(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】異物に関する紡糸プロセスの最適化
(51)【国際特許分類】
D01G 31/00 20060101AFI20240531BHJP
D01G 23/08 20060101ALI20240531BHJP
D01H 13/32 20060101ALI20240531BHJP
D01H 11/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
D01G31/00
D01G23/08 C
D01H13/32
D01H11/00 Z
(21)【出願番号】P 2021544482
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 CH2020000002
(87)【国際公開番号】W WO2020154820
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-22
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】503169552
【氏名又は名称】ウステル・テヒノロジーズ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】デ・ヴリース・ロリス
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー・ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】バルディシュヴィーラー・オスヴァルト
(72)【発明者】
【氏名】プリスカ・パーヴェル
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-516873(JP,A)
【文献】特開昭61-83330(JP,A)
【文献】特開平4-7269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01G 1/00-99/00
D01H 1/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原繊維の形態で供給され、糸の形態で出される繊維材料が通過する紡糸プロセス(1)を、繊維材料における異物に
応じて変更する方法であって、紡糸プロセス(1)における第1の箇所(11)において、
エア流において空圧式に搬送される繊維片の流れが異物について監視され、排除基準(26)に従い繊維片の流れから異物が排除され、監視に基づき異物に関する第1の異物情報が検出され、
該第1の異物情報が繊維片の単位質量当たり若しくは単位時間当たりの排除の数を表す排除率(E)であり、紡糸プロセス(1)における第2の箇所(14)では、繊維片から紡がれてその長手方向に沿って搬送される糸が異物に関して監視され、糸において検出された異物が、洗浄基準(36)に従い糸から洗浄除去され、監視に基づき異物に関する第2の異物情報が検出され
、第2の異物情報が、糸の単位質量当たり、糸の単位長さ当たり、若しくは単位時間当たりの洗浄過程の数を表す洗浄率(C)であり、紡糸プロセス(1)において繊維が第1の箇所(11)から第2の箇所(14)まで通過する間の時間インターバルとして通過時間(Δt)が特定され、第1の異物情報が第1の時点(t
1
)において検出され、第2の異物情報が、第1の時点(t
1
)よりも通過時間(Δt)だけ後の第2の時点(t
2
)において検出され、このように検出された第1の異物情報
と、このように検出された第2の異物情報
とが繊維材料の同一のサンプルに関係するよう
に互いに割り当てられ、第1の異物情報及びこれに割り当てられた第2の異物情報に基づき、紡糸プロセス(1)における変更が行われ
、紡糸プロセス(1)における変更が排除基準(26)の変更及び/又は洗浄基準(36)の変更を含み、紡糸プロセス(1)における変更時に、排除についての前もって算出されたコスト(K
E
)と排除率(E)の積が考慮され、及び/又は紡糸プロセス(1)における変更時に、洗浄過程についての前もって算出されたコスト(KC)と洗浄率(C)の積が考慮される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
紡糸プロセス(1)における変更時に、排除のためのコスト(K
E)と排除率(E)の積及び洗浄過程についてのコスト(K
C)と洗浄率(C)の積の一次結合が考慮されることを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
一次結合が変更後に変更前よりも小さな値をとるように、好ましくは、一次結合の
大域的な最小値が達成されるように、紡糸プロセス(1)における変更が行われることを特徴とする請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
通過時間(Δt)が、操作者によって手動で入力され、設定に基づき自動的に演算され、及び/又は設定に基づきデータベースから読み出されることを特徴とする請求項
1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
第1の箇所(11)での繊維材料における異物の第1のクラス(27)があらかじめ決定され、第1のクラス(27)が、異物の特性に関して互いに異なっており、第1の異物情報が第1のクラス(27)のうち1つ又は複数に関連し、及び/又は第2の箇所(14)での繊維材料における異物の第2のクラス(AA1~F)があらかじめ決定され、第2のクラス(AA1~F)が、異物の特性に関して互いに異なっており、第2の異物情報が第2のクラス(AA1~F)のうち1つ又は複数に関連することを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第1の異物情報及び第2の異物情報が同時に操作者へ出力されることを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
第1の異物情報及び第2の異物情報の同時の出力が、少なくとも部分的にグラフィカルになされることを特徴とする請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
第1の異物情報及び第2の異物情報の同時の出力に加えて、第1の異物情報及び/又は第2の異物情報の評価が操作者へ出力されることを特徴とする請求項
6又は
7に記載の方法。
【請求項9】
第1の異物情報及び第2の異物情報の同時の出力に加えて、紡糸プロセスにおける変更のための推奨が操作者へ出力されることを特徴とする請求項
6~
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
紡糸プロセス(1)における変更が自動的に行われることを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
繊維片及び/又は糸における異物含有量
の頻度分布が前もって算出され、該頻度分布が、紡糸プロセス(1)の変更時に考慮されることを特徴とする請求項1~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
原繊維の形態で供給され、糸の形態で出される繊維材料が通過する紡糸プロセス(1)を実行する紡糸工場において、請求項1~
11のいずれか1項に記載の方法を実行する装置(2)であって、紡糸プロセス(1)における第1の箇所(11)において
繊維片監視装置(3)を含んでおり、該
繊維片監視装置(3)が、
エア流において空圧式に搬送される繊維片の流れを異物について監視するように、
排除基準(26)に従い繊維片の流れから異物を排除するように、及び
監視に基づき異物に関する第1の異物情報を検出する
ように
構成されており、
該第1の異物情報が繊維片の単位質量当たり若しくは単位時間当たりの排除の数を表す排除率(E)であり、
第1の箇所(11)に関して下流に位置する第2の箇所(14)において
糸監視装置(4)を含んでおり、該
糸監視装置(4)が、
繊維片から紡がれてその長手方向に沿って搬送される糸を異物に関して監視するように、
糸において検出された異物を洗浄基準(36)に従い糸から洗浄除去するように、及び
監視に基づき異物に関する第2の異物情報を検出するように
構成されており、
