(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】不良原因推定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
D06F 33/74 20200101AFI20240531BHJP
D06F 33/47 20200101ALI20240531BHJP
D06F 34/05 20200101ALI20240531BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240531BHJP
D06F 103/00 20200101ALN20240531BHJP
【FI】
D06F33/74
D06F33/47
D06F34/05
G05B23/02 302Y
D06F103:00
(21)【出願番号】P 2020130465
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米川 輝
(72)【発明者】
【氏名】大河内 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】國眼 陽子
(72)【発明者】
【氏名】飯澤 憲次
(72)【発明者】
【氏名】吉田 厚
(72)【発明者】
【氏名】蛭田 友美
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-212131(JP,A)
【文献】特開2002-323013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/74
D06F 33/47
D06F 34/05
G05B 23/02
D06F 103/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象装置の不良原因を推定する不良原因推定装置において、
前記対象装置は、
それぞれ前記対象装置の状態を検出する複数のセンサ
を有し、
予め学習した
不良原因ごとのモデルを記憶保持する記憶部と、
各前記センサから出力された
時系列センサデータのうちの前記対象装置の状態変化をもたらす特定のデータ範囲の前記
時系列センサデータを用い、
不良原因ごとの前記モデルに基づいて前記対象装置の前記不良原因を推定する原因推定部と
を備え
、
前記対象装置は、
必要な指令値を必要なタイミングで対応する制御対象に与えることにより当該制御対象の動作を制御する制御部を有し、
前記対象装置の状態変化をもたらす前記特定のデータ範囲は、前記制御部が前記制御対象に指令を与えた所定期間及び又は予め設定された特定の時間帯の範囲であり、
前記モデルは、
学習用の時系列センサデータを複数の類似性尺度ごとにそれぞれ対応する分類型に分類するクラスタリングを行い、クラスタリング結果を説明変数とし、機械学習によって導出された不良原因ごとの判別ルールであり、
前記原因推定部は、
前記センサから出力された前記時系列センサデータを前記類似性尺度ごとにそれぞれ対応する分類型に分類するクラスタリングを行い、前記類似性尺度ごとの分類結果を不良原因ごとの前記判別ルールとそれぞれ照らし合わせるようにして不良原因を推定する
ことを特徴とする不良原因推定装置。
【請求項2】
対象装置の不良原因を推定する不良原因推定装置により実行される不良原因推定方法において、
前記対象装置は、
それぞれ前記対象装置の状態を検出する複数のセンサ
を有し、
予め学習した
不良原因ごとのモデルを記憶保持する第1のステップと、
各前記センサから出力された
時系列センサデータのうちの前記対象装置の状態変化をもたらす特定のデータ範囲の前記
時系列センサデータを用い、
不良原因ごとの前記モデルに基づいて前記対象装置の前記不良原因を推定する第2のステップと
を備え
、
前記対象装置は、
必要な指令値を必要なタイミングで対応する制御対象に与えることにより当該制御対象の動作を制御する制御部を有し、
前記対象装置の状態変化をもたらす前記特定のデータ範囲は、前記制御部が前記制御対象に指令を与えた所定期間及び又は予め設定された特定の時間帯の範囲であり、
前記モデルは、
学習用の時系列センサデータを複数の類似性尺度ごとにそれぞれ対応する分類型に分類するクラスタリングを行い、クラスタリング結果を説明変数とし、機械学習によって導出された不良原因ごとの判別ルールであり、
前記第2のステップにおいて、前記不良原因推定装置は、
前記センサから出力された前記時系列センサデータを前記類似性尺度ごとにそれぞれ対応する分類型に分類するクラスタリングを行い、前記類似性尺度ごとの分類結果を不良原因ごとの前記判別ルールとそれぞれ照らし合わせるようにして不良原因を推定する
ことを特徴とする不良原因推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不良原因推定装置及び方法に関し、例えば、洗濯乾燥機における乾燥不良の原因を推定する乾燥不良原因推定装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯乾燥機に乾燥不良が発生した場合、幾つか考えられる不良原因のうちのいずれが原因となっているかを特定する必要がある。なお、乾燥不良の原因としては、外気を取り入れる吸気口に取り付けられたフィルタの目詰まり、排気口に取り付けられたダクトの詰まり、ブロワの不具合、ヒータの不具合などがある。しかしながら、このような不良原因の特定は煩雑であり、時間を要する問題があった。
