(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】地震時無電力自動降下ゲート
(51)【国際特許分類】
E02B 7/22 20060101AFI20240531BHJP
E02B 7/26 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
E02B7/22
E02B7/26 Z
(21)【出願番号】P 2020175523
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】森田 堅次
(72)【発明者】
【氏名】奥田 康三
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 吉央
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3182246(JP,U)
【文献】特開2014-214435(JP,A)
【文献】特開平05-331824(JP,A)
【文献】特開昭61-060914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/22
E02B 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
降下により水路を遮断する扉体と、無電源感震装置と、常態で前記扉体を、前記水路を遮断しない待機位置に保持し、所定規模以上の地震発生時には、前記扉体の自重による降下を許容する扉体保持機構と、を備える地震時無電力自動降下ゲートであって、
前記無電源感震装置は、台座と、前記台座上に、所定規模以上の地震発生時に前記台座から脱落するように載置された錘とを備え、
前記扉体保持機構は、前記錘の脱落と連動することにより、前記扉体の降下を許容する
ものであって、前記錘と第1紐体を介して連結されるラチェット機構と、前記ラチェット機構の下方に設けられ、前記ラチェット機構と第2紐体を介して連結される連動ウエイトと、前記連動ウエイトの下方に設けられるリフティングピン機構とを備え、
前記扉体は、常態において、前記リフティングピン機構によって前記待機位置に保持され、
前記ラチェット機構は、所定規模以上の地震発生時に、前記錘の脱落に連動して、前記連動ウエイトを落下させ、
前記リフティングピン機構は、落下した前記連動ウエイトと衝突することにより、前記扉体の保持を解除することを特徴とする地震時無電力自動降下ゲート。
【請求項2】
前記扉体保持機構は、前記連動ウエイトを所定方向へ誘導可能な連動ウエイトガイドを備えることを特徴とする
請求項1に記載の地震時無電力自動降下ゲート。
【請求項3】
前記台座は、上部に前記錘を載置するための凹部を備えることを特徴とする
請求項1又は2に記載の地震時無電力自動降下ゲート。
【請求項4】
前記錘は、球であることを特徴とする
請求項1乃至3の何れかに記載の地震時無電力自動降下ゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定規模以上の地震時に、無電源で地震による揺れを感知し、自動的に水路を遮断する地震時無電力自動降下ゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水路には、水路橋などの橋梁構造となっている箇所があり、大規模地震発生等の緊急時に水路橋が破損した場合には、溢水による第三者被害が想定される。そのため、このような箇所には、例えば特許文献1に開示されるような電動機を備えた緊急降下ゲートを設置して、緊急時に水路を遮断する等の対策が講じられている。この対策では、電動機駆動用の電源を要する等、緊急降下ゲートが比較的に大規模となるため、河川、貯水池等に設けられた水路のような取水量の多い箇所に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された緊急遮断ゲートは、幅50~60センチ程度の水路等の取水量が小さい箇所では、費用対効果が見合わないことから、殆ど設置されていないのが現状である。