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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】卓
(51)【国際特許分類】
   A47B 13/08 20060101AFI20240531BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
A47B13/08 A
A61L2/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021010168
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022114057
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大庭 正俊
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-104802(JP,U)
【文献】中国実用新案第211559204(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 13/08
A61L 2/00-2/28
A47G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、前記天板を支持する脚と、を備える卓であって、
前記天板に、当該天板に沿って移動可能に巻かれたカバーと、
前記カバーを前記天板に沿って移動させる搬送機構と、
前記カバーの移動経路上に設けられた殺菌処理部と、を有し、
前記搬送機構は、モータと、前記カバーに当接するとともに、前記モータによって回転駆動される回転体と、を含み、
前記殺菌処理部は、前記天板に設けられた凹部と、前記凹部に収容された紫外線ランプと、を含み、
前記搬送機構が作動すると、それまで前記天板を覆っていた前記カバーの一部に代わって、前記凹部の内面と前記紫外線ランプとの間を通過することによって殺菌された前記カバーの他の一部が前記天板上に送り出されることを特徴する卓。
【請求項2】
前記殺菌処理部は、前記凹部に収容されている前記紫外線ランプを覆う蓋を含み、
前記凹部と前記蓋の一側との間に第1の隙間が設けられ、前記凹部と前記蓋の他側との間に第2の隙間が設けられ、
前記カバーは、前記第1の隙間を通って前記凹部に入り、前記第2の隙間を通って前記凹部から出ることを特徴とする請求項に記載の卓。
【請求項3】
天板と、前記天板を支持する脚と、を備える卓であって、
前記天板に、当該天板に沿って移動可能に巻かれたカバーと、
前記カバーを前記天板に沿って移動させる搬送機構と、
前記カバーの移動経路上に設けられた殺菌処理部と、を有し、
前記搬送機構は、モータと、前記カバーに当接するとともに、前記モータによって回転駆動される回転体と、を含み、
前記殺菌処理部は、前記天板に設けられた凹部と、前記凹部に収容されるとともに、殺菌液が含侵された殺菌液保持体と、を含み、
前記搬送機構が作動すると、それまで前記天板を覆っていた前記カバーの一部に代わって、前記凹部の内面と前記殺菌液保持体との間を前記殺菌液保持体に接触しながら通過した前記カバーの他の一部が前記天板上に送り出されることを特徴とする卓。
【請求項4】
前記搬送機構が前記天板の裏側に設けられ、前記殺菌処理部が前記天板の表側に設けられていることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の卓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、机やテーブルなどの卓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
机やテーブルなどの卓は、住宅,オフィス,学校,飲食店などの様々な場所に設置され、様々な人によって使用されている。
【0003】
近年のコロナウイルスの流行に伴って、人が触れるあらゆる物に対して殺菌,除菌,抗菌などのウイルス感染防止対策を講じることが強く求められており、机やテーブルなどの卓も例外ではない。そこで、飲食店などでは、客が入れ替わる度にテーブルを殺菌・除菌している。具体的には、テーブルの天板表面にアルコール溶液(エタノール溶液)を吹きかけたり、アルコール溶液を吹きかけた上で天板表面を拭いたりしている。
【0004】
