(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】動脈閉塞の遠位側の組織に灌流するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20240531BHJP
【FI】
A61M25/10
(21)【出願番号】P 2021502726
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 US2019024773
(87)【国際公開番号】W WO2019191551
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-02
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520376007
【氏名又は名称】トランスルミナル、システムズ、リミテッド、ライアビリティー、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】TRANSLUMINAL SYSTEMS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、パイル-スペルマン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ、チェ
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-501792(JP,A)
【文献】特表2018-503442(JP,A)
【文献】特表2009-521261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0333685(US,A1)
【文献】特表2008-528129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量を自動調節する脳組織における閉塞の遠位側の血管を灌流するためのシステムであって、
挿入デバイスおよび流体リザーバに結合されたポンプであって、前記ポンプが、それらとともに前記流体リザーバ内に格納された注入剤を血管内の閉塞の遠位側にある前記挿入デバイスに供給するように動作可能である、ポンプと、
前記ポンプに動作可能に結合されたコントローラと、
前記コントローラに動作可能に結合され、
前記遠位側の前記血管内の流量と圧力とを測定可能な圧力および流量測定デバイスを
少なくとも有するセンサを含み、前記コントローラが、それに関連付けられたメモリを有し、前記メモリが、命令セットを記憶し、前記命令セットが、実行されるときに、前記コントローラ
に所定のアルゴリズムを使用させて、
所定の注入パラメータを有する前記注入剤を所定の初期圧力範囲で注入させ、
前記センサからのフィードバックに基づいて、前記血管内における前記注入剤の単位時間あたりの流量注入体積対圧力を判定し、前記灌流される脳組織の体積を計算することと、
前記灌流される脳組織の体積と、前記初期圧力範囲での前記注入剤の流量のデータとに基づき、前記遠位側の初期スロープ、平坦域、および最終傾斜によって特徴付けられる前記脳組織の単位体積及び単位時間あたりの流量の圧力に対する変化を示す自動調節曲線、及び虚血閾値を計算することと、
前記センサからのリアルタイムのフィードバックに基づいて、
前記遠位側の前記脳組織の単位体積及び単位時間あたりの流量を前記自動調節曲線の傾斜、平坦域で前記ポンプを制御し、前記虚血閾値を満たすように制御することと、を行わせ、
前記注入パラメータは、注入粘度、前記脳組織の単位体積及び単位時間あたりのO
2
、CO
2
含有量、および温度のうちの、少なくとも前記脳組織の単位体積及び単位時間あたりのO
2
含有量を含み、
前記虚血閾値は、前記脳組織の単位体積及び単位時間あたりの十分に酸素化された所定量の血液が有するO
2
含有量を理想化閾値として、
前記虚血閾値は、前記理想化閾値と、前記脳組織の体積と前記脳組織の単位体積との比と、を乗算した値であり、前記虚血閾値を超えるように、前記注入パラメータを有する前記注入剤の流量が制御される、システム。
【請求項2】
前記挿入デバイスが、カテーテルである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記センサは、前記カテーテルの遠位端で前記注入剤の温度を測定するための少なくとも1つの温度センサを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記センサは、前記カテーテルの遠位端で注入剤流量を測定するための少なくとも1つのセンサを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムの動作パラメータに関してユーザ入力を受信するための入力デバイスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
出力デバイスを含み、前記コントローラが、
前記脳組織の体積、及び前記注入パラメータ
に基づき計算した組織パラメータを含むグラフィックユーザインターフェースを前記出力デバイスに表示するようにさらに動作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラが、前記挿入デバイス、前記ポンプ、または前記流体リザーバの遠位端で測定される、注入温度、注入圧力、注入流量、および注入[O
2]のうちの少なくとも1つを前記出力デバイスで表示するようにさらに動作可能である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
流量を自動調節する脳組織における閉塞の遠位側の血管を灌流するためのシステムであって、
カテーテルおよび流体リザーバに結合されたポンプであって、前記ポンプが、それらとともに前記流体リザーバに格納された注入剤を、血管内の閉塞の遠位側の前記カテーテルに供給するように動作可能である、ポンプと、
前記ポンプに動作可能に結合されたコントローラと、
前記コントローラに動作可能に結合され、
前記遠位側の前記血管内の流量と圧力とを測定可能な圧力および流量測定デバイスを