【0003】
なお、洗濯機の不良判定に関する技術として、特許文献1には、モータをセンサレス制御により駆動する制御部がモータを強制転流により起動する際に、モータに通電される電流及びモータの定数に基づいてモータの回転数又は誘起電圧を判定パラメータとして演算し、判定パラメータが振動状態にあるか否かによって回転不良判定を行うことが開示されている。
【0004】
また特許文献2には、例えばモータ駆動装置の電圧変換部の故障原因を判定する技術として、かかる電圧変換部の動作停止後、その電圧変換部の出力側に接続されたコンデンサの放電が完了してから当該電圧変換部の入力側及び出力側の各電圧値に基づいて故障部位を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-017179号公報
【文献】特開2005-245067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、かかる特許文献1及び特許文献2に開示された技術は、モータや電圧変換部という特定部品の故障に特化した判定技術であり、例えば、フィルタや、ダクト、ブロワ及びヒータなど、不良原因が複数存在する乾燥不良の原因の推定には適用できない問題があった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、不良原因を効率良く推定し得る不良原因推定装置及び方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明においては、対象装置の不良原因を推定する不良原因推定装置において、前記対象装置は、それぞれ前記対象装置の状態を検出する複数のセンサを有し、予め学習した1又は複数のモデルを記憶保持する記憶部と、前記センサから出力されたセンサデータのうちの前記対象装置の状態変化をもたらす特定のデータ範囲の前記センサデータを用い、前記モデルに基づいて前記対象装置の前記不良原因を推定する原因推定部とを設けるようにした。
【0009】
また本発明においては、対象装置の不良原因を推定する不良原因推定装置により実行される不良原因推定方法において、前記対象装置は、それぞれ前記対象装置の状態を検出する複数のセンサを有し、予め学習した1又は複数のモデルを記憶保持する第1のステップと、前記センサから出力されたセンサデータのうちの前記対象装置の状態変化をもたらす特定のデータ範囲の前記センサデータを用い、前記モデルに基づいて前記対象装置の前記不良原因を推定する第2のステップとを設けるようにした。
【0010】
本不良原因推定装置及び方法によれば、対象装置の状態変化に基づいて当該対象装置のどの部位に不良原因があるかを特定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、不良原因を効率良く推定し得る不良原因推定装置及び方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施の形態による乾燥不良原因推定システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施の形態による洗濯乾燥機及び分析サーバの論理構成を示すブロック図である。
【
図3】原因モデルの学習システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】原因モデルの学習の流れを示すフローチャートである。
【
図5】原因モデルを用いた原因推定の流れを示すフローチャートである。
【
図6】原因モデルとしてCNNを用いた実験結果の説明に供する図表である。
【
図7】原因モデルとしてCNNを用いた実験結果の説明に供する図表である。
【
図8】原因モデルとしてCNNを用いた実験結果の説明に供する図表である。
【
図9】第2の実施の形態の説明に供する概念図である。
【
図10】第2の実施の形態で利用するクラスタリングを示す図表である。
【
図11】第2の実施の形態による洗濯乾燥機及び分析サーバの論理構成を示すブロック図である。
【
図12】判別ルールの作成システムの構成を示すブロック図である。
【
図13】判別ルール作成の流れを示すフローチャートである。
【
図14】判別ルールを用いた判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】他の実施の形態の説明に供するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0014】
(1)第1の実施の形態
(1―1)本実施の形態による乾燥不良原因推定システムの構成
図1において、1は全体として本実施の形態による乾燥不良原因推定システムを示す。この乾燥不良原因推定システム1は、洗濯乾燥機2に乾燥不良が発生した場合に、その原因を推定する機能を有するシステムであり、各家庭にそれぞれ設置された洗濯乾燥機2と、これら洗濯乾燥機2のメーカが設置した分析サーバ3とがインターネットなどのネットワーク4を介して接続されて構成されている。
【0015】
洗濯乾燥機2は、ユーザ操作に応じて衣類等の対象物の洗濯及び乾燥を行う家電機器であり、コントローラ10、時計11、駆動・動力部12及び各種センサ13を備えて構成される。