第2の異物情報が、糸の単位質量当たり、糸の単位長さ当たり、若しくは単位時間当たりの洗浄過程の数を表す洗浄率(C)であり、
繊維片監視装置(3)及び糸監視装置(4)に接続された中央制御装置(5)
を含み、該中央制御装置が、
紡糸プロセス(1)において繊維が第1の箇所(11)から第2の箇所(14)まで通過する間の時間インターバルとして通過時間(Δt)をメモリするように、
第1の異物情報を第1の時点(t
1
)においてメモリし、第2の異物情報を、第1の時点(t
1
)よりも通過時間(Δt)だけ後の第2の時点(t
2
)においてメモリするように、
このように検出された第1の異物情報と、このように検出された第2の異物情報とが繊維材料の同一のサンプルに関係するように互いに割り当てられるように、
第1の異物情報及びこれに割り当てられた第2の異物情報に基づき、紡糸プロセス(1)における変更を行なうように
構成されており、
紡糸プロセス(1)における変更が排除基準(26)の変更及び/又は洗浄基準(36)の変更を含んでおり、
中央制御装置が、
紡糸プロセス(1)における変更時に、排除についての前もって算出されたコスト(K
E
)と排除率(E)の積を考慮するように、及び/又は
紡糸プロセス(1)における変更時に、洗浄過程についての前もって算出されたコスト(KC)と洗浄率(C)の積を考慮するように
構成されている
ことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡糸の分野のものである。本発明は、異物に関して紡糸プロセスを最適化する方法及び独立請求項による、当該方法を実行する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
糸における異物は、今日の紡糸工場の大きな問題となっている。これは、糸繊維、例えば綿材料の意図される基礎材料とは異なる材料である。例えば、合成樹脂包装、ひも、人間又は動物の毛などのような様々な原因があり得る。異物は、紡糸及び織りにおいて糸切れにつながり、基礎材料とは異なる態様で着色剤を吸収し、織物の最終製品の外観に影響する。異物は、本質的に最終製品の価値を低下させてしまう。異物によって引き起こされる織物欠陥についての概要及びその回避についての推奨は、非特許文献1にある。
【0003】
特許文献1には、繊維材料、特に原綿における異物を排除する方法及び装置が開示されている。このような方法は、紡糸のために原綿を準備するために、例えばクリーニング工場において使用される。繊維材料は、空圧式の繊維搬送管路において連続的にセンサシステム及び排除装置の傍らで案内される。センサシステムによって異物が検出される場合には、当該異物は、繊維搬送方向に対して横方向へ向けられた圧縮エアインパルスを用いて、繊維搬送管路における排除開口部を通して当該繊維搬送管路から排除される。対応する製品が、非特許文献2に記載されている。
【0004】
織物の製造プロセスにおける更に下流では、紡糸機械又は巻取り機においていわゆる糸洗浄装置によって異物を糸から除去することが可能である。糸洗浄装置は少なくとも1つのセンサを有する測定ヘッドを含んでおり、センサは、移動する糸を走査し、このとき異物又は厚い箇所及び薄い箇所のような糸欠陥を検出する。センサの出力信号は、設定された基準に従って連続的に評価される。特許文献2には、異物を検出するだけではなく様々な種類の異物を区別する糸洗浄装置が開示されている。センサは、反射光(入射光)によって糸を光学的に走査する。分類フィールド又は分類マトリクスが提供される。分類フィールドの水平な軸線に沿って糸部分の長さが記入されており、垂直な軸線に沿って糸に置ける糸の反射率が記入されている。分類フィールドは、明色の異物について16のクラスに分割されており、暗色の異物について16のクラスに分割されている。同一のクラスの糸部分が計数される。対応する製品が、非特許文献3に記載されている。
【0005】
特許文献3には、繊維片の流れにおける異物を監視する方法及び装置が開示されている。一実施形態では、第1の監視装置が繊維片の流れにおける異物を監視する一方、第2の監視装置が織物の製造プロセスにおける下流で異物を監視する。第2の監視装置は、巻取り機における糸洗浄装置であってよい。第1及び第2の監視装置には制御装置が接続されている。制御ユニットは、両監視装置のデータを収集し、統計的に評価し、これにより得られるレポートを操作者へ出力する。制御回路では、第1の監視装置における異物の排除のための限界が、第2の監視装置の監視結果に依存して変更される。
【0006】
特許文献4には、織物産業の調整延伸時の延伸プロセスのための制御装置が記載されている。当該制御装置は、延伸工程の出口において断面において均一化された帯(バンド)を得るために、開いた、又は閉じた制御回路の原理で動作することができる。延伸の出口における迅速に応答する測定器の測定信号は、延伸の導入部における別の測定信号と関連付けられる。これにより、帯の一時的な断面変動も補整されるように、遅延量を決定するパラメータが補正される。このとき、特に、アクチュエータから延伸の出口における測定器への帯の走行時間と、測定信号の全体的な増幅とが決定的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2006/079426号
【文献】米国特許第6244030号明細書
【文献】国際公開第2017/190259号
【文献】米国特許出願公開第4653153号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】USTER(登録商標)NEWS BULLETIN NO.47、“The origins of fabric defects-and ways to reduce them”、第3.8章、Uster Technologies AG、2010年3月
【文献】パンフレット“USTER(登録商標)JOSSIVISION SHIELD2-The key to Total Contamination Control”、Uster Technologies AG、2015年10月
【文献】パンフレット“USTER(登録商標)QUANTUM3 Application Handbook”、第8.4章、Uster Technologies AG、2011年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、異物に関して紡糸プロセスを最適化することにある。最適化は、特に糸品質及び/又は生産コストに関するべきである。糸品質が同一の生産コストにおいて高められるべきであるか、生産コストが同一の糸品質において低減されるべきであるか、又は糸品質が高められ、かつ、生産コストが同時に低減されるべきである。異物に関連して、より高い糸品質は、糸における妨害的な異物についての低い割合を意味する。生産コストは、とりわけ、くずとして排除される繊維製品材料の量及び巻取り機の作動停止の頻度によって影響される。
【0010】
本発明の別の課題は、方法を実行するための装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
当該及び他の課題は、独立請求項において規定されているように、本発明による方法及び本発明による装置によって解決される。有利な実施形態は、各従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明は、紡糸プロセスにおける異なる2つの箇所において検出される異物情報を互いに割り当て、互いに割り当てられた異物情報に基づいて紡糸プロセスにおける変更を行うという着想に基づくものである。割り当ては、異物情報が本質的に繊維材料の同一のサンプルに関するものであるように行われる必要がある。
【0013】
「サンプル」という表現は、本明細書では、本質的に同一で本質的に均一に配分された特性を有する、繊維材料の関連する量をいう。サンプルのサイズは、1g未満の質量を有する繊維片から数トンの繊維材料までであり得る。サンプルについての一例は、開綿設備において見られるように、それぞれ220kgの50個の綿俵(合計11t)の原型である。サンプルは、紡糸プロセスを通過し、その際、各プロセスステップに応じてその構造及び形状が変化する。同一のサンプルは、例えば原繊維、繊維片、フリース、繊維帯、粗糸又は糸の形態を想定し得る。サンプルは、紡糸プロセス中に様々な処理機械へ分配されることが可能である。
【0014】
