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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】電力消費量予測システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240531BHJP
【FI】
G06Q50/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022009588
(22)【出願日】2022-01-25
(65)【公開番号】P2023108455
(43)【公開日】2023-08-04
【審査請求日】2023-02-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】永井 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】家親 正典
(72)【発明者】
【氏名】安藤 幹
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 克史
【審査官】加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-232903(JP,A)
【文献】特開2016-135040(JP,A)
【文献】特開2016-077051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも電力系統から送電網を介して入力される電力を消費する電力負荷を備える建物の電力消費量を予測する予測装置と、
前記電力系統の通信網と通信可能に構成される通信装置と、
を備える電力消費量予測システムであって、
予測対象とする前記建物の予測対象期間における使用予定を示す使用予定情報を取得する処理と、
電力消費量に関する標準電力消費量情報を取得する処理と、
前記取得した使用予定情報および標準電力消費量情報に基づいて、前記予測対象とする建物の前記予測対象期間における電力消費量の予測値Aを算出する処理と、
前記予測対象とする建物の前記予測対象期間よりも過去の電力消費量の予測値Bおよび実績値Bに基づいて、前記算出された予測値Aを補正し補正予測値aを算出する処理と、
を実行するように構成され、
前記使用予定情報は、前記建物の管理者によって入力され、
前記電力消費量予測システムは、
前記管理者に対して前記補正予測値aを提示する処理と、
前記予測対象期間における前記建物の電力消費量の実績値Aを取得する処理と、
前記補正予測値aと前記実績値Aとの差分に基づいて、前記管理者に対してインセンティブを付与する処理と、
をさらに実行するように構成されている、
電力消費量予測システム。
【請求項2】
前記使用予定情報は、前記予測対象とする建物の種類、前記予測対象期間における前記建物の使用人数、および前記予測対象期間における前記電力負荷の稼働台数のうち、少なくともいずれか一つを含む、
請求項1に記載の電力消費量予測システム。
【請求項3】
前記補正予測値aを算出する処理は、前記実績値Bと前記予測値Bとの差分から補正率Xを算出し、該補正率Xを前記予測値Aに反映させることによって前記補正予測値aを算出するように構成されている、
請求項1または2に記載の電力消費量予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力消費量予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発電手段を有する建物において、住人が自身の在または不在予定を入力し、当該入力された情報に基づいて発電手段が発電した電力の供給先を制御するホームエネルギー管理システムが開示されている。かかる管理システムによれば、需要に応じて、経済的にエネルギーを利用することができる。また、特許文献2には、熱負荷および電力負荷を有する需要家の一員が申告した行動情報と、該行動情報に紐づく熱負荷と電力負荷の計測結果をデータベースに蓄積する需要家情報蓄積手段と、該データベースを用いて、行動情報に対する熱電需要量の予測値を作成する熱電需要量予測手段と、を有する熱電量予測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-20488号公報
