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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】設計支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/18 20200101AFI20240531BHJP
   H02B 3/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
G06F30/18
H02B3/00 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020024526
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021128701
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】水野 敦之
(72)【発明者】
【氏名】安福 健一朗
(72)【発明者】
【氏名】木村 円
(72)【発明者】
【氏名】笹原 幸一
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102070(JP,A)
【文献】特開平05-233741(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0307223(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/398
H02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の電気設備を設計するための設計支援システムであって、
前記建物に設置される負荷の電気的仕様を示す情報を含む負荷情報を取得する取得部と、
取得された前記負荷情報に基づいて、前記建物に設置される高圧受電設備の仕様として前記高圧受電設備に設けられるトランスの容量、前記高圧受電設備の大きさ、及び前記高圧受電設備の重量を決定する決定部と、を備え、
前記取得部は、前記建物における負荷の配置を設計するためのCADシステムから出力されたCSV形式のデータから、前記負荷情報を自動的に取得するように構成されている設計支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物の電気設備を設計するための設計支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
比較的規模の大きな建物には、高圧受電設備が設置される。高圧受電設備は、電力会社から供給される高電圧の電力を低電圧の電力に変圧し、当該電力を建物の各フロアへと分配供給するための設備である。高圧受電設備からの電力は、建物に設置された分電盤を介してそれぞれの負荷へと供給される。ここでいう「負荷」とは、例えばエアコンや照明装置、電気機器を接続するためのコンセント等のことである。
【0003】
高電圧受電設備は、建物の屋内に設置されることもあるが、金属製の箱に収容され屋外に設置されることもある。下記特許文献1には、高圧受電設備の具体的な構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-96699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建物に高圧受電設備を設置するにあたっては、建物に設置される負荷の消費電力の大きさ等に基づいて、高圧受電設備の仕様を予め決定しておく必要がある。「高圧受電設備の仕様」とは、例えば高圧受電設備の大きさや重量、高圧受電設備に設けられるトランスの容量等のことである。
【0006】
高圧受電設備の仕様は、建物を設計する建築業者と、高圧受電設備を提供する電気設備業者とが、必要な情報を互いにやり取りしながら決定されることが多い。例えば、建築業者が負荷の仕様を先ず決定し、当該仕様を電気設備業者に提示する。負荷の仕様を提示された電気設備業者は、負荷への電力供給に必要な高圧受電設備の仕様を決定し、当該仕様を建築業者に連絡する。高圧受電設備の仕様の連絡を受けた建築業者は、当該仕様に示される高圧受電設備の大きさ等に基づいて、高圧受電設備の設置場所等を設計する。
【0007】
しかしながら、建物の設計においては、負荷の仕様等が変更されることが頻繁に起こり得る。負荷の仕様が変更されると、それに応じて高圧受電設備の仕様も決定しなおさなければならないので、建築業者と電気設備業者との間で再び情報のやり取りが行われることとなる。このため、高圧受電設備を含む電気設備の構成が最終的に決定されるまでには、比較的長期間を要することが多かった。