ここで、アルコール溶液と並ぶ殺菌手段として殺菌灯が知られている。殺菌灯は、殺菌力を有する光線(紫外線)を放出する光源であり、一般的に“紫外線ランプ”と呼ばれている。特許文献1には、病院家具が備える収納部内に殺菌灯を設け、収納部に収納される器具を殺菌する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-175614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アルコール溶液を使って卓の天板を頻繁に殺菌するのは面倒であり、時間もかかる。また、拭き残しや拭きムラによって殺菌が不十分になる虞もある。
【0007】
引き出し等の閉鎖空間であれば、内部に紫外線ランプを設置するだけで、当該空間内に置かれた器具等を容易かつ確実に殺菌することができる。しかし、外部に露出している卓の天板に必要な量の紫外線を確実に照射することは容易ではない。
【0008】
本発明の目的は、ウイルス感染防止対策を容易かつ確実に実行し得る卓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の卓は、天板と、前記天板を支持する脚と、前記天板に、当該天板に沿って移動可能に巻かれたカバーと、前記カバーを前記天板に沿って移動させる搬送機構と、前記カバーの移動経路上に設けられた殺菌処理部と、を有する。そして、前記搬送機構が作動すると、それまで前記天板を覆っていた前記カバーの一部に代わって、前記殺菌処理部を通過することによって殺菌された前記カバーの他の一部が前記天板上に送り出される。
【0010】
本発明の一態様では、前記搬送機構は、モータと、前記カバーに当接するとともに、前記モータによって回転駆動される回転体と、を含む。また、前記殺菌処理部は、前記天板に設けられた凹部と、前記凹部に収容された紫外線ランプと、を含む。そして、前記カバーは、前記凹部の内面と前記紫外線ランプとの間を通過して前記天板上に送り出される。
【0011】
本発明の他の一態様では、前記殺菌処理部は、前記凹部に収容されている前記紫外線ランプを覆う蓋を含む。また、前記凹部と前記蓋の一側との間に第1の隙間が設けられ、前記凹部と前記蓋の他側との間に第2の隙間が設けられる。そして、前記カバーは、前記第1の隙間を通って前記凹部に入り、前記第2の隙間を通って前記凹部から出る。
【0012】
本発明の他の一態様では、前記搬送機構は、モータと、前記カバー当接するとともに、前記モータによって回転駆動される回転体と、を含む。また、前記殺菌処理部は、前記天板に設けられた凹部と、前記凹部に収容されるとともに、殺菌液が含侵された殺菌液保持体と、を含む。そして、前記カバーは、前記凹部の内面と前記殺菌液保持体との間を前記殺菌液保持体に接触しながら通過して前記天板上に送り出される。
【0013】
本発明の他の一態様では、前記搬送機構が前記天板の裏側に設けられ、前記殺菌処理部が前記天板の表側に設けられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ウイルス感染防止対策を容易かつ確実に実行し得る卓が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係るテーブルの外観を示す図である。
図2図1に示されるテーブルが備える搬送機構および殺菌処理部を模式的に示す説明図である。
図3図1に示されるテーブルが備える搬送機構および殺菌処理部を模式的に示す他の説明図である。
図4】第2実施形態に係るテーブルが備える搬送機構および殺菌処理部を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明が適用された卓の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。尚、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一または実質的に同一の部材などには同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
図1には、本発明が適用されたテーブル1Aが示されている。図1に示されているテーブル1Aは、平面形状が略長方形の天板10と、天板10を支持する4本の脚20と、を有する。
【0018】
天板10は、表面(おもてめん)11、裏面(うらめん)12、長側面13および短側面14を含む。天板10の幅(W)は1200mm前後であり、天板10の奥行(D)は600mm前後である。
【0019】
4本の脚20は、天板10の四隅にそれぞれ配置されている。脚20の長さ(≒テーブル1Aの高さ)は700mm前後であり、それぞれの脚20の上端は天板10の裏面12にボルト等によって固定されている。
【0020】
