(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20240531BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240531BHJP
B41J 2/335 20060101ALI20240531BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
G03F9/00 Z
G03F7/20 501
B41J2/335 101H
H01L21/302 105A
(21)【出願番号】P 2020079164
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】竹田 裕史
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114057(JP,A)
【文献】特開2012-059959(JP,A)
【文献】特開平10-284704(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158643(WO,A1)
【文献】特開2011-107348(JP,A)
【文献】特開平04-091962(JP,A)
【文献】特開平09-281360(JP,A)
【文献】特開平09-162102(JP,A)
【文献】特開2001-015814(JP,A)
【文献】特開昭62-019856(JP,A)
【文献】米国特許第06046758(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 9/00
G03F 7/20
B41J 2/335
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルプリントヘッドの製造方法であって、
一方の面が所定の結晶方位を有する半導体基板を提供する工程と、
前記一方の面にハードマスクを形成し、前記ハードマスクは前記一方の面に形成する凸部と、第1アライメントマークと、サーマルプリントヘッドに相当する各凸部に形成する第2アライメントマークとを画定する工程と、
前記ハードマスクを形成した前記一方の面を異方性エッチングして前記凸部、前記第1アライメントマーク及び第2アライメントマークを形成し、前記凸部は前記一方の面を頂面として両側から第1傾斜面に挟まれて形成された工程と、
前記一方の面から前記ハードマスクを除去する工程と、
フォトリソグラフィーにより前記凸部に発熱体を形成する工程と、
前記半導体基板を個辺化することによって前記サーマルプリントヘッドに使用されるヘッド基板を作製する工程と、
前記ヘッド基板を使用してサーマルプリントヘッドを組立てる工程とを含み、
前記発熱体を形成する工程では、前記第1アライメントマークをフォトリソグラフィーの位置合わせに用い、前記ヘッド基板を作製する工程と
、前記サーマルプリントヘッドを組立てる工程
とにおいて前記第2アライメントマークを位置合わせに用い
、前記第2アライメントマークのためのマスクパターンは、二重丸の同心円状の各円周に沿って所定の径の開口を並べて形成された方法。
【請求項2】
前記ハードマスクを除去する工程の後であって前記発熱体を形成する工程の前に、前記一方の面をさらに異方性エッチングする第2異方性エッチングの工程をさらに含み、前記第2異方性エッチングによって前記頂面と前記第1傾斜面との間に第2傾斜面が形成され、前記発熱体を形成する工程では、フォトリソグラフィーにより前記頂面又は前記第2傾斜面に発熱体を形成する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1アライメントマー
クのためのマスクパターンは、二重丸の同心円状の各円周に沿って所定の径の開口を並べて形成された請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の径の開口は、15μm以下の径である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記異方性エッチングの工程は、前記二重丸の同心円状の各円周に沿って所定の径の窪みが並んだアライメントマークを形成する請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2異方性エッチングは、前記二重丸の各円周に沿って並んだ窪みの径を拡大させて、前記二重丸の各円周に囲まれて形成された円周の径方向の幅を調整する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記調整された前記二重丸の各円周に囲まれて形成された円周の径方向の幅は、10から30μmである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記二重丸の各円周を形成する窪みは、10μm以下の深さを有する請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記半導体基板は、シリコンで構成された請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記所定の結晶方位は、<100>である請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サーマルプリントヘッド及びその製造方法並びにサーマルプリンタに関し、詳しくは、半導体基板に異方性エッチングにより形成された凸部に発熱体が設けられてなるサーマルプリントヘッド及びその製造方法並びにサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンのような半導体による基板に異方性エッチングにより凸部が形成され、この凸部に発熱体が設けられたサーマルプリントヘッドが提供されている(引用文献1を参照)。このようなサーマルプリントヘッドにおいては、所定の結晶方位を有する基板の一方の面に凸部のパターンを画定するハードマスクが形成されて異方性エッチングが施されることにより、前記一方の面に平行な主面と、主面から盛り上がり、両側から傾斜面で挟まれて前記一方の面を頂面とする凸部とが形成されている。主面及び凸部の形成に続けて、フォトリソグラフィーによって主面及び凸部に発熱抵抗体層や配線層が形成される。
