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特許7496753スライドゲート及びその油圧シリンダ取り外し方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】スライドゲート及びその油圧シリンダ取り外し方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/28 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
E02B7/28
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020165477
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057298
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】395013212
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラ建設
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 廣治
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-117029(JP,U)
【文献】特開2004-285595(JP,A)
【文献】特開2002-138449(JP,A)
【文献】特開2002-115241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降により放流口を開閉可能なスライドゲート本体と、
上記スライドゲート本体に組み込まれ、該スライドゲート本体に形成された放流用の開口を開閉可能な扉体と、
上記扉体を昇降させる油圧シリンダ式開閉装置と、
上記油圧シリンダ式開閉装置から突出して押し引き駆動され、先端に取り付けた上ナットと下ナットとで挟んで締め付けることにより上記扉体を連結するピストンロッドと、
上記スライドゲート本体における水が流れ込む内部と大気とつながる操作室とを区分し、分解及び組立のために開閉可能なボンネットカバーと、
上記ボンネットカバーの中央に設けられ、上記ピストンロッドが貫通し止水された状態で上下方向に摺動するパッキン部と、
上記パッキン部の中央に組み込まれ、外されることで、上記上ナットの外径よりも大きな開口が上記パッキン部に生じ、上記上ナットが上記ピストンロッドに取り付いた状態であって、上記下ナット及び上記扉体が上記ピストンロッドから外された状態で上記ピストンロッドを抜くことが可能な内スリーブとを備えている
ことを特徴とするスライドゲート。
【請求項2】
請求項1に記載のスライドゲートであって、
上記ピストンロッドの外周に上記上ナットの外周よりも外径の小さな円筒状ブッシュが挿通され、
上記円筒状ブッシュが上記内スリーブを介して上記パッキン部に着脱可能に固定されている
ことを特徴とするスライドゲート。
【請求項3】
昇降により放流口を開閉可能なスライドゲート本体と、
上記スライドゲート本体に組み込まれ、該スライドゲート本体に形成された放流用の開口を開閉可能な扉体と、
上記扉体を昇降させる油圧シリンダ式開閉装置と、
上記油圧シリンダ式開閉装置から突出して押し引き駆動され、先端に取り付けた上ナットと下ナットとで挟んで締め付けることにより上記扉体を連結するピストンロッドと、
上記スライドゲート本体の水が流れ込む内部と大気とつながる操作室とを区分し、分解及び組立のために開閉可能なボンネットカバーと、
上記ボンネットカバーの中央に設けられ、上記ピストンロッドが貫通し止水された状態で上下方向に摺動するパッキン部とを備えたスライドゲートの油圧シリンダ取り外し方法であって、
上記ピストンロッドを伸長させて上記扉体で上記放流用の開口を閉じた状態で上記下ナットを取り外し、
上記ピストンロッドを縮小させて上記扉体から抜き、上記上ナットと上記パッキン部とを近付け、
上記パッキン部の中央に組み込まれた内スリーブを取り外すことができるように弛め、
上記ピストンロッドを上昇させて上記上ナット及び上記内スリーブと共に上方に引き上げ、
上記内スリーブが外されることで上記パッキン部に形成された上記上ナットの外径よりも大きな開口を通し、上記上ナットが上記ピストンロッドに取り付いた状態であって、上記下ナット及び上記扉体が上記ピストンロッドから外された状態で上記ピストンロッドを抜く
