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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】疵検査装置及び疵検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
G01N21/892 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020057780
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156757
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】503378420
【氏名又は名称】日鉄ステンレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】長野 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】小塚 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小川 智志
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-249624(JP,A)
【文献】特開2004-132712(JP,A)
【文献】特開平08-261951(JP,A)
【文献】特開2010-249685(JP,A)
【文献】国際公開第2018/034057(WO,A1)
【文献】特開2007-225531(JP,A)
【文献】特開2010-014635(JP,A)
【文献】特開2000-221143(JP,A)
【文献】特開平11-211674(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01867979(EP,A1)
【文献】特開2000-241358(JP,A)
【文献】特開2012-225768(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1074021(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板の表面が撮像された撮像データから検出された前記鋼板の表面に生じている複数の疵のそれぞれを、前記撮像データ内の疵の輝度と形状とサイズとによって得られる特徴量に基づいて有害疵又は無害疵のいずれかに分類する分類部
前記有害疵の種類、前記有害疵の鋼板上の位置及び前記有害疵の画像を含む疵情報と、前記鋼板が使用される用途を示す用途情報とを他の装置に送信する通信部と、
を備え、
前記分類部は、分類した前記無害疵のうち複数の無害疵で所定の条件を満たす場合には、前記所定の条件を満たす複数の無害疵を有害疵に再分類し、分類した前記有害疵のうちいずれの種類の疵にも該当しないと判定された有害疵を前記特徴量に基づいていずれかの種類の有害疵に再分類し、分類した前記有害疵のうちいずれの種類の疵にも該当しないと判定された有害疵であって、かつ、BF(Bright Field)で赤外線が透過した場合には前記有害疵を穴に分類する疵検査装置。
【請求項2】
前記分類部は、分類した前記無害疵のうち、少なくとも前記無害疵が所定の間隔で複数個連続して生じている場合、又は、所定の領域内に前記無害疵が複数個位置している場合に、前記所定の条件を満たすと判定する、請求項1に記載の疵検査装置。
【請求項3】
前記分類部は、前記有害疵を、少なくとも疵の種類及び疵のサイズに応じて疵の重度を表すランクで分ける、請求項1又は2に記載の疵検査装置。
【請求項4】
前記分類部は、前記特徴量の他に前記鋼板の用途を加味して、前記複数の疵のそれぞれを、有害疵又は無害疵のいずれかに分類する、請求項1からのいずれか一項に記載の疵検査装置。
【請求項5】
前記分類部は、前記鋼板の表面に生じる疵と前記鋼板の用途との組み合わせ毎に設定されている有害疵又は無害疵のいずれかの情報を用いて前記特徴量から前記疵を特定し、特定した疵と、前記鋼板の用途とを用いて、前記複数の疵のそれぞれが、有害疵又は無害疵のいずれかに該当するかによって前記有害疵又は無害疵のいずれかに分類する、請求項1からのいずれか一項に記載の疵検査装置。
【請求項6】
鋼板の表面が撮像された撮像データから検出された前記鋼板の表面に生じている複数の疵のそれぞれを、前記撮像データ内の疵の輝度と形状とサイズとによって得られる特徴量に基づいて有害疵又は無害疵のいずれかに分類する分類ステップ
前記有害疵の種類、前記有害疵の鋼板上の位置及び前記有害疵の画像を含む疵情報と、前記鋼板が使用される用途を示す用途情報とを他の装置に送信する通信ステップと、
を有し、
前記分類ステップにおいて、分類した前記無害疵のうち複数の無害疵で所定の条件を満たす場合には、前記所定の条件を満たす複数の無害疵を有害疵に再分類し、分類した前記有害疵のうちいずれの種類の疵にも該当しないと判定された有害疵を前記特徴量に基づいていずれかの種類の有害疵に再分類し、分類した前記有害疵のうちいずれの種類の疵にも該当しないと判定された有害疵であって、かつ、BF(Bright Field)で赤外線が透過した場合には前記有害疵を穴に分類する疵検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疵検査装置及び疵検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板の品質管理の一環として、鋼板の表面に生じる欠陥(例えば、疵)を検査する金属表面欠陥検査装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような金属表面欠陥検査装置では、鋼板の表面に光を照射し、その反射光に基づいて鋼板の表面の疵の有無を判別する。この際、金属表面欠陥検査装置では、ノイズを疵と判定しないように、ある閾値を超える評価値を持つ疵のみを抽出することによって疵の過検出を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-198627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の金属表面欠陥検査装置では、ある閾値を超えなかった疵については品質に影響を与えないとして疵の検出から除外している。ところが、ある閾値を超えなかった疵が、鋼板の表面に多く発生している場合には鋼板の品質に影響を与えかねない。しかしながら、金属表面欠陥検査装置では、一度除外した疵については検査が行われないため、疵の検査精度が低いという問題があった。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、より高精度な疵の検査を行うことができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、鋼板の表面が撮像された撮像データから検出された前記鋼板の表面に生じている複数の疵のそれぞれを、前記撮像データ内の疵の輝度と形状とサイズとによって得られる特徴量に基づいて有害疵又は無害疵のいずれかに分類する分類部前記有害疵の種類、前記有害疵の鋼板上の位置及び前記有害疵の画像を含む疵情報と、前記鋼板が使用される用途を示す用途情報とを他の装置に送信する通信部と、を備え、前記分類部は、分類した前記無害疵のうち複数の無害疵で所定の条件を満たす場合には、前記所定の条件を満たす複数の無害疵を有害疵に再分類し、分類した前記有害疵のうちいずれの種類の疵にも該当しないと判定された有害疵を前記特徴量に基づいていずれかの種類の有害疵に再分類し、分類した前記有害疵のうちいずれの種類の疵にも該当しないと判定された有害疵であって、かつ、BF(Bright Field)で赤外線が透過した場合には前記有害疵を穴に分類する疵検査装置である。
【0007】
