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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】車上装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/40 20060101AFI20240531BHJP
   B61L 25/02 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B60L15/40 G
B61L25/02 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022020605
(22)【出願日】2022-02-14
(65)【公開番号】P2023097302
(43)【公開日】2023-07-07
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2021212324
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】石川 了
(72)【発明者】
【氏名】國分 壯
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-225708(JP,A)
【文献】特開2013-244758(JP,A)
【文献】特開平02-237403(JP,A)
【文献】特開2013-138603(JP,A)
【文献】特開2009-280126(JP,A)
【文献】特開2019-027998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/40
B61L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上子を検出する地上子検出手段と、
GNSS(Global Navigation Satellite System)による経緯度を測位する測位手段と、
車輪又は車軸の回転に応じて線路起点からの走行距離を算出することで現在走行位置を算出する走行位置算出手段と、
前記地上子毎に、当該地上子の設置位置経緯度と、当該地上子の設置位置キロ程と、当該地上子の種別と、当該地上子の前記種別に応じた制御情報と、を含む属性情報を記憶する属性情報記憶手段と、
速度制限箇所に係わる制限速度および始終端位置のキロ程と、線路の勾配箇所に係わる勾配の値および始終端位置のキロ程と、を含む線路条件情報を記憶する線路条件情報記憶手段と、
前記地上子検出手段による検出がなされた際に前記測位手段から測位経緯度を取得し、当該測位経緯度と、前記属性情報記憶手段に記憶されている前記地上子毎の設置位置経緯度と、に基づいて、前記地上子検出手段により検出された地上子を特定地上子として特定する特定手段と、
前記特定地上子の前記設置位置キロ程に基づいて前記現在走行位置を補正する補正手段と、
前記現在走行位置と前記線路条件情報とに基づいて列車の速度制御を行う第1の速度制御手段と、
を備え
前記地上子には、停止制御を種別とする停止制御用地上子が含まれ、
前記停止制御用地上子は、内方の対応信号機が停止現示の場合にのみ前記地上子検出手段により検出可能に共振回路を構成する地上子であり、
前記第1の速度制御手段による速度制御が行われている際に前記停止制御用地上子の設置位置を通過した場合に、a)当該停止制御用地上子が前記地上子検出手段によって検出されなかったときには、前記第1の速度制御手段による速度制御を継続し、b)当該停止制御用地上子が前記地上子検出手段によって検出されて前記特定手段によって当該停止制御用地上子が特定地上子として特定されたときには、当該停止制御用地上子の前記制御情報に基づく速度制御に切り替え、c)当該停止制御用地上子が前記地上子検出手段によって検出されて前記特定手段によって当該停止制御用地上子が特定地上子として特定されなかったときには、前記列車を停止させるブレーキ制御を行う第2の速度制御手段、
を更に備える車上装置。
【請求項2】
前記属性情報において前記種別が前記停止制御である前記地上子の前記制御情報は、停止制御開始点キロ程を含み、
前記第2の速度制御手段は、前記b)において、前記停止制御開始点キロ程と、前記線路条件情報とに基づいて、停止制御に用いる停止制御開始時初速度および停止制御適用勾配を設定することと、前記停止制御開始時初速度および前記停止制御適用勾配に基づいて、前記停止制御開始点キロ程を停止制御開始位置とする速度パターンを照査速度として設定することと、を実行し、前記現在走行位置と、前記照査速度と、に基づいて速度制御を行う、
