(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】バイオプリンティングのための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/07 20100101AFI20240531BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240531BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240531BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20240531BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240531BHJP
C12M 3/04 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
C12N5/07
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/00
C12M1/00 Z
C12M3/04 A
(21)【出願番号】P 2019571800
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(86)【国際出願番号】 FR2018050534
(87)【国際公開番号】W WO2018167401
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-09
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519333974
【氏名又は名称】ポワティス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ギュイモ
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラン ヴィエルローブ
(72)【発明者】
【氏名】ギョーム シモン
(72)【発明者】
【氏名】ギョーム ヴァンデネークホーテ
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】福井 悟
【審判官】荒木 英則
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/070304(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N1/00-7/08
C12N11/00-13/00
B33Y10/00-99/00
C12M1/00-3/10
JSTPlus/JST7580/JMEDPLus(J-Dream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 製造されるべき製品の組織の最終アイテムを表すメタモデル(15)を決定するステップと、
-
製造されるべき
製品の組
織の3次元構造を表す標的デジタルモデル(16)を準備するステップと、
- 生細胞および生物材料の複数の層
を堆積するために
、AFA-LIFTタイプのレーザーバイオプリンティング器具(2)を制御するバイオプリンティングステップと、を含み、
- 前記標的デジタルモデル(16)に
適用されるデジタル処理
によってデジタル印刷モデル(17)を計算するステップであって、前記デジタル処理は、製造されるべき製品の
組織の前記標的デジタルモデル(16)と、
前記標的デジタル
モデル(16)に含
まれる要素の発達のデジタルモデルである発達モデル(18)と、印刷され
る組織成分の特性と、を考慮に入れた
モデル化タイプの処理であり、前記発達モデル(18)は、前記要素の特性の時間的発達、空間的発達、または新しい要素の自動生成のうちの少なくとも1つを定義する関数により構成される、ステップと、
をさらに含み、
- 前記レーザーバイオプリンティング器具(2)を制御する前記バイオプリンティングステップは、このようにして計算される前記デジタル印刷モデル(17)に従って、生細胞および/または生物材料の細胞および/または粒子の転写によって実施されることを特徴とするバイオプリンティング方法。
【請求項2】
前記バイオプリンティングステップの間に、前記層の各々の2D特性評価のステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のバイオプリンティング方法。
【請求項3】
印刷されたアイテムを成熟させる成熟ステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のバイオプリンティング方法。
【請求項4】
バイオプリンティングされた製品の3D特性評価のステップを、バイオプリンティングの直後にさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のバイオプリンティング方法。
【請求項5】
バイオプリンティングされた製品の3D特性評価のステップを、その成熟の間にさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のバイオプリンティング方法。
【請求項6】
前
記発達モデル(18)は、共有サーバ(8)に記憶され、前記器具は、デジタルライブラリ(9)から、標的製品のカテゴリーに適合される記録され
た発達モデル(18)を選択するために、前記サーバと通信するための手段を含むことを特徴とする請求項1に記載のバイオプリンティング方法。
【請求項7】
前記発達モデル(18)の周期的再計算のための少なくとも1つの接続された器具(10から12)からのデータに関するマルチエージェント型の処理ステップを含むことを特徴とする請求項1に記載のバイオプリンティング方法。
【請求項8】
前記発達モデル(18)の周期的再計算のための少なくとも1つの接続された器具(10から12)からのデータに関する機械学習型の処理ステップを含むことを特徴とする請求項1に記載のバイオプリンティング方法。
【請求項9】
前記発達モデル(18)の周期的再計算のための少なくとも1つの接続された器具(10から12)からのデータに関する微分方程式を用いる連続的なモデル化型の処理ステップを含むことを特徴とする請求項1に記載のバイオプリンティング方法。
【請求項10】
印刷されたアイテムを成熟させる成熟ステップをさらに含み、
接続された器具(10から12)は、前記共有サーバ(8)に、標的組織、その環境、および前記バイオプリンティングステップおよび前記成熟ステップの間に検出されたイベントを記載するタイムスタンプが付されたデジタル情報を送信することを特徴とする請求項6に記載のバイオプリンティング方法。
【請求項11】
複数の印刷モデルを計算するステップ、ならびにこのようにして計算される
前記印刷モデルの理論的発達を評価するステップおよび前記標的デジタルモデルと計算された成熟モデルとの間の違いを最小限にする前記デジタル印刷モデル(17)を選択するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載のバイオプリンティング方法。
【請求項12】
前記デジタル印刷モデル(17)を計算するステップは、前記標的デジタルモデル(16)