少なくとも有するセンサを含み、前記コントローラが、それに関連付けられたメモリを有し、前記メモリが、命令セットを記憶し、前記命令セットが、実行されるときに、前記コントローラ
に所定のアルゴリズムを使用させて、
所定の注入パラメータを有する前記注入剤を所定の初期圧力範囲で増加させ、
前記センサからのフィードバックに基づいて、前記血管内における前記注入剤の単位時間あたりの流量注入体積対圧力を判定し、前記灌流される脳組織の体積を計算することと、
前記灌流される脳組織の体積と、前記初期圧力範囲での前記注入剤の流量のデータに基づき、前記遠位側の初期スロープ、平坦域、および最終傾斜によって特徴付けられる前記脳組織の単位体積及び単位時間あたりの流量の圧力に対する変化を示す自動調節曲線、及び虚血閾値を計算することと、
前記センサからのリアルタイムのフィードバックに基づいて、
前記遠位側の前記脳組織の単位体積及び単位時間あたりの流量を前記自動調節曲線の傾斜、平坦域で前記ポンプを制御し、前記虚血閾値を満たすように制御することと、を行わせ、
前記注入パラメータは、注入粘度、前記脳組織の単位体積及び単位時間あたりのO
2
、CO
2
含有量、および温度のうちの、少なくとも前記脳組織の単位体積及び単位時間あたりのO
2
含有量を含み、
前記虚血閾値は、前記脳組織の単位体積及び単位時間あたりの十分に酸素化された所定量の血液が有するO
2
含有量を理想化閾値として、
前記虚血閾値は、前記理想化閾値と、前記脳組織の体積と前記脳組織の単位体積との比と、を乗算した値であり、前記虚血閾値を超えるように、前記注入パラメータを有する前記注入剤の流量が制御される、システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、閉塞された動脈の遠位側の組織を灌流するためのシステムおよび対応する方法に関し、より具体的には、灌流される組織および灌流流体の特定の特性に特に注意を払って、そのようなシステムに含まれるセンサ、エフェクタ、コントローラおよびプロセスに基づいて診断情報を提供するカテーテルベースのシステムに関する。
【0002】
本出願は、閉塞された動脈に対して遠位の組織を灌流するためのシステムおよび対応する方法に関し、より具体的には、灌流される組織および灌流流体の特定の特性に特に注意を払って、そのようなシステムに含まれるセンサ、エフェクタ、コントローラおよびプロセスに基づいて診断情報を提供するカテーテルベースのシステムに関する。
【0003】
血管閉塞後の組織状態を評価するための方法が存在する。例えば、血管造影評価、一時的な試験閉塞および全身性低血圧を用いた誘発試験、断端圧、および放射性核種イメージングは、治療閉鎖前の側副血行路の適切性を評価するために使用されている。部分的に閉塞された血管を灌流し、生理学的パラメータを測定することも行われている。圧力勾配、流量勾配、(血流予備量比、FFR)も使用して、狭く閉塞されていない血管の選択的血行再建の必要性を判定する。FFRは概して、冠動脈における最大達成可能な血流の全心臓サイクル圧力由来指標を指し、狭窄は、その動脈が正常である場合、最大達成可能な血流の比率として表される。
【0004】
しかしながら、上記の評価のすべては、粘度、[O2]、組織の体積、または自動調節の状態について調整することなく、圧力、流量、抵抗相互作用の線形予測を伴う静的測定に基づく指標である。加えて、これらの測定値を取得するためにしばしば使用される薬理学的操作は、生理学的応答(アデノシン、ジヒドロピリジンなど)の範囲外にある。これらの前提は、脳、腎臓、および心臓などの自動調節を有する組織、まさに情報が最も重要な組織には当てはまらない。加えて、これらの組織の各々の中で、年齢、慢性高血圧、または組織圧力などの変化は、酸化ストレスに大いに影響を及ぼす。ただし、上記の方法は大まかな推定値のみを提供し、最良の臨床条件下での結果の予測にのみ有用である。
【0005】
したがって、追加の外傷を加えることなく、例えば、血管領域内の正常な組織、損傷した組織、および死んだ組織を含む組織救出のための情報をリアルタイムで取得するか、そうでなければ導出する、閉塞の遠位側の組織に灌流するためのシステムが必要である。このような作用可能な生理学的情報は、虚血および再灌流に関連する虚血性損傷および二次的損傷に組織がよりよく耐えるように、注入および/または再灌流をより安全かつより効果的にする、および/または虚血耐性を誘導することを提供する。
【発明の概要】
【0006】
本出願は、動脈閉塞の遠位側の安全かつ効果的な灌流を可能にするシステムおよび対応する方法を開示する。これらのシステムは、現在特定されているこの手順の多くの限界に対処する。灌流は、参照により本明細書に組み込まれる、「System and Method for Intravasucular Cooling」と題する米国特許第8,343,097号、ならびに「Devices for Estimating Regional Metabolic Rate of Organs Based on Heat Generation and for Estimating Regional Blood Flow(s)for the Volume(s)of Tissue Perfused」と題する米国特許出願公開第20160206816号に開示されているシステムを含む様々なシステムで達成され得る。少なくとも1つの実施形態による本発明のシステムは、センサが取り付けられたまたは関連付けられたセンサを有するカテーテルなどの流体導管、コントローラ、ポンプ、および流体源を含み、それらが通信可能に相互接続され、プログラムされて、センサから収集されたデータおよびオペレータまたはルックアップテーブルからの入力に基づいてポンプを制御するための方法を行うか、および/またはアルゴリズムを実行する。デバイスは、灌流される組織の灌流液および組織灌流パラメータを判定し、これらのパラメータ内で灌流することによってこれを行う。これらのパラメータは、以下を含み得る。A.灌流液パラメータ:1)粘度、2)温度、3)[O2]、4)[CO2]、および、5)他の血管活性物質、ならびにB.組織パラメータ:1)組織曲線の灌流体積/圧力/体積、および2)自動調節の推定形状、または不良自動調節曲線。