【0016】
コントローラ10は、洗濯乾燥機2全体の動作制御を司るプロセッサである。また時計11は、デジタル時計などから構成され、現在時刻を刻むタイムカウンタとしての機能と、ある動作を開始してからの経過時刻をカウントするタイマとしての機能とを備える。
【0017】
駆動・動力部12は、洗濯乾燥機2内のドラムを回転駆動するモータや、乾燥動作時に対象物に風を吹きかけるブロワ、及び、ブロワから出力される風を加熱するヒータなどの洗濯乾燥機2の内部に配設された駆動部品や動力部品から構成される。
【0018】
かかる課題を解決するため本発明においては、対象装置の不良原因を推定する不良原因推定装置において、前記対象装置は、それぞれ前記対象装置の状態を検出する複数のセンサを有し、予め学習した不良原因ごとのモデルを記憶保持する記憶部と、各前記センサから出力された時系列センサデータのうちの前記対象装置の状態変化をもたらす特定のデータ範囲の前記時系列センサデータを用い、不良原因ごとの前記モデルに基づいて前記対象装置の前記不良原因を推定する原因推定部とを設け、前記対象装置は、必要な指令値を必要なタイミングで対応する制御対象に与えることにより当該制御対象の動作を制御する制御部を有し、前記対象装置の状態変化をもたらす前記特定のデータ範囲は、前記制御部が前記制御対象に前記指令を与えた所定期間及び又は予め設定された特定の時間帯の範囲であり、前記モデルは、学習用の時系列センサデータを複数の類似性尺度ごとにそれぞれ対応する分類型に分類するクラスタリングを行い、クラスタリング結果を説明変数とし、機械学習によって導出された不良原因ごとの判別ルールであり、前記原因推定部は、前記センサから出力された前記時系列センサデータを前記類似性尺度ごとにそれぞれ対応する分類型に分類するクラスタリングを行い、前記類似性尺度ごとの分類結果を不良原因ごとの前記判別ルールとそれぞれ照らし合わせるようにして不良原因を推定するようにした。
【0019】
また本発明においては、対象装置の不良原因を推定する不良原因推定装置により実行される不良原因推定方法において、前記対象装置は、それぞれ前記対象装置の状態を検出する複数のセンサを有し、予め学習した不良原因ごとのモデルを記憶保持する第1のステップと、各前記センサから出力された時系列センサデータのうちの前記対象装置の状態変化をもたらす特定のデータ範囲の前記時系列センサデータを用い、不良原因ごとの前記モデルに基づいて前記対象装置の前記不良原因を推定する第2のステップとを備え、前記対象装置は、必要な指令値を必要なタイミングで対応する制御対象に与えることにより当該制御対象の動作を制御する制御部を有し、前記対象装置の状態変化をもたらす前記特定のデータ範囲は、前記制御部が前記制御対象に前記指令を与えた所定期間及び又は予め設定された特定の時間帯の範囲であり、前記モデルは、学習用の時系列センサデータを複数の類似性尺度ごとにそれぞれ対応する分類型に分類するクラスタリングを行い、クラスタリング結果を説明変数とし、機械学習によって導出された不良原因ごとの判別ルールであり、前記第2のステップにおいて、前記不良原因推定装置は、前記センサから出力された前記時系列センサデータを前記類似性尺度ごとにそれぞれ対応する分類型に分類するクラスタリングを行い、前記類似性尺度ごとの分類結果を不良原因ごとの前記判別ルールとそれぞれ照らし合わせるようにして不良原因を推定するようにした。
【0020】
CPU20は、分析サーバ3全体の動作制御を司るプロセッサである。またメモリ21は、例えば揮発性の半導体メモリから構成され、CPU20のワークメモリとして利用される。メモリ21には、分析サーバ3の起動時や必要時に記憶装置22から読み出された後述の原因推定プログラム25や推定結果出力プログラム26などが格納される。
【0021】
記憶装置22は、例えば、ハードディスク装置やSSD(Solid State Drive)などの大容量の不揮発性の記憶装置から構成され、各種プログラムや長期保存が必要な各種データが格納される。後述する乾燥不良の原因として考えられる不良原因ごとの原因モデル27もこの記憶装置22に格納されて保持される。
【0022】
通信装置23は、NIC(Network Interface Card)などから構成され、ネットワーク4を介した各洗濯乾燥機2との通信時におけるプロトコル制御を行う。また表示装置24は、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどから構成され、必要な情報を表示するために利用される。
【0023】
図2は、かかる乾燥不良原因推定システム1の論理構成を示す。この
図2に示すように、洗濯乾燥機2は、時計11、駆動・動力部12及び各種センサ13に加えて、制御部30及びデータ取得部31を備えて構成される。
【0024】
制御部30は、洗濯乾燥機2のコントローラ10(
図1)により具現化される機能部である。制御部30は、ユーザ操作やプログラムに応じて必要な指令値COM1を必要なタイミングで対応する駆動・動力部12に与えるようにして洗濯乾燥機2全体の動作を制御する。
【0025】
具体的に、制御部30は、例えば洗濯動作時には、ドラムの回転数や回転方向などを指定した指令値をモータに適宜与えるようにして洗濯乾燥機2の洗濯動作を制御する。また制御部30は、乾燥動作時には、対象物に吹きかける温風の風速や温度などを指定した指令値をブロワやヒータに適宜与えるようにして洗濯乾燥機2の乾燥動作を制御する。