【文献】特開2007-156696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、電力系統における電力需給のバランスを維持するために、電力系統に電気的に接続され得る建物の電力消費量を正確に把握する技術が望まれている。しかしながら、特許文献1または2に記載の技術によっては、取得した情報に基づいて算出される予測値と、該予測値と実績値との間に誤差(乖離)がある場合については検討されていない。このため、予測値の予測精度の向上については未だ改善の余地がある。また、特許文献2では、入力された情報と異なる行動をした場合には、その都度情報が修正されて熱電需要量を予測することが記載されているが、かかる手段によってはごく短期的な予測しか行うことができない。電力系統における電力需給のバランスを維持するために活用し得る電力消費量の予測方法としては十分ではない。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、精度の高い電力消費量の予測値を算出する電力消費量予測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するべく、ここに開示される技術によって、以下の電力消費量予測システムが提供される。ここに開示される電力消費量予測システムは、少なくとも電力系統から送電網を介して入力される電力を消費する電力負荷を備える建物の電力消費量を予測する予測装置と、上記電力系統の通信網と通信可能に構成される通信装置と、を備えている。かかる電力消費量予測システムは、予測対象とする上記建物の予測対象期間における使用予定を示す使用予定情報を取得する処理と、電力消費量に関する標準電力消費量情報を取得する処理と、上記取得した使用予定情報および標準電力消費量情報に基づいて、上記予測対象とする建物の上記予測対象期間における電力消費量の予測値Aを算出する処理と、上記予測対象とする建物の上記予測対象期間よりも過去の電力消費量の予測値Bおよび実績値Bに基づいて、上記算出された予測値Aを補正して補正予測値aを算出する処理と、が実行されるように構成されている。
【0007】
上述したシステムによれば、使用予定情報と標準電力消費量情報とに基づいて算出される予測値Aを、予測対象期間よりも過去の予測値Bと実績値Bとに基づいて補正するため、個々の建物における予測値と実値との乖離の度合いを反映させた電力消費量の予測値を算出することができる。かかるシステムによれば、個々の建物の特色に応じた電力消費量の予測値を算出することができるため、予測精度が高い予測値を算出することができる。また、かかるシステムによれば、予測対象期間が比較的遠い期間であっても、より精度の高い予測をすることができる。
【0008】
ここに開示される電力消費量予測システムの好ましい一態様では、上記使用予定情報は、上記予測対象とする建物の種類、上記予測対象期間における上記建物の使用人数、および上記予測対象期間における上記電力負荷の稼働台数のうち、少なくともいずれか一つを含む。
かかる構成によれば、より精度の高い電力消費量の予測値を算出することができる。
【0009】
ここに開示される電力消費量予測システムの好ましい一態様では、上記補正予測値aを算出する処理は、上記実績値Bと上記予測値Bとの差分から補正率Xを算出し、該補正率Xを上記予測値Aに反映させることによって上記補正予測値aを算出するように構成されている。
かかる構成によれば、予測対象期間よりも過去の予測値Bと実績値Bとの乖離の度合いを反映させた補正予測値aを簡便に算出することができ、予測精度の高い電力消費量の予測値を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る電力消費量予測システムが適用される一例を模式的に示す概念図である。
図2】一実施形態に係る電力消費量予測システムのブロック図である。
図3】一実施形態に係る予測処理の処理手順を示すフローチャート図である。
図4】一実施形態に係る使用予定情報入力画面の一例である。
図5】一実施形態に係る記憶部に格納される標準電力消費量情報の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながらここに開示される電力需給調整システムの一実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。本発明は、特に限定されない限りにおいて、ここで説明される実施形態に限定されない。また、同一の作用を奏する部材、部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略されるものとする。
