IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウエスト アンド ベリ ホールディング エービーの特許一覧

特許7496781リアル・タイム・ゴルフ・スイング訓練補助具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】リアル・タイム・ゴルフ・スイング訓練補助具
(51)【国際特許分類】
   A63B 71/06 20060101AFI20240531BHJP
   A63B 69/36 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
A63B71/06 U
A63B69/36 541P
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020573344
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019067222
(87)【国際公開番号】W WO2020002533
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】18180493.1
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520507298
【氏名又は名称】ウエスト アンド ベリ ホールディング エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レッドゴルド、フレドリク
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン、ヨハン
【審査官】相川 俊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0084516(US,A1)
【文献】特表2014-512220(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0200094(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03252736(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 71/06
A63B 69/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの身体又はユーザのスポーツ器具に取付け可能となるよう構成されたセンサ・ユニットを備えるゴルフ訓練補助具であって、前記センサ・ユニット(110)は、
- 動作センサ・モジュールと、
- フィードバック刺激器、又はフィードバック刺激器と無線で通信する手段と、
- プロセッサと
を備え、
前記ゴルフ訓練補助具は、前記ユーザによって実行される、ゴルフ・スイング動作の動作欠陥と関係づけられたリアル・タイムでのフィードバックを提供するよう構成され、
i)前記センサ・ユニットは、ユーザの身体又はゴルフ・クラブの代表的な場所に取り付けることを意図しており、前記代表的な場所は、前記ゴルフ・スイング動作を表す軌道をたどるような位置に規定されており、
前記ゴルフ訓練補助具は、
- 前記センサ・ユニット(110)がいつ静止状態にあるかを判断し、
- 前記センサ・ユニット(110)の位置を判断し、
- ゴルフ・スイングが開始されたことを検出する
手段を備え、
オーバーザトップ検出器は、前記ユーザがオーバーザトップのスイング欠陥をもつゴルフ・スイングを実行すると、信号で知らせるよう配置され、
- 前記プロセッサは、センサ・ユニットのデータに基づいて、基準平面の向き及び位置を計算するよう構成され、前記基準平面は、3つの基準点で定義される平面であり、第1の基準点は、前記センサ・ユニットが静止している点であり、第2の基準点は、前記センサ・ユニットが、ジャイロスコープの動いた角度が所定の値に達するときの点であり、第3の基準点は、前記センサ・ユニットが、前記ジャイロスコープの動いた角度の値が静止時の値と前記所定の値との間のどこかにあるときの点であり、前記プロセッサはさらに、前記基準平面に対する前記センサ・ユニット(110)の前記位置をリアル・タイムに計算し、且つ
- 前記センサ・ユニット(110)の前記軌道がオーバーザトップのスイング欠陥に一致すると推定されるイベントに基づいて、前記フィードバック刺激器を作動させるよう構成される、ゴルフ訓練補助具。
【請求項2】
- 前記センサ・ユニット(110)の軌道の下向きの部分が、上向きの軌道の前へ、前記基準平面に垂直な方向に距離Dだけ、離れている
という判定基準が満たされる場合、前記センサ・ユニット(110)の前記軌道は、オーバーザトップのスイング欠陥と一致していると見なされる、請求項1に記載のゴルフ訓練補助具。
【請求項3】
前記距離Dが、回転の中心点Cを中心とする、第1の所定の角度と第2の所定の角度との間の回転角度内で発生していると計算される
場合にも、前記センサ・ユニット(110)の前記軌道は、オーバーザトップのスイング欠陥と一致していると見なされる、請求項2に記載のゴルフ訓練補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、訓練補助具、すなわち、人又は動物が、その人又は動物の何らかの活動をより適切に実行する助けとなるデバイスの分野に関する。より具体的には、本発明は、ゴルフ・スイング訓練補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる動作訓練補助具の一実例は、WO2003024544で知られている。該文献は、ゴルフ・スイングなどの反復動作シーケンスの態様をモニタする様々なセンサ及びデバイスを備えた、反復動作フィードバック・システムについて開示している。モニタされる態様には、ユーザが動かした対象物の動作特性、ユーザの位置特性、及びユーザの動作特性が含まれ得る。モニタされる態様のデータを受信するデータ処理システムは、グラフィカル・ディスプレイ・デバイス又はスピーカなどのフィードバック出力デバイスに供給されるフィードバック・データを提供し、その結果、ユーザに、反復動作シーケンスに関するフィードバックが与えられる。1つの特定の実施例では、ユーザのパフォーマンスは、以前のパフォーマンスのテンプレートと比較され、差異に関するフィードバックが提供される。
【0003】
別の先行技術文書は、どのようにして特定の身体動作を一貫したやり方で実行するかを人に教えるための方法及び装置について開示している米国特許第6778866号であり、これは実際の身体動作の1つ又は複数のパラメータを電子的に測定し、測定した1つ又は複数のパラメータと、目標とする身体動作に対応するパラメータとを比較し、1つ又は複数の測定したパラメータと対応する目標パラメータとの間の一致度合いに基づいて、道理に適ったフィードバックをユーザに提供することをベースとする。特定の実施例では、フィードバックは可聴である。より具体的には、フィードバックは、特定の身体動作(ゴルフ・スイングなど)に特に適した、特定の特徴(リズムなど)を有する楽曲である。フィードバックは、実際の身体動作と目標とする身体動作との間の差異に比例して、電子的に楽曲の音程を狂わせる形態であり得る。