本発明の一態様は、上記の疵検査装置であって、前記分類部は、分類した前記無害疵のうち、少なくとも前記無害疵が所定の間隔で複数個連続して生じている場合、又は、所定の領域内に前記無害疵が複数個位置している場合に、前記所定の条件を満たすと判定する。
【0008】
本発明の一態様は、上記の疵検査装置であって、前記分類部は、前記有害疵を、少なくとも疵の種類及び疵のサイズに応じて疵の重度を表すランクで分ける。
【0009】
本発明の一態様は、上記の疵検査装置であって、前記有害疵の種類、前記有害疵の鋼板上の位置及び前記有害疵の画像を含む疵情報を他の装置に送信する通信部をさらに備える。
【0010】
本発明の一態様は、上記の疵検査装置であって、前記分類部は、前記特徴量の他に前記鋼板の用途を加味して、前記複数の疵のそれぞれを、有害疵又は無害疵のいずれかに分類する。
【0011】
本発明の一態様は、上記の疵検査装置であって、前記分類部は、前記鋼板の表面に生じる疵と前記鋼板の用途との組み合わせ毎に設定されている有害疵又は無害疵のいずれかの情報を用いて前記特徴量から前記疵を特定し、特定した疵と、前記鋼板の用途とを用いて、前記複数の疵のそれぞれが、有害疵又は無害疵のいずれかに該当するかによって前記有害疵又は無害疵のいずれかに分類する。
【0012】
本発明の一態様は、少なくとも有害疵の鋼板上の位置情報を含む疵情報及び鋼板が使用される用途を示す用途情報を他の装置から受信する受信部と、受信された前記疵情報に含まれる前記有害疵の鋼板上の位置情報に基づいて、前記鋼板の画像上に前記有害疵に関する情報を重畳して表示し、受信された前記用途情報に基づいて、前記鋼板が使用される用途を示す情報を前記有害疵に関する情報と同一の画面上に表示する表示部と、を備える検査結果表示装置である。
【0013】
本発明の一態様は、上記の検査結果表示装置であって、前記受信部は、前記疵情報として前記有害疵の種類及び前記有害疵の画像をさらに受信し、前記表示部は、前記有害疵の種類及び前記有害疵の画像を、前記有害疵に関する情報と同一の画面上に表示する。
【0014】
本発明の一態様は、上記の検査結果表示装置であって、前記表示部は、前記有害疵に関する情報を前記有害疵の重度を表すランクに応じて、異なる態様で表示する。
【0016】
本発明の一態様は、鋼板の表面が撮像された撮像データから検出された前記鋼板の表面に生じている複数の疵のそれぞれを、前記撮像データ内の疵の輝度と形状とサイズとによって得られる特徴量に基づいて有害疵又は無害疵のいずれかに分類する分類ステップ前記有害疵の種類、前記有害疵の鋼板上の位置及び前記有害疵の画像を含む疵情報と、前記鋼板が使用される用途を示す用途情報とを他の装置に送信する通信ステップと、を有し、前記分類ステップにおいて、分類した前記無害疵のうち複数の無害疵で所定の条件を満たす場合には、前記所定の条件を満たす複数の無害疵を有害疵に再分類し、分類した前記有害疵のうちいずれの種類の疵にも該当しないと判定された有害疵を前記特徴量に基づいていずれかの種類の有害疵に再分類し、分類した前記有害疵のうちいずれの種類の疵にも該当しないと判定された有害疵であって、かつ、BF(Bright Field)で赤外線が透過した場合には前記有害疵を穴に分類する疵検査方法である。
【0017】
本発明の一態様は、少なくとも有害疵の鋼板上の位置情報を含む疵情報及び鋼板が使用される用途を示す用途情報を他の装置から受信する受信ステップと、受信された前記疵情報に含まれる前記有害疵の鋼板上の位置情報に基づいて、前記鋼板の画像上に前記有害疵に関する情報を重畳して表示し、受信された前記用途情報に基づいて、前記鋼板が使用される用途を示す情報を前記有害疵に関する情報と同一の画面上に表示する表示ステップと、を有する検査結果表示方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、より高精度な疵の検査を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明における疵検査システムのシステム構成を表す構成図である。
図2】第1の実施形態における疵検査装置の機能構成を表す概略ブロック図である。
図3】第1の実施形態における再分類条件情報の一例を示す図である。
図4】第1の実施形態における連続疵及び集合疵に再分類するための条件を説明するための図である。
図5】第1の実施形態における連続疵及び集合疵に再分類するための条件を基準としたユースケースを説明するための図である。
図6】第1の実施形態における検査結果表示装置の機能構成を表す概略ブロック図である。
図7】第1の実施形態における画面情報の一例を示す図である。
図8】第1の実施形態における疵検査システムの処理の流れを示すシーケンス図である。
図9】第1の実施形態における表示部に表示される画面データの一例を示す図である。
図10】第1の実施形態における疵検査装置が行う疵の再分類処理の流れを示すフローチャートである。
図11】第2の実施形態における疵検査装置の機能構成を表す概略ブロック図である。
図12】第2の実施形態における用途別分類情報の一例を示す図である。
図13】第2の実施形態におけるにおける疵検査システムの処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明における疵検査システム100のシステム構成を表す構成図である。疵検査システム100は、鋼板の表面に生じている疵を検査するシステムである。疵検査システム100において、検査対象となる鋼板の種類は特に限定される必要はない。また、疵検査システム100において、疵は鋼板の表面に生じている疵であればどのような疵であってもよい。以下の実施形態では、検査対象となる鋼板は、ロール状に丸められたコイルを構成する鋼板である。各コイルには、それぞれコイルを識別するための識別情報が付与されている。
【0021】
疵検査システム100は、疵検査装置10及び検査結果表示装置20を備える。疵検査装置10及び検査結果表示装置20は、ネットワーク30を介して通信可能な状態に接続される。図1では、疵検査システム100が1台の検査結果表示装置20を備える構成を示しているが、疵検査システム100は2台以上の検査結果表示装置20を備えるように構成されてもよい。また、疵検査システム100は、中継装置を備えてもよい。この場合、中継装置は、疵検査装置10と検査結果表示装置20との間に設けられ、疵検査装置10と検査結果表示装置20との間の通信を中継する。
【0022】
図1では、一例として、疵検査装置10が工場内に設けられ、検査結果表示装置20が工場とは離れた場所に設けられている場合を示している。工場内では、例えば、出荷予定の鋼板47の疵の検査が行われる。また、工場とは離れた場所とは、例えば鋼板を加工するコイルセンタである。なお、工場とは離れた場所は、鋼板の出荷業者の敷地内であってもよい。
【0023】
工場内には疵検査エリア40があり、疵検査エリア40において鋼板47を通板することによって鋼板47の検査が行われる。本実施形態において鋼板47の検査は、疵の検出、疵の種別判定、疵の鋼板47上の位置、疵の分類等の処理を含む。図1において疵検査エリア40には、第1撮像システム41、第2撮像システム42、第3撮像システム43、第4撮像システム44、ロール45及びロール46が設けられている。第1撮像システム41、第2撮像システム42、第3撮像システム43及び第4撮像システム44は、通板される鋼板47を撮像する撮像装置である。ロール45及びロール46は、回転駆動することにより鋼板47を搬送する。
【0024】
第1撮像システム41は、鋼板47の第一面(例えば、鋼板47の表面)を撮像する。例えば、第1撮像システム41は、鋼板47の幅方向に複数台の撮像装置(例えば、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ)を備え、各撮像装置が鋼板47の第一面の所定のエリアを撮像する。各撮像装置は、撮像した撮像データを含む撮像情報を疵検査装置10に送信する。撮像情報には、撮像装置の識別情報(ID)、撮像時刻及び撮像データが含まれる。
【0025】
