(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】取付け治具付ラグスクリューボルト
(51)【国際特許分類】
E04B 1/48 20060101AFI20240531BHJP
F16B 35/00 20060101ALI20240531BHJP
F16B 35/04 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
E04B1/48 E
F16B35/00 T
F16B35/04 B
(21)【出願番号】P 2024011394
(22)【出願日】2024-01-30
【審査請求日】2024-03-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504170849
【氏名又は名称】株式会社トーネジ
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】岡部 昭
(72)【発明者】
【氏名】石川 遼
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-129431(JP,A)
【文献】実開平6-18713(JP,U)
【文献】実開平6-16711(JP,U)
【文献】特開2021-89053(JP,A)
【文献】特許第7378187(JP,B1)
【文献】特許第7397546(JP,B1)
【文献】特開2021-105308(JP,A)
【文献】特開2013-44198(JP,A)
【文献】特開2016-132868(JP,A)
【文献】特開2004-19370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/48
F16B 35/00
F16B 35/04
F16B 35/06
B25B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下穴に埋設する雄ネジ部と、下穴から突出する連結ネジ部と、回転工具に連結する連結継手とを備えたラグスクリューボルトにおいて、
前記連結継手をナット形状に形成し前記連結ネジ部に着脱自在にネジ止めするように設けると共に、前記雄ネジ部と前記連結継手との間で前記連結ネジ部を挿通する六角形状の回転補助具を設け、
回転補助具は、前記雄ネジ部を埋設して前記連結継手を逆回転する際に、工具で固定されるように構成し、
前記雄ネジ部を埋設した後、前記連結継手と回転補助具とを取り外すように構成したことを特徴とする取付け治具付ラグスクリューボルト。
【請求項2】
前記雄ネジ部の上端部と前記回転補助具との間の前記連結ネジ部に、前記連結ネジ部を挿通する座金部を着脱自在に設けた請求項1記載の取付け治具付ラグスクリューボルト。
【請求項3】
前記回転補助具に、前記連結ネジ部を挿通する座金部を一体に設けた請求項1記載の取付け治具付ラグスクリューボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラグスクリューボルトの取付け作業を容易にする取付け治具付ラグスクリューボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ラグスクリューボルトは木材の下穴に埋設するボルトで、下穴の径と雄ネジの谷径とがほぼ同径のラグスクリューボルトをインパクトレンチ等の回転工具を用いて下穴にねじ込んで埋設し、ラグスクリューボルトの下穴の開口部分に位置する連結部に他の部材を連結するボルトである。
【0003】
このラグスクリューボルトは、連結部の形状が異なった種々のタイプが使用されている。特許文献1に記載されているラグスクリューボルトは、下穴から突出する連結ネジ部を設けたものである。このラグスクリューボルトを下穴にねじ込むために、回転工具に連結する六角形状の連結継手をこの連結ネジ部に一体に形成している。
【0004】
更に、このタイプのラグスクリューボルトは、連結ネジ部に形成する連結継手の位置が異なるものも使用されている(
図8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のラグスクリューボルトは、連結ネジ部2の雄ネジ部1側に連結継手3を形成したタイプである(