【0008】
そこで、本発明者らは上記の問題を解決するために、建物の電気設備を設計するための設計支援システムについて検討を進めている。設計支援システムによれば、建築業者から入力された負荷の仕様等に基づいて、高圧受電設備の仕様を自動的に決定し、当該仕様を建築業者へと提示することが可能となる。これにより、建築業者が電気設備業者からの回答を待つ必要が無くなるので、建物の電気設備の設計を従来よりも短時間で行うことが可能となる。
【0009】
建物を設計するにあたっては、建物における負荷の具体的な配置等が、予めCADシステムを用いて設計されることが多い。このため、使用者は、CADシステムを用いて予め設計された情報を、高圧受電設備の仕様を決定するための情報として設計支援システムに手動で入力することとなる。しかしながら、そのような入力作業は手間がかかるため、使用者にとっては大きな負担となる。
【0010】
本開示は、情報の入力作業に伴う使用者への負担を軽減することのできる設計支援システム、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る設計支援システムは、建物の電気設備を設計するための設計支援システムであって、建物に設置される負荷の電気的仕様を示す情報を含む負荷情報を取得する取得部と、取得された負荷情報に基づいて、建物に設置される高圧受電設備の仕様として高圧受電設備に設けられるトランスの容量、高圧受電設備の大きさ、及び高圧受電設備の重量を決定する決定部と、を備える。取得部は、建物における負荷の配置を設計するためのCADシステムから出力されたCSV形式のデータから、負荷情報を自動的に取得するように構成されている。
【0012】
このような構成の設計支援システムでは、CADシステムから出力されたデータから、取得部が負荷情報を自動的に取得する。このため、使用者が、設計支援システムに全ての負荷情報を手動で入力する必要が無い。これにより、情報の入力作業に伴う使用者への負担を軽減することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、情報の入力作業に伴う使用者への負担を軽減することのできる設計支援システム、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態に係る設計支援システムの構成を模式的に示す図である。
図2図2は、建物の電気設備の例を模式的に示す図である。
図3図3は、CADシステムにより表示される画面の一例を示す図である。
図4図4は、設計支援システムにより表示される、案件情報画面の例を示す図である。
図5図5は、設計支援システムにより表示される、使用製品情報画面の例を示す図である。
図6図6は、設計支援システムにより表示される、使用製品情報画面の例を示す図である。
図7図7は、設計支援システムにより表示される、盤仕様編集画面の例を示す図である。
図8図8は、設計支援システムにより表示される、機器編集画面の例を示す図である。
図9図9は、設計支援システムにより実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0016】
図1を参照しながら、本実施形態に係る設計支援システム10の構成について説明する。設計支援システム10は、建物の電気設備を設計するためのシステムとして構成されている。図1に示される複数の端末20は、使用者が設計支援システム10を使用する際におけるインターフェイスとして用いられるコンピュータ装置である。それぞれの端末20は、ネットワークシステムNWを介して設計支援システム10と繋がっており、設計支援システム10との間で双方向の通信を行うことが可能となっている。端末20を操作する使用者から見ると、設計支援システム10は、クラウド上に設置されたサーバー装置である。
【0017】
端末20は、据え置き型のコンピュータ装置であってもよいが、使用者によって携帯される携帯通信端末であってもよい。ここで想定される「使用者」とは、例えば、建物のうち少なくとも電気設備の配置等を設計する建築業者である。使用者は、端末20を介して設計支援システム10にアクセスすることで、設計支援システム10による支援を受けながら建物の電気設備を設計することができる。端末20は、図1の例のように複数台用意されてもよいが、1台だけであってもよい。
【0018】
使用者は、端末20を操作することにより、CADシステム30の操作を行うこともできる。CADシステム30は、建物における負荷の仕様や具体的な配置などを設計する際に、使用者が使用するシステムである。このようなCADシステム30としては、例えば、一般に市販されている汎用のCADシステムを用いることができる。