【0004】
運動選手、たとえばゴルファの人間工学的動作を教えるための、別の先行技術のシステム及び方法は、WO200518759に開示されている。該システムは、ゴルファが好みのゴルフ・スイングを実行する連続画像を取り込むビデオカメラと、ゴルファがビデオ画像の空間領域を定義できる閾値定義システムとを備える。空間領域に侵入すると、アラームが作動し、それによってゴルファが次に試みる動作テクニックを変更できるように、フィードバックを提供する。たとえば、ゴルファは、スイング中にクラブが平面から外れて動くとティー取除システムがボールを消失させるように、領域を定義できる。このようにして、ゴルファは、クラブが平面上に留まるときにしか、ボールを打つことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2003024544
【文献】米国特許第6778866号
【文献】WO200518759
【非特許文献】
【0006】
【文献】IEEE Transactions on automatic control、Vol.53、No.5、2008年6月、1203頁、Mahony他
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、たとえば、ゴルフ・スイング、野球のバットでの打撃、棒高跳び、又は円盤投げなどの複雑な動きを改善しようとする人は、動作の欠陥部分を修正し、こうした欠陥部分をより効果的なものに置き換えるのに、問題を抱えることが多いことを認識した。また、ビデオ録画機器などの高度な訓練補助具を装備していても、その人のコーチが、その人がその人自身の動作を改善するのを補助することは困難である、且つ/又は時間がかかることに気づく場合がある。
【0008】
従来の、運動選手の動きをビデオ記録することは有用であるが、動きが完了してビデオ・デバイスが再生するように設定された場合、後ほど検討する必要があり、望まれ得るほどに迅速なフィードバックは提供されない。ビデオ録画も、人間の脳の認知機能を使用して、検討及び処理する必要がある。その代わりに又はその上に、感情機能又は反射神経など、脳のより非認知機能を使用してフィードバックを提供することは、利点であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明で提案される訓練補助具は、ユーザが、意識的な分析的マインドから解放された学習を生み出す、潜在意識レベルでの新しい動きパターンを学習することも可能にする。さらにこれにより、新しい動きパターンが、圧迫感の下で持続可能になる。
【0010】
従来技術の欠点を克服するために、本発明は、人の身体に取付け可能な小型軽量のセンサ・ユニットをベースとする運動訓練補助具を提供し、センサ・ユニットは、基準位置に対するセンサ・ユニットの位置の判断を可能にする、センサ・データを提供できる。さらに、身体動作トラッカは、センサ・ユニットの位置を計算及び追跡するよう構成された、プロセッサ・ユニットを備える。さらに、プロセッサは、進行中の軌跡を、事前に与えられた基準トラックと比較して、ずれを示すことができるよう構成される。
【0011】
次いで、かかるずれが検出され、ほぼ遅延なく示される。発明者らは、迅速なフィードバックを提供しようとする過程で、ビデオ式動作分析機は十分に迅速ではない場合があり、またシステムは、シングル・チップの動作追跡デバイスなどの小型ユニットが、対象となる動作を追跡し続けるように適合及び構成され得る場合、比較的低コストで構築され得ることを認識した。
【0012】
第1の態様によれば、本発明は、ユーザの身体又はユーザのスポーツ器具に取付け可能となるよう構成されたセンサ・ユニットを備えるスポーツ訓練補助具であって、センサ・ユニットは、
- 動作センサ・モジュールと、
- フィードバック刺激器、又はフィードバック刺激器と無線で通信する手段と、
- プロセッサと
を備え、
スポーツ訓練補助具は、ユーザによって実行される、検討されるスポーツ動作の動作欠陥と関係づけられたリアル・タイムでのフィードバックを提供するよう構成され、
i)センサ・ユニットは、ユーザの身体又はユーザのスポーツ器具の代表的な場所に取り付けることを意図しており、代表的な場所は、検討されるスポーツ動作を表す軌道を進むよう拘束されており、
ii)センサ・ユニットの動作センサ・モジュールは、加速度センサ及びジャイロ・センサを備え、
iii)センサ・ユニットのプロセッサは、動作センサ・モジュールからのデータを用いて、センサ・ユニットが静止していると判断されるイベントに対応する静止位置を判断するよう構成され、
iv)プロセッサは、静止位置に対するセンサ・ユニットのセンサ・モジュールの動きを追跡し続けるよう構成され、
v)プロセッサは、センサ・ユニットの動作センサ・モジュールの動作の軌道で表される、ユーザの検討されるスポーツ動作におけるスポーツ動作の欠陥を、リアル・タイムで検出すると、フィードバック刺激器をリアル・タイムで作動させるよう構成される、スポーツ訓練補助具を提供する。
【0013】
訓練補助具は、トリガ信号を受信し、且つ/又は所定のイベントを検出すると、内部位置レジスタ及び速度レジスタをゼロに設定する、開始シーケンスを実行するよう構成され、所定のイベントの検出は、所定の最初の期間中に、動作がないこと又は非常に限定された動作の検出である。
【0014】
さらに、プロセッサは、座標系の固定を実行するために、静止位置を検出するよう構成される。さらに、プロセッサは、所定のパラメータを識別することによって、動作開始を検出するよう構成される。
【0015】
ここで、本発明の非限定的な実施例を、以下の図を参照して説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1a】本発明の実施例による、生体フィードバック・デバイスのブロック図である。
図1b】本発明の別の実施例による、生体フィードバック・デバイスのブロック図である。
図2a】身体動作時に、人に生体フィードバックを与える方法の流れ図である。
図2b】身体動作時に、人に生体フィードバックを与える別の方法の流れ図である。
図3a】クラブをスイングするゴルファの斜視図である。
図3b】デバイスが取り付けられた運動選手の身体の斜視図である。
図4a】ゴルフ・スイングを上から見たときの、クラブ及び手首の連続した位置が許容可能なずれのチューブと重ね合わされた概略図である。
図4b】許容可能なずれの仮想チューブの詳細を示す図である。
図4c】動作のいくつかのサンプル点を各点の方向ベクトルと共に示し、また方向ベクトルを制限する円錐/扇形を示す図である。
図4d】加速度計及びジャイロのデータの基準方向を用いた、動作センサ・ユニットの概略斜視図である。
図4e】2つの座標系の概略図である。
図4f】動作開始シーケンス又は静止検出方法を使用して位置合わせされる準備ができた状態の、図4eの基準フレームを示す図である。
図5】訓練補助具で使用するための、基準位置を確立するための、静止検出方法の流れ図である。
図6】訓練補助具で使用するための、位置計算方法のブロック図である。
