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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂発泡シート及び容器
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/14 20060101AFI20240531BHJP
   C08J 9/06 20060101ALI20240531BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240531BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240531BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240531BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20240531BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
C08J9/14 CET
C08J9/06
B32B5/18
B32B27/30 B
B32B27/00 H
B65D1/00 110
B65D65/40 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019183808
(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公開番号】P2021059652
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】396000422
【氏名又は名称】リスパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 善教
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 有志
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-155557(JP,A)
【文献】特開平04-253740(JP,A)
【文献】特公昭48-005100(JP,B1)
【文献】特開2014-205761(JP,A)
【文献】特開昭57-072830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60
C08K
C08L
B32B
B65B 5/00-5/12
B65D 1/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸系共重合体、又はスチレン-無水マレイン酸系共重合体を含有する基材樹脂に、ノルマルブタンを含む物理発泡剤及び化学発泡剤を添加して発泡させたポリスチレン系樹脂発泡シートであって、
前記化学発泡剤の添加量が1質量%以上5質量%以下であり、以下に記載の方法により測定した前記ポリスチレン系樹脂発泡シート内の残存ガス量が0.161g以下であることを特徴とする、ポリスチレン系樹脂発泡シート
<測定方法>
PSPシートから、シート片(大きさ:縦5cm×横8cm)を切り取り、該シート片13枚を束ねてシート束を得て、その重量を計測する。次いで、該シート束をアルミカップに入れ、150℃に設定したオーブン内に12分間静置し、加熱後の該シート束の重量を測定する。以下の式に基づいて揮発量(g)を算出し、算出された揮発量を残存ガス量と定義する。
揮発量(g)=W1-W2
W1;加熱前のシート束の重量(g)、W2;加熱後のシート束の重量(g)
【請求項2】
前記化学発泡剤が、炭酸水素ナトリウム並びに炭酸水素ナトリウム及びクエン酸の混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項3】
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面にラミネートフィルムが積層されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項4】
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの両面にラミネートフィルムが積層されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項5】
独立気泡率が90体積%以上であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂発泡シートを熱成形することにより成形された容器であることを特徴とする、容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産性及び成形性に優れるポリスチレン系樹脂発泡シート(PSPシート)及び該PSPシートを成形して得られる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
