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特許7496679ガラス半製品を熱間成形するための方法および装置ならびに熱間成形されたガラス容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】ガラス半製品を熱間成形するための方法および装置ならびに熱間成形されたガラス容器
(51)【国際特許分類】
   C03B 23/045 20060101AFI20240531BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
C03B23/045
A61J1/05 311
【請求項の数】 21
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019190791
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2020066572
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】10 2018 126 053.9
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】323001797
【氏名又は名称】ショット ファーマ シュヴァイツ アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT Pharma Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】St. Josefen-Strasse 20, 9000 St. Gallen, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クサーファー ユート
(72)【発明者】
【氏名】ロバート リー
(72)【発明者】
【氏名】シェリー リアン
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-043685(JP,B1)
【文献】米国特許第03424570(US,A)
【文献】欧州特許第03677554(EP,B1)
【文献】米国特許第11565961(US,B2)
【文献】特開2016-060674(JP,A)
【文献】特開平04-021531(JP,A)
【文献】国際公開第2018/011148(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/175799(WO,A1)
【文献】特表2020-514766(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0029918(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104291558(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/045
A61J 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ、少なくとも1つの
- 軟化するまでガラスを加熱するための装置、
- 半製品の内側側面を成形するための1つの内側成形工具
- 成形面を有する成形ローラと、成形ローラを収容するための装置とを含む、半製品の外側側面を成形するための少なくとも1つの外側成形工具、および
- 潤滑油放出用流出口を備えた、成形ローラの成形面上に潤滑油を塗布するための装置
を含む、ガラス製半製品を製造するための装置であって、
成形ローラが、収容装置内に自由回転可能に支承されており、かつロック式固定装置により、成形プロセス中は固定可能であり、ここで、成形ローラの固定が、取外し可能な継ぎ手で行われるため、個々の成形プロセス間では成形ローラを取り外すことができ、かつ固定装置内において角度αだけ回転させることができる、ガラス製半製品を製造するための装置。
【請求項2】
前記装置が、管状半製品を成形するために設計されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記成形ローラが、前記成形ローラの回転軸に対して垂直な中心面において円形断面を有する、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記成形ローラが、前記成形ローラの回転軸に対して垂直な中心面において、複数の成形面を伴う多角形断面を有する、および/またはその成形面の稜が、平坦、凸形または凹形である、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
サイクルごとに一回、前記成形ローラの前記成形面の一部上に潤滑油を塗布する、および/または前記潤滑油塗布装置の前記流出口と前記成形工具とが、前記半製品の回転軸の周りに、少なくとも45°の角距離で配置されているように、前記装置内で前記潤滑油塗布装置が配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記潤滑油を、自動一定放出を用いた滴下注油器により塗布する、および/または塗布ごとに放出されるオイル量が、0.01から0.1gの範囲、特に好ましくは0.03から0.05gの範囲にある、請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記装置が、前記成形ローラ収容装置と直接的または間接的に結合している冷却体を有し、かつ前記成形ローラが冷却体と熱接触しており、その冷却体が、好ましくは内部冷却剤を有するため、プロセス熱が搬出され得る、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記装置が、前記成形ローラを冷却するための空冷機を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
少なくとも、次の方法ステップa)からc):
a)ガラス製半製品の準備、およびガラスが軟化するまでの加熱、
b)成形ステップにおける、請求項1から8までのいずれか1項記載のガラス成形装置を用いた半製品の成形、ただし、
- その半製品が、内側成形工具上で配置され、その中心点を回る回転運動を示す、
- 半製品の外側側面を、少なくとも1つの外側成形工具によって成形し、その外側成形工具が、少なくとも1つの成形面を伴う少なくとも1つの成形ローラを有し、かつその成形ローラが取外し可能なロック装置により収容装置に固定されているため、成形工程中、成形面と半製品との間で相対運動が行われる、
