(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】蜂用巣箱
(51)【国際特許分類】
A01K 47/06 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
A01K47/06
(21)【出願番号】P 2024012242
(22)【出願日】2024-01-30
【審査請求日】2024-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594137557
【氏名又は名称】丸東東海商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】金子 幸義
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-136870(JP,A)
【文献】特開2017-143743(JP,A)
【文献】特開2016-34236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に蜂用の巣枠を収納可能な箱体に形成された蜂用巣箱であって、
前記蜂用巣箱の一の側壁の最外面を構成する板状の表板と、
前記表板に貫通形成されて前記蜂用巣箱の内側および外側を連通する巣門と、
前記表板の内側に配置され、前記表板の板厚方向に垂直な所定方向へのスライド移動に応じて前記巣門を開閉するスライド部材と、
前記所定方向に延びるように前記表板に貫通形成された開口部と、
前記開口部を通って前記スライド部材から前記表板の外側へ張り出し、前記スライド部材と共に前記所定方向に移動可能な把持部と、
前記把持部の移動を規制可能なロック部と、を備え、
前記ロック部を前記開口部の内部に位置させることで前記把持部の移動が規制されるロック状態と、前記ロック部を前記開口部の外部に位置させることで前記把持部の移動が許容される解除状態とが切り替えられることを特徴とする蜂用巣箱。
【請求項2】
前記開口部は、前記所定方向に沿ってそれぞれ延び、互いに幅方向に離れた第1側縁および第2側縁を備え、
前記ロック部は、前記第1側縁または前記第2側縁を回転軸として、前記表板に回転可能に取り付けられた板状の部位であることを特徴とする請求項1記載の蜂用巣箱。
【請求項3】
前記巣門を閉じた前記ロック状態において、
前記ロック部は、前記開口部の内部の前記把持部と、前記第1側縁および前記第2側縁の一方との間に配置される引掛部を備え、
前記把持部は、前記表板の外側に沿って前記第1側縁および前記第2側縁の一方側へ張り出し、前記引掛部と前記板厚方向に対向する第1張出部を備えることを特徴とする請求項2記載の蜂用巣箱。
【請求項4】
前記把持部は、弾性を有する合成樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項3記載の蜂用巣箱。
【請求項5】
前記開口部は、前記所定方向の端縁のうち前記巣門を閉じるときの前記スライド部材の前進側に位置する第1端縁と、
前記第1側縁および前記第2側縁の他方を前記幅方向に切り欠いて前記第1端縁を延長する第1溝と、を備え、
前記把持部は、前記開口部の内部を前記幅方向に移動可能であることを特徴とする請求項3記載の蜂用巣箱。
【請求項6】
前記第1溝の前記幅方向の端部に前記把持部を接触させたとき、前記第1張出部が前記ロック状態の前記引掛部と前記板厚方向に対向することを特徴とする請求項5記載の蜂用巣箱。
【請求項7】
前記開口部は、前記所定方向に沿ってそれぞれ延び、互いに幅方向に離れた第1側縁および第2側縁と、
前記所定方向の端縁のうち、前記巣門を閉じるときの前記スライド部材の前進側とは反対側に位置する第2端縁と、
前記第1側縁または前記第2側縁を前記幅方向に切り欠き、前記把持部の前記幅方向の最大寸法以上に前記第2端縁を延長する第2溝と、を備え、
前記把持部は、前記開口部の内部を前記幅方向に移動可能であり、
前記第2溝の前記幅方向の端部に前記把持部を接触させたとき、前記表板の外側と前記板厚方向に対向する第2張出部を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の蜂用巣箱。
【請求項8】
前記巣門は、前記所定方向の縁のうち前記巣門を閉じるときの前記スライド部材の前進側に位置する閉鎖縁を備え、
前記スライド部材は、前記前進側の縁であって前記巣門を閉じるときに前記閉鎖縁を前記前進側へ越える前進側縁を備え、
前記前進側縁は、前記閉鎖縁の長さ方向の両端よりも外側へ延長されると共に、長さ方向の少なくとも片側へ向かうにつれて前記前進側へ張り出すように前記閉鎖縁に対して傾斜することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の蜂用巣箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蜂用巣箱に関し、特に意図しない巣門の開閉を抑制できる蜂用巣箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、農作物を受粉させるための複数匹の蜂を蜂用巣箱に営巣させた後、ビニールハウス等の圃場へ蜂用巣箱を運搬することが行われている。運搬時に蜂用巣箱から外側へ蜂が出ないようにしつつ、圃場への設置時や営巣時に蜂用巣箱の内外を蜂が行き来できるように、蜂の出入口である巣門を開閉するための機構が蜂用巣箱に設けられている。特許文献1に開示された蜂用巣箱では、作業者が把持部を掴んでスライドさせることによって、巣門が開閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された技術に対し、周囲の物品や作業者が蜂用巣箱の把持部に当たること等に起因した、意図しない巣門の開閉を抑制することが望まれている。
