走行機構を有する下部フレームと、該下部フレームの上側に設けられ、前記下部フレームに対して水平面内で旋回可能な上部フレームと、前記上部フレームに設けられた揺動アームと、を有する切断装置に用いられる切断ユニットであって、前記揺動アームに結合するためのベース部と、該ベース部に設けられ、無端ループ状のワイヤーソーを駆動する駆動プーリと、前記ワイヤーソーの前記駆動プーリから被加工物への動作を案内し、前記ベース部から延伸する第1サポートに支持された第1ガイドプーリと、前記ワイヤーソーの前記被加工物から前記駆動プーリへの動作を案内し、前記ベース部から延伸する第2サポートに支持された第2ガイドプーリと、を含んで構成され、前記ワイヤーソーによる加工により、前記第1ガイドプーリと前記第2ガイドプーリとが離間する方向へ力が働くように、前記ワイヤーソーは、前記第1ガイドプーリと前記第2ガイドプーリとの間を通過するように掛け回され、前記第1サポートと前記第2サポートの間に、前記第1サポートと前記第2サポートとを近接する方向に近接力を負荷する付勢部材が設けられていることを特徴とする。
第2発明の切断ユニットは、第1発明において、前記付勢部材がコイルバネであることを特徴とする。
第3発明の切断ユニットは、第1発明において、前記付勢部材に付加される前記近接力を検出する検出装置と、該検出装置からの検出信号により、前記近接力を前記切断装置の使用者に覚知させる覚知装置と、が設けられていることを特徴とする。
第4発明の切断装置は、走行機構を有する下部フレームと、該下部フレームの上側に設けられ、前記下部フレームに対して水平面内で旋回可能な上部フレームと、前記上部フレームに設けられた揺動アームと、前記揺動アームの先端に備えられる、第1発明の切断ユニットと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、切断ユニットが、第1サポートに支持された第1ガイドプーリと、第2サポートに支持された第2ガイドプーリとを含んで構成され、第1サポートと第2サポートとの間に所定の付勢部材が設けられていることにより、ワイヤーソーの切断位置を調整するための装置を設ける必要がない。このため切断ユニットの重量を軽くでき、この切断ユニットを使用する重機の操作の応答を速くすることができる。また、切断ユニットの構成をシンプルにできるので、切断ユニットを製作するためのコストを抑えることができる。さらに、構成がシンプルであることで、その操作に特別な技量が必要なくなり、経験の浅い使用者であっても容易に操作を行うことができる。また構成がシンプルなことで、切断ユニットの故障頻度が少なくなる。これにより工期遅れの発生を抑制できる。
第2発明によれば、付勢部材がコイルバネであることにより、コイルバネは耐久性が高いので、切断ユニットの耐久性をあげることができる。
第3発明によれば、近接力を検出する検出装置と、この近接力を使用者に覚知させる覚知装置と、が設けられていることにより、目視で行うよりも確実にワイヤーソーにかかる負荷をその使用者が把握することができる。
第4発明によれば、切断ユニットが所定の構成を有する重機に設けられていることにより、その重機の操作の応答を速くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る切断ユニットの斜視図である。
【
図3】
図1の切断ユニットを備えた切断装置の使用方法の説明図である。
【
図4】
図1の切断ユニットの第1使用姿勢の説明図である。
【
図5】
図1の切断ユニットの第2使用姿勢の説明図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る切断ユニットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための切断ユニットおよび切断装置を例示するものであって、本発明は切断ユニットおよび切断装置を以下のものに特定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0012】
(第1実施形態の切断ユニット20)
図1には本発明の第1実施形態に係る切断ユニット20の斜視図を、
図2には、その切断ユニット20の平面図を示す。この切断ユニット20は、揺動アーム13を有する、ショベルカーなどの重機に用いられる。
