(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】電源装置の異常検出システム
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20240531BHJP
H03K 17/00 20060101ALI20240531BHJP
G06F 1/30 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
G05F1/56
H03K17/00 B
G06F1/30
(21)【出願番号】P 2021053093
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 将矢
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-092710(JP,A)
【文献】実開昭54-029656(JP,U)
【文献】特開平09-148901(JP,A)
【文献】特開昭63-250212(JP,A)
【文献】米国特許第04041365(US,A)
【文献】特開昭60-087628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
H03K 17/00
G06F 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート端子にゲート信号が入力されるとターンオンして電源ラインに電流を流し、前記ゲート信号の入力がなくなっても電流が流れ続け、その電流レベルが基準レベル以下まで低下するとターンオフする自己保持型のスイッチング素子と、異常検出部と、タイマーカウンタとを備え、前記異常検出部は前記スイッチング素子を介して前記電源ラインに電流が流れている状態を示す通電信号を入力し、その通電信号の有無に応じて前記タイマーカウンタを制御するように構成された電源装置の異常検出システムであって、
前記異常検出部は少なくとも前記ゲート信号が入力されない状態で前記通電信号が入力される第1のモード、前記ゲート信号が入力される状態で前記通電信号が入力されない第2のモードおよび前記ゲート信号が入力される状態で前記通電信号も入力される第3のモードにおける状態判定が可能に構成され、
前記タイマーカウンタは、入力されるクロックの計数値が異常検出のための基準計数値に達したときに異常検出信号を送出するように構成され、
前記異常検出部は、前記異常検出のための基準計数値に対応する基準時間よりも長い第1の判定期間と、前記第1の判定期間よりも短い第2の判定期間と、前記第2の判定期間の終了時点から前記第1の判定期間の終了時点までの期間である計数許可期間を設定し、
前記第1のモードになると、前記第1および第2の判定期間および前記計数許可期間にかかわらず前記タイマーカウンタによる計数動作を開始させ、前記タイマーカウンタは、クロックの計数値が前記異常検出のための基準計数値に達したときに前記異常検出信号を送出するように構成され、
前記第2のモードになると、前記タイマーカウンタによる計数動作を開始させ、前記タイマーカウンタは、前記第1の判定期間の終了前にクロックの計数値が前記異常検出のための基準計数値に達したときに前記異常検出信号を送出するように構成され、
前記第3のモードになると、前記第2の判定期間の終了時点から前記タイマーカウンタによる計数動作を開始させ、前記タイマーカウンタは、前記第2の判定期間の終了時点から前記第1の判定期間の終了時点までの期間で表される計数許可期間におけるによるクロックの計数値が前記異常検出のための基準計数値に達しないときには前記異常検出信号の送出は実行しないように構成されている電源装置の異常検出システム。
【請求項2】
前記異常検出信号が入力されると異常状態を報知する異常報知器をさらに備え、
前記タイマーカウンタは、前記異常報知器に対し前記異常検出信号を送出することを特徴とする請求項1に記載の電源装置の異常検出システム。
【請求項3】
前記異常検出部は第1の単安定マルチバイブレータ、第2の単安定マルチバイブレータ、ExORゲート、NORゲート、NANDゲートを備え、
前記第1の単安定マルチバイブレータは前記第1の判定期間を設定し、
前記第2の単安定マルチバイブレータは前記第2の判定期間を設定し、
前記ExORゲートは前記第1の単安定マルチバイブレータによる前記第1の判定期間と前記第2の単安定マルチバイブレータによる前記第2の判定期間との差分の前記計数許可期間を設定し、
前記NORゲートは前記ExORゲートの出力とクロックパルスとを入力として前記計数許可期間において前記クロックパルスを通過させ、
前記NANDゲートは前記第1の単安定マルチバイブレータによる前記第1の判定期間内での前記NORゲートによるクロックパルスの通過数と、前記計数許可期間内での前記NORゲートによるクロックパルスの通過数とに真偽を区別する論理を付与して、前記タイマーカウンタに送出するように構成されている請求項1または請求項2に記載の電源装置の異常検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイリスタなどの自己保持型のスイッチング素子を備えた電源装置における前記スイッチング素子の誤作動等の異常を検出する異常検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の異常検出システムが対象とする電源装置としては、例えばフリッカ補償装置があげられる(特許文献1参照)。例えばこのフリッカ補償装置を対象とする異常検出システムにおいては、サイリスタなどの自己保持型のスイッチング素子に対するトリガー用のゲート信号の状態とスイッチング素子のON/OFFつまり電源ラインにおける通電信号の状態との組み合わせから、スイッチング素子の異常を検出することが考えられる。
【0003】
ゲート信号の入力がないときに通電信号の入力がない場合およびゲート信号の入力があるときに通電信号の入力がある場合は正常動作状態であると判定され、ゲート信号の入力がないときに通電信号の入力があれば異常動作状態であると判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の異常検出システムにあっては、ゲート信号の入力があるにもかかわらず通電信号の入力がない場合の異常判定ができなかった。その理由は、次のように考察することができる。
【0006】