と発達モデル(18)との間の畳み込み処理を実施することを特徴とする請求項1に記載のバイオプリンティング方法。
【請求項13】
- バイオプリンティングステーションであって、
・ 標的へ
生細胞および/または
生物材料の
細胞および/または
粒子を転
写することのできる
、AFA-LIFTタイプのレーザーバイオプリンティング器具の少なくとも1つのバイオプリンティングヘッド(3)、
・ およびバイオプリンティングステップの間、
生細胞および/または
生物材料の複数の層の各々のデータを記録するための2D特性評価の手段(4)、
を備える、バイオプリンティングステーション(2)、
- ならびに前記バイオプリンティングステーション(2)を制御するコンピュータ(7)であって
、前記コンピュータ(7)のメモリーに
、製造されるべき製品の
組織の3次元構造を表す、標的デジタルモデル(16)を定義しおよび記録するための手段を含む、コンピュータ(7)、
を含むバイオプリンティングシステムであって、
複数
の発達モデル(18)を記録するためのメモリー(9)に関連する第2のコンピュータを含み、および:
- 前記標的デジタルモデル(16)に
適用されるデジタル処理
によってデジタル印刷モデル(17)を計算するステップであって、
前記デジタル処理は、
・ 前記製造されるべき製品の
組織の前記標的デジタルモデル(16)と、
・ 前記標的デジタルモデル(16)に含まれる要素の発達のデジタルモデルであ
る発達モデル(18)と、
・印刷される
組織成分の特性と、
を考慮に入れた
モデル化タイプの処理であり、前記発達モデル(18)は、前記要素の特性の時間的発達、空間的発達、または新しい要素の自動生成のうちの少なくとも1つを定義する関数により構成される、デジタル印刷モデル(17)を計算するステップ、ならびに
- このようにして計算される
前記デジタル印刷モデル
(17)に従って前記バイオプリンティングステーション(2)を制御するバイオプリンティングステップ、
を制御するプログラムを前記コンピュータ(7)によって実行することを特徴とするバイオプリンティングシステム。
【請求項14】
バイオプリンティングによって生成された前記標的のための少なくとも1つの成熟ステーション(5)を含むことを特徴とする請求項13に記載のバイオプリンティングシステム。
【請求項15】
複数のバイオプリンティングステーション(2)を含み、前記バイオプリンティングステーション(2)の各々は、前記第2のコンピュータを含む共通サーバ(8)と通信するための手段を含み、前記コンピュータは
、バイオプリンティングステーション(2)に関連する各ローカルコンピュータ(7)に、各標的とされる適用に従って前記バイオプリンティングヘッド(3)によって適用されるべき前記標的デジタルモデル(16)を送信することを特徴とする請求項13に記載のバイオプリンティングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、再生医療、薬理学および細胞生物学の研究における使用のための生物工学によって作られた構造を生成するために、所定の2Dまたは3D構造(organization)を持つ生体材料(living material)および任意選択的に非生体材料(non-living material)をモデル化しおよび組み立てるためのコンピュータ支援の転写プロセスによるレーザーバイオプリンティングの分野に関する。
【0002】
組織工学(Tissue engineering)は、天然組織またはさらには器官の機能を置換、修復(restore)または維持するための生物学的に適当な代替物を設計しおよび開発することを目的とする。例は、論文(非特許文献1)に記載されている。
【0003】
これらの人工的な(再)構築方法を有効にするために、それらは、微視的から巨視的スケールまでの異なる組織成分(細胞、細胞外マトリックス、モルフォゲン)によって及ぼされる作用および反作用(counter-reaction)ループから特性化されおよび由来する標的組織の複雑性をできるだけ同様に再生(reproduce)しなければならない。これらの相互作用は、組織の形状または構造とそれらの機能との間の密接な関係を示唆する。実は、伝統的な組織工学アプローチは、多数の制限、特に、組織の複雑性、それらの血管新生化(vascularization)、結果として生じるカスタマイズ、およびそれらの生成の安全性を制御する困難性を有する。
【0004】
これらの制限を克服するために、より一般的にはバイオプリンティングと呼ばれる生物学的要素(biological element)の印刷は、論文(非特許文献2)、および(非特許文献3)において論じられるように撮像され始めた(began to be imagined)。
【0005】
この技術は、生物学的組織(生細胞、生物材料、分子)の異なる成分を、それらの印刷後(post-printing)特性の維持を保証しながら、組織化(organize)し、次いで組織のこれらの異なる成分を3Dで層ごと(layer-by-layer)に組み立てることを可能にする。より伝統的なバイオ製造方法にまさるバイオプリンティングの主な利点は、再生性(reproducibility)(自動化)、実行の速度(コンピュータ設計(planning)/並列化)、およびカスタマイズする能力である。
【0006】
現在、論文(非特許文献4)にあらましが述べられるように、3つの主要バイオプリンティングテクノロジー:インクジェット、バイオ押し出し、およびレーザー支援プリンティング(LAB)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2016/097619号(WO2016097619)
【文献】米国特許第7000093号明細書(US7000093)
【文献】米国特許第5432718号明細書(US5432718)
【非特許文献】
【0008】
【文献】Griffith, L. G., & Naughton, G. (2002). Tissue engineering--current challenges and expanding opportunities. Science, 295(5557), 1009-1014
【文献】Klebe, R. (1988). Cytoscribing: A Method for Micropositioning Cells and the Construction of Two- and Three-Dimensional Synthetic Tissues. Experimental Cell Research, 179(2):362-373
【文献】Klebe, R., Thomas, C., Grant, G. Grant, A. and Gosh, P. (1994). Cytoscription: Cumputer controlled micropositioning of cell adhesion proteins and cells. Methods in Cell Science, 16(3):189-192
【文献】Dabababneh, A. B., & Ozbolat, I. T. (2014). Bioprinting technology: a current state-of-art review. Journal of Manufacturing Science and Engineering, 136(6)