図7a】訓練補助具で使用するための、基準平面を確立する方法の流れ図である。
図7b】訓練補助具で使用するための、回転の中心点を確立する方法の流れ図である。
図8図7bの方法に関連する、幾何学的な関係を示す図である。
図9】棒状のゴルファの側面図である。
図10a】スイング欠陥を検出するための、測定値のグラフである。
図10b】スイング欠陥を検出するための、測定値の別のグラフである。
図10c】ダウンスイング角度の関数としての、バックスイングとダウンスイングとの間の距離の概略図である。
図11】オーバーザトップのスイング欠陥を検出する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本発明のために、また以下の本文において、以下の用語は、下記で説明される意味で使用される。
【0018】
「動作」:「動作」という用語は、ユーザによって実行される、複合的な又は単純な、あらゆる身体の動きと理解され、動作は、人の四肢、胴体、又は重心の1つ又は複数の動きであり得る。起こり得るどんな曖昧な点も、その用語が使用されている文脈で解決されるべきである。例示的な動作には、走り高跳び、棒高跳び、ハンマ投げ、槍投げ、体操、振付けの動き、チアリーディングの動き、野球のバッティング、野球のピッチング、ゴルフ・スイング、パッティング・ストローク、又は馬のジャンプの一部又は全部が含まれるが、これらに限定されるものではない。様々な実施例において、動作には、回転運動も含まれる。
【0019】
「動作表現」:「動作表現」は、通常、動作の数学的表現である。動作表現には、直線及び回転動作位置、動作速度、及び動作加速度の表現が含まれ得る。たとえば、動作は、ユーザの身体上の所定の点の現在の位置によって表現され得るか、又は動作は、(動作の)軌跡によって表され得る。以下を参照されたい。
【0020】
「位置」:本明細書で使用される用語「位置」は、近くの基準点に対するセンサ・ユニット又は小さな対象物の物理的な局所位置と理解され、好適な座標系を使用して表される。本発明の文脈において位置は、典型的には、基準点から0~5メートルの大きさの範囲内にある。
【0021】
「望ましくない動作」:用語「望ましくない動作」は、ユーザ及び/又はユーザのコーチの立場から見て望ましくない、又は望ましくない特徴を含む動作を示すために使用される。
【0022】
「身体動作トラッカ」:本明細書で使用される用語「身体動作トラッカ」は、実行されると、処理されたセンサ・データに基づいて、ユーザの身体の1つ又は複数の事前定義された点を経時的に追跡できる、デバイス若しくはシステム、又はコンピュータ・コードの一部分を示す。
【0023】
「追跡」:用語「追跡」は、動作中にユーザの身体上の1つ又は複数の事前定義された点の連続した位置を収集及び保存(記録)する活動と理解される。
【0024】
「動作軌跡」:用語「動作軌跡」は、追跡活動の結果、すなわち、開始点又は開始時間に開始し、終了点又は終了時間に終了する、事前定義された身体の点の、経時的に保存された連続位置の総計を意味する。
【0025】
「基準動作軌跡」:「基準動作軌跡」は、動作の動作表現と比較できるモデルを作成するために使用され得る、所望の動作軌跡である。
【0026】
「回転角」又は「回転の角度」:2次元空間では、「回転の角度」は、対象物が固定点を中心にして回転する量、つまり角度の測定値である。3次元空間では、回転は、3本の座標軸を中心とする回転の角度を使用して、測定及び表示される。
【0027】
「事前定義された身体の点」:用語「事前定義された身体の点」は、前記点、たとえばセンサ・ユニットの追跡を容易にする手段を備えた、ユーザの身体上の点を意味する。
【0028】
「姿勢」:用語「姿勢」は、本発明の文脈において、空間における対象物の向き(姿勢、角度位置)を示すために使用される。姿勢は、ピッチ角、ヨー角、及びロール角を使って、又はその代わりに、姿勢ベクトル若しくは姿勢軸、及びそのベクトル又は軸を中心とする回転角、すなわち軸-角度表現を使って表現できる。オイラーの回転定理を参照のこと。
【0029】
「動作センサ・ユニット」:「動作センサ・ユニット」は、好適な基準システムにおける、加速度及び/又はジャイロスコープ・データなどの動作情報、すなわち、ユーザの動作中の、センサの姿勢及び3次元位置又は同じ位置での変化を判断することを可能にする情報を提供できる、ユーザの身体に取付け可能なユニットであると理解される。センサ・ユニットは、ユーザの動作を妨げない程度に小型軽量であると考えられる。
【0030】
「制御ユニット」:「制御ユニット」は、本発明の文脈において、デバイスを操作するためのマンマシン・インタフェースを備えるユニットであり、通常、プロセッサ及び/又は動作センサ・ユニットと通信する無線通信手段も備える。
【0031】
「サンプル」:用語「サンプル」は、本発明の文脈において、特定の時点での動作センサ・ユニットの計算された状態を示すために使用され、動作センサ・ユニットからの動作センサ・データに基づいて、且つ基準フレーム、すなわち座標系にも基づいて、プロセッサで計算される、直線及び/又は回転動作位置、動作速度、並びに動作加速度の表現を有することができる。サンプルに、サンプル番号及び/又はサンプル時間が関連づけられる。
【0032】
「プロセッサ」:用語「プロセッサ」は、本発明の文脈において、他に何も明示的に言及されていない場合、それが1つ又は複数の論理又は物理プロセッサを備えるかどうかに関係なく、プロセッサ・システムを示すために使用される。
【0033】
「メモリ」:用語「メモリ」は、本発明の文脈において、他に何も明示的に言及されていない場合、それが1つ又は複数の論理又は物理メモリを備えるかどうかに関係なく、メモリ・システムを示すために使用される。
【0034】
「刺激器」:刺激器という用語は、本発明の文脈において、人又は動物の身体に取付け可能であり、コマンドを受信すると、その人又は動物が知覚可能な刺激を引き起こすことができるデバイスを示すために使用される。
【0035】
図1aは、本発明の実施例による訓練補助システムのブロック図を示す。訓練補助システムは、動作センサ・データを提供する動作センサ・ユニット110を備える。動作センサ・ユニット110は、人の身体の部分又は前記人が使用する器具に容易に取付けできるよう構成される。動作センサ・ユニットは、たとえば、ブレスレット又は絆創膏の形であり得る。動作センサ・ユニット110は、動作センサ・データを処理するよう構成されるプロセッサ105、及びメモリ118に接続されている。
【0036】
システムは、図1bでは、プロセッサ105と容易に通信するための制御ユニット120をさらに備え得る。制御ユニットは、ハンドヘルド型であることが好ましい。プロセッサは、データを格納するメモリ118に接続されている。さらに、システムは、人が知覚できる刺激を引き起こし得る刺激器102を備える。刺激器102は、人の身体に取付け可能であることが好ましい。好ましくは、刺激器102、プロセッサ105、メモリ118、及び動作センサ・ユニットはすべて、同じ物理ユニット内に配置又は統合され得る。
【0037】