- 成形面の、少なくとも、成形工程中に半製品と接触する部分が、潤滑剤であるオイルによって覆われている、
c)ロック装置の取外し、角度α分の成形ローラの回転、および成形ローラの改めての固定により、ステップa)からb)を繰り返した場合、成形ローラの成形面の別の一部が半製品と接触することになる
を含むガラス成形方法であって、方法ステップa)からc)のうちの1つのステップの最中に、オイルが、オイルを塗布する時点では半製品と接触していない成形面の一部上へと塗布される、方法。
【請求項10】
ステップa)において管状半製品を準備する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記成形ローラの回転軸に対して垂直な中心面において円形または多角形の断面を有する、好ましくは前記成形ローラの回転軸に対して垂直な中心面において円形断面を有する成形ローラを利用して、前記半製品の前記外側側面を成形する、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
各サイクルにおいて、自動一定放出を用いた滴下注油器により、前記成形ローラの前記成形面の一部上に潤滑油を塗布する、請求項9から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
各オイル放出工程において、0.01から0.1g、好ましくは0.03から0.05gのオイルを塗布する、請求項9から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記成形プロセス中に、熱伝導を利用して、前記成形ローラから熱を搬出する、請求項9から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記成形プロセス中に、冷却媒体で、好ましくは冷却液で、特に好ましくは水で前記外側成形工具を十分にすすぐ、請求項9から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記成形プロセス中に前記半製品と接触している前記成形面の一部を、ガス流、好ましくは空気流によって冷却する、請求項9から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記成形プロセス中に、前記成形ローラの前記成形面が、最大限250°、好ましくは最大限180℃、特に好ましくは最大限100℃を有する、請求項9から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
ステップc)において、前記成形ローラを、1から60°の範囲の角度αだけ、好ましくは3から10°の範囲の角度aだけ回転させる、請求項9から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
ステップc)の後に前記成形ローラを洗浄するためのステップd)を行い、その洗浄ステップd)を、早くとも、ステップa)からc)を10000回繰り返した後、好ましくは、早くとも、ステップa)からc)を20000回繰り返した後、特に好ましくは、早くとも、ステップa)からc)を40000回繰り返した後、および/または早くとも、少なくとも4h、好ましくは少なくとも8h、特に好ましくは少なくとも24hの停止時間後に行う、請求項9から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
ステップc)の後に、前記成形ローラを洗浄するための洗浄ステップe)を行い、前記成形ローラの前記成形面の一部、好ましくは、先行するステップb)において前記半製品と接触していた、前記成形ローラの前記成形面の一部を洗浄し、そのステップe)を、新しい半製品によりステップa)からc)を繰り返す最中に行う、請求項9から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記潤滑油を、ステップe)とa)との間に塗布する、請求項12から20までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、熱間プロセスにおいてガラス半製品を成形するための方法および装置に関する。特に、本発明は、洗浄間隔の延長により良品(Gutstueck)の生産を高めることを可能にする、該当する変形プロセス用の方法ならびに装置に関する。さらに、本発明は、中空ガラス品に関する。
【0002】
発明の背景
従来技術からは、中間材料とも呼ばれる半製品から、変形プロセスによりガラス品を製造する方法が公知である。つまり、短い管部分の一端を、ガラスの成形温度まで加熱し、1つまたは複数の成形ステップにより、適切な成形工具を用いて望みの形にするというやり方で、例えば、医薬品用途用のガラスバイアルをガラス管から製造する。内側形状は、通常、管末端部内へと挿入されるピンによって成形する。成形プロセスの最中、半製品は回転する。その際、ピンの形および寸法が、ガラスバイアルの内部形状を定義する。変形は、ガラス管をピンに押し付けると同時にガラス管の外側を成形する外側成形工具により行う。その際、ガラス管および外側成形工具が回転する。外側成形工具は、成形面を有する成形ローラを含む。
【0003】
そのように、独国実用新案第202004004560号明細書は、自由回転可能に支承された成形ローラを用いて熱間成形するための方法および装置を記載する。その成形ローラは、回転する半製品によって駆動され、ガラスと同期回転する、つまり、ガラスと成形ローラとの間では相対運動が行われない。
【0004】
好ましくは、いわゆるロータリートランスファーマシン(Rundtakter)を用いて変形を行う。その際、変形は、複数のステップにおいて、つまりその回転機(Rundlaeufer)の複数のステーションで行われ得る。
【0005】
工具と接触する間、ガラス半製品は、成形工具によって冷却される。したがって、成形ステップ間に、場合によっては半製品を再び加熱する必要がある。温度調節は、最後の成形ステップ後に、その温度では半製品が寸法安定性である温度にガラスが達するように行う。
【0006】
高温ガラスとの接触により、成形工具、特に成形ローラの成形面が、高い温度負荷にさらされる。その際、ガラスは、1000℃までの温度を有し得る。したがって、変形プロセスの最中に、成形面は熱を帯びて、つまり、>250℃の温度を有する場合がある。
【0007】
