(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】画像読取装置及び画像読取方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/191 20060101AFI20240531BHJP
H04N 1/04 20060101ALI20240531BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20240531BHJP
H04N 1/387 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
H04N1/191
H04N1/12 Z
G06T1/00 440
H04N1/387 800
(21)【出願番号】P 2020156616
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】時國 祐宜
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-080452(JP,A)
【文献】特開2018-095466(JP,A)
【文献】特開平05-035021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/191
H04N 1/04
G06T 1/00
H04N 1/387
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取の対象となる媒体が搬送される搬送路と、
第一回転方向へ回転することにより、前記搬送路に沿って第一方向へ前記媒体を搬送するとともに、前記第一回転方向と逆の第二回転方向へ回転することにより、前記搬送路に沿って、前記第一方向と反対の第二方向へ前記媒体を搬送可能なローラと、
前記ローラによって前記搬送路を前記第一方向へ搬送中の前記媒体の画像である第一画像を第一配置位置で読み取るとともに、前記第一画像の読取完了後に、前記ローラによって前記搬送路を前記第二方向へ搬送中の前記媒体の画像である第二画像を、副走査方向で前記第一配置位置から所定の第一距離だけ離れた第二配置位置で読み取るイメージセンサと、
前記第一画像において歪みが生じている領域である第一領域の画像
を前記第二画像を用いて補正する、または、前記第二画像において歪みが生じている領域である第二領域の画像を
前記第一画像を用いて補正する
ことによって、歪みが軽減された画像を得るプロセッサと、
を具備する画像読取装置。
【請求項2】
前記イメージセンサは、単一のイメージセンサであり、
前記媒体が前記第一方向へ搬送されるときは、前記単一のイメージセンサを前記第一配置位置に配置する一方で、前記媒体が前記第二方向へ搬送されるときは、前記単一のイメージセンサを前記第二配置位置に配置する配置機構、をさらに具備する、
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記イメージセンサは、
前記第一配置位置に配置された第一イメージセンサと、前記第二配置位置に配置された第二イメージセンサとの二つのイメージセンサを含む、
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記イメージセンサは、前記第一画像の読取完了後に、前記第二画像を、前記副走査方向で前記第一配置位置から所定の前記第一距離だけ離れ、かつ、主走査方向で前記第一配置位置から所定の第二距離だけ離れた前記第二配置位置で読み取る、
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記単一のイメージセンサによる前記第一画像の読取完了後に、前記ローラの回転方向を前記第一回転方向から前記第二回転方向へ切り替え、
前記配置機構は、前記回転方向が前記第一回転方向から前記第二回転方向へ切り替えられるのに連動させて、前記単一のイメージセンサを前記第一配置位置から前記第二配置位置に移動させる、
請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記媒体が挿入される第一開口部と、
前記媒体が挿入される第二開口部であって、前記第一開口部と異なる位置に配置された前記第二開口部と、をさらに具備し、
前記配置機構は、
前記媒体が前記第一開口部に挿入されたときは、前記回転方向が前記第一回転方向から前記第二回転方向へ切り替えられるのに連動させて、前記単一のイメージセンサを前記第一配置位置から前記第二配置位置に移動させる一方で、
前記媒体が前記第二開口部に挿入されたときは、前記単一のイメージセンサの配置位置を前記第一配置位置に固定し、
前記単一のイメージセンサは、
前記媒体が前記第一開口部に挿入されたときは、前記第一画像を前記第一配置位置で読み取るとともに、前記第一画像の読取完了後に前記第二画像を前記第二配置位置で読み取ることにより、一つの媒体に対して二つの画像を読み取る一方で、
前記媒体が前記第二開口部に挿入されたときは、前記第二画像を前記第一配置位置で読み取ることにより、一つの媒体に対して一つの画像を読み取る、
請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記第一画像において歪みが生じていない領域である第三領域であって、前記副走査方向で前記第二領域と同じ位置にある前記第三領域の画像を用いて前記第二領域における補正対象領域を検出する、
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記第二画像において歪みが生じていない領域である第四領域であって、前記副走査方向で前記第一領域と同じ位置にある前記第四領域の画像を用いて前記第一領域における補正対象領域を検出する、
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項9】
読取の対象となる媒体が搬送される搬送路と、
第一回転方向へ回転することにより、前記搬送路に沿って第一方向へ前記媒体を搬送するとともに、前記第一回転方向と逆の第二回転方向へ回転することにより、前記搬送路に沿って、前記第一方向と反対の第二方向へ前記媒体を搬送可能なローラと、
イメージセンサと、
プロセッサと、
を具備する画像読取装置における画像読取方法であって、
前記イメージセンサが、前記ローラによって前記搬送路を前記第一方向へ搬送中の前記媒体の画像である第一画像を第一配置位置で読み取るとともに、前記第一画像の読取完了後に、前記ローラによって前記搬送路を前記第二方向へ搬送中の前記媒体の画像である第二画像を、副走査方向で前記第一配置位置から所定の距離だけ離れた第二配置位置で読み取り、
前記プロセッサが、前記第一画像において歪みが生じている領域である第一領域
の画像を前記第二画像を用いて補正する、または、前記第二画像において歪みが生じている領域である第二領域
の画像を
前記第一画像を用いて補正する
ことによって、歪みが軽減された画像を得る、