そのため、取水量が小さい水路等であっても、一定規模の地震を感知した際に、水路を遮断するゲートが自動降下する安価な無電源システムの構築が求められている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、安価で設置可能で、地震発生時に無電源で水路を遮断できる地震時無電力自動降下ゲートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、降下により水路を遮断する扉体と、無電源感震装置と、常態で扉体を、水路を遮断しない待機位置に保持し、所定規模以上の地震発生時には、扉体の自重による降下を許容する扉体保持機構と、を備える地震時無電力自動降下ゲートであって、無電源感震装置は、台座と、台座上に、所定規模以上の地震発生時に台座から脱落するように載置された錘とを備え、扉体保持機構は、錘の脱落と連動することにより、扉体の降下を許容するものであって、錘と第1紐体を介して連結されるラチェット機構と、ラチェット機構の下方に設けられ、ラチェット機構と第2紐体を介して連結される連動ウエイトと、連動ウエイトの下方に設けられるリフティングピン機構とを備え、扉体は、常態において、リフティングピン機構によって待機位置に保持され、ラチェット機構は、所定規模以上の地震発生時に、錘の脱落に連動して、連動ウエイトを落下させ、リフティングピン機構は、落下した連動ウエイトと衝突することにより、扉体の保持を解除することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、上記構成において、扉体保持機構は、連動ウエイトを所定方向へ誘導可能な連動ウエイトガイドを備えることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、上記構成において、台座は、上部に錘を載置するための凹部を備えることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、上記構成において、錘は、球であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の主な効果は、安価で設置可能で、所定規模以上の地震発生時に無電源で自動的に水路を遮断できる地震時無電力自動降下ゲートが提供されることである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の地震時無電力自動降下ゲートを示す正面図である。
【
図2】本発明の地震時無電力自動降下ゲートを示す側面図である。
【
図3】リフティングピン機構を示す説明図であって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【
図4】本発明の無電源感震装置を示す中央縦断面図である。
【
図5】地震時無電力自動降下ゲートの扉体の降下の様子を示す説明図である。
【
図6】無電源感震装置の動作例の調整結果を示すものであり、(a)は震度4を想定した結果、(b)は震度3を想定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の地震時無電力自動降下ゲート(常態)を示す正面図である。
図2は、本発明の地震時無電力自動降下ゲート(常態)を示す側面図である。なお、
図1は、後述する装置カバー1aを透明化して示し、
図2は、装置カバー1aと後述する水路Hの一部とを透明化して示す。地震時無電力自動降下ゲート1は、取水量が小さい水路Hの遮断に好適に使用される。
地震時無電力自動降下ゲート1は、所定規模以上の地震発生時に、水路Hを遮断するものである。
地震時無電力自動降下ゲート1は、
図1,2に示すように、扉体2と、扉体保持機構Kとしてのリフティングピン機構3、連動ウエイト4及びラチェット機構5と、無電源感震装置6とを備え、それらを風雨等から保護するための装置カバー1aを備える。装置カバー1aは、支柱材Pにより保持されている。また、地震時無電力自動降下ゲート1は、水路Hに戸吊り金物Fを介して設置される。なお、
図1では、支柱材Pを省略している。
【0010】
扉体2は、正面視四角形状の厚板状であり、水路Hの幅と同等の幅を有する。また、扉体2は、水路Hの遮断時に、水の流れを堰き止められる高さを有することが必要である。また、扉体2は、扉体2の左右両側面及び下面の全域にわたり、水路遮断時に、扉体2と水路Hとをシールする水密ゴムGが設けられている。
扉体2は、
図2に示すように、チェーンC,Cによって戸吊り金物Fの後方に設けられたバランスウエイト7に連結されている。
【0011】
戸吊り金物Fは、上下に延びる脚部F1,F1と、脚部F1,F1の両上端部を繋ぐ第1梁部F2と、脚部F1,F1の上下方向中央部付近に、リフティングピン機構3を設けるための第2梁部F3とを備える。
また、戸吊り金物Fの上部左右両端付近には、チェーンスプロケットF4,F4が設けられ、チェーンC,Cを保持している。各チェーンCは、側面視逆U字状となっている。