【0019】
端末20は、ネットワークシステムNWを介してCADシステム30とも繋がっており、CADシステム30との間で双方向の通信を行うことが可能となっている。更に、設計支援システム10とCADシステム30とが、ネットワークシステムNWを介して直接双方向の通信を行うことも可能となっている。
【0020】
使用者は、例えば、設計支援システム10を操作するためのウインドウと、CADシステム30を操作するためのウインドウとを、端末20が有する一つの画面に同時に表示させ、それぞれのシステムの操作を行うことができる。
【0021】
設計支援システム10は、1台又は複数台のコンピュータからなるシステムとして構成されている。設計支援システム10は、機能的なブロックとして表現される要素として、取得部11と、決定部12と、記憶部13と、通信部14と、を備えている。
【0022】
取得部11は、負荷情報を取得するための処理を行う部分である。「負荷情報」とは、建物に設置される負荷に関する情報のことである。「負荷」とは、例えばエアコンや照明装置、電気機器を接続するためのコンセント等のことである。負荷情報を取得する方法、及び、取得される負荷情報の詳細な例については後に説明する。
【0023】
決定部12は、取得部11によって取得された負荷情報に基づいて、建物に設置される高圧受電設備の仕様を決定する処理を行う部分である。決定部12は、建物に設置される負荷への電力供給に支障がないように、高圧受電設備の仕様を決定する。高圧受電設備とは、例えば、建物の屋外に設置されるキュービクルである。決定部12において決定される高圧受電設備の「仕様」には、例えば、高圧受電設備に設けられるトランスの容量(つまり、トランスから出力可能な電力の最大値)や、高圧受電設備の大きさ及び重量等が含まれる。
【0024】
記憶部13は、設計支援システム10に設けられた不揮発性の記憶装置であって、例えばハードディスクである。記憶部13には、上記の負荷情報を含む、電気設備に関する各種の情報が記憶される。また、記憶部13には、決定部12等が行う演算処理に必要な情報が予め記憶されている。
【0025】
通信部14は、設計支援システム10と端末20との間における通信、もしくは、設計支援システム10とCADシステム30との間における通信を実現するための通信インターフェイスである。上記各システムの間を繋ぐネットワークシステムNWは、有線の通信網であってもよく、無線の通信網であってもよい。また、ネットワークシステムNWは、例えばインターネットのような、多目的に利用される公共の通信網であってもよいが、設計支援システム10のために設けられた専用の通信回線であってもよい。
【0026】
設計支援システム10の機能、すなわち、建物の電気設備の設計を支援する機能の説明に先立ち、建物の「電気設備」の概要について説明する。図2には、電気設備が設置された建物の一例が模式的に示されている。図2に示される建物700は3階建ての建物として構成されており、その屋外には高圧受電設備710が設置されている。
【0027】
高圧受電設備710は、電力会社の送電網TLから供給される高電圧の電力を低電圧の電力に変圧し、当該電力を建物700の各フロアへと分配供給するための設備である。高圧受電設備710には、上記のような変圧を行うためのトランス711や、不図示のコンデンサ等が設けられている。
【0028】
建物700の各フロアには、1つまたは複数の分電盤720が設置されている。図2の例では、それぞれのフロアに分電盤720が2つずつ設置されているのであるが、分電盤720の数はこれとは異なっていてもよい。高圧受電設備710とそれぞれの分電盤720との間は、幹線740によって接続されている。尚、図2においては、高圧受電設備710のトランス711から伸びる1本の幹線740が、途中で複数に分岐してそれぞれの分電盤720に繋がっているように描かれているのであるが、幹線740の態様はこれとは異なっていてもよい。例えば、高圧受電設備710と分電盤720との間が、それぞれの分電盤720毎に用意された個別の幹線740によって接続されているような態様であってもよい。
【0029】
図2においては、それぞれのフロアに設置された負荷が、符号730の付されたブロックとして模式的に描かれている。以下では、それぞれの負荷のことを「負荷730」とも表記する。図2の例では、各フロアに負荷730が4つずつ設置されているように描かれているのであるが、実際の負荷730の数はこれとは異なっていてもよい。
【0030】