PSPシートは、軽量で熱成形性に優れていることから、各種食品包装材及び簡易容器として広く用いられている。PSPシートは一般に、押出機内で溶融されたポリスチレン系樹脂にブタン及びペンタン等の脂肪族炭化水素等からなる物理発泡剤を圧入しながら、シート状に押出す方法により製造されている。
【0003】
発泡シートに含まれる発泡剤は、製造後、徐々に散逸する。発泡剤の残存量が発泡シートの成形性に影響を与えることが知られている。例えば、発泡剤の残存量が少なすぎると、成形品の強度不足や賦形性の低下が生じ易く、多すぎると成形品の収縮や反り、及び表面荒れ等の成形異常を来すことが知られている(特許文献1及び2参照)。そのため、発泡剤の残存量を適量とするために、PSPシートを製造した後、エージング期間を経ることが必要なことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4360609号公報
【文献】特開平11-147968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般のPSPシートでは、物理発泡剤のノルマルブタンの含有量が多いと、発泡剤の散逸速度が速いことが知られている(特許文献1)。一方、ポリスチレン系樹脂として、メタクリル酸等と共重合させたスチレン系共重合体を含む耐熱性PSPシートの場合、ノルマルブタンの含有量が多くても、発泡剤残存量の低下が遅い。そのため、エージング期間が一般のPSPシートと比較して長く、生産性が低いという問題がある。
【0006】
本発明は、エージング期間が短く、生産性に優れると共に、成形性に優れるPSPシート及び該シートを成形して得られる容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のPSPシートは、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸系共重合体、又はスチレン-無水マレイン酸系共重合体を含有する基材樹脂に、ノルマルブタンを含む物理発泡剤及び化学発泡剤を添加して発泡させることにより得られるポリスチレン系樹脂発泡シートであって、前記化学発泡剤の添加量が1質量%以上5質量%以下であり、前記ポリスチレン系樹脂発泡シート内の残存ガス量が0.161g以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明の容器は、本発明のPSPシートを熱成形することにより成形された容器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のPSPシートは、従来の耐熱性PSPシートと比べてエージング期間が短いことから、生産性に優れている。また、本発明のPSPシートを用いた場合、容器成形時のデラミ(ラミネートフィルムの剥がれ)を抑制することができる等、従来の耐熱性PSPシートと比べて成形性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について以下に説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本実施形態に係るPSPシート(以下、「本PSPシート」という。)は、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸系共重合体、又はスチレン-無水マレイン酸系共重合体を含有する基材樹脂に、ノルマルブタンを含む物理発泡剤及び化学発泡剤を添加して発泡させることにより得られ、前記化学発泡剤の添加量が1質量%以上であり、前記ポリスチレン系樹脂発泡シート内の残存ガス量が0.161g以下である。
【0012】
前記基材樹脂は、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸系共重合体、又はスチレン-無水マレイン酸系共重合体(以下、「スチレン-メタクリル酸共重合体等」という。)を含有する。そのため、本PSPシートは耐熱性に優れている。前記基材樹脂は、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸系共重合体、及びスチレン-無水マレイン酸系共重合体の1種のみを含んでもよく、2種以上を含んでもよい。前記基材樹脂は、前記スチレン-メタクリル酸共重合体等のみで構成されていてもよく、前記スチレン-メタクリル酸共重合体等を主成分として、他の重合体、樹脂、及びゴムの1種又は2種以上を副成分として混合した混合樹脂でもよい。前記副成分として混合することができる樹脂として例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂が挙げられる。前記基材樹脂中の前記スチレン-メタクリル酸共重合体等の割合は、通常70質量%以上、好ましくは80質量%以上である。
【0013】