ことを特徴とするスライドゲートの油圧シリンダ取り外し方法。
【請求項4】
請求項3に記載のスライドゲートの油圧シリンダ取り外し方法であって、
上記ボンネットカバーの蓋板に設けた円筒状のパッキンケースに固定されている上記内スリーブを該内スリーブに設けたネジ孔を用いてジャッキアップして上記パッキンケースから取り外す
ことを特徴とするスライドゲートの油圧シリンダ取り外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばダムの常用洪水吐きや小容量放流設備の主ゲートや副ゲートとして設けられる高圧用途のスライドゲートのうち、油圧シリンダを用いて駆動される中型又は大型のスライドゲート及びその油圧シリンダ取り外し方法に関し、特に、その油圧シリンダのピストンロッドの抜き出し構造及び方法の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
ダムの高圧(高水深)部に設けられる放流設備の流量制御用ゲートとしては、その創成期から高圧スライドゲートが広く採用されている。
【0003】
そして、その開閉駆動システムには従来から現在に至るまで、中型又は大型設備では、図5Aに示されるような油圧シリンダ引上げ式開閉装置が、また図示しないが、小型設備ではスピンドル式(駆動ネジ式)開閉装置が、それぞれ採用されており、今後もこの棲み分けで採用されていくものと考えられている。
【0004】
これらのうち、中型又は大型設備に採用されている油圧シリンダ引上げ式開閉装置の場合には、図5Aに示すように高圧スライドゲート130のボンネットカバー104の上に油圧シリンダ101のシリンダチューブ101aを設置し、ボンネット115内へ油圧シリンダ101のピストンロッド101bを伸ばし、ピストンロッド101bの先端を高圧スライドゲート130の扉体114と連結している。
【0005】
中型又は大型設備では、桁構造の扉体114を採用しており、扉体114側から見たピストンロッド101bとの連結方法は、図5Aに示すような扉体114の最上部主桁114aと上から2番目の主桁114bの間をナット102,103で挟んで締め付ける第1の方法と、図5Cに示すように、扉体の2番目の主桁114bと3番目の主桁114dの間をナット102,103で挟んで締め付ける第2の方法とが採用されている。しかし、第2の方法はピストンロッド101bの長さが長くなって材料調達が難しくなり、コストが増大するので、第1の方法が主流となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、第1の方法の場合には、高圧スライドゲート130を組立完了した状態ではピストンロッド101bに取り付けて扉体114を挟んで締め付けているナット102,103のうち、上ナット102は、作業者の手が入らず流路側から回転させることができない。
【0007】
従来の設備設計では、図7に示すように、ボンネットカバー104の油圧シリンダ101のピストンロッド101bが貫通する箇所において、ボンネットカバー104の蓋板と溶接固定しているパッキンケース104aに円形の孔を設け、そこに、ピストンロッド101bの外径に適合した円筒状ブッシュ106、Vパッキン107、Vパッキン押え金物108を組み込んでいたが、ピストンロッド101bと扉体114との連結のためにピストンロッド101bの先端付近に取り付ける上ナット102の外径D1の方が、パッキンケース104aに設けた最小の孔径D2よりも大きいため(D1>D2)、上ナット102が付いた状態のピストンロッド101bがパッキンケース104aを通過することができず、油圧シリンダ101をボンネットカバー104から切り離すことができなかった。
【0008】
このため、油圧シリンダ101をメンテナンス等で取り外す際に、ピストンロッド101bに取り付けた上ナット102を外すこともできないことから、油圧シリンダ101とボンネットカバー104を結合した状態でボンネット115から取り外し、操作室内で仮置きした状態で上ナット102を取り外してボンネットカバー104と油圧シリンダ101を切り離し、油圧シリンダ101を搬出している。そして、取付時には、この逆の手順としている。
【0009】
