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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】ガスコンロ
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20240531BHJP
   F24C 3/00 20060101ALI20240531BHJP
   F23D 14/06 20060101ALN20240531BHJP
【FI】
F24C3/12 G
F24C3/12 J
F24C3/00 H
F23D14/06 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020146760
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2022041522
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】水谷 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】近藤 駿介
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-125637(JP,A)
【文献】特開2018-179309(JP,A)
【文献】特開2016-156546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/00、3/12
F23D 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主バーナと、該主バーナよりも火力が小さい副バーナとを有するコンロバーナを搭載し、前記主バーナから延設された主バーナ混合管の末端の開口部と、前記副バーナから前記主バーナ混合管とは異なる方向に延設された副バーナ混合管の末端の開口部とに、ガス通路が2つに分岐した各分岐路の先端のノズルから燃料ガスが噴射されると、該燃料ガスと空気との混合ガスが前記主バーナ混合管を通って前記主バーナの複数の炎口から噴出すると共に、前記混合ガスが前記副バーナ混合管を通って前記副バーナの複数の炎口から噴出し、当該混合ガスを燃焼させて調理容器を加熱するガスコンロにおいて、
前記主バーナ混合管の開口部および前記副バーナ混合管の開口部を内側に収容するカバーと、
前記カバー内における前記副バーナ混合管の開口部の近傍に設置された感熱素子と
を備え、
前記カバーは、
前記主バーナ混合管の開口部および前記副バーナ混合管の開口部の上方を一体に覆う上面板と、
前記主バーナ混合管の延設方向に対して前記副バーナ混合管から遠い側に鋭角をなして立設され、前記主バーナ混合管の開口部に面する封鎖壁と、
前記封鎖壁の側縁から前記主バーナ混合管の開口部に面して前記感熱素子の方向に配設され、前記主バーナ混合管の延設方向に対して鋭角をなして立設された誘導壁と
を有することを特徴とするガスコンロ。
【請求項2】
請求項1に記載のガスコンロにおいて、
前記封鎖壁と前記誘導壁との間の角度が鋭角になっている
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガスコンロにおいて、
前記カバーは、前記感熱素子を間に介在させて前記誘導壁と対向する補助壁を有しており、
前記誘導壁と前記補助壁との間隔は、前記主バーナ混合管側から前記感熱素子に近付くに連れて狭くなっている
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のガスコンロにおいて、
前記カバーは、前記封鎖壁における前記誘導壁とは反対側の側縁から該誘導壁と対向して配設された遮断壁を有する
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載のガスコンロにおいて、
前記ガス通路の分岐部分よりも上流側を開閉する電磁安全弁を備え、
前記感熱素子は、所定の温度上昇に伴って接点が閉じた状態から開いた状態に変化するバイメタルサーモスイッチであり、
前記電磁安全弁の開弁を保持するための電力を電源から供給する供給回路に前記バイメタルサーモスイッチが直列に接続されている
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項6】
請求項5に記載のガスコンロにおいて、