【0003】
フォトリソグラフィーの工程では、主面及び凸部にフォトレジストが塗布され、フォトマスクが基板に形成されたアライメントマークを用いて位置合わせされ、露光及び現像によりフォトマスクのパターンがフォトレジストに転写され、エッチングによりパターンが形成されるサイクルが繰り返される。
【0004】
一方、同一基板上に一体に形成された発熱抵抗体と駆動回路部の境界部に目印が設けられ、発熱抵抗体又は駆動回路部に不良があると境界部の目印で基板が切断されて不良品が取り除かれ、良品の発熱抵抗体又は駆動回路部と組み合わされて薄膜サーマルヘッドが作製される技術が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-114057号公報
【文献】実昭62-194047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
異方性エッチングにより主面及び凸部が形成された基板は、フォトリソグラフィーによって凸部に発熱体が形成されるが、フォトリソグラフィーを開始する際に、位置合わせのためのアライメントマークを形成する必要があった。
【0007】
この発明は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、半導体基板に異方性エッチングにより形成された凸部に発熱体が設けられたサーマルプリントヘッド及びその製造方法並びにサーマルプリンタであって、発熱体を形成するためのフォトリソグラフィーを開始する際に基板にアライメントマークを形成する必要がないようなサーマルプリントヘッド及び製造方法並びにサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、この出願に係るサーマルプリントヘッドの製造方法は、一方の面が所定の結晶方位を有する半導体基板を提供する工程と、一方の面にハードマスクを形成し、ハードマスクは一方の面に形成する凸部及びアライメントマークを画定する工程と、ハードマスクを形成した一方の面を異方性エッチングして凸部及びアライメントマークを形成し、凸部は一方の面を頂面として両側から第1傾斜面に挟まれて形成された工程と、一方の面からハードマスクを除去する工程と、フォトリソグラフィーにより凸部に発熱体を形成する工程とを含み、発熱体を形成する工程では、アライメントマークをフォトリソグラフィーの位置合わせに用いるものである。
【0009】
また、この出願に係るサーマルプリントヘッドの製造方法は、一方の面が所定の結晶方位を有する半導体基板を提供する工程と、一方の面にハードマスクを形成し、ハードマスクは一方の面に形成する凸部及びアライメントマークを画定する工程と、ハードマスクを形成した一方の面を異方性エッチングして凸部及びアライメントマークを形成し、凸部は一方の面を頂面として両側から第1傾斜面に挟まれて形成された工程と、一方の面からハードマスクを除去する工程と、フォトリソグラフィーにより凸部に発熱体を形成する工程と、半導体基板を個辺化することによってサーマルプリントヘッドに使用されるヘッド基板を作製する工程と、ヘッド基板を使用してサーマルプリントヘッドを組立てる工程とを含み、ヘッド基板を作製する工程とサーマルプリントヘッドを組立てる工程との少なくとも一方においてアライメントマークを位置合わせに用いるものである。
【0010】
ハードマスクを除去する工程の後であって発熱体を形成する工程の前に、凸部及びアライメントマークが形成された一方の面をさらに異方性エッチングする工程をさらに含み、この第2異方性エッチングによって頂面と第1傾斜面との間に第2傾斜面が形成され、発熱体を形成する工程では、フォトリソグラフィーにより頂面又は第2傾斜面に発熱体を形成してもよい。
【0011】
アライメントマークのためのマスクパターンは、二重丸の同心円状の各円周に沿って所定の径の開口を並べて形成されてもよい。所定の径の開口は、15μm以下の径であってもよい。
【0012】
異方性エッチングの工程は、二重丸の同心円状の各円周に沿って所定の径の窪みが並んだアライメントマークを形成してもよい。第2異方性エッチングは、二重丸の各円周に沿って並んだ窪みの径を拡大させて、二重丸の各円周に囲まれて形成された円周の径方向の幅を調整してもよい。
【0013】
調整された二重丸の各円周に囲まれて形成された円周の径方向の幅は、10から30μmであってもよい。二重丸の各円周を形成する窪みは、10μm以下の深さを有してもよい。
【0014】
半導体基板は、シリコンで構成されてもよい。所定の結晶方位は、<100>であってもよい。
【0015】