請求項に記載の車上装置。
【請求項3】
前記属性情報において前記種別が前記停止制御である前記地上子の前記制御情報は、停止限界点キロ程を更に含み、
前記第2の速度制御手段は、前記速度パターンを前記停止限界点キロ程までに停止させるパターンとして設定する、
請求項に記載の車上装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平成17年のJR福知山線脱線事故を契機として鉄道技術基準が改正され、信号機の現示情報、および、線路の条件に応じて自動的に列車を減速させ、又は停止させる装置の導入が義務化された。これにより、鉄道各社は、信号機の現示情報、および、線路の条件に応じたATS(Automatic Train Stop)装置を導入する必要が生じた。
【0003】
このようなATS装置の一例として、トランスポンダ式の地上子を線路に設置して各種の情報を車上側に送信し、車上側で速度照査パターンを作成して列車の速度制御を行う技術が知られている(例えば、特許文献1の[0004]~[0005]段落を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-138603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トランスポンダ式ではない既存の地上子をトランスポンダ式の地上子に置き換えて、ATS装置に係る全般システムを刷新するためには多額のコストが必要となる。そのため、コスト面で導入が困難な鉄道線区が存在する。このような事情から、トランスポンダ式の地上子のような様々な情報を地上から車上に送信可能な地上子ではなく、地上から車上に送信できる情報が限られた既存の地上子(例えば、ATS-S形と呼ばれるATS装置の地上子)を利用して列車の速度制御を行う技術が望まれている。具体的には、例えば、車上側で照査速度の速度パターンを作成する技術を、既存の地上子を利用して実現するといった要望である。既存の地上子を利用して列車の速度制御を行うために重要な要素技術の1つが、列車が検出した地上子が、車上側で記憶している何れの地上子なのかを正しく特定する技術である。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、トランスポンダ式の地上子のような様々な情報を地上から車上に送信可能な地上子ではなく、既存の地上子を用いた列車の速度制御を実現するために、その既存の地上子を正しく特定するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の発明は、地上子を検出する地上子検出手段(例えば、図1等の車上子110)と、GNSS(Global Navigation Satellite System)による経緯度を測位する測位手段(例えば、図6の測位部120)と、車輪又は車軸の回転に応じて線路起点からの走行距離を算出することで現在走行位置を算出する走行位置算出手段(例えば、図6の走行位置算出部161)と、前記地上子毎に、当該地上子の設置位置経緯度と、当該地上子の設置位置キロ程と、を含む属性情報を記憶する属性情報記憶手段(例えば、図6の車上記憶部190、地上子属性情報200)と、前記地上子検出手段による検出がなされた際に前記測位手段から測位経緯度を取得し、当該測位経緯度と、前記属性情報記憶手段に記憶されている前記地上子毎の設置位置経緯度と、に基づいて、前記地上子検出手段により検出された地上子を特定地上子として特定する特定手段(例えば、図6の地上子特定部162)と、前記特定地上子の前記設置位置キロ程に基づいて前記現在走行位置を補正する補正手段(例えば、図6の走行位置補正部163)と、を備える車上装置である。
【0008】
第1の発明によれば、車上装置において、設置位置経緯度と、線路上の地上子の線路起点からの設置位置キロ程とを含む属性情報を記憶しておき、地上子を検出した場合には、検出時の測位経緯度と、地上子毎の設置位置経緯度とから、検出された地上子を特定地上子として特定することができる。そして、特定地上子の設置位置キロ程を取得し、車上で随時算出している現在走行位置を、取得した特定地上子の設置位置キロ程で補正することができる。これによれば、トランスポンダ式の地上子のように様々な情報を地上から車上に送信することなく、地上子を特定することにより、特定した地上子の設置位置キロ程で現在走行位置を補正することが可能となる。
【0009】