図8(イ)参照)。このラグスクリューボルトは、連結継手3の位置まで木材Qに埋設する際に、下穴Q1の表面に回転工具Pの先端を挿入する座繰りQ2と称する凹部を形成する必要がある(
図9(イ)参照)。
【0007】
このような座繰りQ2を形成すると、下穴Q1の開口部側の連結強度が低下する不都合がある。また、この座繰りQ2を埋めるには、エポキシ樹脂等を充填する必要があるので、埋設作業に多くの手間を要する課題もある。
【0008】
そこで、連結継手3を連結ネジ部2の端部側に設けたラグスクリューボルトも使用されている(
図8(ロ)参照)。このラグスクリューボルトは、回転工具Pの先端を挿入する座繰りQ2を形成する必要はない。
【0009】
ところが、このラグスクリューボルトは、連結ネジ部2の上端部から更に連結継手3が突出することになる(
図9(ロ)参照)。そのため、連結ネジ部2に他の部材を連結する際に、突出した連結継手3が工事や作業の妨げになる。また、突出した連結継手3は作業時に危険性を伴い、また意匠的にも問題があるなど多くの課題がある。
【0010】
このように、下穴から突出する連結ネジ部を備えたタイプのラグスクリューボルトには、取付け作業時に様々な課題を有するものであった。
【0011】
そこで、本発明は上述の課題を解決するために創出されたもので、下穴から突出する連結ネジ部を備えたラグスクリューボルトの取付け作業を容易にすることができる取付け治具付ラグスクリューボルトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成すべく本発明の第1の手段は、下穴Q1に埋設する雄ネジ部1と、下穴Q1から突出する連結ネジ部2と、回転工具Pに連結する連結継手3とを備えたラグスクリューボルトにおいて、前記連結継手3をナット形状に形成し前記連結ネジ部2に着脱自在にネジ止めするように設けると共に、前記雄ネジ部1と前記連結継手3との間で前記連結ネジ部2を挿通する六角形状の回転補助具4を設け、回転補助具4は、前記雄ネジ部1を埋設して前記連結継手3を逆回転する際に、工具で固定されるように構成し、前記雄ネジ部1を埋設した後、前記連結継手3と回転補助具4とを取り外すように構成したことにある。
【0013】
第2の手段において前記雄ネジ部1の上端部と前記回転補助具4との間の前記連結ネジ部2に、前記連結ネジ部2を挿通する座金部5を着脱自在に設けたことにある。
【0014】
第3の手段は、前記回転補助具4に、前記連結ネジ部2を挿通する座金部5を一体に設けたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、連結継手3と回転補助具4とで雄ネジ部1を下穴Q1に埋設することにより、従来のごとく座繰りQ2を設ける必要がなく、しかも連結継手3と回転補助具4とを取り外すように構成しているので連結継手3が他の部材の妨げになることもなくなった。
【0016】
また、回転補助具4を工具で固定することで、連結継手3を取り外す際に雄ネジ部1の逆戻りを防止して連結継手3のみを簡単に取り外すことができる。
【0017】
更に、雄ネジ部1の上端部と回転補助具4との間に座金部5を配置することで、雄ネジ部1を正規の位置まで正確に埋設できると共に、連結継手3を取り外す際に雄ネジ部1の逆戻りを強力に防止する。
【0018】
そして、回転補助具4に、前記連結ネジ部2を挿通する座金部5を一体に設けることで、埋設作業確実かつ容易に行うことができる。
【0019】
このように、本発明によると下穴Q1から突出する連結ネジ部を備えたラグスクリューボルトの取付け作業を容易にすることができるといった本発明独自の効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】本発明の取付け状態を示す要部側面図である。
【
図5】本発明の回転補助具を固定した状態を示す平面図である。
【
図7】本発明の回転補助具の他の実施例を示す一部切欠き側面図である。
【
図8】(イ)、(ロ)は従来のラグスクリューボルトを示す斜視図である。
【
図9】(イ)、(ロ)は従来のラグスクリューボルトの埋設例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、下穴Q1に埋設する雄ネジ部1と、下穴Q1から突出する連結ネジ部2と、回転工具Pに連結する連結継手3とを備えたタイプのラグスクリューボルトに関するものである(