第2撮像システム42は、鋼板47の第二面(例えば、鋼板47の裏面)を撮像する。例えば、第2撮像システム42は、鋼板47の幅方向に複数台の撮像装置を備え、各撮像装置が鋼板47の第二面の所定のエリアを撮像する。各撮像装置は、撮像した撮像データを含む撮像情報を疵検査装置10に送信する。
【0026】
第3撮像システム43は、鋼板47の第一面(例えば、鋼板47の表面)を撮像する。例えば、第3撮像システム43は、鋼板47の幅方向に複数台の撮像装置を備え、各撮像装置が鋼板47の第一面の所定のラインを撮像する。各撮像装置は、撮像した撮像データを含む撮像情報を疵検査装置10に送信する。
【0027】
第4撮像システム44は、鋼板47の第二面(例えば、鋼板47の裏面)を撮像する。例えば、第4撮像システム44は、鋼板47の幅方向に複数台の撮像装置を備え、各撮像装置が鋼板47の第二面の所定のラインを撮像する。各撮像装置は、撮像した撮像データを含む撮像情報を疵検査装置10に送信する。
第2撮像システム42、第3撮像システム43及び第4撮像システム44において得られる撮像情報にも第1撮像システム41と同様の情報が含まれる。
【0028】
図1に示すように、一般的には鋼板47の表面には複数の疵48が生じていることがある。これらの疵48には、人が目視によって確認できるほど大きな疵、特徴のある疵(例えば、凹み)及び人が目視によって確認できないほど小さな疵等が含まれる。特に、疵48としても、線上の疵、円形の疵、多角形の疵、凹み疵等、大きさや太さの異なる様々な疵がある。そして、小さい疵や単体では製品の価値に影響を与えない疵であっても、疵の種類によっては、鋼板47の製品としての価値に大きな影響を与えてしまう疵もある。そこで、本実施形態に疵検査システム100では、まず撮像データで検出された疵を、単体では軽微な疵(以下「無害疵」という。)と、重大な疵(以下「有害疵」という。)とのいずれかに分類する。なお、無害疵か有害疵かの判定ロジックは、予め設定されているものとする。
【0029】
次に、疵検査システム100では、少なくとも複数の無害疵で所定の条件を満たす場合には、所定の条件を満たす複数の無害疵を有害疵に再分類する。このように構成されることによって、一度は無害疵と判定された疵であっても有害疵に再分類することができる。そして、疵検査システム100では、疵検査装置10が、疵の種類、疵の名称、疵のランク、疵のコード、疵の位置及び撮像データを少なくとも含む疵情報を検査結果表示装置20に送信する。
【0030】
疵の種類は、大まかな疵の分類を表す。例えば、疵の種類として、ヘゲ疵、穴疵、スケール疵、カキ疵、ロール疵等が挙げられるが、疵の種類はこれらに限定されない。
疵の名称は、疵のサイズ(例えば、疵の幅、疵の長さ等)や形状に応じて疵を区別するための疵の名称を表す。本実施形態では、同じ種類の疵であっても疵のサイズや形状に応じて異なる名称を付すことによってより詳細に疵を区別する。例えば、ヘゲ疵であっても、疵のサイズや形状に応じて、ヘゲ疵1、ヘゲ疵2、・・・のように区別する。
【0031】
疵のランクは、疵の重度を表す。疵のランクが高いほど、疵の度合いが高いことを表す。なお、疵のランクは、疵の種類毎に異なる基準で決定される。疵のランクは、少なくとも疵の種類及び疵のサイズに応じて決定される。
疵のコードは、疵を識別するための識別情報を表す。例えば、疵のコードは、疵の名称毎に異なるコードが付される。
疵の位置は、疵の鋼板上の位置を表す。すなわち、疵の位置は、疵が鋼板の表面のどの位置に生じているのかを表す。
撮像データは、第1撮像システム41、第2撮像システム42、第3撮像システム43、第4撮像システム44によって撮像された疵の画像である。
【0032】
疵検査装置10は、有害疵についてのみ疵情報を検査結果表示装置20に送信してもよいし、有害疵の疵情報及び無害疵の疵情報を検査結果表示装置20に送信してもよい。検査結果表示装置20は、疵検査装置10から送信された疵情報を表示する。これにより、鋼板47に生じている疵の情報を把握することができる。
以下、具体的な構成について説明する。
【0033】
疵検査装置10は、第1撮像システム41、第2撮像システム42、第3撮像システム43及び第4撮像システム44から得られるいずれか又は全ての撮像情報に含まれる撮像データを用いて、鋼板の表面に生じている疵を検査する。
【0034】
検査結果表示装置20は、疵検査装置10から送信された疵情報を保持し、ユーザの操作に応じて疵情報を表示する。検査結果表示装置20は、例えばスマートフォン、携帯電話、タブレット端末、ノートパソコン、パーソナルコンピュータ、ゲーム機器等の情報処理装置を用いて構成される。
ネットワーク30は、どのように構成されたネットワークであってもよい。例えば、ネットワーク30は、インターネットである。
以下、各実施形態について詳細に説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態における疵検査装置10の機能構成を表す概略ブロック図である。
疵検査装置10は、通信部11、制御部12及び記憶部13を備える。
通信部11は、検査結果表示装置20、第1撮像システム41、第2撮像システム42、第3撮像システム43及び第4撮像システム44との間で通信を行う通信インタフェースである。通信部11は、第1撮像システム41、第2撮像システム42、第3撮像システム43及び第4撮像システム44のそれぞれから撮像情報を受信する。通信部11は、検査結果表示装置20に対して疵情報を送信する。
【0036】
制御部12は、少なくともCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサと、メモリとを用いて構成される。制御部12は、プログラムを実行することによって、画像取得部121、疵検出部122及び分類部123として機能する。
画像取得部121は、第1撮像システム41、第2撮像システム42、第3撮像システム43及び第4撮像システム44のそれぞれから送信された撮像情報を、通信部11を介して取得する。画像取得部121は、取得した撮像情報に含まれる撮像装置の識別情報(ID)、撮像時刻及び撮像データを対応付けて記憶部13に記憶する。
【0037】
疵検出部122は、記憶部13に記憶されている撮像データに基づいて疵を検出する。具体的には、疵検出部122は、鋼板47の表面において疵の有無を検出する。疵検出部122が行う疵の検出は、撮像データの輝度差に基づいて行われる。
【0038】
分類部123は、疵検出部122により疵が検出された撮像データと、疵分類用情報とを用いて、撮像データから検出された疵を無害疵と有害疵とのいずれかに分類する。ここで、疵分類用情報とは、少なくとも疵を無害疵又は有害疵のいずれかに分類するための情報である。疵分類用情報は、例えば疵の種類と疵のサイズの組み合わせ毎に、有害/無害、疵の名称、疵のランク、疵コード及び特徴量が対応付けられた情報である。疵分類用情報は、テーブル形式で記憶されていてもよい。以下、疵分類用情報における特徴量を比較用特徴量と記載する。
【0039】
さらに、分類部123は、検出された疵のうち再分類の候補となる疵を再分類する。再分類の候補となる疵とは、分類不可有害疵や所定の条件を満たす複数の無害疵である。分類不可有害疵とは、有害疵ではあるが、どの種類の疵にも該当しないと判定された疵である。分類部123は、分類不可有害疵をいずれかの種類の有害疵に再分類する。また、分類部123は、複数の無害疵で所定の条件を満たす場合には、所定の条件を満たす複数の無害疵を有害疵に再分類する。
【0040】
記憶部13は、撮像情報131、分類用疵情報132及び再分類条件情報133を記憶する。記憶部13は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。
撮像情報131は、第1撮像システム41、第2撮像システム42、第3撮像システム43及び第4撮像システム44から取得された情報である。撮像情報131には、上述の通り、撮像装置の識別情報(ID)、撮像時刻及び撮像データが含まれる。
【0041】
分類用疵情報132は、分類部123が疵の分類に用いる分類用の疵情報である。