前記副バーナの前記炎口に臨ませて熱電対が設けられており、
前記電源は、前記熱電対に生じる熱起電力である
ことを特徴とするガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主バーナと副バーナとを有するコンロバーナで燃料ガスと空気との混合ガスを燃焼させて調理容器を加熱するガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスと空気との混合ガスをコンロバーナで燃焼させて、鍋などの調理容器を加熱するガスコンロが広く普及している。コンロバーナは、複数の炎口を有するバーナ本体と、一端がバーナ本体に接続されて他端に開口部が形成された混合管とを備えており、ガス通路を通じて供給される燃料ガスがノズルから混合管の開口部に噴射されると、周囲の空気を吸い込みながら混合管内に流入する。そして、混合管を通過した燃料ガスと空気との混合ガスは炎口から噴出し、点火プラグで点火すると燃焼が開始されて、調理容器を加熱する。
【0003】
こうしたガスコンロでは、調理容器から煮こぼれた際に約95%以上の炎口が煮こぼれ汁で塞がれると、混合管の開口部から炎が噴き出す現象(以下、逆噴という)が生じることがあり、逆噴によってガスコンロ内が焼損してしまう。そこで、逆噴を検知するために、混合管の開口部の付近に感熱素子を設置しておくことが提案されている(例えば、特許文献1)。逆噴が発生すると、混合管の開口部から噴き出した炎で感熱素子が加熱されるので、感熱素子での異常な温度上昇に基づいてガス通路を遮断し燃料ガスの供給を停止する。
【0004】
また、コンロバーナは、主バーナと、主バーナよりも火力が小さい副バーナとを有するものが知られており、主バーナに接続された主バーナ混合管、および副バーナに接続された副バーナ混合管を備えている。また、ガス通路が2つに分岐しており、主バーナ混合管および副バーナ混合管のそれぞれの開口部に、各分岐路の先端のノズルから燃料ガスが噴射され、主バーナには副バーナよりも多くの燃料ガスが供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-28428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした主バーナと副バーナとを有するコンロバーナで混合ガスを燃焼させるガスコンロでは、主バーナおよび副バーナの何れでも逆噴が生じ得ることから、上述した特許文献1の技術では感熱素子が2つ必要となり、敢えて感熱素子を1つにすると、一方の逆噴を検知できなかったり、検知が遅れたりすることがあるという問題があった。
【0007】
この発明は、従来の技術における上述した課題に対応してなされたものであり、1つの感熱素子を用いて、主バーナおよび副バーナの何れで発生した逆噴も迅速かつ確実に検知することが可能なガスコンロの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明のガスコンロは次の構成を採用した。すなわち、
主バーナと、該主バーナよりも火力が小さい副バーナとを有するコンロバーナを搭載し、前記主バーナから延設された主バーナ混合管の末端の開口部と、前記副バーナから前記主バーナ混合管とは異なる方向に延設された副バーナ混合管の末端の開口部とに、ガス通路が2つに分岐した各分岐路の先端のノズルから燃料ガスが噴射されると、該燃料ガスと空気との混合ガスが前記主バーナ混合管を通って前記主バーナの複数の炎口から噴出すると共に、前記混合ガスが前記副バーナ混合管を通って前記副バーナの複数の炎口から噴出し、当該混合ガスを燃焼させて調理容器を加熱するガスコンロにおいて、
前記主バーナ混合管の開口部および前記副バーナ混合管の開口部を内側に収容するカバーと、
前記カバー内における前記副バーナ混合管の開口部の近傍に設置された感熱素子と
を備え、
前記カバーは、
前記主バーナ混合管の開口部および前記副バーナ混合管の開口部の上方を一体に覆う上面板と、
前記主バーナ混合管の延設方向に対して前記副バーナ混合管から遠い側に鋭角をなして立設され、前記主バーナ混合管の開口部に面する封鎖壁と、
前記封鎖壁の側縁から前記主バーナ混合管の開口部に面して前記感熱素子の方向に配設され、前記主バーナ混合管の延設方向に対して鋭角をなして立設された誘導壁と
を有することを特徴とする。
【0009】
