(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】指紋映像を生成する方法、及び指紋センサ
(51)【国際特許分類】
G06T 1/00 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
G06T1/00 400G
(21)【出願番号】P 2020136260
(22)【出願日】2020-08-12
【審査請求日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】10-2019-0133271
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】孫 景 顯
(72)【発明者】
【氏名】朴 宰 徹
(72)【発明者】
【氏名】金 鎭 明
【審査官】伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/062810(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/062932(WO,A1)
【文献】特開2008-263395(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0252742(US,A1)
【文献】特開平01-205676(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2017-0048705(KR,A)
【文献】森村浩季 外5名,ワンチップ指紋認証LSIに適した超低消費電力指紋センシング回路技術,電子情報通信学会技術研究報告,第104巻 第67号,社団法人電子情報通信学会,2004年05月14日,pp.41~46
【文献】Heo Sanghyun et al.,“A low-offset, low-noise, fully differential receiver with a differential signaling method for fingerprint mutual capacitive touch screen”,2017 International SoC Design Conference (ISOCC)[online],IEEE,2017年11月05日,pp.166-167,[検索日 2024.4.30], インターネット:<URL:https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=8368845&tag=1>,DOI: 10.1109/ISOCC.2017.8368845
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
G06T 1/00
G06T 1/60
G06T 7/00
G06V 40/00 - 40/16
G06V 40/18 - 40/19
G06V 40/30 - 40/70
H04N 5/30 - 5/33
H04N 23/11
H04N 23/20 - 23/30
H04N 25/00
H04N 25/20 - 25/61
H04N 25/615 - 25/79
CSDB(日本国特許庁)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検出回路それぞれの増幅器の特性に基づき、指紋センサと連結された複数の検出回路それぞれから除去される電荷量を決定する段階と、
前記複数の検出回路それぞれに入力された第1電気量から前記電荷量を取り除くことにより、第2電気量を獲得する段階と、
積分値を獲得するために、前記第2電気量を積分する段階と、
所定基準値と、前記第2電気量の積分値との比較に基づき、指紋映像を生成する段階と、を含む指紋映像を生成する方法。
【請求項2】
前記複数の検出回路それぞれは、電流源及び制御信号により、前記複数の検出回路と前記電流源とを連結するスイッチを含み、
前記決定する段階は、前記スイッチのターンオン時間、及び前記複数の検出回路それぞれに含まれた前記電流源から生成された電流サイズに基づき、前記電荷量を決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定基準値は、前記複数の検出回路それぞれに含まれた増幅器の入力オフセット電圧に対応する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の検出回路それぞれに含まれたADC(analog-digital-converter)の出力値に基づき、前記増幅器の入力オフセット電圧を決定する段階をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電荷量を決定する段階は、
前記第1電気量の第1成分が前記増幅器の前記入力オフセット電圧より小さくならないように、前記電荷量を決定する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記電流源から生成された前記電流サイズが固定された状態で、前記スイッチのターンオン時間を延長させることにより、前記第1電気量の第1成分が、前記複数の検出回路それぞれに含まれた増幅器の入力オフセット電圧より小さくならない前記スイッチの最大ターンオン時間を決定する段階と、
前記電流源から生成された前記電流サイズ、及び前記スイッチのターンオン時間を調整することにより、前記第1成分が前記増幅器の入力オフセット電圧より小さくならない前記電流源の最大電流サイズを決定する段階と、をさらに含み、
前記第2電気量を獲得する段階は、
前記最大電流サイズ及び前記最大ターンオン時間に基づき、前記電荷量を決定し、前記第1電気量から前記決定された電荷量を取り除くことにより、前記第2電気量を獲得する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記スイッチのターンオン時間が固定された状態で、前記電流源から生成された前記電流サイズを増加させることにより、前記第1電気量の第1成分が前記複数の検出回路それぞれに含まれた増幅器の入力オフセット電圧より小さくならない最大電流サイズを決定する段階と、
前記スイッチのターンオン時間、及び前記電流源から生成された前記電流サイズを調整することにより、前記第1成分が前記入力オフセット電圧より小さくならない前記スイッチの最大ターンオン時間を決定する段階と、をさらに含み、
前記第2電気量を獲得する段階は、
前記最大電流サイズ及び前記最大ターンオン時間に基づき、前記電荷量を決定し、前記第1電気量から前記決定された電荷量を取り除くことにより、前記第2電気量を獲得する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記積分値が前記所定基準値以上であることに基づき、前記電荷量を決定し、前記第2電気量を積分する段階を少なくとも1回以上反復する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記所定基準値は、前記複数の検出回路それぞれの信号対ノイズ比を示す、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の方法をコンピュータで実行させるためのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体。