再分類条件情報133は、複数の無害疵の組み合わせを有害疵に再分類するための条件である。再分類条件情報133は、例えば、図3に示すようにテーブル形式で記憶部13に記憶されている。
【0042】
図3は、第1の実施形態における再分類条件情報133の一例を示す図である。
図3に示すように、再分類条件情報133には、無害疵再分類名称及び再分類条件が含まれる。無害疵再分類名称は、所定の条件を満たす複数の無害疵を有害疵に再分類した際の名称を表す。無害疵再分類名称の具体例として、図3では連続疵及び集合疵が示されている。再分類条件は、複数の無害疵を有害疵に再分類するための条件を表す。再分類条件として、疵の種類及び条件が含まれる。
【0043】
疵の種類は、再分類する対象となる疵の種類を表す。条件は、再分類の具体的な条件を表す。図3に示す例では、複数の無害疵を有害疵の一つである連続疵に再分類するための条件として、特定の幅範囲に長手方向のピッチ性のある疵が複数個以上連続して発生していることを満たす必要があることが示されている。
図3に示す例では、複数の無害疵を有害疵の一つである集合疵に再分類するための条件として、特定の面積の中に疵が複数個発生していることを満たす必要があることが示されている。
【0044】
図4は、第1の実施形態における連続疵及び集合疵に再分類するための条件を説明するための図である。
図4(A)は連続疵に再分類するための条件を説明するための図であり、図4(B)は集合疵に再分類するための条件を説明するための図である。図4(A)に示すように、連続疵に再分類するためには、少なくとも無害疵が所定の間隔(図4(A)の例では最大ピッチ〇m(例えば、3m)、最小ピッチ〇m(例えば、500mm))で複数個(図4(A)の例では3個以上)連続して生じている条件を満たす必要がある。図4(B)に示すように、集合疵に再分類するためには、少なくとも所定の領域(図4(B)の例では長手範囲〇mm(例えば、500mm)、幅範囲〇mm(例えば、500mm))内に無害疵が複数個(図4(B)の例では30個)以上位置している条件を満たす必要がある。
【0045】
図5は、第1の実施形態における連続疵及び集合疵に再分類するための条件を基準としたユースケースを説明するための図である。図5(A)~図5(C)は連続疵に再分類するための条件を基準としたユースケースを説明するための図であり、図5(D)~図5(F)は集合疵に再分類するための条件を基準としたユースケースを説明するための図である。以下、各ケースについて詳細に説明する。
【0046】
(連続疵に再分類するための条件を基準としたユースケース1)
図5(A)に示すように、分類部123は、無害疵1個ずつに対して、ある無害疵(基準の疵)を基準とした特定幅内にて長手方向で最も近い無害疵(Min.〇m、Max.〇m)から順に長手方向位置のバラつきを考慮した距離と同じ間隔で3個以上無害疵が存在した場合に、連続疵に再分類するための条件が満たされたと判定する。
【0047】
(連続疵に再分類するための条件を基準としたユースケース2)
図5(B)に示すように、まず分類部123は、全長を長手方向に粗いメッシュと、特定幅のフープに区切る。次に、分類部123は、各フープ内の無害疵の個数をカウントする。そして、分類部123は、複数個無害疵があるフープを長手方向の区切りを細かくしていき、無害疵が複数個残った場合に、無害疵が複数個残った区切りにおいて連続疵に再分類するための条件が満たされたと判定する。
【0048】
(連続疵に再分類するための条件を基準としたユースケース3)
図5(C)に示すように、まず分類部123は、鋼板の全長を特定幅のフープに区切る。次に、分類部123は、各フープ内の無害疵の個数をカウントする。そして分類部123は、無害疵があるフープのみユースケース1のように判定する。但し、フープをまたぐ無害疵の抜けを防止するために隣接するフープを含めた確認が必要となる。
【0049】
(集合疵に再分類するための条件を基準としたユースケース1)
図5(D)に示すように、まず分類部123は、無害疵1個ずつに対して、その無害疵を中心とした周囲(特定面積)の無害疵の個数をカウントする。そして、分類部123は、無害疵が複数個以上位置している場合に、特定面積内に位置している無害疵が集合疵に再分類するための条件が満たされたと判定する。
【0050】
(集合疵に再分類するための条件を基準としたユースケース2)
図5(E)に示すように、まず分類部123は、鋼板の全長を特定面積のメッシュに区切る。次に、分類部123は、各区画内の無害疵の個数をカウントする。そして、分類部123は、いずれかの区画内で無害疵が複数個以上位置している場合に、その区画内に位置している無害疵が集合疵に再分類するための条件が満たされたと判定する。但し、区切りをまたぐ無害疵の抜けを防止するために周囲の区画を合計した無害疵個数が○個以上といった対策が必要となる。
【0051】
(集合疵に再分類するための条件を基準としたユースケース3)
図5(E)に示すように、まず分類部123は、鋼板を粗いメッシュに区切る。次に、分類部123は、各区画内の無害疵の個数をカウントする。分類部123は、一定の無害疵の個数以上の区画があれば、その区画のみ更に細かいメッシュで無害疵の個数をカウントしていく(繰り返す)。そして、分類部123は、無害疵が複数個以上位置している場合に、区画内に位置している無害疵が集合疵に再分類するための条件が満たされたと判定する。但し、ユースケース2のような抜け防止対策が必要となる。
【0052】
(集合疵に再分類するための条件を基準としたユースケース4)
まず分類部123は、ユースケース3で粗方特定(範囲を限定)した後、その範囲のみケース1のように無害疵1個ずつに対して周囲の無害疵の個数をカウントする。そして、分類部123は、無害疵が複数個以上位置している場合に、特定面積内に位置している無害疵が集合疵に再分類するための条件が満たされたと判定する。
【0053】
(集合疵に再分類するための条件を基準としたユースケース5)
まず分類部123は、ユースケース3で粗方特定(範囲を限定)した後、その範囲のみケース2のように特定面積のメッシュに区切る。次に、分類部123は、各区画内の無害疵の個数をカウントする。そして、分類部123は、いずれかの区画内で無害疵が複数個以上位置している場合に、その区画内に位置している無害疵が集合疵に再分類するための条件が満たされたと判定する。但し、区切りをまたぐ無害疵の抜けを防止するために周囲の区画を合計した無害疵個数が○個以上といった対策が必要となる。
【0054】
分類部123は、再分類条件情報133に従って上記のユースケースのうちいずれのユースケースで、複数の無害疵を有害疵に再分類する。なお、上記のユースケースのうちいずれのユースケースを利用するのかは予め設定されている。分類部123は、満たされた条件によっては、複数のユースケースで同じ無害疵を用いる場合もある。このような状況としては、例えば連続疵の条件を満たした複数の無害疵のうちの少なくとも1つの無害疵が、集合疵の条件を満たした複数の無害疵に含まれる場合である。このような場合、分類部123は、連続疵又は集合疵のいずれかではなく、連続疵と集合疵の両方に再分類する。
【0055】
図6は、第1の実施形態における検査結果表示装置20の機能構成を表す概略ブロック図である。
検査結果表示装置20は、通信部21、制御部22、記憶部23、操作部24、表示部25を備える。
通信部21は、疵検査装置10との間で通信を行う通信インタフェースである。通信部21は、疵検査装置10から送信された疵情報を受信する。
【0056】
制御部22は、少なくともCPU等のプロセッサやメモリを用いて構成される。制御部22は、プログラムを実行することによって、情報記録部221及び表示制御部222として機能する。
情報記録部221は、通信部21によって受信された疵情報を記憶部23に記録する。
表示制御部222は、操作部24を介して入力された指示に応じて、記憶部23に記憶されている情報を用いて表示部25の表示を制御する。
【0057】
記憶部23は、疵情報231及び画面情報232を記憶する。記憶部23は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。