従来においては、サイリスタの異常の判定は、一定時間以上(例えば2分以上)にわたりサイリスタに電流が流れ続けることをもって行うようになっている。すなわち、電流が長時間にわたり流れっぱなしになっていることをもって異常と判定している。
【0007】
単発パルスのゲート信号は“L”レベルから立上り変化して“H”レベルとなり、その直後に“H”レベルから立下り変化して“L”レベルに戻る。ゲート信号の立上り変化によってサイリスタはターンオンし、電流の流れを開始する。そして、サイリスタの自己保持機能により、ある時間にわたり電流の流れが持続する。その時間が経過して電流レベルが基準レベル以下まで低下すればサイリスタはターンオフし、電流は流れなくなる。これはサイリスタの正常な動作態様であり、異常ではない。
【0008】
一方、異常時にはサイリスタはターンオフすることなくオン状態を誤保持したままとなる。従来では、上記の正常状態での一定時間にわたるオン状態継続と、異常状態での一定時間をオーバーして異常に長くオン状態を継続する2つの状態を識別することができなかった。それは、サイリスタの特性として、ゲート信号の入力時間とサイリスタの導通時間とが一致しないという性質があるためである。
【0009】
以上のような理由により、従来の電源装置の異常検出システムにあっては、異常検出についての誤動作の発生の可能性が高く、異常検出の信頼性に課題があった。
【0010】
本発明はこのような不都合を解消することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。以下では、理解を容易にするため、本発明の電源装置の異常検出システムの構成を表す
図1を用いて説明する。
図1において、1はサイリスタなどの自己保持型のスイッチング素子、20はスイッチング素子1が挿入された電源ライン、S
G はスイッチング素子1をターンオンさせるためのゲート信号、S
T はスイッチング素子1がオン状態にあって電源ライン20に電流が流れていることを示す通電信号、E1は異常検出部、E2はタイマーカウンタ、E3は異常報知器である。期間についてT
long(第1の判定期間)、T
short(第2の判定期間)、T
window(計数許可期間)の符号を付加し、計数値についてN(クロックの計数値)、N
0 (異常検出のための基準計数値(プリセット値))の符号を付加し、基準時間についてT
0 の符号を付加して記述する。
【0012】
本発明による電源装置の異常検出システムは、
ゲート端子にゲート信号SG が入力されるとターンオンして電源ライン20に電流を流し、前記ゲート信号SG の入力がなくなっても電流が流れ続け、その電流レベルが基準レベル以下まで低下するとターンオフする自己保持型のスイッチング素子1と、異常検出部E1と、タイマーカウンタE2とを備え、前記異常検出部E1は前記スイッチング素子1を介して前記電源ライン20に電流が流れている状態を示す通電信号ST を入力し、その通電信号ST の有無に応じて前記タイマーカウンタE2を制御するように構成された電源装置の異常検出システムであって、
前記異常検出部E1は少なくとも前記ゲート信号が入力されない状態で前記通電信号が入力される第1のモード、前記ゲート信号が入力される状態で前記通電信号が入力されない第2のモードおよび前記ゲート信号が入力される状態で前記通電信号も入力される第3のモードにおける状態判定が可能に構成され、
前記タイマーカウンタE2は、入力されるクロックSA の計数値Nが異常検出のための基準計数値N0 に達したときに異常検出信号SB を送出するように構成され、
前記異常検出部E1は、前記異常検出のための基準計数値N0 に対応する基準時間T0 よりも長い第1の判定期間Tlongと、前記第1の判定期間Tlongよりも短い第2の判定期間Tshortと、前記第2の判定期間Tshortの終了時点から前記第1の判定期間Tlongの終了時点までの期間である計数許可期間Twindowを設定し、
前記第1のモードになると、前記第1および第2の判定期間Tlong,Tshortおよび前記計数許可期間Twindowにかかわらず前記タイマーカウンタE2による計数動作を開始させ、前記タイマーカウンタE2は、クロックSA の計数値Nが前記異常検出のための基準計数値N0 に達したときに前記異常検出信号SB を送出するように構成され、
前記第2のモードになると、前記タイマーカウンタE2による計数動作を開始させ、前記タイマーカウンタE2は、前記第1の判定期間Tlongの終了前にクロックSA の計数値Nが前記異常検出のための基準計数値N0 に達したときに前記異常検出信号SB を送出するように構成され、
前記第3のモードになると、前記第2の判定期間Tshortの終了時点から前記タイマーカウンタE2による計数動作を開始させ、前記タイマーカウンタE2は、前記第2の判定期間Tshortの終了時点から前記第1の判定期間Tlongの終了時点までの期間で表される計数許可期間TwindowにおけるによるクロックSA の計数値Nが前記異常検出のための基準計数値N0 に達しないときには前記異常検出信号SB の送出は実行しないように構成されている。
【0013】
本発明の上記の構成によれば、次のような作用が発揮される。
【0014】
ゲート信号SG の入力が検出されず、かつ通電信号ST の入力も検出されないとき(これを第4のモードとする)、タイマーカウンタE2も異常報知器E3も動作することはなく、異常検出とはならない。すなわち、異常検出機能の誤動作は生じない。
【0015】
次に、ゲート信号SG が入力されない状態で、かつ通電信号ST が入力される第1のモードになると、第1の判定期間Tlong、第2の判定期間Tshortおよび計数許可期間TwindowにかかわらずタイマーカウンタE2による計数動作を開始させる。そして、タイマーカウンタE2によるクロックSA の計数値Nが異常検出のための基準計数値N0 (時間としては基準時間T0 に対応)に達したときに異常検出信号SB を送出する。
【0016】
この第1のモードの場合、ゲート信号SG の入力がないにもかかわらず、自己保持型のスイッチング素子1が導通し通電信号ST の入力が生じてしまっている。自己保持型ゆえにこのスイッチング素子1は導通しっぱなしとなっており、その異常事態は長時間にわたるものとなる。したがって、異常検出についての時間的制約はないと捉えることが可能で、第1の判定期間Tlong、第2の判定期間Tshortおよび計数許可期間Twindowと比較する必要性はなしとしてかまわない。
【0017】