【0026】
データ取得部31も、洗濯乾燥機2のコントローラ10により具現化される機能部である。データ取得部31は、制御部30が駆動・動力部12に出力する指令値COM1や、各センサ13からそれぞれ出力された運転データDT1を取得する機能を有する機能部である。
【0027】
この際、データ取得部31は、各センサ13からそれぞれ出力された運転データDT1のうち、洗濯乾燥機2の状態変化をもたらす特定のデータ範囲の運転データDT1を選択的に取得する。具体的に、データ取得部31は、制御部30が駆動・動力部12に対して指令値COM1を出力した前後の一定期間及び又は予め設定された特定の時間帯の運転データDT1のみを選択的に取得する。そしてデータ取得部31は、取得したこれらの指令値COM1や運転データDT1をそれぞれ結合してネットワーク4(
図1)を介して分析サーバ3に送信する。
【0028】
一方、分析サーバ3は、複数の判定部32を含む原因推定部33と、推定結果出力部34とを備えて構成される。原因推定部33及び判定部32は、分析サーバ3のCPU20(
図1)がメモリ21(
図1)に格納された原因推定プログラム25(
図1)や、その一部である判定プログラム25A(
図1)を実行することによりそれぞれ具現化される機能部である。
【0029】
判定部32は、フィルタの目詰まり、ダクトの詰まり、ブロワやヒータの不具合などの乾燥不良の原因として考えられる各不良原因にそれぞれ対応させて設けられる。各判定部32は、それぞれ洗濯乾燥機2から送信されてきた各種運転データDT1のうちの対応する運転データDT1と、予め与えられた対応する不良原因に対応する原因モデル27とに基づいて、その洗濯乾燥機2の乾燥不良が対応する不良原因によるものであるかの判定を行い、判定結果を推定結果出力部34に出力する。
【0030】
推定結果出力部34は、分析サーバ3のCPU20がメモリ21に格納された推定結果出力プログラム26(
図1)を実行することにより具現化される機能部である。推定結果出力部34は、各判定部32からそれぞれ与えられた不良原因ごとの判定結果に基づいて、対応する判定部32により乾燥不良の原因と判定されたすべての不良原因を、乾燥不良の原因の推定結果として表示装置24(
図1)に表示等させる。
【0031】
(1-2)原因モデルの学習の流れ及び原因モデルを用いた異常判定の流れ
図3は、原因モデル27がCNN(Convolutional Neural Network)である場合における原因モデル27の学習の流れを示す。ここでの「原因モデル」とは、洗濯乾燥機2から取得した指令値COM1及び運転データDT1に基づいて、その洗濯乾燥機2の乾燥不良の不良原因が対応する原因である確率を算出し、算出結果を出力する数学モデルを指す。
【0032】
図3に示す洗濯乾燥機40は、原因モデル27の学習のために用いられる洗濯乾燥機であり、時計41、駆動・動力部42、複数のセンサ43、制御部44及びデータ取得部45を備える。これら時計41、駆動・動力部42、各センサ43、制御部44及びデータ取得部45は、
図2について上述した洗濯乾燥機2の対応部位(時計11、駆動・動力部12,センサ13,制御部30又はデータ取得部31)と同様の機能及び構成を有するものであるため、ここでの説明は省略する。
【0033】
かかる洗濯乾燥機40のデータ取得部45は、
図2のデータ取得部31と同様に、制御部44が駆動・動力部42に対して出力した指令値COM2と、制御部44がその指令値COM2を出力した前後の一定期間や予め設定された時間帯のみの運転データDT2とを取得し、取得したこれらの指令値COM2及び運転データDT2を結合してネットワーク4(
図1)を介して学習装置50に出力する。
【0034】
学習装置50は、図示しないCPU、メモリ及び記憶装置などの情報処理資源を備えたコンピュータ装置である。なお学習装置50を分析サーバ3(
図1)と併用するようにしてもよい。学習装置50には、フィルタの目詰まり、ダクトの詰まり、ブロワ又はヒータの故障などの乾燥不良の各原因にそれぞれ対応させた判定部51及び原因モデル27が設けられる。
【0035】
そして各判定部51には、洗濯乾燥機40のデータ取得部45から与えられた各指令値COM2及び運転データDT2のうち、対応する不良原因に起因する乾燥不良の学習に必要な学習用の指令値COM2及び運転データDT2がそれぞれ与えられる。例えば、ヒータの不具合に対応する判定部51には、ヒータに対する指令値COM2と、当該ヒータにより暖められた空気の温度を計測する温度センサからの運転データDT2となどが与えられる。そして、各判定部51は、与えられた指令値COM2及び運転データDT2を対応する原因モデル27に入力する。
【0036】
各原因モデル27では、
図4に示すように、入力された指令値COM2及び運転データDT2を入力層を介して取り込み(S1)、取り込んだ指令値COM2及び運転データDT2に基づいて原因モデル27の隠れ層(畳込み層及びプーリング層)において、乾燥不良の原因が対応する不良原因よるものである確率を算出し(S2)、算出した確率を判定結果として出力層から出力する(S3)。そして判定部51は、原因モデル27から出力された確率に基づいて、乾燥不良の原因が対応する不良原因によるものである否かを判定し、判定結果を出力する(S4)。