【0005】
本発明は上述した要求に応えるためになされたものであり、意図しない巣門の開閉を抑制できる蜂用巣箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の蜂用巣箱は、内部に蜂用の巣枠を収納可能な箱体に形成された蜂用巣箱であって、前記蜂用巣箱の一の側壁の最外面を構成する板状の表板と、前記表板に貫通形成されて前記蜂用巣箱の内側および外側を連通する巣門と、前記表板の内側に配置され、前記表板の板厚方向に垂直な所定方向へのスライド移動に応じて前記巣門を開閉するスライド部材と、前記所定方向に延びるように前記表板に貫通形成された開口部と、前記開口部を通って前記スライド部材から前記表板の外側へ張り出し、前記スライド部材と共に前記所定方向に移動可能な把持部と、前記把持部の移動を規制可能なロック部と、を備え、前記ロック部を前記開口部の内部に位置させることで前記把持部の移動が規制されるロック状態と、前記ロック部を前記開口部の外部に位置させることで前記把持部の移動が許容される解除状態とが切り替えられる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の蜂用巣箱によれば、作業者が把持部を掴み、開口部に沿って所定方向へ把持部を移動させることにより、それに連なるスライド部材も移動して巣門が開閉される。作業者がロック部を開口部の内部に位置させたときに、把持部の移動が規制されるロック状態となる。一方、作業者がロック部を開口部の外部に位置させたときに、把持部の移動が許容される解除状態となる。これらの状態を作業者が任意に切り替えることによって、意図しない巣門の開閉を抑制できる。
【0008】
請求項2記載の蜂用巣箱によれば、請求項1記載の蜂用巣箱が奏する効果に加え、次の効果を奏する。開口部は、所定方向に沿ってそれぞれ延び、互いに幅方向に離れた第1側縁および第2側縁を備える。ロック部は、第1側縁または第2側縁を回転軸として、表板に回転可能に取り付けられた板状の部位である。この回転軸まわりのロック部の回転によって、ロック部が開口部の内部に位置するロック状態と、ロック部が開口部の外部に位置する解除状態とを切り替える機構を簡素化できる。
【0009】
請求項3記載の蜂用巣箱によれば、請求項2記載の蜂用巣箱が奏する効果に加え、次の効果を奏する。巣門を閉じたロック状態において、ロック部は、開口部の内部の把持部と、第1側縁および第2側縁の一方との間に配置される引掛部を備える。巣門を閉じたロック状態において、把持部は、表板の外側に沿って第1側縁および第2側縁の一方側へ張り出し、引掛部と板厚方向に対向する第1張出部を備える。これにより、基本的には、巣門を閉じたロック状態から、ロック部が回転して解除状態へ切り替わろうとするときに、引掛部が第1張出部に引っ掛かり、解除状態へ切り替わり難い。引掛部の回転軌跡から第1張出部が退避するように、作業者が把持部を変形させること等により、引掛部と第1張出部との引っ掛かりが解除され、ロック部を解除状態へ切り替え易くなる。よって、意図せずにロック部が解除状態となることを抑制できるので、意図せずに巣門が開くことをより抑制できる。
【0010】
請求項4記載の蜂用巣箱によれば、請求項3記載の蜂用巣箱が奏する効果に加え、次の効果を奏する。把持部は、弾性を有する合成樹脂によって形成されている。そのため、巣門を閉じたロック状態では、周囲の物品や作業者が把持部に当たって把持部が弾性変形しても、把持部の弾性復帰によって引掛部と第1張出部との引っ掛かりを維持し易くできる。よって、意図せずにロック部が解除状態となることをより抑制できるので、意図せずに巣門が開くことをより一層抑制できる。
【0011】
請求項5記載の蜂用巣箱によれば、請求項3記載の蜂用巣箱が奏する効果に加え、次の効果を奏する。開口部は、所定方向の端縁のうち巣門を閉じるときのスライド部材の前進側に位置する第1端縁と、第1側縁および第2側縁の他方(引掛部とは反対側)を幅方向に切り欠いて第1端縁を延長する第1溝と、を備える。把持部は、開口部の内部を幅方向に移動可能であるため、所定方向の第1端縁側に把持部を移動させて巣門を閉じた後、把持部を幅方向に移動させて第1溝の内部へ入れることができる。この場合、ロック部をロック状態にしたまま、所定方向のうち巣門を開く方向へ把持部を移動させる誤操作などがあっても、把持部が第1溝に引っ掛かるため、把持部からロック部に荷重が加わり難い。よって、ロック部の耐久性を確保できる。
【0012】
請求項6記載の蜂用巣箱によれば、請求項5記載の蜂用巣箱が奏する効果に加え、次の効果を奏する。第1溝の幅方向の端部に把持部を接触させたときでも、第1張出部がロック状態の引掛部と板厚方向に対向し、引掛部と第1張出部との引っ掛かりを維持し易くできる。よって、意図せずにロック部が解除状態となることをより抑制できるので、意図せずに巣門が開くことをより一層抑制できる。
【0013】
請求項7記載の蜂用巣箱によれば、請求項1から6のいずれかに記載の蜂用巣箱が奏する効果に加え、次の効果を奏する。開口部は、所定方向に沿ってそれぞれ延び、互いに幅方向に離れた第1側縁および第2側縁と、所定方向の端縁のうち、巣門を閉じるときのスライド部材の前進側とは反対側に位置する第2端縁と、第1側縁または第2側縁を幅方向に切り欠いて第2端縁を延長する第2溝と、を備える。把持部は、開口部の内部を幅方向に移動可能であるため、巣門を開いた後、把持部を幅方向に移動させて第2溝の内部へ入れることができる。この場合、ロック部をロック状態にしたまま、所定方向のうち巣門を閉じる方向へ把持部を移動させる誤操作などがあっても、把持部が第2溝に引っ掛かるため、把持部からロック部に荷重が加わり難い。よって、ロック部の耐久性を確保できる。
