(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】保護具
(51)【国際特許分類】
A41D 13/08 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
A41D13/08 104
(21)【出願番号】P 2020002869
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 守人
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3115931(JP,U)
【文献】特開平03-286795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/08
B27G 19/00
B26B 29/00
B26B 3/03
A47G 43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が槌部材を使用する場合に、作業者の手を前記槌部材から保護する保護具であって、
作業中における作業者の手の少なくとも上部を覆う金属製の保護部と、
前記保護部で保護された手で把持される把持部と、
前記保護部から前方に向かって突き出し、被対象部材を押さえ付けるための押付部と、を備え、
前記押付部は、前記保護部の前端部から前記被対象部材に向かって傾斜させて突き出す庇状に形成されて
おり、
前記保護部は、筒体で構成されており、
前記把持部は、前記保護部の筒内部に設けられている、保護具。
【請求項2】
前記保護部は、金属板を凹形状に形成された構成とされており、
前記把持部は、前記保護部の凹内部に設けられている、請求項1に記載の保護具。
【請求項3】
前記押付部には、前記被対象部材に対する滑り防止部材が設けられている、請求項1
又は2に記載の保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槌部材を使用する際に、作業者の手を保護する保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業者が槌部材を使用する場合に、作業者の手を槌部材から保護する保護具が知られている。例えば特許文献1に開示された保護具は、手の甲に当てる手甲当て部と、手指の甲側に当てる手指当て部と、を備えた構成である。手指当て部は、基端部が弾性紐から成る連結部材によって手甲当て部に対して自在に動くように連結されている。手甲当て部と手指当て部は、硬質板の両面が軟質部材によって被覆されて形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された保護具は、手甲当て部を手の甲に当て、該手甲当て部に弾性紐で連結された手指当て部を指に当てただけの構成に過ぎないため、誤って槌部材の打撃を受けると、その衝撃が手の甲及び指に直に伝わる。より安全性を高めるためには、手甲当て部及び手指当て部を構成する硬質板の厚さを厚くする必要があるが、装着性が悪くなり、作業に支障を来してしまうおそれがある。また、手の大きさは人それぞれ異なるため、大きすぎたり小さすぎたりして装着性が悪いと、安全性を十分に確保できない。また、この保護具は、手甲当て部を手の甲に装着させ、更に手指当て部を各指に装着させる必要があるので、装着作業が非常に面倒であり手間が掛かる。しかも、手甲当て部と、各指に装着させる手指当て部とをそれぞれ独立して形成し、弾性紐からなる連結部材によって連結した複雑な構成であるため、製造に手間を要し、製造コストが掛かる問題もある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、作業者が槌部材を使用する場合に、該槌部材の打撃から作業者の手を守って安全性を確実に確保でき、しかも簡易な構造で使い勝手の良い保護具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る保護具は、作業者が槌部材を使用する場合に、作業者の手を前記槌部材から保護する保護具であって、作業中における作業者の手の少なくとも上部を覆う金属製の保護部と、前記保護部で保護された手で把持される把持部と、前記保護部から前方に向かって突き出し、被対象部材を押さえ付けるための押付部と、を備え、前記押付部は、前記保護部の前端部から前記被対象部材に向かって傾斜させて突き出す庇状に形成されており、前記保護部は、筒体で構成されており、前記把持部は、前記保護部の筒内部に設けられているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る保護具は、金属製の保護部で作業者の手の上部が覆われているので、槌部材の打撃から作業者の手を守ることができ、安全性を確実に確保できる。しかも、作業者の手の少なくとも上部を覆う金属製の保護部と、保護部で保護された手で把持される把持部とを備えただけの簡易な構造である。その上、把持部を持つだけで使用することができるので、煩わしい装着等の手間もなく使い勝手に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る保護具の使用例を示した説明図である。
【
図2】実施の形態に係る保護具を装着させた作業者の左手を示した説明図である。
【
図7】実施の形態に係る保護具の変形例を示した説明図である。
【
図8】実施の形態に係る保護具の変形例を示した説明図である。
【
図9】実施の形態に係る保護具の変形例を示した説明図である。
【
図10】実施の形態に係る保護具の変形例を示した説明図である。
【
図11】実施の形態に係る保護具の変形例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさ、及び配置等は、本発明の範囲内で適宜変更することができる。
【0010】
実施の形態.