【0037】
このとき各判定部51には、学習装置50に対するユーザ操作等に基づいて、乾燥不良の原因が対応する不良原因によるものであるか否かの答えが与えられる。かくして、判定部51は、この答えに基づいて原因モデル27の隠れ層のフィルタの重みを必要に応じて更新する(S5)。
【0038】
そして学習装置50では、学習用の洗濯乾燥機40から指令値COM2及び運転データDT2が与えられるごとに上述のステップS1~ステップS5の処理が繰り返される。これにより各不良原因にそれぞれ対応した各原因モデル27の学習が行われる。
【0039】
一方、
図5は、上述のようにして学習が行われた各原因モデル27を用いて分析サーバ3の原因推定部33において実行される判定処理の流れを示す。分析サーバ3の各判定部32(
図2)には、洗濯乾燥機2(
図2)のデータ取得部31(
図2)からネットワーク4を介して与えられた各指令値COM1及び運転データDT1のうち、対応する原因に応じた指令値COM1及び運転データDT1がそれぞれ与えられる。そして各判定部32は、与えられた指令値COM1及び運転データDT1を対応する原因モデル27の入力層にそれぞれ入力する(S10)。
【0040】
各原因モデル27では、入力された指令値COM1及び運転データDT1を入力層を介して取り込み(S11)、取り込んだ指令値COM1及び運転データDT1に基づいて、乾燥不良の原因が対応する不良原因によるものである確率を隠れ層において算出し(S12)、算出結果を出力層から出力する(S13)。そして判定部32は、原因モデル27から出力された確率に基づいて、乾燥不良の原因が対応する不良原因によるものであるか否かを判定し、判定結果を推定結果出力部34(
図2)に出力する(S14)。
【0041】
(1-3)CNNを用いた原因推定の実験結果
ここで、
図6~
図8は、原因モデル27としてCNNを用いて行った、洗濯乾燥機2の乾燥不良の原因推定の実験結果を示す。この実験では、指令値COM1,COM2としてブロワ、ヒータ及びフラップへの指令値を用い、運転データDT1,DT2として水位センサ及び2つの温度センサのセンサデータとを利用した。また原因モデル27としては、3層でパラメータ数が38000個のCNNを利用した。
【0042】
図6は、ダクトを乾燥不良の原因とすべく、ダクトの一部を詰まらせる実験の実験結果である。
図6において、状態欄70Bの各数値は、それぞれダクトの断面積に対する当該ダクトを詰まらせた部分の断面積の割合を示す。例えば、「0」はダクトを詰まらせていない状態を示し、「0.5」はダクトの断面積の半分の部分を詰まらせた状態を示す。
【0043】
また、学習個数欄70Cの数値は、原因モデル27の学習に利用した対応する状態のときの指令値COM2及び運転データDT2のデータセットの個数(学習データセット個数)を示し、検証個数欄70Dの数値は、原因の判定処理に利用した対応する状態のときの指令値COM1及び運転データDT1のデータセットの個数(検証データセット個数)を示す。また正解数欄70Eの数値は、かかる検証データセット個数のうち、原因が正解した検証データセットの個数を示し、精度欄70Fの百分率には、かかる検証による正解率(精度)を示す。
【0044】
また
図7は、吸気口のフィルタを乾燥不良の原因とすべく、フィルタの一部又は全部を覆う実験の実験結果である。
図7において、状態欄71Bの各数値は、それぞれフィルタのフィルタ面全体に対する当該フィルタ面を覆った部分の面積の割合を示す。例えば、「0」はフィルタ面を全く覆っていない状態を示し、「0.5」はフィルタ面の半分の部分を覆った状態を示す。また「1」はフィルタ面の全面を覆った状態を示す。学習個数欄71C、検証個数欄71D、正解数欄71E及び精度欄71Fの各数値や百分率の値は
図6と同様である。
【0045】
さらに
図8は、ブロワの故障を乾燥不良の原因とすべく、ブロワの排気量を抑制する実験の実験結果である。
図8において、状態欄72Bの各数値は、それぞれブロワの正常時の排気量に対する実験時の排気量の割合を示す。例えば、「0」はブロワの排気量を抑制していない状態を示し、「0.5」はブロワの排気量を正常時の半分に抑制した状態を示す。学習個数欄72C、検証個数欄72D、正解数欄72E及び精度欄72Fの各数値や百分率の値は
図6と同様である。
【0046】
以上の実験では、ダクト、フィルタ及びブロワを原因とする原因推定の精度は、ダクトを原因とする場合には83%、フィルタを原因とする場合には96%、ブロワを原因とする場合には83%であった。また原因推定に要する時間は、ダクト、フィルタ及びブロワのいずれを原因とする場合も洗濯乾燥機1台当たり1ms以下であった。この実験からも、原因モデル27としてCNNを用いることによっても実用上十分な推定精度及び所要時間を得られることが確認できた。
【0047】
(1-4)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態の乾燥不良原因推定システム1では、洗濯乾燥機2の各センサ13から出力された運転データDT1のうち、制御部30が駆動・動力部12に対して指令値COM1を出力した前後の一定期間や、予め設定された特定の時間帯の運転データDT1と、原因ごとの原因モデル27とに基づいて洗濯乾燥機2の不良原因を特定する。
【0048】