それぞれの分電盤720は、幹線740から供給される電力を、それぞれの負荷730に分配する。分電盤720には、主幹ブレーカー721と、分岐ブレーカー722とが設けられている。主幹ブレーカー721及び分岐ブレーカー722は、いずれも回路遮断器であって、通過する電力の値が所定の遮断容量を超えると、自動的に電路を遮断するように構成されている。
【0031】
よく知られているように、建物700に設置される負荷730の容量、すなわち消費電力が大きくなる程、分岐ブレーカー722の遮断容量、及び主幹ブレーカー721の遮断容量を大きくしておく必要がある。また、負荷730の数が増加するなどして、建物700の全体で消費される電力が大きくなる程、トランス711の容量も大きくしておく必要がある。設計支援システム10は、負荷730に関する情報として入力された「負荷情報」に基づいて、トランス711の容量を含む高圧受電設備710の仕様等を自動的に決定する機能を有している。このため、建物700を設計する建築業者は、高圧受電設備710を提供する電気設備業者との間で情報をやり取りすることなく、設計支援システム10の操作を行うだけで、高圧受電設備710の仕様を取得することが可能となる。
【0032】
図3に示される画面500は、使用者がCADシステム30による設計を行っている際に、端末20に表示される画面の例である。画面500には、建物700の特定のフロアの全体図と、当該フロアに配置される複数の負荷730とが表示されている。図3の例においては、複数の負荷730を示す図形501、502、503、504が示されている。
【0033】
図形501、502はいずれも照明装置を示すものであり、それぞれの名称を表す「照明1」、「照明2」の文字列と共に画面500に表示されている。図形503、504はいずれもコンセントを示すものであり、それぞれの名称を表す「コンセント1」、「コンセント2」の文字列と共に画面500に表示されている。
【0034】
画面500には、図形505も表示されている。図形505は、当該フロアに設置される分電盤720を示すものである。分電盤720は、上記の「照明1」、「照明2」、「コンセント1」、「コンセント2」のそれぞれに繋がっており、これらに対し電力を供給するものである。
【0035】
CADシステム30の使用者は、端末20を操作することにより、図3の例のように建物700における負荷730や分電盤720の具体的な配置、及びこれらの間を接続する電力経路の具体的な態様等を設計することができる。また、CADシステム30は、設計されたデータをファイルに出力し、これを端末20や設計支援システム10に送信することもできる。当該ファイルには、負荷730や分電盤720の具体的な配置、それぞれの負荷730と分電盤720との間を繋ぐ電力経路、等を示す情報が含まれる。CADシステム30から出力されるファイルは、例えばCSVのような、他のシステムでも読み取ることのできる汎用的な形式で保存される。後に説明するように、設計支援システム10の取得部11は、CADシステム30から出力されたデータ、すなわち上記のファイルから、高圧受電設備710の仕様決定に必要な負荷情報を取得することが可能となっている。
【0036】
以下では、端末20に表示される画面の例等を示しながら、設計支援システム10の機能について説明する。本実施形態に係る設計支援システム10は、複数の建物700の電気設備に関する各種情報を、建物700毎にまとめて管理している。1つの建物700に対応した一まとまりの情報は、「案件情報」として設計支援システム10の記憶部13に記憶されている。
【0037】
使用者が、端末20を介して設計支援システム10にログインすると、図4に示される案件情報画面100が端末20の画面に表示される。案件情報画面100は、上段の案件情報登録部110と、下段の案件一覧表示部120と、により構成されている。
【0038】
案件情報登録部110は、使用者が新規の案件情報を登録するために操作する部分である。使用者は、「件名」の入力欄に、案件情報を特定する名称、例えば建物700の名称を入力する。案件情報登録部110には、件名の入力欄の他に、登録ボタン112と、キャンセルボタン113と、が表示されている。
【0039】
尚、案件情報登録部110には、上記の他にも、案件に関する情報を入力するための入力欄が多数表示されているのであるが、これらについては個別の説明を省略する。使用者は、必要な情報を入力した後、登録ボタン112をクリックする。これにより、入力された新たな案件情報が設計支援システム10へと送信され、記憶部13に追加登録され記憶される。尚、登録ボタン112ではなくキャンセルボタン113がクリックされた場合には、案件情報登録部110の各入力欄に入力された情報がクリアされる。
【0040】