図1参照)。
【0022】
本発明の連結継手3は、連結ネジ部2と別体に設けたナット形状を成し、連結ネジ部2に着脱自在にネジ止めするように設けている(
図2参照)。すなわち、連結ネジ部2に連結継手3を一体に形成するのではなく、雄ネジ部1を埋設する際の取付け治具として連結継手3を使用し、埋設後は連結ネジ部2から取り外すものである。
【0023】
更に、雄ネジ部1と連結継手3との間の連結ネジ部2に六角形状の回転補助具4を配している(
図1参照)。この回転補助具4は、雄ネジ部1を下穴Q1に埋設した後、連結継手3を逆回転して取り外す際に固定工具Rで固定しながら連結継手3を逆回転するように構成したものである(
図5参照)。このように連結継手3の下に回転補助具4を配することで、雄ネジ部1を下穴Q1に埋設する際に、連結継手3を連結ネジ部2の端部側に支持することになり、連結ネジ部2に回転補助具4を連結する作業を容易にする。
【0024】
図示の回転補助具4は、連結継手3よりも大径の平面六角形状に形成し、固定工具Rの厚みより肉厚の高さを有し、固定工具Rが回転工具Pに緩衝しないように個形成している(
図4、
図5参照)。この結果、回転補助具4を固定工具Rで固定しながら連結継手3を回転工具Pに連結することが可能になる。
【0025】
また図示例では、回転補助具4の内部を連結ネジ部2が挿通するように形成している(
図3、
図7参照)。
【0026】
更に、雄ネジ部1の上端部と回転補助具4との間の連結ネジ部2に配置する座金部5を設けている(
図3参照)。この座金部5は、連結ネジ部2を挿通して連結ネジ部2に着脱自在に装着する部材である。この座金部5は、雄ネジ部1を下穴Q1に埋設した後、回転補助具4と共に連結ネジ部2から取り外す取付け治具である。また、他の部材を連結する際に、この座金部5をそのまま使用することも可能である。
【0027】
図7は、回転補助具4の他の実施例を示している。この回転補助具4は、六角筒状の回転補助具4に座金部5を一体化したものである。一体化する手段は、溶接や切出しなどの手段を問わない。そして、雄ネジ部1の上端部側と連結継手3との間の連結ネジ部2に座金部5付の回転補助具4を挿通する(
図1参照)。
【0028】
本発明の使用方法は、連結継手3に回転工具Pを連結して木材Qの下穴Q1に雄ネジ部1を埋設する(
図4参照)。その後、連結継手3を逆回転して取り外す際に、回転補助具4を固定工具Rで固定しながら連結継手3を取り外す(
図5参照)。
【0029】
この際、連結継手3は、回転工具Pの回転力で強力に締め付けられて連結ネジ部2に固着しているので、連結継手3を逆回転すると雄ネジ部1が下穴Q1から抜け出てしまうおそれがある。そのため、連結継手3を逆回転する場合、回転補助具4をスパナ等の固定工具Rで固定した状態で連結継手3を逆回転して取り外す(
図5参照)。
【0030】
連結継手3を取り外した後、更に回転補助具4や座金部5を取り外し、連結ネジ部2に固定ナットSや座金T等の他の部材を連結して他の部材を木材Qに固定する(
図6参照)。この結果、従来のごとく、座繰りを形成することなく、突出する連結継手3の妨げもなく連結ネジ部2のみを使用することができる。
【0031】
尚、本発明において連結継手3や回転補助具4、座金部5の構造、寸法、材質、あるいは使用方法などは図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で任意に変更することができるものである。
【符号の説明】
【0032】
P 回転工具
Q 木材
Q1 下穴
Q2 座繰り
R 固定工具
S 固定ナット
T 座金
1 雄ネジ部
2 連結ネジ部
3 連結継手
4 回転補助具
5 座金部
【要約】
【課題】下穴Q1から突出する連結ネジ部を備えたラグスクリューボルトの取付け作業を容易にすることができる取付け治具付ラグスクリューボルトを提供する。
【解決手段】回転工具Pに連結する連結継手3を備えたラグスクリューボルトを構成する。下穴Q1に埋設する雄ネジ部1と下穴Q1から突出する連結ネジ部2とを設ける。前記連結継手3をナット形状に形成する。連結ネジ部2に連結継手3を着脱自在にネジ止めする。雄ネジ部1と連結継手3との間の連結ネジ部2に六角形状の回転補助具4を設ける。雄ネジ部1を埋設した後、連結継手3と前記回転補助具4とを取り外すように構成する。
【選択図】
図2