【0012】
図1は、本実施形態に係る電力消費量予測システム100が適用される一例を示す概念図である。図2は、電力消費量予測システム100の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る電力消費量予測システム100は、図2に示すように、少なくとも通信装置60と、予測装置70と、を備えている。また、電力消費量予測システム100は、建物20の建物管理者が使用する入力端末90を備えていてもよい。電力消費量予測システム100は、建物20を予測対象として、当該建物20の電力消費量(kWh)を予測するシステムである。電力消費量予測システム100は、例えば通信装置60が取得した情報に基づいて、予測対象である建物20の予測対象期間における電力消費量の予測値Aを予測装置70が算出する。そして、予測装置70は、予測対象である建物20の過去の電力消費量の予測値Bおよび実績値Bに基づいて、算出した予測値Aを所定の手順で補正して、補正予測値aを算出する。かかる補正予測値aは、予測値Aを所定の手順によって補正した値であるため、単純に算出された建物20の電力消費量の予測値よりも予測精度が高い。ここに開示される電力消費量予測システムが算出した補正予測値aは、例えば、電力系統200の電力需給調整に活用される。すなわち、電力消費量予測システム100は、電力系統200の電力需給調整に貢献し得るシステムである。
【0013】
算出された補正予測値aは、例えば、通信装置60を介して電力系統200の通信網30に送信される。電力系統200の電力需給バランスを管理する管理装置40は、当該補正予測値aを、通信網30を介して取得することができる。管理装置40は、取得した補正予測値aを活用して、電力系統200の電力需給バランスを調整するように構成されているとよい。
【0014】
電力系統200は、図1に示すように、送電網10と通信網30とを備えている。電力系統200には、送電網10を介して複数の電力負荷22が接続されている。また、電力系統200の送電網10には、例えば電力会社が運営する火力発電所や水力発電所、原子力発電所等の大規模発電設備45の電力を送る既設送電線46が接続されている。電力系統200には、図示されない電力系統200の電力が蓄えられる蓄電装置を備えている。
【0015】
電力系統200は、電力消費量予測システム100の予測対象となり得る建物20を、複数(2以上)備えていることが好ましい。かかる建物20の種類は特に限定されない。建物20は、例えば住宅(一軒家)、オフィス、工場、病院、大型コンベンションセンター等である。ここでは、例えばマンション等の集合住宅やオフィスビルのように、一つの建物の中に複数の世帯やテナントが入居している場合には、各世帯、各テナントを一つの建物20としてみなす。このような場合には、世帯毎やテナント毎に、ここに開示される電力消費量予測システム100が備えられている。なお、「建物管理者」とは、建物20を管理する人物であれば特に限定されない。例えば、建物20が住宅である場合には、建物管理者は建物20の住人であり得る。建物20がオフィスである場合には、建物管理者はオフィスに勤務する職員であり得る。上記したマンションのような場合では各世帯の責任者(例えば世帯主)が、建物管理者であり得る。
【0016】
建物20は、少なくとも一つの電力負荷22を備えている。建物20は、複数の電力負荷22を備えていてもよい。複数の電力負荷22を備える場合には、複数の電力負荷22において消費される電力量の合計を、建物20の電力消費量(kWh)とする。ここで、電力負荷22とは、電気を利用するために必要な様々な機器類の総称である。電力負荷22には、例えば、電気エネルギーから他のエネルギーへの変換、電圧変換・力率調整、電力の接続および遮断等の機器が含まれ得る。電力負荷22は、建物20に備えられており、電力系統200から送電網10を介して供給される電力によって稼働する。
【0017】