【0007】
臨床的に作用可能な情報および治療操作は、これらのシステムおよび方法によって取得されてもよく、そうでなければ導出されてもよい。このような情報は以下を含み得る。1)組織自動調節の機能状態、2)灌流時の組織量、3)虚血または圧外傷閾値を超えないようにするために必要な血圧パラメータ、4)O2および必要な流量要件。加えて、血管コンプライアンスおよび側副循環状態を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本明細書に開示されるシステムの少なくとも1つの実施形態による、閉塞の遠位側の組織を灌流するためのシステムの図である。
【
図2】本明細書に開示される方法の少なくとも1つの実施形態による、閉塞の遠位側の組織を灌流するためのシステム動作によって行われる方法のフローチャートである。
【
図3】異なる条件下での脳組織についてのCBFの自動調節(100cc脳体積に対する圧力/灌流)曲線をまとめたチャートである。
【
図4】異なる実験条件下での腎臓についての腎臓実験データ、自動圧力灌流曲線を示すチャートである。
【
図5A1-5E3】様々な状況および条件下での脳曲線についての理想化された曲線灌流圧力(P、mmHg)対流量(Q、cc/分)を示すチャートである。
【
図6】一定の流速での経時的な安全な流量および圧力を示すチャートである。
【
図7】バルク流圧力/時間を示し、非表示の閾値を示すチャートである。
【
図8】バルク流、すなわち圧力/時間、危険な境界条件を超えた場合のいくつかの予想される結果を示すチャートである。
【
図9】バルク流、すなわち圧力/時間、安全な一定流、
図6と同様に、開示されたデバイスを使用して生理学的閾値が所定の位置にあることを示すチャートである。
【
図10】バルク流、すなわち圧力/時間、安全なパルス状流、開示されたデバイスを使用して生理学的閾値が所定の位置にあることを示すチャートである。
【
図11】バルク流、圧力/時間、危険な初期流を示すチャートである。たとえ単一の流体の短いパルスでも、限界を超えて血管を破裂させる可能性があることを示す。これが、閉塞の遠位側の注射が臨床文献で注意喚起される理由である。
【
図12】バルク流、すなわち圧力/時間、危険な一定流を示すチャートである。血管が直ちに破裂しなくても、時間の経過とともに流量が規定時間を超え、危険な閾値を超える可能性がある。
【
図13】バルク流、すなわち圧力/時間、危険なパルス状流を示すチャートである。血管が直ちに破裂しなくても、時間の経過とともに流量が規定時間を超え、危険な閾値を超える可能性がある。
【
図14】流量圧力/時間を示し、閾値を示すチャートである。
【
図15】流量圧力/時間を示し、閾値を示すチャートである。
【
図16】流量圧力/時間を示し、閾値を示すチャートである。
【
図17】流量圧力/時間を示し、閾値を示すチャートである。
【
図18】流量圧力/時間を示し、閾値を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
閉塞した血管の遠位側に組織を灌流するとき、または血管が意図的に閉塞されている場合、動作可能な情報は制限される。閉塞を有する患者では、閉塞の遠位側の灌流は、局所的な低体温、無細胞再灌流、ならびに超選択的薬物および溶解ガス治療などの幅広い潜在的な強力な治療介入を提供するだろう。このような操作の安全性および有効性に関する不確実性のため、閉塞の遠位側の灌流は制限されている。動作上、閉塞の遠位側の選択的灌流には、適切な圧力、流速、灌流された組織量、流体の粘度などの重要なリアルタイム情報が必要となるであろう。[O2]、組織温度、および組織の自動調節状態。そのような情報は、血管の破裂、悪性浮腫、灌流不足、灌流過剰などの問題を回避するために望ましい。
【0010】
正常な組織には、自立した自動調節があり、圧外傷からその組織を保護し、適切な血流を確保する。一方、死んだ組織は、圧関連外傷または流量関連外傷が出血および細胞毒性浮腫を発症する可能性が高いが、虚血損傷した組織は曲線の両端に極めて圧力が依存しており、十分な血が得られないか、または損傷性のある充血となる。加えて、虚血後の充血、および虚血再灌流損傷が顕現する可能性がある。粘度およびpO2、CO2などの血液灌流液特性、ならびに有効な組織体積、組織代謝状態および温度は、すべて、効果的かつ安全な灌流に必要な体積および圧力に大いに影響を与える。これまで、この点で専門家を指導するために利用可能な情報がほとんどない。したがって、本明細書に開示されるシステムは、概して、好ましくはリアルタイムで、血管閉塞の遠位側の組織を灌流するためのそのような情報を提供する。
【0011】
加えて、虚血によりよく耐えるように組織をコンディショニングすることができる。コンディショニングは、低体温を介した組織保護と同様に、内因性特性を有する強力な組織保護方法とすることができる。コンディショニングは、虚血事象の前(事前コンディショニング)、最中(イントラまたはパーコンディショニング)、および後(事後コンディショニング)に行われてもよい。イントラ/パーコンディショニングおよび事後コンディショニングのみが臨床的に実用的な方法であるが、イントラ/パーコンディショニングが事後コンディショニングよりも効果的である。コンディショニングは、組織を虚血に繰り返しさらして、有害な刺激の間に定期的に灌流することによって行われてもよい。これまでに、虚血/再灌流および関連する損傷の急性リスクにある組織にコンディショニングを効果的かつ実用的に適用するためのデバイスまたはシステムは存在していない。したがって、本明細書に開示される本発明のシステムは、システムによって取得または導出されたリアルタイム情報に基づいて、好ましくは自動または半自動で、組織コンディショニングを提供するようにさらに動作可能であってもよい。
【0012】
臓器の灌流を効果的に引き継ぐ灌流組織の同様の問題は、臓器移植輸送、および心肺バイパス回路に直面しており、動物および臨床試験からのガイドラインで対処されている。したがって、本出願の実施形態は、脳および脳損傷に関連して考察され得るが、これらのシステムは、他の臓器に関連して使用され得ることが理解され、したがって、この点に限定されない。
【0013】