疵情報231は、疵検査装置10から送信された疵情報である。すなわち、疵情報231には、疵の種類、疵の名称、疵のランク、疵の位置及び疵の画像が含まれる。
【0058】
画面情報232は、表示部25に表示するための画面データである。図7は、本実施形態における画面情報232の一例を示す図である。画面情報232は、図7に示すような画面情報を表示部25に表示するための画面データである。ここで、図7に示す画面情報232について説明する。図7に示す画面情報232には、指示入力領域50、疵マップ51及び画像データ表示領域52が含まれる。指示入力領域50は、ユーザが表示情報を操作する際に指示を入力するためのボタンやテキストボックスが表示される領域である。図7に示す例では、指示入力領域50には、表面/裏面切替ボタン、T/B反転ボタン、WS/DS反転ボタン、長さ位置ゼロ調入力用のテキストボックス及びトリム幅入力用のテキストボックスが表示されている。
【0059】
表面/裏面切替ボタンは、表示部25の画面上に表示させる鋼板のオモテ面とウラ面とを切り替える際に使用される。表面/裏面切替ボタンが選択されると、疵マップ51に表示されている鋼板のオモテ面とウラ面とが切り替わる。さらに、画像データ表示領域52に表示される疵の画像データも切り替わる。
【0060】
T/B反転ボタンは、表示部25の画面上に表示させる鋼板のT部とB部とを反転させる際に使用される。ここで、T部とは鋼板の搬送方向の前方部分を表し、B部とは鋼板の搬送方向の後方部分を表す。T/B反転ボタンが選択されると、疵マップ51に表示されている鋼板のT部とB部とが反転する。図7に示す例では、左方向がT部であり、右方向がB部である。図7に示す例の場合にT/B反転ボタンが選択されると、左方向がB部に切り替わり、右方向がT部に切り替わる。これにより、疵マップ51に表示されている鋼板の方向も反転する。
【0061】
WS/DS反転ボタンは、表示部25の画面上に表示させる鋼板のWSとDSとを反転させる際に使用される。ここで、WSとはワークサイドのことであり、人が作業をする方向を表し、DSとはドライブサイドのことであり、装置方向を表す。WS/DS反転ボタンが選択されると、疵マップ51に表示されている鋼板のDSとWSとが反転する。図7に示す例では、上方向がDSであり、下方向がWSである。図7に示す例の場合にWS/DS反転ボタンが選択されると、上方向がWSに切り替わり、下方向がDSに切り替わる。これにより、疵マップ51に表示されている鋼板の向きも切り替わる。
【0062】
長さ位置ゼロ調入力用のテキストボックスは、長さ方向位置を調整する際に使用される。より具体的には、長さ位置ゼロ調入力用のテキストボックスは、鋼板の長さ方向位置を0m(鋼板の先頭位置)に調整する際に使用される。長さ方向位置は、鋼板の長手方向の位置である。長さ位置ゼロ調入力用のテキストボックスに値が入力されることによって、入力された値で特定される長さ方向位置を0mとすることができる。例えば、長さ位置ゼロ調入力用のテキストボックスに100(m)が入力された場合、鋼板の先頭から100mの位置が0mとなる。すなわち、長さ位置ゼロ調入力用のテキストボックスに入力された値で特定される長さ方向位置が基準位置となる。
トリム幅入力用のテキストボックスは、トリム幅を入力する際に使用される。トリム幅は、WS側とDS側のトリム幅を調整することができる。
【0063】
疵マップ51は、鋼板に生じている疵の位置、疵の種類及びランクの情報が表示されるマップである。例えば、疵マップ51には、疵情報に基づいて鋼板上の疵の位置、疵の種類及びランクの情報が表示される。したがって、ユーザは、疵マップ51を参照することによって鋼板の表面のどの位置にどのような疵があるのかを即座に把握することができる。
【0064】
画像データ表示領域52は、疵マップ51に表示されているいずれかの疵に関する画像データが表示される領域である。例えば、画像データ表示領域52には、疵マップ51に表示されている疵のうち、ユーザに選択された疵の画像が表示される。さらに、画像データ表示領域52には、疵の名称、疵の長さ方向の位置及び疵の幅方向の位置の情報も表示される。したがって、ユーザは、画像データ表示領域52を参照することによって鋼板の表面にどのような疵があるのかを画像により把握することができる。
図7に示す画面表示は一例であり、各項目の内容及び各項目の配置はこれに限られない。例えば、一部の項目が別画面で表示されてもよい。
【0065】
図6に戻って、検査結果表示装置20の説明を続ける。
操作部24は、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、タッチパネル、ボタン等の既存の入力装置を用いて構成される。操作部24は、ユーザの指示を検査結果表示装置20に入力する際にユーザによって操作される。例えば、操作部24は、疵情報の表示指示及び表示内容の変更指示の入力を受け付ける。また、操作部24は、入力装置を検査結果表示装置20に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、操作部24は、入力装置においてユーザの入力に応じて生成された入力信号を検査結果表示装置20に入力する。
【0066】
表示部25は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等の画像表示装置である。表示部25は、表示制御部222の制御に応じて、疵情報に基づく情報を表示する。表示部25は、画像表示装置を検査結果表示装置20に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、表示部25は、情報を表示するための映像信号を生成し、自身に接続されている画像表示装置に映像信号を出力する。
【0067】
図8は、第1の実施形態における疵検査システム100の処理の流れを示すシーケンス図である。
画像取得部121は、通信部11を介して第1撮像システム41、第2撮像システム42、第3撮像システム43及び第4撮像システム44のそれぞれから撮像情報を取得する(ステップS101)。画像取得部121は、取得した撮像情報を記憶部13に記憶させる。撮像情報は、第1撮像システム41、第2撮像システム42、第3撮像システム43及び第4撮像システム44毎に時系列順に記憶部13に記憶される。なお、本実施形態では、1つの鋼板の検査が終了するまでの全ての撮像データが記憶部13に記憶されたとする。
【0068】
疵検出部122は、記憶部13に記憶されている撮像情報131を読み出す。ここで、疵検出部122は、記憶部13に記憶されている撮像情報131のうち、ユーザに指定された第1撮像システム41、第2撮像システム42、第3撮像システム43及び第4撮像システム44のいずれかの撮像システムで撮像された撮像データを時系列順に読み出す。疵検出部122は、読み出した撮像データに基づいて疵を判定する(ステップS102)。具体的には、疵検出部122は、撮像データにおける輝度差に基づいて鋼板の表面に生じている疵を検出する。疵検出部122が行う疵の検出方法は、既存の技術であるためより詳細な説明は省略する。
【0069】
疵検出部122は、疵が検出された画像データ(以下「疵画像データ」という。)を分類部123に出力する。分類部123は、疵検出部122から出力された疵画像データと、記憶部13に記憶されている分類用疵情報132とを用いて、疵画像データで検出された疵を無害疵と有害疵とのいずれかに分類する(ステップS103)。具体的には、分類部123は、疵画像データから疵を含む所定の領域(例えば、ROI(Region of Interest))を抽出する。次に、分類部123は、抽出した所定の領域から特徴量を抽出する。分類部123は、抽出した特徴量と、分類用疵情報132に含まれる複数の比較用特徴量それぞれとを比較して類似度を算出する。
【0070】