【0014】
第2溝によって、把持部の幅方向の最大寸法以上に第2端縁が延長されるので、スライド部材に連なった把持部を、表板の内側から第2溝に挿入するようにして、蜂用巣箱を組み立てることができる。但しこの場合、蜂用巣箱の使用時など、周囲の物品や作業者に当たった把持部が第2溝から表板の内側へ入り込んでしまうおそれがある。しかし、第2溝の幅方向の端部に把持部を接触させたとき、把持部の第2張出部(第1張出部と同一部位でも良い)が表板の外側と板厚方向に対向するので、これらの対向する部分の引っ掛かりによって、上述した入り込みを抑制できる。
【0015】
請求項8記載の蜂用巣箱によれば、請求項1から6のいずれかに記載の蜂用巣箱が奏する効果に加え、次の効果を奏する。巣門は、所定方向の縁のうち巣門を閉じるときのスライド部材の前進側に位置する閉鎖縁を備える。巣門を開いた状態から把持部を移動させ、スライド部材の前進側の縁である前進側縁が、巣門の閉鎖縁を前進側へ越えることで、巣門が閉じる。前進側縁は、閉鎖縁の長さ方向の両端よりも外側へ延長されると共に、長さ方向の少なくとも片側へ向かうにつれて前進側へ張り出すように閉鎖縁に対して傾斜するので、巣門が閉じるときに、スライド部材の前進側縁と巣門の閉鎖縁とを引っ掛かり合い難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態における蜂用巣箱の斜視図である。
【
図2】蜂用巣箱における巣門側の側壁の分解斜視図である。
【
図3】巣門を閉じたときの巣門側の側壁の内部構造を示す正面図である。
【
図4】巣門を開いたときの巣門側の側壁の内部構造を示す正面図である。
【
図5】(a)は巣門を閉じたロック状態における巣門側の側壁の部分拡大正面図であり、(b)は解除状態における巣門側の側壁の部分拡大正面図であり、(c)は巣門を開いたロック状態における巣門側の側壁の部分拡大正面図である。
【
図6】(a)は第2実施形態における蜂用巣箱の正面図であり、(b)は蜂用巣箱における巣門側の側壁の内部構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態における蜂用巣箱10の斜視図である。蜂用巣箱10は、農作物を授粉させるための複数匹の蜂が収容された状態で運搬可能な巣箱である。このような蜂としては、花粉を運ぶミツバチ上科の蜂が挙げられ、特にセイヨウミツバチやマルハナバチ、ニホンミツバチ等が例示される。
【0018】
蜂用巣箱10は、内部に蜂用の巣枠を収納可能な略直方体状の箱体に形成される。蜂用巣箱10は、矩形状の底壁と、底壁の各辺からそれぞれ立ち上がる4枚の矩形状の側壁と、4枚の側壁の上端に架け渡される矩形状の天井壁11と、を備える。これらの各壁は、主に段ボールによって形成されている。
【0019】
天井壁11の全体を開くことで、巣枠が出し入れ可能となる。また、天井壁11を閉じた状態でも、蜂用巣箱10の内部に給餌などを可能とするため、天井壁11には開閉可能な扉部12が設けられる。
【0020】
4枚の側壁のうち、前側の側壁13には、蜂の出入口であって蜂用巣箱10の内側と外側とを連通する矩形状の巣門14が、下部の中央に形成される。また、側壁13には、巣門14の上側に、蜂用巣箱10の内側と外側とを連通する複数の矩形状の通気窓15が形成される。なお、巣門14や通気窓15は、矩形状に限らず、矩形以外の多角形状や円形状などでも良い。
【0021】
複数の通気窓15は、上下方向に3段、左右方向に3列が間隔を空けて配置される。この最下段かつ中央には、通気窓15に代えて、開口部21に沿って移動可能な把持部45と、その把持部45の移動を規制可能なロック部28とが設けられる。即ち、側壁13には計8個の通気窓15が設けられている。
【0022】
ロック部28は、把持部45の移動が規制されるロック状態と、把持部45の移動が許容される解除状態とを切り替えるために、作業者によって操作されるものである。把持部45は、巣門14を開いて通気窓15を閉じた状態と、巣門14を閉じて通気窓15を開いた状態とを切り替えるために、作業者によって操作されるものであり、側壁13から外側(前側)へ張り出す。
【0023】
なお、巣門14を開いた状態では、巣門14を蜂が通過できるように構成されている。一方、通気窓15を開いた状態では、通気窓15を蜂が通過できないように、金網などのメッシュ16で通気窓15が塞がれている。
【0024】
次に
図2及び
図5(a)を参照して、巣門14が設けられた側壁13について詳しく説明する。
図2は、側壁13の分解斜視図である。
図5(a)は、巣門14を閉じたロック状態における側壁13(表板20)の部分拡大正面図である。
図5(a)には、側壁13の開口部21近傍が拡大して図示されている。
【0025】
図2に示すように、側壁13は、側壁13の最外面(前面)から蜂用巣箱10の内側(後方)へ向かって順に、表板20、開閉板30、スライド部材40、中間板50、メッシュ16、裏板60が重ねられた多層構造である。側壁13の最外面を構成する表板20は、板状の段ボールによって構成される。表板20には、巣門14、開口部21及び8個の通気窓15が板厚方向(前後方向)に貫通形成されている。
【0026】