火力が小さい副バーナで逆噴が生じる場合は、副バーナ混合管の開口部から噴き出す炎が小さいものの、感熱素子が副バーナ混合管の開口部の近傍に設置されているため、逆噴の炎が感熱素子に到達し易く、感熱素子が加熱されることで副バーナ側の逆噴を迅速かつ確実に検知することができる。一方、主バーナ混合管の開口部は、感熱素子から離れており、カバーの上面板と封鎖壁と誘導壁とに囲まれた三角形状の滞留空間に向けて開口している。主バーナで逆噴が生じる際には、不完全燃焼による未燃ガスに加えて、主バーナ側の分岐路のノズルから噴射される燃料ガスが主バーナ混合管の開口部から延設方向に漏れ出るため、封鎖壁が主バーナ混合管の延設方向に対して鋭角に配設されていることで、鈍角であるよりも未燃ガスや燃料ガスが封鎖壁に沿って拡散することが抑制される。同様に、誘導壁が主バーナ混合管の延設方向に対して鋭角に配設されていることで、鈍角であるよりも未燃ガスや燃料ガスが誘導壁に沿って拡散することが抑制されるので、滞留空間に未燃ガスや燃料ガスが溜まり易く、それらが一気に燃焼することにより、滞留空間から誘導壁に沿って副バーナ混合管側に炎が広がる。こうして主バーナの逆噴の炎がカバーの誘導壁に導かれて感熱素子に到達し、感熱素子が加熱されることで主バーナ側の逆噴を迅速かつ確実に検知することができる。このように本発明のガスコンロでは、カバー内に設置した1つの感熱素子を用いて、主バーナおよび副バーナの何れで逆噴が生じた場合でも迅速かつ確実に検知することが可能となる。
【0010】
上述した本発明のガスコンロでは、封鎖壁と誘導壁との間の角度を鋭角にしておいてもよい。
【0011】
このように封鎖壁と誘導壁との間の角度を鋭角にしておけば、鈍角であるよりも未燃ガスや燃料ガスが滞留空間に溜まり易くなることによって、滞留空間から副バーナ混合管側に広がる炎の勢いを確保できるので、感熱素子への到達精度を高めることが可能となる。
【0012】
上述した本発明のガスコンロでは、感熱素子を間に介在させて誘導壁と対向する補助壁をカバーに設けることとして、誘導壁と補助壁との間隔を、主バーナ混合管側から感熱素子に近付くに連れて狭くしてもよい。
【0013】
このようにすれば、主バーナの逆噴の炎は、滞留空間から誘導壁と補助壁との間を通って感熱素子に向かい、誘導壁と補助壁との間隔が狭まることで集約されて勢いが増すので、感熱素子への到達精度を高めると共に、到達速度を速めることが可能となる。
【0014】
また、こうした本発明のガスコンロでは、封鎖壁における誘導壁とは反対側の側縁から誘導壁と対向して配設された遮断壁をカバーに設けてもよい。
【0015】
主バーナ側の逆噴では、滞留空間に溜まった未燃ガスや燃料ガスが一気に燃焼すると、滞留空間から炎が封鎖壁に沿って誘導壁と反対の方向にも広がるものの、遮断壁によって炎の広がりを遮断することができる。
【0016】
また、上述した本発明のガスコンロでは、ガス通路の分岐部分よりも上流側を開閉する電磁安全弁を備えると共に、所定の温度上昇に伴って接点が閉じた状態から開いた状態に変化するバイメタルサーモスイッチを感熱素子として、電磁安全弁の開弁を保持するための電力を電源から供給する供給回路にバイメタルサーモスイッチを直列に接続しておいてもよい。
【0017】
このようにすれば、逆噴の炎でバイメタルサーモスイッチが加熱されて接点が開くことにより、電磁安全弁への電力供給を直接的に遮断して、迅速に電磁安全弁を閉弁させることができる。また、逆噴の発生を判断する電装ユニットが不要であるため、ガスコンロの製品コストを低減することが可能となる。
【0018】
上述した本発明のガスコンロでは、副バーナの炎口に臨ませて熱電対を設けることとして、熱電対に生じる熱起電力を電磁安全弁の電源としてもよい。
【0019】
周知のように熱電対は加熱されることによって熱起電力が生じるので、副バーナの炎口に臨ませた熱電対に生じる熱起電力に基づいてコンロバーナの着火を検知することができる。そして、この熱電対に生じる熱起電力を、電磁安全弁の開弁を保持するための電源として流用すれば、別途の電源が不要であるので、電源確保の制約なくガスコンロの使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施例のガスコンロ1の外観を示す斜視図である。
図2】ガスコンロ1に搭載されたコンロバーナ10を示した斜視図である。
図3】本実施例のガスコンロ1で逆噴を検知するための構成を示した斜視図である。
図4】上方から見た本実施例の主バーナ混合管13および副バーナ混合管14とカバー30との位置関係を示した平面図である。