図1は、実施の形態に係る保護具の使用例を示した説明図である。
図2は、実施の形態に係る保護具を装着させた作業者の左手を示した説明図である。
図3は、実施の形態に係る保護具の正面図である。
図4は、実施の形態に係る保護具の平面図である。
図5は、実施の形態に係る保護具の底面図である。
図6は、実施の形態に係る保護具の左側面図である。
図7~
図11は、実施の形態に係る保護具の変形例を示した説明図である。
【0011】
本実施の形態に係る保護具100は、
図1に示すように、作業者Xが一方の手Aで槌部材200を使用する場合に、作業者Xの他方の手Bを槌部材200から保護するものである。保護具100は、
図1及び
図2に示すように、作業中における作業者Xの手Bの少なくとも上部を覆う金属製の保護部1と、保護部1で保護された手Bで把持される把持部2と、保護部1から前方に向かって突き出し、被対象部材300を押さえ付けるための押付部3と、を備えている。
【0012】
保護部1は、
図3~
図6に示すように、厚さ3mm程度の鋼板をC字形状に湾曲させて形成された構成とされている。保護部1は、被対象部材300に対する前後方向の両端部に開口部を有しており、後方側の開口部から作業者Xが手Bを挿入することができる。なお、保護部1は、例えば
図7に示すように、鋼板を矩形の凹状に折り曲げて形成された構成でもよい。また、保護部1は、
図8に示す円形鋼管、又は
図9に示す角形鋼管でもよい。要するに、保護部1は、作業中における作業者Xの手Bの少なくとも上部を覆って槌部材200から手Bを保護することができればよく、図示した形態に限定されず、種々の形状で実施できる。また、保護部1の前方側の開口部は、作業者Xの手Bを槌部材200から保護するために、一部又は全部を塞いだ構成としてもよい。
【0013】
把持部2は、
図3~
図6に示すように、円形鋼管又は円形鋼棒で構成され、保護部1の内部に設けられている。把持部2は、前後方向に沿って形成されたC字の開口部を跨ぐように左右方向に配置され、両端が保護部1の内面に溶接等で接合されている。把持部2の外径は、作業者Xが握り易い大きさで構成されている。なお、把持部2は、例えば角形鋼管又は角形鋼棒等で構成してもよい。また、把持部2は、一端部のみを保護部1の内面に溶接等で接合してもよい。また、把持部2は、
図10に示すように、前後方向に沿って形成されたC字の開口部と対向する上面から、該開口部に向かって上下方向に延伸させた構成でもよい。要するに、把持部2は、図示した位置に設ける構成に限定されず、作業者Xが把持しやすい位置であれば、どの位置に設けてもよい。
【0014】
押付部3は、
図3~
図6に示すように、保護部1の前端部から被対象部材300に向かって傾斜させて突き出す庇状に形成されている。図示した押付部3は、保護部1の前端縁の形状に合わせて、湾曲させた形状である。押付部3は、被対象部材300に向かって例えば10度程度の角度に傾斜させて設けられている。これは、押付部3で被対象部材300を押さえ付けやすくして作業性を向上させることができると共に、作業者Xの手Bを槌部材200から確実に保護するためでもある。
【0015】
押付部3は、保護部1の一部を被対象部材300に向かって延伸させて形成してもよいし、保護部1とは別部材として製造し、溶接等で保護部1の前端縁に接合して設けてもよい。また、押付部3は、図示した庇状に限定されず、例えば棒状に形成した構成でもよい。要するに、押付部3は、被対象部材300を押さえ付けることができれば、どのような形状でもよいし、どのような位置及び角度で設けてもよい。なお、保護具100は、必ずしも押付部3を設けた構成とする必要はなく、押付部3を設けない構成としてもよい。また、保護具100は、保護部1の前端部分が押付部3を兼ねる構成としてもよい。
【0016】
また、押付部3は、
図11に示すように、被対象部材300に対する滑り防止部材4を先端部に設けた構成としてもよい。滑り防止部材4は、一例としてゴム等の弾性部材で構成される。なお、滑り防止部材4は、被対象部材300に対する押付部3の滑りを防止することができれば、どのような部材でもよい。また、滑り防止部材4は、押付部3の先端部に設ける構成に限定されず、被対象部材300に対する押付部3の滑りを防止することができれば、他の箇所に設けてもよい。保護具100は、押付部3に滑り防止部材4を設けることにより、被対象部材300をしっかりと押さえ付けることができるので、作業性を向上させることができる。
【0017】
次に、
図1及び
図2に基づいて、本実施の形態に係る保護具100を例えばホーロー製品の製造工程において使用する場合を例に説明する。
図1に示すように、ホーロー製品の製造工程において被対象部材300は、薄板からなる鉄又はアルミニウム等のホーロー部材301と、薄板からなるステンレス等の連結部材302と、で構成される。ホーロー部材301と連結部材302は、異種鋼材である。ホーロー製品の製造工程においてホーロー部材301の一端縁と連結部材302の一端縁とが接合される場合があり、その接合作業において、本実施の形態に係る保護具100が使用される。
【0018】
ホーロー部材301は、ロール状に巻いてコイルとされ、製造工程の所定の位置に配置される。ホーロー部材301は、コイルを巻き戻して製造ラインに送り出された後に加工される。ホーロー製品の製造工程では、1つのコイルがすべて巻き戻されて製造ラインに送り出されると、次のコイルを巻き戻して製造ラインに送り出されることになる。このとき、先方のコイルと後方のコイルとの繋ぎ、先方のコイルに連続させて後方のコイルを製造ラインに送り出す役目として連結部材302が使用される。