そして、この第1の方法の場合には、作業時に一時撤去する装置、部材の範囲及び数量が多い、作業時の手順が多い、作業時に吊り上げる製品の重量が大きくなる、操作室内に仮置きスペースが必要になる、操作室内の仮置きのための架台が必要になる等、多くの問題がある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、油圧シリンダのメンテナンス時に、油圧シリンダの搬出及び搬入を容易に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、この発明では、高圧スライドゲートのボンネットカバーのピストンロッドが貫通する箇所に設けているパッキン部の中心部に内スリーブを設けて二重構造とし、内スリーブの外径でもあるパッキン部中心の開口径を、油圧シリンダのピストンロッド先端に取り付けている上ナットが通過できるだけの内径とした。
【0012】
具体的には、第1の発明では、昇降により放流口を開閉可能なスライドゲート本体と、
上記スライドゲート本体に組み込まれ、該スライドゲート本体に形成された放流用の開口を開閉可能な扉体と、
上記扉体を昇降させる油圧シリンダ式開閉装置と、
上記油圧シリンダ式開閉装置から突出して押し引き駆動され、先端に取り付けた上ナットと下ナットとで挟んで締め付けることにより上記扉体を連結するピストンロッドと、
上記スライドゲート本体における水が流れ込む内部と大気とつながる操作室とを区分し、分解及び組立のために開閉可能なボンネットカバーと、
上記ボンネットカバーの中央に設けられ、上記ピストンロッドが貫通し止水された状態で上下方向に摺動するパッキン部と、
上記パッキン部の中央に組み込まれ、外されることで、上記上ナットの外径よりも大きな開口が生じ、上記上ナットが取り付いた状態で上記ピストンロッドを抜くことが可能な内スリーブとを備えている。
【0013】
上記の構成によると、内スリーブを外すと、上ナットの外径よりも大きな開口が生じるので、ボンネットカバーをスライドゲート本体に取り付けたまま内スリーブをピストンロッド側に取り付けた状態で、油圧シリンダをボンネットカバーから切り離して搬出し、内スリーブは油圧シリンダの整備工場等の作業環境の良い箇所で取り外すことができる。このため、油圧シリンダのメンテナンス時に、一時撤去する装置、部材の範囲及び数量が少なくなり、作業時の手順が低減され、作業時に吊り上げる製品の重量が低減され、操作室内に仮置きスペースが不要になり、操作室内の仮置きのための架台が不要になって、安全かつ経済的に油圧シリンダのメンテナンス作業のできる高圧スライドゲートが得られる。
【0014】
第2の発明では、第1の発明において、
上記ピストンロッドの外周に上記上ナットの外周よりも外径の小さな円筒状ブッシュが挿通され、
上記円筒状ブッシュが上記内スリーブを介して上記パッキン部に着脱可能に固定されている。
【0015】
上記の構成によると、内スリーブと円筒状ブッシュとの二重構造で、ピストンロッド外周との水密性を確保しながら、ボンネットカバーを外すことなく上ナットと共にシリンダロッドを引き上げることができる。
【0016】
第3の発明では、
昇降により放流口を開閉可能なスライドゲート本体と、
上記スライドゲート本体に組み込まれ、該スライドゲート本体に形成された放流用の開口を開閉可能な扉体と、
上記扉体を昇降させる油圧シリンダ式開閉装置と、
上記油圧シリンダ式開閉装置から突出して押し引き駆動され、先端に取り付けた上ナットと下ナットとで挟んで締め付けることにより上記扉体を連結するピストンロッドと、
上記スライドゲート本体の水が流れ込む内部と大気とつながる操作室とを区分し、分解及び組立のために開閉可能なボンネットカバーと、
上記ボンネットカバーの中央に設けられ、上記ピストンロッドが貫通し止水された状態で上下方向に摺動するパッキン部とを備えたスライドゲートの油圧シリンダ取り外し方法を対象とし、
上記の方法では、
上記ピストンロッドを伸長させて上記扉体で上記放流用の開口を閉じた状態で上記下ナットを取り外し、
上記ピストンロッドを縮小させて上記扉体から抜き、上記上ナットと上記パッキン部とを近付け、
上記パッキン部の中央に組み込まれた内スリーブを取り外すことができるように弛め、
上記ピストンロッドを上昇させて上記上ナット及び上記内スリーブと共に上方に引き上げ、
上記内スリーブが外されることで形成された上記上ナットの外径よりも大きな開口を通し、上記上ナットが取り付いた状態で上記ピストンロッドを抜く構成とする。
【0017】