分類部123は、算出した類似度が所定の閾値(例えば、60%)以上となった比較用特徴量に対応付けられている有害/無害の情報に基づいて撮像データで検出された疵を無害疵と有害疵とのいずれかに分類する。一方、分類部123は、算出した類似度が所定の閾値(例えば、60%)以上となる比較用特徴量がない場合、疵画像データで検出された疵を分類不可と判定する。
【0071】
所定の閾値によっては2つ以上の比較用特徴量の類似度が所定の閾値以上となる場合も想定される。この場合、分類部123は、類似度が最も高い比較用特徴量に対応付けられている有害/無害の情報に基づいて撮像データで検出された疵を無害疵と有害疵とのいずれかに分類してもよい。
疵分類用情報には、有害/無害の情報に対応付けて、疵の種類、サイズ、疵の名称、疵のランク及び疵コードが含まれる。そのため、分類部123は、無害疵又は有害疵の情報の他に、疵の種類、サイズ、疵の名称、疵のランク及び疵コードを取得する。分類部123は、以上の処理を疵画像データ全てに対して行うことによって、疵画像データから検出された疵を無害疵と有害疵とのいずれかに分類する。
【0072】
次に、分類部123は、検出された疵のうち再分類の候補となる疵を再分類する(ステップS104)。再分類の具体的な処理については後述する。分類部123は、各疵の種類、疵の名称、疵のランク、疵のコード、疵の位置及び疵の画像を少なくとも含む疵情報を生成する。分類部123は、生成した疵情報を通信部11に出力する。通信部11は、分類部123から出力された疵情報を検査結果表示装置20に送信する(ステップS105)。
【0073】
通信部21は、疵検査装置10から送信された疵情報を受信する(ステップS106)。通信部21は、受信した疵情報を制御部22に出力する。情報記録部221は、通信部21から出力された疵情報を記憶部23に疵情報231として記憶させる(ステップS107)。表示制御部222は、操作部24を介して入力されたユーザの指示に応じて、疵情報231を表示部25に表示する(ステップS108)。具体的には、表示制御部222は、ユーザから指定された鋼板に対応する疵情報を記憶部23から読み出す。表示制御部222は、読み出した疵情報と、画面情報232とを用いて、図9に示すような画面データを生成し、生成した画面データを表示部25に表示する。
【0074】
図9は、第1の実施形態における表示部25に表示される画面データの一例を示す図である。
図9に示されるように、疵マップ51には疵コード53が示されている。疵コード53は、疵情報に含まれる疵の位置情報に基づく鋼板の位置に表示される。なお、連続疵や集合疵は、1つの疵ではなく複数の疵で構成される。そのため、連続疵や集合疵に対応する疵コード53は、連続疵及び集合疵以外の疵の疵コード53よりも大きく表示される。なお、疵検査装置10によって連続疵と集合疵の両方に再分類された無害疵については、連続疵又は集合疵のいずれかの有害疵として表示される。連続疵又は集合疵のいずれかの有害疵として表示するかは、検査結果表示装置20において優先順位に基づいて決定されてもよいし、ユーザによって設定されてもよい。表示制御部222は、疵コード53を表示する際に、疵コード53を疵のランクに応じた表示態様で表示する。具体的には、表示制御部222は、疵コード53を疵のランクに応じて異なる態様で表示できればどのように表示してもよい。例えば、表示制御部222は、疵のランクに応じて、疵コード53を色分けして表示してもよいし、疵コード53の太さを変更して表示してもよいし、疵コード53の濃度を変更して表示してもよい。これにより、ユーザは、一目で疵の重度を把握することができる。
【0075】
画像データ表示領域52には、1つの疵コード53に対応する画像データ、疵の名称、長さ方向位置及び幅方向位置が表示される。そして、ユーザによって画像データ表示領域52に対するスライド操作が行われると、表示制御部222は現在表示している疵コード53の画像データを他の疵コード53の画像データに切り替えて表示部25に表示する。例えば、表示制御部222は、画像データ表示領域52-1に対するスライド操作(左へのスライド操作)が行われた場合、画像データ表示領域52-1を画像データ表示領域52-2に切り替えて表示部25に表示する。また、表示制御部222は、ユーザの操作に応じて、条取り線54を表示させてもよい。また、表示制御部222は、長さ位置ゼロ調入力用のテキストボックスに値が入力された場合、基準位置を基準にして、疵コード53が表示されている長さ方向位置及び幅方向位置を再度算出する。そして、表示制御部222は、算出した長さ方向位置及び幅方向位置の値を表示部25に表示させる。
【0076】
図10は、第1の実施形態における疵検査装置10が行う疵の再分類処理の流れを示すフローチャートである。
分類部123は、分類不可有害疵があるか否かを判定する(ステップS201)。分類不可有害疵がある場合(ステップS201-YES)、分類部123は分類不可有害疵をいずれかの種類の有害疵に再分類する(ステップS202)。具体的には、分類部123は、分類不可有害疵において、最も類似度が高かった比較用特徴量が特定の種類の疵(例えば、ヘゲ疵、スケール疵及び汚れなど)の比較用特徴量である場合には、分類不可有害疵を特定の種類の疵に再分類する。ここで、特定の種類の疵は、予め設定されている。また、分類部123は、分類不可有害疵の面積が一定の面積以上である場合には、最も類似度が高かった比較用特徴量に対応付けられている有害疵に再分類する。また、分類部123は、BF(Bright Field)で赤外線が透過した場合には有害疵を穴に分類する。なお、分類部123は、分類不可有害疵を不図示の表示装置に表示して、ユーザが決定した有害疵に再分類してもよい。
【0077】
一方、分類不可有害疵がない場合(ステップS201-NO)、又は、ステップS202の処理後、分類部123は再分類の条件を満たす複数の無害疵があるか否かを判定する(ステップS203)。具体的には、まず分類部123は、無害疵と判定した疵が撮像されている複数の撮像データを時系列順に並べる。次に、分類部123は、再分類条件情報133を参照して、並べられた撮像データに撮像されている無害疵が再分類の条件を満たすか否かを判定する。
【0078】
再分類の条件を満たす無害疵が1つもない場合(ステップS203-NO)、分類部123は疵情報再分類処理の終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS204)。疵情報再分類処理の終了条件は、再分類する対象がなくなったことであってもよいし、終了の指示が入浴されたことであってもよい。疵情報再分類処理の終了条件を満たす場合(ステップS204-YES)、分類部123は疵情報再分類処理を終了する。
一方、疵情報再分類処理の終了条件を満たさない場合(ステップS204-NO)、分類部123はステップS203以降の処理を実行する。
【0079】
ステップS203の処理において、再分類の条件を満たす複数の無害疵がある場合(ステップS203-YES)、分類部123は満たされた条件が、連続疵のみの条件であるか、集合疵のみの条件であるか、連続疵と集合疵の両方の条件であるかを判定する。満たされた条件が連続疵と集合疵の両方の条件である場合(ステップS205-連続疵と集合疵の両方)、分類部123は条件を満たす無害疵を連続疵と集合疵の両方に再分類する(ステップS206)。ここで、分類部123は、連続疵の条件を満たす無害疵と、集合疵の条件を満たす無害疵とで重複する無害疵がある場合であっても、条件を満たす無害疵を連続疵と集合疵の両方に再分類する。分類部123は、ステップS204以降の処理を実行する。
【0080】
ステップS205の処理において、満たされた条件が連続疵のみである場合(ステップS205-連続疵のみ)、分類部123は2つ以上の無害疵を連続疵に再分類する(ステップS207)。その後、分類部123は、ステップS204以降の処理を実行する。
ステップS205の処理において、満たされた条件が集合疵のみである場合(ステップS205-集合疵のみ)、分類部123は2つ以上の無害疵を集合疵に再分類する(ステップS208)。その後、分類部123は、ステップS204以降の処理を実行する。
【0081】