また、第2の発明は、前記属性情報は、当該地上子の種別と、当該地上子の前記種別に応じた制御情報と、を更に含み、速度制限箇所に係わる制限速度および始終端位置のキロ程と、線路の勾配箇所に係わる勾配の値および始終端位置のキロ程と、を含む線路条件情報を記憶する線路条件情報記憶手段(例えば、図6の車上記憶部190、線路条件情報210)と、前記地上子毎の前記属性情報から前記特定地上子の前記制御情報を取得し、前記現在走行位置と、前記特定地上子の前記制御情報と、前記線路条件情報と、に基づいて列車の速度制御を行う速度制御手段(例えば、図6の速度制御部165)と、を更に備える第1の発明の車上装置である。
【0010】
第2の発明によれば、特定地上子の制御情報を取得して、列車の速度制御に用いることができる。これによれば、トランスポンダ式の地上子のように様々な情報を地上から車上に送信することなく、地上子を特定することにより、特定した地上子の制御情報を用いた列車の速度制御が実現できる。
【0011】
また、第3の発明は、前記地上子には、停止制御を種別とする地上子が含まれ、前記属性情報において前記種別が前記停止制御である前記地上子の前記制御情報は、停止制御開始点キロ程を含み、前記速度制御手段は、前記特定地上子の前記種別が前記停止制御である場合に、前記停止制御開始点キロ程と、前記線路条件情報とに基づいて、停止制御に用いる停止制御開始時初速度および停止制御適用勾配を設定することと、前記停止制御開始時初速度および前記停止制御適用勾配に基づいて、前記停止制御開始点キロ程を停止制御開始位置とする速度パターンを照査速度として設定することと、を実行し、前記現在走行位置と、前記照査速度と、に基づいて前記速度制御を行う、第2の発明の車上装置である。
【0012】
第3の発明によれば、種別が停止制御である地上子を検出し、当該地上子を特定した場合に、当該地上子の制御情報として設定されている停止制御開始点キロ程を取得することができる。そして、停止制御開始点キロ程を停止制御開始位置として停止させる速度パターンを照査速度として設定して、現在走行位置と、照査速度とに基づいて列車の速度制御を行うことができる。
【0013】
また、第4の発明は、前記属性情報において前記種別が前記停止制御である前記地上子の前記制御情報は、停止限界点キロ程を更に含み、前記速度制御手段は、前記速度パターンを前記停止限界点キロ程までに停止させるパターンとして設定する、第3の発明の車上装置である。
【0014】
第4の発明によれば、種別が停止制御である地上子を検出し、当該地上子を特定した場合に、当該地上子の制御情報として設定されている停止限界点キロ程を取得することができる。そして、停止限界点キロ程までに停止させる速度パターンを照査速度として設定して、現在走行位置と、照査速度とに基づいて列車の速度制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】車上装置を含む全体システムを示す図。
図2】地上子属性情報のデータ構成例を示す図。
図3】線路条件情報のデータ構成例を示す図。
図4】地上子特定処理を説明する図。
図5】速度制御処理を説明する図。
図6】車上装置の構成例を示すブロック図。
図7】列車制御処理の流れを示すフローチャート。
図8】変形例における地上子属性情報のデータ構成例を示す図。
図9】変形例における速度制御処理を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付す。
【0017】
図1は、本実施形態における車上装置10を含む全体システムを示す図である。本実施形態の車上装置10は、信号の現示および線路の条件に応じて照査速度を設定し、この照査速度に抵触する速度に達した場合に自動的に制動制御(ブレーキ制御)を発動することで列車1を減速させ、又は停止させる装置であり、線路3に沿って設置された地上子5を検出して、列車1の速度制御を行う。地上子5は、トランスポンダ式の地上子のような様々な情報を地上から車上に送信可能な地上子ではなく、地上から車上に送信できる情報が限られた共振回路よりなる受動型の地上子であり、例えばATS-S形と呼ばれるATS装置の地上子である。
【0018】
ここで、本実施形態の地上子5には、種別が「位置補正」である地上子5(例えば、図1の地上子5a)と、種別が「停止制御」である地上子5(例えば、図1の地上子5b)と、の2種類があり、それぞれ適所に設置されている。種別が「位置補正」である地上子5(5a)は、常時、共振回路を構成している。種別が「停止制御」である地上子5は、当該地上子5の内方直近の信号機(以下「内方直近信号機」ともいう)が停止現示である場合にのみ共振回路を構成する。図1の例では、地上子5bは、信号機7が停止現示の場合に共振回路を構成する。一方、列車1には、車体底部に車上子110が設けられている。車上装置10は、車上子110によって地上子5を検出することで、列車1が当該地上子5の設置位置を通過したことを検出する。
