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特許7496722通信制御装置及びそれを備える車両、並びに通信制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】通信制御装置及びそれを備える車両、並びに通信制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20240531BHJP
   H04W 8/00 20090101ALI20240531BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20240531BHJP
   H04W 12/06 20210101ALI20240531BHJP
   H04W 76/10 20180101ALI20240531BHJP
   H04W 52/02 20090101ALI20240531BHJP
   E05B 49/00 20060101ALN20240531BHJP
【FI】
H04Q9/00 311B
H04W8/00 110
H04W84/10 110
H04W12/06
H04W76/10
H04W52/02
E05B49/00 K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020107509
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022003723
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 啓太
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】望月 信吾
(72)【発明者】
【氏名】清水 紀博
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-093818(JP,A)
【文献】国際公開第2008/084794(WO,A1)
【文献】特開2014-103498(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0217817(US,A1)
【文献】特開2018-127798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B1/00-85/28
G06F12/00
G06K17/00
H03J9/00-9/06
H04B5/00-5/06
H04B7/24-7/26
H04M1/00
1/24-1/82
99/00
H04Q9/00-9/16
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NFC規格に従う通信を制御する通信制御装置であって、
前記NFC規格に従う通信を行なう機器を検知するためのポーリング処理と、前記ポーリング処理により検知された携帯機器と前記NFC規格に従う通信を行なう通信処理とを実行する制御部と、
前記通信処理の実行時に前記携帯機器の認証を行なう認証部とを備え、
前記通信処理の実行に伴なう消費電力は、前記ポーリング処理の実行に伴なう消費電力よりも大きく、
前記制御部は、前記認証部による前記携帯機器の認証が完了した場合、又は前記通信処理の実行が所定時間継続した場合に、前記通信処理の実行が許可されるまで前記通信処理を停止する停止処理を実行し、
前記制御部は、前記停止処理を実行すると、ユーザの端末へ通知を行なう処理を実行する、通信制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記停止処理において、前記通信処理を停止するとともに前記ポーリング処理も停止する、請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記通信処理の実行を許可する通知を前記ユーザの端末から受信すると、前記通信処理の実行を許可する、請求項1又は請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記停止処理が開始されてから規定時間経過すると、前記通信処理の実行を許可する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記NFC規格に従う通信を行なう通信部と、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の通信制御装置とを備える車両。