【請求項11】
複数の駆動電極、及び複数の検出電極を含む指紋センサと、
前記指紋センサと連結された複数の検出回路と、
少なくとも1つのプロセッサと、を含み、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
複数の検出回路それぞれの増幅器の特性に基づき、指紋センサと連結された複数の検出回路それぞれから除去される電荷量を決定し、
前記複数の検出回路それぞれに入力された第1電気量から前記電荷量を取り除くことにより、第2電気量を獲得し、
積分値を獲得するために、前記第2電気量を積分し、
所定基準値と、前記第2電気量の積分値との比較に基づき、指紋映像を生成する装置。
【請求項12】
前記複数の検出回路それぞれは、電流源及び制御信号により、前記複数の検出回路と前記電流源とを連結するスイッチを含み、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記スイッチのターンオン時間、及び前記複数の検出回路それぞれに含まれた前記電流源から生成された電流サイズに基づき、前記電荷量を決定する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記複数の検出回路それぞれは、増幅器を含み、
前記所定基準値は、前記複数の検出回路それぞれに含まれた前記増幅器の入力オフセット電圧に対応する、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記複数の検出回路それぞれに含まれたADC(analog-digital-converter)の出力値に基づき、前記増幅器の入力オフセット電圧を決定する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記第1電気量の第1成分が、前記増幅器の前記入力オフセット電圧より小さくならないように、前記電荷量を決定する、請求項13または14に記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記電流源から生成された前記電流サイズが固定された状態で、前記スイッチのターンオン時間を延長させることにより、前記第1電気量の第1成分が前記複数の検出回路それぞれに含まれた増幅器の入力オフセット電圧より小さくならない前記スイッチの最大ターンオン時間を決定し、
前記電流源から生成された前記電流サイズ、及び前記スイッチのターンオン時間を調整することにより、前記第1成分が前記増幅器の入力オフセット電圧より小さくならない前記電流源の最大電流サイズを決定し、
前記最大電流サイズ及び前記最大ターンオン時間に基づき、前記電荷量を決定し、前記第1電気量から前記決定された電荷量を取り除くことにより、前記第2電気量を獲得する、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記スイッチのターンオン時間が固定された状態で、前記電流源から生成された前記電流サイズを増大させることにより、前記第1電気量の第1成分が、前記複数の検出回路それぞれに含まれた増幅器の入力オフセット電圧より小さくならない最大電流サイズを決定し、
前記スイッチのターンオン時間、及び前記電流源から生成された前記電流サイズを調整することにより、前記第1成分が前記入力オフセット電圧より小さくならない前記スイッチの最大ターンオン時間を決定し、
前記最大電流サイズ及び前記最大ターンオン時間に基づき、前記電荷量を決定し、前記第1電気量から前記決定された電荷量を取り除くことにより、前記第2電気量を獲得する、請求項12に記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記積分値が前記所定基準値以上であることに基づき、前記電荷量を決定し、前記第2電気量を積分する過程を少なくとも1回以上反復する、請求項11に記載の装置。
【請求項19】
前記所定基準値は、前記複数の検出回路それぞれの信号対ノイズ比を示す、請求項11ないし18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
複数の駆動電極、及び複数の検出電極を含む指紋センサと、
前記指紋センサの複数の検出電極それぞれから第1電気量を受信する、ADC(analog-digital-converter)、電流源、及び前記ADCと前記電流源とを連結するスイッチを含む、複数の検出回路と、
少なくとも1つのプロセッサと、を含み、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記ADCの出力電圧に基づき、前記複数の検出回路それぞれから除去される候補電荷量を決定し、
前記第1電気量が所定基準値より小さくなるまで、第1回数ほど前記第1電気量から前記候補電荷量を取り除くことによって獲得された第2電気量を積分し、
前記第2電気量を前記第1回数より少ない第2回数で前記第2電気量を積分することによって獲得された前記第2電気量の積分値に基づき、前記複数の検出回路それぞれから除去される最終電荷量を決定し、
前記複数の検出回路から前記最終電荷量を取り除くことによって指紋映像を生成する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋映像を生成する方法、及び指紋センサに関する。
【背景技術】
【0002】
指紋、音声、顔、手または虹彩のような個人の固有特徴を利用した個人認証の必要性が、だんだんと拡大されてきている。個人認証機能は、金融機器、出入り統制機、モバイル装置、ノート型パソコンなどで主に使用され、最近では、スマートフォンのようなモバイル装置が広く普及されることにより、スマートフォン内に保存された多くの保安情報を保護するために、個人認証のための指紋認識装置が採用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明がなそうとする課題は、指紋映像を生成する方法、及び指紋センサを提供するところにある。また、前記方法をコンピュータで実行させるためのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体を提供するところにある。本発明が解決しようとする技術的課題は、前述のような技術的課題に限定されるものではなく、他の技術的課題が存在しうる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一側面による指紋映像を生成する方法は、複数の検出回路それぞれの増幅器の特性に基づき、指紋センサと連結された複数の検出回路それぞれから除去される電荷量(quantity of electric charge)を決定する段階と、前記複数の検出回路それぞれに入力された第1電気量から前記電荷量を取り除くことにより、第2電気量を獲得する段階と、積分値を獲得するために、前記第2電気量を積分する段階と、所定の基準値(threshold value)と、前記第2電気量の積分値との比較に基づき、指紋映像を生成する段階と、を含む。