異常検出について時間的制約がないことからタイマーカウンタE2を始動してクロックSA の計数値Nをインクリメント(またはデクリメント)すれば、必ず異常検出のための基準計数値(プリセット値)N0に達することになり、タイマーカウンタE2は異常検出信号SB を送出する。
【0018】
次に、ゲート信号SG が入力される状態で、かつ通電信号ST が入力されない第2のモードになると、タイマーカウンタE2による計数動作を開始させる。そして、第1の判定期間Tlongの終了前にタイマーカウンタE2によるクロックSA の計数値Nが異常検出のための基準計数値N0 に達したときに異常検出信号SB を送出する。
【0019】
この第2のモードの場合、ゲート信号SG の入力があるにもかかわらず、通電信号ST の入力がなく、自己保持型のスイッチング素子1に異常が生じている。この場合の異常検出の手段として、比較的長い第1の判定期間Tlongを設定し、その判定期間内でタイマーカウンタE2を動作させる。この第1の判定期間Tlongは異常検出のための基準計数値N0 に対応する基準時間T0 よりも長い期間であると定めているので、期間内には必ずタイマーカウンタE2によるクロックSA の計数値Nは異常検出のための基準計数値N0 に達することになり、タイマーカウンタE2は異常検出信号SB を送出する。
【0020】
次に、ゲート信号SG の入力が検出される状態で、かつ通電信号ST も入力される第3のモードになると、第2の判定期間Tshortの終了時点からタイマーカウンタE2による計数動作を開始させ、計数許可期間Twindowの終了時点までクロックSA の計数を許可する。
【0021】
計数許可期間Twindowは比較的長い第1の判定期間Tlongよりも短く、この計数許可期間Twindowの範囲内ではタイマーカウンタE2によるクロックSA の計数値Nが異常検出のための基準計数値N0 にまで達することはない。したがって、タイマーカウンタE2は異常検出信号SB の送出は行わず、異常検出とはならない。すなわち、異常検出機能の誤動作は生じない。
【0022】
ここで、異常検出信号SB が入力されると異常状態を報知する異常報知器E3をさらに備え、
タイマーカウンタは異常報知器E3に対し異常検出信号SB を送出するようにしてもよい。
【0023】
上記構成の本発明の電源装置の異常検出システムにおいては、次のように構成することが可能である。すなわち、
前記異常検出部は第1の単安定マルチバイブレータ、第2の単安定マルチバイブレータ、ExORゲート、NORゲート、NANDゲートを備え、
前記第1の単安定マルチバイブレータは前記比較的長い第1の判定期間を設定し、
前記第2の単安定マルチバイブレータは前記比較的短い第2の判定期間を設定し、
前記ExORゲートは前記第1の単安定マルチバイブレータによる前記第1の判定期間と前記第2の単安定マルチバイブレータによる前記第2の判定期間との差分の前記計数許可期間を設定し、
前記NORゲートは前記ExORゲートの出力とクロックパルスとを入力として前記計数許可期間において前記クロックパルスを通過させ、
前記NANDゲートは前記第1の単安定マルチバイブレータによる前記第1の判定期間内での前記NORゲートによるクロックパルスの通過数と、前記計数許可期間内での前記NORゲートによるクロックパルスの通過数とに真偽を区別する論理を付与して、前記タイマーカウンタに送出するように構成されている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、次のような効果が発揮される。
【0025】
上記4つのモードのうち異常検出となるのは第1のモードと第2のモードの2つであり、異常検出とならないのは第3のモードと第4のモードの2つである。異常検出となる第1のモードでは異常検出のための計数動作の期間との比較はしておらず、同じく異常検出となる第2のモードでは異常検出のための計数動作の期間として比較的長い第1の判定期間Tlong(異常検出のための基準計数値N0 に対応する基準時間T0 よりも長い)と比較している。これによって、2つのモードにおいて異常検出が可能となっている。
【0026】
そして、異常検出としてはならない第3のモードでは計数値Nが基準計数値N0 にまで達しないようにするために、第2のモードの場合に設定する比較的長い第1の判定期間Tlongよりも短い計数許可期間Twindowを形成している。この計数許可期間Twindowを形成するのに、比較的短い第2の判定期間Tshortを用いて、比較的長い第1の判定期間Tlongと比較的短い第2の判定期間Tshortとの差分で計数許可期間Twindowを形成している。
【0027】
第2のモードと第1のモードとの相違点は、異常検出のための計数動作の期間と比較するかしないかの単純な相違である。加えて、第2のモードと第3のモードとの相違点は、比較的長い第1の判定期間Tlongのみと比較するか、比較的長い第1の判定期間Tlongとともに比較的短い第2の判定期間Tshortとも比較するかのこれも単純な相違である。第1の判定期間Tlongと第2の判定期間Tshortの形成の論理は互いに同一または類似のものであり、その相違点は小さなものであって、構成が複雑化する度合いを抑制している。
【0028】
すなわち、本発明によれば、比較的簡単な構成により、異常検出についての誤動作の発生を防止して異常検出の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明にかかわる電源装置の異常検出システムの基本的な構成を示すブロック図
【
図2】本発明の実施例における電源装置の異常検出システムの構成を示す回路図
【
図3】本発明の実施例における電源装置の異常検出システムの第4のモードの動作を示すタイミングチャート
【
図4】本発明の実施例における電源装置の異常検出システムの第1のモードの動作を示すタイミングチャート
【
図5】本発明の実施例における電源装置の異常検出システムの第2のモードの動作を示すタイミングチャート
【
図6】本発明の実施例における電源装置の異常検出システムの第3のモードの動作を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、上記構成の本発明の電源装置の異常検出システムにつき、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。
【0031】
本発明にかかわる電源装置の異常検出システムの実施例を示す