従って、本乾燥不良原因推定システム1では、制御部30がどの駆動・動力部12に対して指令値COM1を出力した場合に運転データDT1が異常な値を示したかを取得したかを特定することができ、これに伴って乾燥不良の不良原因を特定することができる。よって本乾燥不良原因推定システム1によれば、原因となり得る部位が複数存在する不良原因を効率良く推定することができる。
【0049】
(2)第2の実施の形態
(2-1)運用性を考慮した不良原因の判別手法
洗濯乾燥機において、乾燥運転時における内部の空気流が阻害されると、ヒータで加熱した空気の滞留が起こり、流路内の温度分布が正常状態から乖離する。このため、複数の温度センサの測定値の比較が不良原因を推定する際の手がかりになると考えられる。
【0050】
しかしながら乾燥運転は、徐々に乾燥が進む非定常な過程であり、乾燥状態を常時推定しながら複数の工程を経て完結するシーケンス制御とフィードバック制御とを組み合わせた複雑な制御を必要とし、所要時間も対象物の量・質、外気温、水温等によって大きく変動する。また乾燥不良の原因となるフィルタの目詰まり等によっても運転時間が伸びる傾向がある。
【0051】
このため特定の瞬間の状態で乾燥不良の原因を判別しようとしても、比較すべき時刻を特定することが難しいだけでなく、故障状態以外にも温度計測値に影響を及ぼす原因が多数あるため、不良原因の判定が困難となる。例えば、流路の閉塞などの状態を運転動作時の運転データから推定するためには、温度の動的な挙動の特徴を用いる必要があると考えられる。
【0052】
そこで本実施の形態においては、運転データの時系列データ波形をその特徴に基づいて乾燥不良の原因ごとに分類(クラスタリング)し、クラスタリング結果を機械学習して乾燥不良の原因判別のためのモデル(以下、これを判別ルールと呼ぶ)を作成し、作成した判別ルールを利用して乾燥不良の原因を推定する。
【0053】
ここで、時系列データを用いた故障判別に関してはこれまでに多くの研究が行われており、特に時系列間の差異・類似性を定量化する類似性尺度(dissimilarity measure)を用いたクラスタリングに関して多くの研究が行われている。
【0054】
代表的な例としては、DTW(Dynamic Time Wrapping)が様々な応用で良好な結果を得ているほか、様々な類似性尺度が提案されている。よく知られている時系列類似性尺度は大別すると、値や変化(階差系列)のユークリッド距離や相関に基づくもの、周期成分の分布に類似性に基づくもの、ARIMA(Autoregressive Integrated Moving Average)などの線形時系列モデルの類似性に基づくもの、2つの時系列の相互情報量に基づくものなどがある。
【0055】
乾燥不良の原因推定では、これらの実績を活用し類似性尺度を用いて判別ルールを作成するのが有効であると考えられる。一方で、類似性尺度は扱う対象によって有効に機能するものが異なる傾向があり、様々な製品、機種、故障種類がある家電製品に対して1つの製品・機種、故障種別ごとに評価を行って有効な尺度を選択するのは膨大な時間と人手を要し、システム運用が困難であることが予想される。このような考察から、以下の(A)及び(B)の枠組みで判別ルールを導出する。
(A)様々な類似性尺度を用いてクラスタリングを行う。
(B)クラスタリング結果(分類型)を説明変数とし、機械学習によって判別ルールを導出する。
【0056】
図9の上段は、かかる枠組みに従った判別ルール導出の流れを示す。学習用サンプルの各運転データを時系列クラスタリングによりそれぞれ分類・ラベル付けし、各運転データにラベル値のベクトルを割り付ける(S20)。このベクトルを説明変数、故障の有無を目的変数として機械学習により判別ルールRLを導出する(S21)。以上の処理を乾燥不良の原因ごとにそれぞれ行い、原因ごとの判別ルールRLを作成する。
【0057】
本実施の形態においては、時系列クラスタリングのため類似性尺度として、文献等でセンサ時系列の判別での実績があるものを中心に
図10に示す代表的な16種類の類似性尺度をそれぞれ用いる。またクラスタリングは階層クラスタリングにより、例えば12群に分類する。この結果、時系列データ3種、クラスタリング手法16種で説明変数としては48次元のベクトルとなる。クラスタリングは複数の分割数を用いて例えば4群と12群に分類してもよい。この場合、時系列データ3種、クラスタリング手法16種、分割数2種で説明変数としては96次元のベクトルとなる。判別ルールRLを導く機械学習方法としてはランダムフォレストやxgboostを用いる。
【0058】
また
図9の下段は、上述のようにして作成した判別ルールRLを用いた乾燥不良の原因判定の流れを示す。各家庭にそれぞれ設置された洗濯乾燥機から運転データの時系列データを取得し、その時系列データを上述の16種類の類似度尺度ごとにそれぞれ対応する分類型に分類するクラスタリングを行う(S22)。そして、16種類の類似度尺度ごとの分類結果を判別ルールRLと照らし合わせることにより対応する原因が乾燥不良の原因であるか否かを判別する(S23)。このような判別処理を乾燥不良の原因ごとに行い、原因ごとの判別結果に基づいて乾燥不良の原因を推定する。
【0059】
(2-2)本実施の形態による乾燥不良原因推定システムの構成
図2との対応部分に同一符号を付して示す