図5】主バーナ11および副バーナ12の何れかで逆噴が生じた場合に、バイメタルサーモスイッチ32で逆噴を検知する様子を示した説明図である。
図6】本実施例のガスコンロ1におけるバイメタルサーモスイッチ32を含む回路構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本実施例のガスコンロ1の外観を示す斜視図である。本実施例のガスコンロ1は、燃料ガスを燃焼させるコンロバーナ10が1つである一口コンロであって、上面側が開口した箱形状のコンロ本体2と、コンロ本体2の上面を覆って設置された天板3とを備えており、天板3の略中央にコンロバーナ10の上部が突出している。
【0022】
天板3に形成された開口部には、環状の汁受け皿5が取り付けられており、汁受け皿5の内側の挿通孔にコンロバーナ10の上部が挿通される。天板3上には、鍋などの調理容器を置くための五徳6が汁受け皿5を囲んで設置されており、コンロバーナ10での燃焼によって上方の調理容器が加熱される。調理容器から煮こぼれた場合には、煮こぼれ汁を汁受け皿5に溜めることができる。
【0023】
ガスコンロ1の前面には、使用者による押圧操作が可能な操作ボタン7や、左右のスライド操作が可能な操作レバー8が設けられている。使用者は、操作ボタン7を押すことでコンロバーナ10に点火し、もう一度押すことで消火することが可能である。また、使用者は、操作レバー8を左に移動させることで火力を小さくし、右に移動させることで火力を大きくすることができる。
【0024】
図2は、ガスコンロ1に搭載されたコンロバーナ10を示した斜視図である。図示されるように本実施例のコンロバーナ10は、円環形状の主バーナ11と、主バーナ11の内側上方に配置された円形状の副バーナ12とを有する二重構造の親子バーナである。主バーナ11の内部には、図示しない円環形状の主バーナ混合室が形成されており、主バーナ11の外周面には、主バーナ混合室に連通する複数の主バーナ炎口11aが開口している。また、副バーナ12の内部には、図示しない円形状の副バーナ混合室が形成されており、副バーナ12の外周面には、副バーナ混合室に連通する複数の副バーナ炎口12aが開口している。
【0025】
主バーナ11からは、主バーナ混合室と連通する主バーナ混合管13が略水平方向に延設されている。本実施例の主バーナ混合管13は、ステンレス鋼薄板をプレス加工して形成された2枚の板金を合わせて気密に接合することで、2枚の板金の間に主バーナ混合室と一体に形成されている。また、主バーナ混合管13の末端には、通路径が拡径された開口部13aが設けられている。
【0026】
副バーナ12からは、副バーナ混合室と連通する副バーナ混合管14が延設されている。本実施例の副バーナ混合管14は、パイプ部材を略直角に曲げて形成され、垂直部分が主バーナ11の内側に挿通されている。また、副バーナ混合管14の水平部分の末端には、通路径を維持したまま第1開口部14aが開口していると共に、周面(図中の下面)に矩形の第2開口部14bが貫設されている。尚、副バーナ混合管14の末端についても、主バーナ混合管13と同様に、通路径が拡径された開口部としてもよい。
【0027】
本実施例のガスコンロ1では、コンロ本体2の高さ(厚み)を抑えるために、主バーナ混合管13と副バーナ混合管14の水平部分とを上下に重ねて配置することができないことから、左右にずらして、主バーナ混合管13とは異なる方向に副バーナ混合管14が延びている。図2の例では、主バーナ混合管13に対して副バーナ混合管14が右方に延びており、結果として、主バーナ混合管13の末端(開口部13a)と副バーナ混合管14の末端(第1開口部14a、第2開口部14b)とが左右に離れている。
【0028】
コンロバーナ10に燃料ガスを導くガス配管20には、ガス配管20を開閉する電磁安全弁21や、燃料ガスの流量を調節する流量調節弁22が設けられている。後述するように電磁安全弁21は、操作ボタン7の押圧操作によって開弁させることが可能である。また、流量調節弁22は、操作レバー8のスライド操作に連動して開度を変更可能となっている。そして、ガス配管20は、流量調節弁22よりも下流側で主バーナ用分岐配管20aと副バーナ用分岐配管20bとに分岐している。本実施例の主バーナ用分岐配管20aには切換弁23が設けられており、この切換弁23を閉弁することで、主バーナ11を消火して、副バーナ12のみの燃焼を可能にしている。尚、本実施例のガス配管20は、本発明の「ガス通路」に相当しており、本実施例の主バーナ用分岐配管20aおよび副バーナ用分岐配管20bは、本発明の「分岐路」に相当している。