図1図2に示されるように、テーブル1Aは、天板10および脚20に加えて、カバー30,搬送機構40および殺菌処理部50を有する。カバー30は、天板10の周長と略同一の周長を有する環状(筒状)の布である。カバー30は、天板10に、天板10に沿って移動可能に巻かれている。この結果、天板10の表面11、裏面12、長側面13の略全域がカバー30によって覆われている。尚、カバー30を円滑に移動させるべく、天板10の2つの長側面13は曲面となっている。また、カバー30には、従来からテーブルクロスなどに用いられている布と同種の布(例えば、綿布や麻布)が用いられているが、カバー30の素材は特に限定されない。例えば、カバー30は、ポリエステルシートやビニールシートであってもよい。
【0021】
図2に示されるように、搬送機構40は天板10の裏側に設けられている。図3に示されるように、搬送機構40は、天板10の幅方向両側に設置されている2つのモータ41と、それぞれのモータ41によって回転駆動される回転体(ゴムローラ42)と、を含んでいる。再び図2を参照すると、それぞれのゴムローラ42は、カバー30に当接している。よって、図3に示されているモータ41によってゴムローラ42が回転駆動されると、図1図2に示されているカバー30が天板10に沿って移動する。より具体的には、カバー30は、天板10の表側において奥から手前に向かって移動するとともに、天板10の裏側において手前から奥に向かって移動する。図2中の矢印aは、天板10の表側におけるカバー30の移動方向を示しており、矢印bは、天板10の裏側におけるカバー30の移動方向を示している。別の見方をすると、カバー30が天板10の上を循環または巡回する。
【0022】
尚、本実施形態では、カバー30とゴムローラ42との間の滑りを防止または抑制すべく、ゴムローラ42をカバー30に圧接させてある。同様の目的を達成するために、例えば、ゴムローラ42とカバー30との一方または双方に凹凸を形成してもよい。
【0023】
図3に示されるように、天板10の2つの短側面14には、搬送機構40に含まれるボタン43がそれぞれ設けられている。2つのモータ41は、いずれか一方のボタン43が押される度に所定速度で所定時間だけ回転する。よって、モータ41の回転速度や回転時間の設定を変更することにより、カバー30の移動速度や移動量を調節することができる。尚、2つのモータ41は同期して回転する。
【0024】
図1図2に示されるように、殺菌処理部50は、天板10の表側であって、かつ、カバー30の移動経路上に設けられている。よって、搬送機構40によって上記のように移動されるカバー30は、その移動過程で殺菌処理部50を通過する。
【0025】
殺菌処理部50は、天板10に設けられた凹部51と、凹部51に収容された紫外線ランプ52と、凹部51に収容されている紫外線ランプ52を覆う蓋53と、を含んでいる。尚、図1では、蓋53の図示が省略されている。
【0026】
凹部51は、天板10の一方の長側面13の近傍に、天板10の幅方向に沿って形成された溝であって、円弧状の内面51aを有する。凹部51と蓋53の一側との間には第1の隙間54が設けられ、凹部51と蓋53の他側との間には第2の隙間55が設けられている。搬送機構40によって移動されるカバー30は、第1の隙間54を通って凹部51に入り、第2の隙間55を通って凹部51から出る。そこで、以下の説明では、第1の隙間54を“入口54”と呼び、第2の隙間55を“出口55”と呼ぶ場合がある。
【0027】
つまり、搬送機構40によって移動されるカバー30は、入口54から凹部51内に送り込まれる。さらに、凹部51内に送り込まれたカバー30は、凹部51を通過し、出口55から天板10の表面11上に送り出される。カバー30は、凹部51を通過する過程で、凹部内面51aと紫外線ランプ52との間を通過する。
【0028】
紫外線ランプ52は、ガラス管やガラス管の両端に設けられた電極および口金などを有し、蛍光灯と類似の外形を有する。ガラス管には微量の水銀と希ガスが封入されており、ガラス管の両端に設けられている電極に電圧が印加されると、所定波長の紫外線を放出する。本実施形態の紫外線ランプ52は、波長が260nm前後の紫外線を全方向(360°)に放出する。
【0029】
よって、カバー30は、殺菌処理部50を通過することによって殺菌される。既述のとおり、搬送機構40によって移動されるカバー30は、その移動過程で凹部内面51aと紫外線ランプ52との間を通過する。このとき、カバー30の表面に紫外線ランプ52から放出される紫外線が照射され、カバー30の表面が殺菌される。
【0030】
ここで、現在知られているウイルスの99.9%は、6.0~8.0mW・sec/cm2の紫外線照射によって死滅すると言われている。紫外線照射量(mW・sec/cm2)は、紫外線照度(mW/cm2)と照射時間(sec)との積である。そこで、本実施形態では、カバー30が凹部51を通過する間に当該カバー30に照射される紫外線の量が6.0~8.0mW・sec/cm2以上となるように、紫外線ランプ52の紫外線照度やカバー30の移動速度が設定されている。