図1を参照すると、少なくとも1つの実施形態による閉塞の遠位側の組織を灌流するためのシステムの図が示される。カテーテル101は血管内に配置され、カテーテル101の先端は、閉塞102の遠位側にナビゲートされる。カテーテル100は、データ経路および流体経路を有する。このデータ経路のセンサ104は、カテーテルの遠位端にある場合もあれば、ポンプ/ポンプセンサ106/108に近位にある場合もある。センサ104/108は、圧力、流速を含んでもよく、好ましくはリアルタイムで組織および/またはインサイチュの灌流液の他の特徴を捕捉するための[О
2]、温度、およびセンサを含み得る。システムは、本明細書で考察されるように、灌流に所望されるデータを収集し、ポンプ106を制御するアクチュエータを動作させ、本明細書でも考察されるように、好ましくはリアルタイムで所望の機能を行うようシステムを動作可能にするアルゴリズムを実行するように動作可能なソフトウェアでプログラムされたコントローラ100をさらに含んでもよい。コントローラは、ルックアップテーブルから、またはシステムのオペレータからの入力から特定の入力パラメータを計算してもよい。システムは、スイッチ、ロータリーダイヤル、キーパッドまたはキーボード、タッチスクリーンなどの入力デバイス112、およびLCDモニタ、プリンタなど、情報を表示するための出力デバイス114をさらに含む。
【0014】
システムは、ユーザによって選択されるとシステムによって実装され得る、温度、流速、時間などに関する1つ以上の所定の命令セットをコンピュータメモリデバイスにさらに記憶してもよい。本明細書で考察されるように、命令セットは、システムの動作パラメータ、例えば、注入剤および/または目的部位を段階的に冷却および聴取し、注入剤および/または目的部位の温度を維持し、圧力および流速、ならびに本明細書で考察される他の変数またはパラメータのいずれかを制御するためのシーケンスおよびタイミングを含んでもよい。メモリは、さらに、例えば、データベースに、システムによって収集および/または推定されたデータを記憶してもよい。また見ることができるように、システムは、関連するセンサ120とともに注入剤および好ましくは流体状態118を格納するためのリザーバ116を含む。
【0015】
図2は、灌流のための注入流体のパラメータの判定に関するシステム動作を示すフローチャートである。流量特性に対する予想される効果は、計算され得、閾値/アラーム限界は、システムによって判定され得る。一般に、カテーテルが閉塞の遠位側に配置されると、断端圧が判定され得、システムセンサからのフィードバックに基づいて注入が開始され、段階的に増加し得る。次に、本明細書で考察されるように、埋め込みプロセスを用いて、組織曲線の生理学的に意味のある注入体積/圧力/分/体積を計算するために使用される、注入体積/圧力/分曲線が判定され得る。次に、コントローラは、考慮されているどの操作の間にも、安全な灌流を供給するようにポンプを制御し得る。
【0016】
プロセスは、一般に、ユーザからの入力か、または注入剤粘度(インサイチュで、またはルックアップテーブル、注入剤の温度、および注入剤の[O2]を使用して判定されてもよい)のような、センサを介してシステムによって取得された情報に基づいて開始する。その後、カテーテルは、閉塞部の遠位側に導入され得、次に、システムは、断端圧などのパラメータを測定し得る。次に、注入は、断端圧から5%増分で計算および適用される流量および圧力で開始し得る。次に、センサのフィードバックに基づいて、組織体積が計算され得、自動調節変曲点が推定され得る。コンプライアンスおよびQ/Pは、治療を通じて定期的に試験され、必要に応じて調整され得る。
【0017】
図3は、異なる条件下での脳組織に対するCBF(100cc脳体積に対する圧力/灌流)曲線の自動調節をまとめたチャートである。この曲線は全血注入のためのものであり、[O
2]、[CO
2]、機能するおよび機能しない自動調節に変化があるが、粘度または温度の影響を追及せず、灌流される脳組織の100ccについて正規化される。
【0018】
図4は、腎臓実験からのデータ、より具体的には、異なる実験条件下での腎臓の自動圧力灌流曲線を示す。組織および注入条件に関して形状、傾斜、インターセプトが変化することに留意されたい。より具体的には、チャートは、高血圧における腎血管病床における圧力流量関係のスペクトルを示す。パターンAは、合併症のない高血圧において観察される正常な腎臓自動調節応答を表し、自動調節範囲内のBP変化にもかかわらず、腎血流(RBF)の一定性を示す。パターンBは、周囲の腎血管拡張を示しているが、一側性腎摘出後に自動調節が維持されていることを示す。パターンCは、5/6腎アブレーションモデルにおいて観察されるRBF自動調節応答不全を示す。パターンDは、ジヒドロピリジンCCBで処置した5/6の腎臓切除ラットにおける腎臓自動調節の完全な喪失を示す。RBFは従属変数として示されているが、自動調節抵抗の変化が糸球体血管系に限定されていることを考慮すると、PGCに関しても同じ関係が取得されることが予想される。
【0019】
図5A1~5E3は、様々な状況および条件下での脳曲線に対する灌流圧力(P、mmHg)対流量(Q、cc/分)の理想化された曲線を示す。探索される条件には、a)脳体積の変化、b)脳温度、c)完全で自動調節がない脳、ならびに灌流液が、d)酸素化された血液、または生理食塩水、およびe)脱酸素生理食塩水が含まれる。組織灌流が複合体であることが直ちに理解される。適切な即時組織[O
2]を確保し、バロ/充血性外傷から保護するための血管抵抗性。
【0020】
図5A1~5A3は、完全な自動調節を有し、正常なヘマトクリットおよび正常な温度で正常に酸素化された血液で灌流された組織に関して、所与の圧力での流量に対する異なる組織質量の影響を示す。
【0021】
図5A1のプロットは、脳の100ccに正規化される。
【0022】
【0023】
【0024】
図5B1~5B3は、完全な自動調節を有し、十分に酸素化された生理食塩水で灌流された組織に関して、所与の圧力での流量に対する異なる体積の影響を示す理想化曲線である。十分に酸素化された生理食塩水とは、概して、組織代謝のために十分なO