図1では、第2揺動アーム13bから切り離された状態の切断ユニット20が示されている。また、
図2のハッチング部分は、被加工物Cの切断前部分を意味している。
【0013】
切断ユニット20は、無端ループ状のワイヤーソー31を
図2の矢印の方向に駆動して、被加工物Cを切断する機能を有する。切断ユニット20は、ベース部21を備え、このベース部21には、第2揺動アーム13bに接続するための切断ユニット側接続部21aが設けられている。ベース部21は、軽量化を図るために、複数の鋼管をねじ接続して構成されている。これらの鋼管の軸心方向に垂直な断面は、矩形であることが好ましい。
【0014】
ベース部21の上方には、油圧モータ30が設けられている。この油圧モータ30の作動油は、重機側から供給されることが好ましい。ベース部21の下方には、ワイヤーソー31を駆動するための駆動プーリ22が設けられている。この駆動プーリ22の外周には、ワイヤーソー31を滑らずに駆動するため、硬質ゴムが設けられている。また、駆動プーリ22は、重量を軽くするために、外周輪と中央に位置するハブとを複数のリムで接続する構成となっている。
【0015】
切断ユニット20には、ワイヤーソー31の駆動プーリ22から被加工物Cへの動作を案内するための第1ガイドプーリ24が含まれている。第1ガイドプーリ24は、第1サポート23によって回転自在に支持されている。第1ガイドプーリ24も、駆動プーリ22と同様、その外周には硬質ゴムが設けられている。第1サポート23は、ベース部21に、ベース部21から被加工物Cが存在する方向へ延伸するように設けられるとともに、
図2の紙面と平行な面内で揺動可能にベース部21に固定されている。第1サポート23は、軸心方向に垂直な断面が矩形である鋼管を用いて作成されているのが好ましい。第1ガイドプーリ24のワイヤーソー31が接触する外周を含む平面は、駆動プーリ22のワイヤーソー31が接触する外周を含む平面と一致していることが好ましい。
【0016】
切断ユニット20には、第1ガイドプーリ24と同様、ワイヤーソー31の被加工物Cから駆動プーリ22への動作を案内するための第2ガイドプーリ26が含まれている。第2ガイドプーリ26は、第2サポート25によって回転自在に支持されている。第2ガイドプーリ26も、駆動プーリ22と同様、その外周には硬質ゴムが設けられている。第2サポート25は、ベース部21に、ベース部21から被加工物Cが存在する方向へ延伸するように設けられるとともに、
図2の紙面と平行な面内で揺動可能にベース部21に固定されている。第2サポート25は、軸心方向に垂直な断面が矩形である鋼管を用いて作成されているのが好ましい。第2ガイドプーリ26のワイヤーソー31が接触する外周を含む平面は、駆動プーリ22のワイヤーソー31が接触する外周を含む平面と一致していることが好ましい。
【0017】
ワイヤーソー31は、第1ガイドプーリ24と第2ガイドプーリ26との間を通過するように掛け回されているのが好ましい。詳細に説明すると、駆動プーリ22は、
図2の紙面に向かう視点で見たときに時計回りに回転している。そのため、ワイヤーソー31は、
図2の紙面に向かう視点で見たときに駆動プーリ22の右側から被加工物Cに向けて出ていく。駆動プーリ22から出たワイヤーソー31は、
図2の紙面に向かう視点で見たときに、第1ガイドプーリ24の左側、すなわち第2ガイドプーリ26が存在する側において、第1ガイドプーリ24と接触して、被加工物Cに向けて出ていく。被加工物Cにおいて加工を終えたワイヤーソー31は、
図2の紙面に向かう視点で見たときに、第2ガイドプーリ26の右側、すなわち第1ガイドプーリ24側において、第2ガイドプーリ26と接触して、駆動プーリ22に向けて出ていく。このような構成であることで、第1ガイドプーリ24には、ワイヤーソー31から、
図2の紙面に向かう視点で見たときに右側に向けて力が働き、第2ガイドプーリ26には、ワイヤーソー31から左側に向けて力が働く。すなわち第1ガイドプーリ24と第2ガイドプーリ26との間には、ワイヤーソー31による加工により、それぞれのプーリが離間する方向へ力が作用する。
【0018】
切断ユニット20には、第1サポート23と第2サポート25との間に、第1サポート23と第2サポート25とを近接する方向に近接力を負荷する付勢部材27が設けられている。この付勢部材27は、本実施形態ではコイルバネである。ただしこれに限定されない。例えばゴム材である場合もある。