【0005】
他の側面による、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体は、前述の方法をコンピュータで実行させるためのプログラムを記録した記録媒体を含む。
【0006】
さらに他の側面による装置は、複数の駆動電極、及び複数の検出電極を含む指紋センサと、前記指紋センサと連結された複数の検出回路と、少なくとも1つのプロセッサと、を含み、前記少なくとも1つのプロセッサは、複数の検出回路それぞれの増幅器の特性に基づき、指紋センサと連結された複数の検出回路それぞれから除去される電荷量を決定し、前記複数の検出回路それぞれに入力された第1電気量から前記電荷量を取り除くことにより、第2電気量を獲得し、積分値を獲得するために、前記第2電気量を積分し、所定の基準値と、前記第2電気量の積分値との比較に基づき、指紋映像を生成する。
【0007】
さらに他の側面による装置は、複数の駆動電極、及び複数の検出電極を含む指紋センサと、前記指紋センサの複数の検出電極それぞれから第1電気量を受信する、ADC(analog-digital-converter)、電流源、及び前記ADCと前記電流源とを連結するスイッチを含む、複数の検出回路と、少なくとも1つのプロセッサと、を含み、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記ADCの出力電圧に基づき、前記複数の検出回路それぞれから除去される候補電荷量を決定し、前記第1電気量が所定の基準値より小さくなるまで、第1回数ほど前記第1電気量から前記候補電荷量を取り除くことによって獲得された第2電気量を積分し、前記第2電気量を前記第1回数より少ない第2回数で前記第2電気量を積分することによって獲得された前記第2電気量の積分値に基づき、前記複数の検出回路それぞれから除去される最終電荷量を決定し、前記複数の検出回路から前記最終電荷量を取り除くことによって指紋映像を生成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置は、検出回路ごとに最適の電荷量を決定し、決定された電荷量により、電流源の電流サイズ(電流量)、及びスイッチの動作時間を設定することができる。これにより、積分限界値による制限なしに、該装置は、映像生成に必要な有効電荷量に対して十分な回数の積分を行うことができる。従って、該装置は、センサが感知した対象体についての高品質映像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】指紋映像を生成する装置の一例を図示した図面である。
【
図2】センサのノードそれぞれに対応する相互静電容量を概念的に示した図面である。
【
図3】受信回路に含まれた検出回路の一例を図示した図面である。
【
図4】映像を生成する方法の一例を示したフローチャートである。
【
図5】プロセッサが電荷量を決定する一例を示したフローチャートである。
【
図6】プロセッサが最終電荷量を決定する例について説明するための図面である。
【
図7】プロセッサが候補電荷量を設定する一例について説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図7のフローチャートに記載された方法について具体的に説明するための図面である。
【
図9】プロセッサが候補電荷量を設定する他の例について説明するためのフローチャートである。
【
図10】受信回路に含まれた検出回路の他の例を図示した図面である。
【
図11】一実施形態による指紋映像、及び比較例による指紋映像を図示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態で使用される用語は、可能な限り現在汎用される一般的な用語を選択したが、それは、当分野の当業者の意図、判例、または新たな技術の出現などによっても異なる。また、特定の場合、出願人が任意に選定した用語もあり、その場合、当該説明部分で詳細にその意味を記載する。従って、明細書で使用される用語は、単純な用語の名称ではなく、その用語が有する意味と、明細書の全般にわたる内容とを基に定義されなければならない。
【0011】
明細書全体において、ある部分がある構成要素「含む」とするとき、それは、特別に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいということを意味する。また、明細書に記載された「…部」、「…モジュール」のような用語は、少なくとも1つの機能や動作を処理する単位を意味し、それは、ハードウェアまたはソフトウェアによって具現されるか、あるいはハードウェアとソフトウェアとの結合によっても具現される。
【0012】
以下では、添付図面を参照し、実施形態について詳細に説明する。しかし、本実施形態は、さまざまに異なる形態にも具現され、ここで説明する例に限定されるものではない。
【0013】
以下においては、図面を参照し、本実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、指紋映像を生成する装置の一例を図示した図面である。
【0015】
図1を参照すれば、装置100は、センサ110、電子回路120、プロセッサ123、メモリ124及びディスプレイ125を含む。また、電子回路120は、送信回路121及び受信回路122を含む。
図1の装置100には、関連構成要素だけが図示されているが、他の汎用的な構成要素がさらに含まれてもよいということは、関連技術分野で当業者であるならば、理解することができるであろう。
【0016】
プロセッサ123は、多数の論理ゲートのアレイによっても具現され、汎用的なマイクロプロセッサと、該マイクロプロセッサで実行されうるプログラムが保存されたメモリとの組み合わせによっても具現される。また、それと異なる形態のハードウェアによってもプロセッサ123が具現されるということは、関連技術分野で当業者であるならば、理解することができるであろう。
【0017】
例えば、装置100は、指紋読取り機(fingerprint reader)または指紋スキャナ(fingerprint scanner)でもある。
【0018】
センサ110は、複数の駆動電極Tx、及び複数の駆動電極Txと交差する方向に形成された複数の検出電極Rxを含む。
図1には、駆動電極Tx及び検出電極Rxの数がそれぞれ10個であるように図示されているが、それに限定されるものではない。
【0019】
送信回路121は、駆動電極Txに駆動信号を印加するモジュールを含み、受信回路122は、検出電極Rxから電気信号を測定するモジュールを含んでもよい。
【0020】
センサ110の駆動電極Txと検出電極Rxは、互いに交差する方向にも形成される。
【0021】
図1は、例示的に駆動電極Txと検出電極Rxとが互いに直交するように図示されているが、それに限定されるものではない。言い換えれば、駆動電極Txが形成された方向と、検出電極Rxが形成された方向との角度は、90゜でなくともよい。
【0022】