【0031】
尚、紫外線ランプ52からは全方向に向かって紫外線が放出されるが、紫外線ランプ52は蓋53によって覆われている。よって、テーブル1Aを利用している人が紫外線ランプ52を直視することはない。紫外線ランプ52の直視を防止する観点からは、入口54および出口55の幅は、カバー30の出入りを阻害しない範囲内でなるべく狭くすることが好ましい。
【0032】
本実施形態に係るテーブル1Aは以上の構成を有する。したがって、当該テーブル1Aを使用した後にボタン43を1回押すだけで、それまで天板10の表面11を覆っていたカバー30の一部(使用済みの領域)に代わって、カバー30の他の一部(未使用かつ殺菌済みの領域)が天板10上に送り出され、天板10の表面11が覆われる。よって、テーブル1Aの利用者が変わる度に天板10にアルコール溶液を吹きかけたり、天板10を拭いたりする手間や時間が省かれる。
【0033】
尚、図示は省略されているが、テーブル1Aには、外部電源(コンセント)に接続されるプラグを備える電源コードが設けられている。さらに、電源コードを介して供給される電力によって搬送機構40を作動させる電源回路や制御回路、紫外線ランプ52を点灯させるための点灯回路なども設けられている。
【0034】
(第2実施形態)
次に、本発明が適用された卓の他の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。もっとも、本実施形態に係る卓は、図1図3に示されているテーブル1Aと同一の基本構成を有するテーブルである。そこで、図1図3に示されているテーブル1Aと共通の構成については説明を省略し、テーブル1Aとの相違点についてのみ説明する。
【0035】
図4に示されるように、本実施形態に係るテーブル1Bの殺菌処理部50は、天板10に設けられた凹部51と、凹部51に収容された殺菌液保持体62と、を含んでいる。殺菌液保持体62には、殺菌液(本実施形態では、アルコール溶液(エタノール溶液))が含侵されている。
【0036】
搬送機構40によって移動されるカバー30は、その移動過程で凹部内面51aと殺菌液保持体62との間を殺菌液保持体62に接触しながら通過して天板10の表面11上に送り出される。このとき、カバー30の表面は、殺菌液保持体62に含侵されている殺菌液によって殺菌される。
【0037】
本実施形態における殺菌液保持体62は、スポンジロールである。もっとも、殺菌液保持体62はスポンジロールに限られない。殺菌液保持体62は、例えば、心材に巻き付けられた布や多孔質ローラなどであってもよい。
【0038】
本実施形態では、紫外線ランプ52の直視を防止する目的で蓋53(図2)を設ける必要はない。もっとも、見た目の向上や殺菌液の蒸発を抑制するなどの目的で蓋53を設けてもよい。
【0039】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、第1実施形態におけるカバー30は、紫外線ランプ52に接触しながら凹部51内を移動した(図2参照)。しかし、カバー30を紫外線ランプ52から僅かに離間させるガイドローラなどを凹部51内に設置してもよい。これにより、カバー30の移動がさらに円滑になったり、モータ41(図3)の消費電力が低減されたりすることが期待できる。
【0040】
図3に示されている2つのボタン43のいずれか一方を省略してもよく、図示されている位置とは異なる位置にボタン43を配置したり、追加したりしてもよい。また、1つのモータ41で2つ以上のゴムローラ42を回転駆動するようにしてもよい。さらに、モータ41とゴムローラ42との間に減速機構を設けてもよい。
【0041】
天板10の寸法や形状は、必要に応じて適宜変更することができる。また、天板10の寸法や形状の変更に応じてカバー30の寸法なども適宜変更することができる。さらに、脚20の本数や長さも必要に応じて適宜変更することができる。
【0042】
本発明は、机や作業台などのテーブル以外の各種の卓に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1A,1B:テーブル、10:天板、11:表面(おもてめん)、12 :裏面(うらめん)、13:長側面、14:短側面、20:脚、30:カバー、40:搬送機構、41:モータ、42:ゴムローラ、43:ボタン、50:殺菌処理部、51:凹部、51a:内面(凹部内面)、52:紫外線ランプ、53:蓋、54:第1の隙間(入口)、55:第2の隙間(出口)、62:殺菌液保持体
図1
図2
図3
図4