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特許7496652情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/105 20230101AFI20240531BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240531BHJP
【FI】
G06Q10/105
G06Q50/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023208676
(22)【出願日】2023-12-11
【審査請求日】2024-01-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523466950
【氏名又は名称】キリハレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003546
【氏名又は名称】弁理士法人伊藤IP特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 元輝
【審査官】上田 威
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-051656(JP,A)
【文献】特開2023-033012(JP,A)
【文献】特開2022-189237(JP,A)
【文献】特許第7378698(JP,B1)
【文献】特開2003-114936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハラスメントに関する情報を管理する情報処理装置であって、
前記ハラスメントに関するオンライン相談を希望する第1ユーザから、該ハラスメントが疑われる事例の状況に関する情報である相談情報を、所定のインタフェースを介して取得することと、
前記相談情報に基づいて自動で生成され得る回答情報であって、前記相談情報に含まれる前記事例の状況が前記ハラスメントに合致するか否かが一次判定された情報である第1回答情報を、前記ハラスメントに関する所定の事例データを用いて学習を行うことにより構築された第1事前学習モデルに前記相談情報を入力することで取得することと、
前記インタフェースを介して、前記第1回答情報を前記第1ユーザに提供することと、
を実行する制御部を備え
前記制御部は、
前記第1回答情報において、前記相談情報に含まれる前記事例の状況が前記ハラスメントに合致すると一次判定された場合に、該ハラスメントを行った相手として該事例の状況に基づいて特定され得る第2ユーザから、該ハラスメントが疑われる行為に関する情報であるヒアリング情報を取得することと、
前記相談情報及び前記ヒアリング情報に基づいて自動で生成され得る回答情報であって、前記相談情報に含まれる前記事例の状況が前記ハラスメントに合致するか否かが二次判定された情報である第2回答情報を、前記第1事前学習モデルに前記相談情報及び前記ヒアリング情報を入力することで取得することと、
前記インタフェースを介して、前記第2回答情報を前記第1ユーザ及び前記第2ユーザに提供することと、を更に実行する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記インタフェースは、チャットボットによるチャットサービスを提供可能に構成されたポータルウェブサイトである、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第2回答情報において、前記相談情報に含まれる前記事例の状況が前記ハラスメントに合致すると二次判定された場合に、前記相談情報及び前記ヒアリング情報に基づいて自動で生成され得る対処情報であって、前記ハラスメントへの対処に関する情報である対処情報を、前記ハラスメントに関する所定の対処データを用いて学習を行うことにより構築された第2事前学習モデルに前記相談情報及び前記ヒアリング情報を入力することで取得することと、
前記インタフェースを介して、前記対処情報を前記第1ユーザ及び前記第2ユーザに提供することと、を更に実行する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第2事前学習モデルに学習させるための教師データであって、所定の組織における就業規則と前記ハラスメントへの対処に関する分類ラベルとの組に関する第1データ、及び所定のユーザについての人事情報と前記ハラスメントへの対処に関する分類ラベルとの組に関する第2データを用いて、前記第2事前学習モデルに学習を行わせることを、更に実行し、
前記第2事前学習モデルに、前記第2ユーザが属する組織における就業規則及び前記第2ユーザについての人事情報を入力することで、前記対処情報を取得する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記人事情報は、前記組織に対する前記ユーザの貢献に関する情報を含み、
前記制御部は、
前記第2事前学習モデルに学習を行わせるとき、前記第2データにおいて、前記ユーザの前記組織に対する貢献の度合いが大きいほど前記ハラスメントへの対処が軽減されるように、分類ラベルを調整する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記相談情報に含まれる前記事例の状況と、それに対する前記対処情報と、に基づいて、前記ハラスメントに対する予防ガイドラインを自動で生成し、該対処情報を取得するために用いられた前記就業規則に該予防ガイドラインを追加することで該就業規則を更新することを、更に実行する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項7】
ハラスメントに関する情報を管理する情報処理方法であって、
コンピュータが、
前記ハラスメントに関するオンライン相談を希望する第1ユーザから、該ハラスメントが疑われる事例の状況に関する情報である相談情報を、所定のインタフェースを介して取得することと、
前記相談情報に基づいて自動で生成され得る回答情報であって、前記相談情報に含まれる前記事例の状況が前記ハラスメントに合致するか否かが一次判定された情報である第1回答情報を、前記ハラスメントに関する所定の事例データを用いて学習を行うことにより構築された第1事前学習モデルに前記相談情報を入力することで取得することと、