2を搬送するもの、またはおよそ4cc/100ccを指す。低粘度生理食塩水は、同じ量の液体を灌流するための圧力が著しく低いことに留意されたい。
【0025】
図5B1のプロットは、脳の100ccに正規化される。
【0026】
【0027】
【0028】
図5C1~5C3は、完全な自動調節を有し、脱酸素生理食塩水で灌流された組織に関して、所与の圧力での流量に対する異なる体積の影響を示す理想化曲線である。低粘度の生理食塩水は、同じ量の流体を灌流するための圧力が著しく少なく、脱酸素液体では、組織は自動調節なしの状況に類似した作用をすることに留意されたい。
【0029】
図5C1のプロットは、脳の100ccに正規化される。
【0030】
【0031】
【0032】
図5D1~5D3は、完全な自動調節を有する組織、および各100ccの脳体積で完全な自動調節を有する脳/灌流液温度の効果を示す理想化曲線である。温度が低下すると、脳代謝速度(CMR)が低下し、血流が低下することに留意されたい。
【0033】
図5D1では、脳/灌流液温度33℃で、十分に酸素化された血液で灌流。
【0034】
図5D2では、脳/灌流液温度26℃で、十分に酸素化された血液で灌流。
【0035】
図5D3では、脳/灌流液温度33℃で、十分に酸素化された生理食塩水で灌流。
【0036】
図5E1~5E3は、5A1~5A3と類似し、理想化虚血閾値および充血性閾値を追加している。プロットは、完全な自動調節を有し、正常なヘマトクリットおよび正常な温度で正常に酸素化された血液で灌流された組織に関して、所与の圧力での流量に対する異なる組織質量の影響を示す。虚血閾値は、20ccの十分に酸素化された血液/100ccの脳/分に等しいとして理想化される。充血性閾値は2種類あり、正常値の1.5倍より高い血圧からの高血圧、および高いレイノルズ数を有する流量からの高血流血管障害である。
【0037】
図5B1~5B3に示されるように、完全な自動調節を有し、十分に酸素化された生理食塩水で灌流される組織に十分な酸素を送達することが可能である。虚血閾値は、20ccの十分に酸素化された血液/100ccの脳/分と等しいとして理想化される。これらのプロットは、
図5E1~5E3に示されるプロットと同様である。実際に抽出された酸素の量はわずか4ccであり、高気圧法を使用して溶解酸素として送達することもできる。充血性閾値には2種類あり、正常値の1.5倍より高い血圧からの高血圧、および高いレイノルズ数を有する流量からの高血流血管障害である。
【0038】
図6~18は、バルク流対圧力、および組織の単位体積当たりの流量対使用される曲線シナリオを示す。これらのバルク流グラフの単位は流量のcc/分であり、重要な生理学的測定、脳血流などで使用されるものとは異なり、流量のcc/分/組織の100ccであることに留意されたい。
【0039】
図6は、一定の流速での時間の経時的な安全な流量および圧力を示す。
【0040】
図7は、バルク流、圧力/時間を示し、非表示の閾値を示す。閾値の特定の値は、灌流される組織の量、[O
2]などに依存する。
【0041】
図8は、バルク流、すなわち圧力/時間、危険な境界条件を超えた場合のいくつかの予想される結果。
【0042】
図9は、バルク流、すなわち圧力/時間、安全な一定流、
図6と同様に、開示されたデバイスを使用して生理学的閾値が所定の位置にあることを示す。
【0043】
図10は、バルク流、すなわち圧力/時間、安全なパルス状流を示し、開示されたデバイスを使用して生理学的閾値が所定の位置にある。
【0044】
図11は、バルク流、すなわち圧力/時間、危険な初期流を示すチャートである。たとえ単一の流体の短いパルスでも、限界を超えて血管を破裂させる可能性があることを示す。これが、閉塞の遠位側の注射が臨床文献で注意喚起される理由を説明している。
【0045】
図12は、バルク流、すなわち圧力/時間、危険な一定流を示すチャートである。血管が直ちに破裂しなくても、時間の経過とともに流量が規定時間を超え、危険な閾値を超える可能性がある。
【0046】
図13は、バルク流、すなわち圧力/時間、危険なパルス状流を示すチャートである。血管が直ちに破裂しなくても、時間の経過とともに流量が規定時間を超え、危険な閾値を超える可能性がある。
【0047】
図14~15は、流量圧力/時間を示し、閾値を示している。導管および栄養管の凝集閾値を推定することができるが、
図14、損傷した栄養管において閾値がかなり異なる可能性が高いことに留意されたい。
【0048】
図1に戻って参照すると、本明細書に開示される少なくとも1つの実施形態によるシステムは、多数の構成要素、およびこのデバイスを使用するための方法からなる。システムコンポーネントは、一般に、
【0049】
1)動脈に配置またはナビゲートすることができ、システムによって制御された流量、圧力、および他の変数で標的組織に灌流液を供給する医療カテーテル。血管はすでに閉塞しており、その場合、カテーテルは閉塞の遠位側に配置される。血管が閉塞されていない状況では、標的血管を閉塞するのに十分な遠位先端部の拡大が想定される。冷たい流体が投与される状況では、断熱材および温度測定センサが組み込まれるであろう。一実施形態では、カテーテルは、5フレンチの140ccの長さのエア断熱された単一の高圧耐性管腔カテーテルであり、ソフトテーパー先端のモノレールガイドカテーテルは、大腿骨アプローチから脳循環にガイドカテーテルを通して配置される。別の実施形態では、カテーテルは、5フレンチ、100ccの長さ、エア断熱された二重管腔、遠位バルーンカテーテルであり、ソフトテーパー先端のモノレールガイドカテーテルは、大腿骨アプローチから冠動脈循環にガイドカテーテル通して配置される。別の実施形態では、カテーテルは、7フレンチ、115ccの長さ、エア断熱された二重管腔、遠位バルーンカテーテルであり、ソフトテーパー先端のモノレールガイドカテーテルは、大腿骨アプローチから内頸動脈循環にガイドカテーテルを通して配置され、試験閉塞のため、および凝固抽出の間に使用される。
【0050】