センサ110上にユーザの指が近付けば、センサ110の駆動電極Txそれぞれと、検出電極Rxとの相互静電容量(mutual capacitance)が異なりもする。例えば、ユーザの指紋パターン形態により、センサ110において、駆動電極Txと検出電極Rxとが交差するノードそれぞれでの相互静電容量が異なるようにも変わる。駆動電極Txの間隔、及び検出電極Rxの間隔が狭いほど、指紋センサの解像度が高くもなる。センサ110上には、駆動電極Tx及び検出電極Rxを保護するためのパッシベーション(passivation)がさらに含まれてもよい。
【0023】
例えば、駆動電極Tx及び検出電極Rxは、線電極によっても構成される。また、駆動電極Txそれぞれは、駆動電極Txと検出電極Rxとが交差するノード間に設けられた所定のパターンをさらに含んでもよい。前述のパターンは、多角形、円形のような多様な形態を有することができる。同様に、検出電極Rxそれぞれも、前述のノード間に設けられた所定のパターンをさらに含んでもよい。
【0024】
送信回路121は、駆動電極Txに駆動信号を印加することができる。例えば、送信回路121は、駆動電極Txそれぞれに、電圧パルスを印加することができる。受信回路122は、検出電極Rxからの電気信号を測定することができる。一例として、受信回路122は、検出電極Rxそれぞれに流れる電流を測定することができる。他の例として、受信回路122は、検出電極Rxそれぞれの電位を測定することもできる。
【0025】
プロセッサ123は、装置100に含まれた送信回路121及び受信回路122の動作を全般的に制御する。例えば、プロセッサ123は、送信回路121が駆動電極Txそれぞれに印加する電圧パルスの大きさ、印加時間などを制御することができる。また、プロセッサ123は、駆動電極Txのうち一部に電圧パルスが印加されうるように、送信回路121を制御することができる。
【0026】
プロセッサ123は、受信回路122が受信した電流または電位を利用し、指紋と係わるデータを生成して処理することができる。例えば、プロセッサ123は、受信回路122が受信した電流または電位を利用し、指紋映像に対応するデータを生成し、データに含まれたピクセル値を利用し、指紋映像を生成することができる。
【0027】
図2は、センサのノードそれぞれに対応する相互静電容量を概念的に示した図面である。
【0028】
図2を参照すれば、駆動電極Txと検出電極Rxとの相互静電容量は、駆動電極Txと検出電極Rxとが交差するノードにも対応する。
【0029】
例えば、第1駆動電極Tx1と第1検出電極Rx1との相互静電容量C11は、第1駆動電極Tx1と第1検出電極Rx1とが交差するノードN11からも検出される。同様に、m番目(ここで、mは、任意の自然数である)駆動電極Txmとn番目(ここで、nは、任意の自然数である)検出電極Rxnとの相互静電容量Cmnは、m番目駆動電極Txmとn番目検出電極Rxnとが交差するノードNmnにも対応する。以下では、ノードNmnにおける相互静電容量は、m番目駆動電極Txmとn番目検出電極Rxnとの相互静電容量を意味する。
【0030】
駆動電極Txと検出電極Rxとにより、センサ110の複数のチャネルが定義されうる。例えば、該チャネルは、駆動電極Txと検出電極Rxとが交差することによって形成されたノードにも対応する。例えば、チャネルCH11は、ノードN11にも対応する。
【0031】
例えば、複数のノードそれぞれにおける相互静電容量を測定するために、送信回路121は、駆動電極Txそれぞれに順次に互いに異なる駆動信号を印加することができる。また、受信回路122は、検出電極Rxそれぞれから、個別的に電気信号を測定することができる。例えば、相互静電容量C11を測定する場合、第1駆動電極Tx1に駆動信号が印加され、第1検出電極Rx1からの電気信号が測定されうる。同様に、相互静電容量Cmnを測定する場合、m番目駆動電極Txmに駆動信号が印加され、n番目検出電極Rxnからの電気信号が測定されうる。
【0032】
受信回路122は、検出電極Rxそれぞれに連結された検出回路を含んでもよい。以下、
図3を参照し、検出回路の一例について説明する。
【0033】
図3は、受信回路に含まれた検出回路の一例を図示した図面である。
【0034】
図3を参照すれば、検出回路300は、第1部分310及び第2部分320を含む。
図3の検出回路300には、関連構成要素だけが図示されているが、他の汎用的な構成要素がさらに含まれてもよいということは、関連技術分野で当業者であるならば、理解することができるであろう。
【0035】
第1部分310は、検出電極Rxから入力された電気信号を処理し、少なくとも1つの増幅器(amplifier)及びフィードバックキャパシタCfを含んでもよい。少なくとも1つの増幅器は、演算増幅器(operational amplifier)によっても具現される。検出電極Rxから入力された電気信号は、センサ110が感知した対象体を示す電気量(electrical quantity)によっても表現される。ここで、該電気量は、ある測定によって定量化されうる任意の電気的特性(electrical property)、パラメータまたは属性(attribute)についての説明に使用される。例えば、該電気量は、電荷、電流、電圧、インピーダンス、静電容量(相互静電容量)または抵抗を含む。もしセンサ110が感知する対象体が指紋であると仮定すれば、検出電極Rxから入力された電気量は、指紋の山部(ridge)に対応する電圧と谷部(valley)に対応する電圧との差、または山部と谷部との差に対応する相互静電容量(すなわち、山部に対応する相互静電容量と、谷部に対応する相互静電容量との差)ΔCmとも表現される。
【0036】
第2部分320は、第1部分310に入力される電気量から除去される電荷量(quantity of electric charge)を生成し、電流源Idc及びスイッチSWを含んでもよい。電荷Qは、電流源Idcから供給された電流I、及びスイッチSWがターンオンされた間のスイッチ連結時間(または、スイッチターンオン時間)tによって生成される。電荷Qの電荷量は、電流Iとスイッチ連結時間tとの積(すなわち、Q=I×t)と同一でもある。検出回路300から提供された電荷は、第2部分320によって生成された電荷量ほど減少される。言い換えれば、第1部分310に入力される電気量から、第2部分320によって生成された電荷量が除去され、除去された結果が、第1部分310を経て、出力端子Voutに出力される。従って、スイッチSWの閉鎖(closed)時間が長くなるほど、第2部分320で生成される電荷量が増加し、検出回路300から生成される総電荷量が低減される。また、電流源Idcで生成される電流の大きさが大きくなるほど、第1部分310で生成された電気量から除去される電気量が大きくなる。
【0037】
検出回路300の入力端子Vinは、センサ110に含まれた検出電極Rxのうちいずれか一つとも連結される。言い換えれば、センサ110にn個の検出電極Rxが含まれていると仮定すれば、受信回路122は、n個の検出回路300を含んでもよい。
【0038】