画像読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像読取装置及び画像読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナの中には、スキャナの読取の対象となる媒体(以下では「読取対象媒体」と呼ぶことがある)がスキャナの開口部からスキャナの内部の搬送路へ挿入されるものがある。搬送路へ挿入された読取対象媒体は、搬送ローラによって搬送路を搬送されながらイメージセンサによって読み取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-050023号公報
【文献】特開2013-172306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
読取対象媒体が搬送ローラによって搬送路を搬送される際に、読取対象媒体の先端(以下では「媒体先端」と呼ぶことがある)が搬送ローラに接触する瞬間と、読取対象媒体の後端(以下では「媒体後端」と呼ぶことがある)が搬送ローラから離れる瞬間とにおいて、読取対象媒体の搬送速度に乱れが生じる。例えば、読取対象媒体が挿入される開口部から見て搬送方向の手前側と奥側とにそれぞれ配置された搬送ローラによって読取対象媒体が搬送される場合、搬送方向の奥側に配置された搬送ローラ(以下では「奥側ローラ」と呼ぶことがある)に媒体先端が接触する瞬間に搬送速度が低下する一方で、搬送方向の手前側に配置された搬送ローラ(以下では「手前側ローラ」と呼ぶことがある)から媒体後端が離れる瞬間に搬送速度が増加する。読取対象媒体の厚さが大きいほど、搬送速度の乱れは大きくなる。このように搬送速度に乱れが生じると、イメージセンサによって読み取られた画像(以下では「読取画像」と呼ぶことがある)に歪みが生じる。
【0005】
そこで、本開示では、歪みが軽減された画像を得ることができる技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の画像読取装置は、搬送路と、ローラと、イメージセンサと、プロセッサとを有する。前記搬送路では、読取の対象となる媒体が搬送される。前記ローラは、第一回転方向へ回転することにより、前記搬送路に沿って第一方向へ前記媒体を搬送するとともに、前記第一回転方向と逆の第二回転方向へ回転することにより、前記搬送路に沿って、前記第一方向と反対の第二方向へ前記媒体を搬送可能である。前記イメージセンサは、前記ローラによって前記搬送路を前記第一方向へ搬送中の前記媒体の画像である第一画像を第一配置位置で読み取るとともに、前記第一画像の読取完了後に、前記ローラによって前記搬送路を前記第二方向へ搬送中の前記媒体の画像である第二画像を、副走査方向で前記第一配置位置から所定の第一距離だけ離れた第二配置位置で読み取る。前記プロセッサは、前記第一画像において歪みが生じている領域である第一領域の画像、または、前記第二画像において歪みが生じている領域である第二領域の画像を補正する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、歪みが軽減された画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施例1のスキャナの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施例1のスキャナの構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施例1のエンプティセンサの構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施例1のエンプティセンサの動作例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施例1のエンプティセンサの動作例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図15】
図15は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図16】
図16は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図17】
図17は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図18】
図18は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図19】
図19は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図20】
図20は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図21】
図21は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図22】
図22は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図23】
図23は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図24】
図24は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【
図25】
図25は、本開示の実施例1のスキャナにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図26】
図26は、本開示の実施例3の配置機構の構成例(機構例1)を示す図である。
【
図27】
図27は、本開示の実施例3の配置機構の構成例(機構例1)を示す図である。
【
図28】
図28は、本開示の実施例3の配置機構の構成例(機構例1)を示す図である。
【
図29】
図29は、本開示の実施例3の配置機構の構成例(機構例1)を示す図である。
【
図30】
図30は、本開示の実施例3の配置機構の構成例(機構例1)を示す図である。
【
図31】
図31は、本開示の実施例3の配置機構の構成例(機構例1)を示す図である。
【
図32】
図32は、本開示の実施例3の配置機構の構成例(機構例2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。以下の実施例において同一の構成、及び、同一の処理を行うステップには同一の符号を付す。
【0010】
以下では、画像読取装置の一例として、スキャナについて説明する。しかし、開示の技術が適用可能な画像読取装置はスキャナに限定されない。例えば、コピー機等のスキャナ以外の画像読取装置にも開示の技術を適用可能である。
【0011】
[実施例1]
<スキャナの構成>
図1及び
図2は、本開示の実施例1のスキャナの構成例を示す図である。
図1には側面図を示し、
図2には正面図を示す。
図1,2に示すスキャナ1に挿入される読取対象媒体の一例として、文字や図が記載された原稿が挙げられる。
【0012】
