(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】漏液スイッチの製造方法及び漏液スイッチ
(51)【国際特許分類】
B29C 65/16 20060101AFI20240531BHJP
H01H 9/02 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B29C65/16
H01H9/02 E
(21)【出願番号】P 2020202912
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 有紀
(72)【発明者】
【氏名】片桐 宗和
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-215528(JP,A)
【文献】特開2020-113460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/16
H01H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂から成り、カバー及びケースを有する本体部を備えた漏液スイッチの製造方法であって、
薄板の枠形状に構成されたシートの一面における内側を、板形状に構成されたプレートの一面における外側に対向して配置し、当該シート及び当該プレートの対向している部分に対してヒートシンク式レーザ溶着法により溶着を行うことで前記カバーを組立てる第1の溶着ステップと、
前記カバーのシートの一面における外側を前記ケースの上面に対向して配置し、当該ケース及び当該カバーの対向している部分に対してヒートシンク式レーザ溶着法により溶着を行うことで前記本体部を組立てる第2の溶着ステップとを有する
ことを特徴とする漏液スイッチの製造方法。
【請求項2】
前記シートの厚みは、0.5mm以下である
ことを特徴とする請求項1記載の漏液スイッチの製造方法。
【請求項3】
フッ素樹脂から成り、カバー及びケースを有する本体部を備えた漏液スイッチであって、
前記カバーは、
薄板の枠形状に構成されたシートと、
板形状に構成されたプレートとを有し、
前記シートの一面における内側が前記プレートの一面における外側に対向して配置され、当該シート及び当該プレートの対向している部分がヒートシンク式レーザ溶着法により溶着されることで構成され、
前記本体部は、前記カバーのシートの一面における外側が前記ケースの上面に対向して配置され、当該ケース及び当該カバーの対向している部分がヒートシンク式レーザ溶着法により溶着されることで構成された
ことを特徴とする漏液スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、本体部がフッ素樹脂で構成された漏液スイッチの製造方法及び漏液スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
アンプ内蔵形の漏液スイッチは、前工程(半導体製造装置又は液晶製造装置)において、酸系、アルカリ系及び有機溶剤系等の薬液の漏れを検出し、装置の異常確認を行う光電スイッチである。
【0003】
この漏液スイッチは、酸系、アルカリ系及び有機溶剤系等の薬液に対応するため、本体部がフッ素樹脂(PFA)で構成されている。フッ素樹脂は、高温高濃度の酸及びアルカリに対して不活性で溶剤に不溶である。
また、漏液スイッチでは、本体部に内蔵されている光電センサ及び基板を薬液から保護するため、本体部がケース及びカバーで構成されたボックス構造となっている。そして、この本体部には、気密性が求められている。
【0004】
ここで、樹脂を溶着して気密性を満たす方法として、レーザ溶接が挙げられる。特に、フッ素樹脂同士のレーザ溶接としては、COレーザを用いたヒートシンク式レーザ溶着法が採用できる(例えば特許文献1参照)。このヒートシンク式レーザ溶着法では、溶着対象であるフッ素樹脂同士の溶着部にレーザのエネルギーを伝えるために、レーザ照射側となるフッ素樹脂の厚みが最大で0.5mm以下に制限される。
【0005】
そのため、例えば
図5に示すように、漏液スイッチの本体部101におけるカバー1012の形状は、端部が薄い形状となっている。なお、従来、カバー1012は、単一の部品として成形により作製されている。なお
図5において、符号1011はケースを示し、符号501は溶着部を示している。
更に、レーザ溶着では溶着される面(溶着面)同士が密着している必要がある。そのため、溶着面の平坦度が非常に重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、カバーを単一の部品として成形により作製する場合、カバーの端部が薄い形状であると、フッ素樹脂は流動性が悪いため、ショートショットが発生し易く、カバーの端部の平坦度が得られ難くなる。その結果、レーザ溶着において密着不足により溶着部でリーク不良が発生する場合がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、従来構成に対し、レーザ溶着におけるリーク不良の発生を軽減可能な漏液スイッチの製造方法及び漏液スイッチを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る漏液スイッチの製造方法は、フッ素樹脂から成り、カバー及びケースを有する本体部を備えた漏液スイッチの製造方法であって、薄板の枠形状に構成されたシートの一面における内側を、板形状に構成されたプレートの一面における外側に対向して配置し、当該シート及び当該プレートの対向している部分に対してヒートシンク式レーザ溶着法により溶着を行うことでカバーを組立てる第1の溶着ステップと、カバーのシートの一面における外側をケースの上面に対向して配置し、当該ケース及び当該カバーの対向している部分に対してヒートシンク式レーザ溶着法により溶着を行うことで本体部を組立てる第2の溶着ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、上記のように構成したので、従来構成に対し、レーザ溶着におけるリーク不良の発生を軽減可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施の形態1における本体部の一部の構成例を示す断面図である。
【
図3】実施の形態1における本体部の組立工程の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4A、