【0019】
また、車上装置10は、列車1の走行位置の経緯度を測位する測位部120(図6を参照)と、線路3上の列車1の走行位置(現在走行位置)を随時算出する走行位置算出部161(図6を参照)と、を備える。
【0020】
測位部120は、GPS(Global Positioning System)に代表されるGNSS(Global Navigation Satellite System)による測位を行う。例えば、測位部120は、GPS衛星9からの信号を受信するGPSモジュールやGPS受信機等によって実現できる。GPS以外のGalileoや北斗衛星測位システム(BeiDou)を利用することとしてもよい。後述する地上子特定処理では、車上装置10は、測位部120により得られる測位箇所の地球球面座標(緯度・経度・高度)を、測位経緯度として取得する。取得した測位経緯度は、測位経緯度情報193(図6を参照)として記憶される。
【0021】
走行位置算出部161は、車輪又は車軸の回転に応じて線路起点からの走行距離を算出することで、現在走行位置を算出する。以下、線路起点からの線路距離によって示される線路上の位置のことを「キロ程」という。例えば、走行位置算出部161は、地上子を検出・特定することで得られる設置位置キロ程(図2を参照)に、回転検出器13の検出信号に基づく列車1の走行距離を加算することで、現在走行位置(キロ程)を随時算出する。回転検出器13は、車輪又は車軸の回転を検出するパルスジェネレータや速度発電機等で構成される。算出した現在走行位置は、走行位置情報195(図6を参照)として随時更新・記憶される。
【0022】
また、車上装置10には、検出対象の地上子(列車1が走行する線路3上の全ての地上子5)の属性情報である地上子属性情報200と、列車1が走行する線路3の条件に係る線路条件情報210と、が記憶されている。そして、車上装置10は、車上子110による地上子5の検出のたびに、1)当該地上子5が検出対象の地上子5のうちの何れに該当するのかを特定する地上子特定処理と、2)特定された地上子(特定地上子)5の属性情報をもとに列車1の現在走行位置を補正する走行位置補正処理と、3)制御情報を取得する制御情報取得処理と、4)列車1の現在走行位置から内方の線路3の条件に従って列車1の速度制御を行う速度制御処理と、を実行する。
【0023】
1.地上子属性情報について
図2は、地上子属性情報200のデータ構成例を示す図である。図2に示すように、地上子属性情報200は、検出対象の地上子毎に、該当する地上子を識別するための地上子番号201と、当該地上子の属性情報203とを対応付けて設定したデータテーブルである。
【0024】
属性情報203には、設置位置経緯度と、設置位置キロ程と、種別とが設定される。
【0025】
設置位置経緯度には、該当する地上子の設置位置の経緯度が設定される。
【0026】
設置位置キロ程には、当該地上子の線路上の位置を表す設置位置のキロ程が設定される。図1の地上子5aの例では、図示しない線路起点から地上子5aまでの線路距離(つまり、地上子5aのキロ程)が、設置位置キロ程として設定される。同様に、図1の地上子5bの例では、図示しない線路起点から地上子5bまでの線路距離(地上子5bのキロ程)が、設置位置キロ程として設定される。
【0027】
種別には、「位置補正」又は「停止制御」が設定される。
【0028】
また、属性情報203には、当該地上子の種別に応じた制御情報が設定される。例えば、図2における地上子番号「No.4」のように、種別が「停止制御」である地上子の属性情報203には、停止制御開始点の線路上の位置を表す停止制御開始点キロ程、等の制御情報が設定される。
【0029】
2.線路条件情報について
図3は、線路条件情報210のデータ構成例を示す図である。線路条件情報210は、線路条件箇所の情報として、鉄道技術基準第57条の解釈基準5に基づく線路の条件に応じた速度制限箇所に係わる制限速度および始終端位置と、線路の勾配箇所に係わる勾配の値および始終端位置と、を記憶する。
【0030】
鉄道技術基準第57条の解釈基準5に基づく線路の条件に応じた速度制限箇所は、a)曲線区間、b)分岐器区間、c)速度を制限している構造物区間、d)線路終端部、e)所定の踏切道、f)所定の下り勾配、のうちの何れかである。e)の所定の踏切道は、当該地上子について内方に踏切道がある場合であって、「踏切遮断機の遮断動作が終了していない踏切道に進入するおそれのある場合」に該当する踏切道である。該当する踏切道がある場合には、当該踏切道の箇所に係わる制限速度および始終端位置が設定される。
