(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/291 20210101AFI20240531BHJP
H01M 50/264 20210101ALI20240531BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20240531BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240531BHJP
H01M 10/6562 20140101ALI20240531BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240531BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20240531BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20240531BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20240531BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20240531BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240531BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20240531BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240531BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240531BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/264
H01M50/293
H01M50/55 101
H01M10/6562
H01M10/613
H01M10/647
H01M50/262 P
H01M50/262 E
H01M50/588
H01M50/593
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/262 M
H01M10/6556
H01M50/209
(21)【出願番号】P 2021207169
(22)【出願日】2021-12-21
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】川崎 永士
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-099650(JP,A)
【文献】特開2019-032997(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021779(WO,A1)
【文献】特開2014-035970(JP,A)
【文献】特開2012-123905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M20/10,50/20、50/50
H01M10/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に配列された複数の電池セルと、
前記複数の電池セルの間に設けられたセパレータと、
前記複数の電池セルを前記第1の方向に拘束する拘束部材とを備え、
前記複数の電池セルは、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って並ぶように設けられた2つの電極端子と、前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向に沿って対向する上面および下面を有する筐体とを各々含み、前記2つの電極端子は前記筐体の前記上面上に設けられ、
前記セパレータから前記第2の方向に沿って前記複数の電池セルの反対側に突出する突出部が形成され、
前記拘束部材は、前記第1の方向に延びるバインドバーと、前記バインドバーに対して前記複数の電池セル側に位置し、前記第3の方向に沿って離間する第1の位置および第2の位置の間にエア流路を形成するように前記第1の位置および前記第2の位置において前記セパレータに当接する当接部材とを含み、
前記第1の位置は前記第2の位置に対して前記筐体の前記上面に近い側に位置し、
前記突出部は、前記第1の位置および前記第2の位置のうち前記第2の位置にのみ配置され、前記第2の位置において前記当接部材に干渉し、前記当接部材を圧縮変形させるように設けられている、電池モジュール。
【請求項2】
前記突出部は前記セパレータと一体に形成される、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記当接部材は吸水機能を有する、請求項1または請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記筐体は、電極体を収容するケース本体と、前記ケース本体の開口を封止する封口板とを含み、
前記第1の位置は、前記ケース本体に対する前記封口板の接合部の近傍に位置し、
前記第2の位置は、前記筐体の前記下面の近傍に位置する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記当接部材は絶縁性樹脂からなる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記突出部は電気的絶縁性を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルとセパレータとを積層し、拘束部材によって積層方向の拘束を行うことによりモジュール化した電池モジュールが従来から知られている。従来の電池モジュールの構造は、国際公開2018/042763号(特許文献1)、特開2015-084331号公報(特許文献2)、特開2012-123905号公報(特許文献3)、国際公開2019/031169号(特許文献4)、特開2011-023179号公報(特許文献5)、特開2021-026875号公報(特許文献6)、特開2012-014962号公報(特許文献7)などに示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2018/042763号