前記インタフェースを介して、前記第1回答情報を前記第1ユーザに提供することと、
を実行し、
前記コンピュータは、
前記第1回答情報において、前記相談情報に含まれる前記事例の状況が前記ハラスメントに合致すると一次判定された場合に、該ハラスメントを行った相手として該事例の状況に基づいて特定され得る第2ユーザから、該ハラスメントが疑われる行為に関する情報であるヒアリング情報を取得することと、
前記相談情報及び前記ヒアリング情報に基づいて自動で生成され得る回答情報であって、前記相談情報に含まれる前記事例の状況が前記ハラスメントに合致するか否かが二次判定された情報である第2回答情報を、前記第1事前学習モデルに前記相談情報及び前記ヒアリング情報を入力することで取得することと、
前記インタフェースを介して、前記第2回答情報を前記第1ユーザ及び前記第2ユーザに提供することと、を更に実行する、
情報処理方法。
【請求項8】
ハラスメントに関する情報を管理する情報処理プログラムであって、
コンピュータに、
前記ハラスメントに関するオンライン相談を希望する第1ユーザから、該ハラスメントが疑われる事例の状況に関する情報である相談情報を、所定のインタフェースを介して取得することと、
前記相談情報に基づいて自動で生成され得る回答情報であって、前記相談情報に含まれる前記事例の状況が前記ハラスメントに合致するか否かが一次判定された情報である第1回答情報を、前記ハラスメントに関する所定の事例データを用いて学習を行うことにより構築された第1事前学習モデルに前記相談情報を入力することで取得することと、
前記インタフェースを介して、前記第1回答情報を前記第1ユーザに提供することと、
を実行させ、
前記コンピュータに、
前記第1回答情報において、前記相談情報に含まれる前記事例の状況が前記ハラスメントに合致すると一次判定された場合に、該ハラスメントを行った相手として該事例の状況に基づいて特定され得る第2ユーザから、該ハラスメントが疑われる行為に関する情報であるヒアリング情報を取得することと、
前記相談情報及び前記ヒアリング情報に基づいて自動で生成され得る回答情報であって、前記相談情報に含まれる前記事例の状況が前記ハラスメントに合致するか否かが二次判定された情報である第2回答情報を、前記第1事前学習モデルに前記相談情報及び前記ヒアリング情報を入力することで取得することと、
前記インタフェースを介して、前記第2回答情報を前記第1ユーザ及び前記第2ユーザに提供することと、を更に実行させる、
情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハラスメントに関する情報を管理する情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、企業等の組織において、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメントなどの各種ハラスメントが問題となっている。そして、このようなハラスメントが生じると、それを受けた側に精神疾患(心の病やうつ病など)、精神的負担、不適応行動、認知的問題等のストレス障害が誘発されたり、組織の環境が悪化したりしてしまう。そのため、組織の管理部門等には、その対応が求められている。
【0003】
ここで、教育や啓発の意識付けや相談窓口の設置等によってハラスメントの対策を行っていくためには、社会的に大きなコストとなる。そこで、ハラスメントに対して、情報処理システム等を用いて、防止や対処を支援する技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、職場環境における人の間でのパワーハラスメント、セクシャルハラスメント、およびいじめを含む有害行為に関する観察および検出を行う計算機を備える有害行為検出システムが開示されている。この有害行為検出システムでは、対象者の周囲の音声を入力した音声データに基づいて、それに含まれるワードや、対象者、他者の感情などを取得することで、有害行為に関する指標値が計算される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-123204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から、組織の管理部門等では、教育や啓発の意識付けや相談窓口の設置等によってハラスメントの対策を行っているが、これは、社会的に大きなコストとなっている。また、組織に相談窓口を設置したとしても、ユーザは、人には言いにくい悩みを相談することに躊躇してしまったり、そのような相談窓口を気軽に利用できなかったりするため、ハラスメントの発見が遅れてしまう事態が生じ得る。
【0007】
一方で、特許文献1に記載の技術によれば、情報処理システムを用いて、職場環境でのパワハラ、セクハラ、いじめ等の有害行為を検出することができ、ハラスメントを早期に発見できるようにも思われる。しかしながら、当該技術は、対象者の周囲の音声を入力した音声データ、および対象者のバイタルデータの少なくとも1つを用いて、有害行為に関する観察および検出を行うものであるため、これらデータを取得する必要があり、ハラスメントに関する情報を直接的に容易に取得できるものではない。そして、ハラスメントへの対策の円滑な支援を可能にする技術については、未だ改良の余地を残すものである。
【0008】
本開示の目的は、ハラスメントに関する情報を容易に取得でき、以て、ハラスメントへの対策の円滑な支援を可能にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の情報処理装置は、ハラスメントに関する情報を管理する情報処理装置である。そして、この情報処理装置は、前記ハラスメントに関するオンライン相談を希望する第1ユーザから、該ハラスメントが疑われる事例の状況に関する情報である相談情報を、所定のインタフェースを介して取得することと、前記相談情報に基づいて自動で生成され得る回答情報であって、前記相談情報に含まれる前記事例の状況が前記ハラスメントに合致するか否かが一次判定された情報である第1回答情報を、前記ハラスメントに関する所定の事例データを用いて学習を行うことにより構築された第1事前学習モデルに前記相談情報を入力することで取得することと、前記インタフェースを介して、前記第1回答情報を前記第1ユーザに提供することと、を実行する制御部を備える。