この出願に係るサーマルプリントヘッドは、一方の面が所定の結晶方位を有する半導体からなり主面を有するヘッド基板と、主面において主面から突出して形成され、頂面と頂面を挟む1対の傾斜面とを有する凸部と、頂面と傾斜面とのうち少なくともいずれか一方に形成された複数の発熱体と、複数の発熱体にそれぞれ電流を流す配線と、主面と頂面との少なくとも一方において半導体がエッチングされたアライメントマークとを含むものである。
【0016】
この出願に係るサーマルプリンタは、複数の発熱体に対向して配置されたプラテンと、サーマルプリントヘッドとを含むものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明によると、異方性エッチングにより凸部を形成する工程を終えた基板には、アライメントマークが形成されている。したがって、発熱体を形成するフォトリソグラフィーの工程を開始する際にアライメントマークを形成する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施の形態のサーマルプリントヘッドを示す上面図である。
【
図2】本実施の形態のサーマルプリントヘッドの一部分を示す部分断面図である。
【
図3】本実施のサーマルプリントヘッドの製造方法のプロセスフローを示す部分断面図である。
【
図4】本実施のサーマルプリントヘッドの製造方法のプロセスフローを示す部分断面図である。
【
図5】凸部を形成するプロセスフローを示す上面図である。
【
図6】凸部を形成するプロセスフローを示す上面図である。
【
図7】凸部を形成するプロセスフローを示す断面図である。
【
図8】アライメントマークのマスクパターンである。
【
図11】本実施のサーマルプリントヘッドの製造方法のプロセスフローを示す部分断面図である。
【
図12】本実施のサーマルプリントヘッドの製造方法のプロセスフローを示す断面図である。
【
図13】フォトレジストを塗布したアライメントマークを露光機カメラで撮影した画像である。
【
図18】第1変形例のサーマルプリントヘッドの製造方法を示す図である。
【
図19】第1変形例のサーマルプリントヘッドを示す上面図である。
【
図20】第2変形例のサーマルプリントヘッドの製造方法のプロセスフローを示す部分断面図である。
【
図21】第2変形例のサーマルプリントヘッドの一部分を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、サーマルプリントヘッド及びその製造方法並びにサーマルプリンタについて、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明で使用される図面は、いずれも模式的に描かれている。これらの図面は、理解を容易にするために適宜省略され、適宜誇張されて描かれている場合がある。図面におけるどちら側かについて説明する場合には、図面中の符号が正立するように図面を置いて図面を見るものとする。
【0020】
図1は、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10の上面図である。
図2は、
図1の切断線II-IIに示す切断線に沿った本実施の形態のサーマルプリントヘッド10の部分断面図である。本実施の形態のサーマルプリントヘッド10は、後述する一連のプロセスフローによって作製されたものである。サーマルプリントヘッド10の長手方向が、印字幅に対応する方向で、ヘッド基板11が有する複数の発熱部16(後述)が沿って並ぶ方向である。この長手方向は主走査方向とよばれる。サーマルプリントヘッド10の短手方向が、印字媒体102(例えば感熱紙など)が供給される方向(送り方向:
図2に示された矢印を参照)に相当する。この短手方向は副走査方向とよばれる。印字媒体102の供給元の側(
図1では下側、
図2では左側)を「上流側」とよぶ。印字媒体102の排出側(
図1では上側、
図2では右側)を「下流側」とよぶ。
【0021】
サーマルプリントヘッド10は放熱板51を有する。放熱板51はヘッド基板11が取り付けられる固定部材である。放熱板51は金属板(例えば、アルミニウム板、鋼板まど)によって構成される。放熱板51には、位置合わせ穴52、ねじ穴(図示なし)が形成される。
【0022】
サーマルプリントヘッド10は、サーマルプリンタ110に含まれる取付部材(図示なし)に、ねじ穴を使用するねじ止めなどによって固定される。サーマルプリンタ110は、ローラ状のプラテン101を有する。プラテン101は、サーマルプリントヘッド10の主走査方向に沿って延び、複数の発熱部16(後述)に対向して配置される。サーマルプリンタ110が使用される際には、プラテン101と複数の発熱部16との間に印字媒体102が配置され、印字媒体102が複数の発熱部16に接するようにして移動する。印字媒体102は上流側から下流側に移動する。ローラ状のプラテン101に代えて、平坦なプラテン(大きな曲率半径の曲面を有するプラテンを含む)を使用してもよい。
【0023】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド10に使用されるヘッド基板11は、シリコンのような半導体による基板31(後述)を原材料として形成されている。言い換えれば、基板31はシリコンウェハーである。基板31には、適切な不純物がドープされていてもよい。ヘッド基板11は基板31を加工して得られ、ヘッド基板11の平坦な主面11aには、異方性エッチングによって凸部11bが形成されている。凸部11bは、主面11aから盛り上がった凸部11bを両側から挟む第1傾斜面11cと、第1傾斜面11cの上縁に連なる第1傾斜面11cより傾斜が緩やかな第2傾斜面11dと、第2傾斜面11dの上縁によって両側から挟まれて画定される主面11aに平行な頂面11eとから形成されている。主面11aは、凸部11bによって、一方の側の第1領域11fと、第1領域11fより狭い他方の側の第2領域11gとに区分されている。