【文献】特開2015-084331号公報
【文献】特開2012-123905号公報
【文献】国際公開2019/031169号
【文献】特開2011-023179号公報
【文献】特開2021-026875号公報
【文献】特開2012-014962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池モジュールにおける複数の電池セルは、バスバーまたは総端子に接続される電極端子を各々有する。電極端子は各々電位を有する。他方、複数の電池セルを拘束する拘束部材は接地電位となる。したがって、電池セルの電極端子と拘束部材との間には電位差が存在し、両者を互いに絶縁することが求められる。
【0005】
結露などが生じた場合でも、電極端子と拘束部材との間の絶縁性を安定して確保することが求められる。従来の電池モジュールは、かかる課題に対処し得る必ずしも十分な構成を有していない。
【0006】
本技術の目的は、安定した絶縁性を確保可能な電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術に係る電池モジュールは、第1の方向に配列された複数の電池セルと、複数の電池セルの間に設けられたセパレータと、複数の電池セルを第1の方向に拘束する拘束部材とを備える。複数の電池セルは、第1の方向に直交する第2の方向に沿って並ぶように設けられた2つの電極端子と、第1の方向および第2の方向に直交する第3の方向に沿って対向する上面および下面を有する筐体とを各々含む。2つの電極端子は筐体の上面上に設けられる。セパレータから第2の方向に沿って複数の電池セルの反対側に突出する突出部が形成される。拘束部材は、第1の方向に延びるバインドバーと、バインドバーに対して複数の電池セル側に位置し、第3の方向に沿って離間する第1の位置および第2の位置の間にエア流路を形成するように第1の位置および第2の位置においてセパレータに当接する当接部材とを含む。第1の位置は第2の位置に対して筐体の上面に近い側に位置する。突出部は、第1の位置および第2の位置のうち第2の位置にのみ配置され、第2の位置において当接部材に干渉し、当接部材を圧縮変形させるように設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本技術によれば、安定した絶縁性を確保可能な電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】電池モジュールに含まれる電池セルを示す斜視図である。
【
図3】電池モジュールに含まれる拘束部材の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0011】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0012】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0013】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0014】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池など他の電池を含み得る。
【0015】
図1は、電池モジュール1の斜視図である。
図1に示すように、電池モジュール1は、電池セル100と、セパレータ部材200とを含む。
【0016】
電池セル100は、角形の電池セルであって、Y軸方向(第1の方向)に沿って複数設けられる。セパレータ部材200は、複数の電池セル100の間に設けられる。セパレータ部材200は、隣接する電池セル100の意図しない電気的導通を防止する。セパレータ部材200は、隣接する電池セル100の電気的絶縁性を確保する。
【0017】
図2は、電池セル100を示す斜視図である。
図2に示すように、電池セル100は、角型形状を有する。電池セル100は、電極端子110と、筐体120と、ガス排出弁130とを有する。
【0018】
電極端子110は、筐体120上に形成されている。電極端子110は、Y軸方向(第1の方向)に直交するX軸方向(第2の方向)に沿って並ぶ正極端子111および負極端子112を有する。正極端子111および負極端子112は、X軸方向において、互いに離れて設けられている。
【0019】
筐体120は、直方体形状を有し、電池セル100の外観をなしている。筐体120は、図示しない電極体および電解液を収容するケース本体120Aと、ケース本体120Aの開口を封止する封口板120Bとを含む。封口板120Bは、溶接によりケース本体120Aに接合される。
【0020】
筐体120は、上面121と、下面122と、第1側面123と、第2側面124と、2つの第3側面125とを有する。
【0021】
上面121は、Y軸方向およびX軸方向に直交するZ軸方向(第3の方向)に直交する平面である。上面121には、電極端子110が配置されている。下面122は、Z軸方向に沿って上面121に対向している。
【0022】
第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に直交する平面からなる。第1側面123および第2側面124の各側面は、筐体120が有する複数の側面のうちで最も大きい面積を有する。第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に見て、矩形形状を有する。第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に見て、X軸方向が長手方向となり、Z軸方向が短手方向となる矩形形状を有する。
【0023】
複数の電池セル100は、Y軸方向に隣り合う電池セル100,100の間において、第1側面123どうし、第2側面124どうしが向かい合わせとなるように積層されている。これにより、複数の電池セル100が積層されるY軸方向において、正極端子111と負極端子112とが、交互に並んでいる。