本発明による方法は、原繊維の形態で供給され、糸の形態で出される繊維材料が通過する紡糸プロセスを糸材料における異物に関して最適化するために用いられる。紡糸プロセスにおける第1の箇所では、異物に関する第1の異物情報が検出される。第1の箇所に関して下流に位置する、紡糸プロセスにおける第2の箇所では、異物に関する第2の異物情報が検出される。第1の異物情報及び第2の異物情報は、本質的に繊維材料の同一のサンプルに関するように、互いに割り当てられる。第1の異物情報と、それに割り当てられた第2の異物情報とに基づき、紡糸プロセスでの変更が行われる。
【0015】
第1の箇所あるいは第2の箇所は、好ましくは、それぞれ以下の量から成るプロセスステップに対応する。開放(開綿)、粗洗浄、混合、精密洗浄、カーディング、ダブリング、コーミング、延伸(ドラフト)、紡糸、巻き戻し(巻付け)。
【0016】
第1の異物情報及び/又は第2の異物情報の検出は、繊維材料のサンプル全体において、又は繊維材料のサンプルの部分量において行われることが可能である。当該検出は、連続的に、又は不連続な時点で行われることが可能である。当該検出は、ボビンプロセスにおいてオンラインで、又は、繊維材料のサンプル若しくはその部分量が紡糸プロセスから取り出され、紡糸プロセス外で、例えば紡績実験室で検査されることでオフラインで行われることが可能である。
【0017】
紡糸プロセスにおける変更は、紡糸プロセスへ供給される原繊維若しくはその少なくとも一部の変更及び/又は紡糸プロセスに関与する機械の設定の変更を含むことが可能である。
【0018】
第1の異物情報と第2の異物情報の相互の割り当ては、好ましくは以下の量から成るステップのうち1つを含んでいる:紡糸プロセスにおいて繊維が第1の箇所から第2の箇所まで通過する間の時間インターバルとして通過時間を算出するステップ、サンプル自体の特性を特定するステップ、及びサンプルのキャリアをマーカ付けするステップ。通過時間は、既知の処理時間及び貯蔵時間に基づき経験的に、又は理論的に算出されることができる。サンプルの特性として、例えばその化学的な組成を用いることができ、繊維の天然の組成は、遺伝子解析及び/又は人工的に追加されたマーカ(Marker)を用いて役割を果たすことが可能である。サンプルのキャリアは、サンプル特性に応じて、光学的なマーカ及び/又は電磁的なマーカが設けられる容器又はボビンコアであり得る。
【0019】
好ましい一実施形態では、紡糸プロセスにおける第1の箇所では、エア流において空圧式に搬送される繊維片の流れが異物について監視される。当該監視に基づき、第1の異物情報が検出される。紡糸プロセスにおける第2の箇所では、繊維片から紡がれてその長手方向に沿って搬送される糸が異物に関して監視される。当該監視に基づき、第2の異物情報が検出される。紡糸プロセスにおいて繊維が第1の箇所から第2の箇所まで通過する間の時間インターバルとして通過時間が特定される。第1の異物情報が第1の時点において検出され、第2の異物情報が、第1の時点よりも通過時間だけ後の第2の時点において検出される。このように算出される第1の異物情報及びこのように算出される第2の異物情報は、互いに割り当てられる。
【0020】
一実施形態では、第1の異物情報は、繊維片における異物の割合を表す第1の異物割合であり、第2の異物情報は、糸における異物の割合を表す第2の異物割合である。好ましくは、第1の異物割合が、本質的に、繊維片の単位質量当たりの、若しくは単位時間当たりの異物の数を表し、及び/又は第2の異物情報が、本質的に、糸の単位質量当たりの、若しくは単位時間当たりの異物の数を表す。
【0021】
一実施形態では、紡糸プロセスにおける第1の箇所では、排除基準に従い繊維片の流れから異物が排除され、紡糸プロセスにおける変更が排除基準の変更を含む。第1の異物情報は、本質的に繊維片の単位質量当たり若しくは単位時間当たりの排除の数を表す排除率であり得る。有利には、排除基準と排除率の間の関係が前もって算出され、当該関係が紡糸プロセスにおける変更時に考慮される。
【0022】
一実施形態では、紡糸プロセスにおける第2の箇所では、糸において検出された異物が、洗浄基準に従い糸から洗浄除去され、紡糸プロセスにおける変更が洗浄基準の変更を含む。好ましくは、第2の異物情報が、本質的に糸の単位質量当たり、糸の単位長さ当たり、若しくは単位時間当たりの洗浄過程の数を表す洗浄率である。洗浄基準と洗浄率の間の関係を前もって算出することができ、当該関係を紡糸プロセスにおける変更時に考慮することができる。排除についてのコストを前もって算出することができ、紡糸プロセスにおける変更時に、排除についてのコストと排除率の積を考慮することができる。洗浄過程についてのコストを前もって算出することができ、紡糸プロセスにおける変更時に、洗浄過程についてのコストと排除率の積を考慮することができる。紡糸プロセスにおける変更時に、排除のためのコストと排除率の積及び洗浄過程についてのコストと洗浄率の積の一次結合が考慮されることが有利であり得る。有利には、一次結合が変更後に変更前よりも小さな値をとるように、好ましくは、一次結合のグローバルな最小値が達成されるように、紡糸プロセスにおける変更が行われる。
【0023】
通過時間は、操作者によって手動で入力されることができ、設定に基づき自動的に演算されることができ、及び/又は設定に基づきデータベースから読み出されることができる。
【0024】
一実施形態では、第1の箇所での繊維材料における異物の第1のクラスがあらかじめ決定され、第1のクラスは、異物の特性に関して互いに異なっており、第1の異物情報が第1のクラスのうち1つ又は複数に関連している。同様に、第2の箇所での繊維材料における異物の第2のクラスがあらかじめ決定され、第2のクラスは、異物の特性に関して互いに異なっており、第2の異物情報が第2のクラスのうち1つ又は複数に関連している。
【0025】
一実施形態では、第1の異物情報及び第2の異物情報が同時に操作者へ出力される。第1の異物情報及び第2の異物情報の同時の出力が、少なくとも部分的にグラフィカルになされることが可能である。第1の異物情報及び第2の異物情報の同時の出力に加えて、第1の異物情報及び/又は第2の異物情報の評価を操作者へ出力することが可能である。評価は、好ましくは、適切な、あるいは危機的な異物情報を示すそれぞれ少なくとも2つのカテゴリを含んでいる。第1の異物情報及び第2の異物情報の同時の出力に加えて、紡糸プロセスにおける変更についての推奨を操作者へ出力することが可能である。
【0026】
一実施形態では、第1の異物情報及びこれに割り当てられた第2の異物情報に基づき、警報が操作者へ出力される。好ましくは、第1の異物情報の推移及びこれに割り当てられた第2の異物情報の推移が算出され、警報がこれら時間推移に基づいて出力される。
【0027】
一実施形態では、操作者が、同時に出力される第1の異物情報及び第2の異物情報に基づき、評価に基づき、及び/又は推奨に基づき、紡糸プロセスにおける変更を行う。
【0028】
一実施形態では、紡糸プロセスにおける変更が自動的に行われる。
【0029】
一実施形態では、繊維片及び/又は糸における異物含有量のグローバルな頻度分布が前もって算出され、該頻度分布が、紡糸プロセスにおける変更時に考慮される。
【0030】
本発明は、原繊維の形態で供給され、糸の形態で出される繊維材料が通過する紡糸プロセスを実行する紡糸工場において、本発明による方法を実行する装置に関するものでもある。装置は、紡糸プロセスにおける第1の箇所において第1の監視装置を含んでいる。第1の監視装置は、異物に関する第1の異物情報を検出するために設置されている。装置は、紡糸プロセスにおける、第1の箇所に関して下流に位置する第2の箇所において第2の監視装置を更に含んでいる。第2の監視装置は、異物に関する第2の異物情報を検出するために設置されている。装置は、そのほか、第1の監視装置及び第2の監視装置に接続された中央制御装置を含んでいる。中央制御装置は、第1の異物情報及び第2の異物情報が互いに割り当てられ、第1の異物情報及びこれに割り当てられた第2の異物情報に基づき、紡糸プロセスにおける変更が自動的に行われるために、並びに/又は第1の異物情報及び第2の異物情報が同時に操作者へ出力されるために設置されている。
【0031】
