(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】把手付きボトル
(51)【国際特許分類】
B65D 23/10 20060101AFI20240531BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B65D23/10 A
B65D1/02 221
(21)【出願番号】P 2020160443
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】今井 宏明
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/011229(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/031039(WO,A1)
【文献】特開2006-327666(JP,A)
【文献】特開2001-048184(JP,A)
【文献】特開平06-247433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 23/10
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトルの胴部に、径方向のうちの後方および左右方向に一体に開口した凹部が設けられ、
前記凹部に把手が取付けられ、
前記凹部は、
下方を向き、前記把手の上端部が当接する天井面と、
前記天井面の外周縁から上方に向けて延び、前記胴部の外周面に接続される接続面と、を備え、
前記接続面は、上下方向に延びるボトル軸に直交する横断面視で、後端に位置
して左右方向に延びる上底
部分と、前記上底
部分における左右方向の両端部から前方に向かうに従い互いが左右方向に離れる向きに延びる一対の脚
部分と、を
有し、
前記接続面のうち、
前記上底部分に、後方から見て上下方向に延びるパーティングラインの一部が位置するとともに、
前記脚部分に、第1補強リブが形成されている、把手付きボトル。
【請求項2】
前記接続面の上底部分に、第2補強リブが形成されている、請求項1に記載の把手付きボトル。
【請求項3】
前記接続面の上底部分は、前記天井面の外周縁から上方に向かうに従い後方に向けて延び、
前記接続面の一対の脚部分は、前記天井面の外周縁から上方に向かうに従い互いが左右方向に離れる向きに延びている、請求項1または2に記載の把手付きボトル。
【請求項4】
前記第1補強リブは、後方から見て左右方向に延びる条状に形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の把手付きボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把手付きボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、ボトルの胴部に、径方向のうちの後方および左右方向に一体に開口した凹部が設けられ、凹部に把手が取付けられ、凹部が、下方を向き、把手の上端部が当接する天井面と、天井面の外周縁から上方に向けて延び、胴部の外周面に接続される接続面と、を備えた把手付きボトルが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の把手付きボトルでは、把手を凹部に強く取付けることに改善の余地があった。
【0005】
本発明は、把手を凹部に強く取付けることができる把手付きボトルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の把手付きボトルは、ボトルの胴部に、径方向のうちの後方および左右方向に一体に開口した凹部が設けられ、前記凹部に把手が取付けられ、前記凹部は、下方を向き、前記把手の上端部が当接する天井面と、前記天井面の外周縁から上方に向けて延び、前記胴部の外周面に接続される接続面と、を備え、前記接続面は、上下方向に延びるボトル軸に直交する横断面視で、後端に位置して左右方向に延びる上底部分と、前記上底部分における左右方向の両端部から前方に向かうに従い互いが左右方向に離れる向きに延びる一対の脚部分と、を有し、前記接続面のうち、前記上底部分に、後方から見て上下方向に延びるパーティングラインの一部が位置するとともに、前記脚部分に、第1補強リブが形成されている。
【0007】
本発明によれば、天井面の外周縁から上方に向けて延び、胴部の外周面に接続される接続面が、前記横断面視で台形状を呈するので、接続面のうち、脚部分と上底部分との間に位置する角部分が、把手付きボトルの持ち上げ時に把手の上端部から天井面に加えられる上方に向けた押圧力を受け止めるリブとして作用することとなり、接続面が、例えば前記横断面視で半円形状を呈する場合等と比べて、接続面の上下方向の圧縮剛性を高めることが可能になり、把手を凹部に強く取付けることができる。
接続面の一対の脚部分が、前記横断面視で前方に向かうに従い互いが左右方向に離れる向きに延びているので、一対の脚部分が、例えば、前記横断面視で前後方向に真直ぐ延びている場合、若しくは前記横断面視で前方に向かうに従い互いが左右方向に近付く向きに延びている場合等と比べて、ブロー成形後の型開き時に、キャビティ内面を、接続面の脚部分から離反させやすくすることが可能になり、型開き時に接続面の脚部分が変形するのを防ぐことができる。
接続面の脚部分に、第1補強リブが形成されているので、一対の脚部分が、前記横断面視で前方に向かうに従い互いが左右方向に離れる向きに延びていることと相俟って、ブロー成形後の型開き時に、キャビティ内面が、接続面の角部分を左右方向の外側に向けて摺接しても、接続面の脚部分および角部分が、左右方向の外側に向けて変形するのを確実に抑制することが可能になり、ボトルを軽量にした場合であっても、型開き時に、接続面の脚部分に折れ、および皺等を生じさせにくくすることができる。