なお、戸吊り金物Fは、水路Hの側壁に脚部F1,F1の下部を打ち込む形で設置される。
【0012】
図3は、リフティングピン機構を示す説明図であって、
図3(a)は正面図、
図3(b)は平面図である。リフティングピン機構3は、戸吊り金物Fの第2梁部F3の左右方向中央部に設けられる。
リフティングピン機構3は、
図3(a),(b)に示すように、リフティングピン31と、戸吊り金物側部32と、扉体側部33とを備える。戸吊り金物側部32は、第2梁部F3に、ビス等の既存の固定手段を介して取り付けられる。扉体側部33は、扉体2に、ビス等の既存の固定手段を介して取り付けられる。
扉体側部33は、扉体2の上縁部に沿う板状部分34と、その上部中央から上方に突出する筒状の係止部35とを備える。リフティングピン31は、係止部35に上方から挿入されて係止部35と係止する係止軸36を備え、係止軸36の上方には、
図3(b)に示すように、ボタン37が設けられている。係止部35と係止軸36とが互いに係止するための係止手段(図示せず)は、ボタン37の押圧と連動して、係止部35と係止軸36との係止状態を解消可能な機構を有し、その機構は限定されない。リフティングピン31は、上部に、リフティングピン31との連結部を支点として回動可能なリング状の回動部38を有している。
戸吊り金物側部32は、上下に延びる略円柱状のリフティングピン固定軸39を備える。リフティングピン固定軸39が、水平方向を向いたリフティングピン31の回動部38に挿通され、回動部38と戸吊り金物側部32とは、溶接等により固定される。
【0013】
連動ウエイト4は、所定の重量を有し、リフティングピン機構3のボタン37の上方に設けられる柱状体である。
ラチェット機構5は、戸吊り金物Fの第1梁部F2の左右方向中央上部に設けられる。ラチェット機構5は、回動可能な円盤状体であり、円周上に切欠部52を有するラチェットドラム51と、一端側に切欠部52に係止可能な爪部Nを備えるクラッチレバー53とを備える。クラッチレバー53の他端側は、無電源感震装置6と、第1紐体としての第1ワイヤ8を介して連結されている。また、クラッチレバー53は、爪部N側近くの中間部を支点に揺動可能に設けられる。ラチェットドラム51の回転は、常態では、爪部Nによるクラッチレバー53の係止により止められている。
連動ウエイト4は、第2紐体としての第2ワイヤ9を介してラチェットドラム51に連結され、リフティングピン機構3のボタン37の上方に吊り下げられている。第2ワイヤ9の長さは、吊り下げられた連動ウエイト4の先端が、リフティングピン機構3のボタン37に衝突可能な長さ以上とする。第2ワイヤ9は、連結された連動ウエイト4の下降によりラチェットドラム51が正面視で反時計回りに回転するように、ラチェットドラム51に巻き付けられている。
また、後述するように、所定規模以上の地震発生時に連動ウエイト4をリフティングピン機構3のボタン37へ向けて落下させる必要があるため、地震の揺れにより連動ウエイト4が揺れてボタン37から外れることがないよう、上下に延びる円筒状であって、連動ウエイト4の落下方向を誘導する連動ウエイトガイド10が、戸吊り金物Fの第1梁部F2の左右方向中央部から下方に向けて突出するように取り付けられている。
【0014】
図4は、本発明の無電源感震装置を示す中央縦断面図である。
無電源感震装置6は、戸吊り金物Fの第1梁部F2の上部右側に設けられ、台座61と、錘としての球62とを備える。
台座61は、上方に向けて延びる略円柱状であり、その上部に、
図4に示すように、球62を載置可能とするために、径φの凹部61aが形成されている。凹部61aの中空部分の上部の形状は円柱状であり、その下部の形状は逆円錐状である。
球62は、所定の重量を有し、常態では、台座61の上部に載置されている。すなわち、球62の下端部が台座61の凹部61a内に入っており、所定規模未満の微弱な地震による振動では球62が台座61から脱落しないようになっている。
また、球62は、ラチェット機構5のクラッチレバー53の他端側に第1ワイヤ8を介して連結されている。
【0015】
上述の構成を備える地震時無電力自動降下ゲート1の作用を以下説明する。
地震時無電力自動降下ゲート1において、常態では、
図1に示すように、扉体2は、リフティングピン機構3によって吊り下げられた待機位置に設けられている。この時、バランスウエイト7によって扉体2に上方へ引き上げられる力が加わることで、リフティングピン機構3の係止部35と係止軸36との係止力による扉体2の保持を容易にしている。扉体2が待機位置にある場合、水路Hにおける水等の流通は許容される。