図1において、スキャナ1は、給送トレイ11と、下部筐体12と、上部筐体13とを有する。給送トレイ11は、回転軸RA1を介して上部筐体13に取り付けられており、回転軸RA1を中心にして開閉自在である。
図1には給送トレイ11が開いた状態を示し、
図2には給送トレイ11が閉じた状態を示す。
【0013】
また、スキャナ1は、イメージセンサ17と、プロセッサ21と、メモリ29と、ピックローラ22と、透過型光センサ24,25と、搬送ローラ26-1,26-2,27-1,27-2と、搬送路P1,P2,P3と、フラップ35とを有する。フラップ35の支点は、上部筐体13に形成される。フラップ35の支点はフラップ35の後端に位置し、フラップ35の先端が上部筐体13側に上がっている状態がフラップ35の初期位置となる。ピックローラ22、搬送ローラ26-1,26-2,27-1,27-2及びフラップ35はモータによって駆動される。
【0014】
イメージセンサ17は、ハードウェアとして、例えば、CIS(Contact Image Sensor)タイプのイメージセンサにより実現される。また、プロセッサの一例として、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。また、メモリの一例として、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられる。
【0015】
搬送路P1は、スキャナ1の正面に形成された開口部O1Lと、スキャナ1の背面に形成された開口部O1Rと、上面S11と、下面S12とを有する。搬送路P1の上面S11は上部筐体13の下面に該当し、搬送路P1の下面S12は下部筐体12の上面に該当する。つまり、搬送路P1は、上部筐体13と下部筐体12との間に形成される。また、搬送路P1は、開口部O1Lから挿入される読取対象媒体(以下では「第一読取対象媒体」と呼ぶことがある)の搬送に用いられる。開口部O1Lからは、通常はオペレータの手によって、第一読取対象媒体が挿入される。
【0016】
搬送路P2は、上部筐体13の上面に形成された開口部O2と、上面S21と、下面S22とを有する。搬送路P2は、開口部O2から挿入される読取対象媒体(以下では「第二読取対象媒体」と呼ぶことがある)の搬送に用いられる。給送トレイ11に載置された第二読取対象媒体が開口部O2から挿入される。
【0017】
ここで、搬送路P2は、搬送路P1の途中に位置する合流点JP1において搬送路P1に合流する。また、搬送路P1の開口部O1L,O1Rの高さ方向の幅H1(つまり、上面S11と下面S12との間の距離)は、搬送路P2の開口部O2の高さ方向の幅H2(つまり、上面S21と下面S22との間の距離)より大きい。幅H1が幅H2より大きいため、通常、開口部O1Lには厚手の読取対象媒体(以下では「厚手媒体」と呼ぶことがある)が挿入され、開口部O2には薄手の読取対象媒体(以下では「薄手媒体」と呼ぶことがある)が挿入される。つまり、通常、第一読取対象媒体の厚さは、第二読取対象媒体の厚さより大きい。
【0018】
搬送路P3は、上部筐体13の上面に形成された開口部O3を有し、搬送路P1の途中に位置する合流点JP2において搬送路P1に合流する。
【0019】
透過型光センサ24は、投光器24Tと、受光器24Rとを有する。投光器24Tと受光器24Rとは搬送路P1を挟んで互いに対向して配置され、投光器24Tから上面S11側へ向かって投射された光が受光器24Rにより受光される。投光器24Tは下面S12側に配置され、受光器24Rは上面S11側に配置される。投光器24Tが投射する光の投光量は、プロセッサ21からの制御の下で一定に保たれる。
【0020】
透過型光センサ25は、投光器25Tと、受光器25Rとを有する。投光器25Tと受光器25Rとは搬送路P1を挟んで互いに対向して配置され、投光器25Tから上面S11側へ向かって投射された光が受光器25Rにより受光される。投光器25Tは下面S12側に配置され、受光器25Rは上面S11側に配置される。投光器25Tが投射する光の投光量は、プロセッサ21からの制御の下で一定に保たれる。
【0021】
<第二読取対象媒体の搬送>
図3は、本開示の実施例1のエンプティセンサの構成例を示す図である。
図4及び
図5は、本開示の実施例1のエンプティセンサの動作例を示す図である。
【0022】
図3において、エンプティセンサ23は、透過型光センサ28と、可動部材50とを有する。透過型光センサ28は、投光器28Tと、受光器28Rとを有する。投光器28Tと受光器28Rとは互いに対向して配置され、投光器28Tから投射された光が受光器28Rにより受光される。投光器28Tが投射する光の投光量は、プロセッサ21からの制御の下で一定に保たれる。可動部材50は、アーム51と、アーム51に結合されたレバー52,53とを有する。可動部材50は、回転軸RA2を中心にして回転自在な部材である。
【0023】
給送トレイ11に第二読取対象媒体MD2が載置されていないときには、
図4に示すように、搬送路P2には第二読取対象媒体MD2が存在しないため、投光器28Tから投射された光はレバー53によって遮られることなく、受光器28Rによって受光される。
【0024】
プロセッサ21は、受光器24Rにおける受光量(以下では「第一受光量」と呼ぶことがある)が閾値THR以上であるときは、第一受光量のレベル(以下では「第一受光レベル」と呼ぶことがある)がハイレベルHにあると判定し、第一受光量が閾値THR未満であるときは、第一受光レベルが、ハイレベルHより小さいローレベルLにあると判定する。閾値THRは、メモリ29に予め記憶されている。
【0025】
また、プロセッサ21は、受光器25Rにおける受光量(以下では「第二受光量」と呼ぶことがある)が閾値THR以上であるときは、第二受光量のレベル(以下では「第二受光レベル」と呼ぶことがある)がハイレベルHにあると判定し、第二受光量が閾値THR未満であるときは、第二受光レベルがローレベルLにあると判定する。
【0026】
また、プロセッサ21は、受光器28Rにおける受光量(以下では「第三受光量」と呼ぶことがある)が閾値TH1以上であるときは、第三受光量のレベル(以下では「第三受光レベル」と呼ぶことがある)がハイレベルHにあると判定し、第三受光量が閾値TH1未満であるときは、第三受光レベルがローレベルLにあると判定する。
【0027】
給送トレイ11が開いた状態にあるときに、
図5に示すように給送トレイ11に第二読取対象媒体MD2が載置されると、開口部O2から搬送路P2に第二読取対象媒体MD2が挿入されるため、レバー52が第二読取対象媒体MD2によって押し上げられる。給送トレイ11には、複数枚の第二読取対象媒体MD2が載置可能である。また、給送トレイ11には、第二読取対象媒体MD2における印刷面がイメージセンサ17と対向するフェイスアップの状態で第二読取対象媒体MD2が載置される。レバー52が第二読取対象媒体MD2によって押し上げられると、可動部材50が右回り(時計回り)に回転することに伴ってレバー53が
図4に示す位置から