【0029】
図示した例では、副バーナ混合管14の末端の近傍でガス配管20が分岐しており、主バーナ用分岐配管20aが主バーナ混合管13側へと引き回されて、先端の図示しないノズルから燃料ガスが主バーナ混合管13の開口部13aに向けて噴射される。噴射された燃料ガスは、エゼクタ効果によって周囲の空気を吸い込みながら主バーナ混合管13内に流入し、主バーナ混合管13を通過した燃料ガスと空気との混合ガスが主バーナ混合室に供給されて主バーナ炎口11aから噴出する。そして、図示しない点火プラグで点火すると混合ガスの燃焼が開始されて主バーナ炎口11aの外側に炎が形成される。
【0030】
また、ガス配管20から分岐した副バーナ用分岐配管20bの先端の図示しないノズルから燃料ガスが副バーナ混合管14の第1開口部14aに向けて噴射されると、第2開口部14bから空気を吸い込み、副バーナ混合管14を通過した燃料ガスと空気との混合ガスが副バーナ混合室に供給されて副バーナ炎口12aから噴出する。そして、点火によって混合ガスの燃焼が開始され、副バーナ炎口12aの外側に炎が形成される。尚、本実施例のコンロバーナ10では、副バーナ12の火力が主バーナ11よりも小さいことと対応して、副バーナ混合管14への燃料ガスの供給量は、主バーナ混合管13よりも少なく設定されている。
【0031】
こうしたガスコンロ1では、五徳6上の調理容器から煮こぼれた際に、主バーナ11や副バーナ12に煮こぼれ汁がかかることがある。そして、煮こぼれ汁によって主バーナ炎口11aや副バーナ炎口12aの約95%以上で閉塞が生じると、ノズルから噴射された燃料ガスが逆流して主バーナ混合管13の開口部13aや副バーナ混合管14の第1開口部14aあるいは第2開口部14bから漏れ出し、開口部13aや第1開口部14aあるいは第2開口部14bから炎が噴き出す現象(以下、逆噴という)が生じる場合がある。逆噴が発生すると、コンロ本体2内の重要部品が焼損したり、ステンレス製の天板3が炙られて変色したりしてしまう。そこで、逆噴を迅速かつ確実に検知するために、本実施例のガスコンロ1では以下の構成を採用している。
【0032】
図3は、本実施例のガスコンロ1で逆噴を検知するための構成を示した斜視図である。まず、図3(a)には、主バーナ混合管13および副バーナ混合管14の末端側が拡大して示されている。本実施例のガスコンロ1では、前述したように主バーナ混合管13に対して副バーナ混合管14が上下に重ならないように右方に延びており、主バーナ混合管13の末端と副バーナ混合管14の末端とが左右に離れている。そして、図示されるように、主バーナ混合管13の末端の開口部13a、副バーナ混合管14の末端の第1開口部14aおよび第2開口部14bを内側に収容するカバー30を備えており、このカバー30内には、温度の変化を感知する感熱素子としてのバイメタルサーモスイッチ32が第1開口部14aおよび第2開口部14bの近傍(上方)に設置されている。尚、図では、カバー30を透過させて、内部が見えるように表している。また、バイメタルサーモスイッチ32を含む回路構成については、別図を用いて後述する。
【0033】
本実施例のカバー30は、例えば亜鉛メッキ鋼板等の金属板を用いた板金加工によって形成されており、逆L字形状の上面板30aが主バーナ混合管13の開口部13a、副バーナ混合管14の第1開口部14aおよび第2開口部14bの上方を一体に覆っている。この上面板30aにおける図中の左端(主バーナ混合管13側)が下方に折り曲げられて左側壁30bが形成されると共に、右端(副バーナ混合管14側)が下方に折り曲げられて右側壁30cが形成されている。これら左側壁30bおよび右側壁30cの下端には、水平方向に折り曲げられてコンロ本体2内の図示しない台座に設置される設置部が設けられている。
【0034】
また、図中のカバー30における手前側には、上面板30aの前縁が下方に折り曲げられて前面壁30dが形成されている。この前面壁30dの下方には、主バーナ用分岐配管20aや副バーナ用分岐配管20bを配設するために、台座に対して間隙が設けられている。そして、本実施例の前面壁30dには、バイメタルサーモスイッチ32を固定するための固定部が副バーナ混合管14側に設けられている。
【0035】