したがって、動作センサ・ユニット110は、それが接続されているプロセッサ105に動作データを供給できる1つ又は複数のセンサを備えており、プロセッサ105は、動作センサ・ユニット110の、続く3次元位置を追跡し続けるよう構成される。動作センサ・ユニットは、プロセッサが、外部基準を必要とせずに動作センサ・ユニットの相対位置データを計算できるようにする、加速度計及び/又はジャイロスコープ・データを備える、小型のシングル・チップ動作追跡デバイスであり得ることが好ましい。9軸動作センサ・ユニットの基準方向の実例を、図4dに示す。加速度は、X軸、Y軸、及びZ軸の方向について、またそれぞれの前記軸を中心とする回転加速度についても得られる。市販のユニットには、カリフォルニア州San JoseのInvenSense, Inc.の半導体動作トラッカデバイスMPU-9250がある。
【0038】
無線通信
システムは、プロセッサ105が制御ユニット120と通信することを可能にする無線通信手段、たとえば、ブルートゥース(登録商標)又はWIFIをさらに備え得る。
【0039】
モード
様々な実施例では、制御ユニットを使用して、システムを2つのモード、すなわち閾値設定モード及び監視モードのうちの一方に設定できる。
- 閾値設定モードでは、最初の3次元軌跡が、許容可能なずれとも呼ばれる閾値と共に定義され得る。許容可能なずれとは、動作に関連する任意の制限又は閾値であり得、基準動作軌跡を中心軸として用いて作成された仮想チューブの半径を含むが、それに限定されるものではない。また、このモードでは、姿勢ずれパラメータを設定できる。
さらに、システムは、制御ユニットをインターネットに接続し、基準動作軌跡及び許容可能なずれをインポートできるように構成される。制御ユニットはまた、許容可能なずれのパラメータの調整を容易にするよう構成される。許容可能なずれの典型的なパラメータには、許容チューブ431、432、433の中心曲線410から測定された半径が含まれ得る。図4bを参照されたい。また、許容可能なずれの典型的なパラメータには、許容可能な姿勢角の円錐で表される許容可能な姿勢角のずれ、及び/又は姿勢角の間隔が含まれ得る。図4cを参照されたい。様々な実施例において、所望の軌跡及び/又は所望の姿勢角は、練習(訓練)すべき動作に応じて、たとえば指先から地面までの距離及び腕の長さなど、所定の身体測定値を入力することによって調整され得る、工場設定として事前定義され得る。
【0040】
監視モードでは、プロセッサは、センサ・ユニット位置、又はセンサ・ユニット位置とセンサ・ユニット姿勢との両方のいずれかを基準値と比較するよう構成される。位置に関しては、実際の動きが仮想チューブ内に留まっている限り、動作は満足のいくものと見なされ、刺激は引き起こされない。したがって、所定の制限、閾値、又は基準の動きに対する動作センサ・ユニット110の動きに応じて、プロセッサは、動作センサ・ユニットが動いて、いずれかの制限若しくは閾値の外側へ離れるか、又は許容可能なずれの距離より遠くへ離れた場合に、且つ/或いは姿勢がある角度をなす円錐の外側に外れた場合に、刺激ユニット102に最初の刺激を引き起こすコマンドを直ちに送信できる。
【0041】
様々な実施例において、プロセッサは、所定の動作としか比較を行わないように構成でき、どんな閾値又は基準動作モードでも設定できるようには構成されていない。
【0042】
刺激タイプ
様々な実施例において、システムは、基準動作又は特定の動作の判定基準と比較した現在の動作に応じて刺激を引き起こす、刺激器102を備える。刺激器102は、思いとどまらせる刺激を与えるよう構成されることが好ましい。刺激は、触覚刺激、電気刺激、光刺激、聴覚刺激、熱刺激、若しくは冷刺激、又はそれらの組合せであり得る。刺激は、ユーザのニーズに応じて、運動学習を最大限にするよう選択され得る。刺激ユニットによって引き起こされる刺激は、電気刺激であることが好ましい。刺激ユニットは、ほとんどの人間にとって痛いと知覚されるような大きさの電気刺激を引き起こし得るよう構成されることが、さらにより好ましい。刺激ユニットは、かかる刺激を送達できるよう構成される。システムは、刺激の大きさが調整可能であるように構成され得る。
【0043】
刺激ユニットは、リアル・タイムで、すなわち、顕著な遅延なしに、好ましくは50ミリ秒(ms)未満、より好ましくは20ミリ秒未満、又は最も好ましくは10ミリ秒未満の遅延で、刺激を送達するよう構成される。
【0044】
正しい位置を訓練する方法
ここで図2aを参照すると、身体動作を改善するために、動作センサ・ユニット110を備えた、人又は動物のための訓練補助のための方法が提供され、該方法は、
- 動作センサ・ユニット110のデータを受信するステップ215と、
- センサ・ユニットのデータに基づいて、センサ・ユニットの現在の位置を判断するステップ220と、
- 判断されたセンサ・ユニットの現在の動作位置の値を、所定の所望の動作に対応する位置の値、又は特定の動作判定基準と比較するステップ225と、
- 所定の閾値に鑑みて、現在の動作の位置の値と所定の所望の動作の位置の値との間の不一致のレベルに基づいて、又は特定の動作判定基準に基づいて、刺激を発するステップ230と
を含み、発せられる刺激は、電気刺激であり得る。
【0045】
ここで図2bを参照すると、該方法は、図示のように追加のステップを含み得る。身体動作時に、人に生体フィードバックを与える別の方法の流れ図を示しており、該方法は、
- センサ・ユニットの位置、速度、及び姿勢の内部での動作記録を開始するステップ(306)(以下の段落も参照)と、
- 動作センサからデータを受信するステップ307と、
- 動作開始判定基準を受信データに適用するステップ315(以下参照)と、
- 動作が開始されたかどうかを判定するステップ320と、
- ステップ320の判定に基づいて、デバイスを較正するステップ325(以下参照)と、
- 基準動作軌跡が使用可能かどうかを判定するステップ330と、
- 進行中の現在の動作軌跡を、基準動作軌跡と比較するステップ335と、
- 現在の動作軌跡が基準動作軌跡から事前定義された程度を超えて外れているかどうかを判定し、外れている場合はこれを示すステップ340と、
- 動作が終了したかどうかを判定し、終了した場合はメモリに保存するステップ342と、
- ユーザ入力に基づいて、動作軌跡を基準動作軌跡として保存されるべきかどうかを判定するステップ344と
を含む。
【0046】
開始
様々な実施例において、訓練補助は、MEMS動作追跡デバイスからの加速度計及びジャイロスコープのデータに依存する。プロセッサは、動作センサ・ユニットの現在の位置、姿勢、及び速度を更新し続けるために、(プロセッサの)内部又は外部の位置レジスタ、姿勢レジスタ、及び速度レジスタを備えるよう構成される。レジスタは、動作センサ・ユニットからの動作センサ・データを使用して更新される。プロセッサは、動作センサ・ユニットの位置の位置座標をリセットする、開始手順を実行するよう構成される。様々な実施例では、レジスタは、センサ・ユニットを所定の時間、静止状態に保つことによって開始される。
【0047】