建物20は、電力負荷22のほかに、蓄電装置24と発電装置26とを備えていてもよい。ここで、蓄電装置24とは、電力を蓄積する装置である。蓄電装置24は、例えば蓄電池を備え得る。蓄電池は、例えば、リチウムイオン二次電池あるいはニッケル水素二次電池のような二次電池や、電気二重層キャパシタ等の蓄電デバイスが含まれ得る。また、発電装置26とは、例えば、太陽光や風力等の自然エネルギーを利用して発電する装置である。蓄電装置24と、発電装置26は、それぞれ、図示されない通信部を備えていてもよい。通信部は、例えば、通信網30と通信可能に接続されている。発電装置26から得られる電力は、建物20内の送電線12を介して電力負荷22に供給され得る。あるいは、発電装置26から得られる電力は、蓄電装置24に蓄積され得る。蓄電装置24に蓄積されている電力や発電装置26から得られる電力は、送電網10を介して電力系統200に供給することができる。
【0018】
管理装置40は、電力系統200の電力需要に応じて、電力の需要と供給のバランスを保つように調整する装置である。例えば、管理装置40は、建物20に備えられ得る蓄電装置24や発電装置26から電力系統200に対する電力の入力、または、電力系統200から建物20の蓄電装置24に対する電力の出力を制御できるように構成される。管理装置40は、電力系統200の電力が不足すると見込まれる場合には、建物20の蓄電装置24に蓄えられた電力や発電装置26から得られる電力を電力系統200に対して入力させるように制御し得る。一方で、管理装置40は、電力系統200において電力の余剰が見込まれる場合には、電力系統200の蓄電装置に蓄積される電力を建物20の蓄電装置24に対して出力させるように制御し得る。これにより、電力系統200における電力量や、電力の流通タイミングがマネジメントされる。なお、電力系統200の蓄電装置に蓄積される電力や、電力系統200に接続される建物20の蓄電装置24に蓄積される電力、および送電網10を流通する電力は、電力会社等の特定の業者に売られる。すなわち、電力系統200に流通する電力は、電力の売買、言い換えれば売電および買電の対象となり得る。
【0019】
ここでは、電力系統200の電力需給バランスを管理する者を、システム管理者(システムを管理し得る装置自体を含めていう場合もある。)という。システム管理者は、アグリゲーターとも呼ばれる。システム管理者は、電力系統200の電力の需要と供給のバランスを保つように、管理装置40を介して複数の建物20と電力系統200との間の電力の入力および出力を調整する。システム管理者は、必要な電力量を確保するために、事前の契約などによって、複数の建物20が備え得る蓄電装置24や発電装置26に対する電力の入力および出力を制御することを建物管理者と契約する。システム管理者は、より効果的な電力需給調整を行うために、より多くの建物20と契約することが好ましい。また、管理装置40は、より好適な電力需給調整を行うために、多くの建物20における電力消費量を正確に把握することが好ましい。
【0020】
電力消費量予測システム100は、上記したように予測対象である建物20の予測対象期間における電力消費量を予測するシステムである。より詳細には、建物20が備える1または複数の電力負荷22の消費電力を予測するシステムである。なお、具体的な電力消費量を予測処理については後述する。
【0021】
電力消費量予測システム100の構成は特に限定されない。電力消費量予測システム100は、ここでは、例えばマイクロコンピュータである。電力消費量予測システム100は、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、を備えている。図2に示すように、電力消費量予測システム100は、少なくとも通信装置60と、予測装置70と、を備えている。通信装置60は、第1取得部61と、第2取得部62と、第3取得部63と、を備えている。通信装置60は、通信網30と通信可能に接続されている。
予測装置70は、予測値算出部71と、補正予測値算出部72と、を備えている。予測装置70は、予測値算出部71および補正予測値算出部72のほかに、インセンティブ算出部73と、第1記憶部81と、第2記憶部82と、を備えている。第1記憶部81には、後述する使用予定情報D1を含む建物20に関するデータが格納される。第2記憶部82には、後述する標準電力消費量情報D2を含む電力消費量に関するデータが格納される。なお、上記した通信装置60の各部61~63、および予測装置70の各部71~82は、1つまたは複数のプロセッサによって実現されるものであってもよいし、回路に組み込まれているものであってもよい。
【0022】
