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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】撚線
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/08 20060101AFI20240531BHJP
   D07B 1/12 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
H01B5/08
D07B1/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023207400
(22)【出願日】2023-12-08
【審査請求日】2024-01-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】395005169
【氏名又は名称】三洲電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101535
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 好道
(74)【代理人】
【識別番号】100161104
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 浩康
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 俊文
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-158331(JP,A)
【文献】特開2023-61726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/08
D07B 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1素線を周方向に配設して形成した第1外層と、該第1外層の径方向内側に設け、かつ、複数の第2素線を周方向に配設して形成した第2外層と、該第2外層の径方向内側に設け、かつ、複数の第3素線を周方向に配設して形成した第3外層と、該第3外層の内側に形成した中空部を有し、
第1素線と第2素線と第3素線の数を全て同じとし、
前記第1素線を、同一円周上に配設するとともに、周方向に隣り合う素線は、その軸方向全体、又は、その軸方向の一部において当接するように配設し、
前記第2素線は、同一円周上に配設するとともに、隣り合う第2素線を離間して配設し、
前記第3素線を、同一円周上に配設するとともに、周方向に隣り合う第3素線は、その軸方向全体、又は、その軸方向の一部において当接するように配設し、
前記第2素線は、周方向に隣り合う第1素線で構成される内側の谷間部において、この隣り合う第1素線と当接するとともに、周方向に隣り合う第3素線で構成される外側の谷間部において、この隣り合う第3素線に当接するように配設し、
前記第1素線と前記第3素線は当接しないことを特徴とする撚線。
【請求項2】
前記撚線を、撚線導体として用いることを特徴とする請求項1記載の撚線。
【請求項3】
前記撚線を、医療用線として用いることを特徴とする請求項1記載の撚線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撚線に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電線市場において、電線及びケーブルの細径化、軽量化、高機能化の観点から、断面が円形状に近い撚線導体が求められている。
【0003】
図6に示すように撚線101の外形を、円形状に近い形成したものとして、外層102を、第1外層103と、第1外層103の内側に形成した第2外層104と、第2外層104の内側に形成した第3外層105で構成し、第3外層105の内側に中空部106を形成し、各層103,104,105を構成する素線103a,104a,105aの数は全て同じ数で構成されている。各層103,104,105において、その層103,104,105を構成する素線103a,104a,105aは、同一円周上に配設されるとともに、隣り合う素線同士は当接するように構成されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、上記撚線101は、屈曲性に優れていることから、治療に用いられるガイドワイヤ―等の医療用線として適用することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4673361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記撚線101は、製造時等に撚り崩れ等が生じて、中空部106内に、第3外層105を構成する素線105aが落ち込むことがある。第1外層103と第2外層104を構成する素線103a,104aは安定して形状保持できるため、第3外層105を構成する素線105aの落ち込みは、外部からでは視認できず、不良品を容易には検出できず、検査コストが高くなるという問題があった。
【0007】
また、上記撚線101を、医療用線に適用する場合、素線103a,104a,105aをステンレス線、チタン線材などで構成する必要がある。このような線材で撚線101を形成した場合、撚り戻りが発生しやすく、撚り戻りが生じると図7に示すような素線103a,104a,105aの配列位置が、所定のものとは異なり、物性等に影響が出る恐れがある。
【0008】
そこで、撚線が撚り崩れした場合、容易に発見できるとともに、撚り戻りが生じにくい撚線を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本願発明は、複数の第1素線を周方向に配設して形成した第1外層と、該第1外層の径方向内側に設け、かつ、複数の第2素線を周方向に配設して形成した第2外層と、該第2外層の径方向内側に設け、かつ、複数の第3素線を周方向に配設して形成した第3外層と、該第3外層の内側に形成した中空部を有し、