さらに、成形工具の、高温ガラスとの直接の接触を避ける必要があるが、なぜなら、それにより、ガラスが、成形工具の表面に付着するからである。したがって、前記するガラスの熱間成形においては、通常、剥離剤とも呼ばれる潤滑剤、例えば、オイルまたはペーストを使用する。その際、工具がガラスと接触しない、成形プロセスの中間サイクル中に、成形工具に潤滑剤を、例えば、噴霧、吹付け、吹きかけ、またはかけることによって、成形工具上に潤滑剤を塗布する。その際、それぞれの工具を、ガラスと接触する前に毎回、改めて潤滑する。
【0008】
高温に起因して、変形プロセスの最中には、潤滑剤の反応生成物が生成する。つまり、スス生成が起こる。したがって、運転中、成形ローラの成形面上にスス堆積が形成される。これは厄介であるが、なぜなら、ススは高温ガラスと接触し、その結果、成形可能なガラス中に組み込まれる、ないしはガラスと結合する可能性があるからである。それは、著しい、表面的な問題を引き起こす。ガラスバイアルを製造する際には、例えば、変形される瓶の首領域での汚れを招く。該当するガラスバイアルは、除外せざるを得ない。
【0009】
スス汚れに加えて、成形ローラ上にある凹凸のスス堆積の輪郭線がガラスに移る可能性がある。その際、凹凸は、スタンプのようにガラス表面上に押され、同じく表面的な欠陥、つまり該当するバイアルの不良品をもたらす。さらに、ガラス表面と回転する成形ローラとの間での潤滑剤の封入物も起こりかねない。包み込まれた油膜は、回転工程の最中、ガラス表面と工具表面との間に挟み込まれ、なおも成形可能なガラス表面にパターンを刻印する。それは、最終製品において、該当するガラス表面上での、高さが異なるまだら状の構造をもたらす。その際、パターンの形成の点で、方向に関しては基本的な相違はない、つまり、回転方向、つまり接線方向でのパターンの著しさと、回転軸の方向、つまり軸方向でのパターンの著しさとの間に基本的な相違はない。
【0010】
したがって、成形工具は、適切な洗浄間隔において洗浄する必要がある。典型的には、その間隔は、2から3時間である。その際、成形ローラを洗浄するには、生産機械の操業停止が欠かせず、それは減産をもたらす。その上、生産機械の操業停止は、起動時の問題を招くことがあるため、製造プロセスが、操業停止期間を越えて損なわれることになる。
【0011】
発明の課題
本発明の課題は、定義された内部形状および外部形状を有するガラス品を製造するための、従来技術の前記の不利点を有さない装置を提供することにある。本発明のさらなる課題は、該当する製造方法ならびに中空ガラス品の提供にある。
【0012】
発明の記載
本発明の課題は、独立請求項の主題によってすでに解決される。本発明の有利な実施形態および発展形態が、従属請求項の主題である。
【0013】
その際、本発明による装置は、少なくとも次の構成要素:
- 軟化するまでガラスを加熱するための装置、
- 半製品を成形するための、少なくとも1つの内側成形工具および1つの外側成形工具(ただし、その外側成形工具は、成形面を有する成形ローラを含み、かつ半製品の外側側面(Mantelflaeche)の成形に利用される)、ならびに成形ローラを収容するための装置、および
- 潤滑油放出用流出口を備えた、成形ローラの成形面上に潤滑油を塗布するための装置を有する成形ステーション
(ただし、成形ローラは、収容装置内に自由回転可能に支承されており、かつロック式固定装置により、成形プロセス中は、不動に固定可能である、ないしは固定されている)
を有する。
【0014】
その際、望みの製品の特定の形ないしは特定の寸法への半製品の成形は、成形プロセスの直接的な結果であり得る。特に、本発明による方法を用いて、バイアルもしくはカルプーレにおけるクリンプネックないしはクリンプネックの外面、またはシリンジにおけるシリンジコーンチップの外面を成形できる。
【0015】
しかしながら、製品形状への半製品の成形は、複数の異なる成形プロセスによっても達成できる。半製品の内側側面および外側側面に加えて、例えば、ガラス瓶、ガラスバイアル、またはガラス容器の製造において、ネックおよびバイアル口の形状も成形可能である。
【0016】
本発明による装置を用いると、洗浄間隔を明らかに延長できる。同時に、製造に起因する不良品が減少する。それは、装置の個々の構成要素によって保証される。
【0017】
装置は、特に、管状半製品を成形するために形成されている。その場合、内側側面および外側側面が、管の形状によって決定的に定められる。本発明の好ましい一実施形態では、内側成形工具が、ピンとして形成されている。該当する装置は、特に、ガラス管の変形により、医薬品一次包装といったガラス容器、例えば、バイアル、カルプーレまたはシリンジを製造するために適切である。
【0018】
外側成形ローラの固定ゆえ、変形工程の最中に外側成形ローラは、回転する半製品によって駆動されない、ないしは回転しない。したがって、外側成形ローラと半製品との間には相対運動が存在する。この相対運動により、半製品にはせん断力が作用する。驚くべきことに、そのせん断力は、成形ローラを十分に潤滑した場合、変形される半製品の品質に不利に作用することはないということが分かった。むしろ、せん断力は、有利な効果を有することが分かった。つまり、被成形材料は、せん断力によって、特に有利なやり方で成形工具へと案内され、その成形工具に押し付けられ、半製品の成形が容易になる。
【0019】
成形ローラの固定は、取外し可能な結合で行われるため、個々の成形プロセス間では成形ローラを取り外して、固定装置内において角度αだけ回転させることができる。角度αは、一実施形態によると事前定義可能である。したがって、熱間成形工程間に成形ローラを角度αだけ回転させると、続く熱間成形工程が、成形面の隣接する表面断片によって行われることになる。つまり、変形される半製品につき、成形ローラの表面のわずかな分率しか使用されない。その際、個々の成形ステップ間における成形ローラの回転により、成形ローラの表面全体にわたって均等な、成形面の摩耗が保証される。
【0020】
本発明による固定装置のもう1つの利点は、個々の成形プロセス間における成形ローラの回転により、どの成形プロセスないしはどの変形対象半製品においても、成形工具の低温部位が使用されることにある。したがって、成形ローラが、生産の最中に熱くならないか、またはきわめてわずかにしか熱くならない。それは特に有利であるが、なぜなら、それにより、潤滑油の燃焼ないしは熱分解によるスス生成が著しく低下するからである。さらに、成形工具の摩耗も低下するため、成形工具の寿命が長くなり得る。
【0021】