図11は第2の実施の形態による乾燥不良原因推定システム80の論理構成を示す。なお本実施の形態の乾燥不良原因推定システム80のハードウェア構成は第1の実施の形態の乾燥不良原因推定システム1と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0060】
この乾燥不良原因推定システム80は、洗濯乾燥機81のデータ取得部82及び分析サーバ83の原因推定部84の構成が第1の実施の形態のデータ取得部31(
図2)及び原因推定部33(
図2)と異なる点が第1の実施の形態の乾燥不良原因推定システム1と相違する。
【0061】
実際上、洗濯乾燥機81のデータ取得部82は、取得した各センサ13の運転データDT1を、センサ13ごとにそれぞれ結合したセンサごとの時系列データ(以下、これを運転データ時系列データと呼ぶ)DT3として分析サーバ83に送信する。
【0062】
分析サーバ83は、複数の判定部85を含む原因推定部84と、推定結果出力部86とを備えて構成される。判定部85は、フィルタの目詰まり、ダクトの詰まり、ブロワやヒータの不具合などの乾燥不良の各原因にそれぞれ対応させて設けられる。また、分析サーバ83の記憶装置22(
図1)には、
図9について上述した原因ごとの判別ルールRLが予め格納される。
【0063】
そして各判定部85は、それぞれ洗濯乾燥機81から送信されてきた各種運転データ時系列データDT3のうちの対応する運転データ時系列データDT3について、例えば
図10について上述した16種類の類似性尺度のクラスタリングをそれぞれ行う。また判定部85は、これらクラスタリングのクラスタリング結果を同じ原因の判別ルールRLと比較し、比較結果に基づいてその洗濯乾燥機81の乾燥不良が対応する原因によるものであるかの判定を行い、判定結果を推定結果出力部86に出力する。
【0064】
推定結果出力部86は、各判定部85からそれぞれ与えられた原因ごとの判定結果に基づいて対応する洗濯乾燥機81における乾燥不良の原因を推定し、推定結果を表示装置24(
図1)に表示等させる。
【0065】
(2-3)判別ルールの学習の流れ及び判別ルールを用いた異常判定の流れ
図12は、かかる原因ごとの判別ルールRLを学習する学習装置100の構成を示し、
図13は、この学習装置100における学習の流れを示す。
【0066】
図12に示す洗濯乾燥機90は、原因ごとの判別ルールRLの作成のために用いられる洗濯乾燥機であり、時計91、駆動・動力部92、複数のセンサ93、制御部94及びデータ取得部95を備える。これら時計91、駆動・動力部92、各センサ93、制御部94及びデータ取得部95は、
図11について上述した洗濯乾燥機81の対応部位(時計11、駆動・動力部12,センサ13,制御部30又はデータ取得部82)と同様の機能及び構成を有するものであるため、ここでの説明は省略する。
【0067】
かかる洗濯乾燥機90のデータ取得部95は、
図11のデータ取得部82と同様に、制御部94が駆動・動力部92に対して指令値COM10を出力した前後の一定期間や、予め設定された時間帯のみの運転データDT10を取得し、取得したこれらの運転データDT10を結合した運転データ時系列データDT11を生成し、生成した運転データ時系列データDT11を学習装置100に出力する。
【0068】
学習装置100は、図示しないCPU、メモリ及び記憶装置などの情報処理資源を備えたコンピュータ装置である。なお学習装置100を分析サーバ83(
図11)と併用するようにしてもよい。学習装置100の原因推定部101には、フィルタの目詰まり、ダクトの詰まり、ブロワ又はヒータの故障などの乾燥不良の各原因にそれぞれ対応させた判定部102及び判別ルールRLが設けられる。
【0069】
そして各判定部102には、洗濯乾燥機90のデータ取得部95から与えられた各運転データ時系列データDT11のうち、対応する原因に起因する乾燥不良の学習に必要な学習用の運転データ時系列データDT11がそれぞれ与えられる(
図13のS30)。例えば、ヒータの不具合に対応する判定部102には、ヒータにより暖められた空気の温度を計測する温度センサからの運転データDT10から生成された運転データ時系列データDT11などが与えられる。
【0070】
そして、各判定部102は、与えられた運転データ時系列データDT11を
図10について上述した16種類の類似度尺度のクラスタリングをそれぞれ行う。このとき各判定部102には、学習装置100に対するユーザ操作等に基づいて、乾燥不良の原因が対応する原因によるものであるか否かの答えが与えられる。かくして、各判定部102は、この答えと、上述の16種類の類似度尺度のクラスタリングのクラスタリング結果とに基づいて
図9に示すような分類型と故障率との関係情報104をそれぞれ作成し、作成した関係情報104を対応する機械学習部103に出力する(
図13のS31)。
【0071】
機械学習部103は、対応する判定部102から与えられた関係情報104に基づいて、上述の16種類の類似度尺度のクラスタリングのクラスタリング結果と、対応する原因との相関関係を学習し(
図13のS32)、学習結果に基づいて判別ルールRLを必要に応じて更新する(
図13のステップS33)。
【0072】
そして学習装置100では、学習用の洗濯乾燥機90から運転データ時系列データDT11が与えられるごとに上述のステップS30~ステップS33の処理が繰り返される。これにより各原因にそれぞれ対応した各判別ルールRLの学習が行われる。