図5(a)に示すように、開口部21は、上下方向(所定方向)に延びて形成される矩形状の部位であり、左右方向(幅方向)に幅広に形成されている。開口部21は、右側の縁である第1側縁22と、左側の縁である第2側縁23と、下側の縁である第1端縁24と、上側の縁である第2端縁25と、を備える。
【0027】
第1側縁22及び第2側縁23は、いずれも上下方向に沿って延び、互いに幅方向に離れている。第1端縁24及び第2端縁25は、いずれも左右方向に沿って延び、互いに上下方向に離れている。更に、開口部21は、第2側縁23の下端側を左右方向に切り欠いて第1端縁24を左方へ延長する第1溝26と、第2側縁23の上端側を左右方向に切り欠いて第2端縁25を左方へ延長する第2溝27と、を備える。
【0028】
ロック部28は、第1側縁22を回転軸として、表板20に回転可能に取り付けられる板状の部位であり、段ボール製の表板20と一体成形されている。ロック部28は、第1側縁22上に設けたミシン目22aで表板20と繋がっており、第2側縁23、第1端縁24及び第2端縁25から切り離されている。
【0029】
ミシン目22a(第1側縁22)まわりにロック部28を回転させ、ロック部28を開口部21の内部に位置させた状態がロック状態である。一方、ロック部28を開口部21の外部に位置させた状態が解除状態である(
図5(b)参照)。このように、ミシン目22aで表板20と繋がったロック部28によれば、ロック状態と解除状態とを切り替える機構を簡素化できる。
【0030】
ロック状態では、ロック部28が第2側縁23と接触するので、それらの摩擦によってロック状態を維持し易く、解除状態へ切り替わり難い。即ち、意図せずにロック部28が解除状態となることを抑制できる。
【0031】
ロック部28の上縁は、第2端縁25から離れた位置にあり、上に凸の曲線状に形成されている。ロック部28をロック状態から解除状態へ切り替えるとき、この曲線によって、ロック部28の上縁に作業者の指などを引っ掛け易くでき、作業者にロック部28を掴ませ易くできる。
【0032】
ロック部28の下縁は、第1端縁24から離れた位置にあり、第1端縁24と略平行に形成されている。この下縁の右端部からは、下方へ向かって引掛部29が突出する。引掛部29は、ミシン目22aで表板20と繋がっており、ロック状態で第1端縁24に接触する。
【0033】
図2に示すように、開閉板30は、表板20に対して上下方向にスライド移動することで、通気窓15を開閉するための部材であり、板状の段ボールによって構成される。開閉板30は、表板20に対して上下方向の寸法が短く(約3/4)、左右方向の寸法が略同一である。
【0034】
開閉板30は、下縁の左右方向の中央部から上方へ向かって、矩形状の切欠部31により切り欠かれている。切欠部31よりも上側の開閉板30には、複数の矩形状の連通窓32が板厚方向に貫通形成されている。連通窓32は、通気窓15と同一の形状および寸法である。
【0035】
複数の連通窓32は、上下方向に2段、左右方向に3列が間隔を空けて配置される。この最下段かつ中央には、連通窓32に代えて、左右方向に延びた線状のスリット33が板厚方向に貫通形成されている。即ち、開閉板30には計5個の連通窓32が設けられている。
【0036】
スライド部材40は、表板20に対して上下方向にスライド移動することで、巣門14を開閉するための薄板状の部材である。スライド部材40は、弾性を有する合成樹脂(例えばポリプロピレン)によって形成される。
【0037】
スライド部材40の上縁における左右方向の中央部からは、前方へ向かって把持部45が突出する。把持部45は、スライド部材40と一体成形された薄板状の部材である。把持部45は、スライド部材40に対して略垂直に折り曲げられており、板厚方向が上下方向を向いている。
【0038】
この把持部45がスリット33に挿入され、スライド部材40が、切欠部31の左右両側に架け渡されるようにして開閉板30の後面に重ねられる。このとき、スライド部材40が開閉板30の連通窓32を塞がないよう、スライド部材40の右上および左上の角部が切り欠かれている。
【0039】
表板20、開閉板30及びスライド部材40を重ねたとき、スリット33に挿入された把持部45は、表板20の開口部21を通って表板20の前面から張り出す。そのため、作業者が把持部45を掴み、開口部21内で把持部45を上下方向に移動させた場合、表板20に対して、開閉板30及びスライド部材40が一体的に上下方向に移動する。
【0040】
把持部45は、表板20の前面に沿って左右方向の両側へそれぞれ張り出す張出部46,47を備える。右側(第1側縁22側)が張出部46であり、左側(第2側縁23側)が張出部47である。なお、把持部45のうち、スライド部材40から張出部46,47までの間の部位を基部48とする。この基部48の前後方向の寸法は、表板20及び開閉板30の板厚の合計よりも大きい。但し、それらの差は、ロック状態の引掛部29の左右方向の寸法よりも小さい。
【0041】
中間板50は、表板20との間に開閉板30を挟んで、開閉板30のスライド移動をガイドするための部材であり、板状の段ボールによって構成される。中間板50は、開口部21を省略した(塞いだ)表板20と略同一に構成される本体部51と、本体部51の上縁から折り曲げられて本体部51の前面に重ねられた調整板部52と、本体部51の下縁から折り曲げられて本体部51の前面に重ねられたガイド部53と、を備える。
【0042】