【0024】
主面11a及び凸部11bは、酸化シリコンなどの絶縁体によって構成された絶縁層12によって覆われている。絶縁層12上には、窒化タンタルなどによって構成された抵抗体層13が凸部11bを横切るように形成されている。抵抗体層13は、凸部11bの頂面11eに形成された複数の発熱部16において抵抗体層13が露出するように、銅やチタンなどの金属によって構成された配線層14によって覆われている。複数の発熱部16は、それぞれ独立した抵抗体層13が発熱体となり、凸部11bの頂面11eにおいて主走査方向に並んで形成される。複数の発熱部16は、それぞれ独立した配線層14からなる配線に接続される。絶縁層12、抵抗体層13及び配線層14は、窒化ケイ素のような絶縁体で構成された保護層15によって覆われている。
【0025】
配線層14は、複数の発熱部16のそれぞれに対して、上流側(
図2の左側)において1本、下流側(
図2の右側)において1本、それぞれ接続される。下流側における配線層14は、互いに接続されて共通配線(図示なし)を形成する。共通配線は、主走査方向(
図1における左右方向)に沿って延び、ヘッド基板11の左右両端において副走査方向の上流側(
図1における下方向)に向かって延び、コネクタが有する外部端子(いずれも図示なし)のうちの電源端子に接続される。下流側(
図1の上側、
図2の右側)における配線層14には、電源端子から所定の正電圧が印加される。
【0026】
主面11aの第1領域11fには発熱部16への電流の供給を制御して発熱部16を駆動するドライバIC20が搭載されている。ドライバIC20は、底部の端子19によって保護層15上に形成されたパッド18に接続している。パッド18は、保護層15を貫いて配線層14まで達するビア17に接続している。
【0027】
以下、ある1個の発熱部16が発熱する過程を説明する。ドライバIC20の出力側(
図2の右側)に存在する配線層14に含まれる複数の端子19(複数の発熱部16のそれぞれに対応する)が0Vまたは上述した所定の正電圧になるように、ドライバIC20がスイッチング動作を行う。ドライバIC20の出力側に位置する1個の端子19が0Vになった場合に、その端子19に対応する1個の発熱部16に、共通配線(図示なし)を経由して電流が流れる。その電流は、0Vになった1個の端子19に流れる。これらによって、その1個の発熱部16が発熱して、印字媒体102の上に1つの点(1dot)が印字される。
【0028】
主面11aに搭載されたドライバIC20を覆うように、主面11aの第1領域11fにはエポキシ樹脂などの樹脂による樹脂層21が形成されている。樹脂層21は、ドライバIC20と、パッド18および端子19を含む電気的接続部とを保護する。
【0029】
図3及び
図4は、本実施の形態のサーマルプリントヘッドの製造方法のプロセスフローを示す部分断面図である。最初に、
図3に示すように、一方の面11kを<100>面とする基板31が提供される。次に、
図4に示すように、基板31の一方の面11kに異方性エッチングが施され、一方の面11kが所定の深さまで掘り下げられ、一方の面11kに平行な主面11aが形成される。同時に、一方の面11kが残され、主面11aから一方の面11kの高さまで盛り上がった凸部11bが形成される。凸部11bは、主面11aから盛り上がった凸部11bを両側から挟む第1傾斜面11cと、第1傾斜面11cの上縁に連なる第1傾斜面11cより傾斜が緩やかな第2傾斜面11dと、第2傾斜面11dの上縁によって両側から挟まれて画定される主面11aに平行な頂面11eとから形成されている。異方性エッチングには、水酸化カリウム又は水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水溶液などを使用してもよい。
【0030】
図5及び
図6は、凸部を形成するプロセスフローを示す上面図である。
図7は、凸部を形成するプロセスフローを示す断面図である。
図5から
図7は、凸部11bを形成するプロセスフローを説明するため、基板31を構成するウェハーの全体を示している。
【0031】
最初に、
図5(a)の上面図及び
図7(a)の断面図に示すように、基板31を提供する。
図5(a)の上面図には、円板状の基板31において、<100>面である一方の面31aと、結晶軸の方向を示すノッチ31bとが示されている。
図7(a)の断面図は、
図5(a)の上面図における切断線VII(a)-VII(a)に沿う断面に相当している。基板31は、
図2に示したヘッド基板11に相当する領域を複数個含む。
図5(a)において仮想線(2点鎖線)によって区切られた4個の横長の長方形、及び
図7(a)において仮想線によって区切られた部分のそれぞれが、1個のヘッド基板11に相当する単位領域37である。
【0032】
1個の単位領域37に相当する1個のヘッド基板11(
図2参照)の大きさは特に限定されない。例えば、ヘッド基板11の厚さは、625μm、725μmまたは775μmである。主走査方向の寸法は、25mm以上150mm以下である。副走査方向の寸法は、1.0mm以上5.0mm以下である。
【0033】
図5(b)の上面図及び
図7(b)の断面図は、提供された基板31にハードマスク32を形成したものである。ハードマスク32は、例えばスピンコーターを使用して塗布された感光性レジストを対象にして、フォトリソグラフィーによって形成される。基板31をエッチングする部分には、ハードマスク32に開口32aが形成されている。なお、