上記の構成によると、内スリーブを外すと、ボンネットカバーをスライドゲート本体に取り付けたまま内スリーブをピストンロッド側に取り付けた状態で、油圧シリンダをボンネットカバーから切り離して搬出し、内スリーブは油圧シリンダの整備工場等の作業環境の良い箇所で取り外すことができる。このため、油圧シリンダのメンテナンス時に、一時撤去する装置、部材の範囲及び数量が少なくなり、作業時の手順が低減され、作業時に吊り上げる製品の重量が低減され、操作室内に仮置きスペースが不要になり、操作室内の仮置きのための架台が不要になって、安全かつ経済的に油圧シリンダのメンテナンス作業のできる高圧スライドゲートが得られる。
【0018】
第4の発明では、第3の発明において、
上記ボンネットカバーの蓋板に設けた円筒状のパッキンケースに固定されている上記内スリーブを該内スリーブに設けたネジ孔を用いてジャッキアップして上記パッキンケースから取り外す構成とする。
【0019】
上記の構成によると、簡単な構成及び少ない工具で、内スリーブをパッキンケースから極めて容易に取り外せるので、作業効率が格段に向上する。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、内スリーブが外されることで形成された上ナットの外径よりも大きな開口を通し、上ナットが取り付いた状態でピストンロッドを抜くようにしたことにより、油圧シリンダのメンテナンス時に、油圧シリンダの搬出及び搬入を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】油圧シリンダで開閉(昇降)駆動し、本発明に係る構造を含む高圧スライドゲートのうち、油圧シリンダのピストンロッドと接合する部分の扉体側の構造が、主桁間に縦桁を配したものとする場合の、構成部材を示す縦断図である。
図1B】油圧シリンダで開閉(昇降)駆動し、本発明に係る構造を含む高圧スライドゲートのうち、油圧シリンダのピストンロッドと接合する部分の扉体側の構造が、ブロック金物を使用したものとする場合の、構成部材を示す縦断図である。
図2A】油圧シリンダで開閉(昇降)駆動し、本発明に係る構造を含む高圧スライドゲートのうち、油圧シリンダのピストンロッドと接合する部分の扉体側の構造が、主桁間に縦桁を配したものとする場合の、構成部材を示す上流側から見た横断図である。
図2B】油圧シリンダで開閉(昇降)駆動し、本発明に係る構造を含む高圧スライドゲートのうち、油圧シリンダのピストンロッドと接合する部分の扉体側の構造が、ブロック金物を使用したものとする場合の、構成部材を示す上流側から見た横断図である。
図3A】本発明に係るボンネットカバーに設けているパッキンケース部の内部構造を示す断面図である。
図3B】本発明に係るボンネットカバーに設けているパッキンケース部の内スリーブを、油圧シリンダのメンテナンスのための搬出時に抜き出す状況を示す断面図である。
図3C】本発明に係るボンネットカバーに設けているパッキンケース部の内スリーブを抜き出すことで、油圧シリンダのピストンロッドに取り付けられている上ナットがパッキンケース部を通過できることを示す断面図である。
図4A】本発明に係るボンネットカバーに設けているパッキンケース部の場合の、油圧シリンダの搬出を行う手順の第1段階として、油圧シリンダを伸ばし、扉体を全閉にした状態を示す横断図である。
図4B】本発明に係るボンネットカバーに設けているパッキンケース部の場合の、油圧シリンダの搬出を行う手順の第2段階として、油圧シリンダのピストンロッドと扉体との連結部の下ナットを取り外す状態を示す横断図である。
図4C】本発明に係るボンネットカバーに設けているパッキンケース部の場合の、油圧シリンダの搬出を行う手順の第3段階として、油圧シリンダのピストンロッドを引込み、全縮とした状態を示す横断図である。
図4D】本発明に係るボンネットカバーに設けているパッキンケース部の場合の、油圧シリンダの搬出を行う手順の第4段階として、パッキンケース部の内スリーブをパッキンケースから抜き出す状態を示す横断図である。
図4E】本発明に係るボンネットカバーに設けているパッキンケース部の場合の、油圧シリンダの搬出を行う手順の第5段階として、油圧シリンダをボンネットカバーから切り離すために吊り上げた状態を示す横断図である。
図5A】油圧シリンダで開閉(昇降)駆動する従来の高圧スライドゲートのうち、油圧シリンダのピストンロッドと接合する部分の扉体側の構造が、主桁間に縦桁を配したものとする場合の、構成部材を示す縦断図である。
図5B】油圧シリンダで開閉(昇降)駆動する従来の高圧スライドゲートのうち、油圧シリンダのピストンロッドと接合する部分の扉体側の構造が、ブロック金物を使用したものとする場合の、構成部材を示す縦断図である。