一実施形態では、装置は、紡糸プロセスにおける第1の箇所において繊維片監視装置を含んでいる。繊維片監視装置は、エア流において空圧式に搬送される繊維片の流れを異物について監視し、該監視に基づき第1の異物情報を検出するように設置されている。さらに、装置は、紡糸プロセスにおける第2の箇所において糸監視装置を含んでいる。糸監視装置は、繊維片から紡がれてその長手方向に搬送される糸を異物について監視し、該監視に基づき第2の異物情報を算出するように設置されている。中央制御装置は、紡糸プロセスにおいて繊維が第1の箇所から第2の箇所まで通過する間の時間インターバルとして通過時間をメモリし、第1の時点における第1の異物情報と、第1の時点よりも通過時間だけ後の第2の時点における第2の異物情報とをメモリし、このように検出された第1の異物情報と、このように検出された第2の異物情報とを互いに割り当てるように設置されている。
【0032】
本発明により、紡糸プロセスが異物に関して最適化される。糸にわずかな異物しか残らないため、糸の高い品質が達成される。わずかな繊維材料がくずとして排除されるため、同時に生産性が高まる。
【0033】
以下に、本発明を図面に基づき詳細に説明する。ここでは、主に、紡糸プロセスにおける第1の箇所が精密洗浄に対応し、紡糸プロセスにおける第2の箇所が糸の巻取りに対応する、好ましい一実施形態を説明する。しかし、このことは本発明の一般性を制限するものではない。これに代えて、第1及び/又は第2の箇所が他のプロセスステップに対応してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】紡糸工場(紡績工場)において進行する紡糸(紡績)プロセス1の一部と、本発明による装置とを概略的に示す図である。
【
図2】繊維片の流れにおける異物事象についての例示的な繊維事象フィールドを示す図である。
【
図3】糸における異物事象についての例示的な糸事象フィールドを示す図である。
【
図4】互いに割り当てられた異物情報のグラフィカルな出力についての例を示す図である。
【
図5】互いに割り当てられた異物情報のグラフィカルな出力についての例を示す図である。
【
図6】異物情報についての評価範囲を設定することが可能なグラフを示す図である。
【
図7】互いに割り当てられた異物情報の時間推移についての例を示す図である。
【
図8】紡糸プロセスにおけるコストの最小化のためのグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1には、紡糸工場(紡績工場)において進行する紡糸(紡績)プロセス1の一部が概略的に示されている。紡糸プロセス1では、例えば原綿から糸が紡績される。紡糸プロセス1は、例えば以下のプロセスステップを含むことができる:開放(開綿)、粗洗浄、混合、精密洗浄11、カーディング12、ダブリング、コーミング、延伸(ドラフト)、紡糸13、巻き戻し(巻付け)14。上記プロセスステップ11~14の全てが必ずしも行われる必要はなく、別のプロセスステップを付け加えることが可能である。単純化のために、
図1ではいくつかのわずかなプロセスステップ11~14のみが概略的に示されている一方、他のものは点で示唆されている。
【0036】
図1では、本発明による装置2も概略的に示されている。紡糸プロセス1における早期の段階、例えば精密洗浄11における、又は精密洗浄直後での第1の箇所には、エア流において空圧式に搬送される繊維片の流れが存在する。当該第1の箇所には、本発明による装置2の繊維片監視装置3が配置されている。繊維片監視装置3は、異物について繊維片の流れを監視するとともに、監視に基づいて異物に関する第1の異物情報を検出するために設置されている。
【0037】
第1の異物情報は、繊維片における異物の割合を表す第1の異物割合であってよい。これは、例えば、本質的に繊維片の単位質量当たり(例えば100kg当たり)又は単位時間当たり(例えば1時間当たり)の異物の数であってよく、両表現は、通常、通常は既知の、単位時間当たりの質量流量(例えばkg/h)を用いて互いに換算されることが可能である。
【0038】
そのほか、繊維片監視装置3は、排除基準に従って、繊維片の流れから異物を排除することが可能である。繊維材料、特に原綿において異物を排除する方法及び装置が例えば特許文献1から知られている。好ましい実施形態では、繊維片監視装置3は、繊維片の流れにおける、異物を含む物体の特性を検出するセンサシステムを含んでいる。センサシステムは、例えば、繊維片の流れの画像を撮影する2つのCCDカメラを含むことができるが、他の、又は追加のセンサが可能である。センサシステムは、制御ユニット、例えばコンピュータに接続されている。制御ユニットは、センサシステムの出力信号を評価し、このとき、繊維片の流れにおいて検出された物体が許容されるか否かを決定するために、排除基準を適用する。制御ユニットは、評価の結果に応じて、繊維片の流れから異物を排除する排除ユニットを制御する。排除ユニットは、例えば、制御ユニットによって個別に操作可能な複数の圧縮エアノズルを含んでいる。制御ユニットが許容されない物体を検出すると、制御ユニットは、繊維片の流れの搬送方向に対して垂直に圧縮エアを排出するために当該物体の箇所にある圧縮エアノズルを起動し、その結果、当該物体は、繊維片の流れから排除される。
【0039】
図2には、繊維事象についての繊維事象フィールド20が示されており、当該繊維事象フィールドは、二次元のデカルト座標の1つの象限又は1つの象限の一部を含んでいる。第1の軸21、例えば横軸に沿って第1のパラメータが記入されており、第2の軸22、例えば縦軸に沿って第2のパラメータが記入されている。第1のパラメータは、繊維片の流れにおける物体の幾何学的な特性に関するものであってよく、好ましくは、物体の長さ又は面積である。第2のパラメータは、物体の光学的な特性に関するものであってよく、好ましくは、繊維片によって反射されたか、繊維片を透過したか、又は繊維片によって吸収された光の強度である。物体について特定された第1及び第2のパラメータの値は、物体を表す繊維事象の座標を繊維事象フィールド20において規定する。
図2には、例えば、1つのみの繊維事象が点23として記入されており、実際には、繊維片の流れには多数のこのような繊維事象が存在し、その位置は、繊維事象フィールド20において一般に互いに異なっている。
【0040】
図2の繊維事象フィールド20は、20個の長方形状の第1のクラス27に分割されている。第1のクラス27のうち少なくとも1つ、好ましくは全てでは、繊維事象を計数することができ、したがって、その各数を特定することが可能である。各第1のクラス27における繊維事象の絶対数と繊維事象フィールド20全体における繊維事象の総数の比率を形成することによって、各第1のクラス27における繊維事象の相対的な割合が特定される。第1の異物割合は、第1のクラス27のうち1つのみ又はいくつかのみに関連することが可能である。
【0041】
図2には、繊維片の流れにおける異物についての可能な排除基準も図示されている。当該排除基準は、例えば、特許文献3に記載されているように、排除曲線26の形態で繊維事象フィールド20において設定されることができる。排除曲線26は、繊維事象フィールド20を互いに相補的な2つの範囲に分割し、1つは、許容される繊維事象がある第1の範囲24であり、1つは、許容されない繊維事象がある第2の範囲25である。第1の範囲24における繊維事象によって表される物体は繊維片の流れにとどまる一方、第2の範囲25にける繊維事象によって表される物体は、繊維片の流れから排除される。
【0042】
図2に図示されているように、二次元の繊維事象フィールド20における排除曲線26は、本発明における用途のための1つのみの可能な排除基準である。一実施形態では、排除基準は、1つのみのパラメータ、例えば、繊維事象フィールド20の縦軸22に沿って記入されているような強度を考慮することができる。他の一実施形態では、排除基準は、2つより多くのパラメータ、例えば、繊維事象フィールド20の軸21,22に沿って記入されているような幾何学的な特性及び強度と、更に物体の色とを考慮することができる。
【0043】
排除基準は、操作者の入力によって設定されることができるか、データベースから取り出されることができるか、又は自動的に演算されることが可能である。
【0044】
第1の異物情報は、排除率であり得る。当該排除率は、例えば、本質的に繊維片の単位質量当たり(例えば100kg当たり)又は単位時間当たり(例えば1時間当たり)の排除の数で表現されることができ、両表現は、通常、通常は既知の、単位時間当たりの質量流量(例えばkg/h)を用いて互いに換算されることが可能である。
【0045】
第1の箇所に関して下流に位置する紡糸プロセス1(