図7(b)の断面図は、
図5(b)の上面図における切断線VII(b)-VII(b)に沿う断面に相当している。
【0034】
また、ハードマスク32には、アライメントマークのマスクパターン35が形成されている。アライメントマークのマスクパターン35は、円板状の基板31の一方の面31a内でノッチ31bを通る直径と直交する直径上にあって、この直径が一方の面31aの周と交わる2点の近く(
図5(b)では左右方向の直径における両端の近く)に設けられている。
【0035】
図5(b)及び
図6においては、1個のヘッド基板11(
図2参照)に対応する1個の単位領域37に、上方向または下方向に沿って隣接する1個の単位領域37をまたいで1個の開口32aが配置される。4個の単位領域37が図の上下方向に沿って隣接して配置される。5個の開口32aのうち隣り合う2個の開口32aによって挟まれて延びるハードマスク32が形成された部分が、1個の単位領域37に含まれる。このハードマスク32が形成された部分が、各ヘッド基板11の凸部11b(
図2参照)に対応する(
図7(b)~(e)参照)。
【0036】
図5(b)及び
図6に示された複数個の単位領域37の配置に限らず、複数個の単位領域37が図の上下方向に沿って隣接して配置され、かつ、複数個の単位領域37が図の左右方向に沿って隣接して配置されてもよい。これらの配置により、複数個の単位領域37が離間して図の上下方向に沿ってまたは図の左右方向に沿って離間して配置される場合に比較して、ヘッド基板11の取れ数を増やすことができる。この構成によれば、1枚の基板31において、複数個の単位領域37が格子状に配置される範囲が生じる。
【0037】
図8は、アライメントマークのマスクパターン35を示す上面図である。アライメントマークのマスクパターン35は、二重丸の同心円状の各円周に沿って所定の間隔で配置された所定の径の円形の開口で形成されている。このマスクパターン35は、例えば50μmから350μmの径を有していてもよい。また、開口の径は、15μm以下であってもよい。
【0038】
図7(c)の断面図は、
図5(b)の上面図及び
図7(b)の断面図に示した基板31に一回目の第1異方性エッチングを施したものである。第1異方性エッチングにより、ハードマスク32の開口32aには溝33が形成される。溝33の底部には、一方の面31aに平行な主面41が形成される。隣接する溝33の間には、第1傾斜面42によって両側から挟まれた凸部44が形成される。
【0039】
図6(a)の上面図及び
図7(d)の断面図は、第1異方性エッチングを施した基板31からハードマスク32を取り除いたものである。凸部44には、凸部44を両側から挟む第1傾斜面42の上縁によって画定される頂面48が形成され、第1傾斜面42と頂面48とはエッジを形成している。なお、
図7(d)の断面図は、
図6(a)の上面図における切断線VII(d)-VII(d)に沿う断面に相当している。
【0040】
また、基板31の一方の面31aであってハードマスク32に形成されていたアライメントマークのマスクパターン35の直下には、アライメントマーク45が形成されている。アライメントマーク45は、二重丸の同心円状の各円周に沿って所定の間隔で配置された所定の径の周が円形の窪みによって形成されている。
【0041】
図6(b)の上面図及び
図7(e)の断面図は、二回目の第2異方性エッチングを施した基板31を示すものである。第2異方性エッチングにより、基板31の凸部44において第1傾斜面42と頂面48とが形成していたエッジが削られ、第1傾斜面42と頂面48との間に第1傾斜面42よりも緩やかな傾斜を有する第2傾斜面43が形成される。凸部44の頂面48は、両側から挟んでいる第2傾斜面43の上縁によって画定されている。なお、
図7(e)の断面図は、
図6(b)の上面図における切断線VII(e)-VII(e)に沿う断面に相当している。
【0042】
また、基板31の一方の面31aに形成されたアライメントマーク45の窪みも、第2異方性エッチングにより拡大する。それぞれの窪みは、基板31の一方の面31aの結晶方位に従って異方的にエッチングされ、略正方形の周を有するようになる。
【0043】
図9は、基板31の一方の面31aに形成された凸部44の断面を示す顕微鏡写真である。この顕微鏡写真では、凸部44が、一方の面31aに形成された主面41から盛り上がった凸部44を両側から挟む第1傾斜面42と、第1傾斜面42の上縁に連なる第1傾斜面42より傾斜が緩やかな第2傾斜面43と、第2傾斜面43の上縁によって両側から挟まれて画定される主面41に平行な頂面48とから形成されていることが見られる。凸部44の高さ、すなわち、主面41から凸部44の頂面48までの高さhは、150μmから200μmまでの範囲にあってもよい。
図2に示された凸部11b及び
図7(e)に示された凸部44の底面における幅寸法(
図2の左右方向の寸法)は、例えば380μm以上500μm以下である。凸部44の頂面48における幅寸法(
図2の左右方向の寸法)は、例えば50μm以上150μm以下である。
【0044】
図10は、第2異方性エッチング後に基板31の一方の面31aに形成されたアライメントマーク45の顕微鏡写真である。
図10(a)はアライメントマーク45の真上から撮影した顕微鏡写真であり、
図10(b)はアライメントマーク45の斜め上から撮影した顕微鏡写真である。これらの顕微鏡写真は、レーザー顕微鏡によって撮影したものである。