図2において、20は電源装置における電源ライン、1は電源ライン20に挿入されたサイリスタなどの自己保持型の半導体スイッチング素子、2はスイッチング素子1のゲート端子に対してゲート信号S
G を中継供給するゲート基板、3は電源ライン20に設けた計器用変流器(CT)で捉える電流を検出するための電流検出回路、4は第1の単安定マルチバイブレータ、5は第2の単安定マルチバイブレータ、6はExOR(排他的論理和)ゲート、7はNOR(否定論理和)ゲート、8はNAND(否定論理積)ゲート、9は負論理(ローアクティブ)入力のORゲート、10はOR(論理和)ゲート、11はタイマーカウンタ、12はDフリップフロップ、13は誤作動検出のための発光ダイオード(LED)、14は故障復帰用スイッチである。NANDゲート8と負論理入力のORゲート9とは同一の動作論理を有し、互いに置き換え可能である。タイマーカウンタ11は
図1のタイマーカウンタE2に対応し、Dフリップフロップ12と発光ダイオード13は
図1の異常報知器E3に対応している。電流検出回路3、第1の単安定マルチバイブレータ4、第2の単安定マルチバイブレータ5、各種論理ゲート6,7,8,9,10は
図1の異常検出部E1を構成している。
【0032】
第1の単安定マルチバイブレータ4のA1端子にゲート信号SG を入力し、第2の単安定マルチバイブレータ5のB1端子に電流検出回路3からの通電信号ST を入力する。
【0033】
ExORゲート6には第1の単安定マルチバイブレータ4のQ1出力端子からの制御信号SM1と第2の単安定マルチバイブレータ5のQ1反転出力端子からの制御信号SN1が入力される。NORゲート7にはクロックパルスCLKとExORゲート6からの制御信号S1 が入力される。NANDゲート8にはNORゲート7からの制御信号S2 とDフリップフロップ12のQ1反転出力端子からの制御信号S6 が入力される。負論理入力のORゲート9には第1の単安定マルチバイブレータ4のQ2反転出力端子からの制御信号SM2とDフリップフロップ12のQ1反転出力端子からの制御信号S6 が入力される。ORゲート10には第2の単安定マルチバイブレータ5のQ2出力端子からの制御信号SN2と負論理入力のORゲート9からの制御信号S7 が入力される。
【0034】
タイマーカウンタ11のCLK入力端子にはNANDゲート8からの制御信号S3 が入力され、RESET入力端子にはORゲート10からの制御信号S8 が入力される。Dフリップフロップ12のCLK入力端子にはタイマーカウンタ11のQ4出力端子からのクロックパルスCLKが入力され、RESET入力端子には故障復帰用スイッチ14からの制御信号S9 が入力され、Q1出力端子は発光ダイオード13のアノードに接続され、制御信号S5 が供給される。
【0035】
次に、以上のように構成された電源装置の異常検出システムの動作を説明する。
【0036】
ExORゲート6の動作論理は、
入力(L L) → 出力〔L〕
入力(L H) → 出力〔H〕
入力(H L) → 出力〔H〕
入力(H H) → 出力〔L〕
である。
【0037】
NORゲート7の動作論理は、
入力(L L) → 出力〔H〕
入力(L H) → 出力〔L〕
入力(H L) → 出力〔L〕
入力(H H) → 出力〔L〕
である。
【0038】
NANDゲート8および負論理入力のORゲート9の動作論理は、
入力(L L) → 出力〔H〕
入力(L H) → 出力〔H〕
入力(H L) → 出力〔H〕
入力(H H) → 出力〔L〕
である。
【0039】
まずは、最も基本的なモードである第4のモードから説明する。
【0040】
[1]第4のモード:ゲート信号無し、通電無し⇒正常判定(
図3)
第4のモードはゲート信号S
G の入力が検出されず、かつ通電信号S
T の入力も検出されない動作モードである。この第4のモードを
図3のタイミングチャートを用いて説明する。
【0041】
サイリスタ(自己保持型のスイッチング素子)1のゲート端子に作用するゲート信号SG が第1の単安定マルチバイブレータ4に入力されないときは、ゲート信号SG のレベルが“L”レベルに固定化されている。また、電流検出回路3から入力される通電信号ST が第2の単安定マルチバイブレータ5に入力されないときは、通電信号ST のレベルが“H”レベルに固定化されている。
【0042】
第1の単安定マルチバイブレータ4のQ1出力端子から出力される制御信号SM1は“L”レベルとなる。第2の単安定マルチバイブレータ5のQ1反転出力端子から出力される制御信号SN1は“H”レベルとなる。制御信号SM1(“L”レベル)と制御信号SN1(“H”レベル)を入力したExORゲート6は制御信号S1 として“H”レベルを出力する。NORゲート7はExORゲート6からの“H”レベルの制御信号S1 と周期的に“H”/“L”を繰り返すクロックパルスCLKを入力するが、制御信号S1 が“H”レベルを継続している関係で、NORゲート7は制御信号S2 として“L”レベルを出力する。
【0043】
NORゲート7からの制御信号S2 とDフリップフロップ12のQ1反転出力端子からの“H”レベルに固定化された制御信号S6 を入力するNANDゲート8は、制御信号S2 が“L”レベルであるので“H”レベルに固定化された制御信号S3 を出力する。
【0044】
CLK入力端子に“H”/“L”遷移しない制御信号S3 を入力するタイマーカウンタ11はカウント動作を停止したままであり、そのQ4出力端子からのカウントアップ信号S4 は“L”レベルを継続する。
【0045】
CLK入力端子にタイマーカウンタ11からの“L”レベルに固定化されたカウントアップ信号S4 を入力するDフリップフロップ12は、そのQ1出力端子から出力する点灯制御信号S5 として“L”レベルを継続して出力し、したがって、発光ダイオード13は消灯状態を保持する。
【0046】
この発光ダイオード13の消灯状態は、第1の単安定マルチバイブレータ4からの制御信号SM1が“L”レベルを維持し、かつ、第2の単安定マルチバイブレータ5からの制御信号SN1が“H”レベルを維持しているという条件下で成立している。
【0047】
タイマーカウンタ11からDフリップフロップ12のCLK入力端子に入力されるカウントアップ信号S4 は“L”レベルを維持していて、クロック入力が不活性であるため、Dフリップフロップ12のQ1反転出力端子からの制御信号S6 は“H”レベルを保持する。第1の単安定マルチバイブレータ4のQ2反転出力端子からの制御信号SM2も“H”レベルを保持していて負論理入力のORゲート9の2入力は“H”,“H”であるので、負論理入力のORゲート9からの制御信号S7 は“L”レベルとなる。第2の単安定マルチバイブレータ5のQ2出力端子からの制御信号SN2は“L”レベルであるので、ORゲート10からの制御信号S8 は“L”レベルであり、タイマーカウンタ11に対してはリセットは作用しない。