ガイド部53は、本体部51の巣門14の周囲に重ねられた矩形板状の部材であり、本体部51と同様に巣門14が貫通形成されている。ガイド部53の左右方向の寸法は、切欠部31の左右方向の寸法と略同一である。開閉板30を本体部51に重ねたとき、切欠部31にガイド部53が嵌まる。また、本体部51とガイド部53との間にスライド部材40が挟まれる。
【0043】
調整板部52は、本体部51の左右方向の略全長に亘って重ねられた帯板状の部材であり、最上段の通気窓15よりも上側に位置する。表板20と本体部51との間に開閉板30を挟んだとき、表板20と本体部51との間の上側に生じる隙間が、調整板部52で埋められる。
【0044】
裏板60は、本体部51と略同一に構成され、板状の段ボールによって形成される。この裏板60と本体部51との間にシート状の1枚のメッシュ16が挟まれる。1枚のメッシュ16は、巣門14を塞がず、8個の通気窓15を塞ぐように配置される。
【0045】
なお、裏板60が省略され、本体部51の前面や後面にメッシュ16が貼り付けられても良い。また、メッシュ16が1枚である場合に限らず、8個の通気窓15を個別に塞ぐように、メッシュ16が複数枚設けられても良い。更に、通気窓15の縁にメッシュ16がそれぞれ接着されても良い。
【0046】
次に
図3から
図5(c)を参照して、作業者が行う巣門14及び通気窓15の開閉作業について説明する。
図3は、巣門14を閉じたときの側壁13の内部構造を示す正面図である。
図4は、巣門14を開いたときの側壁13の内部構造を示す正面図である。
図3及び
図4は、表板20を透過した側壁13の正面図であり、表板20の開口部21が二点鎖線で示され、開閉板30等の後面側に隠れたスライド部材40が破線で示されている。
【0047】
図5(a)は、上述した通りである。
図5(b)は、解除状態における側壁13の部分拡大正面図である。
図5(c)は、巣門14を開いたロック状態における側壁13の部分拡大正面図である。
図5(b)及び
図5(c)には、
図5(a)と同様に、側壁13の開口部21近傍が拡大して図示されている。また、
図5(a)から
図5(c)には、開口部21の内部を移動する把持部45の基部48が断面で示され、基部48よりも紙面手前側に位置する張出部46,47が二点鎖線で示されている。
図5(b)には、巣門14を閉じたときの基部48の位置が一点鎖線で示され、巣門14を開いたときの基部48の位置が実線で示されている。
【0048】
図5(b)に示すように、第1溝26と第2溝27との間において、開口部21の第1側縁22と第2側縁23との間の幅(左右方向の寸法)は、把持部45の基部48の幅(左右方向の寸法)と略同一である。そのため、ロック部28の解除状態であれば、作業者は、掴んだ把持部45を、開口部21の内部で上下方向に移動させることができる。この移動にスライド部材40及び開閉板30の両方が連動する。
【0049】
また、開口部21の第1端縁24及び第2端縁25は、第1溝26及び第2溝27によって左右方向に延長されており、基部48の幅がスリット33(
図2参照)の左右方向の長さよりも小さい。そのため、作業者は、第1溝26及び第2溝27に基部48を出し入れするように、掴んだ把持部45を左右方向に移動させることができる。この移動にスライド部材40は連動するが、開閉板30は連動しない。
【0050】
図3に示すように、把持部45を下方へ第1端縁24まで移動させると、開閉板30の切欠部31の上縁が、中間板50のガイド部53の上縁に接触する。このとき、開閉板30の5個の連通窓32が下側2段の5個の通気窓15と一致し、開閉板30の上縁よりも上方に最上段の3個の通気窓15が位置する。これにより、8個の通気窓15が全て開く。更に、第1端縁24の近傍に把持部45が位置するとき、把持部45と連動するスライド部材40が巣門14を塞ぐ。即ち、巣門14が閉じる。
【0051】
なお、巣門14の下縁であって、巣門14を閉じるときのスライド部材40の前進側(下側)に位置する縁を、閉鎖縁14aと称す。同様に、スライド部材40の下縁であって、巣門14を閉じるときのスライド部材40の前進側(下側)に位置する縁を、前進側縁40aと称す。開口部21の内部で把持部45を下方へ移動させて、前進側縁40aが閉鎖縁14aを下側に越えたとき、巣門14が閉じる。
【0052】
閉鎖縁14aは、左右方向に平行な直線状に形成されている。前進側縁40aは、閉鎖縁14aの長さ方向(左右方向)の両端よりも外側へ延長される。更に前進側縁40aのうち閉鎖縁14aを下側に越える部位が、左右方向の中央から両側へ向かうにつれて下側へ張り出すように、閉鎖縁14aに対して傾斜している。
【0053】
これにより、前進側縁40aが閉鎖縁14aを下側に越えて巣門14を閉じるとき、本体部51とガイド部53との間に挟まれたスライド部材40の前進側縁40a近傍が、巣門14の内部で前後方向に変位することを抑制できる。よって、巣門14を閉じるとき、前進側縁40aと閉鎖縁14aとを引っ掛かり合い難くできる。よって、把持部45を移動させて巣門14を閉じる作業をスムーズにできる。
【0054】
図4に示すように、把持部45を上方へ第2端縁25まで移動させると、開閉板30の上縁が、中間板50の調整板部52の下縁に近づく。このとき、開閉板30の5個の連通窓32と、
図4に破線で示した8個の通気窓15とが上下方向に互い違いに並び、8個の通気窓15が開閉板30で覆われる。即ち、8個の通気窓15が全て閉じる。更に、第2端縁25の近傍に把持部45が位置するとき、スライド部材40が巣門14よりも上方へ退避し、巣門14が開く。
【0055】
巣門14を閉じるため、第1端縁24の近傍に把持部45を位置させた
図5(a)の状態と、巣門14を開くため、第2端縁25の近傍に把持部45を位置させた