案件一覧表示部120には、リスト表示部121と、負荷情報入力ボタン122と、削除ボタン123と、が表示されている。
【0041】
リスト表示部121は、現在ログインしている使用者により、これまでに登録されている案件情報の一覧が表示される。上記のように、案件情報登録部110の登録ボタン112がクリックされ、新たな案件情報が追加登録された場合には、当該案件情報を示す文字列が、リスト表示部121に新たな行として追加される。図4の例では、案件A、案件B、案件Cからなる3つの案件情報がリスト表示部121に表示されている。尚、ここに表示される「案件A」等の文字列は、案件情報登録部110の「件名」の欄に入力されていた名称である。
【0042】
使用者は、リスト表示部121に表示されている案件情報の名称をクリックすることで、当該案件情報を選択状態にすることができる。特定の案件情報を選択状態にした後、使用者が削除ボタン123をクリックすると、当該案件情報がリスト表示部121から削除されると共に、記憶部13からも削除される。
【0043】
リスト表示部121に表示されている特定の案件情報を選択状態にした後、使用者が負荷情報入力ボタン122をクリックすると、端末20の画面には、図5に示される使用製品情報画面200が表示される。使用製品情報画面200は、上記のように選択された案件情報に対応した建物700の、負荷情報が入力される画面となっている。
【0044】
使用製品情報画面200には、枠210と、CADデータ読み込みボタン220と、が表示される。枠210は、後述の盤ブロック211(図6を参照)が表示される部分である。CADデータ読み込みボタン220は、CADシステム30から出力されたファイルから負荷情報の取得を行わせるために、使用者がクリックするボタンである。
【0045】
使用者がCADデータ読み込みボタン220をクリックすると、ファイルを選択するための不図示のダイアログが端末20の画面に表示される。当該ダイアログにおいて、使用者は、予めCADシステム30から出力させておいたファイルを選択する。当該ファイルは、先に述べたように、負荷730や分電盤720の具体的な配置等を示す情報を含んでいる。設計支援システム10は、使用者により選択されたファイルから必要な負荷情報を取得した上で、使用製品情報画面200を更新する。
【0046】
図6には、更新された後における使用製品情報画面200の例が示されている。以下では、使用者によって選択されたファイルが、図3の画面500に表示された情報を包含するものである場合の例について説明する。図6に示されるように、更新後の使用製品情報画面200では、枠210の内側に盤ブロック211が表示されている。
【0047】
盤ブロック211は、建物700に設置される盤を示すアイコンである。ここでいう「盤」とは、図3の例において図形505で示されていた分電盤720のことである。図2の例のように、建物700に複数の分電盤720が配置される場合には、枠210には複数の盤ブロック211が表示されることとなる。盤ブロック211の内側に記された「LP-10-01」の文字列は、盤を特定するための記号であって、CADシステム30を用いた設計作業の際に、使用者により任意に設定されていたものである。
【0048】
図6の使用製品情報画面200において、使用者が、表示されている単一又は複数の盤ブロック211のうちの一つをクリックすると、図7に示されるような盤仕様編集画面400が表示される。盤仕様編集画面400は、盤ブロック211に対応する盤に接続される全ての負荷730、の電気的仕様を含む各種情報を表示し、当該情報を使用者に編集させるための画面である。
【0049】
盤仕様編集画面400は、上段の盤仕様表示部410と、中段の幹線情報表示部420と、下段の負荷表示部430と、により構成されている。
【0050】
盤仕様表示部410は、先ほどクリックされた盤ブロック211に対応する盤、についての情報が表示される部分である。盤仕様表示部410には、盤名称表示部412が表示されている。盤名称表示部412には、盤の名称として設定された「LP-10-01」の文字列が表示されている。
【0051】
尚、盤仕様編集画面400には、上記の他にも、盤に関する情報を入力するための入力欄が多数表示されているのであるが、これらについては個別の説明を省略する。次に説明する幹線情報表示部420や負荷表示部430についても同様に、図7において表示されている各欄のうち一部のみについて説明し、他の説明については省略することとする。
【0052】
幹線情報表示部420は、高圧受電設備710から盤に接続される幹線740、についての情報が表示される部分である。幹線情報表示部420には、遮断容量表示部421と、幹線仕様表示部422と、が表示されている。