【文献】B. Hopp, T. Smausz, N. Kresz, N. Barna, Z. Bor, L. Kolozsvari, D. B. Chrisey, A. Szabo, and A. Nogradi, "Survival and proliferative ability of various living cell types after laser-induced forward transfer," Tissue Eng. 11, 1817-23 (2005)
【文献】"J. A. Barron, P. Wu, H. D. Ladouceur, and B. R. Ringeisen, "Biological laser printing: a novel technique for creating heterogeneous 3-dimensional cell patterns," Biomed. Microdevices 6, 139-147 (2004)"
【文献】"Journal of laser micro/nanoengineering" Vol 9, N° 2-2014 under the title "Laser tool for single cell transfer"
【文献】"F. Guillemot, A. Souquet, S. Catros, B. Guillotin, J. Lopez, M. Faucon, B. Pippenger, R. Bareille, M. Remy, S. Bellance, P. Chabassier, J. C. Fricain, and J. Amedee, "High-throughput laser printing of cells and biomateiral s for tissue engineering," Acta Biomater. 6, 2494-2500 (2010)"
【文献】"Ballet, P., Pothet, A., Misevic, G., Jeannin-Girardon, A., Fronville, A., & Rodin, V. (2013). A マルチエージェント approach for simulation in cell biology. The discreet and continuous life, 155-194"
【発明の概要】
【0009】
技術水準
技術水準は、「AFA-LIFT」として知られおよび論文(非特許文献5)に記載される解決策である。
【0010】
論文(非特許文献6)もまた、レーザー方向は固定されおよび転写されるべき細胞を支持する膜は可動(mobile)である「AFA LIFTまたはDRL-LIFT」タイプの器具を記載する。
【0011】
非特許文献7に公表された別の論文は、AFA-LIFTタイプのプロセスおよび器具の別の例を記載する。
【0012】
論文(非特許文献8)は、そのようなプロセスを実行するための器具の例を記載する。
【0013】
技術水準において、少なくとも1つのインクで印刷するための方法および器具を説明する特許出願(特許文献1)もまた知られており、前記方法は、インク膜内にキャビテーション気泡を生成させるようにレーザービームの焦点を合わせるステップと、インク膜の自由表面から少なくとも1つのインク滴を形成するステップと、受け入れ基材(receiving substrate)の堆積表面上に前記滴を堆積させるステップと、を含み、レーザービームは、重力と反対の方向に配向され、膜の自由表面は、インク膜の上に配置される堆積表面に向かって上方に配向されることを特徴とする。
【0014】
この構成は、特に、沈降現象(settling phenomena)の発生を制限しながら、インク膜に関して実質的に一定の厚さEを得ることを可能にする。その上、それは、広範囲のインクの使用を可能にする。
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
先行技術の欠点
先の技術の解決策は、バイオプリンティングステップの後に変換する(transform)生細胞からの組織の製造によく適応されない。転写によって堆積される生細胞は、接着し(adhere)、増殖し、変形し、移動し、分化(differentiate)し、無活動(quiescence)およびアポトーシスに入り得る。結果として、バイオプリンティングによって生成される生物学的アイテムは、固定されず、および成熟段階(maturation phase)後に得られる組織は、生成された組織に必ずしも対応しない。
【0016】
先行技術(previous art)の解決策は、組織の成分がその特有の成分の作用下でまたは温度、pH、酸素またはC02レベルのような外部の(外因性)刺激の作用下で経時で(経時的に)変換するときに(4D印刷)、所定のモデルを築くことを可能にしない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によって提供される解決策
本発明は、その最も一般的な意味において:
・ 製造されるべき組織(tissue)の3次元構造(organization)を説明するデジタルの標的モデル(CADファイルとも呼ばれる)を準備するステップと、
・ 生細胞および生物材料の複数の層の堆積のためのバイオプリンティング器具を制御するステップと、
・ バイオプリンティングステップの間の各層に関する任意選択的な2D特性化ステップと、
を含むバイオプリンティング方法であって、
・ それが、
・ 一方では、製造されるべき製品の前記デジタルモデルによりデジタル印刷モデル(digital printing model)を、および他方では、予測的発達(development)モデルを、ならびに印刷されるべき成分の特徴(カスタマイズのための関心事)のものを、計算するステップ、
をさらに含み、
・ バイオプリンティング器具を制御するステップは、このようにして計算される前記デジタル印刷モデルにより実施されることを特徴とする、方法に関する。
【0018】
このようにして製造される印刷製品(printing product)の成熟ステップは、また、インビトロモデルを準備するときに、印刷プロセスの終わりに提供され得る。インサイチュ(インビボ)印刷のために、成熟ステップはない。直接的な移植(direct implantation)のためのインビトロモデルの印刷に関して、成熟ステージは部分的である。
【0019】
方法は、各印刷操作の履歴が追跡されることを可能にする生物学的アイテムバンク、CAD、印刷および成熟を準備するタスクを含む)、タスクおよび操作のシーケンスならびに対応するデータを表示および記録するステップを任意選択的に含んでいてもよい。
【0020】
好ましくは、バイオプリンティング方法は、また、バイオプリンティングされた製品の3D特性化ステップを、インビトロモデルのためのその成熟の間に含む。
【0021】
2Dおよび3D特性化ステップは、組織分布的(topographic)、断層撮影法の(tomographic)、分光学的(spectroscopic)(ラマン、レイリー(Rayleigh)、IR、・・・)、生化学的分析手段、・・・の使用のような形のいくつかのタイプをカバーし得る。それらは、好ましくは、印刷の間および後に組織を分析するための2Dおよび3D撮像技術に基づく。これらの技術は、光学的撮像技術(共焦点の、蛍光、OCT、位相結像(Phase Imaging)、SPIM、多光子の、・・・)、音響の(acoustic)、X線、等、・・・・に基づき得る。