発明者らは、欠陥のある動作をリアル・タイムで検出できるように、動作パラメータを判断するのに十分高速且つ正確な手法を生み出すこと、という課題を確認した。解決策は、加速度タイプのデータに基づいて、多かれ少なかれ不規則な量のドリフトに関係し得る位置を計算するための、2段階の積分手順に対処する必要がある。該課題に対する解決策には、上記の、また以下でさらに詳述する、開始手順が含まれる。これは、動作分析が開始される直前に、どんなドリフトも最小限に抑える所定のやり方で実行される。
【0048】
判断するための1つの重要なパラメータは、センサ・ユニットの、重力加速度の方向に対する向きであることが、研究中に判明した。センサ・ユニットを静止状態で維持している期間中、センサ・ユニットは、重力加速度ベクトルに対するセンサ・ユニットの向きを判断する。左右及び前後方向の向きは、重力に垂直であることを除いて任意に設定され、それに応じてさらに計算するよう構成される。
【0049】
したがって、開始は、動作センサ・ユニット若しくは制御ユニットのボタンを押すことによって、並びに/又はセンサ・ユニットを所定の時間「静止状態」に保つことによって、並びに/又はただ単にセンサ・ユニットを静止状態すなわち、加速度計及びジャイロの活動レベルが所定のレベルを下回る程度の静止状態に十分に保つことによって、行われ得ることが好ましい。
【0050】
該所定の時間は、好ましくは持続時間が1から5000ミリ秒の間、より好ましくは持続時間が5から20ミリ秒の間、さらにより好ましくは7から15ミリ秒の間、又は最も好ましくは9から11ミリ秒の間であり得、この持続時間中にプロセッサは、受信した動作センサ・データ(加速度)を平均化するのが好ましく、平均値が所定の値を下回る場合、プロセッサは、開始を続行できることを判断(判定)する。
【0051】
このように、プロセッサは開始手順中に、トリガ信号を受信するか、且つ/又は所定のイベントを検出すると、開始時点であると判断する。開始時点は、センサ動作ユニットが、重力以外のどんな加速度の影響も受けていないと評価される瞬間であり得る。
【0052】
プロセッサは、(プロセッサの)内部又は外部の位置レジスタ及び速度レジスタを備えるよう構成され、これらのレジスタは、その開始時点にゼロに設定されるか、又はその特定の時間に動作センサ・データ、及びレジスタがゼロに、つまり(x,y,z)=(0,0,0)、
【数1】
にリセットされたという概念(概案、考え、事実)に基づいて、現在の位置及び現在の速度に更新される。
【0053】
動作開始の識別
様々な実施例において、プロセッサは、動作開始識別子、すなわち動作が開始したことを示す(知らせる、信号を送る)短い動作シーケンス又は所定値に達した動作速度を探索するよう構成されることが好ましい。開始シーケンスの方向は、動作センサ・ユニットの動作速度が所定の絶対値に達したときに、速度ベクトルの方向として判断され得る。この方向は、基準動作軌跡を現在の動作に合わせるために使用され、このプロセスは、ここでは「較正」とも呼ばれる。
【0054】
図4eは、2つの相異なる基準フレーム/座標系の概略図を示す。図4fは、位置合わせされる準備ができた状態の、図4eの基準フレームを示す。プロセッサは、動作開始識別子、すなわち、短い動作軌跡部分(491)を探索するよう構成されることが好ましい。プロセッサは、短い動作軌跡部分(491)を位置合わせして、仮想動作開始チューブ494にぴったり嵌め込むよう構成される。続いて、仮想動作開始チューブ494を使用して、第2の原点552を有する現在の基準フレームを、第1の原点551を有する基準動作の基準フレームに合わせる。
【0055】
別の動作開始識別子は、動作が開始され、それがどの方向であるかを信号で知らせる、所定値に達した動作速度であり得る。開始シーケンスの方向は、動作センサ・ユニットの動作速度が所定の絶対値に達したときの、速度ベクトルの方向として判断されることが好ましい。次いで、この方向は、基準動作軌跡を現在の動作に合わせるために使用され、このプロセスは、ここでは「較正」と呼ばれる。
【0056】
開始の実例
様々な例示的な実施例において、
ユーザの身体又はユーザのスポーツ器具に取付け可能となるよう構成されたセンサ・ユニットを備えるスポーツ訓練補助具であって、センサ・ユニット(110)は、
- 動作センサ・モジュールと、
- フィードバック刺激器、又はフィードバック刺激器と無線で通信する手段と、
- プロセッサと
を備え、
スポーツ訓練補助具は、ユーザによって実行される、検討されるスポーツ動作の動作欠陥と関係づけられた瞬時的なフィードバックを提供するよう構成され、
i)センサ・ユニットは、ユーザの身体又はユーザのスポーツ器具の代表的な場所に取り付けることを意図しており、代表的な場所は、検討されるスポーツ動作を表す軌道を進むよう拘束されており、
ii)センサ・ユニットの動作センサ・モジュールは、加速度センサ及びジャイロ・センサを備え、
iii)センサ・ユニットのプロセッサは、動作センサ・モジュールからのデータを用いて、センサ・ユニット(110)が静止していると判断されるイベントに対応する静止位置を判断するよう構成され、
iv)プロセッサは、静止位置に対するセンサ・ユニットのセンサ・モジュールの動きを追跡し続けるよう構成され、
v)プロセッサは、センサ・ユニットの動作センサ・モジュールの動作の軌道で表される、ユーザの検討されるスポーツ動作におけるスポーツ動作の欠陥を、リアル・タイムで検出すると、フィードバック刺激器をリアル・タイムで作動させるよう構成される、
スポーツ訓練補助具が提供される。
【0057】
様々な実施例において、プロセッサは、
- 3軸加速度計センサからのデータに基づいて、加速度ベクトルを繰り返し計算するステップと、
- 加速度ベクトルの絶対値が所定の時間、所定の閾値を下回ったままであることを判断するステップと、
- 加速度計のベクトルが、所定の時間、地球の重力加速度に等しいか又はそれに近い、安定した絶対値を保持していることを判断するステップと
を含む方法を使用して、静止位置を判断するよう構成される。
【0058】
さらに、プロセッサは、
- ジャイロ・センサの読取り値が所定の事前定義された制限値内に限定されていることを判断するステップ
を含む方法を使用して、静止位置を判断するよう構成され得る。
様々な実施例において、安定した絶対値を判断するステップは、
- 加速度計のベクトル絶対値の変動が、所定の間隔内、好ましくは地球の重力加速度から+/-の所定の割合内にあることを確認するステップ
を含む。
【0059】
好ましい実施例では、プロセッサは、静止位置を判断するときに、ジャイロ・センサのデータを破棄するよう構成され得る。
【0060】
ユーザは、動物の場合がある。
【0061】
センサ・ユニットの位置を計算するための、動作センサ・データ使用の実例
上記にも記載されているように、動作センサ・モジュールからの動作データは、加速度計のデータ及びジャイロスコープのデータを含む。静止位置が識別される開始手順中に、いくつかの位置レジスタはゼロに設定される。動作センサ・モジュールの向きは、加速度の方向の平均に設定され、該平均は、地球の重力、及びおそらく通常の軽微な無意識の筋肉収縮による多少の小さい不規則な変動に起因すると推測される。
【0062】
様々な実施例において、動作センサ・モジュールの3軸ジャイロスコープからの出力は、X軸、Y軸、及びZ軸の角速度のデジタル出力を含む。加速度計からの出力には、3軸の加速度が含まれる。