以上のように構成された第1の実施形態における疵検査システム100によれば、鋼板の表面が撮像された撮像データから検出された鋼板の表面に生じている複数の疵のそれぞれを、撮像データ内の疵の輝度と形状とサイズとによって得られる特徴量に基づいて有害疵又は無害疵のいずれかに分類し、分類した無害疵のうち複数の無害疵で所定の条件を満たす場合には、所定の条件を満たす複数の無害疵を有害疵に再分類する。これにより、一度は無害疵と判定された疵のうち、条件を満たす無害疵を有害疵に再分類することができる。例えば、単体の疵では製品の品質に影響を与えない疵であっても、周辺に複数の疵が存在する場合には、製品の品質に影響を与えてしまう場合もある。本発明における疵検査システム100では、このような単体の疵では製品の品質に影響を与えない疵であっても、所定の条件を満たす場合には製品の品質に影響を与える疵に分類することができる。そのため、より高精度な疵の検査が可能になる。
【0082】
分類部123は、分類した無害疵のうち、少なくとも無害疵が所定の間隔で複数個連続して生じている場合、又は、所定の領域内に無害疵が複数個位置している場合に、所定の条件を満たすと判定する。これにより、分類部123は、複数の無害疵を連続疵又は集合疵のいずれかに分類することができる。したがって、単体の疵では製品の品質に影響を与えない疵であっても、所定の条件を満たす場合には製品の品質に影響を与える疵に分類することができる。そのため、より高精度な疵の検査が可能になる。
【0083】
分類部123は、有害疵を、少なくとも疵の種類及び疵のサイズに応じて疵の重度を表すランクで分ける。これにより、同じ種類の疵であっても疵の重度で疵を区別することができる。その結果、検査結果表示装置20は、より高精度な疵の情報をユーザに対して提供することができる。そのため、ユーザは、鋼板のどの位置に重度の高い疵が存在するのかを把握することができる。
【0084】
通信部11は、疵情報を検査結果表示装置20に送信する。これにより、簡便な方法で他の装置に対して疵の検査結果を提供することができる。
【0085】
<第1の実施形態における変形例>
分類部123は、連続疵及び集合疵の規模に応じて連続疵及び集合疵をランク分けしてもよい。例えば、分類部123は、連続疵及び集合疵に含まれる無害疵の数で連続疵及び集合疵をランク分けしてもよいし、連続疵及び集合疵に含まれる無害疵のサイズで連続疵及び集合疵をランク分けしてもよい。
このように構成されることによって、検査結果表示装置20において連続疵及び集合疵においてもランクに応じた表示態様で表示が可能になる。
【0086】
分類部123は、鋼板が搬送されている検査中において、無害疵が再分類の条件を満たすか否かを判定してもよい。このように構成される場合、まず分類部123は、無害疵が発見されると、無害疵が発見された位置を基準として、その時刻より前にさかのぼった時刻に撮像された撮像データを確認する。次に、分類部123は、さかのぼった時刻に撮像された撮像データ(例えば、画像1枚分さかのぼった時刻に撮像された撮像データ)を参照し、無害疵の有無を判定する。分類部123は、無害疵を発見する度にこの処理を繰り返し実行し、無害疵が再分類の条件を満たすか否かを判定する。そして、分類部123は、無害疵が再分類の条件を満たす場合には再分類を行う。
【0087】
例えば、分類部123が、時刻tに撮像された撮像データに撮像されている疵を無害疵に分類したとする。この場合、分類部123は、再分類の条件を満たすか否かを判定する。再分類の条件を満たさない場合、分類部123は、時刻t-1に撮像された撮像データを用いて、無害疵の有無を判定する。時刻t-1に撮像された撮像データに無害疵がある場合、分類部123は再分類の条件を満たすか否かを判定する。再分類の条件を満たさない場合、分類部123は、時刻t-2に撮像された撮像データを用いて、無害疵の有無を判定する。分類部123は、この処理を無害疵が発見されてから所定の回数だけ繰り返し実行する。所定の回数だけ繰り返し実行すると、分類部123はこの処理を終了する。
【0088】
上記の実施形態では、疵検査装置10が、疵情報のみを検査結果表示装置20に送信する構成を示した。しかしながら、一般的には検査対象となる鋼板には、鋼板の注文に関する情報(以下「注文情報」という。)が対応付けられている。そこで、検査結果表示装置20でどの顧客から注文された鋼板であるのかを表示可能に、疵検査装置10が、疵情報と、注文情報とを対応付けて検査結果表示装置20に送信するように構成されてもよい。ここで、注文情報には、検査対象となる鋼板で構成するコイルの識別情報と、顧客に関する情報(例えば、顧客の会社名、住所等)が含まれる。このように構成される場合、検査結果表示装置20は、疵検査装置10から送信された疵情報の他に、注文情報を合わせて表示する。
このように構成されることによって、検査結果表示装置20を見たユーザは、一目でどの顧客のコイルであるのかを把握することができる。
【0089】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、疵検査装置が、鋼板が使用される用途を加味して再分類を行う構成について説明する。
図11は、第2の実施形態における疵検査装置10aの機能構成を表す概略ブロック図である。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。
疵検査装置10aは、通信部11、制御部12a及び記憶部13aを備える。
制御部12aは、少なくともCPUやGPU等のプロセッサと、メモリとを用いて構成される。制御部12aは、プログラムを実行することによって、画像取得部121、疵検出部122及び分類部123aとして機能する。
【0090】
分類部123aは、疵検出部122により疵が検出された撮像データと、疵分類用情報と、外部から入力される用途情報とを用いて、撮像データから検出された疵を無害疵と有害疵とのいずれかに分類する。用途情報は、検査対象の鋼板が使用される用途を示す情報である。検査対象の鋼板が使用される用途としては、例えば、人の目に触れる箇所に使用される場合や人の目に触れづらい箇所に使用される場合が想定される。人の目に触れる箇所に使用される場合には、見た目が非常に重要視される。一方で、人の目に触れづらい箇所に使用される場合には、見た目よりも機能が非常に重要視される。そのため、人の目に触れる箇所に使用される場合には、人の目に触れづらい箇所に使用される場合に比べて、疵に対してより厳密な分類が必要となる。
【0091】
例えば、人の目に触れる箇所に使用される場合には、人の目に触れづらい箇所に使用される場合では無害疵とみなされる疵であっても、有害疵となる可能性がある。そこで、分類部123aは、撮像データと、疵分類用情報とに基づいて特定される疵を、用途に応じて無害疵と有害疵とのいずれかに分類する。ここで、人の目に触れる箇所に使用される場合の用途としては、例えば、製品(例えば、冷蔵庫や車両等)の外郭に使用されることが想定される。人の目に触れづらい箇所に使用される場合の用途としては、例えば、室内機と室外機とを接続するパイプ等に使用されることが想定される。さらに、分類部123aは、第1の実施形態と同様に、検出された疵のうち再分類の候補となる疵を再分類する。
【0092】
記憶部13aは、撮像情報131、分類用疵情報132a、再分類条件情報133及び用途別分類情報134を記憶する。記憶部13aは、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。
分類用疵情報132aは、分類部123aが疵の分類に用いる分類用の疵情報である。第2の実施形態において分類用疵情報132aは、疵の名称と疵のサイズの組み合わせ毎に、疵の名称、疵のランク、疵コード及び特徴量が対応付けられた情報である。すなわち、第2の実施形態における分類用疵情報132aには、疵の名称と疵のサイズの組み合わせ毎に有害/無害の情報が含まれなくてもよい。
【0093】
用途別分類情報134は、疵の名称と鋼板の用途との組み合わせ毎に、有害又は無害の情報が対応付けられた情報である。用途別分類情報134は、例えば、図12に示すようにテーブル形式で記憶部13aに記憶されている。