【0010】
上記の情報処理装置によれば、ハラスメントが疑われる事例の状況に関する情報としての相談情報を、第1ユーザから直接的に且つ自動で取得することができるため、ハラスメントに関する情報を容易に取得することができる。なお、前記インタフェースは、チャットボットによるチャットサービスを提供可能に構成されたポータルウェブサイトであってもよい。
【0011】
そして、上記の情報処理装置において、前記制御部は、前記第1回答情報において、前記相談情報に含まれる前記事例の状況が前記ハラスメントに合致すると一次判定された場合に、該ハラスメントを行った相手として該事例の状況に基づいて特定され得る第2ユーザから、該ハラスメントが疑われる行為に関する情報であるヒアリング情報を取得することと、前記相談情報及び前記ヒアリング情報に基づいて自動で生成され得る回答情報であって、前記相談情報に含まれる前記事例の状況が前記ハラスメントに合致するか否かが二次判定された情報である第2回答情報を、前記第1事前学習モデルに前記相談情報及び前記ヒアリング情報を入力することで取得することと、前記インタフェースを介して、前記第2回答情報を前記第1ユーザ及び前記第2ユーザに提供することと、を更に実行してもよい。
【0012】
また、この場合、前記制御部は、前記第2回答情報において、前記相談情報に含まれる前記事例の状況が前記ハラスメントに合致すると二次判定された場合に、前記相談情報及び前記ヒアリング情報に基づいて自動で生成され得る対処情報であって、前記ハラスメントへの対処に関する情報である対処情報を、前記ハラスメントに関する所定の対処データを用いて学習を行うことにより構築された第2事前学習モデルに前記相談情報及び前記ヒアリング情報を入力することで取得することと、前記インタフェースを介して、前記対処情報を前記第1ユーザ及び前記第2ユーザに提供することと、を更に実行してもよい。これによれば、相談情報に含まれる事例の状況がハラスメントに合致するか否かが判定されるだけでなく、そのハラスメントへの対処方針も自動で生成されることになる。これにより、ハラスメントの対策についてのコストが削減されるとともに、ハラスメントへの対策の円滑な支援が可能になる。
【0013】
更に、前記制御部は、前記第2事前学習モデルに学習させるための教師データであって、所定の組織における就業規則と前記ハラスメントへの対処に関する分類ラベルとの組に関する第1データ、及び所定のユーザについての人事情報と前記ハラスメントへの対処に関する分類ラベルとの組に関する第2データを用いて、前記第2事前学習モデルに学習を行わせることを、更に実行し、前記第2事前学習モデルに、前記第2ユーザが属する組織における就業規則及び前記第2ユーザについての人事情報を入力することで、前記対処情報を取得してもよい。このとき、前記人事情報は、前記組織に対する前記ユーザの貢献に関する情報を含んでもよい。そして、前記制御部は、前記第2事前学習モデルに学習を行わせるとき、前記第2データにおいて、前記ユーザの前記組織に対する貢献の度合いが大きいほど前記ハラスメントへの対処が軽減されるように、分類ラベルを調整してもよい。これによれば、第2ユーザが属する組織やその第2ユーザに特化した対処方針が生成されることになる。更に、第2ユーザが属する組織における該第2ユーザの貢献や必要性を重視した対処方針を生成させることもできる。また、前記制御部は、前記相談情報に含まれる前記事例の状況と、それに対する前記対処情報と、に基づいて、前記ハラスメントに対する予防ガイドラインを自動で生成し、該対処情報を取得するために用いられた前記就業規則に該予防ガイドラインを追加することで該就業規則を更新することを、更に実行してもよい。これにより、組織におけるハラスメントに対する予防を定着させ易くなる。
【0014】
また、本開示の情報処理装置は、前記ハラスメントに関するオンライン相談を希望する第1ユーザから、該ハラスメントが疑われる事例の状況に関する情報である相談情報を、所定のインタフェースを介して取得することと、前記相談情報に基づいて自動で生成され得る回答情報であって、前記相談情報に含まれる前記事例の状況が前記ハラスメントに合致するか否かが一次判定された情報である第1回答情報を、前記ハラスメントに関する所定の事例データを用いて学習を行うことにより構築された第1事前学習モデルに前記相談情報を入力することで取得することと、前記第1回答情報を、前記第1ユーザが属する組織において人事に関する業務に従事する人事ユーザに提供することと、を実行する制御部を備えてもよい。これにより、人事ユーザは、第1ユーザからの相談情報に対して、第1回答情報に基づいて迅速且つ的確に対応することができ、以て、人事ユーザは、次のアクションに迷うことなく、事態が深刻化する前に問題解決に着手することができる。また、本開示の情報処理装置は、所定のユーザによって生成された文章情報について、該ユーザが該文章情報を送信する前、又は送信した後の所定のタイミングにおいて、該文章情報を取得することと、前記文章情報に基づいて自動で生成され得る回答情報であって、前記文章情報に含まれるワードが前記ハラスメントに合致するか否かが判定された情報である第3回答情報を、前記ハラスメントに関する所定のワードデータを用いて学習を行うことにより構築された第3事前学習モデルに前記文章情報を入力することで取得することと、前記第3回答情報において前記ワードが前記ハラスメントに合致すると判定される場合、所定のインタフェースを介して、該ワードの改善提案を前記ユーザに提供することと、を実行する制御部を備えてもよい。
【0015】
また、本開示は、コンピュータによる情報処理方法の側面から捉えることができる。すなわち、本開示の情報処理方法は、ハラスメントに関する情報を管理する情報処理方法であって、コンピュータが、前記ハラスメントに関するオンライン相談を希望する第1ユーザから、該ハラスメントが疑われる事例の状況に関する情報である相談情報を、所定のインタフェースを介して取得することと、前記相談情報に基づいて自動で生成され得る回答情報であって、前記相談情報に含まれる前記事例の状況が前記ハラスメントに合致するか否かが一次判定された情報である第1回答情報を、前記ハラスメントに関する所定の事例データを用いて学習を行うことにより構築された第1事前学習モデルに前記相談情報を入力することで取得することと、前記インタフェースを介して、前記第1回答情報を前記第1ユーザに提供することと、を実行する。