【請求項6】
NFC規格に従う通信を制御する通信制御方法であって、
前記NFC規格に従う通信を行なう機器を検知するためのポーリング処理を実行するステップと、
前記ポーリング処理により検知された携帯機器と前記NFC規格に従う通信を行なう通信処理を実行するステップと、
前記通信処理の実行時に前記携帯機器の認証を行なうステップとを含み、
前記通信処理の実行に伴なう消費電力は、前記ポーリング処理の実行に伴なう消費電力よりも大きく、さらに、
前記携帯機器の認証が完了した場合に、前記通信処理の実行が許可されるまで前記通信処理を停止する停止処理を実行するステップと、
前記通信処理の実行が所定時間継続した場合に、前記通信処理の実行が許可されるまで前記停止処理を実行するステップとを含む、通信制御方法。
【請求項7】
前記停止処理が実行されると、前記携帯機器のユーザの端末へ通知を行なうステップをさらに含む、請求項6に記載の通信制御方法。
【請求項8】
前記通信処理の実行を許可する通知を前記ユーザの端末から受信すると、前記通信処理の実行を許可するステップをさらに含む、請求項7に記載の通信制御方法。
【請求項9】
前記停止処理が開始されてから規定時間経過すると、前記通信処理の実行を許可するステップをさらに含む、請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信制御装置及びそれを備える車両、並びに通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近距離無線通信(NFC(Near Field Communication))の規格に従って機器間で無線通信を行なう通信システムが知られている。例えば、特開2013-100645号公報(特許文献1)には、スマートフォンやカード等の携帯機器と車載通信機(リーダ)との間でNFC規格に従う無線通信が行なわれ、携帯機器により車両ドアを解錠可能とする通信システムが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-100645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
NFC規格に従う通信方式では、NFC規格に従う通信を行なう機器を探すために、リーダから一定の間隔で電波が発せられる(ポーリング)。そして、NFC規格に従う通信が可能な携帯機器をリーダにかざすことで、リーダと携帯機器との間で通信が開始され、携帯機器からリーダへ送信されるID情報に基づいて、携帯機器の認証(ID照合)が行なわれる。
【0005】
一定の間隔で電波を発するポーリング処理に対して、リーダにかざされた携帯機器との間で通信を行なう通信処理では、処理の実行に伴なう消費電力が大きい。そのため、携帯機器がリーダに長時間かざされると、消費電力が増大し、作動電力を供給するバッテリ等において意図せず充電量が低下する等の問題が生じる可能性がある。
【0006】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、NFC規格に従う通信を制御する通信制御装置及びそれを備える車両並びに通信制御方法において、消費電力を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の通信制御装置は、NFC規格に従う通信を制御する通信制御装置であって、制御部と、認証部とを備える。制御部は、NFC規格に従う通信を行なう機器を検知するためのポーリング処理と、ポーリング処理により検知された携帯機器とNFC規格に従う通信を行なう通信処理とを実行する。認証部は、通信処理の実行時に携帯機器の認証を行なう。通信処理の実行に伴なう消費電力は、ポーリング処理の実行に伴なう消費電力よりも大きい。制御部は、認証部による携帯機器の認証が完了した場合、又は通信処理の実行が所定時間継続した場合に、通信処理の実行が許可されるまで通信処理を停止する停止処理を実行する。
【0008】