図5に示す位置に移動する。これにより、投光器28Tから投射された光がレバー53によって遮られるため、第三受光レベルがハイレベルHからローレベルLに減少する。プロセッサ21は、第三受光レベルがハイレベルHからローレベルLに減少した時点で、ピックローラ22及び搬送ローラ26-1,26-2,27-1,27-2の回転を開始させるとともに、フラップ35の先端を下部筐体12側に下げる。プロセッサ21は、ピックローラ22及び搬送ローラ26-1,27-1を右回り(時計回り)に回転させる一方で、搬送ローラ26-2,27-2を左回り(反時計回り)に回転させる。また、フラップ35の先端が下部筐体12側に下げられることにより、搬送路P3と搬送路P1とが連結されるため、搬送路P2と搬送路P1と搬送路P3とにより一連の搬送路が形成される。
【0028】
ここで、搬送ローラ26-1,27-1において、右回りの回転方向が正転方向に該当し、左回りの回転方向が逆転方向に該当する。また、搬送ローラ26-2,27-2において、左回りの回転方向が正転方向に該当し、右回りの回転方向が逆転方向に該当する。
【0029】
ピックローラ22により搬送路P2に沿って搬送される第二読取対象媒体MD2の先端が合流点JP1を過ぎて搬送ローラ27-1と搬送ローラ27-2との間に達すると、第二読取対象媒体MD2は搬送ローラ27-1,27-2によって搬送路P1に沿って-X方向(図中左方向)へ搬送される。第二読取対象媒体MD2が搬送ローラ27-1,27-2によって搬送路P1を-X方向へ搬送されて第二読取対象媒体MD2の先端が透過型光センサ25まで達すると、投光器25Tから投射された光が第二読取対象媒体MD2によって遮られるため、第二受光レベルがハイレベルHからローレベルLに減少する。プロセッサ21は、第二受光レベルがハイレベルHからローレベルLに減少した時点で、イメージセンサ17による第二読取対象媒体MD2の読取を開始する。搬送路P1での第二読取対象媒体MD2の-X方向への搬送に伴って、第二読取対象媒体MD2はイメージセンサ17によって読み取られる。
【0030】
さらに搬送路P1での第二読取対象媒体MD2の-X方向への搬送に伴って、第二読取対象媒体MD2の先端が搬送ローラ26-1と搬送ローラ26-2との間に達すると、第二読取対象媒体MD2は搬送ローラ26-1,26-2によって搬送路P1をさらに-X方向へ搬送される。搬送ローラ26-1,26-2により搬送路P1を-X方向へ搬送される第二読取対象媒体MD2の先端は、第二読取対象媒体MD2の搬送に伴ってフラップ35の上面に接しながら合流点JP2へ向かって進み、搬送路P3に進入する。よって、読取が為された後の第二読取対象媒体MD2は、搬送路P3に沿って+Z方向(図中上方向)へ搬送されて開口部O3から上部筐体13の上面に排出される。
【0031】
また、給送トレイ11に載置されていた最後の第二読取対象媒体MD2の後端がエンプティセンサ23を通過して時点で、第三受光レベルがローレベルLからハイレベルHに増加する。プロセッサ21は、第三受光レベルがハイレベルHからローレベルLに一旦減少した後、再びローレベルLからハイレベルHに増加した時点から所定時間だけ経過後に、ピックローラ22及び搬送ローラ26-1,26-2,27-1,27-2の回転を停止させる。
【0032】
<第一読取対象媒体の搬送>
以下では、開口部O1Lから開口部O1Rへと向かう+X方向の搬送路P1を「往路」と呼び、開口部O1Rから開口部O1Lへと向かう-X方向の搬送路P1を「復路」と呼ぶことがある。
【0033】
フラップ35の先端が上部筐体13側に上がっている状態で、開口部O1Lから+X方向(図中右方向)に向かって搬送路P1に第一読取対象媒体MD1が挿入されると、投光器24Tから投射された光が第一読取対象媒体MD1によって遮られるため、第一受光レベルがハイレベルHからローレベルLに減少する。第一読取対象媒体MD1は、第一読取対象媒体MD1における印刷面がイメージセンサ17と対向するフェイスアップの状態で開口部O1Lから挿入される。プロセッサ21は、第一受光レベルがハイレベルHからローレベルLに減少した時点で、搬送ローラ26-1,27-1を左回りに回転させ始める一方で、搬送ローラ26-2,27-2を右回りに回転させ始めるとともに、イメージセンサ17による第一読取対象媒体MD1の読取を開始する。第一読取対象媒体MD1がさらに+X方向へ挿入されて第一読取対象媒体MD1の先端(以下では「媒体先端LE」と呼ぶことがある)が搬送ローラ26-1と搬送ローラ26-2との間に達すると、第一読取対象媒体MD1は搬送ローラ26-1,26-2によって搬送路P1に沿って+X方向へ搬送される。搬送路P1での第一読取対象媒体MD1の+X方向への搬送に伴って、イメージセンサ17によって、第一読取対象媒体MD1に対する往路での読取(以下では「往路読取」と呼ぶことがある)が行われる。
【0034】
第一読取対象媒体MD1が搬送ローラ26-1,26-2によって搬送路P1をさらに+X方向へ搬送されて第一読取対象媒体MD1の先端が透過型光センサ25まで達すると、投光器25Tから投射された光が第一読取対象媒体MD1によって遮られるため、第二受光レベルがハイレベルHからローレベルLに減少する。
【0035】
第一読取対象媒体MD1が搬送ローラ26-1,26-2によって搬送路P1をさらに+X方向へ搬送されて第一読取対象媒体MD1の先端が搬送ローラ27-1と搬送ローラ27-2との間に達すると、第一読取対象媒体MD1は搬送ローラ27-1,27-2によって搬送路P1をさらに+X方向へ搬送される。
【0036】
そして、第一読取対象媒体MD1の後端(以下では「媒体後端RE」と呼ぶことがある)が透過型光センサ25を過ぎた時点で、投光器25Tから投射された光が受光器25Rによって受光されるため、第二受光レベルがローレベルLからハイレベルHに増加する。プロセッサ21は、搬送路P1における第一読取対象媒体MD1の+X方向への搬送に伴って第二受光レベルがハイレベルHからローレベルLに一旦減少した後、再びローレベルLからハイレベルHに増加した時点で、搬送ローラ26-1,26-2,27-1,27-2の回転方向を逆転させ、搬送ローラ26-1,27-1を右回りに回転させる一方で、搬送ローラ26-2,27-2を左回りに回転させる。これにより、搬送路P1における第一読取対象媒体MD1の搬送方向が+X方向から-X方向に逆転する。このように、プロセッサ21は、往路読取の完了後に、搬送ローラ26-1,26-2,27-1,27-2の回転方向を逆転させることにより、第一読取対象媒体MD1の搬送方向を+X方向から-X方向に逆転させる。これにより、第一読取対象媒体MD1は、往路読取の完了後に、搬送ローラ26-1,26-2によって搬送路P1に沿って-X方向へ搬送される。そして、搬送路P1を-X方向へ搬送される第一読取対象媒体MD1の後端が透過型光センサ25まで達すると、投光器25Tから投射された光が第一読取対象媒体MD1によって遮られるため、第二受光レベルがハイレベルHからローレベルLに減少する。
【0037】
プロセッサ21は、第一読取対象媒体MD1の搬送方向を+X方向から-X方向へ逆転させた時点で、イメージセンサ17による第一読取対象媒体MD1の読取を開始する。搬送路P1での第一読取対象媒体MD1の-X方向への搬送に伴って、イメージセンサ17によって、第一読取対象媒体MD1に対する復路での読取(以下では「復路読取」と呼ぶことがある)が行われる。復路読取が為された後の第一読取対象媒体MD1は、開口部O1Lから排出される。