【0048】
以上のように、ゲート信号SG の入力が検出されず、したがって正常な応答結果として通電信号ST の入力も検出されない第4のモードにあっては、発光ダイオード13は消灯したままであり、異常報知とはならない。したがって、故障復帰用スイッチ14は操作されず、制御信号S9 は“L”レベルのままである。
【0049】
[2]第1のモード:ゲート信号無し、通電有り⇒異常判定(
図4)
次に、異常検出になる第1のモードについて説明する。第1のモードはゲート信号S
G の入力が検出されていないのにもかかわらず、通電信号S
T の入力が検出されてしまう異常状態の場合の動作である。すなわち、自己保持型のスイッチング素子1に対してゲート信号S
G を送出していないのにもかかわらず、スイッチング素子1がターンオンしてしまうので、発光ダイオード13を点灯させる場合である。この第1のモードを
図4のタイミングチャートを用いて説明する。
【0050】
(1)イベント時刻t
10~t
11での動作
自己保持型のスイッチング素子1のゲート端子に対してゲート信号S
G を立ち上げていないにもかかわらず、突然時刻t
10において電流検出回路3から通電信号S
T が入力された場合を検討する。通電信号S
T は、
図3の第4のモードのスイッチング素子1の非導通状態を示す場合には連続する“H”レベル状態となるが、スイッチング素子1が不測に導通する異常の場合には、その自己保持特性のために
図4に示すように、“H”,“L”が極短周期で繰り返される信号形態の連続パルスとなる。この連続パルスの開始時刻をイベント時刻t
10とする。
【0051】
第1の単安定マルチバイブレータ4においては、ゲート信号SG が“L”レベルを継続していることからワンショットパルスの制御信号SM1は変化せず、“L”レベルを継続する。同時並行的に制御信号SM2も変化せず“H”レベルを継続する。
【0052】
一方、第2の単安定マルチバイブレータ5においては、ワンショットパルスの制御信号SN1をQ1反転出力端子から出力する。通電信号ST が異常で際限なく繰り返されるため、第2の単安定マルチバイブレータ5はワンショット動作を際限なく繰り返し、ワンショットパルスの制御信号SN1の“L”レベル状態も変化なくそのまま継続される。つまり、制御信号SN1の立下り変化は1回限りとなる。
【0053】
ExORゲート6は、イベント時刻t10の瞬間直後では連続“L”レベルの制御信号SM1と“H”レベルから極短のパルス幅で“L”レベルへ立ち下がる制御信号SN1とを入力として、制御信号SN1と同様に立ち下がる制御信号S1 を出力する。この場合の制御信号S1 は、“H”レベルから極短のパルス幅で“L”レベルへ立ち下がり、引き続いて“L”レベルを維持する。
【0054】
NORゲート7は、“L”レベルの制御信号S1 と、“H”,“L”が極短周期で繰り返される信号形態のクロックパルスCLKとを入力として、そのクロックパルスCLKを反転させた反転クロックパルス/CLKを制御信号S2 (反転クロックパルスS2 )として出力する。なお、この反転クロックパルスS2 はイベント時刻t12を越えても続くことになる。
【0055】
NANDゲート8は、1入力がDフリップフロップ12からの制御信号S6 の“H”レベルであるから、もう1つの入力の反転クロックパルスS2 を反転させ、“L”,“H”を繰り返す正転クロックパルスS3 を出力する。この正転クロックパルスS3 はクロックパルスCLKと同期した信号となるが、これがタイマーカウンタ11のCLK入力端子に入力されるので、タイマーカウンタ11はそのパルスを計数する。タイマーカウンタ11はある時間の経過後、基準計数値N0 まで計数しカウントアップ(プリセット値到達)する。この時刻をイベント時刻t11とする。
【0056】
タイマーカウンタ11がカウントアップするとDフリップフロップ12の状態が変化するが、カウントアップするまでは変化しないので、イベント時刻t11までは制御信号S4 ,S5 ,S6 ,S7 ,S8 も変化しない。
【0057】
(2)イベント時刻t11~t12での動作
イベント時刻t11においてタイマーカウンタ11の基準計数値N0 までのカウントアップが成立するとカウントアップ信号S4 が単発パルスの状態で立ち上がり、これに起因してDフリップフロップ12のQ1出力端子から出力される点灯制御信号S5 が“L”レベルから反転して“H”レベルに立ち上がり、発光ダイオード13を点灯させ、異常報知となる。イベント時刻t11の瞬間直後にはカウントアップ信号S4 は“L”レベルへ復帰する。
【0058】
Dフリップフロップ12のQ1反転出力端子から出力される制御信号S6 がイベント時刻t11において“H”レベルから反転して“L”レベルに変化し、これに応動して、NANDゲート8から出力されるクロックパルスS3 は“H”レベルを継続する状態に変化し、負論理入力のORゲート9から出力される制御信号S7 、ORゲート10から出力されるリセット制御信号S8 も“H”レベルを継続する状態に変化する。
【0059】
(3)イベント時刻t12以降での動作
発光ダイオード13の点灯によって異常が発生したことが報知されるが、その確認後イベント時刻t12において故障復帰用スイッチ14が操作されてリセット制御信号S9 が“H”レベルに立ち上げられると、制御信号S5 ,S6 ,S7 ,S8 は初期状態に復帰し、点灯していた発光ダイオード13は消灯する。その後、スイッチング素子1を修復することになる。
【0060】
もし、故障復帰用スイッチ14を操作しなければ、発光ダイオード13の点灯すなわち異常報知は続行される。
【0061】
[3]第2のモード:ゲート信号有り、通電無し⇒異常判定(
図5)
次に、これも異常検出になる第2のモードについて説明する。第2のモードはゲート信号S
G の入力が検出されているにもかかわらず、通電信号S
T の入力の検出がなされない異常状態の場合の動作である。すなわち、自己保持型のスイッチング素子1に対してゲート信号S
G を送出したにもかかわらず、スイッチング素子1がターンオンしないので、発光ダイオード13を点灯させる場合である。この第2のモードを