【0022】
変形によると、前記発達予測モデルは、共有サーバに記憶され(stored)、前記器具は、デジタルライブラリから標的製品カテゴリーに適合する記憶された発達予測モデルを選択するための前記サーバと通信するための手段を含む。
【0023】
別の変形によると、前記発達予測モデルは、標的を視覚化するカメラによって観察される標的を受け入れる理論的な生物材料転写位置と前記生物材料の実際の位置との間のオフセットを決定する。
【0024】
他の変形によると、方法は:
- 器具において取得された2D特性および3D特性を、複数のサーバによって共有されるサーバに送信するステップ、
- 発達予測モデルの周期的再計算のための少なくとも1つの接続された器具からのデータに関するマルチエージェント処理ステップ(processing step)、
- 発達予測モデルの周期的再計算のための少なくとも1つの接続された器具からのデータに関する機械学習型の処理ステップ、
を含む。
【0025】
この周期的再計算は、データ同化(data assimilation)によって既に得られたデータに関して永久的な計算を伴う連続的な学習プロセスを実行する。したがって、予測モデルは、より良い予測のために前の学習を使用する。
【0026】
- 発達予測モデルの周期的再計算のための少なくとも1つの接続された器具からのデータに関する微分方程式による、連続的なモデル化タイプの処理ステップ。
【0027】
- 生存可能組織境界に基づく最適印刷空間を周期的に再計算するために、前記生存可能組織境界および生存不能組織境界を決定するための、撮像空間(imaging space)処理ステップ。
【0028】
有利には、接続された器具は、接続される前記サーバに:
- 製造されるべき製品のデジタルモデルならびに2D印刷特性および3D印刷後特性を含み、および1つあるときの成熟段階における、情報、
- 器具の物理的条件に関する情報(該当する場合、バイオプリンティングおよび成熟ステップの間の)、
- 電子実験ノート(ELN)からの、実験の準備、細胞、生物材料および培地(culture media)の準備に関する情報、
- 適用可能な場合、標的組織およびバイオプリンティングステップおよび成熟ステップの間に検出されたイベントを記載する、デジタルのタイムスタンプが付された情報、
を送信する。
【0029】
変形によると、本発明による方法は、複数の印刷モデルを計算するステップ、ならびにこのようにして計算される印刷モデルの理論的変換を評価するステップおよび標的モデルと計算された成熟モデルとの間の違いを最小限にする印刷モデル(17)を選択するステップを含む。
【0030】
変形によると、印刷モデルを計算するステップは、前記印刷モデルの最適計算を保証するために、さらなる印刷(実成分、機械(machine)、プロセス、・・・)に関する入力を考慮に入れながら、標的モデルと予測的発達モデルとの間の畳み込み(convolution)処理を実行する。
【0031】
本発明は、また:
- バイオプリンティングステーションであって、
・ 基材から標的への生物材料および/または生細胞の転写を制御することのできる少なくとも1つのバイオプリンティングヘッド、
・ およびバイオプリンティングステップの間に各層のデータ(形態学的、分子の、または化学的)を記録するための2D特性化手段(characterization means)、
を備える、バイオプリンティングステーション、
- 前記標的がインビトロ試験(直接的または間接的移植なし)用に意図されている場合、バイオプリンティングによって生成される標的のための少なくとも1つの成熟ステーション、
- ならびに、製造されるべき製品の3次元構造を表す標的デジタルモデルを定義しおよびコンピュータメモリーに記録するための手段を含む、前記バイオプリンティングステーションを制御するコンピュータ、
を含む、バイオプリンティングシステムに関し、
それが、製品の発達を予測する複数のデジタルモデルを記録するためのメモリーに関連するコンピュータを含み、および
- デジタル印刷モデルを計算するステップであって、
・ 一方では、製造されるべき製品の前記標的デジタルモデル、および
・ 他方では、発達の予測モデル、および
・ 印刷された成分の特性、
によるデジタル印刷モデルを計算するステップと、
- 前記計算されたデジタル印刷モデルを適用することによって前記バイオプリンティングステーションを制御するステップと、
を制御するプログラムを実行することを特徴とする。
【0032】
有利には、システムは:
- 複数のバイオプリンティングステーションであって、前記バイオプリンティングステーションの各々は、前記コンピュータを含む共通サーバと通信するための手段を含み、前記コンピュータは、バイオプリンティングステーションに関連する各ローカルコンピュータに、各目標とされる用途に従ってバイオプリンティングヘッドによって適用されるべきデジタルモデルを送信する、複数のバイオプリンティングステーション、
- バイオプリンティングの間に取得された2D特性を、前記サーバ、ならびにバイオプリンティングコンテキストからのタイムスタンプが付された情報を前記サーバに送信するための物理的センサに、送信するための手段を備える複数のバイオプリンティングステーション、
- 成熟の間に取得された3D画像を前記サーバに送信するための手段、ならびに適用可能な場合、成熟コンテキストからのタイムスタンプが付された情報を前記サーバに送信するための物理的センサ、を含む、複数の成熟ステーション、
を含む。物理的センサは、また、印刷されるアイテムの芯部内に直接的に集積化され得、および印刷されたアイテムは、本明細書に記載される集積体(collection)内に連なり(participate)得る。
【0033】
変形によると、方法は、発達予測モデルの周期的再計算のための少なくとも1つの接続された器具からのデータに関する微分方程式による連続的なモデル化タイプの処理ステップを含む。
【0034】
別の変形によると、方法は、発達予測モデルの周期的再計算のための少なくとも1つの接続された器具からのデータに関するマルチエージェントモデル化タイプ処理ステップを含む。
【0035】
これらの発達予測モデルは、マルチエージェントモデルまたは連続的なモデルのいずれかによる、細胞タイプ特有モデルである。
【0036】
有利には、方法は、複数のモデル、例えば、1つまたは複数のマルチエージェントモデルおよび1つまたは複数の連続的なモデルを処理する工程と、それらの生存可能パラメータの空間によるモデルの真実性(veracity)により加重された(weighted)予測を行う工程と、を含む。
【0037】
別の変形によると、方法は、発達予測モデルの周期的再計算のための少なくとも1つの接続された器具からのデータに関する機械学習モデル化のような処理ステップを含む。
【0038】
変形によると、これらのモデルは、統合型マルチスケールモデル、例えば、遺伝子スケール(genetic scale)(GRNによる細胞特定化(cellular specification))であり、連続的な(組織)モデルのエントリポイントであり得る細胞スケール(マルチエージェント)のためのパラメータのスペースを画定するために使用され得る。