【0016】
また、本開示は、情報処理プログラムの側面から捉えることができる。すなわち、本開示の情報処理プログラムは、ハラスメントに関する情報を管理する情報処理プログラムであって、コンピュータに、前記ハラスメントに関するオンライン相談を希望する第1ユーザから、該ハラスメントが疑われる事例の状況に関する情報である相談情報を、所定のインタフェースを介して取得することと、前記相談情報に基づいて自動で生成され得る回答情報であって、前記相談情報に含まれる前記事例の状況が前記ハラスメントに合致するか否かが一次判定された情報である第1回答情報を、前記ハラスメントに関する所定の事例データを用いて学習を行うことにより構築された第1事前学習モデルに前記相談情報を入力することで取得することと、前記インタフェースを介して、前記第1回答情報を前記第1ユーザに提供することと、を実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、ハラスメントに関する情報を容易に取得でき、以て、ハラスメントへの対策の円滑な支援が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態における情報処理システムの概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態における、情報処理システムに含まれるサーバの構成要素をより詳細に示すとともに、サーバと通信を行うユーザ端末の構成要素を示した図である。
図3】第1実施形態における情報処理システムの動作の流れを例示する図である。
図4】チャットボットによるチャットサービスに用いられるインタフェースで表示される画面を例示する第1の図である。
図5】チャットボットによるチャットサービスに用いられるインタフェースで表示される画面を例示する第2の図である。
図6】第2実施形態における事前学習モデルに対する入力から得られる識別結果と、該事前学習モデルを構成するニューラルネットワークを説明するための第1の図である。
図7】第2実施形態における事前学習モデルに対する入力から得られる識別結果と、該事前学習モデルを構成するニューラルネットワークを説明するための第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0020】
<第1実施形態>
第1実施形態における情報処理システムの概要について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における情報処理システムの概略構成を示す図である。本実施形態に係る情報処理システム100は、ネットワーク200と、サーバ300と、ユーザ端末400と、を含んで構成される。なお、本開示の情報処理システムは、ハラスメントに関する情報を管理するシステムであって、該ハラスメントに関する情報の管理がサーバ300によって実行される。また、以下の説明において、情報処理システム100を利用する利用者ユーザのうち、ハラスメントに関するオンライン相談を希望するユーザを第1ユーザと称し、該ハラスメントを行った相手として特定され得るユーザを第2ユーザと称するものとする。そして、第1ユーザおよび第2ユーザの夫々が、ユーザ端末400を所持し得る。
【0021】
ネットワーク200は、例えば、IPネットワークである。ネットワーク200は、IPネットワークであれば、無線であっても有線であっても無線と有線の組み合わせであってもよく、例えば、無線による通信であれば、ユーザ端末400は、無線LANアクセスポイント(不図示)にアクセスし、LANやWANを介してサーバ300と通信してもよい。また、ネットワーク200は、これらの例に限られず、例えば、公衆交換電話網や、光回線、ADSL回線、衛星通信網などであってもよい。
【0022】
サーバ300は、ネットワーク200を介して、ユーザ端末400と接続される。なお、図1において、説明を簡単にするために、サーバ300は1台、ユーザ端末400は4台示してあるが、これらに限定されないことは言うまでもない。
【0023】
サーバ300は、データの取得、生成、更新等の演算処理及び加工処理のための処理能力のあるコンピュータ機器であればどの様な電子機器でもよく、例えば、パーソナルコンピュータ、サーバ、メインフレーム、その他電子機器であってもよい。すなわち、サーバ300は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリ、あるいは、CDやDVDのようなディスク記録媒体であってもよい。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納されている。
【0024】
また、サーバ300は、本実施形態に係る情報処理システム100専用のソフトウェアやハードウェア、OS等を設けずに、クラウドサーバによるSaaS(Software as a Service)、Paas(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)を適宜用いてもよい。
【0025】
ユーザ端末400は、情報処理システム100を利用する利用者ユーザ(これは、第1ユーザおよび第2ユーザである。)が保有する携帯端末等の電子機器であればよく、例えば、携帯端末、タブレット端末、スマートフォン、ウェアラブル端末、パーソナルコンピュータ等、その他端末機器であってもよい。
【0026】
次に、図2に基づいて、主にサーバ300の構成要素の詳細な説明を行う。図2は、第1実施形態における、情報処理システム100に含まれるサーバ300の構成要素をより詳細に示すとともに、サーバ300と通信を行うユーザ端末400の構成要素を示した図である。
【0027】
サーバ300は、機能部として通信部301、記憶部302、制御部303を有しており、補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各機能部等が制御されることによって、各機能部における所定の目的に合致した各機能を実現することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0028】