また、ラチェット機構5は、クラッチレバー53の爪部Nが切欠部52に係止し、ラチェットドラム51の回転が抑制された状態とされる。これにより、連動ウエイト4は、ラチェット機構5に連結された第2ワイヤ9により、連動ウエイトガイド10の内部で吊り下げ状態となっている。この時、クラッチレバー53の他端側は、上方に上がっている。
さらに、無電源感震装置6は、台座61上に球62が載置された状態となっている。
【0016】
図5は、地震時無電力自動降下ゲートの扉体の降下の様子を示す説明図である。なお、説明を明確にするため、
図5においては、装置カバー1aを示していないが、実際は、地震時無電力自動降下ゲート1には、装置カバー1aが取り付けられた状態である。
常態において、上述のような状態で待機する地震時無電力自動降下ゲート1は、所定規模(例えば、震度4)以上の地震が発生すると、その揺れにより、
図5に矢印aで示すように、無電源感震装置6の球62が台座61から脱落する。この時、台座61の上部に形成される凹部61aの径φの大きさと球62の重量及び直径との相関により、所望の震度で球62が台座61から脱落するように調整することができる。
球62が台座61から脱落すると、球62の自重により、落下する球62が第1ワイヤ8を介して、
図5に矢印bで示すように、ラチェット機構5のクラッチレバー53の他端側を引き下げる。クラッチレバー53の他端側が引き下げられる揺動運動により、爪部Nがラチェットドラム51の切欠部52から外れることで、ラチェットドラム51が解放され、回動可能な状態となる。
【0017】
ラチェット機構5のラチェットドラム51が回動可能となると、
図5に矢印cで示すように、連動ウエイト4が、その自重により、連動ウエイトガイド10に誘導されてリフティングピン機構3のボタン37に向けて落下する。この時、第2ワイヤ9の下部は順次伸張し、ラチェットドラム51は、反時計回りに回転する。
連動ウエイト4がボタン37に衝突すると、ボタン37が下方に向けて押圧されることで、係止部35と係止軸36との係止状態が解消され、扉体側部33が落下可能な状態となる。すなわち、リフティングピン機構3による扉体2の保持が解除される。これにより、扉体2は、待機位置から水路Hへの自重による降下が許容され、
図5に矢印dで示すように、水路Hを遮断する遮断位置へ移動する。すなわち、ラチェット機構5及びリフティングピン機構3は、球62の脱落と連動することにより、無電力で自動的に扉体2の降下を許容する。よって、遮断位置に移動した扉体2によって水路Hが遮断され、水路Hにおける水等の流通が遮断される。
このように、地震時無電力自動降下ゲート1は、常態においても、地震発生時の扉体2の降下機構においても、電源を必要としないため、安価に設置が可能である。そのため、従来型の緊急降下ゲートでは費用対効果の釣り合わないような取水量の少ない箇所にも設置が可能となる。
また、バランスウエイト7の重量を利用することで、地震収束後の扉体2の遮断位置から待機位置への復旧作業を、バランスウエイト7が無い場合に比べ容易に行うことができる。
【0018】
以下、無電源感震装置6の動作例について更に詳述する。
一般に、地震の震度は、地震の強さを表す加速度(gal)に相関し、加速度(gal)と揺れの周期とは相関関係にある。具体的には、震度4は、80galに対応し、80galは、周期0.2秒に対応する。また、震度3は、60galに対応し、60galは、周期0.1秒に対応する。
ここでは、直径30mm、重さ83gの球62を用いて、震度4では球62が台座61から脱落し、震度3では球62が台座61上に載置された状態が維持されるように、凹部61aの径φを調整した。径φは、3.5mm以上6.0mm以下の範囲で0.5mm毎に計6種類用意された。
【0019】
図6は、無電源感震装置の動作例の調整結果を示すものであり、
図6(a)は、震度4を想定した結果、
図6(b)は、震度3を想定した結果である。なお、
図6(a),(b)において、球が台座から脱落した場合を×、脱落しなかった場合を○として示した。
各径φを有する台座61が用意され、加振装置上に上述の球62がそれぞれの台座61に載置された状態でセットされた。そして、加振装置により全6種の台座61に周期0.2秒の揺れを30秒間与えて、震度4を想定した揺れを与えた。また、加振装置により全6種の台座61に周期0.1秒の揺れを30秒間与えて、震度3を想定した揺れを与えた。この揺れの付与は、それぞれ10回試行した。
【0020】
震度4を想定した場合、