図5C】油圧シリンダで開閉(昇降)駆動する従来の一部の高圧スライドゲートで採用されていた、油圧シリンダのピストンロッドと接合する部分の扉体側の位置が1区画だけ低い位置とし、その構造が、主桁間に縦桁を配したものとする場合の、構成部材を示す縦断図である。
図5D】油圧シリンダで開閉(昇降)駆動する従来の一部の高圧スライドゲートで採用されていた、油圧シリンダのピストンロッドと接合する部分の扉体側の位置が1区画だけ低い位置とし、その構造が、ブロック金物を使用したものとする場合の、構成部材を示す縦断図である。
図6A】油圧シリンダで開閉(昇降)駆動する従来の高圧スライドゲートのうち、油圧シリンダのピストンロッドと接合する部分の扉体側の構造が、主桁間に縦桁を配したものとする場合の、構成部材を示す上流側から見た横断図である。
図6B】油圧シリンダで開閉(昇降)駆動する従来の高圧スライドゲートのうち、油圧シリンダのピストンロッドと接合する部分の扉体側の構造が、ブロック金物を使用したものとする場合の、構成部材を示す上流側から見た横断図である。
図7】従来のボンネットカバーに設けているパッキンケース部の内部構造を示す断面図である。
図8A】従来のボンネットカバーに設けているパッキンケース部の場合の、油圧シリンダの搬出を行う手順の第1段階として、油圧シリンダを伸ばし、扉体を全閉にした状態を示す横断図である。
図8B】従来のボンネットカバーに設けているパッキンケース部の場合の、油圧シリンダの搬出を行う手順の第2段階として、油圧シリンダのピストンロッドと扉体との連結部の下ナットを取り外す状態を示す横断図である。
図8C】従来のボンネットカバーに設けているパッキンケース部の場合の、油圧シリンダの搬出を行う手順の第3段階として、油圧シリンダのピストンロッドを引込み、全縮とした状態を示す横断図である。
図8D】従来のボンネットカバーに設けているパッキンケース部の場合の、油圧シリンダの搬出を行う手順の第4段階として、操作室内の高圧スライドゲート周辺の付属設備のうち、油圧シリンダの搬出及び搬入の障害となる部分を一時撤去した状態を示す横断図である。
図8E】従来のボンネットカバーに設けているパッキンケース部の場合の、油圧シリンダの搬出を行う手順の第5段階として、ボンネットカバーと油圧シリンダとを接合した状態でボンネットから切り離すために吊り上げた状態を示す横断図である。
図8F】従来のボンネットカバーに設けているパッキンケース部の場合の、油圧シリンダの搬出を行う手順の第6段階として、油圧シリンダのピストンロッドに取り付けている上ナットを外すために、ボンネットカバーと油圧シリンダとを接合した状態で操作し室内に仮置きしている状態を示す横断図である。
図8G】従来のボンネットカバーに設けているパッキンケース部の場合の、油圧シリンダの搬出を行う手順の第7段階として、油圧シリンダのピストンロッドに取り付けている上ナットを外す状態を示す横断図である。
図8H】従来のボンネットカバーに設けているパッキンケース部の場合の、油圧シリンダの搬出を行う手順の第8段階として、油圧シリンダをボンネットカバーから切り離すために吊り上げた状態を示す横断図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
-従来の高圧スライドゲート構造-
まず、従来の高圧スライドゲート130の構造について説明する。図5A図5B図6A及び図6Bに示すように、高圧スライドゲート130は、通水部が上流側ケーシング116と下流側ケーシング117とで構成され、その内側に通水部を閉塞するための扉体114が組み込まれ、上下流ケーシング116,117の上には開状態の扉体114を格納するためのボンネット115が積み重ねられ、さらにその上には、ボンネット115の上面開口部を塞ぐためにボンネットカバー104が配置されている。
【0024】
そして、ボンネットカバー104の上には油圧シリンダ101のシリンダチューブ101aが取り付けられ、シリンダチューブ101aから下方向にピストンロッド101bが延び、ピストンロッド101bはボンネットカバー104を貫通してボンネット115内に入り、先端を扉体114と連結されている。
【0025】
ピストンロッド101bと扉体114との連結部は、ピストンロッド101b側の雄ネジ部101c,101dにねじ込まれた上ナット102及び下ナット103で扉体114側を挟んで締め付ける構造としている。