前記物理発泡剤は、ノルマルブタンを含み、前記基材樹脂を発泡させることができる限り特に限定はない。前記物理発泡剤として具体的には、例えば、プロパン、n-ブタン、i-ブタン、n-ブタンとi-ブタンとの混合物、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン等の環式脂肪族炭化水素;及びトリクロロフロロメタン、ジクロロジフロロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1-ジフルオロ-1-クロロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素;並びにこれらの混合物等の低沸点の有機化合物が挙げられる。前記発泡剤として、ブタン及びブタンと他の脂肪族炭化水素(例えば、イソブタン)との混合物が好ましく、特に、n-ブタン:i-ブタン=50~100:0~50(質量基準)の混合物が好ましい。
【0014】
前記物理発泡剤の添加量は、必要に応じて適宜選択することができる。前記添加量は通常、前記基材樹脂と前記化学発泡剤(添加量)との合計100質量部に対し、0.05~5.0質量部とすることができる。より具体的には、前記物理発泡剤として、ブタンと他の脂肪族炭化水素(例えば、イソブタン)との混合物、特にn-ブタン:i-ブタン=50~100:0~50(質量基準)の混合物を、前記基材樹脂と前記化学発泡剤(添加量)との合計100質量部に対し、0.05~5.0質量部用いることが好ましい。
【0015】
前記化学発泡剤は、分解して炭酸ガス等の気体を発生するものであれば特に限定はない。前記化学発泡剤は1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。前記化学発泡剤は、有機系又は無機系の化学発泡剤のいずれでもよい。前記有機系化学発泡剤として具体的には、例えば、クエン酸ナトリウム等の有機酸塩、アゾジカルボンアミド等のアゾ化合物及びN,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、及びトルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物が挙げられる。前記無機系化学発泡剤として具体的には、例えば、炭酸ナトリウム等の炭酸塩及び炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩が挙げられる。更に、前記化学発泡剤として、炭酸水素ナトリウムとクエン酸等の有機酸との混合物を用いることができる。前記化学発泡剤として好ましくは、炭酸水素ナトリウム並びに炭酸水素ナトリウム及び有機酸(クエン酸等)の混合物から選択される。
【0016】
前記化学発泡剤の添加量は、前記基材樹脂と前記化学発泡剤との合計100質量%中、下限が1質量%以上、好ましくは1.1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上であり、上限が5質量%以下、好ましくは3質量%以下である。前記化学発泡剤の添加量の下限が前記範囲未満であると、発泡剤残存量の低下が遅く、エージング期間が長くなる結果、発泡シートの生産性に劣るので好ましくない。より具体的には、前記化学発泡剤として、有機系又は無機系の化学発泡剤、特に炭酸水素ナトリウム並びに炭酸水素ナトリウム及び有機酸(クエン酸等)の混合物から選択される化学発泡剤を、前記基材樹脂と前記化学発泡剤との合計100質量%中、1質量%以上用いることが好ましい。尚、前記化学発泡剤の添加量の上限は、特許請求の範囲の記載の明確化の観点から画定したに過ぎず、上限を超えた場合に本PSPシートが得られないことを自認するものでもなく、また、上限を超えた場合に得られた本PSPシートを、特許請求の範囲の範囲から除外することを積極的に意図するものでもない。
【0017】
前記化学発泡剤の添加方法には特に限定はない。前記化学発泡剤は例えば、前記基材樹脂と予め混合してから押出機や射出成形機に供給される方法、押出機中の前記基材樹脂に添加する方法、及びポリスチレン系樹脂をベースとするマスターバッチを作成し添加する方法により添加することができる。また、前記化学発泡剤と前記物理発泡剤の添加順序にも限定はない。両者は同時に添加してもよく、いずれか一方を先に添加し、他方を後に添加してもよい。
【0018】
本PSPシートの形成において、前記物理発泡剤及び前記化学発泡剤と共に気泡調整剤を併用することができる。該気泡調整剤として具体的には、例えば、タルク、シリカ等の無機粉末;多価カルボン酸の酸性塩;及び多価カルボン酸と炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムとの反応混合物が挙げられる。
【0019】
本PSPシート内の残存ガス量は0.161g以下である。該残存ガス量が前記範囲内であると、容器成形時のデラミの抑制等により、成形性を向上させることができるので好ましい。前記残存ガス量は、実施例に記載の方法により算出される揮発量(g)として定義される。前記残存ガス量は、PSPシート製造時点の量に限定されない。前記残存ガス量は、製造後、一定のエージング期間(例えば、製造から70日後、65日後、60日後、50日後、又は45日後)を経た後の量でもよい。また、後述のように、本PSPシートは、少なくとも片面にラミネートフィルムが積層されていてもよい。この場合、前記残存ガス量は、ラミネートフィルムが積層されていない発泡シート単体に基づいて算出される。
【0020】