図1を参照して説明したように、センサ110上には、パッシベーションが積層されうる。一般的に、静電式センサを採用したシステムは、センサの厚みが厚くなるほど、良好な画質の映像を獲得するのに制約が伴う。もし静電式センサシステムが、ユーザの指紋を感知する場合、指紋の山部と谷部との差に対応する相互静電容量ΔC
mは、パッシベーション厚の二乗に反比例する。従って、パッシベーション厚がある程度レベル以上に厚い場合には、指紋の山部と谷部との差に対応する相互静電容量ΔC
mを検出し難くなる。
【0039】
指紋映像の品質は、指紋の山部と谷部との差に対応する相互静電容量ΔCmの大きさに比例する。従って、指紋の山部と谷部との差に対応する相互静電容量ΔCmの大きさが小さくなるほど、指紋映像の品質は、低下する。
【0040】
従って、一般的には、静電式センサを採用したシステムは、
図3の入力端子V
inに入力される信号(すなわち、検出電極Rxからの信号)を数回ないし数百回積分し、指紋の山部と谷部との差に対応する相互静電容量ΔC
mを累積する。
【0041】
一方、第1部分310が使用可能な最大電圧が存在するので、前述の積分の可能な回数は、制限されうる。言い換えれば、積分を介して得られる電荷量による出力Voutが、第1部分310が使用可能な最大電圧Vddより大きいか、あるいはそれと同一になるまでは、前述の積分の反復遂行が可能である。または、積分を介して獲得された電荷量が、第1部分310のフィードバック容量Cfの容量と同一になるまでは、前述の積分の反復遂行が可能である。一般的に、積分の回数が多くなるほど、出力端子Voutから出力される信号の信号対ノイズ比(signal to noise ratio)が向上する。ただし、前述のように、最大電圧Vddにより、積分回数は、制限的であるので、積分を介して得られる電荷量(または、相互静電容量ΔCm)から不要な電荷量を最大限取り除くことが望ましい。
【0042】
一実施形態による検出回路300は、第2部分320を含み、第2部分320のスイッチSWが閉鎖されれば、電流源Idcから第1部分310への電荷が除去され、第1部分310に入力される電荷が減る結果が発生する。従って、第1部分310によって積分が反復して行われても、積分を介して得られる電荷量が積分限界値を超えない。それにより、積分が行われうる回数が増加し、それは、すなわち、指紋映像の品質向上につながる。以下では、説明の便宜のために、第1部分310に入力される電荷が減ることを、第1部分310に入力される電荷が除去されると表現する。
【0043】
特に、検出回路300の第2部分320は、個別的に第1部分310と連結される。言い換えれば、複数の第1部分310に単一の第2部分320が連結されず、第1部分310それぞれに第2部分320それぞれが連結される。従って、センサ110に連結された複数の検出回路300の仕様がそれぞれ異なっても、検出回路300別に最適の電荷量が除去されうる。
【0044】
以下、
図4ないし
図10を参照し、装置100が検出回路300別に最適の電荷量を取り除き、不要な電荷が除去された電荷量を積分することにより、センサ110が感知した対象体の映像を生成する例について説明する。
【0045】
図4は、映像を生成する方法の一例を示したフローチャートである。
【0046】
図4を参照すれば、映像を生成する方法は、
図1ないし
図3に図示された装置100、センサ110及び電子回路120において、時系列的に処理される段階によって構成される。従って、以下で省略された内容であるとしても、
図1ないし
図3に図示された装置100、センサ110及び電子回路120について、以上で記述された内容は、
図4の映像を生成する方法にも適用されるということが分かる。
【0047】
410段階において、プロセッサ123は、電子回路120に含まれた検出回路300の仕様に基づき、検出回路300それぞれに対応する電荷量を決定する。例えば、検出回路300の仕様及びパラメータは、それぞれの検出回路300の増幅器の位相マージン(phase margin)、利得マージン(gain margin)、差動電圧利得(differential voltage gain)、入力キャパシタンス及び入力オフセット電圧を含んでもよいが、それらに制限されるものではない。
【0048】
例えば、プロセッサ123は、検出回路300のオフセット(例えば、検出回路300の増幅器の入力オフセット電圧)に基づき、電荷量を決定することができる。ここで、該オフセットは、検出回路300後端のADC(analog-digital-converter)の出力値によっても決定される。例えば、プロセッサ123は、検出回路300に入力された第1電気量の第1成分が、検出回路300のオフセットより小さくならないように、電荷量を決定することができる。例えば、センサ110が指紋を感知するセンサであると仮定すれば、第1成分は、指紋の山部に対応する電圧でもあるが、それに制限されるものではない。
【0049】
そして、プロセッサ123は、決定された電荷量に対応するように、検出回路300に含まれた電流源Idcで発生する電流の大きさ、及び電流源Idcと連結されたスイッチSWの動作時間を調整する。例えば、プロセッサ123は、電流源Idcで発生する電流の大きさ、及びスイッチSWの動作時間を調整することにより、電荷量を演算する。例えば、電荷量Qは、電流サイズIと、前記電流が流れる時間Tとの積によっても決定される。従って、プロセッサ123は、電流源Idcで発生する電流の大きさと、スイッチSWの動作時間とにより、電荷量を演算することができる。
【0050】
ここで、スイッチSWの動作時間は、スイッチSWが閉鎖され、導電状態(conductive state)になる時間を意味する。例えば、
図3の検出回路300を参照すれば、スイッチSWが閉鎖された時間により、第1部分310で除去される電流が決定される。
【0051】
プロセッサ123が検出回路300に対応する電荷量を決定し、決定された電荷量に対応するように、電流源I
dcの電流の大きさ、及びスイッチSWの動作時間を調整する具体的な例は、
図5ないし
図9を参照して後述する。
【0052】
420段階において、プロセッサ123は、検出回路300それぞれに入力された第1電気量から、410段階によって決定された電荷量が除去された第2電気量を積分する。
【0053】
例えば、センサ110が指紋を感知するセンサである場合、第1電気量は、指紋の山部に対応する電圧と谷部に対応する電圧との差、または山部と谷部との差に対応する相互静電容量(すなわち、山部に対応する相互静電容量と、谷部に対応する相互静電容量との差)ΔCmでもある。
【0054】
プロセッサ123は、第1電気量から、410段階によって決定された電荷量を取り除く。そして、プロセッサ123は、第1電気量から、一部の電荷量が除去された第2電気量を積分する。それにより、指紋の山部と谷部との差に対応する相互静電容量ΔCmの大きさが大きくもなる。
【0055】
図3を参照して説明したように、積分の限界値が存在するので、前述の積分が可能な回数が制限されうる。しかし、プロセッサ123が第2電気量を積分することにより、積分の可能な回数が増加する。従って、少なくとも、仕様/パラメータ(例えば、検出回路300それぞれの増幅器の入力オフセット電圧)により、それぞれの検出回路300について調整された量ほど、センサ110のそれぞれのノードにおける相互静電容量が除去されるために、プロセッサ123が生成する映像の品質も上昇する。