第1素線と第2素線と第3素線の数を全て同じとし、
前記第1素線を、同一円周上に配設するとともに、周方向に隣り合う素線は、その軸方向全体、又は、その軸方向の一部において当接するように配設し、
前記第2素線は、同一円周上に配設するとともに、隣り合う第2素線を離間して配設し、
前記第3素線を、同一円周上に配設するとともに、周方向に隣り合う第3素線は、その軸方向全体、又は、その軸方向の一部において当接するように配設し、
前記第2素線は、周方向に隣り合う第1素線で構成される内側の谷間部において、この隣り合う第1素線と当接するとともに、周方向に隣り合う第3素線で構成される外側の谷間部において、この隣り合う第3素線に当接するように配設し、
前記第1素線と前記第3素線は当接しないことを特徴とするものである。
【0010】
また、前記撚線を、撚線導体として用いてもよい。
【0011】
また、前記撚線を、医療用線として用いてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、複数の第1素線からなる第1外層と、第1外層の径方向内側に設け、かつ、複数の第2素線からなる第2外層と、第2外層の径方向内側に設け、かつ、複数の第3素線からなる第3外層と、3外層の内側に形成した中空部を有し、第1素線と第3素線を、夫々同一円周上に配設し、第2素線は、隣り合う第1素線で構成される内側の谷間部と隣り合う第3素線で構成される外側の谷間部に位置するように配設したことにより、第3素線が撚り崩れした場合に、第1外層も形状が崩れるため、目視で不具合を容易に見つけることができる。
【0013】
また、形状が安定化するため、ステンレス線、チタン線材等を用いて構成した場合おいても、撚り戻りが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1に係る撚線の一例の横断面図。
図2】本発明の実施例1に係る撚線の他例の横断面図。
図3】本発明の実施例3に係る撚線の一例を示す横断面図。
図4】本発明の実施例3に係る撚線の他例を示す横断面図。
図5】本発明の実施例3に係る撚線の他例を示す横断面図。
図6】従来技術の撚線導体の横断面図。
図7】従来技術の撚線導体の問題点を説明するための横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0016】
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係る撚線1の軸方向と直交する方向に切断した横断面図で、その各素線の断面を示す斜線は、図の煩雑を避けるために省略した。
【0017】
撚線1は、電線、ケーブル等に用いられる撚線導体、治療に用いられるカテーテルチューブ、血管の中を通すガイドワイヤ―、内視鏡などの操作用ワイヤ等の医療用線として用いることができる 。
【0018】
撚線1は、図1に示すように、その中心から径方向の最も外側に位置する第1外層2と、第1外層2における撚線1の中心から径方向の内側に設けた第2外層3と、第2外層3における撚線1の中心からの径方向の内側に設けた第3外層4の3層で構成されている。第3外層4における撚線1の中心からの径方向の内側には、中空部5が形成されている。
【0019】
第1外層2は、第1素線11で構成され、第2外層3は、第2素線12で構成され、第3外層4は、第3素線13で構成され、撚線1は3種類の素線11,12,13で構成されている。
【0020】
第1素線11と第2素線12と第3素線13は、夫々6本で構成されている。
【0021】
撚線1を、撚線導体に用いる場合には、各素線11,12,13の基となる線材としては、例えば、裸銅線、無酸素銅線、線形結晶無酸素銅線、単結晶状高純度無酸素銅線等の銅線、この銅線に、錫、ニッケル、銀等をメッキしたもの、アルミ線、各種合金線、及び、エナメル線、リッツ線、ホルマル線等の絶縁被覆されたもの等を使用することができる。
【0022】
撚線1を、医療用線に用いる場合には、各素線11,12,13の基となる線材としては、例えば、硬銅線、合金線、ニッケル線、ステンレス線、チタン線等を使用することができる。
【0023】
各素線11,12,13の素材は、同じ素材を用いてもよいし、異なる素材を用いてもよい。
【0024】
第1外層2は、図1に示すように、6本の第1素線11を同一円周上に配置して構成されている。第1外層2は、断面円形で、全て同一の直径の第1素線11で構成され、撚線1の中心を中心とする周方向に隣り合う第1素線11,11は、その軸方向全体、又は、その軸方向の一部において当接するように配設されている。
【0025】
第2外層3は、図1に示すように、6本の第2素線12を同一円周上に、隣り合う第2素線12,12が相互に離間するように配置して構成されている。第2外層3は、断面円形で、全て同一の直径の第2素線12で構成されている。
【0026】
第2素線12は、撚線1の中心を中心とする周方向に隣り合う第1素線11,11で構成される内側の谷間部15において、この隣り合う第1素線11,11と軸方向全体、又は、軸方向の一部において当接するように配設されている。
【0027】
第2素線12の直径d2は、第1素線11の直径d1より小さく形成されている。
【0028】
第3外層4は、図1に示すように、6本の第3素線13を同一円周上に配置して構成されている。第3外層4は、断面円形で、全て同一の直径の第3素線13で構成され、撚線1の中心を中心とする周方向に隣り合う第3素線13,13は、その軸方向全体、又は、その軸方向の一部において当接するように配設されている。
【0029】
第2素線12は、撚線1の中心を中心とする周方向に隣り合う第3素線13,13で構成される外側の谷間部16において、この隣り合う第3素線13,13と軸方向全体、又は、軸方向の一部において当接するように配設されている。
【0030】
第3素線13の直径d3は、第2素線12の直径d2より小さく形成されている。
【0031】
本実施例1では、d2=0.31×d1,d3=0.23×d1の関係が成立する各素線11,12,13を用いた。