図1参照)の第2の箇所では、繊維片から紡がれた糸が、例えば巻付け14中にその長手方向に沿って搬送される。当該第2の箇所には、本発明による装置2の糸監視装置4が配置されている。糸監視装置4は、異物について糸を監視するとともに、監視に基づいて異物に関する第2の異物情報を検出するために設置されている。
【0046】
第2の異物情報は、糸における異物の割合を表す第2の異物割合であってよい。これは、例えば、本質的に糸の単位質量当たり(例えば100kg当たり)、糸の単位長さ当たり(例えば100km当たり)又は単位時間当たり(例えば1時間当たり)の異物の数であってよく、これら3つの表現は、番手(例えばtex=g/km)あるいはボビン速度(巻付け速度)(例えばm/分)を用いて互いに換算されることが可能である。
【0047】
糸監視装置4は、例えば、糸洗浄機システムとして構成されることが可能である。異物について走行する糸を監視する糸洗浄機は、例えば特許文献2からそれ自体知られている。これに合わせて、糸監視装置4は、糸の長手方向に沿った糸部分における光学的な測定の測定値を検出するセンサを含んでいる。当該糸監視装置は、測定された糸部分の反射率の値を測定値に基づいて算出する評価ユニットを更に含んでいる。評価ユニットは異物についての分類フィールドを提供し、当該分類フィールドは、少なくとも2つのクラスに分割されている。評価ユニットは、糸事象を少なくとも2つのクラスへ分類するとともに、糸において検出された異物の総数についての少なくとも2つのクラスのうち少なくとも1つにおける糸事象の割合を特定する。
【0048】
糸事象についての2つの事象フィールドは、非特許文献3に記載されている。これらのうち1つが、例示的に
図3に図示されている。糸事象フィールド30は、二次元のデカルト座標の1つの象限又は1つの象限の一部を含んでいる。座標系の横軸31は、長手方向における反射率の値の延長を例えばセンチメートルで表している。座標系の横軸32は、目標値からの反射率の値の偏差を例えばパーセントで表している。1つの糸事象について特定された反射率の値の延長及び偏差についての値は、糸事象フィールド30における糸事象の座標を規定する。
図3には、例えば、1つのみの糸事象が点33として記入されており、実際には、糸には多数のこのような事象が存在し、その位置は、糸事象フィールド30において互いに異なっている。
【0049】
図3の糸事象フィールド30は、32個の長方形状の第2のクラスに分割されており、当該第2のクラスは、文字及び数AA1~Fで一義的に識別されている。糸事象フィールド30における各糸事象には、その位置に従い、第2のクラスAA1~Fが一義的に割り当てられることができる。点33で表される糸事象は、第2のクラスC3にある。第2のクラスAA1~Fのうち少なくとも1つ、好ましくは全てでは、糸事象を計数することができ、したがって、その各数を特定することが可能である。各第2のクラスAA1~Fにおける糸事象の絶対数と糸事象フィールド30全体における糸事象の総数の比率を形成することによって、各第2のクラスAA1~Fにおける糸事象の相対的な割合が特定される。第2の異物割合は、第2のクラスAA1~Fのうち1つのみ又はいくつかのみに関連することが可能である。
【0050】
糸事象フィールド30には更に洗浄曲線36が記入されており、当該洗浄曲線は、糸における許容される異物と許容されない異物の間の限界としての洗浄限界を示している。糸事象の算出された座標は洗浄限界36と比較され、糸事象は、当該比較に依存して、糸から除去され、すなわち洗浄除去されるか、又は除去されない。
【0051】
第2の異物情報は、洗浄率であり得る。当該洗浄率は、例えば、本質的に糸の単位質量当たり(例えば100kg当たり)、糸の単位長さ当たり(例えば100km当たり)又は単位時間当たり(例えば1時間当たり)の洗浄過程の数を表すことができ、これら3つの表現は、番手(例えばtex=g/km)あるいはボビン速度(巻付け速度)(例えばm/分)を用いて互いに換算されることが可能である。
【0052】
図1による実施形態では、糸監視装置4は、中央制御装置5と双方向で接続されており、このことは、矢印7で図示されている。中央制御装置5は、その側で、繊維片監視装置3と双方向で接続されており、このことは、矢印6で図示されている。
【0053】
データ接続部6,7により、それぞれ関与する装置3,4,5間でデータの双方向の交換が可能となる。この目的のために、繊維片監視装置3、糸監視装置4及び中央制御装置5は、データを送信するための送信手段と、データを受信するための受信手段とを備えている。データ接続部6,7は、ケーブル接続されるように、又はケーブルなしに構成されることが可能である。
【0054】
中央制御装置5は、独立した機器として、例えば紡糸工場に、又は紡糸工場外に配置されたコンピュータとして構成されることが可能である。この場合、中央制御装置は、データを受信あるいは送信するための適当な受信手段及び送信手段を含んでいる。これに代えて、中央制御装置5は、他の機器、例えば紡糸工場の紡績実験室における糸試験機器、繊維片監視装置3、糸監視装置4などに統合されることが可能である。最後の両ケースでは、糸監視装置4と繊維片監視装置3の間の直接的なデータ接続部を構成することができ、当該データ接続部を介して、両装置4,3は、データを伝達又は交換する。
【0055】
接続部6及び/又は7に沿って、伝達されるデータを受信して必要に応じて処理及び更に送信する別の(不図示の)装置を配置することができる。一実施形態では、複数の繊維片監視装置3が繊維片エキスパートシステムに接続されている。繊維片エキスパートシステムは、繊維片監視装置3からのデータを受信し、処理し、適切な形態で出力し、及び繊維片監視装置3を制御するため設置されている。繊維片エキスパートシステムは、その側で中央制御装置5に接続されている。一実施形態では、複数の糸監視装置4が糸エキスパートシステムに接続されている。糸エキスパートシステムは、糸監視装置4からのデータを受信し、処理し、適切な形態で出力し、及び糸監視装置4を制御するため設置されている。糸エキスパートシステムは、その側で中央制御装置5に接続されている。
【0056】
図1の紡糸プロセス1では、通過時間Δt(
図7(b)及び
図7(c)参照)が特定される。通過時間Δtは、本明細書では、繊維が紡糸プロセス1における第1の箇所(例えば精密洗浄11)から第2の箇所(例えば巻取り14)まで通過する時間インターバルとして規定される。通過時間Δtは、例えば、紡糸プロセス1、紡糸工場の構成、原繊維、製造されるべき糸などのような複数の事情に依存する。通過時間は、状況によっては、数時間又は数日の範囲となり得る。一実施形態では、通過時間Δtは、操作者によって手動で中央制御装置5へ入力されることが可能である。他の一実施形態では、通過時間Δtは、中央制御装置5によって自動的に演算されることが可能である。当該演算は、例えば、例えば紡糸プロセス1、紡糸工場の構成、原繊維、製造されるべき糸などに関する、中央制御装置5にメモリされたデータに基づいて行われることが可能である。別の一実施形態では、通過時間Δtは、入力に基づき、中央制御装置5によってデータベースから読み出されることが可能である。通過時間は、本発明による方法の実行中に一定のままであってよいか、又は変更されてもよく、変更は、同様に手動又は自動で行われることができる。
【0057】
本発明による方法では、第1の異物情報及び第2の異物情報は、繊維材料の同一のサンプルに関するものであり、すなわち、いわば「同一の繊維について」算出される。この目的のために、第2の異物割合が算出される第2の時点t
2(
図7(b)及び
図7(c)参照)は、通過時間Δtだけ第1の異物割合が算出される第1の時点t
1の後にある必要があり、すなわち、t
2=t
1+Δtである。このように算出される第1の異物割合及びこのように算出される第2の異物割合は、互いに割り当てられる。
【0058】
通過時間Δtの算出は、第1の異物情報及び第2の異物情報の相互の割り当てのための複数の可能性のうちのただ1つである。他の1つの可能性は、サンプル自体の特性を特定することにある。サンプルの特性として、例えばその化学的な組成を用いることができ、繊維の天然の組成は、遺伝子解析及び/又は人工的に追加されたマーカ(Marker)を用いて役割を果たすことが可能である。割り当てのための別の1つの可能性は、紡糸プロセスにおいてサンプルを追跡するために、サンプルのキャリアのマークにある。サンプルのキャリアは、サンプル特性に応じて、光学的なマーカ及び/又は電磁的なマーカが設けられる容器又はボビンコアであり得る。