また、図2に示すように、電力消費量予測システム100は、入力端末90と通信可能に接続され得る。入力端末90は、建物管理者が操作して使用予定情報D1を入力することができる端末である。入力端末90は、例えば建物管理者が使用するデスクトップ型やラップトップ型のパーソナルコンピュータによって実現される。もちろん、入力端末90は、スマートフォンやタブレット端末で実現されることも可能である。入力端末90は、画面91と、マウス、キーボードまたはタッチパネル等の後述する建物管理者が操作して入力することができる入力手段92と、端末制御部93と、が設けられていてもよい。当該画面91と入力手段92とは、端末制御部93と通信可能に接続されている。そして、端末制御部93は、通信網30と通信可能に接続されている。入力端末90は、通信網30を介して、通信装置60と送受信可能に構成される。
【0023】
図3は、ここに開示される電力消費量予測システム100において実行される予測処理の処理手順を示すフローチャート図である。かかる予測処理は、予測対象とする建物20の予測対象期間における使用予定を示す使用予定情報D1を取得する処理(S10)と、電力消費量に関する標準電力消費量情報D2を取得する処理(S20)と、取得した使用予定情報D1および標準電力消費量情報D2に基づいて、予測対象である建物20の予測値Aを算出する処理(S30)と、予測対象とする建物20の予測対象期間より過去の電力消費量の予測値Bおよび実値Bに基づいて、上記算出された予測値Aを補正して補正予測値aを算出する処理(S40)と、を包含する。また、電力消費量予測システム100において実行される予測処理は、建物20の電力消費量の実績値Aを取得する処理(S50)も含み得る。
【0024】
以下においては、図3を参照しながら上述した予測処理を実現するための具体的な手順について説明する。各処理は、電力消費量予測システム100に組み込まれたプログラムに沿った処理で具現化され得る。なお、ここでは、電力消費量予測システム100によって実行される処理の一例を示しており、電力消費量予測システム100によって実行される処理はここで例示されるものに限定されない。
なお、図3における予測処理の開始のタイミングは、事前に設定され得る任意の時間帯(例えば午前0時等)や、予め設定され得る任意の時間間隔(例えば1時間おき、1日おき等)で自動的に開始される。
【0025】
まず、図3のステップS10では、図2の第1取得部61は、使用予定情報D1を取得したか否か判定する。使用予定情報D1とは、予測対象期間において予測対象である建物20の電力消費量に影響を及ぼし得る情報である。第1取得部61は、建物20を使用する建物管理者によって予測対象期間よりも以前に入力された使用予定情報D1を取得する。使用予定情報D1を取得した場合(S10:YES)には、ステップS20に進む。一方で、使用予定情報D1を取得していない場合(S10:NO)には、当該処理を終了する。
【0026】
ここで、「予測対象期間」とは、電力消費量を予測すべき期間(時間、日にち等)であって、事前に設定される任意の期間である。予測対象期間は、予め定められた予測スケジュールに従って自動的に設定されるものであってもよいし、入力端末90を介して建物管理者が入力した期間を予測対象期間として取得し、設定してもよい。ここでは、「予測対象期間」として「翌日の午前9時~正午」が設定された場合を例にして説明する。しかしながら、予測対象期間はこれに限られたものではなく、1時間毎、30分毎などより短い時間間隔で設定されてもよいし、6時間毎、半日毎、1日毎などより長い時間間隔で設定されてもよい。
【0027】
好適な一態様では、使用予定情報D1は、予測対象とする建物20の種類、予測対象期間における建物20の使用人数、および予測対象期間における建物20が備える電力負荷22の稼働台数のうち、少なくともいずれか一つを含んでいる。建物20の種類とは、建物20の用途を指し、例えば住宅、オフィス、工場、病院、学校、コンベンションセンター等から選択される。なお、使用予定情報D1は、上述した情報に限定されるものではなく、例えば、建物20の平均的な使用者として登録される人数、建物20の使用目的(例えば通常の目的で建物20を使用するか、あるいは、イベント目的で建物20を使用するか)、建物20に備えられている電力負荷22の種類(例えば洗濯機、照明、冷蔵庫、プリンター等)、来客予定の有無等の情報も含み得る。
【0028】