【0045】
アライメントマーク45においては、二重丸の同心円状の各円周に沿って所定の間隔で略正方形の周を有する窪みが連なって溝を形成していることが見られる。溝は二重丸の同心円状の各円周に沿って二重に形成され、二重の溝に挟まれた円周状の頂部が形成される。アライメントマーク45においては、この頂部によって形成される円周がマークパターンを形成している。ここで、頂部によって形成される円周の径方向の幅は10μmから30μmの範囲にあるのに対し、溝の底部から頂部までの段差は10μm以下と浅い。頂部の径方向の幅は、二重の溝を形成する略正方形の周を有する窪みの寸法を第2異方性エッチングによって制御することによって調整することができる。
【0046】
図11及び
図12は、本実施のサーマルプリントヘッドの製造方法のプロセスフローを示す断面図である。このプロセスフローは、
図4に示したプロセスフローに続くものであり、
図4に示したような凸部11bが形成された基板31にフォトリソグラフィーによって抵抗体層13や配線層14を形成するものである。基板31の凸部11bは、
図5から
図7に示したような一連のプロセスフローによって形成されたものである。
【0047】
図11に示すように、基板31の主面11aを覆うように酸化シリコンのような絶縁体により絶縁層12が形成される。絶縁層12上には、凸部11bを横切るように窒化タンタルなどによる抵抗体層13が形成される。抵抗体層13上には、凸部11bの頂面11eにおける発熱部16において露出する抵抗体層13を両側から挟むように、銅やタンタルなどの金属によって構成される配線層14が形成される。抵抗体層13及び配線層14を覆うように、絶縁層12上に窒化ケイ素などの絶縁体による保護層15が形成される。保護層15を貫いて配線層14に達するビア17及びビア17に接続する保護層15上のパッド18が形成される。配線層14及び抵抗体層13は、図示しない外部端子から発熱部16に電流が供給されるように、適切なパターンに形成されている。複数個の抵抗体層13にそれぞれ含まれる複数の発熱部16が形成される。ヘッド基板11(
図12参照)の厚さ方向に沿って視て(平面視して)、複数個の発熱部16は矩形状の形状を有する。複数個の発熱部16は、凸部11bの頂面11eにおける主走査方向に沿って並ぶ。
【0048】
以下に、
図2および
図11に示されたように断面視した場合に複数個の発熱部16が配置される態様を説明する。第1に、複数個の発熱部16は、凸部11bの頂面11eに配置される。第2に、複数個の発熱部16は、凸部11bの頂面11eと、下流側(
図11における右側。以下同じ。)の第2傾斜面11dとに跨って配置される。第3に、複数個の発熱部16は、凸部11bの頂面11eと、下流側の第2傾斜面11dと、下流側の第1傾斜面11cとに跨って配置される。第4に、複数個の発熱部16は、下流側の第2傾斜面11dと、下流側の第1傾斜面11cとに跨って配置される。まとめると、複数個の発熱部16は、凸部11bの頂面11eと下流側の傾斜面とのうち少なくともいずれか一方に配置される。
【0049】
図11に示した抵抗体層13や配線層14は、フォトリソグラフィーによって形成される。本実施の形態では、
図6(b)の上面図に示した凸部44と同時に形成されたアライメントマーク45をフォトリソグラフィーの位置合わせに使用している。アライメントマーク45は、凸部44と同一のハードマスクで形成されているため、凸部44に対して高い精度で位置合わせされている。したがって、アライメントマーク45を使用することにより、凸部44に対する例えば複数の発熱部16の位置合わせの精度を確保することができる。また、アライメントマーク45は凸部44を形成する工程で作成されているため、フォトリソグラフィーの工程を開始する際に改めて形成する必要はない。
【0050】
図13は、フォトレジストを塗布したアライメントマーク45を露光機カメラで撮影した画像である。
図13(a)はフォトレジストを塗布したアライメントマーク45を直上から撮影した露光機カメラによる画像であり、
図13(b)は
図13(a)の画像を露光機カメラで認識した画像である。フォトリソグラフィーの工程では、位置合わせのために、露光機カメラが塗布されたフォトレジストを介してアライメントマーク45を認識することが必要になる。
図13(b)に示すように、露光機カメラは、アライメントマーク45の画像において二重の溝に挟まれた円周状の頂部で形成される円周をマークパターンとして認識している。このように、本実施の形態のアライメントマーク45は、塗布されたフォトレジストを介して露光機カメラによって認識ができることが明らかになった。
【0051】
ここまでの工程が終了した1枚の基板31(
図6(b)、11参照)が、
図6(b)における仮想線(2点鎖線)に沿って個辺化される。これにより、1枚の基板31から4個のヘッド基板11が作製される。基板31を個辺化する工程は、例えば、回転刃を使用するダイシングによる切断工程である。
【0052】
図12に示すように、ヘッド基板11の主面11aの第1領域11fには、ドライバIC20が搭載される。ドライバIC20の底部の端子19は保護層15上に形成されたパッド18に接続している。ドライバIC20は、サーマルプリントヘッド10に供給された所定の正電圧に基づく電流が複数の発熱部16に流れるか否かを、各発熱部16につながるスイッチング回路をオン/オフすることによって制御する。ドライバIC20と電気的接続部とを覆うように、ヘッド基板11の主面11aの第1領域11fに樹脂層21が形成される。