2)センサは、好ましくはカテーテルの遠位端にあるほぼリアルタイムの圧力および流量測定デバイスを含む。これらは、カテーテルの遠位先端か、またはより近位、例えば、カテーテルハンドル内のいずれかであり得る。より近位に配置される場合、カテーテルの抵抗およびコンプライアンスの補正は、システムによって行われる計算に統合されなければならない。追加のセンサは、カテーテル内および/または流体リザーバ内の温度センサ、[O2]など、ならびに気泡検出器が含むことができる。一実施形態では、温度センサは、流体経路内の遠位先端に位置し、第2のものが流体リザーバ内にあり、圧力センサが、カテーテルが接するポンプシリンジ内にあり、カテーテルおよび接続チューブの抵抗に対する補正があり、サーボ機構が、注入される流体量を監視する。別の実施形態では、圧力、流体速度、および温度センサは、カテーテル内に遠位に埋め込まれる。コスト、サイズ、およびセンサ技術は、好ましい実施形態を判定するであろう。
【0051】
3)ポンプは、高精度のデジタル制御体積または圧力依存ポンプであることが好ましい。冷たい生理食塩水が注入されるときに、輸送時間による熱損失を減少させるか、またはさらなる断熱の必要性を拡大するために必要な小径流体導管の高い抵抗を克服するための高圧ポンプになることが想定される。この場合、カテーテルおよび/または遠位圧力センサの抵抗に対する非常に正確な補正が必要とされる。ポンプ要件は、特定の臨床用途に依存する。1つのポンプは、合理的なコストで必要な範囲全体をカバーできない可能性が高い。しかしながら、そのようなポンプの記載としては、1mmHgの圧力に正確に制御された送達であり、0~60mmHgの範囲で遠位に送達され、1分当たり0~150ccの流速で、正確に制御された+/-5%cc/分の流速であることが必要とされる。加えて、安全バルブまたはダイバータは、ポンプの誤動作のバックアップとして所定の位置にあることが想定される。
【0052】
4)入出力デバイスは、オペレータが手順に関する情報を入力し、アクセスすることを可能にするために必要とされる。コンピュータGUIは、遠位またはポンプおよび/またはリザーバにおいて、またはその間の任意の点における、温度、圧力、流量、[O2]などを含む、本明細書で考察されるように、システムによって判定された、そうでなければ計算された関連変数を示すために使用されてもよい。加えて、音声および視覚的アラームは、別個に組み込まれてもよい。
【0053】
5)センサを有する液体リザーバおよび液体コンディショナであり、温度、圧力、[O2]などの注入剤の特性/パラメータを貯蔵および/または維持/コンディショニングするのに十分な液体リザーバ。
【0054】
6)コンピュータコントローラ:ユーザによってキャプチャされ、入力され、および/または検索されるデータを処理し、ポンプを制御するために本明細書で考察される変数を計算し、そのような入力および計算/判定に基づいてポンプを制御するのに十分なコントローラ。
【0055】
7)アルゴリズムシステムは、好ましくは、閉塞の遠位側の灌流の計算および制御を可能にするプロセスでプログラムされる。具体的には、以下を判定することによる。
【0056】
注入剤のパラメータ
1.粘度、
2.[O2]、[CO2]
3.温度、
4.カテーテルのコンプライアンス、抵抗、および
5.注入体積対圧力曲線。
【0057】
以下のキーパラメータのうちの1つ以上は、アルゴリズムを使用して注入パラメータに基づいて計算されてもよい。
1)灌流される組織量。
2)自動調節曲線の形状。
3)完全な組織量対機能不全の自動調節。
4)組織の血管コンプライアンス。
5)臨界閾値の推定値。
【0058】
次いで、システムは、
1.組織への灌流パラメータを制御し、
2.安全な臨界閾値内であり、
3.重要な変化がないか監視し、それに応じて調整し得る。
【0059】
正常な血流:組織への血流は、局所的な血管抵抗に依存する。組織がより多くの血液を必要とするとき、組織血管は拡張し、局所的な血管抵抗の低下を引き起こし、より多くの血液が組織に流れる。塞栓した動脈は、脳卒中および心臓発作につながる。塞栓した血管は、塞栓の遠位側の組織血圧の大きな低下を引き起こす。このようになると、遠位組織の局所血管が大いに拡張し、組織の血管抵抗の大きな低下を引き起こすが、生存可能な組織血流を維持するには十分ではない。これのグラデーションが存在する。血管床は、ネットワークであり、閉塞していない他の血管から閉塞の遠位側にあるこれらの血管の血流、「側副血行路」が重要である。血管が提供する組織の時間および量もまた重要である。組織の血流が制限されるほど、かつ血流が制限される時間が長ければ長いほど、組織が死ぬ可能性が高い。
【0060】
自動調節:脳、心臓、腎臓を含む組織は、流量を自動調節する。この現象は自動調節と呼ばれ、広範囲の血圧にわたって血流を一定に保つ。これは、血流に応答して血管抵抗の変化によって行われる。曲線は、初期スループ、平坦域、および最終傾斜によって特徴付けられる。第1の傾斜は、自動調節の下限、LLAで終了する。第2の傾斜は、自動調節の上限、ULAで開始する。自動調節曲線の種類である、傾斜、傾斜
lowerおよび傾斜
upperは、mmHg/組織の体積当たりのCBFの1.7および2.0%の変化である。それぞれ。傾斜
lowerは、平均実験データと同様で、傾斜
upperはより小さい。曲線は、自動調節曲線の形状が、[O
2]、[CO
2]を含む多数の代謝成分によって変化していることを示す
図3から理解することができる。また、高血圧、外傷、および脳卒中によって引き起こされる血管床の変化によって変化する可能性がある。示されていないが、温度、および血液の粘度に関連する有意な変化もある。これらの効果は、広範な実験データから十分に特徴付けられる。消耗した自動調節を有する組織床では、流量は、灌流圧力に依存する(
図16)。より高い圧力では、血管を損傷し、出血を引き起こすリスクが増加することが知られている(流量損傷閾値)(
図14~18)。血管床の完全性(種類、強度、および損傷の持続時間)に応じて、損傷閾値は、例えば、健康(高閾値)、虚血性損傷(低閾値)、外傷性損傷(低閾値)などに変動し得る。したがって、完全な自動調節を有する組織床に見られるような広範囲の圧力耐性の低減または完全な欠如により、消耗した自動調節を有する易感染性組織ベッドで流量損傷閾値に達するリスクが増加する(
図17、18)。
【0061】