【0031】
本実施形態では、線路条件情報210は、図3に示すように、キロ程(線路起点からの線路距離)と対応付けて、当該キロ程における制限速度と、勾配とを記憶したデータテーブルとして用意される。
【0032】
3.地上子特定処理について
図4は、地上子特定処理を説明するための説明図である。図4では、列車1が走行する線路3上の地上子の設置位置経緯度P21,P23を「×」印で示す。また、設置位置経緯度P21の地上子を列車1の車上装置10が検出した際に車上装置10が測位した測位経緯度P3を黒丸印で示す。
【0033】
地上子特定処理では、車上装置10は、車上子110による地上子の検出がなされた際に、測位部120から測位経緯度を取得する。そして、車上装置10は、取得した測位経緯度と、地上子属性情報200に記憶されている地上子毎の設置位置経緯度と、に基づいて、検出された地上子を特定地上子として特定する。
【0034】
具体的には、車上装置10は、検出対象の地上子のうちの、取得した測位経緯度からの距離が測位誤差範囲内の設置位置経緯度の地上子を、特定地上子として(つまり、検出された地上子が当該設置位置経緯度の地上子であるとして)特定する。例えば、図4で説明すると、設置位置経緯度P21に設置された地上子を検出した際に、測位経緯度P3を取得する。次いで、測位経緯度P3からの距離が測位誤差範囲の距離Da以内である設置位置経緯度P21の地上子を、特定地上子として特定する。
【0035】
ここで、測位誤差範囲内(設置位置経緯度が測位経緯度から距離Da以内)に地上子が1つ存在することが、地上子特定の要件となる。測位誤差としての距離Daは、少なくとも20m以下、更に条件を加えれば10m以下も可能である。これにより、設置間隔が距離Daの2倍以上である地上子の特定が可能であり、設置間隔が少なくとも40m、条件を加えれば20mまで、地上子を特定することが可能となる。
【0036】
4.走行位置補正処理について
走行位置補正処理では、車上装置10は、地上子特定処理の結果、地上子が特定された場合(つまり、検出対象の地上子の中に測位誤差範囲内の地上子が1つ存在し、地上子の特定に成功した場合)に、列車の現在走行位置を補正する。
【0037】
具体的には、車上装置10は、特定された地上子(以下適宜「特定地上子」という)の属性情報203を参照し、設置位置キロ程を取得する。そして、車上装置10は、当該設置位置キロ程で現在走行位置を書き換えて走行位置情報195を更新することで、現在走行位置の補正を行う。
【0038】
5.速度制御処理について
速度制御処理では、車上装置10は、列車の現在走行位置と、線路条件情報210と、に基づいてブレーキ制御を発動する速度の基準となる照査速度を設定する。そして、車上装置10は、現在走行位置と、設定した照査速度とに基づいて、列車の速度制御を行う。
【0039】
また、本実施形態の速度制御処理では、車上装置10は、種別が「停止制御」である地上子の検出・特定時に、列車を停止させるための速度パターンを照査速度として設定する。そして、車上装置10は、現在走行位置と、設定した照査速度とに基づいて、列車の速度制御を行う。
【0040】
先ず、図5の例では、キロ程(A)に、種別が「位置補正」である3番の地上子(図2を参照)が存在する。図2の地上子属性情報200において当該地上子の属性情報203には、キロ程(A)が設置位置キロ程として設定されている。したがって、車上装置10は、列車が3番の地上子に差し掛かり、車上子110を介して当該地上子を検出した場合には、地上子特定処理を実行する。そして、当該地上子が3番の地上子であることを特定できた場合には、車上装置10は、走行位置補正処理を実行して、当該地上子の設置位置キロ程(A)で現在走行位置を補正する。
【0041】
そして、速度制御処理では、車上装置10は、以上のように補正しつつ随時算出している現在走行位置と、線路条件情報210においてキロ程と対応付けて設定されている制限速度および勾配と、列車の空走時間や車両減速度、列車長等の列車性能と、に基づいて照査速度を設定する。
【0042】