また、本開示の通信制御方法は、NFC規格に従う通信を制御する通信制御方法であって、NFC規格に従う通信を行なう機器を検知するためのポーリング処理を実行するステップと、ポーリング処理により検知された携帯機器とNFC規格に従う通信を行なう通信処理を実行するステップと、通信処理の実行時に携帯機器の認証を行なうステップとを含む。通信処理の実行に伴なう消費電力は、ポーリング処理の実行に伴なう消費電力よりも大きい。通信制御方法は、さらに、携帯機器の認証が完了した場合に、通信処理の実行が許可されるまで通信処理を停止する停止処理を実行するステップと、通信処理の実行が所定時間継続した場合に、通信処理の実行が許可されるまで停止処理を実行するステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の通信制御装置及びそれを備える車両並びに通信制御方法によれば、携帯機器の認証が完了した場合、又は通信処理の実行が所定時間継続した場合に、通信処理の実行が許可されるまで通信処理が停止されるので、消費電力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に従う通信制御装置が適用される無線通信システムの全体ブロック図である。
図2図1に示す通信コントローラの構成を示すブロック図である。
図3】NFC通信部に携帯機器がかざされる前のポーリングの様子を示す図である。
図4】NFC通信部に携帯機器がかざされているときのNFC通信の様子を示す図である。
図5】NFC通信処理が停止したときの様子を示す図である。
図6】ユーザ端末からNFC通信を再開させるときの様子を示す図である。
図7図1に示す通信コントローラによって実行される処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図8図7のステップS60において実行される通信停止処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
図1は、本開示の実施の形態に従う通信制御装置が適用される無線通信システムの全体ブロック図である。図1を参照して、この無線通信システムは、通信制御装置を搭載する車両10と、携帯機器50とを備える。車両10は、NFC通信部12と、無線通信部14と、通信制御装置を構成する通信コントローラ16とを含む。図1では、NFC通信部12、無線通信部14、及び通信コントローラ16は、別体として記載されているが、これらのうちのいくつか又は全ては、同一ユニット(チップ等)内に実装されてもよい。
【0013】
NFC通信部12は、NFC規格に従う通信方式を用いて携帯機器50と通信を行なうように構成されている。NFC通信部12は、バッテリ24から電力の供給を受けて作動し、図示しないアンテナを通じて、携帯機器50のNFC通信部52との間で、NFC規格に従う通信(以下「NFC通信」と称する場合がある。)を行なうことができる。NFC通信部12には、NFCの機能のうち、少なくともリーダライタ機能が実装される。リーダライタ機能に加えて機器間通信(P2P)機能が実装されてもよい。
【0014】
NFC通信部12は、携帯機器50との通信が行なわれる前は、通信コントローラ16からの指示に従って、NFC通信可能な機器を検知するためのポーリングを行なう。すなわち、NFC通信部12は、周囲に対して一定の間隔で、NFC規格に従うリクエスト信号を発信する。リクエスト信号に応答して携帯機器50のNFC通信部52から送信されるレスポンス信号をNFC通信部12が受信すると、NFC通信部12,52間で通信が確立され、車両10と携帯機器50との間でNFC通信が行なわれる。
【0015】
無線通信部14は、通信コントローラ16からの指示に従って、図示しないユーザ端末と無線通信を行なうように構成されている。無線通信部14は、例えば、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)等の通信方式を用いてユーザ端末と通信を行なうことができる。
【0016】
通信コントローラ16は、プロセッサ17と、メモリ18とを含んで構成される。プロセッサ17は、CPU(Central Processing Unit)或いはマイコン(microcontroller又はmicrocomputer)等の演算処理装置である。メモリ18は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶装置である。プロセッサ17は、メモリ18のROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することで、NFC通信部12及び無線通信部14を制御する。メモリ18は、プロセッサ17によって実行される各種プログラム、及びプロセッサ17によって用いられる各種データ等を記憶する。通信コントローラ16が実行する具体的な処理については、後ほど説明する。
【0017】
車両10は、さらに、車両制御装置20と、ドアロック装置22と、バッテリ24とを含む。ドアロック装置22は、車両10の乗降用ドアを施錠状態(ロック状態)と解錠状態(アンロック状態)とのいずれかに切り替えるように構成される。