【0056】
430段階において、プロセッサ123は、420段階の積分の結果が、所定の基準を満足するか否かということにより、電子回路120と連結されたセンサ110の感知に対応する映像を生成する。
【0057】
例えば、プロセッサ123は、420段階の積分の結果が、所定基準を満足する場合にだけ、センサ110の感知に対応する映像を生成することができる。ここで、該所定基準は、所定の信号対ノイズ比でもあり、例えば、該所定基準は、信号対ノイズ比が10dB以上でもある。しかし、該所定基準は、前述のところに制限されるものではない。
【0058】
もし420段階の積分結果が所定基準を満足しない場合、プロセッサ123は、410段階及び420段階を、少なくとも1回以上反復することができる。例えば、積分の結果が、所定の信号対ノイズ比を満足しない場合、プロセッサ123は、第2電気量が積分された第3電気量に基づき、電荷量をさらに決定する。言い換えれば、プロセッサ123は、第3電気量の第1成分が、検出回路300のオフセットより小さくならないように電荷量をさらに決定する。
【0059】
そして、プロセッサ123は、さらに決定された電荷量に対応するように、検出回路300に含まれた、電流源Idcで発生する電流の大きさ、及び電流源Idcと連結されたスイッチSWの動作時間をさらに調整する。
【0060】
そして、プロセッサ123は、第3電気量から、さらに決定された電荷量が除去された第4電気量をさらに積分する。そして、プロセッサ123は、さらに積分された結果が、所定基準を満足する場合にのみ、センサ110の感知に対応する映像を生成する。もしさらに積分された結果が、所定基準を満足することができない場合、前述の電荷量決定過程、電荷量除去過程及び電気量積分過程をさらに反復する。
【0061】
前述の過程反復を介して、プロセッサ123は、センサ110の感知した対象体を示す高い品質の映像を生成することができる。
【0062】
図5は、プロセッサが電荷量を決定する一例を示したフローチャートである。
【0063】
510段階において、プロセッサ123は、検出回路300それぞれのオフセットを確認する。例えば、プロセッサ123は、電気量の積分が遂行されていない状態での検出回路300に含まれたADCの出力値をオフセットと決定することができる。
【0064】
520段階において、プロセッサ123は、検出回路300それぞれの入力において、第1成分を確認する。例えば、プロセッサ123は、検出回路300に入力された電気量において、第1成分を確認することができる。もしセンサ110が指紋を感知するセンサである場合、第1成分は、指紋の山部に対応する電圧でもあるが、それに限定されるものではない。
【0065】
530段階において、プロセッサ123は、候補電荷量を設定する。例えば、プロセッサ123は、検出回路300の第2部分320の電流源Idc、及びスイッチSWのパラメータを調整することにより、候補電荷量を設定することができる。具体的には、プロセッサ123は、電流源Idcの電流サイズ、及びスイッチSWの動作時間を所定サイズずつ増大させることにより、候補電荷量を設定することができる。
【0066】
540段階において、プロセッサ123は、第1成分から候補電荷量を取り除いた大きさが、オフセットの大きさより小さいか否かということを判断する。例えば、第1成分が、指紋の山部に対応する電圧である場合、プロセッサ123は、指紋の山部に対応する電圧から候補電荷量を取り除いた大きさが、オフセットの大きさより小さくなるか否かということを判断する。もし第1成分から候補電荷量を取り除いた大きさが、オフセットの大きさより小さい場合には、550段階に進み、そうではない場合には、530段階に進み、候補電荷量を再設定する。
【0067】
550段階において、プロセッサ123は、最終電荷量を決定する。プロセッサ123は、第1成分から電荷量を取り除いた大きさが、オフセットより小さくならないように、最終電荷量を決定することができる。例えば、プロセッサ123は、第1成分から候補電荷量を取り除いた大きさが、初めてオフセットより小さくなる以前の候補電荷量を、最終電荷量と決定することができる。
【0068】
プロセッサ123が、電荷量が除去された第1成分の量がオフセット以上になるまで、530段階及び540段階を反復遂行する間、プロセッサ123は、それぞれの候補電荷量をメモリ124に保存し、530段階で設定された候補電荷量それぞれに、順に参照番号を割り当てることができる。参照番号は、530段階及び540段階が遂行された回数を示すことができる。プロセッサ123が、540段階のn番目動作において、540段階の条件が満足されたと判断すれば、530段階の(n-1)番目動作と係わる(n-1)番目参照番号に基づき、プロセッサ123は、530段階の(n-1)番目動作で設定された候補電荷量を検索することができる。例えば、プロセッサ123は、下記のデータがメモリ124に保存されるように、メモリ124を制御することができる。
【0069】
【0070】
以下、
図6を参照し、プロセッサ123が最終電荷量を決定する例について具体的に説明する。
【0071】
図6は、プロセッサが最終電荷量を決定する例について説明するための図面である。
まず、プロセッサ123は、検出回路300のADCの出力値をオフセット610と決定する。その後、プロセッサ123は、検出回路300に入力された電気量において、第1成分620を確認する。
【0072】
プロセッサ123は、検出回路300の電流源Idcの電流サイズ、及びスイッチSWの動作時間を調整し、候補電荷量を設定する。例えば、プロセッサ123は、電流サイズ及び動作時間を所定サイズほど増大させることにより、候補電荷量の大きさを増大させることができる。
【0073】
プロセッサ123は、第1成分620から候補電荷量を取り除いた結果(631,632,633)が、オフセット610より小さくなるか否かということを確認する。プロセッサ123は、候補電荷量の設定過程をm回(mは、自然数である)遂行し、第1成分620から候補電荷量を取り除いた結果(631,632,633)がオフセット610より小さくなるか否かということを確認する。
【0074】
例えば、第1成分620から最初候補電荷量を取り除いた結果(631)がオフセット610より大きい場合、プロセッサ123は、2番目候補電荷量を設定し、前述の過程を反復する。そのような方式で、第1成分620から(n+1)番目(nは、自然数である)候補電荷量を取り除いた結果(633)がオフセット610より初めて小さくなる場合、プロセッサ123は、n番目候補電荷量を最終電荷量と決定する。言い換えれば、第1成分620からn番目候補電荷量を取り除いた結果(632)がオフセット610と最も近接するように超える場合、プロセッサ123は、n番目候補電荷量を最終電荷量と決定する。
【0075】
一方、候補電荷量は、検出回路300の電流源Idcの電流サイズ、及びスイッチSWの動作時間が調整されることによっても設定される。例えば、プロセッサ123は、2段の調整過程を遂行し、候補電荷量を設定することができる。