【0038】
また、第一読取対象媒体MD1の-X方向への搬送に伴って第一読取対象媒体MD1の先端が透過型光センサ25を過ぎた時点で、投光器25Tから投射された光が受光器25Rによって受光されるため、第二受光レベルがローレベルLからハイレベルHに増加する。プロセッサ21は、搬送路P1における第一読取対象媒体MD1の-X方向への搬送に伴って第二受光レベルがハイレベルHからローレベルLに一旦減少した後、再びローレベルLからハイレベルHに増加した時点から所定時間だけ経過後に、搬送ローラ26-1,26-2,27-1,27-2の回転を停止させる。
【0039】
以上のように、開口部O1Lから搬送路P1へ挿入される第一読取対象媒体MD1に対しては、イメージセンサ17によって、往路読取と復路読取との2回の読取が為される。
【0040】
<スキャナの動作>
図6~
図24は、本開示の実施例1のスキャナの動作例を示す図である。
【0041】
図6及び
図7には、往路読取時のイメージセンサ17の配置位置である「配置位置FP」を示し、
図8、
図9及び
図10には、復路読取時のイメージセンサ17の配置位置である「配置位置RP」を示す。配置位置FPが、イメージセンサ17の初期位置となる。
【0042】
以下では、搬送ローラ26-1,26-2を「搬送ローラ26」と総称し、搬送ローラ27-1,27-2を「搬送ローラ27」と総称することがある。往路読取のときは、搬送ローラ26が手前側ローラに該当し、搬送ローラ27が奥側ローラに該当する一方で、復路読取のときは、搬送ローラ27が手前側ローラに該当し、搬送ローラ26が奥側ローラに該当する。
【0043】
また、
図7~
図10には、第一読取対象媒体MD1の印刷面に複数本の斜線CLが印刷されている場合を一例として示す。
【0044】
図6及び
図7に示すように、往路読取時には、イメージセンサ17は、X方向において、搬送ローラ27から距離Xf1だけ離れ、かつ、搬送ローラ26から距離Xf2だけ離れた配置位置FPに配置される。
【0045】
図6に示すように、+X方向へ搬送される第一読取対象媒体MD1に対する往路読取の際には、媒体先端LEが搬送ローラ27に接触した瞬間に第一読取対象媒体MD1の搬送速度が低下するため、第一読取対象媒体MD1の副走査方向において媒体前端LEから距離Xf1だけ離れた位置FDで第一読取対象媒体MD1の搬送速度が低下する。
【0046】
また、
図7に示すように、+X方向へ搬送される第一読取対象媒体MD1に対する往路読取の際には、媒体後端REが搬送ローラ26から離れる瞬間に第一読取対象媒体MD1の搬送速度が増加するため、第一読取対象媒体MD1の副走査方向において媒体後端REから距離Xf2だけ離れた位置FIで第一読取対象媒体MD1の搬送速度が増加する。
【0047】
そこで、プロセッサ21は、第一読取対象媒体MD1の搬送方向を+X方向から-X方向に逆転させる時点、つまり、搬送ローラ26,27の回転方向を逆転させる時点で、
図8に示すように、イメージセンサ17を配置位置FPからX方向(つまり、イメージセンサ17の副走査方向)で距離Xm、かつ、Y方向(つまり、イメージセンサ17の主走査方向)で距離Ymだけ移動させることにより、イメージセンサ17の配置位置を配置位置FPから配置位置RPに変更する。これにより、
図9及び
図10に示すように、復路読取時には、イメージセンサ17は、X方向において、搬送ローラ27から距離Xr1(但し、Xr1>Xf1)だけ離れ、かつ、搬送ローラ26から距離Xr2(但し、Xr2<Xf2)だけ離れた配置位置RPに配置される。
【0048】
図9に示すように、-X方向へ搬送される第一読取対象媒体MD1に対する復路読取の際には、媒体後端REが搬送ローラ26に接触した瞬間に第一読取対象媒体MD1の搬送速度が低下するため、第一読取対象媒体MD1の副走査方向において媒体後端REから距離Xr2だけ離れた位置RDで第一読取対象媒体MD1の搬送速度が低下する。
【0049】
また、
図10に示すように、-X方向へ搬送される第一読取対象媒体MD1に対する復路読取の際には、媒体先端LEが搬送ローラ27から離れる瞬間に第一読取対象媒体MD1の搬送速度が増加するため、第一読取対象媒体MD1の副走査方向において媒体先端LEから距離Xr1だけ離れた位置RIで第一読取対象媒体MD1の搬送速度が増加する。
【0050】
以上のように、第一読取対象媒体MD1に対する往路読取及び復路読取の双方において、第一読取対象媒体MD1の搬送速度に乱れが生じる。これに対し、プロセッサ21は、往路読取時にはイメージセンサ17を配置位置FPに配置する一方で、復路読取時にはイメージセンサ17を配置位置RPに配置する。
【0051】
よって、
図11に示すように、往路読取時にイメージセンサ17によって読み取られた画像(以下では「往路画像」と呼ぶことがある)FIMでは、媒体先端LEから距離Xf1だけ離れた位置FDに存在する斜線画像OLIに搬送速度の低下による画像の縮みCFが生じる一方で、媒体後端REから距離Xf2だけ離れた位置FIに存在する斜線画像OLIに搬送速度の増加による画像の伸びEFが生じる。
【0052】
また、
図12に示すように、復路読取時にイメージセンサ17によって読み取られた画像(以下では「復路画像」と呼ぶことがある)RIMでは、媒体先端LEから距離Xr1だけ離れた位置RIに存在する斜線画像OLIに搬送速度の増加による画像の伸びERが生じる一方で、媒体後端REから距離Xr2だけ離れた位置RDに存在する斜線画像OLIに搬送速度の低下による画像の縮みCRが生じる。
【0053】
また、搬送ローラ27を基準とする距離Xf2,Xr1、及び、搬送ローラ26を基準とする距離Xf2,Xr2はそれぞれ予め定められている。このため、
図11に示すように、往路画像FIMの副走査方向において、画像の縮みCFが生じる領域RG1、及び、画像の伸びEFが生じる領域RG2は所定の領域に特定される。また、
図12に示すように、復路画像RIMの副走査方向において、画像の縮みCRが生じる領域RG3、及び、画像の伸びERが生じる領域RG4は所定の領域に特定される。以下では、副走査方向での縮みが生じた箇所の画像を「縮み画像」と呼び、副走査方向での伸びが生じた箇所の画像を「伸び画像」と呼ぶことがある。
【0054】
また、往路読取時と復路読取時とではイメージセンサ17の配置位置が上記のように異なる。このため、往路画像FIMに対する復路画像RIMにおいて、往路画像FIMの領域RG1と副走査方向で同じ位置にある領域(以下では「対応領域CO1」と呼ぶことがある)、及び、往路画像FIMの領域RG2と副走査方向で同じ位置にある領域(以下では「対応領域CO2」と呼ぶことがある)には画像の歪みは生じない。同様に、復路画像RIMに対する往路画像FIMにおいて、復路画像RIMの領域RG3と副走査方向で同じ位置にある領域(以下では「対応領域CO3」と呼ぶことがある)、及び、復路画像RIMの領域RG4と副走査方向で同じ位置にある領域(以下では「対応領域CO4」と呼ぶことがある)には画像の歪みは生じない。