【0019】
第1サポート23に支持された第1ガイドプーリ24と、第2サポート25に支持された第2ガイドプーリ26とを含んで構成され、第1サポート23と第2サポート25との間に所定の付勢部材27が設けられていることにより、ワイヤーソー31の切断位置を調整するための装置を設ける必要がなく、切断ユニット20の重量を軽くでき、この切断ユニット20を使用する重機の操作の応答を速くすることができる。また、切断ユニット20の構成をシンプルにできるので、切断ユニット20を製作するためのコストを抑えることができる。
【0020】
付勢部材27がコイルバネであることにより、コイルバネは耐久性が高いので、切断ユニット20の耐久性をあげることができる。
【0021】
なお、切断ユニット20については、主要部材について説明をしている。例えば、補助部材として駆動プーリ22の安全カバーを設けることも可能である。
【0022】
(切断装置10)
図1、
図3を用いて、切断ユニット20を備えた切断装置10について説明する。
図3は、切断ユニット20を備えた切断装置10の使用方法の説明図である。切断装置10は、油圧ショベルまたは解体機のような、いわゆる建設機械において、先端に位置するアタッチメントとして切断ユニット20を設けた構成である。以下その構成について具体的に説明する。
【0023】
切断装置10は、走行機構を有する下部フレーム11を備えている。走行機構は本実施形態では、クローラ11aであるが、走行機構の形態は、これに限定されない。例えば複数のタイヤを有する構成である場合がある。
【0024】
切断装置10は、下部フレーム11の上側に設けられている上部フレーム12を備えている。上部フレーム12は、下部フレーム11に対して水平面内で旋回可能な構成である。また上部フレーム12には、切断装置10の使用者が乗り込む運転部12aが設けられている。
【0025】
切断装置10は、上部フレーム12に揺動アーム13を備えている。本実施形態では、揺動アーム13は、ひらがなの「く」の字型をした第1揺動アーム13aと、第1揺動アーム13aの自由端側に設けられている第2揺動アーム13bとを含んで構成されている。これらの揺動アーム13は、複数の油圧シリンダ14により駆動される。
【0026】
切断装置10は、第2揺動アーム13bの先端、すなわち自由端側に切断ユニット20を備えている。第2揺動アーム13bの先端には、揺動アーム側接続部13cが設けられている。この揺動アーム側接続部13cと、切断ユニット側接続部21aとを結合させることで、切断ユニット20が切断装置10に備えられる。
【0027】
切断ユニット20が所定の構成を有する重機に設けられていることにより、その重機の操作の応答を速くすることができる。
【0028】
(切断ユニット20の使用姿勢)
図4には、切断ユニット20の第1使用姿勢を、
図5には切断ユニット20の第2使用姿勢を示す。
【0029】
第1使用姿勢では、駆動プーリ22の軸心が鉛直になるように、揺動アーム側接続部13cと切断ユニット側接続部21aとが合わされる。この場合、ワイヤーソー31は、水平面内で動作するため、被加工物Cは、軸心が鉛直となる、上下に長い柱状のコンクリート等となる。
【0030】
第2使用姿勢では、駆動プーリ22の軸心が水平になるように、揺動アーム側接続部13cと切断ユニット側接続部21aとが合わされる。この場合、ワイヤーソー31は、鉛直面内で動作するため、被加工物Cは、軸心が水平となる、水平方向に長い梁状のコンクリート等となる。
【0031】
(切断装置10の使用方法)
切断装置10の使用者は、ワイヤーソー31による引き切り工法を実施する前に、被加工物Cの形状に合わせて、切断ユニット側接続部21aと揺動アーム側接続部13cとを結合し、切断ユニット20を切断装置10に装備する。この際、切断装置10の運転席から駆動プーリ22の回転を操作できるように、揺動アーム13にある油圧配管32を、油圧モータ30に接続する。
【0032】