【0076】
一例として、プロセッサ123は、電流源Idcの電流サイズが固定された状態で、スイッチSWの動作時間を延長させることにより、スイッチSWの最大動作時間を決定する1段階調整過程を遂行することができる。そして、プロセッサ123は、電流源Idcの電流サイズ、及びスイッチSWの動作時間を共に調整することにより、電流源Idcの最大電流サイズを決定する2段階調整過程を遂行することができる。
【0077】
他の例として、プロセッサ123は、スイッチSWの動作時間が固定された状態で、電流源Idcの電流サイズを増大させることにより、電流源Idcの最大電流サイズを決定する1段階調整過程を遂行することができる。そして、プロセッサ123は、電流源Idcの電流サイズ、及びスイッチSWの動作時間を共に調整することにより、スイッチSWの最大動作時間を決定する2段階調整過程を遂行することができる。
【0078】
以下、
図7ないし
図9を参照し、プロセッサ123が2段の調整過程を遂行し、候補電荷量を設定する例について具体的に説明する。
【0079】
図7は、プロセッサが候補電荷量を設定する一例について説明するための図面である。
【0080】
図7を参照すれば、710段階ないし740段階は、1段階調整過程に含まれてもよい。また、750段階ないし770段階は、2段階調整過程に含まれてもよい。
【0081】
710段階において、プロセッサ123は、電流源Idcから供給される電流の大きさを特定値に固定する。例えば、該特定値は、装置100のデフォルト(default)値でもあり、センサ110が感知する対象または積分回数により、適応的にも変更される。また、該特定値は、ユーザによっても変更される。
【0082】
720段階において、プロセッサ123は、スイッチSWの動作時間を延長させる。言い換えれば、プロセッサ123は、スイッチSWが開放される時間を延長させる。
【0083】
730段階において、プロセッサ123は、第1成分から第1候補電荷量を取り除いた大きさが、オフセットの大きさより小さいか否かということを判断する。例えば、プロセッサ123は、電流源Idcから供給される電流の大きさと、スイッチSWの動作時間とを乗じ、第1候補電荷量を演算することができる。もし第1成分から第1候補電荷量を取り除いた大きさが、オフセットの大きさより大きい場合、720段階に進み、そうではない場合、740段階に進む。
【0084】
740段階において、プロセッサ123は、スイッチSWの最大動作時間を決定する。例えば、プロセッサ123は、第1成分から第1候補電荷量を取り除いた大きさが、初めてオフセットより小さくなる以前の候補電荷量を選択する。そして、プロセッサ123は、選択された候補電荷量の演算に利用された動作時間を最大動作時間と決定する。ここで、プロセッサ123が、候補電荷量を選択する過程は、
図5及び
図6を参照して説明した通りである。
【0085】
総合すれば、710段階において、電流源Idcから供給される電流の大きさが決定され、740段階において、スイッチSWの動作時間が決定される。ただし、710段階ないし740段階が遂行されることによって決定される電流の大きさ、及び動作時間が最善の結果でもない。それは、710段階において、電流の大きさが特定値に固定されたことを前提にするからである。従って、プロセッサ123は、1段階調整過程を介し、粗い(coarse)調整を行い、2段階調整過程を介し、微細(fine)調整を行うことにより、最適の電流サイズ及び動作時間を決定することができる。
【0086】
750段階において、プロセッサ123は、スイッチSWの動作時間、及び電流源Idcから供給される電流サイズを調整する。そして、760段階において、プロセッサ123は、第1成分から第2候補電荷量を取り除いた大きさがオフセットの大きさより小さいか否かということを判断する。例えば、プロセッサ123は、750段階で調整された電流の大きさ、及び動作時間を乗じ、第2候補電荷量を演算することができる。もし第1成分から第1候補電荷量を取り除いた大きさがオフセットの大きさより大きい場合、750段階に進み、そうではない場合、770段階に進む。
【0087】
770段階において、プロセッサ123は、電流源I
dcの最大電流サイズを決定する。例えば、プロセッサ123は、第1成分から第2候補電荷量を取り除いた大きさが、初めてオフセットより小さくなる以前の候補電荷量を選択する。そして、プロセッサ123は、選択された候補電荷量の演算に利用された電流サイズを最大電流サイズに決定する。ここで、プロセッサ123が候補電荷量を選択する過程は、
図5及び
図6を参照して説明した通りである。
【0088】
図8は、
図7のフローチャートに記載された方法について具体的に説明するための図面である。
【0089】
図8には、電流源I
dcの電流サイズI、スイッチSWの動作時間T、及び電荷量Qで構成されたテーブルの一例が図示されている。ここで、電荷量Qは、電流サイズI及び動作時間Tの積として演算される。
【0090】
動作時間Tが1~20の間で1ずつ変更され、電流サイズIが1~20の間で1ずつ変更されると仮定する。また、1~20は、動作時間T及び電流サイズIの最小値から最大値までの相対的な大きさを示すと仮定する。その場合、プロセッサ123が選択することができる[動作時間T、電流サイズI]の組み合わせは、総400個である。従って、最適の動作時間T及び電流サイズIが決定されるためには、多くの演算が必要である。プロセッサ123が1段階調整及び2段階調整を遂行することにより、最適の動作時間T及び電流サイズIが決定されるのに必要な演算量が減少される。
【0091】
プロセッサ123は、電流サイズI及び動作時間Tのうちいずれか一つを特定値に固定した状態で、他の一つを増加させることにより、1段階調整を遂行することができる。例えば、プロセッサ123は、電流サイズIを14に固定した状態で、動作時間Tの大きさを増大加させる1段階調整を遂行することができる。例えば、
図8には、1段階調整により、最大動作時間Tが12に決定されているように図示されている。
【0092】
図8において、1段階調整は、電流サイズIを14に固定したことを前提にするために、1段階調整の結果である電荷量Qは、6.72Cが最適の電荷量でもない。言い換えれば、最適の電荷量Qは、6.72Cないし7.28Cの範囲のうちいずれか一つでもあるが、最適の電荷量Qが6.72Cであると確定することができない。
【0093】
プロセッサ123は、電流サイズI及び動作時間Tを調整することにより、2段階調整を遂行することができる。
図8において、2段階調整の遂行により、最適の電荷量Qは、7.2Cであるということが確認され、それにより、最大動作時間Tは、12に、最大電流サイズIは、15にも決定される。
【0094】
図7及び
図8を参照して説明したところよれば、プロセッサ123は、電流源I
dcから供給される電流サイズIを固定した状態で、1段階調整を遂行することができるが、それに制限されるものではない。
【0095】
以下、
図9を参照し、プロセッサ123がスイッチSWの動作時間Tを固定した状態で、1段階調整を遂行する例について説明する。
【0096】