装置は、成形ローラの成形面上に潤滑油を塗布するための装置を有する。その際、塗布工程につき、常に、成形面の一部分領域上にしか潤滑油が塗布されない。好ましくは、サイクルごとに一回、成形ローラの一部上に潤滑油を塗布する。
【0022】
一実施形態は、潤滑油を放出するための装置が、装置内で固定的に据え付けられていることを想定する、つまり、スプレーノズルから、噴霧対象の成形工具の表面までの間隔が一定である。その場合、例えば、スプレーノズルが、成形ステーションまたは外側成形工具に組み込まれていてもよい。外側成形工具の下側での装着も可能である。
【0023】
一実施形態によると、潤滑油の塗布を滴下注油器によって行う。自動一定オイル放出による滴下注油器が特に有利であると分かった。
【0024】
好ましくは、潤滑油塗布装置の流出口と成形工具とが、半製品の回転軸の周りに、少なくとも45°の角距離で配置されているように、装置内で潤滑油塗布装置が配置されている。したがって、少しの潤滑油しか高温ガラスと接触していない。好ましくは、角度βが、90から270°の範囲、特に好ましくは160から200°の範囲にある、つまり潤滑油塗布装置が、装置内で、ガラス接触面(Glaseingriff)の向かい側に配置されている。
【0025】
一実施形態によると、塗布ごとに放出されるオイル量は、0.01から0.1gの範囲、特に好ましくは0.03から0.05gの範囲にある。塗布される潤滑剤の量がわずかであるため、製品、成形工具、ならびに生産環境の汚れを決定的に減らすことができる。しかしながら、同時に、本発明による装置では十分な潤滑作用が達成される。
【0026】
潤滑剤としては、本発明による装置では、粘度<600mm/sならびに引火点および/または熱分解点>200℃、好ましくは>250℃を有する任意のオイルを使用できる。したがって、ここでは、公知の標準プロセスと同じオイルを使用できる。
【0027】
装置は、特に、管状半製品を成形するために形成されている。その場合、内側側面および外側側面が、管の形状によって決定的に定められる。本発明の好ましい一実施形態では、内側成形工具が、ピンとして形成されている。該当する装置は、特に、ガラス管の変形により、医薬品一次包装といったガラス容器、例えば、バイアル、カルプーレまたはシリンジを製造するために適切である。
【0028】
成形ローラは、回転対称断面を有する。本発明の一実施形態によると、成形ローラは、成形ローラの回転軸に対して垂直な中心面において、シリンダ状断面を有する。したがって、その実施形態では、成形ローラが円形である。それは、ステップc)において、その分だけ成形ローラを回転させる角度を自由に選択できる、ないしは回転角αの正確な調整が必要でないという利点を有する。
【0029】
代案として、成形ローラは、成形ローラの回転軸に対して垂直な中心面において、複数の成形面を伴う多角形断面を有する。多角形断面を有する成形ローラの場合、ステップc)において維持すべき回転角αが、成形面の数に依存する。好ましくは、成形ローラが6から18の成形面を有する。
【0030】
その実施形態の一発展形態では、成形面の稜が、平坦、凸形または凹形に形成されている。
【0031】
本発明による、各成形プロセス後の成形ローラの回転により、どの変形対象半製品においても、成形工具の低温部位が使用され、かつ成形ローラは、生産中、全体として少ししか熱くならない。本発明の一発展形態によると、装置は、成形ローラの付加的な冷却装置を有する。その際、冷却は、能動的または受動的な熱伝導により行われ得る。
【0032】
本発明の一実施形態は、装置が、成形ローラ収容装置と直接的または間接的に結合している冷却体を有することを想定する。成形ローラは、冷却体と熱接触しており、ただし、その冷却体は、好ましくは内部冷却剤を有するため、プロセス熱が搬出され得る。その際、その冷却剤は、成形ローラとは冷却体を介して間接的にしか接触していない。その代わりに、または付加的に、装置は、成形ローラを冷却するための空冷を有する。
【0033】
好ましくは、放熱によって、成形工具表面の温度が最大限250℃、好ましくは最大限180℃、特に好ましくは最大限100℃であるように装置が形成されている。その際、特に、成形工具表面とは、変形プロセス最中に高温ガラスと接触する成形工具部分と理解される。その際、成形ローラの表面温度は、接触式表面温度計を利用して、ガラス接触点のすぐ隣で散発的に測定する。温度が低いことから、ほぼオイルが燃焼されないため、スス発生が著しく低下し、かつ成形ローラの成形表面上には燃焼残渣が堆積しないか、またはきわめて少ししか堆積しないことになる。
【0034】
したがって、本発明による装置は、好ましくは、少なくとも8h、さらには少なくとも12hの洗浄間隔を有する。その際、洗浄間隔とは、成形工具を洗浄するための、装置の2停止時間間の時間的な間隔と理解される。
【0035】
さらに、本発明は、固定式成形ローラを用いた、ガラス製半製品の成形方法に関する。その際、その方法は、少なくとも、方法ステップa)からc)を含み、ステップa)軟化するまでの半製品の加熱、ステップb)成形ローラを有する少なくとも1つの成形工具による、少なくとも1つの成形ステップにおける半製品の外側表面および内側表面の成形、ならびにc)ロック装置の取外し、事前定義された角度α分の成形ローラの回転、および成形ローラの改めての固定を伴い、その結果、ステップa)からb)を繰り返した場合、成形ローラの成形面の別の一部が半製品と接触することになる。その際、好ましくは、半製品が、内側成形半製品および外側成形半製品によって成形される。好ましくは、半製品が、管として、特に、円形断面または楕円体断面を有する菅として形成されている。特に、本発明による方法を用いて、例えば、バイアル、カルプーレのネック領域ないしはクリンプネック領域、またはシリンジを製造できる。
【0036】
ステップa)では、半製品をまず、使用するガラスの成形温度付近の温度まで加熱し、ステップb)において、成形工具との接触により成形する。好ましくは、ステップb)において、成形に向けて、内側成形工具を半製品内へと挿入し、かつ外側成形工具を半製品上に付着させるため、半製品が成形されることになる。その際、内側成形工具は、好ましくはピンとして形成されている。外側成形工具は、少なくとも1つの成形面を伴う少なくとも1つの成形ローラを有する。その際、成形ローラは、取外し可能なロック装置によって収容装置に固定されている。半製品は、内側成形工具上で配置され、その中心点を回る回転運動を行う。外側成形工具の成形ローラが固定されているため、成形ローラは回転せず、成形工程中、成形面と半製品との間で相対運動が行われることになる。成形面の、少なくとも、成形工程中に半製品と接触する部分が、潤滑剤であるオイルによって覆われているため、成形面上でのガラスの付着が回避されることになる。