【0018】
車両制御装置20は、CPU、メモリ、信号入出力ポート等を含んで構成される(いずれも図示せず)。車両制御装置20は、通信コントローラ16により実行される制御を除く、車両10の各種制御を行なう。一例として、車両制御装置20は、ポーリングにより検知された携帯機器50の認証を完了した旨の通知(後述)を通信コントローラ16から受けると、ドアロック装置22の操作(ドアの解施錠)を許可する。そして、車両制御装置20は、乗降用ドアの解錠要求に従ってドアロック装置22へ解錠指令(アンロック指令)を出力し、また、乗降用ドアの施錠要求に従ってドアロック装置22へ施錠指令(ロック指令)を出力する。
【0019】
バッテリ24は、車両10の補機用バッテリであり、例えば鉛蓄電池によって構成される。バッテリ24は、NFC通信部12、無線通信部14、通信コントローラ16、及び車両制御装置20へ作動電力を供給する。
【0020】
携帯機器50は、NFC通信部52と、制御装置56と、入力装置62と、表示装置64と、バッテリ66とを含む。
【0021】
NFC通信部52は、NFC規格に従う通信方式を用いて車両10と通信を行なうように構成されている。NFC通信部52は、図示しないアンテナを通じて、車両10のNFC通信部12との間でNFC通信を行なうことができる。NFC通信部52は、NFC通信部12からの電波によって作動するパッシブタグ(ICタグ)を含んで構成される。すなわち、NFC通信部52は、バッテリ66から電力の供給を受けずに、NFC通信部12から受ける電波によって作動する。したがって、NFC通信部52は、携帯機器50の電源がオフされた状態であっても、車両10のNFC通信部12と通信を行なうことができる。
【0022】
NFC通信部52は、NFC通信部12から発せられるリクエスト信号を受信すると、パッシブタグ(ICタグ)に書き込まれている当該携帯機器50に固有のID情報を含むレスポンス信号を生成し変調して車両10のNFC通信部12へ送信する。
【0023】
制御装置56は、CPU58、メモリ60、信号入出力ポート(図示せず)等を含んで構成される。制御装置56は、携帯機器50の各種制御を行なう。入力装置62は、携帯機器50に対するユーザの各種入力操作を受け付ける装置であり、例えば、表示装置64上のタッチ操作を検出するタッチセンサや、携帯機器50に設けられる各種操作ボタンである。表示装置64は、携帯機器50の各種情報や、入力装置62からの入力操作に応じた情報等を表示する。入力装置62及び表示装置64は、タッチパネルセンサによって一体的に構成してもよい。
【0024】
バッテリ66は、充放電可能な二次電池であり、例えばリチウムイオン二次電池によって構成される。バッテリ66は、図示しない充電装置を用いて外部の電源により充電することができる。そして、バッテリ66は、制御装置56、入力装置62、及び表示装置64へ作動電力を供給する。上述のように、NFC通信部52は、NFC通信部12からの電波によって作動するパッシブタグを含んで構成されるため、バッテリ66から電力の供給を受けない。
【0025】
図2は、図1に示した通信コントローラ16の構成を示すブロック図である。図2を参照して、通信コントローラ16は、ポーリング処理部30と、NFC通信処理部32と、認証処理部34とを含む。
【0026】
ポーリング処理部30は、NFC通信可能な機器を検知するためのポーリングを実行する。具体的には、ポーリング処理部30は、一定の間隔でNFC通信部12から周囲に電波を発するようにNFC通信部12を制御する。これにより、NFC通信部12から周囲に対して、NFC通信可能な機器を検知するためのリクエスト信号が一定の間隔で発信される。なお、一定の間隔は、ポーリング処理に伴なう消費電力と、機器の検知遅れ時間とから適宜設定される。
【0027】
NFC通信処理部32は、ポーリングにより検知された機器(以下、携帯機器50とする。)との間でNFC規格に従う各種通信処理を実行する。詳しくは、ポーリングによるリクエスト信号に応答して携帯機器50のNFC通信部52から送信されるレスポンス信号をNFC通信部12が受信すると、NFC通信処理部32は、携帯機器50との間で通信を確立し、NFC通信部12から携帯機器50のNFC通信部52へ電波を送信するようにNFC通信部12を制御する。これにより、NFC通信部12と、NFC通信部12から電波を受けて作動するNFC通信部52との間でNFC通信が行なわれる。
【0028】