図9は、プロセッサが候補電荷量を設定する他の例について説明するための図面である。
【0097】
図9を参照すれば、910段階ないし940段階は、1段階調整過程に含まれてもよい。また、950段階ないし970段階は、2段階調整過程に含まれてもよい。
【0098】
910段階において、プロセッサ123は、スイッチSWの動作時間を特定値に固定する。例えば、該特定値は、装置100のデフォルト値でもあり、センサ110が感知する対象、または積分回数により、適応的にも変更される。また、該特定値は、ユーザによっても変更される。
【0099】
920段階において、プロセッサ123は、電流源Idcの電流サイズを大きくする。そして、930段階において、プロセッサ123は、第1成分から第3候補電荷量を取り除いた大きさがオフセットの大きさより小さいか否かということを判断する。もし第1成分から第3候補電荷量を取り除いた大きさがオフセットの大きさより大きい場合、920段階に進み、そうではない場合、940段階に進む。
【0100】
940段階において、プロセッサ123は、電流源I
dcの最大電流サイズを決定する。例えば、プロセッサ123は、第1成分から第1候補電荷量を取り除いた大きさが初めてオフセットより小さくなる以前の候補電荷量を選択する。そして、プロセッサ123は、選択された候補電荷量の演算に利用された電流サイズを最大電流サイズに決定する。ここで、プロセッサ123が候補電荷量を選択する過程は、
図5及び
図6を参照して説明した通りである。
【0101】
950段階において、プロセッサ123は、スイッチSWの動作時間、及び電流源Idcから供給される電流の大きさを調整する。そして、960段階において、プロセッサ123は、第1成分から第4候補電荷量を取り除いた大きさがオフセットの大きさより小さいか否かということを判断する。もし第1成分から第4候補電荷量を取り除いた大きさがオフセットの大きさより大きい場合、950段階に進み、そうではない場合、970段階に進む。
【0102】
970段階において、プロセッサ123は、スイッチSWの最大動作時間を決定する。例えば、プロセッサ123は、第1成分から第2候補電荷量を取り除いた大きさが初めてオフセットより小さくなる以前の候補電荷量を選択する。そして、プロセッサ123は、選択された候補電荷量の演算に利用された動作時間を最大動作時間に決定する。ここで、プロセッサ123が候補電荷量を選択する過程は、
図5及び
図6を参照して説明した通りである。
【0103】
図10は、受信回路に含まれた検出回路の他の例を図示した図面である。
【0104】
図10には、検出回路1000の例が図示されている。
図3の検出回路300と、
図10の検出回路1000とを比較すれば、第1部分310と第1部分1010とが対応し、第2部分320と第2部分1020とが対応する。ただし、第1部分1010には、ADCがさらに含まれているが、それは、当業者に自明なことに過ぎない。従って、第1部分1010及び第2部分1020に係わる具体的な説明は、省略する。
【0105】
検出回路1000は、第3部分1030を含んでもよく、第3部分1030は、第2部分1020に含まれたスイッチの動作時間、及び電流源の電流サイズを制御することができる。
図10には、第3部分1030に別途のプロセッサ1033が含まれ、プロセッサ1033が、スイッチの動作時間、及び電流源の電流サイズを制御するように図示されているが、それに制限されるものではない。もし第3部分1030にプロセッサ1033が省略される場合、前述のプロセッサ1033の機能は、プロセッサ123(
図1)が遂行することができる。
【0106】
第3部分1030は、スイッチに対応するレジスタ1031、及び電流源に対応するレジスタ1032を含んでもよい。
図3ないし
図9を参照して説明したスイッチの動作時間の設定は、レジスタ1031にも保存され、電流源の電流サイズの設定は、レジスタ1032にも保存される。また、レジスタ1031及びレジスタ1032は、単一構成でもって3部分1030に含まれてもよい。
【0107】
前述のところによれば、装置100は、検出回路ごとに最適の電荷量を決定し、決定された電荷量により、電流源の電流サイズ、及びスイッチの動作時間を設定することができる。それにより、積分限界値による制限なしに、装置100は、映像を生成するのに必要な有効電荷量について、十分な回数の積分を行うことができる。従って、装置100は、センサが感知した対象体に係わる高品質映像を生成することができる。
【0108】
図11は、一実施形態による指紋映像、及び比較例による指紋映像を図示した図面である。
【0109】
一実施形態によれば、複数の検出回路300それぞれから除去された電荷量は、複数の検出回路300それぞれの増幅器特性(例えば、入力増幅器オフセット電圧(input amplifier offset voltage)により、複数の検出回路300それぞれについて最適化される。
【0110】
比較例1によれば、複数の検出回路300から電荷が除去されるものではない。比較例2によれば、最適化過程なしに、複数の検出回路300それぞれから、同一量の電荷が除去される。
【0111】
複数の検出回路300からそれぞれ出力された出力電圧VOUT1ないしVOUT4と、積分数との関係を示す一実施形態のグラフを参照すれば、比較例1及び比較例2よりさらに多数の積分が行われる。従って、比較例1及び比較例2より一実施形態による場合、さらに高品質の指紋映像が生成されるのである。
【0112】
また、
図11を参照すれば、一実施形態による装置100によって生成され、ディスプレイ125に表示される指紋映像Aは、比較例1及び比較例2によって生成及び表示される指紋映像B及び指紋映像Cに比べ、さらに高解像度を有する。
【0113】
なお、前述の方法は、コンピュータで実行されうるプログラムで作成可能であり、コンピュータで読み取り可能な記録媒体を利用し、前記プログラムを動作させる汎用デジタルコンピュータによっても具現される。また、前述の方法で使用されたデータの構造は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に多くの手段を介しても記録される。前記コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、マグネチック記録媒体(例えば、ROM(read only memory)、RAM(random access memory)、USB、フロッピーディスク、ハードディスクなど)、光学的判読媒体(例えば、CD-ROM、DVDなど)のような記録媒体を含む。
【0114】
本実施形態と係わる技術分野で当業者であるならば、前述の記載の本質的な特性から外れない範囲で変形された形態にも具現されるということを理解することができるであろう。従って、開示された方法は、限定的な観点ではなく、説明的な観点から考慮されなければならず、権利範囲は、前述の説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと同等な範囲内にある全ての差異を含むものであると解釈されなければならないのである。
【符号の説明】
【0115】
100 装置
110 センサ
120 電子回路