【0039】
有利には、接続された器具は、接続されたサーバに、製造されるべき製品のデジタルモデルはもちろん、2D印刷特性および3D印刷後(post-printing)および成熟特性を含む情報を送信する。
【0040】
変形において、接続された器具は、接続されたサーバに、バイオプリンティングおよび成熟ステップの間、器具の物理的条件についての情報を送信する。
【0041】
有利には、接続された器具は、接続されたサーバに、標的組織、その環境(環境、環境条件)およびバイオプリンティングおよび成熟ステップの間に検出されたイベントを記載するデジタルのタイムスタンプが付された情報を送信する。
【0042】
特定の実施形態によると、方法は、複数の印刷モデルを計算するステップ、ならびにこのようにして計算される印刷モデルの理論的変換を評価するステップおよび標的モデルと計算された成熟モデルとの間の違いを最小限にする印刷モデルを選択するステップを含む。
【0043】
変形によると、印刷モデル計算ステップは、標的モデルと予測的発達モデルとの間の畳み込み処理を実施する。
【0044】
本発明は、また:
- バイオプリンティングステーションであって、
・ 基材から標的へ生物材料および/または生細胞の転写を制御することのできる少なくとも1つのバイオプリンティングヘッド、
・ およびバイオプリンティングステップの間、各層のデータ(形態学的、分子のまたは化学的)を記録するための2D特性化手段、
を備える、バイオプリンティングステーション、
- 前記標的がインビトロ試験(直接的または間接的な移植なし)用に意図される場合に、バイオプリンティングによって生成される標的アイテムのための少なくとも1つの成熟ステーション、
- ならびに製造されるべき製品の3次元構造を表す標的デジタルモデルを定義しおよびコンピュータメモリーに記録するための手段を含む、バイオプリンティングステーションを制御するコンピュータ、
を含む、バイオプリンティングシステムに関し、
前記コンピュータは、製品の発達を予測する複数のデジタルモデルを記録するためのメモリーを含み、および:
- デジタル印刷モデルを計算するステップであって、
・ 一方では、製造されるべき製品の標的デジタルモデル、および
・ 他方では、発達の予測モデル、および
・ 記録された成分の特性、
によりデジタル印刷モデルを計算するステップ、および
- 計算されたデジタル印刷モデルを適用することによって、前記バイオプリンティングステーションを制御するステップ、
を制御するプログラムを実行することを特徴とする、バイオプリンティングシステムに関する。
【0045】
有利には、本発明によるシステムは、複数のバイオプリンティングステーションを含み、前記バイオプリンティングステーションの各々は、前記コンピュータを含む共通サーバと通信するための手段を含み、前記コンピュータは、バイオプリンティングステーションに関連する第2のローカルコンピュータに、バイオプリンティングヘッドによって適用されるべきデジタルモデルを送信する。
【0046】
有利には、それは、バイオプリンティングの間に取得された2D特性を前記サーバに送信するための手段、ならびに前記サーバにバイオプリンティングコンテキストからのタイムスタンプが付された情報を送信するための物理的センサ、を備える、複数のバイオプリンティングステーションを含む。物理的センサは、また、印刷されるアイテムのコア内に直接的に統合され得、およびここで記載されるデータ収集(collection)に参加し得る。
【0047】
変形によると、本発明によるシステムは、適用可能な場合、印刷後および成熟3D特性を前記サーバに送信するための手段、ならびに前記サーバに成熟コンテキストからのタイムスタンプが付された情報を送信するための物理的センサ、を含む、複数の成熟ステーションを含む。
【0048】
非制限的な例示的実施形態の詳細な説明
他の特徴および利点は、本発明の以下の記載から明らかになり、前記記載は、添付図面を参照してほんの一例として与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図2】複数のデバイスを共有サーバと結合させる、変形によるシステムの概略図である。
【
図3】本発明によるバイオプリンティング方法の概略図である。
【
図4】本発明による方法の様々なシーケンスを例示する操作一覧図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
発明の背景
特異的(unique)細胞が位置決めされることを可能にするレーザー支援プリンティングよって提供される正確さは、組織(tissue)内の細胞構成(organization)に関する新規なおよび非常に広い研究分野を切り開く。特に生細胞の、多数の特性化技術のために、この問題に関する巨大データベース(massive database)は、経時的に蓄積される。活用されるために、これらの生データは、モデル、すなわち、相互に関連してデータを統合すること(articulating)が可能な概念上の構築(abstract constructions)に、組織化(organized)され得る。このやり方で、特定の組織的(organizational)プロセスについて説明(生物学的、機械的、物理学的、等)するために、または実体システム(actual system)について予測するために、時間および空間における挙動を識別することが可能になる。加えて、これらのモデルのうちのいくつかは、数学的なまたはコンピュータ処理による方法で処理され得、したがって、論文(非特許文献9)に記載されるようなコンピュータの数学の代数的分解能または計算力(calculation power)を使用することを可能にする。
【0051】
本発明による器具の説明
本発明は、主に以下のワークステーションからなるシステム上で実施される:
- バイオプリンティングによって得られるモデルの成熟または移植の後に期待される生体組織(living tissue)の構成に対応する標的モデルの定義(definition)のためのコンピュータワークステーション(1)、
- バイオプリンティングステーション(2)であって:
- 生物材料または生細胞を基材から標的へ転写させるための1つまたは複数のバイオプリンティングヘッド(3)、
- バイオプリンティング段階の間、特に、層ごとの転写の検証(verification)のために、2D画像を生成するための標的を観察するカメラ(4)であって、2D特性化は、撮像とは異なる多くの形態を取ることができる、カメラ(4)、
- プリンティングヘッド(3)を制御するローカルコンピュータ(7)、
を含む、バイオプリンティングステーション(2)、
- バイオプリンティング段階の終わりに標的を受け取り、およびこのようにして生成された組織のための成熟パラメータを設定する成熟ステーション(5)。この成熟ステーション(5)は、また、成熟化組織(maturing tissue)の3D画像の周期的な取得のための3D撮像システム(imaging system)(6)を含む。特性化は、撮像とは異なる解決策により実施され得る。さらに、組織がインビトロ試験用に意図されているとき、この成熟ステップのみが行われる。
【0052】