図5のタイミングチャートを用いて説明する。
【0062】
(1)イベント時刻t
20~t
22での動作
イベント時刻t
20において、ゲート信号S
G が単発パルスの状態で“L”レベル状態から“H”レベルに立ち上がり、ゲート基板2を介して自己保持型のスイッチング素子1のゲート端子に印加される。これによって通常(正常動作時)であればスイッチング素子1がトリガされてターンオンして、スイッチング素子1を通る電源ライン20に電流が流れ、
図6(第3のモード)に示すように、電流検出回路3はその検出信号を通電信号S
T (微小パルス幅の矩形波2個分(“H”→“L”→“H”→“L”→“H”)のパルス信号)として第2の単安定マルチバイブレータ5に送出するはずのところ、何らかの不具合により通電信号S
T のパルス入力がなされない(
図5)、という場合を検討する。通電信号S
T としては、入力がないことから第4のモード(
図3)の場合と同様に連続する“H”レベル状態となる。第1の単安定マルチバイブレータ4は、単発パルスのゲート信号S
G の入力によって状態が変化するが、第2の単安定マルチバイブレータ5の方は第3のモードの場合とは異なり、状態は変化しない。
【0063】
まず、第1の単安定マルチバイブレータ4においては、後述する第3のモード(
図6)も同様の動作状態となる。すなわち、短パルス“H”レベルのゲート信号S
G が印加されたイベント時刻t
20のタイミングでQ1出力端子からワンショットパルスの制御信号S
M1が“L”レベルから“H”レベルに立ち上がる。なお、このワンショットパルスの制御信号S
M1のパルス幅はワンショット期間であり、これは比較的長い(異常検出のための基準計数値N
0 に対応する基準時間T
0 よりも僅かに長い)第1の判定期間T
longである。第1の判定期間T
longの終了時点はイベント時刻t
22となる。
【0064】
一方、第2の単安定マルチバイブレータ5においては、電流検出回路3から入力される通電信号ST の不具合によりワンショットパルスの制御信号SN1は“H”レベル状態を維持したままとなり、ExORゲート6はワンショットパルスの制御信号SM1を反転した制御信号S1 を出力する。この制御信号S1 はイベント時刻t22までは“L”レベルを継続する。なお、イベント時刻t22を過ぎると反転して“H”レベルとなり、あとは“H”レベルを継続することになる。
【0065】
比較的長い第1の判定期間Tlongにおいて“L”レベルの制御信号S1 とクロックパルスCLKを入力するNORゲート7はクロックパルスCLKの“H”,“L”を反転させたクロックパルスS2 (反転クロックパルス/CLK)を出力する。
【0066】
Dフリップフロップ12のQ1反転出力端子から出力される制御信号S6 が“H”レベルとなっている期間(t20~t21)において、NANDゲート8は反転クロックパルスS2 を再反転した状態のクロックパルスS3 (クロックパルスCLKに同期した信号)をタイマーカウンタ11のCLK入力端子に入力し、計数を開始する。この計数はイベント時刻t20から開始され、基準計数値N0 まで進められる(カウントアップ(プリセット値到達))。
【0067】
(2)イベント時刻t21~t22での動作
イベント時刻t21はタイマーカウンタ11のカウントアップ時刻である。カウントアップしたタイマーカウンタ11は、そのQ4出力端子からカウントアップ信号S4 を単発パルスの状態で出力する。カウントアップ時刻t21は制御信号SM1の第1の判定期間Tlongの終了時刻t22よりも早い時刻である。
【0068】
カウントアップ信号S4 がCLK入力端子に入力されたDフリップフロップ12においては、Q1出力端子から“H”レベルに立ち上がった点灯制御信号S5 が出力され、発光ダイオード13が点灯し、異常報知となる。
【0069】
同時にイベント時刻t21において、Dフリップフロップ12のQ1反転出力端子から出力される制御信号S6 が“L”レベルに反転し、NANDゲート8から出力される制御信号S3 が“H”レベルに変化し固定化される。また、負論理入力のORゲート9から出力される制御信号S7 が“H”レベルに立ち上がり、ORゲート10から出力される単発パルスのリセット制御信号S8 も“H”レベルに立ち上がり、タイマーカウンタ11の計数がゼロクリアされる。
【0070】
タイマーカウンタ11が計数を開始するイベント時刻t20からカウントアップするイベント時刻t21までの時間Tupは、ワンショットパルスの制御信号SM1が“H”レベルとなっている比較的長い第1の判定期間Tlongよりも短く設定されている。
【0071】
(3)イベント時刻t22~t23での動作
一方、イベント時刻t22においては、第1の単安定マルチバイブレータ4のQ1出力端子から出力されるワンショットパルスの制御信号SM1が“L”レベルに立ち下がるのに同期してQ2反転出力端子から出力される制御信号SM2が単発パルスの状態で、イベント時刻t22で“H”レベルから“L”レベルに立ち下がり、次いでイベント時刻t23で“L”レベルから“H”レベルに立ち上がる。
【0072】
イベント時刻t22では制御信号SN1は“H”レベルを継続しているが、制御信号SM1が“H”レベルから“L”レベルへと変化するので、ExORゲート6から出力されるクロック通過許可信号S1 は“L”レベルから“H”レベルへと変化する。クロック通過許可信号S1 はイベント時刻t22以降は“H”レベルを維持し、それに連動して制御信号S2 は“L”レベルを維持し、制御信号S3 は“H”レベルを維持する。タイマーカウンタ11はイベント時刻t21以降はアップカウントのインクリメント動作を停止することになる。
【0073】
(4)イベント時刻t23~t24での動作
制御信号S7 を出力する負論理入力のORゲート9は、制御信号S6 と制御信号SM2を2入力とするが、時刻t21までは2入力がS6 =“H”,SM2 =“H”であるので制御信号S7 は“L”レベルであり、時刻t21以降では2入力がS6 =“L”,SM2 =“H”であるので制御信号S7 は“H”レベル、制御信号SM2が“L”レベルとなっているごく短い期間t22~t23では2入力がS6 =“L”,SM2 =“L”であるので制御信号S7 は引き続いて“H”レベル、時刻t23以降では2入力がS6 =“L”,SM2 =“H”なので制御信号S7 はさらに引き続いて“H”レベルとなる。ORゲート10に対して第2の単安定マルチバイブレータ5から入力される制御信号SN2は“L”レベルであるので、ORゲート10から出力される制御信号S8 は制御信号S7 と同じ波形となる。制御信号S7 ,S8 の“H”レベルは時刻t24まで続く。