【0053】
なお、本実施の形態においては、
図8に示したように、アライメントマークのマスクパターン35は、二重丸の同心円状の各円周に沿って所定の間隔で配置された所定の径の円形の開口で形成されていたが、アライメントマークのマスクパターン35はこのような形状に限らない。アライメントマークのマスクパターン35は、
図14から
図17に示すような他の形状であってもよい。
【0054】
図14から
図17に示すパターンをマスクにして異方性エッチングを行うと、
図14(b)などに示された黒い部分が抜きの四角パターンになるとともに、比較的深く掘られたパターンになる。これらのパターンの上からフォトレジストを塗布すると、フォトレジストの厚みバラツキに起因する色ムラが発生することがある。この場合には、露光機のカメラによってパターンを撮像すると正しくパターンを認識できないおそれがある。しかし、この場合においても、カメラの選択、調整、画像処理などによってパターンを認識することができる。
図14から
図17に示すパターンをマスクにして異方性エッチングを行うことにより得られたアライメントマークは、基板31およびヘッド基板11の上にフォトレジストが存在しない工程(後述)においても使用される。
【0055】
図14(a)は直交する等長のスリットが十字を形成するようなマスクパターンであり、
図14(b)は
図14(a)によって形成されたアライメントマークである。このアライメントマークは、第1異方性エッチング及び第2異方性エッチングを施したことにより、略正方形の周を有する窪みに形成されている。
【0056】
図15(a)は各頂角が略等しいひし形を周とする開口のマスクパターンであり、
図15(b)は
図15(a)によって形成されたアライメントマークである。このアライメントマークも、第1異方性エッチング及び第2異方性エッチングを施したことにより、略正方形の周を有する窪みに形成されている。
【0057】
図16(a)は各頂角が略等しいひし形の周に沿ったスリットで形成されたマスクパターンであり、
図16(b)は
図16(a)によって形成されたアライメントマークである。このアライメントマークも、第1異方性エッチング及び第2異方性エッチングを施したことにより、略正方形の周を有する窪みに形成されている。
【0058】
図17(a)は、二重丸の同心円状の各円周に沿ったスリットで形成されたマスクパターンであり、
図17(b)は
図17(a)によって形成されたアライメントマークである。アライメントマーク45は、第1異方性エッチング及び第2異方性エッチングを施したことにより、略正方形の周に沿って延びる所定の幅を有する溝に形成されている。
【0059】
(第1変形例)
図18は、第1変形例のサーマルプリントヘッドの製造方法を示す図である。
図18は、
図5(b)に示した本実施の形態のハードマスク32が形成された基板31に対応しているが、本実施の形態のアライメントマークのマスクパターン35に加えて、各サーマルプリントヘッドの凸部の一端(
図18では左端)に相当する位置にもアライメントマークのマスクパターン3
6が形成されている点が相違している。他の構成は、本実施の形態と同様であるので、対応する部分には同一の符号を付して対応関係を明らかにするものとする。
【0060】
図19は、第1変形例のサーマルプリントヘッドを示す上面図である。第1変形例では、
図18に示したようなハードマスク32を使用することにより、サーマルプリントヘッド10の凸部11bの一端にアライメントマーク46が形成される。凸部11bの両端にアライメントマーク46を形成してもよい。
【0061】
第1変形例では、各ヘッド基板11および各サーマルプリントヘッド10において複数の発熱部16が形成される凸部11bの頂面11eの一端にアライメントマーク46が形成されている。言い換えると、1個のヘッド基板11に対応する1個の単位領域37であって、かつ、完成したサーマルプリントヘッド10におけるヘッド基板11の主面11aに垂直な方向から視認できる範囲に、アライメントマーク46が含まれる。このため、基板31およびヘッド基板11の上にフォトレジストが存在しない工程において、アライメントマーク46を次のように使用することができる。第1に、
図2に示された凸部11bの頂面11eの上に形成されたアライメントマーク46を使用して、同じ頂面に形成された複数の発熱部16に対してドライバIC20などを高い精度で容易に位置合わせすることができる。
【0062】
第2に、アライメントマーク46を使用して、
図2に示された放熱板51が有する位置合わせ穴52に対して複数の発熱部16を高い精度で容易に位置合わせすることができる。放熱板51が有する取付用のねじ穴(図示なし)と位置合わせ穴52とは高い寸法精度で形成されている。したがって、ヘッド基板11を放熱板51に固定する場合(例えば、接着剤などによって固定する場合)に、放熱板51のねじ穴に対してヘッド基板11を高い精度で容易に位置合わせして固定することができる。上述した2つの位置合わせは、サーマルプリントヘッド10を組み立てる工程における位置合わせである。
【0063】
第3に、アライメントマーク46を使用して、サーマルプリンタ110に含まれる取付部材に対して、サーマルプリントヘッド10を高い精度で容易に位置合わせして固定することができる。この位置合わせは、サーマルプリンタ110を組み立てる工程における位置合わせである。
【0064】
第4に、アライメントマーク46を使用して、1枚の基板31から複数個のヘッド基板11を作製する際の位置合わせを行うことができる。具体的には、回転刃などの切断手段と