さらに、図中のカバー30における奥側には、上面板30aの後縁が下方に折り曲げられて、図3(b)に隠れ線(破線)で示されるように、右側壁30cに隣接して前面壁30dと対向する後面壁30eや、左側壁30bに隣接して前面壁30dと対向すると共に後面壁30eよりも後方に位置する背面壁30fや、後面壁30eと背面壁30fとを連結して左側壁30bと対向する連結壁30gが形成されている。
【0036】
このようなカバー30で主バーナ混合管13の開口部13a、副バーナ混合管14の第1開口部14aおよび第2開口部14bを覆っておくことにより、主バーナ11または副バーナ12で逆噴が生じた場合でも、開口部13aや第1開口部14aおよび第2開口部14bから噴き出す炎がコンロ本体2内に広がるのを抑制することができる。
【0037】
図4は、上方から見た本実施例の主バーナ混合管13および副バーナ混合管14とカバー30との位置関係を示した平面図である。本実施例のカバー30における左側壁30bは、図中に一点鎖線の矢印で示した主バーナ混合管13の延設方向に対して、副バーナ混合管14から遠い側に鋭角(図示した例では40度)をなして立設され、主バーナ混合管13の開口部13aに面している。尚、本実施例の左側壁30bは、本発明の「封鎖壁」に相当している。
【0038】
左側壁30bに隣接する前面壁30dは、左側壁30bの側縁から同じく主バーナ混合管13の開口部13aに面して副バーナ混合管14の末端(バイメタルサーモスイッチ32)の方向に配設されており、主バーナ混合管13の延設方向に対して鋭角(図示した例では40度)をなして立設されている。また、左側壁30bと前面壁30dとの間の角度についても鋭角(図示した例では80度)になっている。尚、本実施例の前面壁30dは、本発明の「誘導壁」に相当している。
【0039】
右側壁30cに隣接して前面壁30dと対向する後面壁30eは、前面壁30dに対して平行ではなく、前面壁30dと後面壁30eとの間隔は主バーナ混合管13側からバイメタルサーモスイッチ32に近付くに連れて狭くなっている。また、左側壁30bに隣接して前面壁30dと対向する背面壁30fは、左側壁30bにおける前面壁30dとは反対側の側縁から左側壁30bに対して略直角に配置されている。尚、本実施例の後面壁30eは、本発明の「補助壁」に相当しており、本実施例の背面壁30fは、本発明の「遮断壁」に相当している。
【0040】
図5は、主バーナ11および副バーナ12の何れかで逆噴が生じた場合に、バイメタルサーモスイッチ32で逆噴を検知する様子を示した説明図である。図では、拡大したカバー30の内側が平面図で示されている。まず、副バーナ12で逆噴が生じる場合は、前述したように主バーナ11に比べて副バーナ12への燃料ガスの供給量が少ないことから、副バーナ混合管14の第1開口部14aや第2開口部14b(主に第2開口部14b)から噴き出す炎は小さい。但し、本実施例のバイメタルサーモスイッチ32は、第1開口部14aおよび第2開口部14bの近傍(上方)に設置されているため、副バーナ12の逆噴の炎がバイメタルサーモスイッチ32に到達し易く、バイメタルサーモスイッチ32が加熱されることで副バーナ12側の逆噴を迅速かつ確実に検知することができる。尚、図中の白抜きの矢印は、カバー30内に広がる逆噴の炎を模式的に表している。
【0041】
一方、主バーナ11で逆噴が生じる場合は、副バーナ12に比べて主バーナ混合管13の開口部13aから噴き出す炎は大きくなるものの、開口部13aからバイメタルサーモスイッチ32までが離れているため、逆噴の炎をカバー30で導くようになっている。主バーナ炎口11aの閉塞によって逆噴が生じる際には、不完全燃焼による未燃ガスに加えて、主バーナ用分岐配管20aのノズルから噴射される燃料ガスが開口部13aから主バーナ混合管13の延設方向に漏れ出る。本実施例の開口部13aは、カバー30の上面板30aと左側壁30bと前面壁30dとに囲まれた三角形状の滞留空間Sに向けて開口している。そして、左側壁30bが主バーナ混合管13の延設方向に対して鋭角に配設されていることで、鈍角であるよりも未燃ガスや燃料ガスが左側壁30bに沿って拡散することが抑制される。同様に、前面壁30dが主バーナ混合管13の延設方向に対して鋭角に配設されていることで、鈍角であるよりも未燃ガスや燃料ガスが前面壁30dに沿って拡散することが抑制されるため、滞留空間Sに未燃ガスや燃料ガスが溜まり易く、それらが一気に燃焼することにより、滞留空間Sから前面壁30dに沿って副バーナ混合管14側に炎が広がる。こうして主バーナ11の逆噴の炎がカバー30(前面壁30d)に導かれてバイメタルサーモスイッチ32に到達し、バイメタルサーモスイッチ32が加熱されることで主バーナ11側の逆噴を迅速かつ確実に検知することができる。