【0055】
そこで、プロセッサ21は、往路画像FIMの領域RG1に存在する縮み画像を復路画像RIMにおける対応領域CO1の画像を用いて補正し、往路画像FIMの領域RG2に存在する伸び画像を復路画像RIMにおける対応領域CO2の画像を用いて補正する。また、プロセッサ21は、復路画像RIMの領域RG3に存在する縮み画像を往路画像FIMにおける対応領域CO3の画像を用いて補正し、復路画像RIMの領域RG4に存在する伸び画像を往路画像FIMにおける対応領域CO4の画像を用いて補正する。縮み画像の及び伸び画像の補正は、領域RG1,RG2,RG3,RG4の各領域が一定の大きさの面積で分割された画素ブロック毎に領域RG1,RG2,RG3,RG4の各領域の全範囲に渡って行われる。以下では、縮み画像の補正と伸び画像の補正とに分けて説明する。
【0056】
<縮み画像の補正>
図13~
図18に縮み画像の補正の一例を示す。以下では、往路画像FIMの領域RG1に存在する縮み画像の補正を一例に挙げて説明し、復路画像RIMの領域RG3に存在する縮み画像の補正については、往路画像FIMの領域RG1に存在する縮み画像の補正と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
図13に示すように、往路画像FIMの領域RG1における斜線画像OLAには縮み画像CFIが含まれる。一方で、
図14に示すように、復路画像RIMの対応領域CO1における斜線画像OLBには、歪んだ画像は含まれない。
【0058】
そこで、プロセッサ21は、斜線画像OLBを基準画像として用いて、
図15及び
図16に示すように、斜線画像OLAに対して、主走査方向の左右双方からそれぞれ斜線画像OLBを重ね合わせる。そして、プロセッサ21は、
図16に示すように、領域RG1において、斜線画像OLAに対して斜線画像OLBが一致しない領域を補正対象領域C1として検出する。このようにして検出された補正対象領域C1は、領域RG1において縮み画像CFIが存在する領域と一致する。
【0059】
そこで、プロセッサ21は、補正対象領域C1を決定後、
図17及び
図18に示すように、斜線画像OLBに対する縮み画像CFIの副走査方向での倍率を徐々に増加させることにより、縮み画像CFIが斜線画像OLBと同等の画像CA1になるまで縮み画像CFIを補正する。
【0060】
<伸び画像の補正>
図19~
図24に伸び画像の補正の一例を示す。以下では、往路画像FIMの領域RG2に存在する伸び画像の補正を一例に挙げて説明し、復路画像RIMの領域RG4に存在する伸び画像の補正については、往路画像FIMの領域RG2に存在する伸び画像の補正と同様であるため、説明を省略する。
【0061】
図19に示すように、往路画像FIMの領域RG2における斜線画像OLCには伸び画像EFIが含まれる。一方で、
図20に示すように、復路画像RIMの対応領域CO2における斜線画像OLDには、歪んだ画像は含まれない。
【0062】
そこで、プロセッサ21は、斜線画像OLDを基準画像として用いて、
図21及び
図22に示すように、斜線画像OLCに対して、副走査方向の上下双方からそれぞれ斜線画像OLDを重ね合わせる。そして、プロセッサ21は、
図22に示すように、領域RG2において、斜線画像OLCに対して斜線画像OLDが一致しない領域を補正対象領域C2として検出する。このようにして検出された補正対象領域C2は、領域RG2において伸び画像EFIが存在する領域と一致する。
【0063】
そこで、プロセッサ21は、補正対象領域C2を決定後、
図23及び
図24に示すように、斜線画像OLDに対する伸び画像EFIの副走査方向での倍率を徐々に減少させることにより、伸び画像EFIが斜線画像OLDと同等の画像CA2になるまで伸び画像EFIを補正する。
【0064】
以上、縮み画像の補正と伸び画像の補正とについて説明した。
【0065】
プロセッサ21は、往路画像または復路画像の何れか一方に対して上記のような縮み画像の補正及び伸び画像の補正の双方を行い、画像補正後の往路画像または復路画像を最終的な画像として出力する。
【0066】
<スキャナにおける処理手順>
図25は、本開示の実施例1のスキャナにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0067】
図25において、ステップS100では、プロセッサ21は、読取対象媒体に対して行われる読取が、往路と復路との双方で行われる読取(以下では「往復読取」と呼ぶことがある)であるか否かを判定する。プロセッサ21は、読取対象媒体が開口部O1Lへ挿入されたときは、読取対象媒体に対する読取が往復読取であると判定し、読取対象媒体が開口部O2へ挿入されたときは、読取対象媒体に対する読取が往復読取ではないと判定する。読取対象媒体に対する読取が往復読取であるときは(ステップS100:Yes)、処理はステップS105へ進み、読取対象媒体に対する読取が往復読取でないときは(ステップS100:No)、処理はステップS140へ進む。
【0068】
ステップS105では、プロセッサ21は、搬送ローラ26,27を逆転方向に回転させる。
【0069】
ステップS110では、プロセッサ21は、搬送ローラ26,27の逆転方向での回転に伴って読取対象媒体に対して行われる往路読取が完了するまで待機する(ステップS110:No)。読取対象媒体に対して行われる往路読取が完了した時点で(ステップS110:Yes)、処理はステップS115へ進む。
【0070】
ステップS115では、プロセッサ21は、イメージセンサ17を配置位置FPから配置位置RPに移動させることにより、イメージセンサ17の配置位置を変更する。
【0071】
イメージセンサ17の配置位置の変更完了後、ステップS120では、プロセッサ21は、搬送ローラ26,27の回転方向を逆転方向から正転方向に切り替える。
【0072】
ステップS125では、プロセッサ21は、搬送ローラ26,27の正転方向での回転に伴って読取対象媒体に対して行われる復路読取が完了するまで待機する(ステップS125:No)。読取対象媒体に対して行われる復路読取が完了すると(ステップS125:Yes)、処理はステップS130へ進む。
【0073】
ステップS130では、プロセッサ21は、往路画像または復路画像の何れか一方に対して画像補正を行う。
【0074】
そして、ステップS135では、画像補正後の往路画像または復路画像を最終的な画像として出力する。
【0075】
一方で、ステップS140では、プロセッサ21は、搬送ローラ26,27を正転方向に回転させる。
【0076】
ステップS145では、プロセッサ21は、搬送ローラ26,27の正転方向での回転に伴って読取対象媒体に対して行われる読取が完了するまで待機する(ステップS145:No)。読取対象媒体に対して行われる読取が完了した時点で(ステップS145:Yes)、処理はステップS150へ進む。
【0077】
ステップS150では、プロセッサ21は、読取画像を出力する。
【0078】