図6(a)に示すように、台座61の凹部61aの径φが4.5mm以下において、全ての試行で、球62は台座61から脱落した。
一方、震度3を想定した場合、
図6(b)に示すように、台座61の凹部61aの径φが4.5mm以上において、全ての試行で、球62は台座61から脱落しなかった。
よって、この調整では、径φとして4.5mmが選択され、この径φ=4.5mmが選択されれば、高い精度において、震度4未満で感震せず、震度4以上で感震する無電源感震装置6が提供される。
このように、台座61の上部に形成される凹部61aの径φの大きさと球62の重量及び直径との相関により、所望の震度で球62が台座61から脱落するように調整することができる。なお、球62の大きさ及び重さによって、好適な径φは変化する。
【0021】
上述のように構成される地震時無電力自動降下ゲート1は、降下により水路Hを遮断する扉体2と、無電源感震装置6と、常態で扉体2を、水路Hを遮断しない待機位置に保持し、所定規模以上の地震発生時には、扉体2の降下を許容する扉体保持機構Kと、を備え、無電源感震装置6は、台座61と、台座61上に、所定規模以上の地震発生時に台座61から脱落するように載置された球62とを備え、扉体保持機構Kは、球62の脱落と連動することにより、扉体2の降下を許容する。
また、扉体保持機構Kは、球62と第1ワイヤ8を介して連結されるラチェット機構5と、ラチェット機構5の下方に設けられ、ラチェット機構5と第2ワイヤ9を介して連結される連動ウエイト4と、連動ウエイト4の下方に設けられるリフティングピン機構3とを備え、扉体2は、常態において、リフティングピン機構3によって待機位置に保持され、ラチェット機構5は、所定規模以上の地震発生時に、球62の脱落に連動して、連動ウエイト4を落下させ、リフティングピン機構3は、落下した連動ウエイト4と衝突することにより、扉体2の保持を解除する。
よって、地震時無電力自動降下ゲート1は、常態においても、所定規模以上の地震発生時の扉体2の降下機構においても、電源を必要としないため、安価に設置が可能である。そのため、従来型の緊急降下ゲートでは、費用対効果の釣り合わないような取水量の少ない箇所にも設置が可能となる。
【0022】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その技術範囲はこれに限定されるものではない。例えば、無電源感震装置の設置箇所は、ラチェット機構に錘の落下による力を伝達できれば、どこに設置されていても良い。
また、台座の形状は、常態で錘を上部に載置可能で、所定規模以上の地震時に錘が脱落すれば、任意の形状を設定可能である。同様に、錘も任意の形状を設定可能である。
また、凹部は、常態で錘を上部に載置可能で、所定規模以上の地震時に錘が脱落すれば、平面視円形状、平面視多角形状等、任意の形状を設定可能である。
また、地震発生時に第1紐体が他の構成に絡まることを避けるために、無電源感震装置に、錘の落下方向を規制する錘用ガイドを設けても良い。
また、リフティングピン機構の係止部及び係止軸は、互いに係止可能であり、ボタンの押圧により係止状体を解除可能であれば良く、その形状は限定されない。
また、連動ウエイトの形状は、リフティングピン機構への衝突が可能であれば、任意の形状を設定可能である。
また、連動ウエイトガイドの形状は限定されず、連動ウエイトをリフティングピン機構へ誘導可能であれば、円筒状以外にも、角柱状、レール状等でも良い。なお、連動ウエイトガイドは、省略されても良い。
また、扉体とバランスウエイトとを連結するチェーンは、ワイヤ等であっても良い。
また、第1紐体は、チェーン等、ワイヤ以外であっても良い。第2紐体についても、第1紐体と同様である。
また、チェーンスプロケットは、滑車として機能すればよく、その構造は限定されない。なお、ラチェット機構についても、錘の脱落に連動すれば良く、その構造は限定されない。
また、装置カバーの形状は、任意の形状で設計可能であり、地震時無電力自動降下ゲートを保護可能であれば、その材質も限定されない。なお、装置カバーが省略されても良い。
また、水密ゴムは、水路遮断時に、扉体と水路とをシール可能であれば良く、ゴム以外の弾性材料で形成されても良い。
【符号の説明】
【0023】
1・・地震時無電力自動降下ゲート、2・・扉体、3・・リフティングピン機構、4・・連動ウエイト、5・・ラチェット機構、6・・無電源感震装置、61・・台座、62・・球(錘)、8・・第1ワイヤ(第1紐体)、9・・第2ワイヤ(第2紐体)、10・・連動ウエイトガイド、H・・水路、K・・扉体保持機構。