【0032】
また、撚線1の断面形状が、略真円形状、つまり、撚線1の中心から、第1外層2を構成する各第1素線11の最外縁端までの距離L1が、略同一となるように形成されている。また、撚線1の中心から、第2外層3を構成する各第2素線12の最外縁端までの距離L2が、略同一となるように形成され、撚線1の中心から、第3外層4を構成する各第3素線13の最外縁端までの距離L3が、略同一となるように形成されている。
【0033】
本願発明の撚線1は、上記の構造を有しているために、次のような作用、効果を奏する。
【0034】
撚線1の外形形状を圧縮することなく、略真円形状とし、かつ、素線11,12,13が、隣接する略全ての素線11,12,13と接触することができる。また、撚線1の外形を圧縮することなく略真円形状とすることができる。
【0035】
また、上記のように撚線1を構成したことにより、撚線1の製造時等において、第3外層4を構成する第3素線13が、中空部5内に撚り崩れ等が発生した場合、第2外層3、第1外層2が夫々、内側方向に崩れ落ち、その形状が保てなくなるため、撚線1の外形から、不具合を容易に発見することが出来、品質、顧客との信頼性の向上等を向上させるとともに、品質検査コストを低減することができる。
【0036】
撚線1の外形を圧縮することなく略真円形状としたことで、各素線11,12,13は、のび値の減衰が少なく、柔軟性、可とう性等の物理特性を損うことがなく、物理特性を維持することができる。また、中空部5の内径を大きく形成した場合において、撚線1の形状を安定して保持することが出来る。
【0037】
また、撚線1をステンレス線、チタン線材等で構成した場合においても、撚線1の形状が安定化し、撚り戻りが生じにくく、撚線1を所定の形状、配列に保つことが出来る。
【0038】
そのため、撚線1は、信頼性の高い品質を得ることができ、自動車用電線分野、音響電線分野、医療分野等において有効に活用することができる。
【0039】
なお、図2に示すように、d2=0.33×d1,d3=0.205×d1の関係が成立する各素線11,12,13を用いても、上記実施例1の撚線1と同様の構造、配列等を有する撚線21を得ることが出来る。
【0040】
[実施例2]
上記実施例1の撚線1と同様の配列を形成することが出来れば、上記実施例1に記載の径を有する素線以外にも任意の径を有する素線を用いて撚線1を構成することができる。また、撚線1において最も外側に位置する層である第1外層2の外側から圧縮ダイス等により、圧縮してもよい。
【0041】
この圧縮により、第1外層2を構成する第1素線11の外周部は、圧縮変形され、撚線1の外形形状をより真円形状に近づけることができる。圧縮ダイス等による圧縮は、撚線1を製造する際に行っても良いし、撚線1を製造した後に行っても良い。なお、圧縮率に関しては、任意に設定する。
【0042】
その他の構造は、上記実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0043】
本実施例2においても、上記実施例1と同様の作用効果を発揮することができる。
【0044】
[実施例3]
上記実施例1,2においては、撚線1を、第1素線11と第2素線12と第3素線13は、夫々6本で構成したが、第1素線11と第2素線12と第3素線13の数を同じとすれば、素線11,12,13の数は、夫々任意の数に設定することができる。
【0045】
第1素線11と第2素線12と第3素線13は、上記実施例1,2と同様の規則性で配列されている。
【0046】
例えば、図3に示すように、第1素線11と第2素線12と第3素線13を、夫々8本で構成した撚線22の場合には、d2=0.38×d1,d3=0.34×d1の関係が成立する各素線11,12,13の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線22の断面形状を略真円形状とするとことができる。
【0047】
また、図4に示すように、第1素線11と第2素線12と第3素線13を、夫々9本で構成した撚線23の場合には、d2=0.41×d1,d3=0.385×d1の関係が成立する各素線11,12,13の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線23の断面形状を略真円形状とするとことができる。
【0048】
また、図5に示すように、第1素線11と第2素線12と第3素線13を、夫々14本で構成した撚線24の場合には、d2=0.485×d1,d3=0.545×d1の関係が成立する各素線11,12,13の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線24の断面形状を略真円形状とするとことができる。
【0049】
その他の構造は、上記実施例1,2と同様であるため説明を省略する。
【0050】
本実施例3においても、上記実施例1,2と同様の作用効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0051】
1,21,22,23,24 撚線
2 第1外層
3 第2外層
4 第3外層
5 中空部
11 第1素線
12 第2素線
13 第3素線
【要約】
【課題】撚線が撚り崩れした場合、容易に発見できるとともに、撚り戻りが生じにくい撚線をを提供する。
【解決手段】
複数の第1素線11からなる第1外層2と、複数の第2素線12からなる第2外層3と、複数の第3素線13からなる第3外層4と、第3外層の内側に形成した中空部5を有し、第1素線11と第2素線12と第3素線13の数を全て同じとし、第1素線11を、同一円周上に、相互に当接するように配設し、第3素線13を、同一円周上に相互に当接るように配設し、第2素線12を、周方向に隣り合う第1素線11,11で構成される内側の谷間部15と、周方向に隣り合う第3素線13,13で構成される外側の谷間部16に、周囲の素線に当接するように配設し、第1素線11と第3素線13は当接しない。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7