具体的には、車上装置10は、先ず、走行位置算出部161が算出している現在走行位置に基づいて、線路条件情報210から直近の制限速度の変化点(制限速度が現在走行位置の速度制限から変化する線路上の位置)を検索する。変化点には、キロ程(B)やキロ程(E)のように上位に変化する上位変化点と、キロ程(D)のように下位に変化する下位変化点とがある。車上装置10は、直近の変化点が上位変化点の場合には、上位変化点を列車が抜けきった場合に照査速度を変化後の制限速度とする。例えば、3番の地上子を検出・特定した時点に着目すれば、設置位置キロ程(A)の制限速度は45km/hであり、直近の変化点(B)は制限速度が80km/hに変化する上位変化点である。そのため、着目する時点では、制限速度45km/hを照査速度として、当該照査速度に基づいて列車の速度制御を行う。そして、列車が上位変化点であるキロ程(B)を抜けきった後に、照査速度を変化後の制限速度80km/hとして、当該照査速度に基づいて列車の速度制御を行う。なお、図5では、上位変化点であるキロ程(B)およびキロ程(E)より距離を開けて照査速度を上位に変化させることにより、上位変化点を列車が抜けたことを示している。
【0043】
一方、車上装置10は、直近の変化点が下位変化点の場合には、下位変化点において変化後の制限速度まで減速するための照査速度を設定する。例えば、キロ程(D)は、制限速度が80km/hから55km/hに変化する下位変化点である。この場合は、車上装置10は、変化前の制限速度80km/hから変化後の制限速度55km/hに所定のブレーキ力で減速するのに必要な減速距離を算出する。次に、変化点(D)から減速距離を減算することで、逆算的に減速制御開始点(C)を求める。そして、求めた減速制御開始点(C)までは照査速度を変化前の制限速度80km/hとし、減速制御開始点(C)から変化点(D)までの照査速度を、変化前の制限速度80km/hから変化後の制限速度55km/hに徐々に低下させる速度パターンの照査速度とする。
【0044】
また、車上装置10は、種別が「停止制御」である地上子を検出・特定し、現在走行位置を補正した場合は、当該地上子の内方直近信号機が停止現示であるので、当該地上子に係る停止制御開始点キロ程から制動を開始して列車を停止させる速度パターンを作成し、照査速度を設定する。
【0045】
図5の例では、キロ程(F)に、種別が「停止制御」である4番の地上子(図2を参照)が存在しており、当該地上子の内方直近信号機は信号機7aである。そして、信号機7aの現示は停止現示である。また、図2の地上子属性情報200において当該地上子の属性情報203には、設置位置キロ程としてキロ程(F)が設定され、制御情報のキロ程停止制御開始点としてキロ程(G)が設定されている。
【0046】
したがって、車上装置10は、列車が4番の地上子に差し掛かり、車上子110を介して当該地上子を検出した場合には、地上子特定処理を実行する。そして、当該地上子が4番の地上子であることを特定できた場合には、車上装置10は、走行位置補正処理を実行して、当該地上子の設置位置キロ程(F)で現在走行位置を補正する。
【0047】
続いて、車上装置10は、特定した地上子の種別が「停止制御」であるので、制御情報取得処理を実行する。すなわち、車上装置10は、地上子属性情報200を参照し、当該地上子の属性情報203から制御情報を読み出して、停止制御開始点キロ程(G)を含む当該地上子の制御情報を取得する。
【0048】
そして、車上装置10は、停止制御開始点キロ程(G)から制動を開始し、停止現示の信号機7aまでに停止させる照査速度の速度パターンを、照査速度として設定する。具体的には、先ず、線路条件情報210から現在走行位置を検索し、停止制御に用いる停止制御開始時初速度および停止制御適用勾配を設定する。ここでは、停止制御開始点キロ程(G;14,580m)における制御速度70km/h(図3を参照)を読み出し、停止制御開始時初速度として設定する。また、停止制御開始点キロ程(G;14,580m)における勾配-20‰(図3を参照)を読み出し、停止制御適用勾配として設定する。続いて、設定した停止制御開始時初速度および停止制御適用勾配と、列車性能とに基づいて、停止制御開始点キロ程(G)を停止制御開始位置として停止させる速度パターンを、照査速度として設定する。その後は、車上装置10は、現在走行位置と、照査速度と、に基づいて速度制御を行う。
【0049】
また、上記した地上子特定処理では、検出対象の地上子の中から測位誤差範囲内(図4の距離Da以内)の地上子を特定できず、地上子の特定に失敗する事態も発生し得る。地上子の特定に失敗した場合には、車上装置10は、例えば、非常ブレーキで列車を停止させる。
【0050】
6.車上装置の構成について
図6は、車上装置10の構成例を示すブロック図である。図6に示すように、車上装置10は、車上子110と、測位部120と、操作入力部130と、表示部140と、通信部150と、車上制御部160と、車上記憶部190とを備えて構成される。