【0037】
ステップb)においてガラスに対する接触面を形成する成形面部分領域のオイル塗布は、方法ステップa)からc)のうちの1つのステップの最中に行う。その際、オイルは、オイルを塗布する時点では半製品と接触していない成形面の一部上へと塗布される。本発明の一実施形態によると、各サイクルにおいて、成形ローラの成形面の一部上に潤滑油を塗布する。その際、滴下注油器、特に、自動一定放出による滴下注油器が特に有利であると分かった。本発明の一実施形態は、各オイル放出工程において、0.01から0.1g、好ましくは0.03から0.05gのオイルを成形ローラ上に塗布することを想定する。
【0038】
ステップc)では、ロック装置の取外しを行う。成形ローラを、角度αだけ回転させてから改めてロック装置内で固定する。本発明の一実施形態によると、角度αは事前定義される、つまり、成形ローラを、前もって指定した角度αだけ回転させる。したがって、ステップc)により、ステップa)からb)を繰り返した場合、成形ローラの成形面の別の一部が半製品と接触することが保証される。その結果、成形ローラ全体の加熱が防止され、各成形工程に対して、低温の成形面が提供される。それにより、スス発生が著しく低下する。
【0039】
本発明による方法の一変形形態によると、成形プロセスの際にガラスに対する接触面を形成する成形表面の表面温度は、変形プロセスの最中、つまり、加熱された半製品との接触時でさえも、最大限250℃、好ましくは最大限180℃、特に好ましくは最大限100℃である。その際、成形ローラを、成形プロセス中に冷却してもよい。特に、成形プロセス中に、熱伝導を利用して、成形ローラから熱を搬出してもよい。
【0040】
本発明の一実施形態によると、熱放散によって受動的に放熱する。その際、成形ローラは冷却体と接触している。その際、その冷却体は、能動冷却を有してもよい。つまり、一発展形態は、冷却体を、冷却媒体で、好ましくは冷却液で十分にすすぐことを想定する。
【0041】
その代わりに、または付加的に、変形対象半製品と接触している成形面部分を、ガス流の吹込みによって、好ましくは空気流の吹込みによって冷却する。
【0042】
一実施形態によると、ステップb)において、半製品の外側側面を、円形断面を有する成形ローラによって成形する。その実施形態では、成形ローラを、ステップc)において、好ましくは2から10°の範囲の角度aだけ、特に好ましくは3から5°の範囲の角度aだけ回転させる。代案として、成形ローラは、多角形断面を有する。好ましくは、成形ローラが、6から18の成形面を伴う多角形断面を有し、ただし、成形面の数は、多角形の辺の数によって指定される。
【0043】
本発明の一発展形態は、ステップc)の後に成形ローラを洗浄するためのステップd)を行うことを想定する。その際、成形プロセスを停止させ、停止時間の最中に成形ローラを洗浄する。本発明の一実施形態によると、洗浄ステップは、早くとも、プロセスステップa)からc)を10000回繰り返した後、つまり早くとも、10000個の半製品が変形された後に行う。代案として、早くとも、装置を4h、好ましくは8h、特に好ましくは15h、とりわけ好ましくは24h運転した後に洗浄ステップd)を行う。したがって、洗浄間隔の時間を著しく延長できる。好ましくは、2洗浄ステップd)間の運転時間が、24hを上回る。
【0044】
本発明の別の一発展形態によると、ステップc)の後に、成形ローラを洗浄するための洗浄ステップe)を、新しい半製品によりステップa)からc)を繰り返す最中に行う。したがって、その発展形態では、進行プロセス中に洗浄を行う。それゆえ、製造プロセスの中断は必要でない。その際、それぞれ、成形面の一部のみ、好ましくは、先行するステップb)において半製品と接触していた成形面部分を洗浄する。好ましくは、ステップa)からc)による成形プロセス後に毎回、成形ローラの洗浄を行う。
【0045】
さらに、本発明は、本発明による方法を用いて製造される、または製造可能である中空ガラス品に関する。その際、そのガラス品は、容器または容器部分であり、かつ容器壁ならびにネック部分ないしはショルダー部分を含む。その中空ガラス品は、少なくとも断片的には、円形断面または楕円形断面を有するシリンダ状である。
【0046】
容器の外側表面は、製造プロセスの際に高圧にさらされ、かつ外側成形工具、ならびに内側に位置する、例えばピンの形の成形工具を利用して成形された部位において、特徴的表面構造を有する。その、容器の外側表面の表面領域を、以下では、特徴的表面領域とも呼ぶ。その際、特徴的表面とは、本発明の趣旨では、特に、内側に位置するピンならびに外側成形工具を使用して、一成形ステップにおいて成形された、外側ガラス表面の表面領域と理解される。好ましくは、特徴的表面領域を成形するための成形ステップが、該当する容器を製造するための成形方法全体内の最終成形ステップである。
【0047】
一実施形態によると、容器は、バイアルまたはカルプーレである。その場合、特徴的表面領域は、クリンプネックの外面と理解される。本発明の別の一実施形態は、容器がシリンジであることを想定する。その実施形態では、特徴的表面領域は、コーンチップの外面と理解される。その際、容器の特徴的表面領域は、高度プロファイルにおける勾配が異方性である起伏を有する表面構造を有する。その際、高度プロファイルは、接線方向勾配および軸方向勾配を有する。
【0048】
その際、接線方向勾配とは、高度プロファイルの、接線方向での勾配と理解され、ただし、その際、成形プロセス中の半製品の回転方向に相当する、表面構造の方向を接線方向と呼ぶ。それに対して、軸方向とは、高度プロファイルの、軸方向、つまり、半製品の回転軸と平行する方向での勾配と理解される。
【0049】
その際、接線方向勾配の平均値、つまり接線方向勾配平均値、ならびに軸方向勾配の平均値、つまり軸方向勾配平均値は、本発明によると、次のように、特徴的表面領域の高度プロファイルから算定される。
【0050】
容器の特徴的表面上に、サイズが1.0mm×1.0mmの3つの測定領域を、各測定領域が互いに120°の正接距離を有するため、測定領域が、特徴的表面領域の周囲にわたって均等に分配されているように配置する。同時に、測定領域のそれぞれを、特徴的表面領域の軸方向での中心に配置する。容器は回転対称形状ないしはシリンダ形状であるため、すべての特徴的表面領域は、接線方向にシリンダ状湾曲を有する。このシリンダ状湾曲は、高度プロファイルの測定後に自動的に補正され、それは、1.0mm×1.0mmという測定領域サイズではたやすく可能である。場合によっては生じる体系的な、つまり、容器の成形に起因する、特徴的表面領域の軸方向での湾曲も自動的に補正される。したがって、コンテナ形状の巨視的な影響は、起伏の算出および以下で記載する評価の際には考慮されない。