次に切断装置10の使用者は、切断装置10を引き切り工法を実施する位置、すなわち被加工物Cの近傍にまで移動させる。この際、引き切り工法を実施する際に切断ユニット20全体を揺動アーム13等により、その位置を変更するので、その動作を考慮した位置に切断装置10を移動させる。そして、ワイヤーソー31を被加工物C、駆動プーリ22に巻き回すとともに、第1ガイドプーリ24と第2ガイドプーリ26の外周の溝にワイヤーソー31を挿入する。そして、第1サポート23と第2サポート25との間に付勢部材27を設置する。
【0033】
切断装置10の使用者は、揺動アーム13を操作し、ワイヤーソー31に所定の引っ張り力を付加する。この際、付勢部材27の長さを目視することで、ワイヤーソー31にどの程度の引っ張り力が付加されているかを、切断装置10の使用者は確認することができる。この状態で、切断装置10の使用者は、油圧モータ30を作動させ、ワイヤーソー31を駆動する。これにより被加工物Cの切断が開始される。
【0034】
ワイヤーソー31による被加工物Cの切断が進むと、ワイヤーソー31に付加されている引っ張り力が小さくなる。この場合、付勢部材27により、第1ガイドプーリ24と第2ガイドプーリ26との間が狭くなるため、切断装置10の使用者は、揺動アーム13等を操作し、付勢部材27の長さが所定の長さになるように、ワイヤーソー31に付加されている引っ張り力を大きくする。
【0035】
切断装置10の使用者は、所定の部分までワイヤーソー31による引き切り工法が実施されると、引き切り工法を終了する。そして、切断装置10を引き切り工法を実施した場所から退避させる。この状態で、被加工物Cは解体機等を用いて、引き倒し工法により被加工物Cを引き倒す。
【0036】
(第2実施形態の切断ユニット20)
図6には本発明の第2実施形態に係る切断ユニット20の平面図を示す。第1実施形態との相違点は、ハッチングで示す被加工物Cの一部を切り残すように被加工物Cの近傍に第3ガイドプーリ28および第4ガイドプーリ29が設けられている点である。ここではこの相違点についてのみ説明する。ワイヤーソー31は、第1ガイドプーリ24から第3ガイドプーリ28を経て、被加工物Cを加工し、その後第4ガイドプーリ29を経由して第2ガイドプーリ26へ動作する。第3ガイドプーリ28および第4ガイドプーリ29が存在することで、被加工物Cの切り残しの寸法を高精度に制御することができる。なお、
図6においては、第3ガイドプーリ28および第4ガイドプーリ29は、被加工物Cに対して支持されているが、構成の説明をわかりやすくするため、この構成は
図6には記載されていない。なお、第3ガイドプーリ28、第4ガイドプーリ29は、被加工物Cに対して支持されていない構成とすることも可能である。例えば、被加工物Cと独立して設けられたベースに対して支持されている場合もある。
【0037】
(その他)
本実施形態では、付勢部材27を切断装置10の使用者が目視し、付勢部材27の長さからワイヤーソー31に付加された引っ張り力の大きさを判断したが、本発明はこの形態に限定されない。例えば、付勢部材27の端部に、付勢部材27に付加される近接力を検出する検出装置を設け、この検出装置からの検出信号により、近接力を、切断装置10の使用者に覚知させる覚知装置を設けることも可能である。覚知装置は、例えば、液晶モニターであったり、スピーカであったりする。
【符号の説明】
【0038】
10 切断装置
11 下部フレーム
12 上部フレーム
13 揺動アーム
20 切断ユニット
21 ベース部
22 駆動プーリ
23 第1サポート
24 第1ガイドプーリ
25 第2サポート
26 第2ガイドプーリ
27 付勢部材
31 ワイヤーソー
【要約】
【課題】使用する切断装置の応答を速くすることができ、コストを抑えることが可能な切断ユニットおよびこれを利用した切断装置を提供する。
【解決手段】切断ユニット20は、ベース部21と、ワイヤーソー31を駆動する駆動プーリ22と、第1サポート23に支持された第1ガイドプーリ24と、第2サポート25に支持された第2ガイドプーリ26と、を含んで構成されている。ワイヤーソー31は、第1ガイドプーリ24と第2ガイドプーリ26との間を通過するように掛け回され、第1サポート23と第2サポート25の間に、近接力を負荷する付勢部材27が設けられている。この構成により、ワイヤーソー31の切断位置を調整するための装置を設ける必要がなく、切断ユニット20の重量を軽くでき、この切断ユニット20を使用する重機の操作の応答を速くすることができる。
【選択図】
図1