【0059】
第1の異物割合と、当該第1の異物割合に割り当てられた第2の異物割合とに基づき、紡糸プロセス1での変更が行われる。以下に、このような変更についてのいくつかの例を説明する:
-一実施形態では、紡糸プロセス1における変更は、排除基準の変更を含んでいる。この目的のために、例えば排除曲線26(
図2参照)を変更することができる。
-一実施形態では、紡糸プロセス1における変更は、洗浄基準の変更を含んでいる。この目的のために、例えば洗浄曲線36(
図3参照)を変更することができる。
-一実施形態では、紡糸プロセス1における変更は、紡糸プロセス1へ導入される原繊維又は原繊維の少なくとも一部の変更を含んでいる。
-一実施形態では、紡糸プロセス1における変更は、紡糸プロセス1に関与する機械の設定の変更を含んでいる。
【0060】
本発明による方法の一実施形態では、第1の異物情報及び第2の異物情報が同時に操作者へ出力される。第1の異物情報及び第2の異物情報の同時の出力は、好ましくはグラフィカルになされる。
図4及び
図5にはこれについての2つの例が示されており、第1の異物情報が排除率であり、第2の異物情報が洗浄率である。
【0061】
図4には、グラフィカルな出力40の第1の例が示されている。当該出力は、4つの評価範囲42~45に分割されたコラム41を含んでいる。コラム41の両側には水平な矢印46,47があり、当該矢印の位置は、コラム41に関して垂直な方向に変更可能である。左側の矢印46は排除率を表示し、右側の矢印47はこれに割り当てられた洗浄率を表示する。矢印46,47が下方に位置すればするほど関連する率は低く、また、その逆も同様である。率の評価の目的で、コラム41の4つの評価範囲42~45を、信号色に、すなわち適切なもの(第2の評価範囲43)について緑色、危機的なもの(第1の評価範囲42及び第3の評価範囲44)について黄色、極めて危機的なもの(第4の評価範囲45)について赤色に着色することが可能である。
図4の例では、排除率は低く、洗浄率は非常に高い。このような率のアンバランスは最適でない。排除率と洗浄率の同時の出力に加えて、紡糸プロセスにおける変更についての推奨を操作者へ出力することが可能である。
図4において垂直な単純な両矢印48,49がこのような推奨を表示する。排除率は高められるべきであり(矢印48)、洗浄率は低減されるべきである(矢印49)。最適な設定時には、水平な両矢印46,47は、緑色の第2の評価範囲43を示す。当然、本発明は、例えば排除率及び洗浄率についてそれぞれ1つの固有のコラムのような、類似のグラフィカルな出力を含んでいる。
【0062】
図5には、排除率及び洗浄率のグラフィカルな出力の第2の例が示されている。これは、ポートフォリオグラフ50である。横軸51に沿って排除率が記入されており、縦軸52に沿って洗浄率が記入されている。排除率と、これに割り当てられた洗浄率とは、ポートフォリオグラフにおけるそれぞれ1つの点53の座標を形成している。グラフ面において、5つの評価範囲54~58が概略的に描かれており、これら評価範囲は、異なる評価カテゴリ又は推奨カテゴリに対応している。評価範囲54~58は、
図5に描かれた形態とは異なる形態を備えることが可能である。率の評価の目的で、5つの評価範囲54~58を、信号色に、すなわち適切なもの(第1の評価範囲54及び第5の評価範囲58)について緑色、危機的なもの(第2の評価範囲55及び第4の評価範囲57)について黄色、極めて危機的なもの(第3の評価範囲56)について赤色に着色することが可能である。描かれた点53は、緑色の第1の評価範囲54にある。この場合、明らかに異物の少ない良好な原繊維が用いられるため、処理需要が生じない。黄色の第2の評価範囲55にある点は、低い洗浄率に同時にある場合には、高い排除率を示す。率のこのようなアンバランスは、排除率が低減され、洗浄率が高められることで補整されるべきである。操作者へのこの推奨は、矢印59で示唆されている。赤色の第3の評価範囲56では、排除率も、また洗浄率も高く、これにより、結果的に良好でない生産性となる。この場合、より良好で汚染のより少ない原繊維を用いることが検討されるべきである。黄色の第4の評価範囲57にある点は、高い洗浄率に同時にある場合には、低い排除率を示す。これは、
図4に図示された状況に相当する。率のこのようなアンバランスは、排除率が高められ、洗浄率が低減されることで補整されるべきである。操作者へのこの推奨は、矢印59で示唆されている。緑色の第5の評価範囲58に点があれば、排除率及び洗浄率が補整されており、紡糸プロセス1は変更を要しない。
【0063】
図4及び
図5の例では、グラフィカルな図示に加えて、排除率及び/又は洗浄率の値を表示することが可能である。このことは、
図4において当てはまり、
図4では、両値が対応する水平な矢印46,47に記入されている。これに代えて、グラフィカルな表示なしに値のみを操作者に示すことが可能である。
【0064】
矢印48,49(
図4)あるいは59(
図5)若しくは類似のグラフィカルなシンボルに代えて、又はこれらに加えて、推奨を言葉で操作者へ出力することが可能である。
【0065】
極めて危機的な場合(
図4の第4の評価範囲45及び
図5の第3の評価範囲56)には、好ましくは、1つの推奨だけではなく、警告又は警報が操作者へ出力される。これは、中央制御装置5の表示ユニットにおいてグラフィカルに、又は言葉で、音響的に、及び/又は視覚的に、例えば警告灯によって行われることができる。
【0066】
グラフィカルな出力、推奨及び/又は警報に基づき、操作者は、紡糸プロセス1における変更を手動で行うことができる。これに代えて、紡糸プロセス1における変更を例えば中央制御装置5(
図1)によって自動的に行うことが可能である。
【0067】
図4及び
図5における評価範囲42~45,54~58の限界(値)は、様々な態様で設定されることが可能である。第1の可能性は、経験に基づく設定である。第2の可能性は、繊維片及び/又は糸における異物含有量のグローバルな頻度分布(度数分布)を前もって算出し、当該頻度分布を評価範囲の限界の設定時に考慮することにある。このようなグローバルな頻度分布は、USTER(登録商標)STATISTICSから得ることが可能である。USTER(登録商標)STATISTICSは、本保護権利の出願人により発行された織物の品質データをまとめたものであり、織物の原材料、中間生成物及び最終製品のグローバルな生産に基づき算出されたものである:本保護権利の出願時点で読み出される、http://www.uter.com/en/service/uster-statistics/参照。
【0068】
図4及び
図5における評価範囲42~45,54~58の限界の設定のための別の可能性が
図6に図示されている。当該図には、デカルト座標系においてグラフ60が示されており、その横軸61に沿って、排除基準に影響するパラメータが記入されている。当該パラメータは、例えば、光強度に関する繊維片監視装置3(
図1)の感度であってよく、当該光強度は、垂直方向における排除曲線26(
図2)の位置を特定する。縦軸62に沿って排除率が記入されている。曲線63は、感度と排除率の間の関係を表している。このような関係は、発見的に、又は理論的に前もって算出されることが可能である。横軸61は、3つの範囲64~66に分割されている。第1の範囲64では、感度は、排除率に対してほとんど影響を有さないほどわずかである。第3の範囲66では、感度は非常に大きく、結果的に非常に大きな排除率となる。第2の範囲65には、中間的な排除率をもった中間的な感度がある。当該第2の範囲65に対応する排除率の範囲67は、
図4における排除率の緑色の適切な範囲43に対応している。同様に、洗浄率についての適切な範囲も設定されることが可能である。
【0069】
図7には、第1の異物情報及びそれに割り当てられた第2の異物情報の時間推移についての3つの例が示されている。当該両異物情報は、それぞれ上下に重ねて配置されたグラフ701,702に図示されており、上側のグラフ701は、縦軸72に沿って例えば排除率E(t)を示し、縦軸73に沿って第2の異物割合F(t)を示し、両グラフ701,702の横軸71は共通に時間軸tである。上側のグラフ701における第1の曲線74は第1の異物情報の時間推移を表し、下側のグラフ702における第2の曲線75は第2の異物情報の時間推移を表している。排除基準の場合によってはあり得る変更のほかには、紡糸プロセス1における他の変更は行われないと仮定される。これら例は、それぞれ期待される状況を示している。当該状況からの偏差は、紡糸プロセス1におけるエラーを示すとともに、例えば操作者へ警報を発出することが可能である。