【0051】
特徴的表面領域の個々の測定領域の起伏は、白色干渉計を用いて作成できる。その際、測定領域内の起伏の各点において、それぞれ、接線方向および軸方向での勾配を測定する。続いて、起伏を、計算により、巨視的なコンテナ形状の分だけ、軸方向および周方向に補正する。続いて、それぞれの方向微分から接線方向または軸方向での局所勾配を算出する。その際、表面起伏の絶対高度値は外れるが、なぜなら、谷と山との間の高度差が、ほぼ一定の勾配を有する領域によって代用されるからである。山と谷との間のそれぞれの絶対高度差に依存して、それらの一定領域は、異なる幅で測定領域にわたって延在する。したがって、測定領域ごとの接線方向勾配平均値ならびに軸方向勾配平均値は、その測定領域にわたる、局所的な接線方向勾配ないしは局所的な軸方向勾配の値の平均値として得られる。個々の測定領域に関して該当する勾配平均値は、それもまた算術平均されるため、接線方向勾配平均値ないしは軸方向勾配平均値が、3つの測定領域にわたって平均して算定される。その際、以下では、他の指定がない限り、接線方向勾配平均値および軸方向勾配平均値とは、前記のように、3つの測定領域にわたって算出された勾配平均値と理解される。
【0052】
その際、本発明による容器は、そこでは接線方向勾配平均値が軸方向勾配平均値よりも小さい特徴的表面領域を有する。それは、固定式成形ローラを用いて容器を製造する際、特に本発明による製造方法では、成形可能な半製品ガラス表面が、外側成形工具の固定式工具面越しに研磨するため、成形工具の表面上に存在する潤滑剤膜ないしは油膜が、ガラス表面によって掻き取られるないしは剥削されるということによって説明できる。したがって、ガラス表面と工具表面との間の相対運動によって、旋削プロセスの場合と類似する条溝パターンが生じる。
【0053】
それとは異なり、従来技術から公知の方法により可動式成形ローラを用いて製造した容器の高度プロファイルは、それぞれの方向微分に依存する、高度プロファイルの勾配に関して、異方性を示さないか、または少なくとも顕著な異方性は示さない。この場合、優先方向の欠如は、従来技術から公知の方法の場合、工具表面が、工具接触点での加圧下に、半製品のガラス表面での回転方向に回転すること(ただし、工具とガラス表面との間には、様々な厚さの潤滑油膜が存在する)により説明できる。この、潤滑油膜の厚さの差が、回転運動中に、なおも成形可能であるガラス表面上へスタンプのように刻印される。その際、パターンがどのように、回転方向、つまり接線方向に形成されるか、および回転軸の方向、つまり軸方向に形成されるかの点では相違がないか、または少なくとも大きな相違はない。
【0054】
それによると、合わせて本方法に含まれるのは、本発明による方法を用いて製造されるか、または製造可能である中空ガラス品であり、ただし、そのガラス品は、ネック領域またはショルダー領域および壁を有する容器または容器部分であり、そのガラス品は、容器の壁およびネック領域またはショルダー領域を含み、壁は円形断面または楕円形断面を有し、容器は中空ガラス品の外側ガラス表面上に特徴的表面領域を有し、特徴的表面領域は接線方向および軸方向を有し、接線方向は周方向に相応し、軸方向は接線方向に対して垂直であり、特徴的表面領域の高度プロファイルは、それぞれ、接線方向勾配平均値を有する接線方向勾配および軸方向勾配平均値を有する軸方向勾配を有し、接線方向勾配は、高度プロファイルの、接線方向での勾配であり、軸方向勾配は、高度プロファイルの、軸方向での勾配であり、かつ接線方向勾配平均値は、特徴的表面領域中にある測定領域内の高度プロファイルの局所的な接線方向勾配値の値の積分法によって算出され、軸方向勾配平均値は、特徴的表面領域中にある測定領域内の高度プロファイルの局所的な軸方向勾配値の値の積分法によって算出される。
【0055】
本発明の一実施形態によると、容器の特徴的表面は、起伏を有する表面構造を有し、ただし、接線方向勾配平均値と軸方向勾配平均値との間の比率に関して、
接線方向勾配平均値/軸方向勾配平均値<0.60
が当てはまる。
【0056】
特に好ましくは、接線方向勾配平均値と軸方向勾配平均値との間の比率に関して、
接線方向勾配平均値/軸方向勾配平均値<0.45
が当てはまる。
【0057】
本発明の一発展形態によると、特徴的表面領域の外側側面が、容器の縦軸に対して横方向、つまり85から95°の範囲、好ましくは90°において壁の厚さで測定した表面粗さRz接線方向よりも大きい、容器の縦軸方向に測定した表面粗さRz軸方向を有する。好ましくは、その断片が、一周する溝または筋目を有する。
【0058】
溝または筋目の深さは、該当する断片の最大単一表面粗さRzi軸方向によって記載される。その際、単一表面粗さRzi軸方向は、規格DIN EN ISO 4768:1990に準拠して測定する。
【0059】
容器の特徴的表面領域は、本発明の一発展形態では、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの一周する溝を有する。その際、個々の溝間の間隔は異なってもよい。
【0060】
一実施形態によると、中空ガラス品は、瓶、バイアル、シリンジ一部分、またはカルプーレ一部分である。特に、中空ガラス品は、医薬品一次包装の一部分、例えば、薬用バイアルである。
【0061】
合わせて本発明に含まれるのは中空ガラス品であり、ただし、そのガラス品は、ガラス管の熱間成形によって製造され、および/またはその高さに沿って、壁厚が一定である管状断片を有し、その断片では、壁厚の標準偏差が0.05mm未満である。
【0062】
合わせて本発明に含まれるのは、さらに、前記のような中空ガラス品であり、ただし、特徴的表面領域は、管状断片の範囲外に位置し、かつそのガラス品の末端領域に位置し、ただし、ガラス品の特徴的表面領域の範囲にある直径が、管状断片にある直径よりも小さい。
【0063】
中空ガラス品のガラスは、特に、ホウケイ酸ガラスであり得る。
【0064】
詳細な説明
以下では、例示的実施形態および図1から17を手がかりに本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】従来技術から公知の熱間成形装置を側面図で図示する。