認証処理部34は、携帯機器50から送信される認証データ(ID情報)を、メモリ18(図1)に記憶されているID情報と照合する認証処理を実行する。なお、メモリ18には、ドアロック装置22の操作を許可する機器(携帯機器50)のID情報が記憶されている。そして、認証処理部34は、携帯機器50から受信したID情報と、メモリ18に記憶されているID情報との一致を確認すると、携帯機器50の認証を完了し、その旨を車両制御装置20(図1)へ通知する。
【0029】
これにより、認証された携帯機器50を用いて、ドアロック装置22の操作(乗降用ドアの解施錠)が可能となる。なお、メモリ18に記憶されているID情報は、車両制御装置20のメモリ(図示せず)に記憶されていてもよいし、NFC通信部12に記憶されていてもよい。
【0030】
上記のように、この無線通信システムでは、車両10と携帯機器50との間の通信に、NFC規格に従う通信方式が用いられる。NFC規格に従う通信方式では、NFC通信を行なう機器を探すために、NFC通信部12(リーダ)から一定の間隔で電波が発せられる(ポーリング)。そして、NFC規格に従う通信が可能な携帯機器50をNFC通信部12にかざすことで、NFC通信部12と携帯機器50のNFC通信部52との間で通信が確立し、NFC通信部12からNFC通信部52へ電波が送信されることによりNFC通信部12,52間で通信が行なわれる(NFC通信)。
【0031】
図3は、NFC通信部12に携帯機器50がかざされる前のポーリングの様子を示した図である。また、図4は、NFC通信部12に携帯機器50がかざされているときのNFC通信の様子を示した図である。
【0032】
図3を参照して、ポーリングにおいては、NFC通信部12は、一定の間隔で周囲に電波を発する。ポーリング時は、電波を受けて作動する機器がまだないこと、また、連続的でなく一定の間隔で電波が出力されること等により、ポーリング処理の実行に伴なう消費電力は、後述のNFC通信時に比べて小さい。
【0033】
一方、図4を参照して、NFC通信においては、NFC通信部12から携帯機器50のNFC通信部52へ電波が送信され、その電波を受けてNFC通信部52が作動することにより、NFC通信部12,52間で通信が行なわれる。NFC通信時は、NFC通信部12からの電波を受けて携帯機器50のNFC通信部52が作動すること、また、そのような作動電力としての電波の送信は一定の間隔を空けることなく連続的に行なわれること等により、NFC通信の実行に伴なう消費電力は、ポーリング時に比べて大きい。
【0034】
このため、携帯機器50がNFC通信部12に長時間かざされると、消費電力が増大し、バッテリ24(図1)の充電量が意図せず低下する等の問題が生じる可能性がある。なお、携帯機器50がNFC通信部12に長時間かざされる場面としては、例えば、ID情報が登録されていない携帯機器が誤ってかざされたり、ユーザ以外の者が悪意をもって携帯機器をかざしたりする場合等が想定される。
【0035】
そこで、本実施の形態における無線通信システムでは、認証処理部34による携帯機器50の認証が完了した場合、又はNFC通信処理部32によるNFC通信の実行が所定時間継続した場合に、NFC通信が停止される。このNFC通信の停止は、NFC通信の実行が許可されるまで継続される。すなわち、NFC通信が停止されると、NFC通信の実行が許可されるまで、携帯機器50をNFC通信部12にかざしてもNFC通信は実行されず、認証処理も行なわれない。これにより、携帯機器50がNFC通信部12に長時間かざされることで消費電力が増大するのを防止することができる。
【0036】
なお、本実施の形態における無線通信システムでは、停止したNFC通信処理をユーザの端末から再開させることができる。そのため、本実施の形態では、NFC通信処理が停止すると、車両10からユーザの端末へ異常通知(NFC通信が停止した旨の通知)が送信される。
【0037】
図5は、NFC通信処理が停止したときの様子を示した図である。図5を参照して、携帯機器50がNFC通信部12に長時間かざされることによりNFC通信処理が停止すると、無線通信部14からユーザの端末70(スマートフォン等)へ異常通知が送信される。ユーザ端末70は、携帯機器50であってもよい。これにより、ユーザは、NFC通信処理が停止したことを認識することができる。そして、この場合に、ユーザは、停止したNFC通信処理をユーザ端末70から再開させることができる。
【0038】