上述の技術的手段は、第1のローカルサブセット(10)を構成する。この記載において、記載されるバイオプリンティングステーションは、レーザー支援転写テクノロジーを用いるが、このテクノロジーの例は、本発明に限定されない。
- コンピュータステーション(1)、バイオプリンティングステーションのカメラ(4)、成熟ステーション(maturing station)の3D撮像システム(6)からのデータを受信し、およびローカルコンピュータ(7)にバイオプリンティングヘッド(3)のデジタル制御ファイルを送信する中央コンピュータ(8)。もちろん、ローカルコンピュータ(7)および中央コンピュータ(8)は、器具の単一部分内に組み合わせられ得る。中央コンピュータ(8)は、また、サーバの形態の、および特にこのリソースを複数のバイオプリンティングおよび成熟ステーションと共有するための、リモートであり得る。
【0053】
中央コンピュータ(8)は、デジタル発達モデルの記録のためのメモリー(9)に関連する。
【0054】
コンピュータ(8)は、また、内部ソースからのデータ、例えば、転写されるべき生物材料および細胞の発生(origin)に関する実験ノートからの生物学上のデータ、または外部ソースからのデータ、例えば、第三者によって発達させられた(developed)発達モデルに相当する書誌データまたはファイル、を受信する。生物学上のデータは、一般に、「オルネス(ornes)」または「オミクス(omics)」と称され、および例えば、ゲノム(genomic)、タンパク質、または代謝データまたはトランスクリプトームデータ(transcriptomic data)(RNA配列からの)を含む。
【0055】
コンピュータ(8)は、記憶構造(storage structure)を備えるデータ管理ステーション(例えば、データベース)に関連する。
【0056】
バイオプリンティングステーションは、例えば、一元的な方法で粒子または細胞の転写を可能にする、AFA-LIFT(商標)タイプのもの、または特許出願(特許文献1)に記載される器具であるが、本発明は、特定のバイオプリンティングテクノロジーに限定されない。
【0057】
関連した変形(Connected variant)
図2は、いくつかのデバイス(10から12)が共通サーバ(8)に接続され、および特定のデバイスからだけではなく全てのデバイス(10から12)からのデータに基づいて計算されるデジタル発達モデルを生成するために、様々な接続されたデバイスからのデータを処理する、変形の概略図を表す。
【0058】
プリンティングによって実施される方法
図3は、本発明によって実行される処理の概略図を示す。
【0059】
第1のステップは、例えば期待される最終アイテムを表すメタモデル(15)の形態の、期待される組織タイプを決定するためのものである。このメタモデルは、特に、標的アイテムにおける生物材料または生細胞の3次元の場所を決定し、および前記成分の性質、特に、それらの最終アイテムにおける細胞分化(cellular differentiation)のレベルを考慮に入れる。
【0060】
例えば、期待される組織が皮膚である場合、メタモデルは:
- 線維芽細胞(細胞)ならびに細胞外マトリックスを構成するコラーゲンおよびプロテオグリカン(生物材料)の層であって、この層は真皮(dermis)に相当する、層、
- 表皮(epidermis)に相当するケラチノサイト(細胞)の層、
- 皮膚表皮性接合(dermo-epidermal junction)に相当する中間帯域、
を含む構成成分層の組成を決定することとなる。
【0061】
第1の処理は、標的デジタルモデル(16)を構成する、このメタモデルのデジタル表現(digital representation)を構成することにある。この標的デジタルモデルは、例えば、[ID±、C±、X±、Y±、Z±]タイプのデジタルマトリックスに変換され(translated)、
ここで:
- ID±は、各アイテムの識別子に対応し、
- C±は、アイテムID±の特性(例えば、対象(object)の性質、その成熟度、そのサイズ、等)に対応し、
- X±、Y±、Z±は、標的におけるアイテムの空間座標に対応する。
【0062】
このデジタル標的モデル(16)は、アイテムごとに使用者によって、またはこのデジタル標的モデル(16)をその構成可能なデジタル標的モデルが事前計算されおよびコンピュータメモリーに記憶されるメタモデルの集積体(collection)から生成するコンピュータツールによって、発達させられたアイテムであり得る。
【0063】
使用者は、このようにして、事前計算されたデジタルモデルの所与のデータ、例えば、あるアイテムの特定の特性を修正することができ、またはアイテム密度またはモデルの全体的なサイズ(global size)(材料の付加、材料の除去、印刷されるべきではない層の選択)の修正、またはいくつかの事前計算されたモデルの統合(merging)または結合(combining)による。
【0064】
技術水準において、この標的デジタルモデル(16)は、バイオプリンティングヘッドを制御するために使用される。この解決策は、概して、期待される構成に従って組織が製造されることを可能にしない。実際に、このデジタルモデル(16)によって決定される移植により転写される細胞および生物材料は、展開し(evolve)、および組織は、バイオプリンティングステップとバイオプリンティングされた組織の成熟または移植の終了との間で変換される(transformed)。
【0065】
本発明の目的は、バイオプリンティングステーションを制御するためにこの標的デジタルモデル(16)を使用しないが、標的デジタルモデル(16)に適用されるデジタル処理によってデジタル印刷モデル(17)を計算することにある解決策を用いることによって、この問題を解決することである。
【0066】
この処理は、
a)上記の標的デジタルモデル(16)、
b)標的デジタルモデル(16)に含まれる要素の発達のデジタルモデル(18)、
c)印刷されるべき成分の特性、
を考慮に入れた、マトリックス発達からなる。
【0067】
デジタル発達モデル
デジタル発達モデルは:
- データベース(9)内またはログファイル内のデジタルファイルとして記録される、転写されやすい生物材料または生細胞の各々の内因性の挙動(endogenous behaviour)のデジタル表現。これらのデジタル表現は、例えば、所与の要素(サイズ、死亡率(mortality)、分化、分裂(division)、・・・)の特性Cの時間的(temporal)発達、または変位(displacement)、移動(migration)または拡散(proliferation)に起因する空間的な(spatial)発達、または転写された要素に由来する新しい要素の自動生成(automatic creation)を定義する関数からなる、
- 任意選択的に、その環境による要素の外因性挙動(behaviour)のデジタル表現(同一タイプの1つまたは複数の要素の所与の半径の範囲内における存在、異なるタイプの1つまたは複数の要素の所与の半径の範囲内における存在、成熟の間に観察される物理化学的(physico-chemical)状態、・・・)、
を含む。
【0068】
これらのデジタル表現は、本質的に、1つまたは複数の要素の生物学的挙動の一般的な知識を通して、または経験的に、挙動の(behavioural)観察および学習を通して、決定論的(deterministic)であり得る。
【0069】