以上、実施例1について説明した。
【0079】
[実施例2]
実施例1では、単一のイメージセンサ17が、往路読取時には配置位置FPに配置される一方で、復路読取時には配置位置RPに配置される場合について説明した。
【0080】
これに対し、実施例2では、スキャナ1は、配置位置FPに配置された第一イメージセンサと、配置位置RPに配置された第二イメージセンサとの二つのイメージセンサを有する。第一イメージセンサ及び第二イメージセンサは移動せず、第一イメージセンサは、第一読取対象媒体MD1に対する往路読取を行う一方で、第二イメージセンサは、第一読取対象媒体MD1に対する復路読取を行う。このように、配置位置FPと配置位置RPとの間を移動する単一のイメージセンサ17に代えて、配置位置FP,RPのそれぞれに予め配置された二つのイメージセンサを用いても、実施例1と同様の往路画像FIM(
図11)及び復路画像RIM(
図12)を取得することができる。プロセッサ21は、往路読取時には第一イメージセンサをオンにする一方で第二イメージセンサをオフにし、復路読取時には第二イメージセンサをオンにする一方で第一イメージセンサをオフにする。
【0081】
以上、実施例2について説明した。
【0082】
[実施例3]
<イメージセンサの配置機構>
上記のように、イメージセンサ17は、プロセッサ21の制御の下で配置位置FPまたは配置位置RPの何れかに配置される。以下では、イメージセンサ17の配置位置を配置位置FPと配置位置RPとの間で変更可能な機構(以下では「配置機構」と呼ぶことがある)について、機構例1と機構例2の二つの例を挙げて説明する。
【0083】
<機構例1>
図26~
図31は、本開示の実施例3の配置機構の構成例(機構例1)を示す図である。
【0084】
図26に示すように、イメージセンサ17の上面には突起PRが形成されている。また、
図27に示す固定部材FMには、突起PRが差し込まれる穴HA1が形成されている。また、
図28に示す可動部材MMには、突起PRが差し込まれる穴HA2が形成されている。
【0085】
図29及び
図30に示す配置ユニットAUは、固定部材FMと、可動部材MMと、トルクリミッターTL1と、ベルトBL3とを有する。配置ユニットAUでは、突起PRが穴HA1,HA2の双方の穴に差し込まれる状態で、イメージセンサ17の上面と側面とを固定部材FMの内壁の上面と側面とによって覆うようにしてイメージセンサ17の上から固定部材FMが被せられて配置されるとともに、固定部材FMの外壁の上面に可動部材MMが重ねて配置される。また、可動部材MMにはトルクリミッターTL1が接続され、トルクリミッターTL1にはベルトBL3を介してトルクが与えられる。トルクリミッターTL1に接続された可動部材MMがベルトBL3の回転に伴って移動すると、可動部材MMの移動とともに、穴HA2に差し込まれた突起PRが移動するため、ベルトBL3の回転に伴ってイメージセンサ17が移動する。また、突起PRは、穴HA1にも差し込まれている。穴HA2の長手の向きが横方向であるのに対し、穴HA1の長手の向きは斜め方向である。また、イメージセンサ17を覆う固定部材FMによってイメージセンサ17の可動領域が制限される。
【0086】
また、
図31に示す配置機構AM1は、
図29及び
図30に示す配置ユニットAUを有し、配置機構AM1において、ベルトBL3はトルクリミッターTL1とローラR1とに掛けられ、ベルトBL2はローラR1と搬送ローラ27-1に掛けられ、ベルトBL1は搬送ローラ26-1,27-1と搬送モータCMの回転軸とに掛けられている。
【0087】
よって、プロセッサ21が搬送モータCMを左回りに回転させて搬送ローラ26-1,27-1を左回りに回転させることにより第一読取対象媒体MD1が+X方向へ搬送される往路読取時には、ベルトBL2を介してローラR1が左回りに回転するため、
図29に示すように、イメージセンサ17は配置位置FPに配置される。一方で、プロセッサ21が搬送モータCMを右回りに回転させて搬送ローラ26-1,27-1を右回りに回転させることにより第一読取対象媒体MD1が-X方向へ搬送される復路読取時には、ベルトBL2を介してローラR1が右回りに回転するため、
図30に示すように、イメージセンサ17は配置位置RPに配置される。また、プロセッサ21が搬送ローラ26-1,27-1の回転方向を左回りから右回りに切り替えるのに連動して、イメージセンサ17が配置位置FPから配置位置RPに移動する。
【0088】
<機構例2>
図32は、本開示の実施例3の配置機構の構成例(機構例2)を示す図である。
【0089】
図32に示す配置機構AM2は、
図29及び
図30に示す配置ユニットAUを有する。また、配置機構AM2は、
図31に示すベルトBL2に代えて、ローラR2を有する。ローラR2は接続棒CBを介して切替モータSMの回転軸と連結されている。切替モータSMは、プロセッサ21の制御の下で、フラップ35を駆動する。
【0090】
切替モータSMは、第一読取対象媒体MD1が開口部O1Lに挿入されたときは、右回りに回転することによりフラップ35の先端を上部筐体13側に上げるとともに、接続棒CBを介して連結されているローラR2を図中斜め上方向へ移動させることによりローラR2をベルトBL1とベルトBL3とに接触させる。
【0091】
ローラR2がベルトBL1及びベルトBL3の双方に接触することにより、上記の機構例1(
図31)と同様に、プロセッサ21が搬送モータCMを左回りに回転させて搬送ローラ26-1,27-1を左回りに回転させることにより第一読取対象媒体MD1が+X方向へ搬送される往路読取時には、ローラR2を介してローラR1が左回りに回転するため、
図29に示すように、イメージセンサ17は配置位置FPに配置される。また、ローラR2がベルトBL1及びベルトBL3の双方に接触することにより、上記の機構例1(
図31)と同様に、プロセッサ21が搬送モータCMを右回りに回転させて搬送ローラ26-1,27-1を右回りに回転させることにより第一読取対象媒体MD1が-X方向へ搬送される復路読取時には、ローラR2を介してローラR1が右回りに回転するため、
図30に示すように、イメージセンサ17は配置位置RPに配置される。また、ローラR2がベルトBL1及びベルトBL3の双方に接触することにより、上記の機構例1(
図31)と同様に、プロセッサ21が搬送ローラ26-1,27-1の回転方向を左回りから右回りに切り替えるのに連動して、イメージセンサ17が配置位置FPから配置位置RPに移動する。
【0092】
一方で、切替モータSMは、第二読取対象媒体MD2が開口部O2に挿入されたときは、左回りに回転することによりフラップ35の先端を下部筐体12側に下げるとともに、接続棒CBを介して連結されているローラR2を図中斜め下方向へ移動させることによりローラR2をベルトBL1とベルトBL3とから離す。ローラR2がベルトBL1及びベルトBL3の双方から離れることにより、イメージセンサ17の配置位置は、搬送ローラ26-1,27-1の回転方向にかかわらず、初期位置である配置位置FPで固定される。
【0093】
以上、実施例3について説明した。