自動レギュレータ曲線のモデリング:利用可能な自動レギュレータ曲線の数学モデルがいくつかあり、これらはすべて、予想される血流/分/組織体積の基礎として使用することができる。流量の物理学に基づいた2つのモデルは、固定または可変の最大血管反応性である。自動調節の上限、ULAを上回る可変最大流量流圧力関係は、自動調節の下限、LLAを下回る関係と同じ傾斜を有し、したがって、これと平行である。これは、実験文献で最も頻繁に記載されるCBF自動調節曲線がそのような平行パターンを示すという事実に基づく。CBF圧力曲線について報告されたデータに合わせることによって3次多項式が計算され、使用され得る。例えば、
CBF=4.79×10-5 P3-1.74×10-2 P2+2.51P-38.8-1.74×10-2 P2+2.51P-38.8
である。
【0062】
これは、説明的でない、非直感的であり、より低い流量レベルで不正確であるために限定される。
【0063】
閉塞の遠位側に灌流するときに、組織の体積は不明である。生理学的測定流量/分/組織の体積を判定する場合、この組織の体積を計算しなくてはならない。さらに、灌流液が血液または同様の粘度を有する物質でない限り、流速は比例して変化する。同様に問題となるのは、温度、[O2]、[CO2]、および自動調節の機能の影響である。
【0064】
したがって、問題は、測定された注入体積/圧力曲線および注入粘度、[O2]、[CO2]、温度、およびデバイスのコンプライアンス、抵抗を考慮して、流量/分/組織の体積を計算し、灌流状況を考慮して新しい閾値を識別し、最終的にこれらの閾値内で灌流を維持することである。
【0065】
本出願は、以下のうちの1つ以上を行うこの点でのシステムを開示する。1)正常条件下での血液についての正常、既知、予想される自動調節曲線が入力または検索される。2)血液が注入液であるときの傾斜、平坦域、および臨界閾値が入力または検索される。3)粘度のような注入液材料の流量に影響を及ぼす要因、およびカテーテル特性が入力または測定される。4)[O2]、[CO2]、および組織の自動調節状態などの灌流材料流量に対する組織応答に影響を与える要因が判定される。5)#3および#4が与えられると、新しい予想圧力体積/組織灌流単位曲線が計算される。6)これらの値(#3、4、および5)が、単位流量/圧力当たりの予想される傾斜、平坦域、および閾値でポンプを制御するためにコンピュータにロードされる。6)デバイスが配置され、注入が開始し、注入体積圧力情報が流量/分/組織の体積を計算するために使用される。
【0066】
少なくとも1つの実施形態では、正常な生理学的血液脳、自動レギュレータ曲線を注入剤の体積/圧力曲線にマッピングするために使用される方法は、微積分、線形代数、または連続一次補正とすることができる。好ましい実施形態は、それが説明的で、直感的で、かつ実行するのが最も単純であるため、連続一次補正であり、これが本明細書において教示される。
【0067】
これらのアイデアのグラフィックプレゼンテーションは、以下の図に見ることができる。
図5A1~5A3は、酸素化された血液で灌流される組織量が、体積/圧力曲線をどのように変化させるかを示す。
図5B1~B3は、十分に酸素化された生理食塩水などの低粘度流体が、異なる量の灌流組織で体積圧力曲線をどのように変化させるかを示す。
図5C1~5C3は、同様に、無酸素生理食塩水、および調節なしの組織の効果を示した。
図5D1~5D3は、代謝、したがって、自動調節曲線に対する温度の影響を示す。
図5E1~5E3は、虚血および高気圧-充血性閾値の明らかな閾値がどのように判定され得るかを示す。
図6は、安全で有効な一定量の流体が注入されたときの圧力時間硬化を示す。
図7は、尊重された閾値を示す。
図8は、システムが交差を防止し得る様々な閾値を示す。
図9および10は、一定およびパルス状モードにおいて閾値内で動作するデバイスおよび方法を示す。
図11、12、13は、閾値を超える可能性のある故障モードを示す。
図14~15は、凝集管および栄養管の閾値が同じではないことがあり、完全および消耗した自動調節での16~18の例を示す。
【0068】
アルゴリズムの導出
以下について計算する:
・脳灌流のcc、CBFを判定
・生理食塩水、温度37.8℃、[O
2]と不変で灌流するときに、
・Q/P曲線の初期部分からのデータの場合
・Q/P曲線を考慮
以下のことを考慮する:
a)開示されたデバイスによって測定される際、Qbulk=P*Lπ(r)4/8η灌流液
b)実験文献から既知であるように、
【数1】
。
c)L、π(r)4/8は、両方の式において同じである。
i)L、rは、自動P/V曲線の両端で同じであり、血管の半径および長さが最大に拡張する。
ii)Qcbf/P曲線の形状は、正常条件下で既知である[η=3.6、[O
2]>4cc/100ccの脳、温度=37.8、完全な自動調節などを有する血液に対して]
(1)自動調節を有する組織の場合、初期(P=1~75mmHg)および最終P>175mmHgの傾斜が最大拡張と一致。
(2)自動調節を有する組織の場合、曲線の中間部分(175>P>75mmHg)の傾斜がゼロである
(3)自動調節なし、またはO
2なしの組織の場合、傾斜は最大拡張でP範囲全体の傾斜と同様である。
d)約=
55cc/分/75mmHg/脳の100ccの初期および最終のQcbf/P傾斜。
e)脳の1単位の圧力および体積当たりの血流/分の化合物傾斜=
0.0074cc/分/1mmHg/1cc脳
これは、システムの最大傾斜を表すことに留意されたい。
f)η灌流液は既知であり、生理食塩水は0.9cp、または血液の1/4である。
流れる生理食塩水を1/4の粘度で補正すると、同じ圧力での流量または脳の灌流量が4×増加する。
しかし、血管が最大に拡張されているため、脳の灌流量は同じ圧力で増加するか、または圧力は同じ灌流で減少しなければならない。
4*0.0074cc/分/1mmHg/1cc脳≠0.0296cc/分/1mmHg/1cc脳であるため、
g)4*0.0074cc/分/1mmHg/1cc脳は、
(1)(0.0074cc/分/0.25mmHg/1cc脳)=
(2)0.0074cc/分/1mmHg/4cc脳でなくてはならない。