ここで、通信部301は、サーバ300をネットワーク200に接続するための通信インタフェースである。通信部301は、例えば、ネットワークインタフェースボードや、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。サーバ300は、通信部301を介して、ユーザ端末400やその他の外部装置と通信可能に接続される。
【0029】
記憶部302は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。主記憶装置は、制御部303によって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置は、制御部303において実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される装置である。記憶部302には、後述する事前学習モデルが予め記憶される。また、記憶部302は、ユーザ端末400等から送信されたデータを記憶し、記憶部302には、後述する相談情報やヒアリング情報が記憶され得る。なお、サーバ300は、通信部301を介してユーザ端末400等から送信されたデータを取得することができる。
【0030】
制御部303は、サーバ300が行う制御を司る機能部である。制御部303は、CPUなどの演算処理装置によって実現することができる。制御部303は、更に、第1取得部3031と、第2取得部3032と、提供部3033と、の3つの機能部を有して構成される。各機能部は、記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0031】
第1取得部3031は、所定のインタフェースを介して、第1ユーザから相談情報を取得する。ここで、上記の相談情報は、ハラスメントが疑われる事例の状況に関する情報である。第1ユーザは、ユーザ端末400を用いて、上記のインタフェースにアクセスすることで、相談情報を入力することができる。そして、第1取得部3031は、第1ユーザのユーザ端末400から上記のインタフェースを介して送信された情報を取得することで相談情報を取得し、これをサーバ300の記憶部302に記憶させる。
【0032】
なお、第1取得部3031は、後述する第1回答情報において、相談情報に含まれる事例の状況がハラスメントに合致すると一次判定された場合に、第2ユーザからヒアリング情報を取得する。ここで、上記のヒアリング情報は、ハラスメントが疑われる行為に関する情報である。第1取得部3031は、例えば、第2ユーザのユーザ端末400から送信された情報を取得することでヒアリング情報を取得し、これをサーバ300の記憶部302に記憶させる。
【0033】
ここで、本実施形態におけるユーザ端末400は、機能部として通信部401、入出力部402、記憶部403を有している。通信部401は、ユーザ端末400をネットワーク200に接続するための通信インタフェースであり、例えば、ネットワークインタフェースボードや、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。入出力部402は、通信部401を介して外部から送信されてきた情報等を表示させたり、通信部401を介して外部に情報を送信する際に当該情報を入力したりするための機能部である。記憶部403は、サーバ300の記憶部302と同様に主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。
【0034】
入出力部402は、更に、表示部4021、操作入力部4022、画像・音声入出力部4023を有している。表示部4021は、各種情報を表示する機能を有し、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)ディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等により実現される。操作入力部4022は、ユーザからの操作入力を受け付ける機能を有し、具体的には、タッチパネル等のソフトキーあるいはハードキーにより実現される。画像・音声入出力部4023は、静止画や動画等の画像の入力を受け付ける機能を有し、具体的には、Charged-Coupled Devices(CCD)、Metal-oxide-semiconductor(MOS)あるいはComplementary Metal-Oxide-Semiconductor(CMOS)等のイメージセンサを用いたカメラにより実現される。また、画像・音声入出力部4023は、音声の入出力を受け付ける機能を有し、具体的には、マイクやスピーカーにより実現される。
【0035】
そうすると、第1ユーザは、このように構成されたユーザ端末400を用いて、上記のインタフェースにアクセスすることができる。ここで、サーバ300は、上記のインタフェースにアクセスするための情報を第1ユーザのユーザ端末400に提供してもよい。
【0036】
第2取得部3032は、後述する事前学習モデルに上記の相談情報を入力することで、第1回答情報を取得する。ここで、第1回答情報は、相談情報に基づいて自動で生成され得る情報であって、相談情報に含まれる事例の状況がハラスメントに合致するか否かが一次判定された情報である。つまり、第2取得部3032は、上記の相談情報および事前学習モデルに基づいて、第1回答情報を自動で生成することができる。なお、後述するように、第2取得部3032は、後述する事前学習モデルに上記の相談情報およびヒアリング情報を入力することで、第2回答情報も取得する。ここで、第2回答情報は、相談情報及びヒアリング情報に基づいて自動で生成され得る情報であって、相談情報に含まれる事例の状況がハラスメントに合致するか否かが二次判定された情報である。
【0037】
そして、提供部3033は、上記のインタフェースを介して、上記の第1回答情報および第2回答情報を第1ユーザに提供する。
【0038】
なお、上記のインタフェースは、例えば、チャットボットによるチャットサービスを提供可能に構成されたポータルウェブサイトである。
【0039】