【0019】
連結部材302は、先方のコイルの終端縁に一端縁を重ねてリベット接合され、後方のコイルの先端縁に他端縁を重ねてリベット接合される。リベット303は、ホーロー部材301と連結部材302とを接合した状態において頭部が上面から若干に突き出している。ホーロー製品の製造工程では、リベット303の頭部を残したままホーロー部材301を製造ラインに送り出すと、製造ライン上のローラ等がリベット303の頭部によって損傷してしまうおそれがある。そこで、リベット303の頭部を槌部材200で潰してフラットな状態にすることとしている。
【0020】
突き出したリベット303の頭部を潰してフラットにするには、作業者Xによって槌部材200で力強く叩かなければならない。また、作業者Xは、例えば屈んだ状態で槌部材200を使用することが多い。しかも、狭いスペースでの作業を強いられる場合もある。更に、この作業は、作業者Xが一方の手Aで槌部材200を使用し、他方の手Bで被対象部材300を押さえ付けて固定させる必要がある。このとき、作業者Xの他方の手Bに安全性が確保されていないと、槌部材200の打撃を受けて負傷するおそれがある。そのため、作業者Xの安全の確保が求められている。
【0021】
そこで、作業者Xは、一方の手A(例えば右手)で槌部材200を持ち、他方の手B(例えば左手)で保護具100を持って、リベット303の頭部を潰す作業を行う。先ず、
図2に示すように、作業者Xは、保護部1の内部に左手Bを挿入し、把持部2を掴んで保護具100を持つ。そして、
図1に示すように、作業者Xは、押付部3で被対象部材300を押さえ付けて、槌部材200で力強くリベット303の頭部を繰り返し叩いて潰す。このとき、作業者Xの左手Bは、保護具100で保護されているので、誤って槌部材200の打撃を受けても負傷することがない。また、作業者Xは、槌部材200で安心して力強くリベット303の頭部を叩いて潰すことができるので、作業効率を向上させることができる。更に、リベット303の頭部をしっかりと潰すことができるので、ホーロー部材301を製造ライン上に安心して送り出すことができ、品質の高い製品を製造することができる。
【0022】
なお、本実施の形態に係る保護具100は、一例としてホーロー製品の製造工程において使用する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。保護具100は、作業者Xの片方の手Bを槌部材200等の道具から保護しなければならない状況であれば、どのような状況においても使用することができる。また、上記した実施の形態では、作業者Xの左手Bを保護具100で保護する構成を示したが、これに限定されない。作業者Xの左手Bで槌部材200を使用する場合には、作業者Xの右手を保護具100で保護する構成としてもよい。
【0023】
以上のように、本実施の形態に係る保護具100は、金属製の保護部1で作業者Xの手Bの上部が覆われているので、槌部材200の打撃から作業者Xの手Bを守ることができ、安全性を確実に確保できる。しかも、作業者Xの手Bの少なくとも上部を覆う金属製の保護部1と、保護部1で保護された手Bで把持される把持部2とを備えただけの簡易な構造である。その上、把持部2を持つだけで使用することができるので、煩わしい装着等の手間もなく使い勝手に優れている。
【0024】
また、保護部1は、金属板を凹形状に形成された構成とされている。把持部2は、保護部1の凹内部に設けられている。つまり、保護具100を簡易な構造とすることができるので、製造に手間が掛からず、製造コストを抑えることができる。
【0025】
また、保護部1は、筒体で構成することもできる。把持部2は、保護部1の筒内部に設けられている。つまり、保護具100を簡易な構造とすることができるので、製造に手間が掛からず、製造コストを抑えることができる。
【0026】
また、保護具100は、保護部1から前方に向かって突き出し、被対象部材300を押さえ付けるための押付部3を、更に備えている。よって、保護具100は、押付部3で被対象部材300を押さえ付けて位置を固定させることができるので、槌部材200での作業効率を向上させることができる。
【0027】
また、押付部3は、保護部1の前端部から被対象部材300に向かって傾斜させて突き出す庇状に形成されている。よって、保護具100は、押付部3で被対象部材300を押さえ付けやすく、作業性を向上させることができると共に、作業者Xの他方の手Bを槌部材200から確実に保護することができる。
【0028】
また、押付部3には、被対象部材300に対する滑り防止部材4が設けられている。よって、保護具100は、押付部3で被対象部材300をしっかりと押さえ付けることができるので、作業性を向上させることができる。
【0029】
以上に、保護具100を実施の形態に基づいて説明したが、保護具100は、上述した実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、保護部1、把持部2及び押付部3の大きさ、形状、材質等は、上記した構成に限定されない。要するに、保護具100は、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更及び応用のバリエーションの範囲を含むものである。
【符号の説明】
【0030】
1 保護部、2 把持部、3 押付部、4 滑り防止部材、100 保護具、200 槌部材、300 被対象部材、301 ホーロー部材、302 連結部材、303 リベット、X 作業者。