図6は、ユーザ端末70からNFC通信を再開させるときの様子を示した図である。図6を参照して、ユーザ端末70は、車両10の無線通信部14から異常通知を受信すると、ユーザの操作に従って、NFC通信処理の再開通知を車両10へ送信することができる。これにより、NFC通信処理を停止させておく期間をユーザが決められるので、セキュリティ性を高めることができる。
【0039】
そして、ユーザ端末70からの再開通知を車両10の無線通信部14が受信すると、車両10においてNFC通信処理が許可される。その後、携帯機器50がNFC通信部12にかざされれば、NFC通信が再度実行される。
【0040】
さらに、本実施の形態における無線通信システムでは、NFC通信処理の再開通知がユーザ端末70から送信されない場合においても、NFC通信処理が停止してから所定時間が経過すると、NFC通信処理が許可される。これにより、ユーザ端末70において操作を行なうことなく、消費電力抑制のために一旦停止させた通信を通信可能な状態に移行させることができる。
【0041】
図7は、図1に示した通信コントローラ16によって実行される処理の手順の一例を示すフローチャートである。図7を参照して、通信コントローラ16は、NFC通信可能な機器との通信の実行が許可されているか否かを判定する(ステップS10)。上述のように、NFC通信が停止された場合、NFC通信の停止は、NFC通信の実行が許可されるまで継続される。一旦停止した通信が許可される条件については、後ほどステップS60の通信停止処理において説明する。通信が許可されていなければ(ステップS10においてNO)、以降の一連の処理は実行されずにリターンへ移行される。
【0042】
ステップS10において通信が許可されていると判定されると(ステップS10においてYES)、通信コントローラ16は、ポーリングを実行する(ステップS15)。すなわち、通信コントローラ16からの指示に従って、NFC通信部12から周囲に対して、NFC通信可能な機器を検知するためのリクエスト信号が一定の間隔で発信される。
【0043】
そして、通信コントローラ16は、ポーリングにより、NFC通信を行なう機器が検知されたか否かを判定する(ステップS20)。具体的には、通信コントローラ16は、ポーリングによるリクエスト信号に応答して、NFC通信を行なう機器から送信されるレスポンス信号をNFC通信部12が受信したか否かを判定する。機器が検知されていなければ(ステップS20においてNO)、以降の処理は実行されずにリターンへ移行される。
【0044】
ステップS20において機器が検知されたと判定されると(ステップS20においてYES)、通信コントローラ16は、検知された機器(以下、図1の携帯機器50が検知されたものとする。)とNFC通信処理を実行する。すなわち、通信コントローラ16は、NFC通信部12と携帯機器50のNFC通信部52との間で通信を確立する(ステップS25)。
【0045】
NFC通信処理の実行中、通信コントローラ16は、NFC通信部12からの携帯機器50の離脱(NFC通信部12,52間で通信不可となる距離まで離れること)が検知されたか否かを判定する(ステップS30)。例えば、NFC通信部12からの応答要求に対して携帯機器50からの応答がなければ、携帯機器50が離脱したものと検知される。携帯機器50の離脱が検知されると(ステップS30においてYES)、通信コントローラ16は、NFC通信を終了する(ステップS55)。すなわち、通信コントローラ16は、NFC通信部12から携帯機器50のNFC通信部52への電波の送信を停止する。
【0046】
携帯機器50の離脱が検知されていなければ(ステップS30においてNO)、通信コントローラ16は、認証処理の試行回数がN回(Nは所定の自然数であり、例えばN=10)を超えたか否かを判定する(ステップS35)。認証処理については、ステップS45において説明する。なお、認証処理が完了すると、試行回数は0にリセットされる。認証処理の試行回数がN回を超えると(ステップS35においてYES)、通信コントローラ16は、ステップS55へ処理を移行し、NFC通信を終了する。
【0047】
認証処理の試行回数がN回を超えていなければ(ステップS35においてNO)、通信コントローラ16は、NFC通信の実行時間が所定時間(例えば10秒)を超えたか否かを判定する(ステップS40)。この処理は、携帯機器50がNFC通信部12に長時間かざされることによる消費電力の増大を抑制するための処理である。NFC通信の実行時間が所定時間を超えると(ステップS40においてYES)、通信コントローラ16は、ステップS55へ処理を移行し、NFC通信を終了する。なお、NFC通信が終了すると、上記の実行時間は0にリセットされる。