図5(c)の状態では、ロック部28をロック状態にしておく。これにより、ロック部28によって把持部45の移動が規制され、周囲の物品や作業者が把持部45に当たっても、把持部45が上下方向に移動して巣門14が開閉することを抑制できる。
【0056】
一方、
図5(b)に示すように、ロック部28を解除状態にすることで、把持部45の上下方向の移動が許容され、巣門14の開閉が可能となる。このように、ロック部28のロック状態と解除状態とを作業者が任意に切り替えることによって、意図しない巣門14の開閉を抑制できる。
【0057】
なお、ロック部28は、ミシン目22aで表板20と繋がっているので、蜂用巣箱10の長距離の搬送などが不要になり、ロック状態と解除状態との切り替えが不要になった場合には、ミシン目22aに沿ってロック部28を蜂用巣箱10から容易に取り外すことができる。即ち、ロック状態と解除状態との切り替えを省略して、巣門14を開閉する作業を簡素化できる。
【0058】
図5(a)に示すように、巣門14を閉じたロック状態において、ロック部28の引掛部29が、基部48(開口部21の内部の把持部45)と第1側縁22との間に配置される。更に、この
図5(a)の状態において、把持部45の右側の張出部46が、引掛部29と前後方向に対向する。ミシン目22aまわりに回転する引掛部29の回転軌跡上に張出部46が位置する。
【0059】
これにより、基本的には、
図5(a)の状態から、ロック部28が回転して解除状態へ切り替わろうとするときに、引掛部29が張出部46に引っ掛かり、解除状態へ切り替わり難い。引掛部29の回転軌跡から張出部46が退避するように、作業者が把持部45を下方へ曲げ変形させること等により、引掛部29と張出部46との引っ掛かりが解除され、ロック部28を解除状態へ切り替え易くなる。よって、引掛部29及び張出部46によれば、意図せずにロック部28が解除状態となることを抑制できるので、意図せずに巣門14が開くことをより抑制できる。
【0060】
特に、把持部45は、弾性を有する合成樹脂によって形成されているので、巣門14を閉じたロック状態では、周囲の物品や作業者が把持部45に当たって把持部45が弾性変形しても、把持部45の弾性復帰によって引掛部29と張出部46との引っ掛かりを維持し易くできる。よって、意図せずにロック部28が解除状態となることをより抑制できるので、意図せずに巣門14が開くことをより一層抑制できる。
【0061】
把持部45を下方へ第1端縁24まで移動させて巣門14を閉じた後、把持部45を左方へ移動させて第1溝26の内部へ入れることができる。この場合、ロック部28をロック状態にしたまま、巣門14を開く方向である上方へ把持部45を移動させる誤操作などがあっても、把持部45が第1溝26に引っ掛かるため、把持部45からロック部28に荷重が加わり難い。よって、ロック部28の耐久性を確保できる。
【0062】
更に、第1溝26の左端部に把持部45の基部48を接触(近接)させたとき、把持部45の右側の張出部46がロック状態の引掛部29と前後方向に対向する。そのため、把持部45の一部を第1溝26の内部に収容したときでも、引掛部29と張出部46との引っ掛かりを維持し易くできる。よって、意図せずにロック部28が解除状態となることをより抑制できるので、意図せずに巣門14が開くことをより一層抑制できる。
【0063】
図5(b)に示すように、把持部45を上方へ第2端縁25まで移動させて巣門14を開いた後、
図5(c)に示すように、把持部45を左方へ移動させて第2溝27の内部へ入れることができる。この場合、ロック部28をロック状態にしたまま、巣門14を閉じる方向である下方へ把持部45を移動させる誤操作などがあっても、把持部45が第2溝27に引っ掛かるため、把持部45からロック部28に荷重が加わり難い。よって、ロック部28の耐久性を確保できる。
【0064】
また、把持部45の最大幅は、張出部46,47が形成された部位の幅である。第2溝27によって、この把持部45の最大幅以上に第2端縁25が延長されている。そのため、スライド部材40に連なった把持部45を、表板20の後面側から第2溝27に挿入するようにして、蜂用巣箱10を組み立てることができる。
【0065】
但しこの場合、蜂用巣箱10の使用時など、周囲の物品や作業者に当たった把持部45が、第2溝27から表板20の後面側へ入り込んでしまうおそれがある。しかしながら、本実施形態では、第2溝27の左端部に把持部45の基部48を接触(近接)させたとき、把持部45の左側の張出部47が表板20の前面と前後方向に対向する。そのため、これらの対向する部分の引っ掛かりによって、把持部45が第2溝27から表板20の後面側へ入り込むことを抑制できる。
【0066】
また、第1溝26と第2溝27との間における開口部21の幅や、第1溝26における開口部21の幅は、把持部45の最大幅未満である。これにより、第2溝27以外では、張出部46,47の少なくとも一方が、表板20の前面と前後方向に対向する。そのため、これらの対向する部分の引っ掛かりによって、把持部45が開口部21から表板20の後面側へ入り込むことを抑制できる。
【0067】
次に
図6(a)及び
図6(b)を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、スライド部材40及び把持部45を上下方向に移動させて巣門14を開閉する場合を説明した。これに対し第2実施形態では、スライド部材90及び把持部45を周方向に回転移動させて巣門14を開閉する場合を説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0068】