図5(b)における仮想線(2点鎖線)とを、高い精度で容易に位置合わせすることができる。
【0065】
ヘッド基板11において、複数の発熱部16が生成した熱を効率よく印字媒体102に伝えるために、凸部11bの頂面11eに蓄熱層を形成する場合がある。この場合には、まず、ディスペンサーを使用して頂面11eにガラスペーストを供給する。次に、そのガラスペーストを焼成することによって、ガラスからなる蓄熱層を形成する。頂面11eにガラスペーストを供給する工程において、アライメントマーク46を使用して、ディスペンサーの吐出口と頂面11eとを位置合わせすることができる。上述した2つの位置合わせは、ヘッド基板11を作製する工程における位置合わせである。
【0066】
アライメントマーク46を、凸部11b以外の部分(
図4における主面11aに相当する部分)に形成してもよい。アライメントマーク46と主面11aとは同じ工程で形成されるので、上述した5つの位置合わせにアライメントマーク46を有効に使用することができる。
【0067】
(第2変形例)
図20は、第2変形例のサーマルプリントヘッドの製造方法のプロセスフローを示す部分断面図である。第2変形例のサーマルプリントヘッドは、
図2に示した本実施の形態のサーマルプリントヘッド10における第2傾斜面11dが存在せず、凸部11bは、主面11aから盛り上がる凸部11bを両側から挟む第1傾斜面11cと、主面11aに平行な頂面11eとによって形成され、頂面11eは両側から挟む第1傾斜面11cの上縁によって画定されている点において相違している。他の構成は、本実施の形態と同様であるので、対応する部分には同一の符号を付して対応関係を明らかにするものとする。
【0068】
第2変形例のサーマルプリントヘッド10においても、ヘッド基板11はシリコンのような半導体による基板31(
図5(a)参照)を原材料として形成されている。基板31には、適切な不純物がドープされていてもよい。ヘッド基板11は基板31を加工して得られ、ヘッド基板11の平坦な主面11aには、異方性エッチングによって凸部11bが形成されている。凸部11bは、主面11aから盛り上がった凸部を両側から挟む第1傾斜面11cと、主面11aに平行な頂面11eとによって形成され、頂面11eは両側から挟む第1傾斜面11cの上縁によって画定されている。凸部11bの頂面11eには、発熱部16が形成されている。主面11aは、凸部11bによって、一方の側の第1領域11fと、第1領域11fより狭い他方の側の第2領域11gに区分されている。
【0069】
図21は、第2変形例のサーマルプリントヘッドを示す部分断面図である。第2変形例においてヘッド基板11の凸部11bを除く構造は、本実施の形態のサーマルプリントヘッド10と同様であり、
図3、
図11及び
図12に示したようなプロセスフローに従い作製されたものである。
【0070】
主面11a及び凸部11bは、酸化シリコンなどの絶縁体によって構成された絶縁層12によって覆われている。絶縁体12層上には、窒化タンタルなどによって構成された抵抗体層13が凸部11bを横切るように形成されている。抵抗体層13は、凸部11bの頂面11eに形成された発熱部16において抵抗体層13が露出するように、発熱部16を両側から挟むように、銅やチタンなどの金属によって構成された配線層14によって覆われている。絶縁層12、抵抗体層13及び配線層14は、窒化ケイ素のような絶縁体で構成された保護層15によって覆われている。これらの抵抗体層13や配線層14は、フォトリソグラフィーによって形成される。
【0071】
主面11aの第1領域11fには発熱部16への電流の供給を制御して発熱部16を駆動するドライバIC20が搭載されている。ドライバIC20は、底部の端子19によって保護層15上に形成されたパッド18に接続している。パッド18は、保護層15を貫く配線層14まで達するビア17に接続している。ドライバIC20は、サーマルプリントヘッド10に供給された所定の正電圧に基づく電流が複数の発熱部16に流れるか否かを、各発熱部16につながるスイッチング回路をオン/オフすることによって制御する。主面11aに搭載されたドライバIC20と電気的接続部とを覆うように、主面11aの第1領域11fにはエポキシ樹脂などの樹脂による樹脂層21が形成されている。
【0072】
第2変形例においても、
図6(a)に示したような本実施の形態と同様に、凸部44と同時に形成されたアライメントマーク45をフォトリソグラフィーの位置合わせに使用している。アライメントマーク45は、凸部44と同一のハードマスクで形成されているため、凸部44に対して位置合わせされている。したがって、アライメントマーク45によると、凸部44に対して位置合わせの精度を確保することができる。また、アライメントマーク45は凸部を形成する工程で作製されているため、フォトリソグラフィーの工程を開始する際に改めて形成する必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
この発明は、サーマルプリントヘッド及びサーマルプリンタの製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10 サーマルプリントヘッド
11 ヘッド基板
11a 主面
11b 凸部
11c 第1傾斜面
11d 第2傾斜面
11e 頂面
12 絶縁層
13 抵抗体層
14 配線層
15 保護層
20 ドライバIC
31 基板
35 マスクパターン
44 凸部
45、46 アライメントマーク
110 サーマルプリンタ