【0026】
そして、連結部の扉体114側の構造は、図5A及び図6Aに示すように、最上部主桁114aと上から2番目の主桁114bのウエブの間を締め付けているものと、図5B及び図6Bに示すように、最上部主桁114aと上から2番目の主桁114bを分断して配置したブロック金物114cの上下面の間を締め付けているものがある。
【0027】
さらに、図5Cに示すように、上から2番目の主桁114bと3番目の主桁114dの間を締め付けたり、図5Dに示すように、上から2番目の主桁114bと3番目の主桁114dの間にブロック金物114eを配置してその上下面を締め付けるものもあり、この場合には対象とする問題点を本発明によらなくても回避できるが、油圧シリンダ101のピストンロッド101bの長さが長くなり、材料調達が難しくなったり、コストが増大したりするため、採用される事例が少なくなっている。
【0028】
また、油圧シリンダ101のピストンロッド101bがボンネットカバー104を貫通する部分は、放流水がボンネット115内から操作室内に噴出することがないように、図7に示すようにボンネットカバー104の蓋板にはパッキンケース104aを溶接固定し、パッキンケース104aの中心部にはピストンロッド101bの外径に適合したガイド用の円筒状ブッシュ106、止水用のVパッキン107、Vパッキン押え金物108及びVパッキン107の締付調整用のライナ110が組み込まれ、Vパッキン押えボルト111で固定されている。
【0029】
-従来の高圧スライドゲートにおける油圧シリンダの取り外し-
図7に示すように、油圧シリンダ101のピストンロッド101bに取り付けられた上ナット102の外径D1よりも、ボンネットカバー104の蓋板に取り付けられたパッキンケース104aの中心の孔径D2が小さいため(D1>D2)、上ナット102を取り付けた状態のピストンロッド101bをボンネットカバー104から抜くことができない。このため、ボンネットカバー104から油圧シリンダ101を取り外すためには、次に示す手順となる。
【0030】
(第1段階)図8Aに示すように、油圧シリンダ101を押出し操作(閉操作)して、扉体114を全閉状態にする。
【0031】
(第2段階)図8Bに示すように、油圧シリンダ101のピストンロッド101bの先端に取り付けられている下ナット103を取り外す。
【0032】
(第3段階)図8Cに示すように、油圧シリンダ101を引込み操作(開操作)することで、ピストンロッド101bの先端が扉体114から抜けて、ピストンロッド101bと扉体114とが切り離される。油圧シリンダ101が全縮状態となるまで引込み操作をすると、油圧シリンダ101の配管に取り付けているバルブ(図示せず)を閉じて全縮状態を保持して、油圧配管を切り離し、油圧シリンダ101のシリンダチューブ101aに取り付けられている点検架台や開度検出装置を一時撤去する。
【0033】
(第4段階)図8Dに示すように、高圧スライドゲート130のボンネットカバー104を引き上げる際に支障となる点検歩廊118等の付属設備がある場合には、これらを一時撤去する。
【0034】
(第5段階)図8Eに示すように、ボンネット115とボンネットカバー104との間の接合ボルト(図示せず)を弛めて外し、ボンネットカバー104と接合した油圧シリンダ101を吊り上げ、ボンネット115から切り離す。
【0035】
(第6段階)図8Fに示すように、操作室内に設けた仮置き架台119の上に、油圧シリンダ101を接合したボンネットカバー104を仮置きする。
【0036】
(第7段階)図8Gに示すように、油圧シリンダ101のピストンロッド101bの先端に取り付けられている上ナット102を取り外す。
【0037】
(第8段階)図8Hに示すように、油圧シリンダ101とボンネットカバー104との間の接合ボルト(図示せず)を弛めて外し、油圧シリンダ101を吊り上げ、ボンネットカバー104から切り離す。
【0038】
このように従来の構成の場合には、作業時に一時撤去する装置、部材の範囲及び数量が多い、作業時の手順が多い、作業時に吊り上げる製品の重量が大きくなる、操作室内に仮置きスペースが必要になる、操作室内の仮置きのための仮置き架台119が必要になる等、多くの問題がある。
【0039】
-本発明に係る高圧スライドゲート構造-