図6(a)は、第2実施形態における蜂用巣箱70の正面図である。
図6(b)は、蜂用巣箱70における巣門14側の側壁71の内部構造を示す正面図である。蜂用巣箱70の前側の側壁71は、側壁71の最外面(前面)を構成する表板72と、その表板72の内側(後面側)に重ねられるスライド部材90と、を備える。
【0069】
図6(a)には主に表板72が図示され、
図6(b)には主にスライド部材90が図示されている。また、
図6(a)及び
図6(b)に示す向きのまま、スライド部材90に表板72を重ねたときの巣門14の位置が、
図6(b)に一点鎖線で示されている。
【0070】
表板72は、板状の段ボールによって構成される。表板72の下部には、蜂の出入口であって蜂用巣箱70の内側と外側とを連通する矩形状の巣門14が、板厚方向(前後方向)に貫通形成される。
【0071】
また、表板72の巣門14の上側には、蜂用巣箱70の内側と外側とを連通する4個の通気窓73が、前後方向に貫通形成される。4個の通気窓73は、それぞれメッシュ16で塞がれる。4個の通気窓73は、表板72に設けた回転軸74から放射状に延び、回転軸74の周方向に間隔を空けて配置される。以下、回転軸74の周方向を、単に周方向と略し、回転軸74の軸直角方向を、単に軸直角方向と略して説明する。
【0072】
表板72には、周方向(所定方向)に延びるように、円弧状の開口部75が前後方向に貫通形成されている。この開口部75の内部を、スライド部材90に連なる把持部45が周方向に移動可能に構成されている。
【0073】
開口部75は、通気窓73に対して軸直角方向の外側に設けられ、回転軸74の直下から右上へ向かって約45度の範囲に設けられている。この開口部75よりも下側に巣門14が位置する。
【0074】
開口部75は、軸直角方向に幅広に形成されている。開口部75は、軸直角方向(幅方向)の外側の縁である第1側縁76と、軸直角方向の内側の縁である第2側縁77と、周方向の端縁のうち下側に位置する第1端縁78と、周方向の端縁のうち右上側に位置する第2端縁79と、第2側縁77を軸直角方向に切り欠いて第2端縁79を軸直角方向の内側へ延長する第2溝80と、を備える。なお、第2溝80は、第1実施形態の第2溝27と向きが異なるだけで、同様の機能を有する。
【0075】
第1側縁76及び第2側縁77はいずれも、基本的に回転軸74を中心とした円弧状となるよう、周方向に沿って延び、互いに幅方向に離れている。第1側縁76における第1端縁78の近傍は、左右方向と平行な直線状に形成されている。
【0076】
この直線状の部位を回転軸として、ロック部82が表板72に回転可能に取り付けられる。ロック部82は、段ボール製の表板72と一体成形された板状の部位である。ロック部82は、第1側縁76の直線状の部位に設けたミシン目76aで表板72と繋がっており、第2側縁77、第1端縁78及び第2端縁79から切り離されている。
【0077】
第1実施形態と同様に、ミシン目76aまわりにロック部82を回転させ、ロック部82を開口部75の内部に位置させた状態がロック状態であり、ロック部82を開口部75の外部に位置させた状態が解除状態である。
【0078】
ロック部82の左側縁は、第1端縁78から離れた位置にあり、第1端縁78と略平行に形成されている。この左側縁の下端部からは、左方へ向かって引掛部83が突出する。引掛部83は、ミシン目76aで表板72と繋がっており、ロック状態で第1端縁78に接触する。
【0079】
スライド部材90は、板状の段ボールによって構成される部材であり、回転軸74によって表板72の後面に回転可能に取り付けられる。スライド部材90を表板72に対して周方向にスライド移動(回転移動)させることで、通気窓73及び巣門14が開閉する。
【0080】
スライド部材90は、回転軸74を中心とした円形状の円板部91と、円板部91の一部から軸直角方向の外側へ延びる延長部92と、を備える。円板部91には、4個の連通窓93が前後方向に貫通形成される。4個の連通窓93は、通気窓73と同様に、回転軸74から放射状に延び、周方向に間隔を空けて配置される。
【0081】
延長部92には、軸直角方向に延びるスリット94が前後方向に貫通形成されている。このスリット94内を軸直角方向に移動可能な把持部45が、スライド部材90に取り付けられている。把持部45は、開口部75を通って表板72の前面側へ張り出す。把持部45を開口部75内で周方向に移動させると、表板72に対してスライド部材90も周方向に移動する。
【0082】
把持部45を開口部75の第1端縁78まで移動させることで、通気窓73と連通窓93とが連通して通気窓73が開くと共に、巣門14がスライド部材90により塞がれて閉じる。一方、把持部45を開口部75の第2端縁79まで移動させることで、4個の連通窓93間の円板部91により通気窓73が塞がれて閉じると共に、スライド部材90が巣門14の後面側から退避して巣門14が開く。
【0083】
この第2実施形態の蜂用巣箱70においても、第1実施形態と同様に、巣門14を開閉するための把持部45の移動が規制されるロック状態と、その移動が許容される解除状態とを、ロック部82により作業者が任意に切り替えできるので、意図しない巣門14の開閉を抑制できる。
【0084】
更に、巣門14を閉じたロック状態では、把持部45を左方へ曲げ変形させない限り、ロック部82の引掛部83が把持部45の軸直角方向の外側の張出部46に引っ掛かる。よって、意図せずにロック部82が解除状態となることを抑制できるので、意図せずに巣門14が開くことをより抑制できる。