【0063】
様々な例示的な実施例において、
ユーザの身体又はユーザのスポーツ器具に取付け可能となるよう構成されたセンサ・ユニットを備えるスポーツ訓練補助具であって、センサ・ユニット(110)は、
- 動作センサ・モジュールと、
- フィードバック刺激器、又はフィードバック刺激器と無線で通信する手段と、
- プロセッサと
を備え、
スポーツ訓練補助具は、ユーザによって実行される、検討されるスポーツ動作の動作欠陥と関係づけられた瞬時的なフィードバックを提供するよう構成され、
i)センサ・ユニットは、ユーザの身体又はユーザのスポーツ器具の代表的な場所に取り付けることを意図しており、代表的な場所は、検討されるスポーツ動作を表す軌道を進むよう拘束されており、
ii)センサ・ユニットの動作センサ・モジュールは、加速度センサ及びジャイロ・センサを備え、
iii)センサ・ユニットのプロセッサは、動作センサ・モジュールからのデータを用いて、センサ・ユニット(110)が静止していると判断されるイベントに対応する静止位置を判断するよう構成され、
iv)プロセッサは、静止位置に対するセンサ・ユニットのセンサ・モジュールの動きを追跡し続けるよう構成され、
v)プロセッサは、センサ・ユニットの動作センサ・モジュールの動作の軌道で表される、ユーザの検討されるスポーツ動作におけるスポーツ動作の欠陥を、リアル・タイムで検出すると、フィードバック刺激器をリアル・タイムで作動させるよう構成され、
vi)センサ・モジュールの最初の向きは、動作センサ・モジュールの加速度計のデータに基づいて判断及び設定され、動作センサ・モジュールの加速度計のデータは静止位置だけに対応し、
vii)さらに動的に変化するセンサ・ユニットの向きは、動作センサ・モジュールのジャイロスコープからの角速度及び動作センサ・モジュールのジャイロスコープからの角速度だけに基づいて、判断される、
スポーツ訓練補助具が提供される。
【0064】
様々な実施例において、プロセッサは、
- 3軸加速度計センサからのデータに基づいて、加速度ベクトルを繰り返し計算するステップと、
- 加速度ベクトルの絶対値が所定の時間、所定の閾値を下回ったままであることを判断するステップと、
- 加速度計のベクトルが、所定の時間、地球の重力加速度に等しいか又はそれに近い、安定した絶対値を保持していることを判断するステップと
を含む方法を使用して、静止位置を判断するよう構成される。
【0065】
さらに、プロセッサは、
- ジャイロ・センサの読取り値が所定の事前定義された制限値内に限定されていることを判断するステップ
を含む方法を使用して、静止位置を判断するよう構成され得る。
該所定の時間は、0.5から2.5秒の間隔であり得ることが好ましい。
【0066】
静止インジケータ
様々な実施例において、システムが今使用される準備ができていることを示す代替手段として、固定期間が、静止検出器及びインジケータに置き換えられる。静止検出器は、センサ・データを評価し、加速度及び/又はジャイロスコープのパラメータが所定の閾値を下回ったときに、知らせることができる。
【0067】
様々な実施例において、安定した絶対値を判断するステップは、
- 加速度計のベクトル絶対値の変動が、所定の間隔内、好ましくは地球の重力加速度から所定の割合内にあることを確認するステップ
を含む。
【0068】
好ましい実施例では、プロセッサは、静止位置を判断するときに、ジャイロ・センサのデータを破棄するよう構成され得る。
【0069】
ユーザは、動物の場合がある。
【0070】
様々な実施例において、動作センサ・モジュールのさらに動的に変化する位置は、動作センサ・モジュールの計算された動的に変化する向き(姿勢)、及び動作センサ・モジュールの対応する加速度計のデータに基づいて計算される。
【0071】
静止検出の実例
図5は、訓練補助具の静止検出器の流れ図を示す。補助具は、
- 手首センサ・ユニットの向きを判断するために、AHRSアルゴリズムへの入力として、3軸加速度計の出力及び3軸ジャイロスコープの出力を使用するステップ510と、
- 重力方向を推定するものとして3軸加速度計の出力を、また角運動速度については3軸ジャイロスコープを使用して、向きを推定するステップ520と、
- センサ・ユニットが十分静止状態に保たれているかどうかを、加速度計及び/又はジャイロの活動レベルに基づいて判断するステップ525と、
- 位置を、x=y=z=0にリセットするステップ530と、
- 直線速度及び角運動速度をリセットするステップ530と、
- 適合されるように姿勢及び重力方向を維持するステップ530と、
- ユーザにゴーサインを表示することにより行われ得る、準備ができていることを示すステップ535と、
- 計算を開始して、位置を更新するステップ535と、
- ジャイロ・センサのデータだけを使用して姿勢を更新するステップと、
- スイングの検出を開始するステップ540と、
- 所定の時間内にスイングがないことに基づいて、静止検出を再開するステップ540と
を含む、静止検出500の方法を実行するよう構成される。
【0072】
ゴルフ・スイング検出の実例
人の身体に取付け可能なボディ・ユニットを備えるゴルフ訓練補助具が提供され、ボディ・ユニットは、
- 測位センサ・モジュールと、
- フィードバック刺激器、又はフィードバック刺激器と無線で通信する手段と、
- プロセッサと
を備える。
【0073】
ここで、ゴルフ訓練補助具は、リアル・タイムにフィードバックを与えるよう構成され、
ボディ・ユニットは、人の身体の代表的な場所に取り付けることを意図しており、該場所は、検討されるスポーツ動作を表す軌道を進むよう拘束されており、
測位センサ・モジュールは、加速度センサ及びジャイロ・センサを備え、該モジュールは、人の動きを追跡し続け、ボディ・ユニットが静止していると判断される静止位置を判断するよう構成され、静止位置から加速度及び/又はジャイロ信号を使用して、ボディ・ユニットの位置を判断でき、静止時には、ボディ・ユニットの向きを判断するために加速度センサのデータだけを使用し、静止していないときには、ボディ・ユニットの向きを判断するためにジャイロスコープのデータだけを使用し、
プロセッサは、ゴルフ・スイングが開始されたことを検出するよう配置されるゴルフ・スイング検出器を実現するよう構成され、ゴルフ・スイング検出器は、包含判定基準(inclusion criteria)及び排除判定基準(rejection criteria)を有することができ、
包含判定基準は、
- 静止状態から所定の期間、好ましくは1.7から2.0秒間の所定の期間内に、少なくとも所定の高さの増加量がある、高さの増加と、
- 少なくとも所定の量の累積移動角度を含む動きであって、該所定の量は、好ましくは100から120度以内、より好ましくは約110度である動きと
を含み、
排除判定基準は、
- システムにz方向を判断させることができない、最初の静止期間
を含み、
プロセッサは、人のスポーツ動作の欠陥が検出されると、フィードバック刺激器を作動させるよう構成される。
【0074】
さらに、ゴルフ訓練補助具は、所定の高さの増加量が、0.4から0.6メートルの間隔、より好ましくは0.45から0.55mの間、最も好ましくは0.49から0.51mの間であることを含み得る。