h)これを使用して、所与の圧力勾配で血液の1/4の粘度を有する注入剤で灌流される脳の体積を判定することができる。
(Qbulk/P)/(0.0074cc/分/0.25mmHg/1cc脳)=灌流される脳のcc
i)例:血管が37.8℃の生理食塩水で注入され、次のもの
Qbulk/P=(20cc/分)/(10mmHg)を与える場合、
脳の体積
=(20cc/分)/(10mmHg)/((0.0074cc/分)/(0.25mmHg/1cc脳))
=67.6cc脳であり、
cc/分/100cc脳におけるCBFは、
=(20cc/分)/(67.6cc/100cc脳)
=29.6cc/分/100cc脳/
【0069】
上記を考慮すると、予想される虚血閾値、予想される高気圧閾値、予想される充血性閾値、自動レギュレータ曲線の変曲点、および代謝速度、したがってCBFに対する温度の影響を探索することが可能である。
【0070】
予想される虚血閾値を判定するための例示的な計算:
脳は、37.8℃で利用可能な4cc O2/100cc脳/分を必要とすることを考慮する。これは、すべての溶解したO2が利用可能であることを前提としており、これは、生理食塩水の簡略化であるが、概算近似である血液については利用可能ではないことに留意されたい。O2含有量は、溶解時間分圧によって計算することができる。したがって、虚血閾値は0.04cc O2/1cc脳/分であり、67.6cc脳は(67.6cc脳)×(0.04cc O2/1cc脳/分)を必要とするか、またはこの流量でのこの組織の虚血閾値は、注入生理食塩水が[O2]=2.7ccを有することを必要とする。約0.034cc [O2]/100ccの生理食塩水であることを考慮すると、注入生理食塩水中に0.0034cc [O2]/1cc生理食塩水×67.6cc脳=0.23ccである。したがって、2.7ccの虚血閾値は、注入されている0.23cc O2/分/1cc脳によって満たされない。虚血閾値が満たされない場合、Q/V曲線の傾斜は変わらない。
【0071】
虚血閾値は、以下によって満たされ得る。1)-圧力を増加させることによって、流量を増加させる、2)-代謝速度、CMRO2を低下させることによって閾値を低下させる、または3)溶解したO2を増加させる。これらの各々は独立して、理論的には12、(2.7/0.23)の係数を増加させることができる。圧力を12の係数によって、または120mmHg(12×10mmHg)に増加させると、虚血閾値を満たす。しかし、これは充血性閾値を超えると組織を損傷する。充血性閾値は、高気圧閾値から分離することが不可能でない場合難しく、組織レベルでは、ほぼ同義である可能性が高い。我々の目的のために、流量および/または圧力を独立して動作する損傷閾値として考慮する。組織毛細血管等が損傷している流速の正確な流量の性質は不明であるが、推定では、約100~120cc/分/脳の100cc、または1~1.2cc/分/脳の1ccに置く。
【0072】
この例では、脳への流量が29.6cc/分/100cc脳/であり、予想される充血性閾値が100~120cc/分/100cc脳で満たされることを考慮すると、充血性損傷が予想される前に3~4の係数で、または30~40mmHgの圧力にのみ増加することができる。高気圧閾値は200~220mmHgの範囲にあるように見えるが、慢性高血圧ではより高く、自動調節を行っていない組織ではより低くなることに留意されたい。したがって、新しい虚血閾値は、0.04cc O2/1cc脳/分または0.02cc O2/分/1cc脳の1/2であるか、67.6cc脳は、(67.6cc脳)×(0.02cc O2/1cc脳/分)を必要とするか、またはこの流量でのこの組織量の虚血閾値は、注入生理食塩水が[O2]=1.35cc O2/分を有することを必要とする。約0.34cc[O2]/100cc生理食塩水があることを考慮すると、注入生理食塩水において、0.0034cc[O2]/1cc生理食塩水/分×67.6cc脳=0.23cc O2/分である。
【0073】
虚血閾値は、高気圧の使用によって満たすことができ、O2の分圧を増加させる。通常の生理学的条件下での室内空気中のO2の分圧は約100mmHgである。ヘモグロビンの驚くほど効率的なO2ケア能力がなければ、[O2]は流体、この例では生理食塩水中に溶解した酸素にのみ由来することができる。3ATPでは、O2の分圧は、約20の係数で増加する。この例では、虚血閾値は、生理食塩水中のO2の分圧を約2ATPに増加させることによって達成され得る。そのような超飽和流体は、自発的に気泡を出すであろう。
【0074】
虚血閾値はまた、低体温を使用することにより、より低い流速で満たすことができる。低体温では、生理食塩水を冷却すると、3つの効果がある。1)CMRを約10%/1℃減少させる、2)O2の溶解度を約1.5%/1℃増加させ、3)粘度を1.5%/1℃増加させる。(この例では、冷却が粘度および溶解性に与える影響は、それらが小さく、サイズが類似しており、O2送達に反対の影響を及ぼす可能性があるため、無視され得る)。
【0075】
例:上記の例を使用することを考慮して、流体の温度を25℃に冷却し、脳がこのより低い温度にすぐに到達すると想定する。これにより、CMRO2が約75%減少し、aによって必要とされる[O2]を減少させ、それによって虚血閾値を50%低下させる。
【0076】
組織コンディショニング:虚血性損傷および虚血に関連する二次的損傷のリスクのある組織は、上記パラメータの監視下で動脈閉塞の遠位側の組織温度の制御された反復的な低下によってコンディショニングされ得る。ここで、動脈閉塞は、病理学的状態、例えば虚血性脳卒中/梗塞であってもよく、または人工的に作られてもよく、例えば、バルーン閉塞であってもよい。温度低下の段階の間には、組織の温度がより高い温度に戻ることを可能にするための一時停止がある。そうすることにより、虚血および再灌流から生じる結果によりよく耐えるために、リスクのある組織が準備されてもよい。
【0077】
前述の発明が明確性および理解の目的である程度詳細に説明されてきたが、当業者であれば、本開示を読むことで、本発明の真の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更を行うことができると理解するであろう。