本PSPシートに含まれる気泡構造には特に限定はない。前記気泡構造は、気泡の間で気層の交換がなされない独立気泡構造でもよく、樹脂膜に孔が開いており、気層が行き来する連続気泡構造のいずれでもよい。本PSPシートでは、独立気泡構造を含むことが好ましい。独立気泡構造を有すると、デラミの抑制等、本PSPシートの成形性を向上させることができるので好ましい。具体的には、本PSPシートの独立気泡率が、気泡全体の体積の少なくとも90体積%以上であることが好ましく、より好ましくは95体積%以上、更に好ましくは97.0体積%以上である。前記独立気泡率は、実施例に記載の方法により算出される。本PSPシートの独立気泡率が90体積%未満になると、揮発量0.161g以下でもデラミが発生しやすくなり、2次厚みのバラツキが大きくなる。本PSPシートの独立気泡率が90体積%以上であると、揮発量が0.161g以下において、デラミの発生及び2次厚みのバラツキを抑制することができるので好ましい。
【0021】
本PSPシートの具体的形状には特に限定はない。本PSPシートの具体的形状は、必要に応じて適宜決定することができる。よって、前記「シート」の用語には、フィルム状も含まれる。本シートの厚みは、例えば、0.1~5mm、あるいは0.5~3mmとすることができる。
【0022】
本PSPシートの製造方法には特に限定はない。本PSPシートは通常、前記基材樹脂、前記物理発泡剤、及び前記化学発泡剤を混合した発泡性溶融樹脂を、押出機により押出して発泡させることにより得ることができる。前記化学発泡剤の添加量は、前記基材樹脂と前記化学発泡剤との合計100質量%中、1質量%以上、好ましくは1.1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上である。本PSPシートの製造に関し、前記化学発泡剤の種類及び添加量の上限並びに前記物理発泡剤の種類及び添加量については、上記の説明が該当する。また、本PSPシートの製造方法において、シート中の残存ガス量を適宜の範囲とするために、製造されたシートを室温(例えば、10~25℃)で一定期間(エージング期間;例えば、製造から70日後、65日後、60日後、50日後、又は45日後)保管してもよい。
【0023】
本PSPシートは、少なくとも片面、好ましくは両面にラミネートフィルムが積層されていてもよい。本PSPシートにラミネートフィルムを積層した場合、容器内側に耐油性を付与することができて、容器内外には意匠性を付与することができるので好ましい。前記ラミネートフィルムを積層する方法には特に限定はない。該方法として、公知のラミネート方法、例えば熱ラミネート及び押出しラミネートを用いることができる。
【0024】
前記ラミネートフィルムの材質には特に限定はない。前記ラミネートフィルムとして具体的には、例えば、ポリスチレン(PS)フィルム及びポリオレフィンフィルムが挙げられる。前記ポリオレフィンフィルムとして無延伸ポリオレフィンフィルムを用いることができる。無延伸ポリオレフィンフィルムは、エチレン又はプロピレンを主成分とするポリオレフィン類からなるフィルムをいう。前記無延伸ポリオレフィンフィルムとして具体的には、例えば、1-ブテンを含む直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニルランダム共重合体、エチレン-アクリル酸エステルランダム共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、又は、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体からなるフィルムが挙げられる。前記無延伸ポリオレフィンフィルムとして好ましくは、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)である。
【0025】
前記ラミネートフィルムは単層フィルムでもよく、2層以上積層された多層フィルム、例えばCPPフィルム/PSフィルムでもよい。
【0026】
両面にラミネートフィルムを積層する場合、両面のラミネートフィルムの材質及び構造は同じでもよく、異なってもよい。例えば、片面に単層フィルムを積層し、他方の面に多層フィルムを積層してもよい。また、片面にPSフィルムを積層し、他方の面に上記で例示されるポリオレフィンフィルムを積層してもよい。
【0027】
本PSPシートは、生産性及び成形性を著しく損なわない範囲で、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。前記他の成分として具体的には、例えば、公知の樹脂シートに用いられている添加剤、例えば、難燃剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、及び抗菌剤が挙げられる。
【0028】
本実施形態に係る容器(以下、「本容器」という。)は、本PSPシートを熱成形することにより得られる。この成形方法には特に限定はない。前記成形方法として、ポリスチレン系発泡樹脂について一般に採用されている公知の成形方法、具体的には、例えば、真空成形法(プラグアシスト成形法等)、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法が挙げられる。また、成形条件も特に限定はない。成形条件は必要に応じて適宜決定することができる。
【0029】