【0024】
ガス排出弁130は、上面121に設けられている。ガス排出弁130は、電池セル100の温度が上昇し(熱暴走)、筐体120の内部で発生したガスにより筐体120の内圧が所定値以上となった場合に、そのガスを筐体120の外部に排出する。
【0025】
図3は、拘束部材400の分解斜視図である。
図3に示すように、電池モジュール1のY軸方向の両端にエンドプレート300が配置されている。エンドプレート300は、電池モジュール1を収納するケースなどの基台に固定される。
【0026】
拘束部材400は、2つのエンドプレート300を互いに接続する。複数の電池セル100、セパレータ部材200およびエンドプレート300の積層体に対してY軸方向の圧縮力を作用させた状態で拘束部材400をエンドプレート300に係合させ、その後に圧縮力を解放することにより、2つのエンドプレート300を接続する拘束部材400に引張力が働く。その反作用として、拘束部材400は、2つのエンドプレート300を互いに近づける方向に押圧する。
【0027】
拘束部材400は、Y軸方向に延びるバインドバー410と、バインドバー410に対して複数の電池セル側に位置する絶縁カバー420およびシール材430(当接部材)とを含む。
【0028】
バインドバー410は、Y軸方向の引張力を負担する。バインドバー410は、たとえば鉄などの金属により構成され得る。絶縁カバー420は、電池セル100とバインドバー410との電気的絶縁を確保するために設けられる。シール材430は、電池セル100とバインドバー410との間にエア流路を形成するために設けられる。
【0029】
なお、
図3においては、図示の便宜上、電池セル100およびエンドプレート300に対してX軸方向の片側にのみ拘束部材400を配置しているが、拘束部材400は、電池セル100およびエンドプレート300に対してX軸方向の両側に設けられる。
【0030】
図4は、
図3におけるIV-IV断面図である。
図4に示すように、セパレータ部材200は、X軸方向に沿って電池セル100の反対側に突出する突出部210を有する。突出部210は、セパレータ部材200と一体に形成されるものに限定されず、セパレータ部材200と別体に形成されたものであってもよい。突出部210は、シール材430よりも硬質の素材により構成される。突出部210は、絶縁性樹脂などにより構成することができ、好ましくはポリプロピレンなどにより構成され得る。
【0031】
シール材430は、絶縁性樹脂などにより構成され得る。シール材は、好ましくは発泡ウレタンなど、吸水機能を有する素材により構成され得る。シール材430が吸水機能を有することにより、結露発生時に電極端子110の近傍から結露水を効率よく除去することができる。
【0032】
シール材430は、Aの位置(第1の位置)およびBの位置(第2の位置)においてセパレータ部材200に当接する。これにより、Z軸方向に沿って離間するAの位置およびBの位置の間において、電池セル100と拘束部材400とに挟まれたエア流路を形成することができる。エア流路を流れるエアは、電池セル100の冷却に寄与する。
【0033】
図4に示すとおり、Aの位置は、Bの位置に対して筐体120の上面121に近い側に位置する。セパレータ部材200の突出部210は、Aの位置およびBの位置のうちBの位置にのみ配置される。Aの位置において、シール材430はセパレータ部材200により圧縮され得る。Bの位置においては、セパレータ部材200の突出部210がシール材430に干渉する。突出部210は、シール材430を圧縮変形させるように設けられている。したがって、シール材430は、Bの位置においてAの位置よりも強く圧縮されている。
【0034】
Aの位置は、筐体120の上面121の近傍、すなわちケース本体120Aに対する封口板120Bの接合部の近傍に位置する。Bの位置は、筐体120の下面122の近傍に位置する。より具体的には、Bの位置は、筐体120の下面122と隣接するR部の近傍に位置する。ここでいう「近傍」は、当該位置から10mm以内程度の範囲を意味する。
【0035】
電池モジュール1において、電池セル100の電極端子110と拘束部材400のバインドバー410との間には電位差が存在する。両者を互いに絶縁するため、電極端子110とバインドバー410との間の意図しない導電経路の形成を抑制することが求められる。
【0036】
電池セル100の筐体120に結露水が付着したとき、筐体120の上面121側に多くの結露水が残されると、その結露水が電極端子110とバインドバー410との間の意図しない導電経路の形成要因となり得る。
【0037】
これに対し、本実施の形態に係る電池モジュール1においては、Z軸方向の上側に位置するAの位置においてセパレータ部材200に突出部210が設けられていないため、上面121側の結露水が第3側面125を伝って下面122側に流れ落ちやすくなる。この結果、上面121近くに多くの結露水が残ることが抑制され、電極端子110とバインドバー410との間の意図しない導電経路の形成が抑制される。
【0038】
Z軸方向の下側に位置するBの位置においては、セパレータ部材200に突出部210が形成され、シール材430がより強く圧縮されている。これにより、下側のシール材430からのエア漏れがより効果的に抑制され、電池モジュール1の冷却効率を向上させることができる。他方、Bの位置においては、第3側面125を伝って流れ落ちてきた結露水が溜まりやすい状況にあるが、Bの位置は電極端子110から遠いため、この位置に結露水が比較的多く残っても、電極端子110とバインドバー410との間の意図しない導電経路の形成は依然として抑制される。
【0039】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0040】
1 電池モジュール、100 電池セル、110 電極端子、111 正極端子、112 負極端子、120 筐体、120A ケース本体、120B 封口板、121 上面、122 下面、123 第1側面、124 第2側面、125 第3側面、130 ガス排出弁、200 セパレータ部材、210 突出部、300 エンドプレート、400 拘束部材、410 バインドバー、420 絶縁カバー、430 シール材。