【0042】
しかも、本実施例のカバー30では、左側壁30bと前面壁30dとの間の角度が鋭角に設定されており、鈍角であるよりも未燃ガスや燃料ガスが滞留空間Sに溜まり易くなることによって、滞留空間Sから副バーナ混合管14側に広がる炎の勢いを確保できるので、バイメタルサーモスイッチ32への到達精度を高めることが可能となる。
【0043】
以上のように本実施例のガスコンロ1では、カバー30内に設置した1つのバイメタルサーモスイッチ32を用いて、主バーナ11および副バーナ12の何れで逆噴が生じた場合でも迅速かつ確実に検知することができる。
【0044】
また、本実施例のカバー30では、前面壁30dと対向する後面壁30eが設けられており、前面壁30dと後面壁30eとの間にバイメタルサーモスイッチ32が介在すると共に、前面壁30dと後面壁30eとの間隔が主バーナ混合管13側からバイメタルサーモスイッチ32に近付くに連れて狭くなっている。主バーナ11側の逆噴の炎は、滞留空間Sから前面壁30dと後面壁30eとの間を通ってバイメタルサーモスイッチ32に向かい、前面壁30dと後面壁30eとの間隔が狭まることで集約されて勢いが増すので、バイメタルサーモスイッチ32への到達精度を高めると共に、到達速度を速めることが可能となる。
【0045】
さらに、本実施例のカバー30では、左側壁30bに隣接して前面壁30dと対向する背面壁30fが設けられている。主バーナ11側の逆噴では、滞留空間Sに溜まった未燃ガスや燃料ガスが一気に燃焼すると、滞留空間Sから炎が左側壁30bに沿って前面壁30dと反対の方向にも広がるものの、背面壁30fによって炎の広がりを遮断することができる。また、背面壁30fを後面壁30eと連結する連結壁30gが設けられており、背面壁30fと連結壁30gとに阻まれて行き場を失った炎が後面壁30eに沿って副バーナ混合管14側に広がることから、主バーナ11側の逆噴の炎がバイメタルサーモスイッチ32に到達する精度を一層高めることが可能となる。
【0046】
図6は、本実施例のガスコンロ1におけるバイメタルサーモスイッチ32を含む回路構成を示した説明図である。図示されるように、本実施例のバイメタルサーモスイッチ32は、ガス配管20を開閉する電磁安全弁21と熱電対50とを接続する回路に直列に接続されている。熱電対50は、副バーナ12の炎(着火)を検知するために、副バーナ炎口12aの1つに先端の測温接点を臨ませて設置されている。
【0047】
電磁安全弁21は、ガス配管20の上流側と接続された入口室40と、ガス配管20の下流側と接続された出口室41とを備え、入口室40と出口室41との間に弁孔42を有する弁座43が設けられている。入口室40内には、弁座43に当接して弁孔42を塞ぐ弁体44が設けられており、この弁体44は、ソレノイド45の可動軸に固定されると共に、第1付勢バネ46によって弁座43に当接する方向に付勢されている。図では、弁体44が弁座43に当接した閉弁状態を表している。ソレノイド45は、通電しても弁体44を弁座43から引き離すことはできないものの、外力で弁座43から引き離された弁体44を電磁力で開弁状態に保持することが可能である。
【0048】
また、電磁安全弁21には、操作ボタン7の押圧操作を出口室41側から弁体44に伝えるためのロッド47が、ソレノイド45の可動軸と同一軸線上に沿って摺動可能に設けられている。このロッド47は、弁体44に固定されておらず、第2付勢バネ48によって弁体44から離れる方向(図中の右方)に付勢されている。
【0049】
使用者がコンロバーナ10に点火するために操作ボタン7を押すと、第2付勢バネ48の付勢力に抗してロッド47が弁体44側に押し込まれる。そして、弁体44に当接したロッド47が第1付勢バネ46の付勢力に抗して弁体44を弁座43から引き離すことで、電磁安全弁21は開弁状態となる。こうして電磁安全弁21が開弁すると、コンロバーナ10に燃料ガスが供給されるので、副バーナ12で混合ガスの燃焼が開始されて副バーナ炎口12aから噴き出す炎で熱電対50の先端が加熱される。
【0050】
周知のように熱電対50は、加熱されることによって熱起電力が生じるので、この熱起電力が、熱電対50と接続された電磁安全弁21のソレノイド45に供給される。そのため、操作ボタン7の押圧が解除され、第2付勢バネ48の付勢力でロッド47が弁体44から離れた後も、通電状態のソレノイド45の電磁力によって電磁安全弁21の開弁状態が保持される。