建物管理者が使用予定情報D1を入力する手段については特に限定されない。例えば、建物管理者は、入力端末90の画面91と入力手段92とを用いて、使用予定情報D1を入力することができる。画面91には例えば、使用予定情報入力画面(図4参照)が表示される。建物管理者は、入力手段92を操作して、上記使用予定情報入力画面に、予測対象期間における建物20の使用予定を入力する。建物管理者は、例えば、図4に示すように、使用予定情報D1として建物の種類や、予測対象期間における建物20の使用人数、予測対象期間における電力負荷22の稼働台数等を入力する。使用予定情報D1が入力されると、入力端末90の端末制御部93は、通信網30を介して、通信装置60に使用予定情報D1を送信する。これにより、第1取得部61は使用予定情報D1を取得することができる。そして、取得された使用予定情報D1は、建物20の管理番号と紐づけられて第1記憶部81に格納される。
【0029】
図3のステップS20では、図2の第2取得部62は、標準電力消費量情報D2を取得する。ここで、標準電力消費量情報D2とは、建物20を含む複数の建物の電力消費量に関する情報であって、各建物の管理番号と紐づけられて記憶される情報である。図5は、第2取得部62が取得する標準電力消費量情報D2の一例を示している。図5に示すように、標準電力消費量情報D2としては、例えば、建物の管理番号、建物の予測対象期間、建物の平均的な使用者として登録される登録人数、建物の種類、予測対象期間における建物の使用人数、予測対象期間における電力負荷の稼働台数、予測対象期間における電力消費量の実績値等が挙げられる。取得された標準電力消費量情報D2は、第2記憶部82において記憶される。
【0030】
標準電力消費量情報D2は、通信網30を介して電力消費量予測システム100の外部から取得される情報であり得る。しかしながら、標準電力消費量情報D2は、電力消費量予測システム100の第2記憶部82に予め記憶されていてもよい。標準電力消費量情報D2は、予測対象とされている建物20以外の建物の情報を含んでいる。電力系統200において、予測対象となる建物20が複数存在し、当該複数の建物20の電力消費量を予測する電力消費量予測システム100が複数備えられている場合には、各システム同士が予測対象としている建物の情報を、通信網30を介して送受信するように構成されていてもよい。
【0031】
図3のステップS30では、図2の予測値算出部71は、上記取得した使用予定情報D1と標準電力消費量情報D2とに基づいて、予測値Aを算出する。予測値算出部71は、第2取得部62が取得した標準電力消費量情報D2に含まれる複数のデータの条件を参照して、第1取得部61が取得した使用予定情報D1に含まれるデータの条件と合致度が高いデータを抽出する。ここでの「合致度が高い」とは、取得した使用予定情報D1に含まれるデータの条件との誤差が小さいことをいう。なお、「合致度が高い」には、取得した使用予定情報D1に含まれるデータの条件とすべて一致するものも含む。そして、予測値算出部71は、標準電力消費量情報D2から抽出された合致度が高いデータに含まれる実績値(kWh)を、予測対象とする建物20の予測値Aとして設定する。
【0032】
予測値算出部71は、予測対象期間、建物の種類、予測対象期間における建物の使用人数、予測対象期間における電力負荷の稼働台数のうち、少なくともいずれか一つの条件の合致度が高いものを抽出するように構成されているとよい。また、電力消費量は季節によって左右されると推測される。このため、予測値算出部71は、標準電力消費量情報D2から建物20の予測対象期間と季節的な合致度が高い期間のみが抽出されるように構成されていてもよい。予測値算出部71が標準電力消費量情報D2から抽出するデータの個数は特に限定されない。取得した使用予定情報D1と最も合致度がデータのみを抽出してもよいし、取得した使用予定情報D1と合致度が高いデータを複数抽出してもよい。予測値算出部71は、例えば、取得した使用予定情報D1と合致度が高いデータを標準電力消費量情報D2から複数抽出し、当該抽出した複数のデータに含まれる実績値の平均値を予測値Aとして算出するように構成されているとよい。そして、算出された予測値Aは、建物20の管理番号と紐づけられて第1記憶部81において記憶される。
【0033】