本容器の形状、寸法、及び具体的用途には特に限定はない。本容器の用途としては、包装用容器等の容器、例えば、飲食品包装用容器が挙げられる。尚、前記「容器」は、容器全体だけでなく、容器の一部も含む。例えば、前記「容器」には、容器の本体のみならず、容器の蓋体も含まれる。
【実施例
【0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、実施例に示す形態に限定されない。本発明の実施形態は、目的及び用途等に応じて、本発明の範囲内で種々変更することができる。
【0031】
1.PSPシートの製造
原料として、以下の各成分を用いた。
(A)耐熱PS樹脂(基材樹脂);東洋スチレン株式会社製「TEP220」(ポリフェニレンエーテル樹脂:9質量%、メタクリル酸共重合PS樹脂:86質量%、PS樹脂:5質量%)
(B)物理発泡剤;ブタンガス(n-ブタン/i-ブタン=7/3)
(C)化学発泡剤;永和化成工業株式会社製「ES405」(炭酸水素ナトリウムとクエン酸との混合物)
(D)気泡調整剤;タルク(富士タルク工業株式会社製「ML110」
【0032】
前記耐熱PS樹脂並びに化学発泡剤及び気泡調整剤を混合した後、押出機に投入し加熱溶融した。次いで、押出機内の溶融樹脂中に、前記物理発泡剤を圧入した。その後、該溶融樹脂を押出成形することにより、発泡シート(厚さ:1.7mm、坪量:180g/m)を得た。該発泡シートの片面にCPP/PSフィルムを、反対面にPSフィルムを熱ラミネートで接着することにより、PSPシート1~3を製造した。また、化学発泡剤を用いない他は、PSPシート1~3と同様の方法により、PSPシート4~6を製造した。PSPシート1~6の各原料の配合割合(質量基準)及び押出成形におけるシリンダー温度を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
2.性能評価
(1)エージング期間
PSPシート1~6から、シート片(大きさ:縦5cm×横8cm)を切り取り、該シート片13枚を束ねてシート束を得て、その重量を計測した(n=2)。次いで、該シート束をアルミカップに入れ、150℃に設定したオーブン内に12分間静置し、加熱後の該シート束の重量を測定した。
【0035】
以下の式に基づいて、揮発量(g)を算出した。算出された揮発量を残存ガス量と定義した。そして、PSPシート内の残存ガス量が0.161gに到達するのに要した日数をエージング期間とした。その結果を表1に併記する。
揮発量(g)=W1-W2
W1;加熱前のシート束の重量(g)、W2;加熱後のシート束の重量(g)
【0036】
(2)独立気泡率
PSPシート1~6から、サンプル(大きさ:2cm×2cm)を9枚切り取り、それぞれの重量を測定した。該サンプルを水に浸透させ、0.02MPa以下の真空下で3分間静置した。その後、サンプルを取り出して表面及び断面の水分をよく拭き取り、サンプルの重量を測定した。
【0037】
以下の式(I)及び式(II)に基づいて、独立気泡率(体積%)を算出した。その結果を表1に併記する。
F=(V2/V)×100
={(M-m)/[m×(f-1)/S0]}×100・・・(I)
独立気泡率=(100-F)・・・(II)

F;連続気泡率(体積%)、V2;連続気泡分体積(cm)、V;発泡体の実気泡体積(cm)、m;水浸漬前のサンプル質量(g)、M;真空引後のサンプル質量(g)、f;発泡倍率、S0;積層体固体成分の比重
【0038】
(3)成形性
表2に示すエージング期間が経過した時点でのPSPシート1~6の残存ガス量を、上記(1)に記載の方法により算出した。その結果を表2に併記する。
【0039】
前記エージング期間が経過した後のPSPシート1~6を、両真空成形により熱成形することにより、容器を製造した。該容器を目視することにより、デラミ(ラミネートフィルムの剥がれ)の有無を確認した。その結果を表2に併記する。
【0040】
【表2】
【0041】
3.結果
表1より、化学発泡剤を使用していないPSPシート4~6では、エージング期間が105日以上必要であった。一方、化学発泡剤を使用したPSPシート1~3はいずれも、エージング期間がPSPシート4~6よりも短く、生産性が向上していることが分かる。
【0042】
表2より、エージング期間前のPSPシート1~3を用いた比較例1~3は、残存ガス量が0.161gを超えており、容器成形時にデラミが発生していた。一方、エージング期間後のPSPシート1~3を用いた実施例1~6は、残存ガス量が0.161g以下であり、容器成形時にデラミが発生しなかった。
【0043】
尚、化学発泡剤を使用していないPSPシート4で残存ガス量が0.161g以下である比較例4及び5では、容器成形時にデラミが発生していないが、表1と同様に、実施例1~6と比べてエージング期間が長かった。そのため、実施例1~6と比べて、比較例4及び5ではシートの保管期間が長くなり、また、容器の生産性にも劣ることが分かる。
【0044】
また、表2より、化学発泡剤を使用せず、独立気泡率が90体積%未満であるPSPシート5及び6を用いた比較例7及び8でも、容器成形時にデラミが発生していた。特に、比較例7は、エージング期間が長い上、残存ガス量が0.161g以下であってもデラミが発生しており、容器の生産性にも劣ることが分かる。