【0051】
本実施例のバイメタルサーモスイッチ32は、このような熱電対50の熱起電力を電磁安全弁21に供給する回路に直列に接続されている。前述したように主バーナ11および副バーナ12の何れかで逆噴が生じた際に、その炎がバイメタルサーモスイッチ32に到達すると、加熱されたバイメタルサーモスイッチ32で所定の温度上昇に伴って接点が閉じた状態から開いた状態に変化することで逆噴を検知することができる。こうしてバイメタルサーモスイッチ32の接点が開いた状態になると、電磁安全弁21のソレノイド45に供給されていた熱電対50の熱起電力が遮断されるので、電磁安全弁21が閉弁状態となり、コンロバーナ10への燃料ガスの供給を迅速に停止することが可能となる。
【0052】
以上、本実施例のガスコンロ1について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0053】
例えば、前述した実施例では、左側壁30bと前面壁30dとの間の角度が鋭角に設定されていた。しかし、左側壁30bおよび右側壁30cが、それぞれ主バーナ混合管13の延設方向に対して鋭角に配設されていれば、左側壁30bと前面壁30dとの間の角度は鈍角であってもよい。但し、前述した実施例のように左側壁30bと前面壁30dとの間の角度を鋭角に設定しておけば、鈍角であるよりも未燃ガスや燃料ガスが滞留空間Sに溜まり易くなり、主バーナ11側の逆噴の炎が滞留空間Sからバイメタルサーモスイッチ32に到達する精度を高めることが可能となる。こうした左側壁30bと前面壁30dとの間の角度は、特に60度から90度の範囲内であることが望ましい。また、左側壁30bと前面壁30dとの接続部分は、必ずしも角である必要はなく、湾曲させる(アールを付ける)こととしてもよい。
【0054】
また、前述した実施例では、感熱素子としてバイメタルサーモスイッチ32を用いていた。しかし、感熱素子はこれに限られず、サーミスタを備えた温度センサであってもよい。サーミスタは、温度の変化によって電気抵抗が変化するので、温度センサと接続された電装ユニットにおいて、抵抗値(温度検出値)に基づいて逆噴の発生を判断し、電装ユニットからの指示で電磁安全弁21への電力供給を停止することで、電磁安全弁21を閉弁させることができる。但し、前述した実施例のように感熱素子としてバイメタルサーモスイッチ32を用いれば、逆噴の炎でバイメタルサーモスイッチ32が加熱されて接点が開くことにより、電磁安全弁21への電力供給を直接的に遮断して、迅速に電磁安全弁21を閉弁させることができる。また、電装ユニットが不要であるため、ガスコンロ1の製品コストを低減することが可能となる。
【0055】
また、前述した実施例では、電磁安全弁21の開弁を保持するための電源として熱電対50から熱起電力を供給するようになっていた。しかし、電源はこれに限られず、乾電池や商用電源であってもよい。但し、前述した実施例のように副バーナ12の炎(着火)を検知するための熱電対50で生じる熱起電力を、電磁安全弁21の開弁を保持するための電源として流用すれば、別途の電源が不要であるので、電源確保の制約なくガスコンロ1の使用が可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1…ガスコンロ、 2…コンロ本体、 3…天板、
5…汁受け皿、 6…五徳、 7…操作ボタン、
8…操作レバー、 10…コンロバーナ、 11…主バーナ、
11a…主バーナ炎口、 12…副バーナ、 12a…副バーナ炎口、
13…主バーナ混合管、 13a…開口部、 14…副バーナ混合管、
14a…第1開口部、 14b…第2開口部、 20…ガス配管、
20a…主バーナ用分岐配管、 20b…副バーナ用分岐配管、
21…電磁安全弁、 22…流量調節弁、
23…切換弁、 30…カバー、
30a…上面板、 30b…左側壁(封鎖壁)、
30c…右側壁、 30d…前面壁(誘導壁)、
30e…後面壁(補助壁)、 30f…背面壁(遮断壁)、
30g…連結壁、 32…バイメタルサーモスイッチ、
40…入口室、 41…出口室、 42…弁孔、
43…弁座、 44…弁体、 45…ソレノイド、
46…第1付勢バネ、 47…ロッド、 48…第2付勢バネ、
50…熱電対、 S…滞留空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6