図2】従来技術から公知の熱間成形装置を上面図で図示する。
図3】本発明による熱間成形装置の一実施形態を側面図で図示する。
図4】本発明による熱間成形装置の一実施形態を上面図で図示する。
図5】本発明による製造方法の一実施形態を図解する。
図6】多角形断面を有する外側成形ローラを備えた本発明による装置の一実施形態を側面図で図示する。
図7】多角形断面を有する外側成形ローラを備えた本発明による装置の一実施形態を上面図で図示する。
図8】本発明によるガラスバイアルを図示する。
図9】本発明によるガラスバイアルを図示する。
図10】従来技術から公知の容器の特徴的表面領域の表面構造の2D起伏を示す。
図11】一実施形態の特徴的表面領域の表面構造の2D起伏を示す。
図12】従来技術から公知の容器の特徴的表面領域の表面構造の3D起伏を示す。
図13】一実施形態の特徴的表面領域の表面構造の3D起伏を示す。
図14】従来技術から公知の容器の特徴的表面領域の、接線方向での勾配解析を図示する。
図15】従来技術から公知の容器の特徴的表面領域の、軸方向での勾配解析を図示する。
図16】一例示的実施形態の特徴的表面領域の、接線方向での勾配解析を図示する。
図17】一例示的実施形態の特徴的表面領域の、軸方向での勾配解析を図示する。
【0066】
図1および2では、従来技術から公知の熱間成形装置1を図示する。その際、図1は側面図を示し、図2は上面図を示す。その際、この装置は、ガラスバイアルの内側側面を形成する内側成形工具40を有する。外側成形ローラ20は、懸架60において回転可能に支承されている。さらに、この装置は、ガラス管30を冷却するための空冷70を有する。成形プロセスの最中、ガラス管30は回転運動する。成形工具40および20は、被成形ガラス管半製品に向かって移動する。外側成形工具20は、回転可能に支承されているため、これらも同じく、ガラス管30の回転運動によって回転する。したがって、外側成形ローラ20とガラス管30とは、互いに相対運動を示さない。さらに、ガラス管30の外側側面を成形する際に、外側成形ローラ20の側面全体が、高温ガラス管30と接触する。ガラス管の冷却は、空冷70を利用して行う。
【0067】
図3および4は、本発明による熱間成形装置2の一実施形態を図示する。その際、図3は側面図を示し、図4は装置の上面図を示す。この装置は、ガラス管30の内側側面を成形するための内側成形工具40、ならびに外側側面を成形するための2つの外側成形工具21を有する。ガラス管30は回転し、その回転運動を矢印で表す。
【0068】
外側成形工具21は、円形断面を有する成形ローラとして形成されており、かつ懸架61を利用して自由回転可能に支承されている。しかしながら、変形プロセスの最中、成形ローラ21は、固定装置82によって固定されるため、成形ローラ21の回転は不可能になる。したがって、成形ローラ21は、回転するガラス管30によって回転するのではなく、装置82によってその位置に固定されたままである。それゆえ、ガラス管30と成形ローラ21とは、互いに相対運動を示す。成形ローラ21は、変形プロセスの間、固定装置82によって固定されているため、成形ローラ21の側面の小さな断片のみが高温ガラス管30と接触するのに対して、成形ローラ21のその他の側面は、ガラス管と接触していない。それゆえ、成形ローラ21の側面の小さな一部分のみが、ガラス管との接触面として利用される。
【0069】
本発明による装置2は、その上、外側成形ローラ21上に潤滑剤塗布装置90を有する。その際、潤滑油塗布装置90の流出口と成形工具とは、半製品の回転軸の周りに、少なくとも45°の角距離で配置されている。装置90のこの配置により、潤滑剤が、成形ローラ21の、高温ガラス管30との接触面上にではなく、成形ローラ21の別の低温領域に塗布されることが保証される。本発明による装置2は、示す実施形態においては、その上、成形ローラ冷却装置100を有する。それによって、潤滑剤の熱分解が回避される。これにより、スス生成が低下し、それゆえ、半製品の汚れも低下する。
【0070】
図5は、本発明による変形方法の一実施形態を図示する。その際、装置2aは、図3および4で示された本発明による装置2に相当する。さらに明快にするために、1つの外側成形ローラ21しか図示しない。
【0071】
ステップa)では、ガラス半製品30を準備し、内側成形工具40上に配置し、ただし、半製品を、ガラスの軟化まで加熱した。外側成形工具21は、円形断面を有する成形ローラとして形成されており、かつ懸架60を用いて回転可能に支承されている。その際、固定装置82を利用して成形ローラを固定する。
【0072】
ステップb)では、半製品30の成形を行う。そのためには、半製品30が、その中心点を回る回転運動をする。その回転運動を、矢印で表す。半製品30の内側側面は、内側成形工具40によって成形される。半製品30の外側側面の成形は、外側成形工具21の接触面22によって行う。その際、接触面22が、成形工程中、潤滑剤で覆われている。
【0073】
成形工程後に、ステップc1)において、半製品30を装置2aから除去する。固定装置82を取り外し、成形ローラ21を、事前定義された角度αだけ回転させる。好ましくは、角度aが、接触面22の角度に相当する。続いて、ステップc2)において、固定装置82のロックにより成形ローラ21の位置を固定する。
【0074】
さらに、ステップc)では、装置90により、成形ローラ21の側面の部分領域91上で潤滑剤を塗布する。その際、先行するステップb)において接触面22の部分ではなかった、成形ローラ21の部分領域91上で潤滑剤を塗布する。それにより、潤滑剤の塗布時に、部分領域91が、高温ガラス30との接触によって加熱されていない、またはもはや加熱されていないことが保証される。
【0075】
新しい半製品31を用いてステップa)およびb)を繰り返す際に、成形ローラ21の側面の新しい部分領域23が、半製品31と接触する。したがって、どの半製品においても、接触面ないしは成形面として、成形ローラ21の側面の別の部分領域を用いて変形が行われるため、それぞれの成形面は、その前の成形プロセスによって加熱されたのではなく、どの成形プロセスにおいても低温の成形面が存在する。その際、低温の成形面とは、特に、250℃未満の表面温度を有する成形面と理解される。
【0076】
図6および7は、多角形断面を有する成形ローラ25を備えた一例示的実施形態を図示する。その際、ここで示される成形ローラは、十二角形の形状の断面を有する。それに応じて、12個の成形面26が、接触面として存在する。したがって、図5で示した回転角αは、この成形ローラの場合、30°である。