【0075】
さらに、ゴルフ訓練補助具は、所定の静止時間の閾値が、5から20ミリ秒の間隔、より好ましくは7から15ミリ秒の間隔、最も好ましくは9から11ミリ秒であることを含み得る。
【0076】
実例3「ゴルフ・スイング訓練補助具」
ユーザの身体又はユーザのスポーツ器具に取付け可能なセンサ・ユニットを備えるゴルフ訓練補助具が提供され、センサ・ユニットは、
- 位置センサ・モジュールと、
- フィードバック刺激器と、
- プロセッサと
を備える。
【0077】
スポーツ訓練補助具は、スイングの欠陥が検出されると瞬時的なフィードバックを与えるよう構成され、
ボディ・ユニットは、人の身体(又は人のスポーツ器具)の代表的な場所に取り付けることを意図しており、該場所は、検討されるスポーツ動作を表す軌道を進むよう拘束されており、
ゴルフ訓練補助具は、
- ボディ・ユニットが、いつ静止状態にあるかを判断し、
- ボディ・ユニットの位置を判断し、
- ゴルフ・スイングが開始されたことを検出する
手段を備え、
オーバーザトップ検出器は、人がオーバーザトップのスイング欠陥をもつゴルフ・スイングを実行すると、信号で知らせるよう配置され、オーバーザトップ検出器は、
- プロセッサ
を備え、
プロセッサは、位置センサ・データに基づいてスイング・プレーンの位置を計算するよう構成されており、
プロセッサはさらに、スイング・プレーンに対するボディ・ユニットの位置をリアル・タイムで計算し、且つ
オーバーザトップのスイング欠陥と一致しているスイング・プレーンに対するボディ・ユニットの軌道に基づいて、フィードバック刺激器を作動させるよう構成されている。
【0078】
ゴルフ訓練補助具はさらに、以下の判定基準が満たされる場合、スイング・プレーンに対するボディ・ユニットの軌道が、オーバーザトップのスイング欠陥と一致していると見なされるように構成され得る。
- ボディ・ユニットの軌道の下向きの部分が、上向きの軌道の前へ、スイング・プレーンに垂直な方向に距離Aだけ、離れている。
【0079】
z方向の判断
外部基準を用いずに、ユーザの動きの計算及び分析を容易にするために、上記で紹介したように、内部基準が、自発的な非活動期間中に重力を感知することをベースとする手順を使用して確立される。
【0080】
z方向は、グローバル・フレームとしても知られている、いわゆる慣性フレームにおいて、上向き、すなわち重力の方向に並ぶ方向と定義される。腕の手首に取り付けられ得るセンサ又はセンサ・ユニットは、ボディ・フレームと呼ばれることがあり、センサは、センサの座標系がどのようにグローバル・フレームに関係するかを、常に判断又は知ることができる必要がある。様々な実施例において、これは、いわゆる姿勢及び方位基準システム(AHRS:attitude and heading reference system)を使用して実現される。小型航空機でのAHRSの具体的な使用法は、IEEE Transactions on automatic control、Vol.53、No.5、2008年6月、1203頁、Mahony他に開示されている。
【0081】
AHRSは、AHRSアルゴリズムを使用して、センサの向き、すなわち、センサの位置ではなく、単に、「姿勢」としても知られる、グローバル・フレームに対するセンサの角度を計算する。AHRSアルゴリズムは、常にアクティブであるよう設定されているが、ユーザが静止しているか又は動いているかに応じて、動作が異なるよう構成される。AHRSアルゴリズムは、静止期間中、重力の方向の基準として加速度計の値を使用する。AHRSアルゴリズムは、センサの向きを、加速度計の値に対して適合させる。
【0082】
静止期間の終わりに、AHRSアルゴリズムは、ボディ・フレームとグローバル・フレームとの間の関係の、可能な限り最適な推定を実現させている。AHRSアルゴリズムは、動きが開始されると、加速度計の値が基準として使用されないように構成される。これが行われるのは、動いている間に、加速度計の値が、センサの動きによって生じる加速度成分を含むためである。AHRSアルゴリズムは、動いている間に、加速度計のデータを使用せずに、ジャイロスコープのデータだけに基づいて、センサ(ユニット)の姿勢及び方位を更新するよう構成される。
【0083】
x方向及びy方向の設定
訓練補助具は、x、y、z座標系を内部的に使用し、センサ・ユニットの動きによって反映されるユーザの動きを、追跡及び分析するよう構成される。z方向の判断は、上記で説明されている。グローバル・フレームのx方向及びy方向は、ゴルフ・コース又は周囲の環境に照らして判断する必要はない。ただし、ユーザ及びゴルフ・スイングは、内部的には、グローバル・フレーム内で、グローバル・フレームのxy平面上に投影された基準平面又は「スイング・プレーン」(下記参照)への法線ベクトルが正のx方向に向いているように、回転される。これは、ゴルフ・ボールを放つ方向がy軸に沿い、ゴルファの鼻が正のx方向に沿って向くことを意味する。
【0084】
ゴルフ訓練補助具
様々な実施例において、ゴルフ・スイング訓練補助具が提供される。訓練補助具は、ゴルフ・スイングの開始を認識するための、ハードウェア又はソフトウェアを備える特徴を有し得る。様々な実施例において、発明者らが「ゴルフ・スイング検出器」と呼ぶことを選択したものが提供される。
【0085】
ゴルフ・スイング検出器は、止まっている状態から動きへの進行の検出を最初に行うよう構成される。これは、1つ又は複数の動作パラメータに閾値を設定することによって実現され得、また1つ又は複数の閾値を超えると、動きが開始されたと判断し得る。止まっている状態から動きへの進行は、ユーザが止まっている期間後に動くたびに発生する。
【0086】
ゴルフ・スイング検出器はさらに、所定の期間内にそれ以上何も起こらない場合、新しい静止期間を待つ状態に戻るよう構成される。この所定の期間は、1.5から2.5秒の間隔で設定され得る。センサ・ユニットの上方への、すなわちz方向の動きが、所定の距離を超えて検出された場合、ゴルフ・スイング検出器は、動作を継続できる。この所定の距離は、約0.5メートルに設定され得ることが好ましい。言い換えれば、z方向の上方への動きと共にx-y平面内の動作が、ゴルフ・スイング検出器を作動させるための判定基準であると理解することができる。
【0087】
位置判断ハードウェア及びソフトウェア
ここで図6に目を向けると、様々な実施例において、手首センサ・ユニットの位置は、手首センサ・ユニットのジャイロ・データ・ユニット605及びセンサ・ユニットの加速度計データ・ユニット610からのデータを、AHRSユニット615に供給することによって判断される。AHRSユニットは、グローバル・フレームに対するローカル・フレームの向きを確立及び追跡し続ける4元数回転ユニット620へ、向き/姿勢データを供給する。4元数回転ユニットは、重力成分を減算する重力減算ユニット625へ、グローバル・フレーム形式で加速度データを供給する。加速度データは、重力減算ユニット625から2重積分ユニット630に供給され、次いで、2重積分ユニット630が位置データを供給する。位置座標のリセットは、リセット・ユニット635によって実行され得る。
【0088】
基準面の設定