【0053】
遮断容量表示部421は、盤に設けられる主幹ブレーカー721の遮断容量が表示される部分である。遮断容量表示部421の左側に表示されている「AT」の文字は、所謂「アンペアトリップ」を意味している。例えば、遮断容量表示部421に「125」と表示されている場合には、盤の主幹ブレーカー721として、125Aの電流が流れた際に遮断動作を行うようなものが用いられることを意味する。
【0054】
遮断容量表示部421に表示される遮断容量は、後述の負荷表示部430に表示されている負荷730の電気的仕様(具体的には消費電力)に基づいて、設計支援システム10によって自動的に入力されたものである。負荷730の消費電力の合計値が大きいほど、遮断容量表示部421に表示される数値も大きくなる。ただし、使用者は、自動的に入力された「AT」数値を、必要に応じて手動で書き換えることもできる。
【0055】
幹線仕様表示部422は、盤に接続される幹線740の太さを示す数値が表示される部分である。幹線仕様表示部422に表示される数値は、後述の負荷表示部430に表示されている負荷730の電気的仕様(具体的には消費電力)に基づいて、設計支援システム10によって自動的に入力されたものである。負荷730の消費電力の合計値が大きいほど、幹線仕様表示部422に表示される数値も大きくなる。ただし、使用者は、自動的に入力された数値を、必要に応じて手動で書き換えることもできる。
【0056】
負荷表示部430は、盤に接続され電力供給を受ける負荷730、の電気的仕様が表示される部分である。負荷表示部430には、盤に接続される負荷730のそれぞれがリスト表示される。負荷表示部430の各行には、1つの負荷730に関する情報、具体的には「負荷名称」、「消費電力」、「ブレーカー種別」、「AT」等の情報が列挙されている。
【0057】
図7の例では、CADシステム30から出力されていたファイルから取得された各負荷730の情報が、負荷表示部430の各行に初期値として入力されている。1行目の「照明1」は、図3の画面500における図形501に対応する負荷730である。2行目の「照明2」は、画面500における図形502に対応する負荷730である。3行目の「コンセント1」は、画面500における図形503に対応する負荷730である。4行目の「コンセント2」は、画面500における図形504に対応する負荷730である。
【0058】
負荷表示部430の各行に表示されている各種情報は、各行に表示された負荷730の具体的な仕様等を示している。それぞれの情報は、CADシステム30から出力されていたファイルに含まれていたものであり、負荷表示部430の各行に初期値として入力されている。CADシステム30から出力されていたファイルから、負荷730に関する情報を取得し、負荷表示部430の各行に初期値として入力する処理は、設計支援システム10の取得部11によって行われる。
【0059】
使用者は、マウスやキーボードなどの操作により、負荷表示部430に表示されている各種情報を編集することができる。「負荷名称」とは、負荷730を特定するために任意に設定される文字列である。「消費電力」とは、負荷730の消費電力を、「W」又は「VA」を単位とする数値で表示する部分である。「ブレーカー種別」は、負荷730と盤との間に設置される分岐ブレーカー722の種類であって、「MCCB」、「ELCB」、「TB」のいずれかを選択して入力することが可能となっている。尚、上記のうち「TB」とは、端子台を意味する。盤と負荷730との間が、分岐ブレーカー722を介することなく直結されるような場合には、「ブレーカー種別」として「TB」が選択される。「AT」は、所謂「アンペアトリップ」であり、分岐ブレーカー722の遮断容量である。
【0060】
負荷表示部430に表示されているこれらの情報のうち、少なくとも「負荷名称」と「消費電力」は、CADデータ読み込みボタン220がクリックされた後に、CADシステム30からのファイルに基づいて自動的に入力されたものである。これらの情報は、後に使用者によって手動で書き換えられてもよい。負荷表示部430における「AT」は、入力された「消費電力」の数値に応じて、適切な値が設計支援システム10によって自動的に入力される。消費電力の数値が大きいほど、「AT」の欄に表示される数値も大きくなる。ただし、使用者は、自動的に入力された「AT」の値を、必要に応じて手動で書き換えることもできる。
【0061】