【0070】
図7(a)には、平凡なケースが図示されており、当該ケースでは、排除率E(t)が時間的に一定のままであり、排除基準は変更されない。この場合、第2の異物割合F(t)も時間的に一定のままであり、他の場合には警報が出力されることとなる。
【0071】
図7(b)の例では、排除基準が変更されることなく、第1の時点t
1ではより大きな排除率E(t)が観察される。そして、これは、より多くの異物を有する原繊維が紡糸プロセス1へ導入される場合であり得る。第1の時点t
1よりも通過時間Δtだけ後の第2の時点t
2では、第2の異物割合F(t)も同様に上昇することが期待される。これとは逆に、排除基準を変更することなく、結果的に、排除率E(t)の低下及び同様に第2の異物割合F(t)の低下となる。
【0072】
図7(c)の例では、第1の時点t
1での排除基準は、より大きな排除率E(t)が生じるように変更される。これは、期待されるように、第1の時点t
1よりも通過時間Δtだけ後の第2の時点t
2では、第2の異物割合F(t)が低下する結果となる。これに対して、より低い排除率E(t)が生じるように排除基準が変更されると、第2の異物割合F(t)は、通過時間Δtだけ後に上昇することとなる。
【0073】
図8には、本発明による方法の別の一実施形態が図示されている。当該実施形態では、コストが共に考慮される。
【0074】
図8(a)には、デカルト座標系においてグラフ801が示されており、その横軸81に沿って排除率Eが記入されており、その縦軸82に沿って洗浄率C(E)が記入されている。曲線83は、排除率Eと洗浄率C(E)の間の考えられる関係を概略的に示している。このような関係C(E)は、発見的に、又は理論的に算出されることが可能である。同様に、排除についてのコストK
E及び洗浄過程についてのコストK
Cも発見的に、又は理論的に算出されることが可能である。そして、紡糸プロセス1における排除及び洗浄過程についての単位質量当たりの総コストKは、
【0075】
【0076】
となり、この一次結合では、排除率E及び洗浄率Cが同一の単位質量に関するものであることに留意すべきである。総コストK(E)を最小化する条件は、
【0077】
【0078】
である。
【0079】
したがって、
【0080】
【0081】
となる。
【0082】
これに対応して、
図8(b)におけるグラフ802では、縦軸84に沿って、
図8(a)の曲線83の微分dC(E)/dEが記入されている。曲線85は、微分の推移を示している。微分が2つの箇所E
max,E
minでとる値-K
E/K
Cが例示的に描かれている。
【0083】
図8(c)におけるグラフ803には、最終的に、曲線87によって総コストK(E)が記入されている。上記2つの箇所の第1の箇所E
maxでは、総コストK(E)の避けるべき最大値が位置している。これに対して、上記2つの箇所の第2の箇所E
minでは、ここでは注目される最小値が位置している。当該値E
minは、排除基準の適当な選択によって、紡糸プロセス1を最適化するように試みられるべきである。したがって、当該実施形態では、紡糸プロセス1における変更は、排除率がちょうどE
minであるような排除基準の値の選択にあり、そうすれば、総コストK(E)が最小である。変更は、操作者によって手動で、又は例えば中央制御装置5(
図1)によって自動的に行われることが可能である。
【0084】
図8(a)に図示された所定の紡糸プロセス1についての関数が算出できないか、又は完全には算出できない場合でも、
図8に基づき記載される本発明による方法の実施形態を実行することが可能である。所定の紡糸プロセス1について1つの点(E,C’)及び他の類似の紡糸プロセスについての関数C(E)が既知であれば足りる。両紡糸プロセスについての曲線83の推移が類似しているという仮定の下、比例定数
【0085】
【0086】
を演算することが可能である。所定の紡糸プロセス1についての最小条件は、
【0087】
【0088】
となり、
【0089】
ここで、dC(E)/dEは、
図8(b)に図示された既知の関数C(E)の微分である。
【0090】
当然、本発明は、上述の実施形態に限定されていない。特に、紡糸プロセスにおける2つより多くの点において、異物に関連する異物情報を算出することが可能である。当業者は、本発明の知識において、本発明の対象にも含まれる別の変形例も導出することが可能である。
なお、本発明は、以下の態様も包含し得る:
1.原繊維の形態で供給され、糸の形態で出される繊維材料が通過する紡糸プロセス(1)を、繊維材料における異物に関して最適化する方法であって、紡糸プロセス(1)における第1の箇所(11)において、異物に関する第1の異物情報が検出され、紡糸プロセス(1)における、第1の箇所(11)に関して下流に位置する第2の箇所(14)において、異物に関する第2の異物情報が検出される、前記方法において、
第1の異物情報及び第2の異物情報が本質的に繊維材料の同一のサンプルに関係するように、第1の異物情報及び第2の異物情報が互いに割り当てられ、第1の異物情報及びこれに割り当てられた第2の異物情報に基づき、紡糸プロセス(1)における変更が行われることを特徴とする方法。
2.第1の箇所(11)あるいは第2の箇所(14)が、以下の量:開放、粗洗浄、混合、精密洗浄(11)、カーディング(12)、ダブリング、コーミング、延伸、紡糸(13)、巻付け(14)のうちそれぞれ1つのプロセスステップに相当することを特徴とする上記1.に記載の方法。
3.第1の異物情報及び/又は第2の異物情報の検出が、繊維材料のサンプル全体において、又は繊維材料のサンプルの部分量において行われることを特徴とする上記1.又は2.に記載の方法。
4.第1の異物情報及び/又は第2の異物情報の検出が、連続的に、又は不連続な時点において行われることを特徴とする上記1.~3.のいずれか1つに記載の方法。
5.第1の異物情報及び/又は第2の異物情報の検出が、紡糸プロセスにおいてオンラインで、又は、繊維材料のサンプル若しくはその部分量が紡糸プロセスから取り出され、紡糸プロセス外で検査されることでオフラインで行われることを特徴とする上記1.~4.のいずれか1つに記載の方法。
6.紡糸プロセス(1)における変更が、紡糸プロセス(1)へ供給される原繊維若しくはその少なくとも一部の変更及び/又は紡糸プロセス(1)に関与する機械の設定の変更を含むことを特徴とする上記1.~5.のいずれか1つに記載の方法。
7.第1の異物情報及び第2の異物情報の相互の割り当てが、以下の量に基づくステップ:紡糸プロセス(1)において繊維が第1の箇所(11)から第2の箇所(14)まで通過する間の時間インターバルとして通過時間(Δt)を算出するステップ、
サンプル自体の特性を特定するステップ、及び
サンプルのキャリアをマーカ付けするステップ
のうち1つを含むことを特徴とする上記1.~6.のいずれか1つに記載の方法。
8.紡糸プロセス(1)における第1の箇所(11)では、エア流において空圧式に搬送される繊維片の流れが異物について監視され、監視に基づき第1の異物情報が検出され、紡糸プロセス(1)における第2の箇所(14)では、繊維片から紡がれてその長手方向に沿って搬送される糸が異物に関して監視され、監視に基づき第2の異物情報が検出され、紡糸プロセス(1)において繊維が第1の箇所(11)から第2の箇所(14)まで通過する間の時間インターバルとして通過時間(Δt)が特定され、第1の異物情報が第1の時点(t
1
)において検出され、第2の異物情報が、第1の時点(t
1
)よりも通過時間(Δt)だけ後の第2の時点(t
2
)において検出され、このように検出された第1の異物情報と、このように検出された第2の異物情報とが互いに割り当てられることを特徴とする上記7.に記載の方法。
9.第1の異物情報は、繊維片における異物の割合を表す第1の異物割合であり、第2の異物情報は、糸における異物の割合を表す第2の異物割合であることを特徴とする上記8.に記載の方法。
10.第1の異物割合が、本質的に、繊維片の単位質量当たりの、若しくは単位時間当たりの異物の数を表し、及び/又は第2の異物情報が、本質的に、糸の単位質量当たりの、糸の単位長さ当たりの、若しくは単位時間当たりの異物の数を表すことを特徴とする上記9.に記載の方法。