次いで、本発明の実施形態にかかる高圧スライドゲート30の構造について説明すると、図1A図1B図2A及び図2Bに示すように、高圧スライドゲート30は、通水部がスライドゲート本体を構成する上流側ケーシング16と下流側ケーシング17とで構成され、その内側に通水部を閉塞するための扉体14が組み込まれ、上下流ケーシング16,17の上には開状態の扉体14を格納するためのボンネット15が積み重ねられ、さらにその上には、ボンネット15の上面開口部を塞ぐためにボンネットカバー4が配置されている。
【0040】
ピストンロッド1bと扉体14との連結部は、ピストンロッド1b側の雄ネジ部1c,1dにねじ込まれた上ナット2及び下ナット3で扉体14側を挟んで締め付ける構造としている。具体的には、本実施形態では、桁構造の扉体14を採用しており、扉体14側から見たピストンロッド1bとの連結方法は、図1Aに示すような扉体14の最上部主桁14aと上から2番目の主桁14bの間をナット2,3で挟んで締め付ける構成としている。なお、図1Bに示すように、最上部主桁14aと上から2番目の主桁14bを分断して配置したブロック金物14cの上下面の間をナット2,3で締め付けるようにしても良い。
【0041】
なお、図2Aに示すように、油圧シリンダ1のシリンダチューブ1aの外周を囲むように、点検歩廊18等の付属設備が設けられていることもある。
【0042】
そして、図3Aに拡大して示すように、ボンネットカバー4に設けられるパッキン部としてのボス形状のパッキンケース4aに鍔付円筒状の内スリーブ5が設けられている。
【0043】
ボンネットカバー4の蓋板に溶接固定されたパッキンケース4aの中心部にはピストンロッド1bに取り付けている上ナット2の外径D1よりも大きな内径D3を有する開口4bを設けて、図3Cに示すように、上ナット2を取り付けた状態のピストンロッド1bがボンネットカバー4のパッキンケース4aを通過して引き抜けるようにした。
【0044】
パッキンケース4aの中央の開口4bには、内スリーブ5を取り付けて内スリーブ取付ボルト12にて固定し、パッキンケース4aの開口4b内面との間にはOリング9で止水し、内スリーブ5に抜きタップ5aを設けて、図3Bに示すように内スリーブ抜きボルト13を使用して、内スリーブ5をパッキンケース4aから抜くことができるようにしている。
【0045】
さらに、内スリーブ5の中心部にはピストンロッド1bの外径に適合したガイド用の円筒状ブッシュ6、止水用のVパッキン7、Vパッキン押え金物8、Vパッキン7の締付調整用のVパッキン調整ライナ10を組み込み、Vパッキン押えボルト11で固定可能に構成している。
【0046】
-本発明に係る構造の場合の油圧シリンダの取り外し-
図3A図3B及び図3Cに示すように、油圧シリンダ1のピストンロッド1bに取り付けられた上ナット2の外径D1よりも、ボンネットカバー4の蓋板に取り付けられたパッキンケース4aの中心の孔径D3が大きいため(D1<D3)、上ナット2を取り付けた状態のピストンロッド1bをボンネットカバー4から抜くことができるので、ボンネットカバー4から油圧シリンダ1を取り外すためには、次に示す手順となる。
【0047】
(第1段階)図4Aに示すように、油圧シリンダ1を押出し操作(閉操作)して、扉体14を全閉状態にする。
【0048】
(第2段階)図4Bに示すように、油圧シリンダ1のピストンロッド1bの先端に取り付けられている下ナット3を取り外す。
【0049】
(第3段階)図4Cに示すように、油圧シリンダ1を引込み操作(開操作)することで、ピストンロッド1bの先端が扉体14から抜けて、ピストンロッド1bと扉体14とが切り離される。油圧シリンダ1が全縮状態となるまで引込み操作をすると、油圧シリンダ付の配管に取り付けているバルブを閉じて全縮状態を保持して、油圧配管を切り離し、油圧シリンダ1のシリンダチューブ1aに取り付けられている点検架台や開度検出装置(いずれも図示せず)を一時撤去する。ここで、従来のように点検歩廊18を取り外す必要はない。
【0050】
(第4段階)図3B図3C及び図4Dに示すように、内スリーブ取付ボルト12を取り外した後、内スリーブ抜きボルト13を使用して、内スリーブ5をボンネットカバー4のパッキンケース4aから抜き出す。このように、簡単な構成及び少ない工具で、内スリーブ5をボンネットカバー4から極めて容易に取り外せるので、作業効率が格段に向上する。
【0051】