負荷表示部430に新たな行を追加したい場合、すなわち、盤に接続される負荷730を新たに追加したい場合には、使用者は負荷追加ボタン401をクリックすればよい。既存の行を削除したい場合には、当該業の右端にあるチェックボックスにチェックを入れた状態で、その下方にある負荷削除ボタン402をクリックすればよい。使用者は、負荷表示部430を適宜編集することで、盤に接続される負荷730の情報を書き換えていくことができる。
【0062】
編集の作業が終了すると、使用者は保存ボタン403をクリックする。これにより、負荷表示部430の各行に表示されている負荷730の情報は、設計支援システム10へと送信され、記憶部13に記憶される。換言すれば、記憶部13に記憶されている案件情報における負荷730の配置が、負荷表示部430の各行に表示されていたものとなるように更新される。
【0063】
尚、保存ボタン403がクリックされる前の段階においても、負荷表示部430の各情報が使用者によって更新されると、当該情報は設計支援システム10へと送信される。設計支援システム10は、更新された情報に基づいて、負荷表示部430の「AT」に表示される数値や、幹線情報表示部420の遮断容量表示部421や幹線仕様表示部422に表示される数値を都度更新する。例えば、一部の負荷730の「消費電力」が、それまでよりも大きな数値に変更された場合には、当該負荷730の「AT」の数値がより大きな値に変更されると共に、遮断容量表示部421や幹線仕様表示部422に表示される数値もより大きな値に変更される。
【0064】
このような数値の自動変更を可能とするために、記憶部13には、負荷730の消費電力と分岐ブレーカー722の遮断容量との対応関係、盤に繋がる負荷730の消費電力の合計値と主幹ブレーカー721の遮断容量との対応関係、及び、盤に繋がる負荷730の消費電力の合計値と幹線740の太さとの対応関係、等が予め記憶されている。設計支援システム10は、これらの対応関係を参照することにより、上記のような各数値の自動変更を行う。
【0065】
使用者によって保存ボタン403がクリックされ、記憶部13に記憶されている負荷730の情報が更新されると、設計支援システム10の決定部12は、当該情報に基づいて、建物700に設置される高圧受電設備710の仕様を決定する。具体的には、設計支援システム10の決定部12は、建物700における各負荷730への電力供給に支障が出ないように、高圧受電設備710が備えるべきトランス711の容量を決定する。また、決定部12は、トランス711やコンデンサなどの構成要素を収容するために必要な、高圧受電設備710の外形を算出し、合わせて高圧受電設備710の重量も算出する。
【0066】
上記のような決定を可能とするために、記憶部13には、建物700における全ての負荷730の消費電力の合計値と、高圧受電設備710の仕様との対応関係が、予め記憶されている。決定部12は、当該対応関係を参照することにより高圧受電設備710の仕様を決定する。
【0067】
決定部12によって決定された高圧受電設備710の上記仕様は、記憶部13に記憶される。設計支援システム10の使用者は、必要な呼び出し操作を行うことによって、高圧受電設備710の仕様を端末20の画面に表示させることができる。
【0068】
尚、保存ボタン403がクリックされることなく、盤仕様編集画面400が閉じられた場合には、各種情報は盤仕様編集画面400が表示される前の状態に戻される。
【0069】
図5、6に示される使用製品情報画面200では、使用者が、手動で盤の追加または削除を行うことも可能となっている。図5に示されるように、枠210の上部分には、追加ボタン212が表示されている。盤ブロック211の追加等を行う際には、使用者はこの追加ボタン212をクリックする。使用者が追加ボタン212をクリックすると、端末20の画面には、図8に示されるような機器編集画面300が表示される。
【0070】
図8に示されるように、機器編集画面300には、リスト表示部310と、行追加ボタン320と、行削除ボタン330と、登録ボタン301と、キャンセルボタン302と、が表示されている。
【0071】
リスト表示部310には、建物700に設置される盤のそれぞれがリスト表示される。リスト表示部310の各行には、1つの盤に関する情報、具体的には「機器種別」、「盤名称」等の情報が列挙されている。使用者は、マウスやキーボードなどの操作により、これらの情報を編集することができる。「機器種別」とは、分電盤の種類であって、「分電盤」、「制御盤」、「設備盤」の何れかを選択して入力することが可能となっている。「盤名称」とは、盤を特定するために任意に設定される記号であって、図6のように盤ブロック211の内側に表示される「LP-10-01」等の文字列のことである。
【0072】