【0008】
前記接続面の上底部分に、第2補強リブが形成されてもよい。
【0009】
この場合、接続面の上底部分に、第2補強リブが形成されているので、ブロー成形後の型開き時に、接続面の角部分が、左右方向の外側に向けて変形するのを確実に抑制することができる。
【0010】
前記接続面の上底部分は、前記天井面の外周縁から上方に向かうに従い後方に向けて延び、前記接続面の一対の脚部分は、前記天井面の外周縁から上方に向かうに従い互いが左右方向に離れる向きに延びてもよい。
【0011】
この場合、接続面の上底部分が、天井面の外周縁から上方に向かうに従い後方に向けて延び、接続面の一対の脚部分が、天井面の外周縁から上方に向かうに従い互いが左右方向に離れる向きに延びているので、上底部分および脚部分が、例えば、天井面の外周縁から上方に向けて真直ぐ延びている構成等と比べて、把手付きボトルの持ち上げ時に、接続面に生ずる応力を緩和することができる。
接続面の上底部分が、天井面の外周縁から上方に向かうに従い後方に向けて延びているので、上底部分に、把手を持った手の親指を突き当てることが可能になり、持ち上げた把手付きボトルを安定させることができる。
接続面の上底部分に第2補強リブが形成されている場合には、上底部分の剛性が高められるので、持ち上げた把手付きボトルを確実に安定させることができる。
【0012】
前記第1補強リブは、後方から見て左右方向に延びる条状に形成されてもよい。
【0013】
この場合、第1補強リブが、後方から見て左右方向に延びる条状に形成されているので、接続面の脚部分における面内の、後方から見た左右方向の圧縮剛性を効果的に高めることが可能になり、ブロー成形後の型開き時に、接続面の脚部分および角部分が、左右方向の外側に向けて変形するのを確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、把手を凹部に強く取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る一実施形態として示した把手付きボトルを左右方向から見た側面図である。
【
図2】本発明に係る一実施形態として示した把手付きボトルを後方から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、把手付きボトル1の一実施形態について説明する。
把手付きボトル1は、
図1および
図2に示されるように、ボトル10および把手11を備えている。ボトル10の内容積は、例えば1リットル以上となっている。
ボトル10は、口部12、肩部13、胴部14および底部15を備えるとともに、これら12~15が、それぞれの中心軸線を共通軸上に位置させた状態で、この順に連ねられて構成されている。
【0017】
以下、前記共通軸をボトル軸Oといい、ボトル軸Oに沿って口部12側を上側、底部15側を下側といい、ボトル軸Oに沿う方向を上下方向といい、上下方向から見て、ボトル軸Oに交差する方向を径方向という。また、径方向のうち、ボトル軸Oに対して把手11が設けられている側を後側といい、ボトル軸Oを径方向に挟む把手11の反対側を前側といい、上下方向から見て、前後方向に直交する方向を左右方向という。
【0018】
図示の例では、口部12、肩部13、胴部14および底部15はそれぞれ、ボトル軸Oに直交する横断面視形状が円形状となっている。把手11は、左右方向に開口した環状に形成されている。
【0019】
胴部14に、後方および左右方向に一体に開口した凹部16が設けられている。凹部16は、胴部14の上部に設けられている。凹部16の左右方向の中央部は、胴部14の外周面のうち、後方を向く部分における左右方向の中央部に位置している。凹部16は、上端部に位置して下方を向く天井面16aと、下端部に位置して上方を向く下面16bと、天井面16aおよび下面16bそれぞれの前端部同士を連結し、後方を向く底面16cと、により画成されている。凹部16に把手11が取付けられている。底面16cに把手11の前端部がめり込み、天井面16aに把手11の上端部が当接し、下面16bに把手の下端部が当接している。
【0020】
そして、本実施形態では、凹部16は、天井面16aの外周縁から上方に向けて延び、胴部14の外周面に接続される接続面21を備えている。接続面21は、ボトル軸Oに直交する横断面視で、後端に位置する上底と、上底における左右方向の両端部から前方に向かうに従い互いが左右方向に離れる向きに延びる一対の脚と、を有する台形状を呈する。
【0021】
すなわち、接続面21は、前記脚と対応する一対の脚部分22と、前記上底と対応する上底部分23と、を備えている。上底部分23の左右方向の中央部は、胴部14の外周面のうち、後方を向く部分における左右方向の中央部に位置している。接続面21は、前記横断面視で、胴部14における左右方向の中央部を通る直線に対して対称形状を呈する。
【0022】
一対の脚部分22は、天井面16aの外周縁から上方に向かうに従い互いが左右方向に離れる向きに延びている。後方から見て、脚部分22の左右方向の長さは、下方から上方に向かうに従い長くなっている。
脚部分22に、第1補強リブ25が形成されている。第1補強リブ25は、後方から見て左右方向に延びる条状に形成されている。第1補強リブ25は、後方から見て脚部分22における左右方向の全長にわたって設けられている。第1補強リブ25は溝となっている。第1補強リブ25は、脚部分22に、上下方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0023】
上底部分23は、天井面16aの外周縁から上方に向かうに従い後方に向けて延びている。後方から見て、上底部分23の左右方向の長さは、下方から上方に向かうに従いわずかに長くなっている。上底部分23は、把手11の後端部と上下方向で対向している。