【0077】
図8は、変形させたガラスバイアル31の図解を示す。その際、ガラスバイアルの縦軸33に対する、測定領域32中での表面粗さRz縦方向およびRz横方向の測定方向を、矢印34および35で示す。その際、矢印34は軸方向を、そして矢印35は接線方向を示す。その際、測定領域32は、特徴的表面領域320内に位置する。図8に示される例示的実施形態では、特徴的表面領域320が、クリンプネックの外面に相当する。
【0078】
測定領域32を、図9に図示する。その際、ガラスバイアルの特徴的表面領域320、つまりクリンプネックは、複数の一周する筋目36、37、38、39を有する。その際、筋目ないしは溝36、37、38および39は、ガラスバイアルの縦軸に対して横方向に整列している。
【0079】
図10には、従来技術から公知のガラスバイアルの特徴的表面領域の表面構造の2D高度プロファイルを比較例として示す。その際、測定領域は、2mm×2mmというサイズを有し、クリンプネックの領域から採用した。その際、2D高度プロファイルをグレースケールで示す。その際、横座標は接線方向を示し、縦座標は軸方向を示す。図10から、製造プロセスの際に刻印されたパターンは優先方向を示さないことが明らかになる。つまり、回転方向、つまり接線方向でのパターンないしは高度プロファイルが、回転軸の方向、つまり軸方向での場合と同様に顕著である。
【0080】
図11は、一例示的実施形態の特徴的表面領域の2D高度プロファイルを示す。この場合も、測定領域は、2mm×2mmというサイズを有し、クリンプネックの領域から採用した。その際、2D高度プロファイルをグレースケールで示す。その際、横座標は接線方向を示し、縦座標は軸方向を示す。図10で示した高度プロファイルの場合とは異なり、この例示的実施形態の高度プロファイルは異方性分布を有する。その際、同じ軸方向値を有する断片は、同じか、またはほぼ同じ高さを有するのに対して、接線方向値は同じであるものの軸方向値は異なる測定点の起伏高さは、互いに異なる。
【0081】
それは、本発明による方法の場合、成形可能なガラス表面が、固定式工具表面越しに研磨し、それにより、定義されていない厚さの油膜を掻き取るため、接線方向に条溝パターンが生成するということに起因する。それは、図13によっても明らかになる。その際、図13は、2mm×2mmの大きさの測定領域のガラス表面の、グレースケールで示された3D起伏を示す。その際、x軸は接線方向を示し、y軸は軸方向を示す。接線方向での溝ないしは筋目を有する研削パターンが現れる。
【0082】
それとは異なり、図12で示される3D高度プロファイルは、比較例の特徴的表面領域を示す。例示的実施形態とは異なり、比較例は、高度プロファイル中で優先方向を示さない。この場合、むしろ、刻印されたパターンがどのように接線方向ないしは軸方向に形成されるかという点において相違がない。特徴的表面領域の構造を定量的に把握するために、全体として3つの、それぞれ1mm×1mmの大きさの測定領域を選択し、Zygo NexView Nx2型の白色干渉計を利用して起伏を作成した。その際、個々の測定領域は、互いに120°の正接距離を有し、したがって、特徴的表面領域の全周にわたって均等に分布した。さらに、個々の測定領域が、軸方向では、特徴的表面領域の中心に配置されているように調整した。起伏を測定し、巨視的なコンテナ形状ゆえ、計算により、測定領域のシリンダ形状の分だけ補正した。そのように得られた起伏から、起伏の各点において、それぞれ、接線方向と同様に軸方向でも局所勾配を測定した。各測定領域のそれぞれの接線方向勾配平均値および軸方向勾配平均値を算出するために、対応する局所勾配値の値を、測定領域全体にわたって平均した。個々の測定領域の対応する勾配平均値を再び算術平均して、3つの測定領域にわたる平均値として、接線方向勾配平均値ならびに軸方向勾配平均値を算定した。
【0083】
図14および15は、その際、比較例の接線方向(図14)および軸方向(図15)での勾配解析を示し、ただし、局所勾配値をグレースケールとして示す。比較例では、接線方向勾配の値と軸方向勾配の値とが互いにほとんど異ならず、つまり、測定領域にわたって、勾配の分布に関して優先方向ないしは異方性が存在しない。
【0084】
図16および17では、例示的実施形態の勾配解析を示し、ただし、図16は、接線方向での局所勾配を示し、図17は、軸方向での局所勾配を示す。図16および17によると、勾配値の異方性が明らかに識別できる。接線方向での勾配はおおむね一定であるのに対して、軸方向での勾配値は明らかに異なる。
【0085】
その際、勾配の値は、回転対称容器の常に外側に存在する特徴的表面の直径にも依存する。測定に使用する表面領域の直径が小さければ小さいほど、生じる勾配は大きくなる。それは、接線方向での勾配と同様に軸方向での勾配にも当てはまる。次に、表1が、異なるクリンプネック直径を有するバイアルに対する測定値を示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に記載する勾配値は、複数の試料の算術平均値であり、ただし、個々の試料の値は、1mm×1mmという測定領域サイズを有する、クリンプネックの外面上のそれぞれ3つの測定領域での測定の算術平均によって算定した。その際、測定領域を、軸方向での中心に配置した。その際、1つの測定の3つの測定領域は、互いに120°の正接距離で配置した。1つの試料の3つの測定領域ごとにそれぞれ1つの勾配解析を、軸方向同様に接線方向にも行い、そのようにして得られた勾配を、各測定領域にわたる積分法により平均化した。比較例は、可動式外側成形ローラを用いる、従来技術から公知の方法により製造し、例示的実施形態の製造は、本発明による方法を用いて行った。
【0088】
すべての試料は、その接触面が1.6μmの平均表面粗さRaを有する成形ローラを用いて製造した。それは、単なる旋削仕上げ(Abdrehen)により達成され得る最も精細な加工度(Bearbeitungsstufe)である。
【0089】
表1から、勾配平均値の値が、例示的実施形態の場合も比較例の場合も、クリンプネックの半径の低下と共に高まることが明らかになる。その際、両方の比較例とは異なり、例示的実施形態は、勾配平均値に関して異方性を示す。つまり、勾配平均値が、接線方向では軸方向よりも明らかに小さい。それに応じて、例示的実施形態は、さらに、接線方向勾配平均値の、軸方向勾配平均値に対する比率に関して、比較例よりはるかに小さい値も有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17