【0074】
すでに説明したようにイベント時刻t21における発光ダイオード13の点灯によって異常が発生したことが報知されるが、その確認後イベント時刻t24において故障復帰用スイッチ14が操作されてリセット制御信号S9 が“H”レベルに立ち上げられると、制御信号S5 ,S6 ,S7 ,S8 は初期状態に復帰し、点灯していた発光ダイオード13は消灯する。その後、スイッチング素子1を修復することになる。
【0075】
もし、故障復帰用スイッチ14を操作しなければ、発光ダイオード13の点灯すなわち異常報知は続行される。
【0076】
[4]第3のモード:ゲート信号有り、通電有り⇒正常判定(
図6)
次に、異常検出とはならない第3のモードについて説明する。第3のモードはゲート信号S
G の入力が検出され、これに適正に応動する状態で、自己保持型のスイッチング素子1がターンオンし、発光ダイオード13の点灯は起こらない場合の動作である。この第3のモードを
図6のタイミングチャートを用いて説明する。
【0077】
(1)イベント時刻t30~t31 での動作
イベント時刻t30において、自己保持型のスイッチング素子1のゲート端子に作用するゲート信号SG が単発パルスの状態で“L”レベル状態から“H”レベルに立ち上がり、ゲート基板2を介してスイッチング素子1のゲート端子に印加される。これによって所期通りにスイッチング素子1がトリガされてターンオンし、電源ライン20に所期通りに電流が流れると、電流検出回路3を介して通電信号ST が第2の単安定マルチバイブレータ5のB1入力端子に入力される。スイッチング素子1の正常なターンオン動作を所期通りに検出した場合、電流検出回路3は通電信号ST として微小パルス幅の矩形波2個分(“H”→“L”→“H”→“L”→“H”)のパルス信号を出力する。パルス信号2個分が過ぎると、通電信号ST は連続した“H”レベル状態を保持する。
【0078】
単発パルスのゲート信号SG の立ち上がりエッジによって、第1の単安定マルチバイブレータ4と第2の単安定マルチバイブレータ5の状態がともに変化する。
【0079】
まず、第1の単安定マルチバイブレータ4においては、“H”レベルのゲート信号SG が印加されたイベント時刻t30においてQ1出力端子からワンショットパルスの制御信号SM1が“L”レベルから“H”レベルに立ち上がる。なお、このワンショットパルスの制御信号SM1のパルス幅は比較的長い第1の判定期間Tlongである。ワンショットパルスの制御信号SM1の“H”レベル期間は時刻t33までとなり、時刻t33以降は“L”レベルに保持される。
【0080】
電流検出回路3から入力される通電信号ST は所定のサイクル(2回)だけ“L”,“H”を繰り返した後、“H”レベルに安定化する。第2の単安定マルチバイブレータ5においては、通電信号ST が印加されると、Q1反転出力端子から出力されるワンショットパルスの制御信号SN1が“H”レベルから“L”レベルに立ち下がる。このワンショットパルスの制御信号SN1のパルス幅は比較的短い第2の判定期間Tshortである。
【0081】
第2の単安定マルチバイブレータ5によるワンショットパルスの制御信号SN1の“L”レベル期間は時刻t31までとなり、時刻t31以降は“H”レベルに保持される。制御信号SM1の比較的長い第1の判定期間Tlongは、制御信号SN1の比較的短い第2の判定期間Tshortよりも長く設定されている(Tshort<Tlong)。
【0082】
イベント時刻t30以降の両制御信号SM1,SN1の変化に対してExORゲート6の出力状態の変化を調べると、第1の単安定マルチバイブレータ4からの制御信号SM1は“L”レベルから“H”レベルに変化し、第2の単安定マルチバイブレータ5からの制御信号SN1は“H”レベルから“L”レベルに変化しているが、2入力の組み合わせ(“H”と“L”)には変わりがないので、ExORゲート6からの制御信号S1 には変化がなく、第2の単安定マルチバイブレータ5の比較的短い第2の判定期間Tshort(t30~t31)では制御信号S1 は“H”レベルとなる。
【0083】
以上の結果、比較的短い第2の判定期間Tshortの範囲内では、NORゲート7の2入力は“H”レベルの制御信号S1 とクロックパルスCLKであるので、NORゲート7から出力される制御信号S2 は“L”レベルとなる。
【0084】
NANDゲート8の2入力はDフリップフロップ12からの“H”レベルの制御信号S6 とNORゲート7からの“L”レベルの制御信号S2 であるので、NANDゲート8から出力されるクロックパルスS3 は“H”レベルとなる。このクロックパルスS3 はタイマーカウンタ11のCLK入力端子に入力されるが、クロックパルスS3 は“H”レベルの連続信号であるので、計数動作は行われない。
【0085】
タイマーカウンタ11のQ4出力端子から出力されるカウントアップ信号S
4 は変化せず“L”レベルのままであり、Dフリップフロップ12からの点灯制御信号S
5 も“L”レベルのままと、いずれも第4のモード(
図3)の場合と同様になり、発光ダイオード13は消灯状態を保持する。
【0086】
(2)イベント時刻t31~t32での動作
次のイベント時刻は第2の単安定マルチバイブレータ5の比較的短い第2の判定期間Tshortがタイムアップした時刻t31である。このイベント時刻t31においては、それまで“L”レベルとなっていた第2の単安定マルチバイブレータ5からの制御信号SN1が“H”レベルへと立ち上がる。第1の単安定マルチバイブレータ4の比較的長い第1の判定期間Tlongはまだタイムアップしていないので、第1の単安定マルチバイブレータ4からの制御信号SM1は“H”レベルを継続している。その結果、イベント時刻t31~t32の期間にわたり、ExORゲート6の2入力は“H”,“H”となり、その制御信号S1 は“H”レベルから“L”レベルへと立ち下がる。
【0087】
この“L”レベルとなった制御信号S1 とクロックパルスCLKとがNORゲート7に入力され、出力される制御信号S2 はクロックパルスCLKに対してタイミング的に“H”/“L”が反転した反転クロックパルスとなる。クロックパルスCLKは常時的に発振され続けている矩形波信号である。ExORゲート6から出力される制御信号S1 は、“L”レベルの状態でクロックパルスCLKを通過させるクロック通過許可信号S1 として機能する。