【0048】
NFC通信の実行時間が所定時間を超えていなければ(ステップS40においてNO)、通信コントローラ16は、ステップS20において検知された機器(携帯機器50)の認証処理を実行する(ステップS45)。すなわち、通信コントローラ16は、NFC通信部12により携帯機器50から受信した認証データ(ID情報)を、メモリ18(図1)に記憶されているID情報と照合する。
【0049】
次いで、通信コントローラ16は、認証が完了したか否かを判定する(ステップS50)。通信コントローラ16は、携帯機器50から受信したID情報と、メモリ18に記憶されているID情報との一致を確認すると、携帯機器50の認証(ID照合)を完了する。認証が完了しない場合は(ステップS50においてNO)、通信コントローラ16は、ステップS30へ処理を戻すとともに、携帯機器50からID情報の再取得を試みる。
【0050】
ステップS50において認証が完了したと判定されると(ステップS50においてYES)、通信コントローラ16は、NFC通信を終了する(ステップS55)。すなわち、機器の離脱が検知されたり、NFC通信の実行時間が所定時間を超えたりした場合に、NFC通信は終了するが、この実施の形態では、認証が完了した場合にもNFC通信を終了させる。これにより、認証完了後も継続して携帯機器50がNFC通信部12に長時間かざされることで消費電力が増大するのを抑制することができる。
【0051】
なお、ステップS55においてNFC通信が停止した場合、NFC通信の停止は、後述の通信停止処理においてNFC通信の実行が許可されるまで継続される。ポーリングについては、NFC通信部12から機器が離脱した場合に再開させてもよいし、或いは常時作動させておいてもよいが、ステップS55においてNFC通信が停止した場合は、NFC通信の実行が許可されるまで、NFC通信部12に機器がかざされてもNFC通信は実行されない。なお、NFC通信の実行が許可されるまで通信停止が継続されることから、本実施の形態では、NFC通信が停止すると、通信の実行が許可されるまでポーリングも停止している。
【0052】
次いで、通信コントローラ16は、NFC通信を終了したことに伴なう通信停止処理を実行する(ステップS60)。
【0053】
図8は、図7のステップS60において実行される通信停止処理の手順の一例を示すフローチャートである。図8を参照して、通信コントローラ16は、NFC通信が停止した旨の異常通知をユーザ端末70(図5)へ送信するように無線通信部14を制御する(ステップS110)。
【0054】
次いで、通信コントローラ16は、NFC通信処理の再開通知をユーザ端末70から無線通信部14が受信したか否かを判定する(ステップS120)。すなわち、図6に示したように、本実施の形態では、NFC通信が停止した旨の異常通知を受けたユーザ端末70から、NFC通信の再開を許可することができる。
【0055】
そして、ステップS120においてユーザ端末70から通信の再開通知を無線通信部14が受信したと判定されると(ステップS120においてYES)、通信コントローラ16は、NFC通信可能な機器との通信の実行を許可する(ステップS140)。なお、通信の実行が許可されると、ポーリングが開始される(図7のステップS10,S15)。
【0056】
ユーザ端末70から通信の再開通知を受信していないときは(ステップS120においてNO)、通信コントローラ16は、ステップS55(図7)においてNFC通信が停止してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS130)。所定時間が経過していなければ(ステップS130においてNO)、ステップS120へ処理が戻される。
【0057】
NFC通信が停止してから所定時間経過すると(ステップS130においてYES)、通信コントローラ16は、ステップS140へ処理を移行し、NFC通信可能な機器との通信の実行を許可する。すなわち、この実施の形態では、ユーザ端末70から通信の再開通知を受けていない場合においても、通信が停止してから所定時間経過すると、通信の実行が許可される。これにより、ユーザ端末70において操作を行なうことなく、停止したNFC通信を再開させることができる。
【0058】
以上のように、この実施の形態においては、携帯機器50の認証が完了した場合、又はNFC通信処理の実行が所定時間継続した場合に、通信処理の実行が許可されるまで通信処理が停止される。通信処理の実行に伴なう消費電力は、ポーリングの実行に伴なう消費電力よりも大きいので、この実施の形態によれば、消費電力を抑制することができる。