【0094】
図12は、第2の実施形態における用途別分類情報134の一例を示す図である。
図12に示すように、用途別分類情報134には、疵の名称と鋼板の用途との組み合わせ毎に、有害又は無害の情報が示されている。鋼板の用途として、人の目に触れる箇所に使用される場合と人の目に触れづらい箇所に使用される場合とがある。図12では、人の目に触れる箇所に使用される場合と人の目に触れづらい箇所に使用される場合とでさらに2つの用途に分類されている。例えば、人の目に触れる箇所に使用される場合ではAとBの2つの用途に分類され、人の目に触れづらい箇所に使用される場合ではCとDの2つの用途に分類される。ここで、A⇒B⇒C⇒Dの順に、疵に対する要求が厳しくない用途であることを示す。すなわち、鋼板の用途として、人の目に触れる箇所に使用される場合で、かつ、Aの用途の場合には、最も疵に対する要求が厳しい用途に使用されることを表す。鋼板の用途として、人の目に触れづらい箇所に使用される場合で、かつ、Dの用途の場合には、最も疵に対する要求が厳しくない用途に使用されることを表す。これらの分類は、ユーザによって自由に決定されればよい。なお、人の目に触れる箇所に使用される場合の用途や人の目に触れづらい箇所に使用される場合の用途については分類の数に制限はなく、適宜設定されてもよい。
【0095】
図12に示す例では、分類部123aによって特定された疵の名称が“ヘゲ疵1”の場合には、鋼板が“A”~“D”のいずれの用途に使用される場合であっても、“ヘゲ疵1”が“有害疵”に分類されることが示されている。図12に示す例では、分類部123aによって特定された疵の名称が“ヘゲ疵2”の場合には、鋼板が“A”、“B”及び“D”のいずれかの用途に使用される場合には“ヘゲ疵2”が“有害疵”に分類され、鋼板が“C”の用途に使用される場合には“ヘゲ疵2”が“無害疵”に分類されることが示されている。このように、第2の実施形態における分類部123aは、鋼板が使用される用途を加味して疵の分類を行う。
【0096】
図13は、第2の実施形態におけるにおける疵検査システム100の処理の流れを示すシーケンス図である。図13において、図8と同様の処理においては図8と同様の符号を付して説明を省略する。
分類部123aは、外部から入力される用途の情報を取得する(ステップS201)。用途の情報は、鋼板の検査を行うユーザが、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置を操作して疵検査装置10aに入力してもよいし、疵検査装置10aに対して直接入力してもよい。分類部123aは、例えば、用途の情報として図12に示す“A”~“D”のいずれかの情報を取得する。分類部123aは、取得した用途の情報を一時的に保持する。その後、ステップS101及びステップS102の処理が実行される。
【0097】
分類部123aは、疵検出部122から出力された疵画像データと、記憶部13に記憶されている分類用疵情報132a及び用途別分類情報134とを用いて、疵画像データで検出された疵を無害疵と有害疵とのいずれかに分類する(ステップS202)。具体的には、まず分類部123aは、疵画像データから疵を含む所定の領域(例えば、ROI(Region of Interest))を抽出する。次に、分類部123aは、抽出した所定の領域から特徴量を抽出する。分類部123aは、抽出した特徴量と、分類用疵情報132aに含まれる複数の比較用特徴量それぞれとを比較して類似度を算出する。
【0098】
分類部123aは、算出した類似度が所定の閾値(例えば、60%)以上となった比較用特徴量に対応付けられている疵の名称の情報を取得する。なお、分類部123aは、算出した類似度が所定の閾値(例えば、60%)以上となる比較用特徴量がない場合、疵画像データで検出された疵を分類不可と判定する。所定の閾値によっては2つ以上の比較用特徴量の類似度が所定の閾値以上となる場合も想定される。この場合、分類部123aは、類似度が最も高い比較用特徴量に対応付けられている疵の名称の情報を取得してもよい。
【0099】
次に、分類部123aは、用途別分類情報134を参照して、取得した疵の名称の情報と、保持している用途の情報との関係により、撮像データで検出された疵を無害疵と有害疵とのいずれかに分類する。例えば、取得した疵の名称の情報が“ヘゲ疵1”を示しており、用途の情報が“C”を示している場合、分類部123aは撮像データで検出された疵を有害疵に分類する。例えば、取得した疵の名称の情報が“ヘゲ疵2”を示しており、用途の情報が“C”を示している場合、分類部123aは撮像データで検出された疵を無害疵に分類する。その後、分類部123aは、ステップS104の処理により、検出された疵のうち再分類の候補となる疵を再分類する。
【0100】
分類部123aは、各疵の種類、疵の名称、疵のランク、疵のコード、疵の位置及び疵の画像を少なくとも含む疵情報を生成する。分類部123aは、生成した疵情報と、用途の情報とを通信部11に出力する。通信部11は、分類部123から出力された疵情報と、用途の情報とを検査結果表示装置20に送信する(ステップS203)。
【0101】
通信部21は、疵検査装置10aから送信された疵情報と、用途の情報とを受信する(ステップS204)。通信部21は、受信した疵情報と、用途の情報とを制御部22に出力する。情報記録部221は、通信部21から出力された疵情報を記憶部23に疵情報231として記憶させる(ステップS205)。ここで、情報記録部221は、用途の情報を疵情報に対応付けて記憶部23に疵情報231として記憶させてもよい。表示制御部222は、操作部24を介して入力されたユーザの指示に応じて、疵情報231を表示部25に表示する(ステップS206)。具体的には、表示制御部222は、ユーザから指定された鋼板に対応する疵情報を記憶部23から読み出す。表示制御部222は、読み出した疵情報と、画面情報232とを用いて、図9に示すような画面データを生成し、生成した画面データを表示部25に表示する。この際、表示制御部222は、図9に示す画面データに、用途の情報を表示させてもよい。
【0102】
以上のように構成された第2の実施形態における疵検査システム100によれば、鋼板の用途を加味して鋼板の表面に生じている複数の疵のそれぞれを有害疵又は無害疵のいずれかに分類することができる。第1の実施形態では、用途によらず同じ疵の場合には、同一の分類がなされる。これでは、疵に対して厳格ではない用途では使用できても、疵に対して厳格な用途では使用できない場合もある。それに対して、第2の実施形態における疵検査システム100では、同じ疵であっても、用途によっては有害疵に分類し、別の用途では無害疵に分類することができる。これにより、用途に応じた分類が可能になる。そのため、より高精度な疵の検査が可能になる。
【0103】
<第2の実施形態における変形例>
第2の実施形態は、第1の実施形態と同様に変形されてもよい。
【0104】
上述した実施形態における疵検査装置10及び検査結果表示装置20をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0105】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0106】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0107】
10、10a…疵検査装置, 20…検査結果表示装置, 30…ネットワーク, 41…第1撮像システム, 42…第2撮像システム, 43…第3撮像システム, 44…第4撮像システム, 11…通信部, 12、12a…制御部, 121…画像取得部, 122…疵検出部, 123、123a…分類部, 13、13a…記憶部, 21…通信部, 22…制御部, 221…情報記録部, 222…表示制御部, 23…記憶部, 24…操作部, 25…表示部
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