新たな行を追加したい場合、すなわち、該当フロアに設置される盤を新たに追加したい場合には、使用者は行追加ボタン320をクリックし、追加された行に必要な情報を入力すればよい。既存の行を削除したい場合には、当該業の右端にあるチェックボックスにチェックを入れた状態で、その下方にある行削除ボタン330をクリックすればよい。
【0073】
使用者は、上記のように機器編集画面300に必要な情報を書き込むことにより、各フロアに盤を配置しながら電気設備の設計を進めて行くことができる。
【0074】
編集の作業が終了すると、使用者は登録ボタン301をクリックする。使用者が登録ボタン301をクリックすると、機器編集画面300が閉じられて、図5、6の使用製品情報画面200が再度表示される。このとき、枠210における盤ブロック211の配置は、直前に編集されたリスト表示部310の内容に合致した配置となっている。また、枠210における盤ブロック211の配置は、設計支援システム10へと送信され、記憶部13に記憶される。換言すれば、記憶部13に記憶されている案件情報における盤の配置が、使用者が入力したものとなるように更新される。
【0075】
以上に説明したように、本実施形態に係る設計支援システム10では、CADシステムから出力されたデータから取得部11が負荷情報を取得し、当該負荷情報に基づいて、高圧受電設備710の仕様を決定部12が自動的に決定するように構成されている。高圧受電設備710の仕様を決定するために取得される上記「負荷情報」とは、本実施形態の場合、負荷730の電気的仕様、具体的には、盤仕様編集画面400の負荷表示部430の各行に入力された消費電力の値を示す情報のことである。
【0076】
このような構成の設計支援システム10では、CADシステム30から出力されたデータから、取得部11が負荷情報を自動的に取得し、初期として負荷表示部430の各行に入力する処理を行う。このため、使用者が、設計支援システム10に全ての負荷情報を手動で入力する必要が無い。このため、情報の入力作業に伴う使用者への負担を軽減することが可能となる。
【0077】
尚、負荷情報として取得される、負荷730の「電気的仕様」は、本実施形態のように消費電力の値でもよいが、電圧と電流のそれぞれの値であってもよい。
【0078】
尚、本実施形態では、設計支援システム10の取得部11による負荷情報の取得が、CADシステム30から出力されたファイルを読み込むことにより行われる。このような態様に替えて、CADシステム30から出力されたデータを、ファイルを介することなく、取得部11が通信により直接取得することとしてもよい。
【0079】
また、取得部11による負荷情報の取得は、図5の使用製品情報画面200に表示されているCADデータ読み込みボタン220を、使用者がクリックしたタイミングで行われる。このような態様に替えて、CADシステム30の画面500(図3)に同様の読み込みボタンを表示させておき、当該ボタンを使用者がクリックしたタイミングで、取得部11による負荷情報の取得が行われることとしてもよい。
【0080】
図9に示されるフローチャートは、以上に説明した機能を実現するために、設計支援システム10において実行される処理の大まかな流れを示すものである。図9に示される一連の処理は、図5の使用製品情報画面200において、CADデータ読み込みボタン220が使用者によりクリックされたタイミングで開始されるものである。
【0081】
当該処理の最初のステップS01では、ファイルを選択するためのダイアログを端末20の画面に表示させ、CADシステム30から出力されたデータから負荷情報を取得する処理が、取得部11によって行われる。その後、取得部11は、取得された負荷情報を、盤仕様編集画面400の負荷表示部430の各行に初期値として自動的に入力する。使用者は、必要に応じて負荷情報の書き換えを行う。
【0082】
ステップS01に続くステップS02では、負荷表示部430に入力又は更新された負荷情報に基づいて、記憶部13に記憶されている負荷情報を更新する処理が行われる。ステップS02に続くステップS03では、上記のように更新された負荷情報に基づいて、高圧受電設備710の仕様を決定する処理が、決定部12によって行われる。
【0083】
先に述べたように、設計支援システム10の使用者は、必要な呼び出し操作を行うことによって、上記のように決定された高圧受電設備710の仕様を端末20の画面に表示させることができる。
【0084】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0085】
10:設計支援システム
11:取得部
12:決定部
700:建物
710:高圧受電設備
730:負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9