近年、人工知能等を用いて、入力される入力テキストデータに対して適切な応答である出力テキストデータを出力するAIチャットボットが実用化されていて、上記のインタフェースは、このようなチャットボットによるチャットサービスに第1ユーザを導くためのウェブサイトである。
【0040】
そして、このようなAIチャットボットのために上記の事前学習モデルが構築される。ここで、事前学習モデルは、例えば、ディープラーニングにより生成されるニューラルネットワークモデルを用いたものであって、上記の相談情報やヒアリング情報の入力を受け付ける入力層と、入力層に入力されたこれらデータから特徴量を抽出する中間層(隠れ層)と、特徴量に基づく識別結果を回答として出力する出力層とを有する。このような事前学習モデルは、例えば、ハラスメントに関する所定の事例データについて、そのハラスメント事例の状況に関する情報と、それがハラスメントに合致するか否かの分類ラベルと、の組みである教師データを用いて教師あり学習を行うことで構築される。具体的には、特徴量とラベルとの組みをニューラルネットワークに与え、ニューラルネットワークの出力がラベルと同じとなるように、ニューロン同士の結合の重みがチューニングされる。このようにして、教師データの特徴を学習し、入力から結果を推定するための事前学習モデルが帰納的に獲得される。
【0041】
そして、このような事前学習モデルを用いることで、上記の第1回答情報や第2回答情報を自動で生成することができる。
【0042】
この場合、AIチャットボットは、例えば、第1ユーザから相談情報の入力を受付け、上記の事前学習モデルに該相談情報を入力することで第1回答情報を取得し、この第1回答情報を第1ユーザからの入力に対する応答として提供する。
【0043】
なお、制御部303が、第1取得部3031、第2取得部3032、および提供部3033の処理を実行することで、本開示に係る制御部として機能する。
【0044】
ここで、本実施形態における情報処理システム100の動作の流れについて説明する。図3は、本実施形態における情報処理システム100の動作の流れを例示する図である。図3では、本実施形態における情報処理システム100におけるサーバ300とユーザ端末400との間の動作の流れ、およびサーバ300とユーザ端末400とが実行する処理を説明する。なお、図3に例示するフローは、サーバ300と、第1ユーザおよび第2ユーザのユーザ端末400と、の間の動作の流れ、およびサーバ300と、第1ユーザおよび第2ユーザのユーザ端末400と、が実行する処理を説明するものである。
【0045】
本実施形態では、先ず、第1ユーザのユーザ端末400にアクセス情報が入力される(S101)。ここで、上記のアクセス情報は、AIチャットボットによるチャットサービスに第1ユーザを導くためのウェブサイトへのアクセスに関する情報であって、例えば、ユーザIDやパスワード等である。そして、アクセス情報は、第1ユーザのユーザ端末400からサーバ300に送信される。そうすると、サーバ300が、第1ユーザのユーザ端末400から送信された情報を取得する(S102)。
【0046】
サーバ300は、第1ユーザからのアクセス情報を取得すると、次に、該第1ユーザに対してチャットサービスを提供する(S103)。ここで、上記のチャットサービスは、AIチャットボットによるチャットサービスであって、サーバ300は、該チャットサービスを提供可能に構成されたポータルウェブサイトに関する情報を第1ユーザのユーザ端末400に送信することで、該第1ユーザに対してチャットサービスを提供することができる。そうすると、第1ユーザのユーザ端末400が、この情報を取得する(S104)。
【0047】
ここで、図4は、チャットボットによるチャットサービスに用いられるインタフェースで表示される画面を例示する第1の図である。図4に例示する画面SC1は第1ユーザのユーザ端末400の表示部4021に表示され、画面SC1には、第1ユーザからの相談事項を取得するための入力欄SC11、第1ユーザからの入力に対するAIチャットボットの回答欄SC12が示される。そして、第1ユーザは、入力欄SC11において、事例の状況やAIチャットボットの回答に対する返答を入力することができる。
【0048】
図4に示す例では、事例の状況として、上司に過度に叱責されたことが入力されている(図4(a))。この場合、AIチャットボットは、更に第1ユーザからの多くの情報を取得するために、事例の状況に対する追加の質問を生成する(図4(b))。そうすると、図4(c)に示すように、第1ユーザからの返答が更に入力されることになる。このようにして、サーバ300は、第1ユーザに対してチャットサービスを提供することで、入力された事例の状況に関する情報を相談情報として取得する。
【0049】
そして、図3(a)に戻って、上記のチャットサービスを介して第1ユーザのユーザ端末400に入力された相談情報(S105)をサーバ300が取得すると(S106)、サーバ300は、第1回答情報を生成する(S107)。
【0050】
ここで、図5は、チャットボットによるチャットサービスに用いられるインタフェースで表示される画面を例示する第2の図である。図5に示す例では、第1回答情報として、上記の事例の状況がパワーハラスメントに該当する可能性があることが生成されている。なお、上述したように、サーバ300は、事前学習モデルに上記の相談情報を入力することで、第1回答情報を取得することができる。
【0051】
そして、図3に戻って、上記の第1回答情報は、チャットサービスを介して第1ユーザに提供され、第1ユーザのユーザ端末400がこれを取得する(S108)。
【0052】
次に、サーバ300は、第1回答情報に含まれる一次判定の結果が、ハラスメントに合致するか否かを判別する(S109)。S109において肯定判定された場合、サーバ300はS110以降の処理へ進み、S109において否定判定された場合、サーバ300は本フローの実行を終了させる。
【0053】