上底部分23に、第2補強リブ26が形成されている。第2補強リブ26は、左右方向に延びる条状に形成されている。第2補強リブ26は、上底部分23における左右方向の全長にわたって設けられている。第2補強リブ26は溝となっている。第2補強リブ26は、上底部分23に、上下方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0024】
接続面21のうち、脚部分22と上底部分23との間に位置する角部分24は、第1補強リブ25および第2補強リブ26が設けられていない平滑面となっている。角部分24は、後方に向けて突の曲面状に形成されている。
【0025】
把手付きボトル1は、有底筒状のプリフォームを、把手11がインサートされたキャビティ内でブロー成形することで、ボトル10が形成されるのと同時に、ボトル10の凹部16に把手11が固着されて形成される。プリフォームおよび把手11は、予め射出成形により形成される。
【0026】
前述のキャビティは、互いに当接、離反可能に設けられた一対の成形金型における各重ね合わせ面間に設けられている。一対の成形金型それぞれの前端部同士が、上下方向に延びる回転軸を介して互いに連結され、一対の成形金型が、回転軸回りに回転することにより、各重ね合わせ面が互いに当接、離反してキャビティが開閉される。これにより、パーティングラインPLは、胴部14の外周面のうち、前方を向く部分、および後方を向く部分それぞれにおける左右方向の中央部に位置して上下方向に延びている。パーティングラインPLの一部は、上底部分23における左右方向の中央部に位置している。
【0027】
以上説明したように、本実施形態による把手付きボトル1によれば、天井面16aの外周縁から上方に向けて延び、胴部14の外周面に接続される接続面21が、前記横断面視で台形状を呈するので、接続面21の角部分24が、把手付きボトル1の持ち上げ時に把手11の上端部から天井面16aに加えられる上方に向けた押圧力を受け止めるリブとして作用することとなり、接続面21が、例えば前記横断面視で半円形状を呈する場合等と比べて、接続面21の上下方向の圧縮剛性を高めることが可能になり、把手11を凹部16に強く取付けることができる。
【0028】
接続面21の一対の脚部分22が、前記横断面視で前方に向かうに従い互いが左右方向に離れる向きに延びているので、一対の脚部分22が、例えば、前記横断面視で前後方向に真直ぐ延びている場合、若しくは前記横断面視で前方に向かうに従い互いが左右方向に近付く向きに延びている場合等と比べて、ブロー成形後の型開き時に、キャビティ内面を、接続面21の脚部分22から離反させやすくすることが可能になり、型開き時に接続面21の脚部分22が変形するのを防ぐことができる。
【0029】
接続面21の脚部分22に、第1補強リブ25が形成されているので、一対の脚部分22が、前記横断面視で前方に向かうに従い互いが左右方向に離れる向きに延びていることと相俟って、ブロー成形後の型開き時に、キャビティ内面が、接続面21の角部分24を左右方向の外側に向けて摺接しても、接続面21の脚部分22および角部分24が、左右方向の外側に向けて変形するのを確実に抑制することが可能になり、ボトル10を軽量にした場合であっても、型開き時に、接続面21の脚部分22に折れ、および皺等を生じさせにくくすることができる。
【0030】
接続面21の上底部分23に、第2補強リブ26が形成されているので、ブロー成形後の型開き時に、接続面21の角部分24が、左右方向の外側に向けて変形するのを確実に抑制することができる。
【0031】
接続面21の上底部分23が、天井面16aの外周縁から上方に向かうに従い後方に向けて延び、接続面21の一対の脚部分22が、天井面16aの外周縁から上方に向かうに従い互いが左右方向に離れる向きに延びているので、上底部分23および脚部分22が、例えば、天井面16aの外周縁から上方に向けて真直ぐ延びている構成等と比べて、把手付きボトル1の持ち上げ時に、接続面21に生ずる応力を緩和することができる。
【0032】
接続面21の上底部分23が、天井面16aの外周縁から上方に向かうに従い後方に向けて延びているので、上底部分23に、把手11を持った手の親指を突き当てることが可能になり、持ち上げた把手付きボトル1を安定させることができる。
接続面21の上底部分23に第2補強リブ26が形成されているので、上底部分23の剛性が高められるので、持ち上げた把手付きボトル1を確実に安定させることができる。
【0033】
第1補強リブ25が、後方から見て左右方向に延びる条状に形成されているので、接続面21の脚部分22における面内の、後方から見た左右方向の圧縮剛性を効果的に高めることが可能になり、ブロー成形後の型開き時に、接続面21の脚部分22および角部分24が、左右方向の外側に向けて変形するのを確実に抑制することができる。
【0034】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0035】
例えば、第1補強リブ25および第2補強リブ26は、上下方向に延びてもよく、突部であってもよい。
脚部分22および上底部分23は、天井面16aの外周縁から上方に真直ぐ延びてもよい。
パーティングラインPLを、上底部分23における左右方向の中央部から左右方向に離して位置させてもよい。
接続面21の上底部分23は、天井面16aの外周縁から上方に真直ぐ延びてもよい。
接続面21の一対の脚部分22は、天井面16aの外周縁から上方に真直ぐ延びてもよい。
【0036】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 把手付きボトル
10 ボトル
11 把手
14 胴部
16 凹部
16a 天井面
21 接続面
22 脚部分
23 上底部分
25 第1補強リブ
26 第2補強リブ
O ボトル軸
PL パーティングライン