(第5段階)図4Eに示すように、油圧シリンダ1とボンネットカバー4との間の接合ボルト(図示せず)を弛めて外し、油圧シリンダ1を吊環1eを用いて吊り上げ、ボンネットカバー4から切り離す。この時、ボンネットカバー4のパッキンケース4aに組み込まれていた内スリーブ5、円筒状ブッシュ6、Vパッキン7、Vパッキン押え金物8、Oリング9、Vパッキン調整ライナ10及びVパッキン押えボルト11は、ピストンロッド1bに取り付けられた状態で油圧シリンダ1と共に搬出される。内スリーブ5と円筒状ブッシュ6との二重構造で、ピストンロッド1b外周との水密性を確保しながら、ボンネットカバー4を外すことなく上ナット2と共にシリンダロッド1bを引き上げることができる。
【0052】
以上のように、ボンネットカバー4のパッキンケース4aに内スリーブ5を設ける構造とすることで、油圧シリンダ1のメンテナンスのために搬出及び搬入する際に、油圧シリンダ1をより簡単な手順でボンネットカバー4から取り外し、取り付けできる。
【0053】
また、油圧シリンダ1とボンネットカバー4を接合したものを、ピストンロッド1bに取り付けられた上ナット2の取り外しスペースを確保して仮置きすると、縦長の製品を仮置きすることになり、この状態を回避することで危険リスクを低減できる。
【0054】
さらに、油圧シリンダ1のピストンロッド1b表面は、油圧シリンダ1からの外部漏油防止のために傷を生じないように慎重に取り扱う必要があり、ピストンロッド1b表面と摺動する部分を内スリーブ5に組み込むことで、ピストンロッド1b表面と摺動させる作業の大部分を油圧シリンダ整備工場等の作業環境の良い箇所で行うことができ、作業に伴う製品損傷という品質上のリスクを低減できる。
【0055】
このように、経済的で、危険リスクや品質上のリスクを低減した環境で、油圧シリンダ1のメンテナンス作業を行うことができる。
【0056】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としても良い。
【0057】
すなわち、上記実施形態では、一般的な高圧スライドゲートの構造である扉体14のスキンプレート(開口を開閉する平板)を下流側に配置し、その平板の上流面に桁を設け、平板の下流側に設けた青銅鋳物製等の水密板で止水するものとしたが、扉体14のスキンプレート(開口を開閉する平板)を上流側に配置し、その平板の下流面に桁を設け、平板の上流側に設けたゴム製の水密装置で止水するものとしても良い。
【0058】
また、上記実施形態では、上記実施形態では、パッキン部をボンネットカバー4の蓋体に溶接したボス形状のパッキンケース4aを有するものとしたが、ボンネットカバー4の蓋体の開口部周縁そのものがパッキンケース4aの役割を果たしても良い。この場合も、その開口部周縁に内スリーブ5を着脱可能に設け、Vパッキン7等を介してピストンロッド1bが挿入されるようにすると良い。
【0059】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0060】
1 油圧シリンダ(油圧シリンダ式開閉装置)
1a シリンダチューブ
1b ピストンロッド
1c 上ナット部用の雄ネジ
1d 下ナット部用の雄ネジ
1e 吊環
2 扉体接合用の上ナット
3 扉体接合用の下ナット
4 ボンネットカバー(ボンネットカバーの蓋板)
4a パッキンケース(ボス)
4b 開口
5 内スリーブ
5a 内スリーブ抜きタップ
6 円筒状ブッシュ
7 Vパッキン
8 Vパッキン押え金物
9 Oリング
10 Vパッキン調整ライナ
11 Vパッキン押えボルト
12 内スリーブ取付ボルト
13 内スリーブ抜きボルト
14 扉体
14a ピストンロッド接合用孔(最上部主桁)
14b ピストンロッド接合用孔(上から2番目の主桁)
14c ピストンロッド接合部ブロック金物
15 ボンネット
16 上流側ケーシング
17 下流側ケーシング
18 点検歩廊
30 高圧スライドゲート
101 油圧シリンダ
101a シリンダチューブ
101b ピストンロッド
101c,101d 雄ネジ部
101e 吊環
102 上ナット
103 下ナット
104 ボンネットカバー
104a パッキンケース
106 円筒状ブッシュ
107 Vパッキン
108 Vパッキン押え金物
110 ライナ
111 ボルト
114 扉体
114a 最上部主桁
114b 上から2番目の主桁
114c ブロック金物
114d 上から3番目の主桁
114e ブロック金物
115 ボンネット
116 上流側ケーシング
117 下流側ケーシング
118 点検歩廊
119 架台
130 高圧スライドゲート
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H