S109において肯定判定された場合、次に、サーバ300は、第2ユーザからのヒアリング情報を取得する。ここで、サーバ300は、例えば、第2ユーザのユーザ端末400に、ヒアリング情報を入力するためのインタフェースを送信することができる。そうすると、第2ユーザのユーザ端末400には、ヒアリング情報が入力される(S110)。ここで、ヒアリング情報は、上述したように、第2ユーザからのハラスメントが疑われる行為に関する情報であって、第1ユーザからの相談情報に含まれる事例の状況を第2ユーザに確認するためのヒアリング項目(第1ユーザに対する、第2ユーザからの行為や発言、それが行われた場所や周囲の環境等)に対する該第2ユーザからの回答を含んだ情報である。そして、サーバ300は、第2ユーザのユーザ端末400から送信された情報を取得する(S111)。
【0054】
そして、サーバ300は、S106の処理で取得した相談情報と、S111の処理で取得したヒアリング情報と、に基づいて、第2回答情報を生成する(S112)。詳しくは、サーバ300は、上記の事前学習モデルに相談情報およびヒアリング情報を入力することで、相談情報に含まれる事例の状況がハラスメントに合致するか否かが二次判定された第2回答情報を取得する。そして、この第2回答情報は、チャットボット等のインタフェースを介して、第1ユーザおよび第2ユーザに提供され、第1ユーザおよび第2ユーザのユーザ端末400がこれを取得する(S113)。
【0055】
以上に述べた処理フローによれば、第1ユーザは、AIチャットボットに対して相談を始めることができるため、第1ユーザが人には言いにくい悩みを相談することに躊躇してしまう事態が生じることを可及的に抑制でき、第1ユーザは、AIチャットボットを相談窓口として気軽に利用することができる。また、ハラスメントが疑われる事例の状況に関する情報としての相談情報を、第1ユーザから直接的に且つAIチャットボットを利用して自動で取得することができるため、ハラスメントに関する情報を容易に取得することができる。そして、第1ユーザからの相談情報と、第2ユーザからのヒアリング情報と、に基づいて生成される第2回答情報を用いて、ハラスメントへの対策を円滑に支援することが可能になる。
【0056】
そして、以上に述べた情報処理システム100によれば、ハラスメントに関する情報を容易に取得でき、以て、ハラスメントへの対策の円滑な支援が可能になる。
【0057】
<第2実施形態>
第2実施形態について、図6および図7に基づいて説明する。本実施形態では、サーバ300は、上記の第1実施形態の説明で述べた第2回答情報に含まれる二次判定の結果がハラスメントに合致するものであった場合、ハラスメントへの対処に関する情報である対処情報を取得する。そして、サーバ300は、チャットボット等のインタフェースを介して、上記の対処情報を第1ユーザ及び第2ユーザに提供する。
【0058】
ここで、対処情報は、ハラスメントに関する所定の対処データを用いて学習を行うことにより構築された事前学習モデルに、相談情報及びヒアリング情報や、第2ユーザが属する組織における就業規則及び第2ユーザについての人事情報を入力することで取得され得る。このとき、サーバ300は、以下のようにして、予め事前学習モデルを構築することができる。
【0059】
図6は、本実施形態における事前学習モデルに対する入力から得られる識別結果と、該事前学習モデルを構成するニューラルネットワークを説明するための第1の図である。本実施形態では、事前学習モデルとして、ディープラーニングにより生成されるニューラルネットワークモデルを用いる。本実施形態における事前学習モデル30は、相談情報、ヒアリング情報、就業規則、人事情報の入力を受け付ける入力層31と、入力層31に入力されたこれらデータからハラスメントに関する特徴量を抽出する中間層(隠れ層)32と、特徴量に基づく識別結果を出力する出力層33とを有する。なお、図6の例では、事前学習モデル30は、1層の中間層32を有しており、入力層31の出力が中間層32に入力され、中間層32の出力が出力層33に入力されている。ただし、中間層32の数は、1層に限られなくてもよく、事前学習モデル30は、2層以上の中間層32を有してもよい。
【0060】
また、図6によると、各層31~33は、1又は複数のニューロンを備えている。例えば、入力層31のニューロンの数は、入力される画像データに応じて設定することができる。また、出力層33のニューロンの数は、識別結果であるハラスメントへの対処に応じて設定することができる。
【0061】
そして、隣接する層のニューロン同士は適宜結合され、各結合には重み(結合荷重)が機械学習の結果に基づいて設定される。図6の例では、各ニューロンは、隣接する層の全てのニューロンと結合されているが、ニューロンの結合は、このような例に限定されなくてもよく、適宜設定することができる。
【0062】
このような事前学習モデル30は、ハラスメントに関する所定の対処データ(そのハラスメント行為に関する情報と、それに対する対処の分類ラベルと、の組み)に加えて、企業等の組織における就業規則とハラスメントへの対処に関する分類ラベルとの組に関する第1データ、及び企業等の組織に属するユーザについての人事情報とハラスメントへの対処に関する分類ラベルとの組に関する第2データを教師データとして用いて教師あり学習を行うことで構築される。具体的には、特徴量とラベルとの組みをニューラルネットワークに与え、ニューラルネットワークの出力がラベルと同じとなるように、ニューロン同士の結合の重みがチューニングされる。このようにして、教師データの特徴を学習し、入力から結果を推定するための事前学習モデルが帰納的に獲得される。
【0063】
つまり、本実施形態の情報処理システム100によれば、相談情報に含まれる事例の状況がハラスメントに合致するか否かが判定されるだけでなく、そのハラスメントへの対処方針も自動で生成されることになる。これにより、ハラスメントの対策についてのコストが削減されるとともに、ハラスメントへの対策の円滑な支援が可能になる。そして、このとき、第2ユーザが属する組織における就業規則及び第2ユーザについての人事情報が、ハラスメントへの対処に対する入力情報として加味されることで、その組織やそのユーザに特化した対処方針が生成されることになる。なお、サーバ300は、上記の図3の説明で述べたS106の処理において取得した相談情報に含まれる事例の状況と、それに対する対処情報と、に基づいて、ハラスメントに対する予防ガイドラインを自動で生成してもよい。ここで、上記の予防ガイドラインとは、例えば、上記の事例の状況と、それに対してなされた対処と、の組の情報が、事例の状況毎に纏められたものであって、サーバ300は、対処情報を取得するために用いられた就業規則にこのような情報を追加することで、該就業規則に該予防ガイドラインを追加する更新を実行することができる。これにより、組織におけるハラスメントに対する予防を定着させ易くなる。