図4Bは、実施の形態1における本体部の組立工程の一例を示す図である。
【
図5】従来の本体部の一部の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る漏液スイッチの構成例を示す図である。
漏液スイッチは、前工程(半導体製造装置又は液晶製造装置)において、酸系、アルカリ系及び有機溶剤系等の薬液の漏れを検出し、装置の異常確認を行う光電スイッチである。この漏液スイッチは、例えばアンプ内蔵形の漏液スイッチである。
【0013】
漏液スイッチは、
図1に示すように、本体部1、信号線2及び取付け部3を備えている。
【0014】
本体部1は、内部に光電センサ(不図示)及び基板(不図示)等の検出部が設けられ、検出領域における液体の非検出時(入光)と検出時(遮光)とのレベル差から液体の漏洩の有無を検出する。漏液スイッチが検出対象とする液体としては、例えば、酸系、アルカリ系及び有機溶剤系等の薬液が挙げられる。
【0015】
本体部1は、酸系、アルカリ系及び有機溶剤系等の薬液に対応するため、本体部1がフッ素樹脂(PFA)で構成されている。また、漏液スイッチでは、本体部1に内蔵されている検出部を薬液から保護するため、本体部1がケース11及びカバー12で構成されたボックス構造となっている。そして、この本体部1には、気密性が求められている。
【0016】
図1,2では、ケース11が、底面を有する円筒形状に構成されている。ケース11の上面は、平坦(略平坦の意味を含む)に構成されている。
【0017】
また
図1,2では、カバー12が、円板形状に構成されている。このカバー12は、ケース11の上面に溶着されて本体部1を構成可能な寸法及び形状に構成されている。このカバー12は、
図1,2に示すように、板形状であるプレート121及び薄板の枠形状であるシート122から構成されている。
【0018】
図1,2に示すプレート121は、ケース11の内径より小さな外径の円板形状に構成されている。
図1,2に示すシート122は、薄板のリング形状に構成されている。シート122は、内径がプレート121の外径よりも小さい径であり、外径がケース11の内径よりも大きな径に構成されている。また、シート122は、厚みがCOレーザを用いたヒートシンク式レーザ溶着法における溶着条件を満たす厚み(0.5mm以下)であり、且つ、平坦(略平坦の意味を含む)に構成されている。なお、このシート122は、例えば丸棒を切削することで構成可能である。
【0019】
そして、このケース11及びカバー12は、COレーザを用いたヒートシンク式レーザ溶着法により溶着されて本体部1を構成している。この本体部1の組立工程については後述する。
【0020】
信号線2は、本体部1に接続されている。信号線2は、本体部1による検出結果を示す信号を外部に出力する。
【0021】
取付け部3は、本体部1に取付けられ、本体部1を所定箇所に固定するための部位である。取付け部3には、ねじ等の締結部材(不図示)を介して取付け部3を所定箇所に取付けるための締結穴31が1つ以上設けられている。
図1では、締結穴31が1つ設けられた場合を示している。
【0022】
次に、本体部1の組立工程の一例について、
図3,4を参照しながら説明する。
本体部1の組立工程では、例えば
図3,4に示すように、まず、カバー12を組立てる(ステップST1、第1の溶着ステップ)。すなわち、プレート121及びシート122を、COレーザを用いたヒートシンク式レーザ溶着法により溶着する。この際、
図4Aに示すように、まず、シート122の一面(下面)における内側がプレート121の一面(上面)における外側に対向するように、シート122をプレート121の上面に配置する。そして、シート122及びプレート121の対向している部分(溶着部)に対してヒートシンク式レーザ溶着法により溶着を行う。
図4Aにおいて、符号401はプレート121及びシート122の溶着部を示している。これにより、カバー12の組立てを行うことができ、安定してカバー12の先端を0.5mm以下且つ平坦に構成可能となる。
【0023】
次いで、本体部1を組立てる(ステップST2、第2の溶着ステップ)。すなわち、ケース11及びカバー12を、COレーザを用いたヒートシンク式レーザ溶着法により溶着する。この際、
図4Bに示すように、まず、カバー12のシート122の一面(下面)における外側がケース11の上面に対向するように、カバー12をケース11の上面に配置する。そして、ケース11及びカバー12の対向している部分(溶着部)に対してヒートシンク式レーザ溶着法により溶着を行う。
図4Bにおいて、符号402はケース11及びカバー12の溶着部を示している。これにより、本体部1の組立てを行うことができる。
【0024】
このように、実施の形態1に係る漏液スイッチの製造方法では、カバー12を、厚みのあるプレート121と、厚みがCOレーザを用いたヒートシンク式レーザ溶着法における溶着条件を満たす厚み(0.5mm以下)であり、且つ、平坦(略平坦の意味を含む)に構成されたシート122の2つの部品で形成している。これにより、漏液スイッチは、カバー12の端部の品質バラつきによる影響を受け難くなる。なお、カバー12の端部を構成するシート122は、成形ではなく、例えば丸棒からの切削で構成可能であるため、平坦度が保証され、密着不足は発生しない。
【0025】
以上のように、この実施の形態1によれば、漏液スイッチの製造方法は、フッ素樹脂から成り、カバー12及びケース11を有する本体部1を備えた漏液スイッチの製造方法であって、薄板の枠形状に構成されたシート122の一面における内側を、板形状に構成されたプレート121の一面における外側に対向して配置し、当該シート122及び当該プレート121の対向している部分に対してヒートシンク式レーザ溶着法により溶着を行うことでカバー12を組立てる第1の溶着ステップと、カバー12のシート122の一面における外側をケース11の上面に対向して配置し、当該ケース11及び当該カバー12の対向している部分に対してヒートシンク式レーザ溶着法により溶着を行うことで本体部1を組立てる第2の溶着ステップとを有する。これにより、実施の形態1に係る漏液スイッチの製造方法では、従来構成に対し、レーザ溶着におけるリーク不良の発生を軽減可能となる。
【0026】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 本体部
2 信号線
3 取付け部
11 ケース
12 カバー
31 締結穴
121 プレート
122 シート