【0059】
なお、上記の実施の形態では、NFC通信部52が設けられる携帯機器50は、制御装置56やバッテリ66等を含む機器(例えばスマートフォン)としたが、携帯機器50は、制御装置56やバッテリ66等を備えないカード等であってもよい。
【0060】
また、上記の実施の形態では、車両10において、通信コントローラ16は、車両制御装置20とは別体で設けられるものとしたが、通信コントローラ16の機能を車両制御装置20が備えてもよい。
【0061】
また、上記の実施の形態では、NFC通信部12、無線通信部14、及び通信コントローラ16は、車両10に搭載されるものとしたが、本開示の射程範囲は、車両に搭載される通信制御装置に限定されるものではない。例えば、NFC通信部12、無線通信部14、及び通信コントローラ16が住宅や宅配BOXに設けられ、住宅や宅配BOXのドアの解施錠を行なうキーとして携帯機器50が用いられてもよい。
【0062】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0063】
以上に説明した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例である。
【0064】
一態様における通信制御装置は、NFC規格に従う通信を制御する通信制御装置であって、制御部と、認証部とを備える。制御部は、NFC通信を行なう機器を検知するためのポーリング処理と、ポーリング処理により検知された携帯機器とNFC通信を行なう通信処理とを実行する。認証部は、通信処理の実行時に携帯機器の認証を行なう。通信処理の実行に伴なう消費電力は、ポーリング処理の実行に伴なう消費電力よりも大きい。制御部は、認証部による携帯機器の認証が完了した場合、又は通信処理の実行が所定時間継続した場合に、通信処理の実行が許可されるまで通信処理を停止する停止処理を実行する。
【0065】
また、一態様における通信制御方法は、NFC規格に従う通信を制御する通信制御方法であって、NFC通信を行なう機器を検知するためのポーリング処理を実行するステップと、ポーリング処理により検知された携帯機器とNFC通信を行なう通信処理を実行するステップと、通信処理の実行時に携帯機器の認証を行なうステップとを含む。通信処理の実行に伴なう消費電力は、ポーリング処理の実行に伴なう消費電力よりも大きい。通信制御方法は、さらに、携帯機器の認証が完了した場合に、通信処理の実行が許可されるまで通信処理を停止する停止処理を実行するステップと、通信処理の実行が所定時間継続した場合に、通信処理の実行が許可されるまで停止処理を実行するステップとを含む。
【0066】
上記の通信制御装置及び通信制御方法では、認証部による携帯機器の認証が完了した場合、又は通信処理の実行が所定時間継続した場合に、通信処理の実行が許可されるまで通信処理を停止する停止処理が実行される。通信処理の実行に伴なう消費電力は、ポーリング処理の実行に伴なう消費電力よりも大きいため、この通信制御装置及び通信制御方法によれば、消費電力を抑制することができる。
【0067】
制御部は、停止処理において、通信処理を停止するとともにポーリング処理も停止してもよい。これにより、消費電力をさらに抑制することができる。
【0068】
制御部は、停止処理を実行すると、ユーザの端末へ通知を行なう処理を実行してもよい。これにより、ユーザは、停止処理によりNFC通信が停止したことを認識することができる。
【0069】
制御部は、通信処理の実行を許可する通知をユーザの端末から受信すると、通信処理の実行を許可してもよい。これにより、通信を不可とする期間をユーザが決められるので、セキュリティ性を高めることができる。
【0070】
制御部は、停止処理が開始されてから所定時間経過すると、通信処理の実行を許可してもよい。これにより、ユーザが端末を操作することなく、消費電力抑制のために一旦停止させた通信を通信可能な状態に移行させることができる。
【符号の説明】
【0071】
10 車両、12,52 NFC通信部、14 無線通信部、16 通信コントローラ、17 プロセッサ、18,60 メモリ、20 車両制御装置、22 ドアロック装置、24,66 バッテリ、30 ポーリング処理部、32 NFC通信処理部、34 認証処理部、50 携帯機器、56 制御装置、58 CPU、62 入力装置、64 表示装置、70 ユーザ端末。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8