両方の場合において、デジタル表現は、技術的に、標的デジタルモデル(16)のデジタル印刷モデル(17)への発達のためのデジタル処理を可能にするデジタルマトリックスをもたらすこととなる。
【0070】
デジタル処理は、例えば、マトリックス発達処理または反復(iterative)マルチエージェント処理、または「ライフゲーム」処理(セルラーオートマトン)からなる。
【0071】
例えば、特許文献2および特許文献3は、デジタル発達モデルの発達に適合されるセルラーオートマトンを記載する。
【0072】
この変換されたモデル(17)は、バイオプリンティングステーションを駆動するモデルである。
【0073】
バイオプリンティングおよび成熟
バイオプリンティングステップは、デジタル印刷モデル(17)から定義されるシーケンスおよび最大限の細胞生存性(cellular viability)を保証するために印刷時間を最小限にするためのショットの時間的シーケンスの最適化による生物材料(単数または複数)および/または生細胞の転写を保証する器具を用いて実施され、これは、転写可能要素(transferable elements)を含みおよび/または標的の発達による変位を最適化する基材に関するプリンティングヘッドの相対的変位を最小限にすることになる。
【0074】
プリンティングステーションは、標的観察カメラ(4)を含み、これは、標的の2D画像を周期的に取得する。この画像は、デジタル印刷モデル(17)による転写の適合性を評価しおよび場合によっては(possibly)、観察される異常を修正するために将来のレーザー発射のシーケンスを再計算するために、ローカルコンピュータ(7)に送信される。2D特性は、生化学的分析、分光分析、等のような、撮像とは異なる形態をとり得る。プリンティングの修正は、また、印刷された要素が多すぎる領域を吸引することを含み得る。
【0075】
これらの2D画像は、また、現在のバイオプリンティング情報に関連して記録をするためにコンピュータ(8)に送信される。この記録される情報は:
- コンピュータワークステーション(1)からのデータ、および特に:
・ 適用可能な場合、メタモデル(15)、
・ 標的デジタルモデル(16)、
・ デジタル印刷モデル(17)の計算のために使用される発達モデル(18)への参照、
・ デジタル印刷モデル(17)、
・ 印刷されるべき成分の特性、
・ 印刷条件に関する電子実験ノートからのデータ。
- バイオプリンティングステーションからのデータであって:
- カメラ(4)によって取得された2Dのタイムスタンプが付された画像およびバイオプリンティング段階の間に印刷される層を特性化する他のデータ、
- レーザー支援バイオプリンティングの場合において、レーザー発射のシーケンスに関連する情報、
- 温度、湿度、等のような物理化学的センサおよび印刷されるアイテム内に存在する任意のセンサからのタイムスタンプが付された情報、
を含む、データ。
- 成熟ステーション(5)からのデータ、および特に:
- バイオプリンティング段階の間に撮像システムによって取得されたタイムスタンプが付された3D画像(6)および印刷されるアイテムの他の特性化(生化学的、分光学的・・・)、
- 温度、湿度、等のような成熟ステーション内の物理化学的センサおよび印刷されるアイテム内に存在する任意のセンサからのタイムスタンプが付された情報。
を含む。
【0076】
このデータは、成熟の間に撮像システム(6)によって送信される3D画像と成熟の終わりにおけるデジタル印刷モデル(17)との間の違いを識別するためにコンピュータ(8)によって処理される。この処理は、そのバイオプリンティング段階以来の組織の発達を検証し、および撮像システム(6)によって送信される3D画像とデジタル印刷モデル(17)との間の違い、これは閾値未満でなければならない、を計算することを可能にする。
【0077】
この偏差計算は、例えば、デジタル印刷モデル(17)と撮像システム(6)によって送信される3D画像との間の相関インジケータ(共分散マトリックス(covariance matrices)から計算される)の決定に基づくユークリッド距離計算またはマハラノビス距離計算によって、実施される。代替的に、偏差計算は、データクラスタリング法によって実行される。
【0078】
これらのデータは、また、データベース(9)に記憶されたデジタル発達モデル(18)の改善処理を可能にするように、コンピュータ(8)のメモリーに記憶される。
【0079】
発達モデル(18)を再計算するための処理は、技術水準において知られている自動化または統計的学習法(「機械学習」)である。
【0080】
これらの処理は、共通(common)メタモデル(15)に対応しおよび実行された複数のバイオプリンティングからもたらされるデータの収集に周期的に適用される。
【0081】
システムが、いくつかのバイオプリンティングおよび成熟プラットフォーム(10から12)に共通するサーバを含む場合、それは、データ収集およびしたがって発達モデル(18)のこの再計算プロセスのロバスト性をを増大させる。
【0082】
特定の実施形態によると、共通サーバは、NoSQLデータベース管理システムにより、重複性(redundancy)からの利益を得るように、いくつかのサーバにわたって分散され(distributed)または重複される。
【0083】
この場合において、発達モデル(18)のライブラリがコンピュータ(7)のローカルメモリーではなく共有サーバ(8)に接続されるすべてのプラットフォーム(10から12)に共通するメモリーに記憶されていることは、有利であり、これは、また、高いデータ処理能力を持つ集中型(centralized)コンピュータとして働き得る。
【0084】
発達モデル化の例
実施形態の非制限的な例によると、各細胞タイプに関して、クラスタイプのデジタル表現(オブジェクト指向言語での)は、以下の関数(function)により記録される:
- 参照の空間内での位置のような特質(例えば、x±、y±、z±およびtタイプの、所与の時間における細胞iの幾何学的中心のデカルト座標)、細胞タイプ、細胞齢(age)・・・電子実験ノートに存在するデータ、
- 2つのタイプの相互作用:
・ 圧縮相互作用モデルによる、減衰(damping)を伴うが接着または摩擦を伴わずに堅固に接触するNサイズクラスの内部ドット、
・ 膜(membrane)ドット、全て同一サイズのもの、は、相互作用に関する1つまたは複数のデジタルパラメータ(テンソル)によって表される粘弾性ケーブル要素によって他の隣接細胞と連結される。細胞膜を表すこの集合体(assembly)は、それによりそれらが堅固に接触する内部ドットを包含する、
の中での、多数の塊(cloud of mass)「ドット(dots)」の形態の立体表現(volumetric representation)による、各細胞タイプの発達の方法(展開(evolve)、移動(migrate)、分裂(divide)・・・)。
【0085】
3Dでの、経時的な、細胞のこの複雑なデジタルモデル化は、成長、無活動、分化、アポトーシスおよび細胞分裂のような基本的な発達機構を表す。
【0086】
細胞の成長は、以下のように、各細胞のデジタルパラメータを周期的に再計算することによってモデル化され得る:n秒ごとに新しい内部ドットが細胞iの中心に付加される。この整数n±は、次いで細胞の成長率(Vcrs_cell)と定義するパラメータであり、および経験的にシステムの全体的な動力学の関数として決定される。