【0051】
操作入力部130は、例えば、スイッチやボタン等を有する入力装置であり、操作入力に応じた操作信号を車上制御部160に出力する。表示部140は、例えば液晶表示装置等で実現され、車上制御部160からの表示信号に応じた表示を行う。
【0052】
通信部150は、外部装置との間でデータ通信を行う。例えば、無線通信機、モデム、TA(ターミナルアダプタ)、有線用の通信ケーブルのジャックや制御回路等によって実現できる。
【0053】
車上制御部160は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の電子部品によって実現され、装置各部との間でデータの入出力制御を行う。そして、車上制御部160は、所定のプログラムやデータ、車上子110を介して地上子から取得した現示情報、測位部120による測位経緯度等に基づいて各種の演算処理を行い、車上装置10の動作を制御する。この車上制御部160は、走行位置算出部161と、地上子特定部162と、走行位置補正部163と、制御情報取得部164と、速度制御部165と、特定失敗時速度制御部167と、を含む。これらの機能部は、プログラムを実行することによりソフトウェアとして実現される処理ブロックであってもよいし、ASICやFPGA等のハードウェア回路によって実現される回路ブロックであってもよい。本実施形態では、車上制御部160が列車制御プログラム191を実行することによりソフトウェアとして実現される処理ブロックとして説明する。
【0054】
地上子特定部162は、地上子特定処理を実行する機能部であり、車上子110によって検出された地上子を特定地上子として特定する。具体的には、地上子特定部162は、車上子110による地上子の検出がなされた際に、測位部120による検出時の測位経緯度と、地上子属性情報200に記憶されている地上子毎の設置位置経緯度と、に基づいて、検出された地上子を特定地上子として特定する。
【0055】
走行位置補正部163は、走行位置補正処理を実行する機能部であり、地上子特定部162によって特定された特定地上子の設置位置キロ程(図2を参照)に基づいて、走行位置算出部161が算出している現在走行位置を補正する。
【0056】
制御情報取得部164は、制御情報取得処理を実行する機能部であり、地上子特定部162によって特定された特定地上子に基づいて、地上子属性情報200から特定地上子の制御情報を取得する。
【0057】
速度制御部165は、速度制御処理を実行する機能部であり、現在走行位置と、線路条件情報210とに基づいて照査速度を設定し、当該照査速度に基づく列車の速度制御を行う。また、速度制御部165は、種別が「停止制御」である地上子を検出・特定した場合に、地上子属性情報200から停止制御開始点キロ程を含む特定地上子の制御情報を取得し、現在走行位置と、特定地上子の制御情報(停止制御開始点キロ程)と、線路条件情報210と、に基づいて列車の速度制御を行う。本実施形態では、速度制御部165は、停止制御開始点キロ程を停止制御開始位置として停止させる速度パターンを照査速度として設定し、照査速度に基づく列車の速度制御を行う。列車の走行速度が照査速度に達した場合にブレーキ制御を発動することで、走行速度が照査速度を超えないように制御する。
【0058】
特定失敗時速度制御部167は、検出された地上子の特定に失敗した場合に、例えば、非常ブレーキで列車を停止させる制御を行う。なお、地上子の特定に失敗した場合には、列車を停止させるのではなく、所定の徐行速度まで減速させるようにブレーキ制御を発動する処理を実行することとしてもよい。
【0059】
車上記憶部190は、IC(Integrated Circuit)メモリやハードディスク、光学ディスク等の記憶媒体により実現されるものである。この車上記憶部190には、車上装置10を動作させ、車上装置10が備える種々の機能を実現するためのプログラムや、当該プログラムの実行中に使用されるデータ等が予め記憶され、或いは処理の都度一時的に記憶される。本実施形態では、車上記憶部190には、列車制御プログラム191と、測位経緯度情報193と、走行位置情報195と、地上子属性情報200(図2を参照)と、線路条件情報210(図3を参照)と、が記憶される。
【0060】
7.処理の流れについて
図7は、車上装置10が行う列車制御処理の流れを示すフローチャートである。ここで説明する処理は、車上装置10において、車上制御部160が車上記憶部190から列車制御プログラム191を読み出して実行することで実現される。