【0085】
第2実施形態では、巣門14の左縁が、巣門14を閉じるときのスライド部材90の前進側(
図6紙面の時計回りの前進側)に位置する縁であり、それを閉鎖縁14bと称す。スライド部材90の延長部92における左下の角部の縁であって、巣門14を閉じるときのスライド部材90の前進側に位置する縁を、前進側縁95と称す。この前進側縁95が閉鎖縁14bを時計回りに越えたとき、巣門14が閉じる。
【0086】
閉鎖縁14bは、上下方向に平行な直線状に形成されている。前進側縁95は、閉鎖縁14bの長さ方向(軸直角方向)の両端よりも外側へ延長される。更に前進側縁95は、軸直角方向の外側から内側へ向かうにつれて、巣門14を閉じるときのスライド部材90の前進側へ張り出すように、閉鎖縁14bに対して傾斜している。
【0087】
これにより、第1実施形態と同様に、前進側縁95が閉鎖縁14bを越えて巣門14を閉じるとき、前進側縁95と閉鎖縁14bとを引っ掛かり合い難くできる。その結果、把持部45を移動させて巣門14を閉じる作業をスムーズにできる。
【0088】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、巣門14や通気窓15,73、連通窓32,93、開口部21,75の形状やサイズ、数などは、適宜変更されても良い。通気窓15,73及び連通窓32,93が1個のみでも良く、巣門14が2個以上でも良い。把持部45の張出部46,47の少なくとも一方が省略されても良い。
【0089】
また、表板20,72や開閉板30、中間板50、裏板60、スライド部材90等、蜂用巣箱10,70の各部は、段ボールに代えて、その他の板材で構成されても良い。その他の板材としては、ハードボードやパーティクルボード等の木製材料、厚紙、発泡スチロール等の合成樹脂、金属が挙げられる。また、把持部45が段ボールや木製材料、厚紙、金属、ゴム等で構成されても良い。
【0090】
蜂用巣箱10,70の側壁13,71以外が段ボール製のカバー等で覆われても良い。また、蜂用巣箱10,70を運搬し易くするための持ち手などが、蜂用巣箱10,70やカバーに設けられても良い。
【0091】
上記実施形態では、スライド部材40,90及び把持部45が、開口部21,75の内部を上下方向または周方向にスライド移動することにより、巣門14や通気窓15,73が開閉される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。スライド部材40,90及び把持部45を、上下方向や周方向以外の所定方向(例えば左右方向や斜め方向)にスライド移動させることで、巣門14等が開閉されるように構成されても良い。
【0092】
上記実施形態では、第1側縁22,76を回転軸として、ロック部28,82が表板20,72に回転可能に取り付けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、第2側縁23,77や第1端縁24,78、第2端縁25,79を回転軸として、ロック部28,82が表板20,72に回転可能に取り付けられても良い。また、ロック部28,82が表板20,72と一体成形される場合に限らず、それらが別部材から構成されても良い。
【0093】
更に、ロック部28,82は、表板20,72に回転可能に取り付けられる場合に限らない。例えば、表板20,72から切り離したロック部28,82を、開口部21,75に嵌めてロック状態とし、開口部21,75から取り外して解除状態とするように構成されても良い。
【0094】
上記実施形態では、巣門14を閉じたロック状態において、把持部45の基部48と第1側縁22,76との間に引掛部29,83が配置される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、基部48と第2側縁23,77との間に引掛部29,83が配置されても良い。この場合、巣門14を閉じたロック状態では、引掛部29,83が、把持部45の第2側縁23,77側の張出部47と前後方向に対向する。
【0095】
開口部21,75に第1溝26を設ける場合、この引掛部29,83から離れた方の第1側縁22,76又は第2側縁23,77を切り欠いて、第1溝26を設ければ良い。なお、開口部21から第1溝26が省略されても良い。また、開口部21,75から第2溝27,80が省略されても良い。第2溝27,80は、第2側縁23,77を切り欠いて形成されても良い。
【符号の説明】
【0096】
10,70 蜂用巣箱
13,71 側壁
14 巣門
14a,14b 閉鎖縁
20,72 表板
21,75 開口部
22,76 第1側縁
23,77 第2側縁
24,78 第1端縁
25,79 第2端縁
26 第1溝
27,80 第2溝
28,82 ロック部
29,83 引掛部
40,90 スライド部材
40a,95 前進側縁
45 把持部
46 張出部(第1張出部)
47 張出部(第2張出部)
【要約】
【課題】意図しない巣門の開閉を抑制できる蜂用巣箱を提供すること。
【解決手段】作業者が把持部45を掴み、開口部21に沿って所定方向へ把持部45を移動させることにより、それに連なるスライド部材40も移動して巣門14が開閉される。作業者がロック部28を開口部21の内部に位置させたときに、把持部45の移動が規制されるロック状態となる。一方、作業者がロック部28を開口部21の外部に位置させたときに、把持部45の移動が許容される解除状態となる。これらの状態を作業者が任意に切り替えることによって、意図しない巣門14の開閉を抑制できる。
【選択図】
図1