次いで、図3のステップS40では、図2の補正予測値算出部72は、取得した建物20の過去の電力消費量の予測値Bおよび実績値Bに基づいて、予測値Aを補正し補正予測値aを算出する。当該建物20の過去の電力消費量の予測値Bおよび実績値Bは、第1記憶部81に建物20の管理番号と紐づけられて記憶されている。建物20の過去の電力消費量の予測値Bとは、上記予測値算出部71が過去に算出した予測値である。また、建物20の予測対象期間よりも過去の電力消費量の実績値Bとは、予測値Bが算出されたときの建物20の実際の電力消費量(kWh)である。すなわち、予測値Bと実績値Bとは対応する関係にある。実績値Bは、後述する第3取得部63が予測対象期間よりも過去に取得した建物20の電力消費量(kWh)である。
【0034】
ここで、予測値算出部71が算出した予測値Aは、上述したように使用予定情報D1に含まれる種々の条件と合致度が高いデータを標準電力消費量情報D2に含まれるデータから抽出して予測される値であり、必ずしも建物20の性質(例えば、建物20に備えられ得る電力負荷22の個々の電力消費量や、建物20を使用する建物管理者の平均的な電力負荷22の使用状況等)を反映するものではない。また、建物管理者が入力した使用予定情報D1は、建物管理者の性格に依存する可能性が高く、真面目な建物管理者であれば使用予定情報D1は正確な情報である一方で、不真面目な建物管理者であれば使用予定情報D1は不正確な情報となり得る。また、来客予定がある場合に建物管理者は、例えば電力負荷22の一種であるエアコンの設定温度を、来客予定がない場合とは異なる温度に設定する可能性がある。すなわち、同じ電力負荷22の稼働台数、同じ使用時間であっても、来客予定がある場合には普段より建物20の電力消費量が増加することなども予測される。このように、予測対象期間における使用人数や電力負荷22の稼働台数等を取得し、標準的な電力消費量に当てはめて予測値Aを算出した場合には、実績値と予測値との誤差(乖離の程度)が大きくなる。言い換えれば、使用予定情報D1と標準電力消費量情報D2とに基づいて算出された予測値Aの予測精度(予測値Aの確からしさ)は、十分であるとは言い難い。このような予測精度が不十分な予測値Aが合計されて、電力系統200の電力消費量の予測に活用された場合には、実際の電力消費量とは大きく外れた値になる可能性がある。
そこで、ここに開示される電力消費量予測システム100では、予測対象期間よりも過去の建物20における電力消費量の予測値Bおよび実績値Bに基づいて、実績値と予測値との誤差(乖離の程度)を、予測値Aに反映させることで補正予測値aを算出する。これにより、建物20における実績値と予測値との乖離の程度を反映させることができるため、各建物の特色に応じた補正予測値aを算出することができ、より精度の高い電力消費量の予測を行うことができる。例えば、このような予測精度が高い補正予測値aを活用して電力系統200の電力需給バランスを調整することで、より的確な電力需給バランスの調整を行うことができる。
【0035】
好ましい一態様では、補正予測値算出部72は、例えば、建物20の過去の電力消費量の実績値Bと建物20の過去の電力消費量の予測値Bとの差分を予測値Aに反映させることによって補正予測値aを算出するように構成されている。より具体的には、まず、式:補正率X=(実値B-予測値B)/予測値B;より過去のそれぞれの所定期間における補正率Xを算出する。次いで、かかる補正率Xの平均値Xavgを算出する。そして、式:補正予測値a=予測値A+(予測値A×補正率Xの平均値Xavg);から補正予測値aを算出する。これにより、補正予測値算出部72は、建物20の過去の電力消費量の予測値Bと、実績値Bとに基づいて、補正予測値aを算出することができる。算出された補正予測値aは、第1記憶部81において建物20の管理番号と紐づけて記憶される。
【0036】
補正率Xは、所定の建物20の電力消費量の傾向を示すものであり得る。予測値Aは、言い換えれば、取得した使用予定情報D1の条件と近い条件の建物の標準的な電力消費量であるといえる。ここで、補正率Xが正の値である場合には、使用予定情報D1の条件と近い条件の標準的な建物の傾向から予測される電力消費量よりも、当該建物20の電力消費量が多い傾向にあるといえる。一方で、補正率Xが負の値である場合には、標準的な建物の傾向から予測される電力消費量よりも、当該所定の建物20の電力消費量が少ない傾向にあるといえる。すなわち、かかる補正率Xを用いて補正予測値aを算出することにより、予測対象としている建物20の電力消費量の傾向を反映させることができる。
【0037】