【0087】
- nが小さすぎる場合、細胞の成長率は高すぎ、細胞の内部ドットは、それら自体を組織化するための時間を有さず、そのため、細胞は、安定した形状を有さない。
【0088】
- nが大きすぎる場合、細胞は、ゆっくりと成長し、およびシミュレーション時間は増大する。加えて、細胞に付加される新しい内部ドットのサイズは、既に存在するドットの数によって決定される。このようにして、細胞は、規則正しい(regular)粒度および/または細胞形状(伸長(elongation))を維持するために最近点まで同一数の各サイズの内部ドットを有する。
【0089】
付着による(accretionary)発達からもたらされる組織の発達は、以下のパラメータ:
・ 細胞の成長率 Vcrs cell、
・ 細胞分裂による細胞の到着の速度Vaccretion、
・ 球状物(sphere)の成長率Vcrs sphere、
を用いてモデル化され得る。
【0090】
これらのパラメータの全ては、組織発達の速度を定義する。
【0091】
組織の時間的発達の動的計算は、各細胞の時間的発達および隣接細胞内の相互作用性(interactivities)を考慮に入れて、コンピュータプログラムによって実行される。
【0092】
デジタルパラメータによってモデル化される発達ステージは、以下の通りである:
- 分裂細胞(dividing cells)の決定、
- 分裂の開始:アクチン要素の生成(creation)、
- 分裂の発達:アクチン要素の減少(reduction)、
- 分裂の終了: 母細胞は2つの娘細胞を与える、
- 細胞接着(cell adhesion)に直接的に影響を与える「カドヘリン」タイプの要素の発達、
- アポトーシスを被る細胞の決定、
- アポトーシスの発達:ドットおよび/または細胞の除去。
【0093】
「組織展開(tissue evolution)」ループの各通路(passage)において、全てではない操作(operation)が各細胞に関して考慮に入れられ、および適合された方法のみが実施される。例えば、分化されていない細胞は、無活動に入れず、分裂状態の細胞は、アポトーシスに入り得ない。
【0094】
各細胞の時間的発達は、境界条件、および時間依存性の発達の仮定(assumptions)を考慮に入れる。この計算は、各ステップにおいて各ドットに関する新しい位置および速度を決定するために反復して実施される。システムの構造上の発達、すなわち、機械的計算から得られるデータによるおよびモデルを支配する発達の法則に続くドットまたは要素の付加または欠損(deletion)は、分裂およびアポトーシスの発達モデルにより実施される。
【0095】
細胞および組織は、初期構成を定義するファイルに記録されたデータ(ドットの位置決め、ドットおよび要素の特性、等)およびデジタル形態形成(morphogenesis)のパラメータ:シナリオ(付着(accretion)または拡散によって形成される組織)、分裂、等、のタイプにより構築される。次いで、シミュレーションの間、定期的に(regularly)、各細胞の膜は、シナリオのタイプに関わらず、アップデートされる(段落3.2.1に定義される膜発達に関する規則に従う、膜ケーブルの伸長、減少、除去および付加)。
【0096】
次いで、初期化される組織発達の選択に応じて、「非増殖(non-proliferative)組織」または「増殖組織(proliferative tissue)」アルゴリズムが実行される。細胞は、このようにして、以前に定義された法則(分裂、アポトーシス、成長、等のタイプ)により修正される。同様に、モデル化は、細胞外マトリックスの発達(密度、剛性、分子シグナル伝達(molecular signalling)、等)を考慮に入れる。
【0097】
選択される時間ステップは、例えば、2つの反復(iterations)間における組織の発達を再計算するためのに、0.5秒である。
【0098】
例えば、デジタルパラメータおよび発達の関数は、以下の通りである:
【0099】
【0100】
このモデル化は、中間デジタルモデル(32)が決定されることを可能にし、その発達は、デジタルファイル(40)に対応する標的組織または製品(30)に繋がることとなる。
【0101】
決定は、期待される組織に最も近いデジタルファイル(40)を選択するために、異なる中間デジタルモデル(32)を試験しおよび対応する標的デジタルファイル(40)を見積ることによってなされ得る。
【0102】
機能の紹介
図4は、本発明によって実施される原理を概略的に示す。
【0103】
第1のステップは、作られるべき組織の3次元構造を、電子実験ノートまたはCADファイルの形で定義するためである。このファイルは、3次元ネットワークにおける細胞および粒子の理論的移植(theoretical implantation)によって標的構造を定義し、標的製品(30)を特定化するデジタルファイル(40)をもたらす。3D構造の特性化は、マルチモーダル、マルチスケールおよび自動化型であり得る。
【0104】
加えて、異なる細胞および粒子の発達を説明する進化モデル(41)は、発達モデル(31)を定義するファイルまたは一連のデジタルファイルをもたらす。発達モデルは、時間および温度のような他の環境的パラメータ、または単離された(isolated)粒子または細胞に関する基材の物理化学的構成の発達の関数として、老化(ageing)、サイズ展開(evolution)、分化(differentiation)、消失(disappearance)または重複(duplication)のような内在性の発達を考慮に入れる。それは、また、機械的な力を発揮しおよびパラクリン信号を発する他の粒子または細胞の存在、性質、および距離のような外因性パラメータを考慮に入れる。
【0105】
これら2つの一連のファイル(40および41)は、中間デジタルモデル(32)を適用することによって参照モジュール(42)を計算するために処理され、参照モデル(42)に発達モデルを適用する結果と標的製品(30)との間の違いを再帰的に最小化するために、発達モデル(41)によりその発達が標的製品(30)と一致する結果を与える初期3次元構造を、逆推定関数(inverse estimation function)によって、または経験的に、参照モデルの仮定を決定し発達モデルを適用しおよび結果を標的製品(30)と比較することによって、決定することにある。
【0106】
この参照モデル(42)は、その構造が検証(43)および確認(validation)または修正ステップの対象となる中間印刷データ(33)を提供するように層ごとに特性化される組織を生成することとなるバイオプリンティングプロセスを推進(drive)することとなる。
【0107】
変形によると、アイテムは、次いで成熟させられる。その発達は、また、測定および制御方法、特に、異なる発達のステージにおける組織のデジタル表現(44)を提供するための撮像によって分析される。
【0108】
他の変形によると、アイテムは、部分的成熟と称されるその製造後、直接的にまたは非常に迅速に移植される。
【0109】
別の究極的な変形によると、アイテムは、原位置で(in situ)、特に動物または患者のインビボで、直接的に印刷される。この場合において、成熟はない。それは、移植サイトで直接的に行われる。