様々な実施例において、訓練補助具は、基準面を判断するよう構成される。この平面はスイング・プレーンと呼ばれることもあるが、この用語はゴルフの文献において他の意味で使用されることがあるので、ここでは基準平面と呼ぶことが好ましい。図7aは、訓練補助具で使用するための、基準平面を確立する方法の流れ図を示す。該方法は、
- 動きが始まったことを判断する、すなわち、静止位置からの加速度計及び/又はジャイロのデータが、センサ・ユニットの動きと一致していることを判断するステップと、
- 初期位置を、動き開始直前の位置に設定し、x=y=z=0とするステップ715と、
- センサ・ユニットの相対位置を追跡し続けるステップ720と、
- ジャイロスコープの動いた角度の累積(静止状態以降の)が所定の値以上であるかどうかを判断するステップであって、該動いた角度の累積は、スイングの相当な部分である可能性があり、テストでは、好適な値は約110度であることが示されたステップ725と、
- 第1の基準点を、初期位置に設定するステップ730と、
- 第2の基準点を、所定の累積角度値の位置に設定するステップ735と、
- 第3の基準点を、所定の累積角度値の半分の位置に設定するステップ740と、
- 第1、第2、第3の基準点を含む平面として、基準平面を作成するステップ745と
を含む。
【0089】
したがって、基準平面は、3つの基準点で定義される平面であり、第1の基準点は、センサ・ユニットが静止している点であり得、第2の基準点は、センサ・ユニットが、ジャイロスコープの動いた角度が所定の値に達するときの点であり得、第3の基準点は、センサ・ユニットが、ジャイロスコープの動いた角度の値が静止時の値と該所定の値との間のどこかにある。これを行う際に、ジャイロスコープの動いた角度の値は、静止状態でゼロに設定され得る。該所定の値は、好ましくは100から120度の間、より好ましくは105から115度の間、最も好ましくは110度である。
【0090】
図7bは、訓練補助具で使用するための、回転の中心点を確立する方法の流れ図を示す。該方法は、
- 動きが始まったことを判断する、すなわち、静止位置からの加速度計及び/又はジャイロのデータが、センサ・ユニットの動きと一致していることを判断するステップ755と、
- 初期位置を、動き開始直前の位置で、x=y=z=0に設定するステップと、
- センサ・ユニットの相対位置を追跡し続けるステップと、
- ジャイロスコープの動いた角度の累積が所定の値以上であるかどうかを判断するステップであって、該累積角度は、スイングの相当な部分であると予測され、テストでは、好適な値は約110度であることが示された、ステップ765と、
- 第1の基準点を、初期位置に設定するステップ770と、
- 第2の基準点を、所定の累積角度値の位置に設定するステップ775と、
- 第3の基準点を、所定の累積角度値の半分の位置に設定するステップ780と、
- 回転の中心点を、上記の基準平面の、第1の基準点と第3の基準点との間の直線に対する垂直線、並びに第2の基準点と第3の基準点との間の直線に対する垂直線の交差する点に設定するステップ785と
を含む。
【0091】
図8は、図7bの方法に関連する幾何学的な関係を示す。P1は、第1の基準点である。図7aで判断された平面と同様に、P2は第2、P3は第3の基準点である。直線P1~P3は、第1の基準点と第3の基準点との間の直線である。P2~P3は、第2の基準点と第3の基準点との間の直線である。N1は、P1とP3との中間から始まる、直線P1~P3に対する垂直線である。N2は、P2とP3との中間から始まる、直線P2~P3に対する垂直線である。回転の中心点Cは、Cとマークされている。Tは、軌跡である。
【0092】
オーバーザトップのスイング欠陥の検出
図9は、棒状のゴルファの側面図を示す。バックスイングの軌跡BST(backswing track)は、BSTとマークされた破線で示される。ダウンスイングの軌跡DST(downswing track)は、DSTとマークされた破線で示される。基準平面又はスイング・プレーンは、SP(swing plane)とマークされている。バックスイングの軌跡BSTとダウンスイングの軌跡DSTとの間の距離Aは、Aとマークされている。
【0093】
図10aは、スイングの欠陥を検出するための、測定値のグラフを示す。バックスイングの軌跡BSTは、遷移点「0」でダウンスイングの軌跡DSTに遷移する。第1のダウンスイング角度ベータ1は10度であることが示され、第2のダウンスイング角度は20度であることが示されている。
【0094】
図10bは、バックスイングの軌跡BSTとダウンスイングの軌跡DSTとの間の測定された距離A1及びA2を指し示す、測定値の別のグラフを示す。TP(transition point)は、遷移点である。RPL(reference plane)は、側面から見た基準平面である。
【0095】
図10cは、ダウンスイング角度の関数としての距離の、概略図を示す。破線のエリアは、オーバーザトップのスイング欠陥を検出するための、判定基準に対応する。テストでは、20度などの所定のダウンスイング角度で、バックスイングの軌跡とダウンスイングの軌跡との間の、基準平面に対する垂直線の方向である、上前方への距離Aが、オーバーザトップのスイング欠陥と一致することが示された。様々な実施例において、これは、やはり前述したように、刺激器をトリガして、ユーザへの否定的なフィードバックを作成するために使用される。
【0096】
図11は、オーバーザトップのスイング欠陥を検出する方法の流れ図を示す。該方法は、
- ダウンスイングが開始されたことを判断するステップであって、これは、回転の中心点を中心とする角度がもはや増加しておらず、減少していることを検出することによって行われ得るステップ1105と、
- 遷移点TPからの角度ベータ(β)の追跡を続けるステップ1110(図10a、図10b参照)と、
- バックスイングの軌跡BSTとダウンスイングの軌跡DSTとの間の距離Aの追跡を続けるステップ1120と、
- 角度ベータが所定の角度間隔内にあるかどうか、同時に、バックスイングの軌跡とダウンスイングの軌跡との間の距離Aが所定の距離間隔内にあるかどうかを検討することによって、ダウンスイングの軌跡がオーバーザトップのスイング欠陥と一致するか否かを判断するステップであって、テストでは、好適な値が、10から25度の該所定の角度間隔及び2cmを超える値の該所定の距離間隔を含むことが示された、ステップ1130と
を含む。
該方法は、
- フィードバック刺激器を作動させるステップ1135と、
- 角度ベータが所定の間隔を超えていることを判断するステップ1140と
をさらに含み得る。
【0097】
別の実施例では、アンダーザトップ(UTT:under-the-top)のスイング欠陥も検出され得る。これはOTTと類似した計算がなされるが、距離間隔は負の側にある。たとえば、10から25度の角度間隔で、マイナス(-)10cmである。
【0098】
別の実施例では、プロセッサは、所定の角度間隔及び所定の距離間隔を自己調整するよう構成され得る。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10a
図10b
図10c
図11