なお、補正予測値算出部72は、建物20の過去の電力消費量の予測値Bと、建物20の過去の電力消費量の実績値Bと、予測値算出部71が算出した予測値Aを入力データとし、補正予測値aが出力データとなるようにニューラルネットワークなどを用いた機械学習などで学習した学習モデルを構築してもよい。また、上記補正予測値算出部72によって算出された補正予測値aは、通信網30を介して外部の機器(例えばほかの電力消費量予測システム100や管理装置40)に送信されるように構成されていてもよい。
【0038】
特に限定されるものではないが、上記補正予測値算出部72が算出した補正予測値aを建物管理者に提示する機構を備えていてもよい。例えば、算出された補正予測値aが、入力端末90の画面91に表示されるように構成されているとよい。かかる補正予測値aが建物管理者に対して提示されることにより、建物管理者が電力消費量を意識した行動をとることが推測される。例えば、電力負荷22の過度な使用を抑制すること等が期待される。
【0039】
図3のステップS50では、図2の第3取得部63は、予測対象期間における建物20の実際の電力消費量の実績値A(kWh)を取得する。電力消費量の取得方法は特に限定されない。例えば、建物20に備えられ得る電力量計等(例えばリアルタイムの消費電力を測定可能な電力量計等)から、通信網30を介して取得することができる。取得された電力消費量の実績値Aは、第1記憶部81において、建物の管理番号と紐づけられて記憶される。
【0040】
補正予測値aを建物管理者に対して提示する機構を備える場合には、建物管理者に対してインセンティブを付与するインセンティブ算出部73を備えていてもよい。インセンティブ算出部73は、上記取得した予測対象期間における建物20の電力消費量の実績値Aと、補正予測値aとの誤差(乖離)が少ない建物管理者に対して付与すべきインセンティブを算出するように構成される。例えば、補正予測値aと実値Aとの差分が小さければ小さいほど、多くのインセンティブを算出するように構成されるとよい。ここで、インセンティブとは、特に限定されるものではないが例えば、電気料金の割引を受けられるクーポンや、特定の商品と交換できるポイント等であり得る。また、本明細書において、「インセンティブを付与する」とは、例えば第1記憶部81に記憶されるデータベースにおいて、建物20の管理番号と当該インセンティブとが紐づけられて登録されるものをいう。ただし、例えばインセンティブが電子的にやり取りできるもの、例えば電子クーポン等である場合には、建物管理者が使用する入力端末90に送信することを、インセンティブを付与する、としてもよい。
かかる構成によれば、提示された補正予測値aと実値Aとを近づける行動をとるように、建物管理者に対して促すことができる。これにより、より予測値と実値との誤差を小さくすることができ、電力消費量の予測精度を向上させることができる。
【0041】
以上により、ここに開示される電力消費量予測システム100における予測処理が実現される。ここに開示される技術において算出される補正予測値aは、予測値Aを算出し、当該予測値Aを予測対象としている建物20の電力消費量の傾向を反映させて補正して算出した値である。したがって、従来よりも高い予測精度を有する電力消費量の予測値である。このような予測精度の高い電力消費量の予測値であれば、複数のデータを合計した際にも電力消費量の実績値との誤差が大きくならないため有用である。また、かかる補正予測値aは、電力系統200の電力消費量を予測する手段の一つとしても有用である。
【0042】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、ここに開示される発明の実施形態は、種々変更することができ、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わせられ得る。
【符号の説明】
【0043】
10 送電網
12 送電線
20 建物
22 電力負荷
24 蓄電装置
26 発電装置
30 通信網
40 管理装置
45 大規模発電設備
46 既設送電線
60 通信装置
61 第1取得部
62 第2取得部
63 第3取得部
70 予測装置
71 予測値算出部
72 補正予測値算出部
73 インセンティブ算出部
81 第1記憶部
82 第2記憶部
90 入力端末
91 画面
92 入力手段
93 端末制御部
100 電力消費量予測システム
200 電力系統

図1
図2
図3
図4
図5