【0088】
反転クロックパルスである制御信号S2 はNANDゲート8の1入力となる。NANDゲート8の他の1入力はDフリップフロップ12のQ1反転出力端子から出力される制御信号S6 であり、この制御信号S6 は“H”レベルである。NANDゲート8は一方の入力が“H”レベルに維持されている状態では、他方の入力の論理レベル(“H”,“L”)を反転した論理レベル(“L”,“H”)を出力する。したがって、NANDゲート8からタイマーカウンタ11に対して入力される制御信号S3 は、クロックパルスCLKに同期したクロック制御信号となる。このクロックパルスS3 をCLK端子に入力したはタイマーカウンタ11においては、計数動作が開始される。
【0089】
第2の単安定マルチバイブレータ5においては、Q2出力端子から出力される制御信号SN2は、Q1反転出力端子から出力されるワンショットパルスの制御信号SN1の立ち上がりタイミングを検出する信号で、単発パルスとしてイベント時刻t31に生成されるように構成されている。この単発パルスの制御信号SN2は、タイマーカウンタ11に対するリセット信号の機能を有している。
【0090】
イベント時刻t31において、制御信号SN1の立ち上がりに同期した制御信号SN2の単発パルスの立ち上がりによって、ORゲート10からタイマーカウンタ11のRESET端子に入力される単発パルスのリセット制御信号S8 が立ち上がり、タイマーカウンタ11のカウント動作がゼロクリアされる。このイベント時刻t31でのタイマーカウンタ11のゼロクリアと計数開始とが同期しているので、カウントは「0」からのリスタートとなる。しかし、タイマーカウンタ11においては、規定の基準計数値N0 は大きめの数値を設定されており、イベント時刻t31~t32の期間内ではタイマーカウンタ11は基準計数値N0 までカウントアップ(プリセット値到達)することはなく、そのQ4出力端子からはカウントアップ信号S4 として“H”レベルを出力することはない。したがって、発光ダイオード13は消灯状態を保持する。
【0091】
(3)イベント時刻t32~t34での動作
イベント時刻t32において、NANDゲート8のクロックパルスS3 は“H”レベルに立ち上がり、固定化される。すなわち、タイマーカウンタ11によるカウント動作は停止し、カウントアップ(プリセット値到達)となる。
【0092】
次のイベント時刻は第1の単安定マルチバイブレータ4の比較的長い第1の判定期間Tlongがタイムアップした時刻t33である。このイベント時刻t33においては、第1の単安定マルチバイブレータ4から出力されるワンショットパルスの制御信号SM1が“H”レベルから“L”レベルへ立ち下がる(比較的長い第1の判定期間Tlongの終了)。一方、第2の単安定マルチバイブレータ5から出力されるワンショットパルスの制御信号SN1は“H”レベルを維持しているので、ExORゲート6から出力される制御信号S1 は“L”レベルから“H”レベルへ立ち上がる。NORゲート7から出力される制御信号S2 は“L”レベルである。NANDゲート8の2入力(S2 ,S6 )が“L”,“H”となるので、NANDゲート8から出力されるクロックパルスS3 はパルス変化を規制され、一定振幅の“H”レベルの直流状態へ移行する。
【0093】
一方、イベント時刻t33においては、第1の単安定マルチバイブレータ4のQ1出力端子から出力されるワンショットパルスの制御信号SM1が“L”レベルに立ち下がるのに同期してQ2反転出力端子から出力される制御信号SM2が単発パルスの状態で“H”レベルから“L”レベルに立ち下がり、直後のイベント時刻t34で再び“H”レベルに立ち上がる。
【0094】
この単発パルスの“L”レベルとなる矩形波信号の制御信号SM2が負論理入力のORゲート9に入力され、他の1入力の制御信号S6 が“H”レベルであるため、負論理入力のORゲート9から出力される制御信号S7 は単発パルスの状態で“H”レベルに立ち上がる矩形波信号となる。このときORゲート10に対して第2の単安定マルチバイブレータ5から入力される制御信号SN2は“L”レベルであるので、ORゲート10から出力される制御信号S8 は単発パルスの“H”レベルの制御信号S7 と同期したものとなる。すなわち、リセット制御信号S8 がタイマーカウンタ11のRESET端子に入力される。この2つの制御信号S7 ,S8 の単発パルスの存在期間は時刻t33~t34である。
【0095】
すなわち、タイマーカウンタ11は、その基準計数値N0 に達する以前の段階でゼロクリアされてしまい、したがって、タイマーカウンタ11のQ4出力端子から“H”レベルのカウントアップ信号S4 が出力されることはなく、Dフリップフロップ12の状態も変化しない。つまり、Dフリップフロップ12のQ1出力端子から出力される点灯制御信号S5 は“L”レベルのままであり、発光ダイオード13は消灯状態を保つ。Dフリップフロップ12のQ1反転出力端子から出力される制御信号S6 は“H”レベルを保つ。
【0096】
以上詳述したように、この第3のモードでは、自己保持型のスイッチング素子1のゲート端子に対してターンオンさせるためのゲート信号SG が印加され、電流検出回路3がスイッチング素子1の通電状態を所期通り正確に検出する動作態様となり、この応動作用は目的とする動作内容と期待する結果の動作内容とが整合性を有し、矛盾がないものであり、そのことが発光ダイオード13の消灯状態継続となって現れている。すなわち、発光ダイオード13の非点灯をもって、電源装置の異常検出システムの正常状態をそのまま所望の通り適正に報知することになる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、電源装置の異常検出システムに関して、構成の簡単化とともに、異常検出の信頼性を向上させる技術として有用である。
【符号の説明】
【0098】
E1 異常検出部
E2 タイマーカウンタ
E3 異常報知器
SG ゲート信号
ST 通電信号
Tlong 比較的長い第1の判定期間
Tshort 比較的短い第2の判定期間
Twindow 計数許可期間
1 サイリスタなどの自己保持型のスイッチング素子
4 第1の単安定マルチバイブレータ
5 第2の単安定マルチバイブレータ
6 ExORゲート
7 NORゲート
8 NANDゲート
9 負論理入力のORゲート
10 ORゲート
11 タイマーカウンタ
12 Dフリップフロップ
13 発光ダイオード(LED)
14 故障復帰用スイッチ
20 電源ライン