【0064】
また、本実施形態の情報処理システム100では、サーバ300が上記の事前学習モデルを構築するとき、上記の第2データにおいて、ユーザの組織に対する貢献の度合いが大きいほどハラスメントへの対処が軽減されるように、分類ラベルを調整してもよい。
【0065】
図7は、本実施形態における事前学習モデルに対する入力から得られる識別結果と、該事前学習モデルを構成するニューラルネットワークを説明するための第2の図である。図7に示す事前学習モデル30では、第2データを教師データとして用いて教師あり学習が行われる際、人事情報として、例えば、人事評価に加えて売上貢献が加味される。そして、人事評価が同一の場合、売上貢献が高いほどハラスメントへの対処が軽減されるように分類ラベルが調整される。これにより、第2ユーザが属する組織における該第2ユーザの貢献や必要性を重視した対処方針が生成されることになる。
【0066】
以上に述べた情報処理システム100によれば、ハラスメントへの対策の円滑な支援が可能になる。
【0067】
<第3実施形態>
第3実施形態について、以下に説明する。
【0068】
本実施形態では、サーバ300は、企業等の組織に属するユーザによって生成された文章情報を取得する。ここで、上記の文章情報は、例えば、電子メールに含まれる文章の情報であって、サーバ300は、ユーザが電子メールを送信する前、又は送信した後の所定のタイミングにおいて、文章情報を取得する。なお、サーバ300は、周知の技術を用いて、上記の文章情報を取得することができる。
【0069】
そして、サーバ300は、事前学習モデルに上記の文章情報を入力することで、第3回答情報を取得する。ここで、第3回答情報は、上記の文章情報に含まれるワードがハラスメントに合致するか否かが判定された情報である。事前学習モデルは、例えば、ディープラーニングにより生成されるニューラルネットワークモデルを用いたものであって、上記の文章情報の入力を受け付ける入力層と、入力層に入力されたデータから特徴量を抽出する中間層(隠れ層)と、特徴量に基づく識別結果を回答として出力する出力層とを有する。このような事前学習モデルは、例えば、ハラスメントに関する所定のワードデータについて、そのワードに関する情報と、それがハラスメントに合致するか否かの分類ラベルと、の組みである教師データを用いて教師あり学習を行うことで構築される。具体的には、特徴量とラベルとの組みをニューラルネットワークに与え、ニューラルネットワークの出力がラベルと同じとなるように、ニューロン同士の結合の重みがチューニングされる。このようにして、教師データの特徴を学習し、入力から結果を推定するための事前学習モデルが帰納的に獲得される。
【0070】
そして、サーバ300は、上記の第3回答情報において文章情報に含まれるワードがハラスメントに合致すると判定される場合、チャットボット等のインタフェースを介して、該ワードの改善提案をユーザに提供する。
【0071】
以上に述べた情報処理システム100によっても、ハラスメントへの対策の円滑な支援が可能になる。
【0072】
<その他の変形例>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0073】
なお、上記の実施形態の説明で述べた第1回答情報について、サーバ300は、第1ユーザが属する組織において人事に関する業務に従事する人事ユーザに提供してもよい。これにより、人事ユーザは、第1ユーザからの相談情報に対して、第1回答情報に基づいて迅速且つ的確に対応することができ、以て、人事ユーザは、次のアクションに迷うことなく、事態が深刻化する前に問題解決に着手することができる。
【0074】
更に、サーバ300は、ハラスメントに関する所定の管理項目について、人事ユーザに対して、必要なアクションを自動生成して提供してもよい。ここで、上記の管理項目とは、「ハラスメントの内容、方針等の明確化と周知・啓発」、「行為者への厳正な対処方針、内容の規定化と周知・啓発」、「相談窓口の設置」、「相談に対する適切な対応」、「事実関係の迅速かつ正確な確認」、「被害者に対する適正な配慮の措置の実施」、「行為者に対する適正な措置の実施」、「再発防止措置の実施」、「業務体制の整備など、事業主や妊娠等した労働者等の実情に応じた必要な措置(妊娠・出産等に関するハラスメントのみ)」、「当事者などのプライバシー保護のための措置の実施と周知」、「相談、協力等を理由に不利益な取扱いを行ってはならない旨の定めと周知・啓発」である。
【0075】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。例えば、第2取得部3032を別の演算処理装置に形成してもよい。このときこれらの演算処理装置は好適に協働可能に構成される。また、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0076】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0077】
100・・・情報処理システム
200・・・ネットワーク
300・・・サーバ
301・・・通信部
302・・・記憶部
303・・・制御部
400・・・ユーザ端末
【要約】
【課題】ハラスメントに関する情報を容易に取得でき、以て、ハラスメントへの対策の円滑な支援を可能にする技術を提供する。
【解決手段】本開示の情報処理装置は、ハラスメントに関する情報を管理する情報処理装置である。そして、この情報処理装置は、ハラスメントに関するオンライン相談を希望する第1ユーザから、該ハラスメントが疑われる事例の状況に関する相談情報を所定のインタフェースを介して取得することと、相談情報に含まれる事例の状況がハラスメントに合致するか否かが一次判定された第1回答情報を、ハラスメントに関する所定の事例データを用いて学習を行うことにより構築された第1事前学習モデルに相談情報を入力することで取得することと、第1回答情報を第1ユーザに提供することと、を実行する制御部を備える。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7