【0073】
一方、
図14は、上述のようにして学習が行われた各判別ルールRLを用いて分析サーバ83(
図11)において実行される判定処理の流れを示す。分析サーバ83の各判定部85(
図11)には、洗濯乾燥機81(
図11)のデータ取得部82(
図11)からネットワーク4(
図1)を介して与えられた各運転データ時系列データDT3のうち、対応する原因に応じた運転データ時系列データDT3(
図11)がそれぞれ与えられる(S40)。
【0074】
そして各判定部85は、与えられた運転データ時系列データDT3に対して16種類の類似度尺度のクラスタリングをそれぞれ行い(S41)、これら16種類の類似度尺度のクラスタリングのクラスタリング結果に基づいて、乾燥不良が対応する原因によるものであるか否かを判定し、判定結果を推定結果出力部86(
図11)に出力する(S42)。
【0075】
(2-4)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態の乾燥不良原因推定システム80では、洗濯乾燥機2の各センサ13から出力された運転データDT1のうち、制御部30が駆動・動力部12に対して指令値COM1を出力した前後の一定期間や、予め設定された特定の時間帯の運転データDT1の時系列データに基づいて洗濯乾燥機2の不良原因を特定する。
【0076】
従って、本実施の形態の乾燥不良原因推定システム80によれば、第1の実施の形態の乾燥不良原因推定システム1と同様に、制御部30がどの駆動・動力部12に対して指令値COM1を出力した場合に運転データDT1が異常な値を示したかを取得したかを特定することができ、これに伴って乾燥不良の不良原因を特定することができる。よって本乾燥不良原因推定システム80によれば、原因となり得る部位が複数存在する不良原因を効率良く推定することができる。
【0077】
(3)他の実施の形態
なお上述の第1の実施の形態においては、
図2について上述したように、原因ごとの原因モデル27及び判定部32をそれぞれ設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、
図2との対応部分に同一符号を付した
図15に示すように、分析サーバ110の原因推定部111を、すべての原因を混在させて学習させた1つの混合原因モデル112及び判定部113により構成するようにしてもよい。このようにしても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。これと同様に第2の実施の形態についてもすべての判別ルールRLを混在させた1つの判別ルール及び判別部により分析サーバの原因推定部を構成するようにしてもよい。
【0078】
また上述の第1及び第2の実施の形態においては、原因推定部33,84や推定結果出力部34,86といった洗濯乾燥機2,81の乾燥不良の原因を推定する機能部を洗濯乾燥機2,81とは別の分析サーバ3,83に配置するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これらの機能部を洗濯乾燥機2,81に設けるようにしてもよい。
【0079】
この場合において、例えば、Bluetooth(登録商標)などの短距離通信機能が搭載されたスマートフォンやタブレットなどを経由して原因推定部の推定結果を洗濯乾燥機から取得し、取得した推定結果をネットワーク4を介してメーカのセンタなどに転送できるようにしてもよい。
【0080】
さらに上述の第1及び第2の実施の形態においては、本発明を洗濯乾燥機2,81の乾燥不良の原因を推定する乾燥不良原因推定システム1,80に適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、乾燥不良以外の不良の原因を推定する種々の不良原因推定装置に広く適用することができる。また洗濯乾燥機2,81以外の電力機器の不良原因を推定する不良原因推定装置にも適用することができる。
【0081】
さらに上述の第2の実施の形態においては、時系列クラスタリングのため類似性尺度として
図10に示す16種類のものを適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その一部又は全部をこれらの16種類の類似性尺度以外の類似性尺度を用いるようにしてもよく、また類似性尺度の個数としては16種類以外であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、洗濯乾燥機などの電力機器の不良原因を推定する種々の不良原因推定装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1,80,90……乾燥不良原因推定システム、2,81……洗濯乾燥機、3,83,111……分析サーバ、12,42,92……駆動・動力部、13,43,93……センサ、20……CPU、27,112……原因モデル、30,44,94……制御部、31,45,82,95……データ取得部、32,51,85,102,113……判定部、33,84,111……原因推定部、34,86……推定結果出力部、103……機械学習部、COM1,COM2……指令値、DT1,DT2,DT10……運転データ、DT3,DT11……運転データ時系列データ、RL……判別ルール。