11.紡糸プロセス(1)における第1の箇所(11)では、排除基準(26)に従い繊維片の流れから異物が排除され、紡糸プロセス(1)における変更が排除基準(26)の変更を含むことを特徴とする上記8.~10.のいずれか1つに記載の方法。
12.第1の異物情報が、本質的に繊維片の単位質量当たり若しくは単位時間当たりの排除の数を表す排除率(E)であることを特徴とする上記11.に記載の方法。
13.排除基準と排除率(E)の間の関係が前もって算出され、該関係が、紡糸プロセス(1)における変更時に考慮されることを特徴とする上記12.に記載の方法。
14.紡糸プロセス(1)における第2の箇所(14)では、糸において検出された異物が、洗浄基準(36)に従い糸から洗浄除去され、紡糸プロセス(1)における変更が洗浄基準(36)の変更を含むことを特徴とする上記8.~13.のいずれか1つに記載の方法。
15.第2の異物情報が、本質的に糸の単位質量当たり、糸の単位長さ当たり、若しくは単位時間当たりの洗浄過程の数を表す洗浄率(C)であることを特徴とする上記14.に記載の方法。
16.洗浄基準(36)と洗浄率(C)の間の関係が前もって算出され、該関係が、紡糸プロセス(1)における変更時に考慮されることを特徴とする上記15.に記載の方法。
17.排除についてのコスト(K
E
)が前もって算出され、紡糸プロセス(1)における変更時に、排除についてのコスト(K
E
)と排除率(E)の積が考慮されることを特徴とする上記11.~13.のいずれか1つに記載の方法。
18.洗浄過程についてのコスト(KC)が前もって算出され、紡糸プロセス(1)における変更時に、洗浄過程についてのコスト(KC)と洗浄率(C)の積が考慮されることを特徴とする上記14.~16.のいずれか1つに記載の方法。
19.紡糸プロセス(1)における変更時に、排除のためのコスト(K
E
)と排除率(E)の積及び洗浄過程についてのコスト(K
C
)と洗浄率(C)の積の一次結合が考慮されることを特徴とする上記17.又は18.に記載の方法。
20.一次結合が変更後に変更前よりも小さな値をとるように、好ましくは、一次結合のグローバルな最小値が達成されるように、紡糸プロセス(1)における変更が行われることを特徴とする上記19.に記載の方法。
21.通過時間(Δt)が、操作者によって手動で入力され、設定に基づき自動的に演算され、及び/又は設定に基づきデータベースから読み出されることを特徴とする上記8.~20.のいずれか1つに記載の方法。
22.第1の箇所(11)での繊維材料における異物の第1のクラス(27)があらかじめ決定され、第1のクラス(27)が、異物の特性に関して互いに異なっており、第1の異物情報が第1のクラス(27)のうち1つ又は複数に関連し、及び/又は第2の箇所(14)での繊維材料における異物の第2のクラス(AA1~F)があらかじめ決定され、第2のクラス(AA1~F)が、異物の特性に関して互いに異なっており、第2の異物情報が第2のクラス(AA1~F)のうち1つ又は複数に関連することを特徴とする上記1.~21.のいずれか1つに記載の方法。
23.第1の異物情報及び第2の異物情報が同時に操作者へ出力されることを特徴とする上記1.~22.のいずれか1つに記載の方法。
24.第1の異物情報及び第2の異物情報の同時の出力が、少なくとも部分的にグラフィカルになされることを特徴とする上記23.に記載の方法。
25.第1の異物情報及び第2の異物情報の同時の出力に加えて、第1の異物情報及び/又は第2の異物情報の評価が操作者へ出力されることを特徴とする上記23.又は24.に記載の方法。
26.評価が、それぞれ、適切な、あるいは危機的な異物情報を示す少なくとも2つのカテゴリを含むことを特徴とする上記25.に記載の方法。
27.第1の異物情報及び第2の異物情報の同時の出力に加えて、紡糸プロセスにおける変更のための推奨が操作者へ出力されることを特徴とする上記23.~26.のいずれか1つに記載の方法。
28.第1の異物情報及びこれに割り当てられた第2の異物情報に基づき、警報が操作者へ出力されることを特徴とする上記1.~27.のいずれか1つに記載の方法。
29.第1の異物情報の時間推移(74)及びこれに割り当てられた第2の異物情報の時間推移(75)が検出され、これら時間推移(74,75)に基づいて警報が出力されることを特徴とする上記28.に記載の方法。
30.操作者が、同時に出力される第1の異物情報及び第2の異物情報に基づき、評価に基づき、及び/又は推奨に基づき、紡糸プロセス(1)における変更を行うことを特徴とする上記23.~29.のいずれか1つに記載の方法。
31.紡糸プロセス(1)における変更が自動的に行われることを特徴とする上記1.~30.のいずれか1つに記載の方法。
32.繊維片及び/又は糸における異物含有量のグローバルな頻度分布が前もって算出され、該頻度分布が、紡糸プロセス(1)の変更時に考慮されることを特徴とする上記1.~31.のいずれか1つに記載の方法。
33.原繊維の形態で供給され、糸の形態で出される繊維材料が通過する紡糸プロセス(1)を実行する紡糸工場において、上記1.~32.のいずれか1つに記載の方法を実行する装置(2)であって、紡糸プロセス(1)における第1の箇所(11)において第1の監視装置(3)を含んでおり、該第1の監視装置(3)が、異物に関する第1の異物情報を検出するために設置されており、紡糸プロセス(1)における、第1の箇所(11)に関して下流に位置する第2の箇所(14)において第2の監視装置(4)を含んでおり、該第2の監視装置(4)が、異物に関する第2の異物情報を検出するために設置されている、前記装置において、
第1の監視装置(3)及び第2の監視装置(4)に接続された中央制御装置(5)が設けられており、該中央制御装置が、第1の異物情報及び第2の異物情報が本質的に繊維材料の同一のサンプルに関係するように第1の異物情報及び第2の異物情報を互いに割り当てるために、第1の異物情報及びこれに割り当てられた第2の異物情報に基づき、紡糸プロセス(1)における変更が自動的に行われるために、並びに/又は第1の異物情報及び第2の異物情報が同時に操作者へ出力されるために設置されていることを特徴とする装置。
34.紡糸プロセス(1)における第1の箇所(11)において繊維片監視装置(3)を含み、該繊維片監視装置(3)が、エア流において空圧式に搬送される繊維片の流れを異物について監視し、該監視に基づき第1の異物情報を検出するように設置されており、紡糸プロセス(1)における第2の箇所(14)において糸監視装置(4)を含み、該糸監視装置(4)が、繊維片から紡がれてその長手方向に搬送される糸を異物について監視し、該監視に基づき第2の異物情報を算出するように設置されており、中央制御装置(5)が、紡糸プロセス(1)において繊維が第1の箇所(11)から第2の箇所(14)まで通過する間の時間インターバルとして通過時間(Δt)をメモリし、第1の時点(t
1
)における第1の異物情報と、第1の時点(t
1
)よりも通過時間(Δt)だけ後の第2の時点(t
2
)における第2の異物情報とをメモリし、このように検出された第1の異物情報と、このように検出された第2の異物情報とを互いに割り当てるように設置されていることを特徴とする上記33.に記載の装置(2)。
【符号の説明】
【0091】
1 紡糸プロセス
11 精密洗浄
12 カーディング
13 紡糸
14 巻き戻し(巻付け)
2 装置
3 繊維片監視装置
4 糸監視装置
5 中央制御装置
6,7 データ接続部
20 繊維事象フィールド
21 横軸
22 縦軸
23 繊維事象
24 許容される繊維事象についての第1の範囲
25 許容されない繊維事象についての第2の範囲
26 排除曲線、排除基準
27 繊維事象のクラス
30 糸事象フィールド
31 横軸
32 縦軸
33 糸事象
40 グラフィカルな出力
41 コラム
42~45 評価範囲
46 排除率を表示する矢印
47 洗浄率を表示する矢印
48,49 推奨を表示する矢印
50 ポートフォリオグラフ
51 横軸
52 縦軸
53 ポートフォリオグラフにおける点
54~58 評価範囲
59 推奨を表示する矢印
60 グラフ
61 横軸
62 縦軸
63 曲線
64~66 横軸における範囲
67 縦軸における範囲
701,702 グラフ
71 横軸
72,73 縦軸
74,75 第1あるいは第2の曲線
801~803 グラフ
81 横軸
82,84,86 縦軸
83,85,87 曲線