【0094】
[実施例4]
プロセッサ21での上記説明における各処理の全部または一部は、各処理に対応するプログラムをプロセッサ21に実行させることによって実現しても良い。例えば、上記説明における各処理に対応するプログラムがメモリ29に記憶され、プログラムがプロセッサ21によってメモリ29から読み出されて実行されても良い。また、プログラムは、任意のネットワークを介してスキャナ1に接続されたプログラムサーバに記憶され、そのプログラムサーバからスキャナ1にダウンロードされて実行されたり、スキャナ1が読み取り可能な記録媒体に記憶され、その記録媒体から読み出されて実行されても良い。スキャナ1が読み取り可能な記録媒体には、例えば、メモリカード、USBメモリ、SDカード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD、及び、Blu-ray(登録商標)ディスク等の可搬の記憶媒体が含まれる。また、プログラムは、任意の言語や任意の記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。また、プログラムは必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールや複数のライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものも含む。
【0095】
以上、実施例4について説明した。
【0096】
以上のように、本開示の画像読取装置(実施例のスキャナ1)は、搬送路(実施例の搬送路P1)と、ローラ(実施例の搬送ローラ26,27)と、イメージセンサ(実施例のイメージセンサ17,第一イメージセンサ,第二イメージセンサ)と、プロセッサ(実施例のプロセッサ21)とを有する。搬送路では、読取の対象となる媒体(実施例の第一読取対象媒体MD1)が搬送される。ローラは、第一回転方向へ回転することにより、搬送路に沿って第一方向(実施例の+X方向)へ媒体を搬送するとともに、第一回転方向と逆の第二回転方向へ回転することにより、搬送路に沿って、第一方向と反対の第二方向(実施例の-X方向)へ媒体を搬送可能である。イメージセンサは、ローラによって搬送路を第一方向へ搬送中の媒体の画像である第一画像(実施例の往路画像)を第一配置位置(実施例の配置位置FP)で読み取るとともに、第一画像の読取完了後に、ローラによって搬送路を第二方向へ搬送中の媒体の画像である第二画像(実施例の復路画像)を、副走査方向で第一配置位置から所定の第一距離(実施例の距離Xm)だけ離れた第二配置位置(実施例の配置位置RP)で読み取る。プロセッサは、第一画像において歪みが生じている領域である第一領域(実施例の領域RG1,RG2)の画像、または、第二画像において歪みが生じている領域である第二領域(実施例の領域RG3,RG4)の画像を補正する。
【0097】
例えば、イメージセンサは単一のイメージセンサ(実施例のイメージセンサ17)であり、イメージセンサが単一のイメージセンサである場合、画像読取装置は、配置機構(実施例の配置機構AM1,AM2)を有する。配置機構は、媒体が第一方向へ搬送されるときは、単一のイメージセンサを第一配置位置に配置する一方で、媒体が第二方向へ搬送されるときは、単一のイメージセンサを第二配置位置に配置する。
【0098】
また例えば、イメージセンサは、第一配置位置に配置された第一イメージセンサ(実施例の第一イメージセンサ)と、第二配置位置に配置された第二イメージセンサ(実施例の第二イメージセンサ)との二つのイメージセンサを含む。
【0099】
こうすることで、第一領域の画像を第二画像を用いて補正すること、または、第二領域の画像を第一画像を用いて補正することが可能になるため、歪みが軽減された画像を得ることができる。
【0100】
また、イメージセンサは、第一画像の読取完了後に、第二画像を、副走査方向で第一配置位置から所定の第一距離(実施例の距離Xm)だけ離れ、かつ、主走査方向で第一配置位置から所定の第二距離(実施例の距離Ym)だけ離れた第二配置位置で読み取る。
【0101】
こうすることで、読取画像における副走査方向での歪みだけでなく、主走査方向での歪みも補正可能になる。
【0102】
また、プロセッサは、単一のイメージセンサによる第一画像の読取完了後に、ローラの回転方向を第一回転方向から第二回転方向へ切り替える。配置機構(実施例の配置機構AM1)は、ローラの回転方向が第一回転方向から第二回転方向へ切り替えられるのに連動させて、単一のイメージセンサを第一配置位置から第二配置位置に移動させる。
【0103】
こうすることで、媒体の搬送方向の切替に伴ってイメージセンサの配置位置を変更することができる。
【0104】
また、画像読取装置は、媒体(実施例の第一読取対象媒体MD1)が挿入される第一開口部(実施例の開口部O1L)と、媒体(実施例の第二読取対象媒体MD2)が挿入される第二開口部(実施例の開口部O2)とを有する。第二開口部は、第一開口部と異なる位置に配置される。配置機構(実施例の配置機構AM2)は、媒体が第一開口部に挿入されたときは、回転方向が第一回転方向から第二回転方向へ切り替えられるのに連動させて、単一のイメージセンサを第一配置位置から第二配置位置に移動させる一方で、媒体が第二開口部に挿入されたときは、単一のイメージセンサの配置位置を第一配置位置に固定する。単一のイメージセンサは、媒体が第一開口部に挿入されたときは、第一画像を第一配置位置で読み取るとともに、第一画像の読取完了後に第二画像を第二配置位置で読み取ることにより、一つの媒体に対して二つの画像(実施例の往路画像及び復路画像)を読み取る。また、単一のイメージセンサは、媒体が第二開口部に挿入されたときは、第二画像を第一配置位置で読み取ることにより、一つの媒体に対して一つの画像を読み取る。
【0105】
通常は第一開口部に厚手媒体が挿入され、第二開口部に薄手媒体が挿入されるため、こうすることで、搬送速度の乱れが大きくなる厚手媒体に対しては画像補正のために二つの画像を読み取る一方で、搬送速度の乱れが小さいために画像補正が不要な薄手媒体に対しては一つの画像を読み取ることが可能になるため、媒体の厚さに応じて効率良く画像の読取を行うことができる。
【0106】
また、プロセッサは、第一画像において歪みが生じていない領域である第三領域であって、副走査方向で第二領域と同じ位置にある第三領域(実施例の対応領域CO3,CO4)の画像を用いて第二領域における補正対象領域(実施例の補正対象領域C1,C2)を検出する。または、プロセッサは、第二画像において歪みが生じていない領域である第四領域であって、副走査方向で第一領域と同じ位置にある第四領域(実施例の対応領域CO1,CO2)の画像を用いて第一領域における補正対象領域(実施例の補正対象領域C1,C2)を検出する。
【0107】
こうすることで、補正対象領域を正確に検出することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 スキャナ
21 プロセッサ
17 イメージセンサ
26-1,26-2,27-1,27-2 搬送ローラ
P1,P2,P3 搬送路