【0061】
図7に示すように、列車制御処理では、先ず、速度制御部165が速度制御処理を開始する(ステップS1)。ここで開始する処理によって、速度制御部165は、現在走行位置と、線路条件情報210とに基づいて照査速度を設定し、走行速度が照査速度を超えないようにブレーキ制御を発動する。
【0062】
また、車上子110によって地上子が検出された場合には(ステップS11:YES)、地上子特定部162が、地上子特定処理を実行する。すなわち、先ず、地上子特定部162は、当該地上子の検出がなされた際の測位経緯度を測位部120から取得する(ステップS13)。そして、地上子特定部162は、取得した測位経緯度と、地上子属性情報200に記憶されている地上子毎の設置位置経緯度とに基づいて、検出された地上子を特定する(ステップS15)。例えば、地上子特定部162は、図4を参照して説明した要領で、測位経緯度からの距離が所定の距離Da以内である設置位置経緯度の地上子を、特定地上子として特定する。
【0063】
そして、地上子が特定された(検出された地上子の特定に成功した)場合には(ステップS17:YES)、走行位置補正部163が走行位置補正処理を実行し、現在走行位置を補正する(ステップS19)。すなわち、走行位置補正部163は、当該特定地上子に係る設置位置キロ程で現在走行位置を補正する。
【0064】
続いて、特定地上子の種別が「停止制御」の場合には(ステップS21:YES)、制御情報取得部164が、制御情報取得処理を実行する(ステップS23)。ここでは、制御情報取得部164は、地上子属性情報200を参照し、当該地上子の属性情報203から制御情報を読み出して、当該地上子の制御情報(本実施形態では停止制御開始点キロ程)を取得する。そして、速度制御部165が、速度制御処理を実行する。すなわち、先ず、速度制御部165は、線路条件情報210を参照し、停止制御開始点キロ程をもとに、停止制御に用いる停止制御開始時初速度および停止制御適用勾配を設定する(ステップS25)。続いて、速度制御部165は、停止制御開始時初速度と、停止制御適用勾配とに基づいて、停止制御開始点キロ程を停止制御開始位置として停止させる速度パターンを照査速度として設定する(ステップS27)。そして、速度制御部165は、ステップS27で設定した照査速度に基づく列車の速度制御を行う(ステップS29)。その後、ステップS11に戻る。
【0065】
一方、地上子を特定できなかった(検出された地上子の特定に失敗した)場合には(ステップS17:NO)、特定失敗時速度制御部167が、例えば非常ブレーキで列車を停止させる(ステップS31)。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、車上装置において、検出対象の地上子毎の設置位置キロ程、設置位置経緯度、種別、および種別に応じた制御情報を含む地上子属性情報200と、線路条件箇所(速度制限箇所や線路の勾配箇所)に係わる制限速度および始終端位置を含む線路条件情報210と、を記憶しておく。そして、地上子が検出されたときには、検出時の測位経緯度と、地上子毎の設置位置経緯度とから当該地上子を特定地上子として特定し、車上で随時算出している現在走行位置を、特定地上子の設置位置キロ程で補正することができる。これによれば、トランスポンダ式の地上子のように様々な情報を地上から車上に送信することなく、地上子を特定することにより、特定した地上子の設置位置キロ程で現在走行位置を補正することが可能となる。
【0067】
また、現在走行位置をもとに、線路条件情報210を参照して照査速度を設定し、照査速度に基づく列車の速度制御を行うことができる。具体的には、線路起点からの線路距離(キロ程)と対応付けられた制限速度および勾配の設定をもとに照査速度を設定することができる。地上子を検出・特定した場合であって、当該地上子の種別が「停止制御」である場合には、地上子属性情報200から制御情報として設定されている停止制御開始点キロ程を取得し、停止制御開始点キロ程を停止制御開始位置として停止させる速度パターンを照査速度として設定することができる。そして、照査速度に基づいて、列車の速度制御を行うことができる。これによれば、トランスポンダ式の地上子のように様々な情報を地上から車上に送信することなく、地上子を特定することにより、特定した地上子の制御情報を用いた列車の速度制御が実現できる。
【0068】
なお、本発明を適用可能な形態は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0069】
例えば、種別が「停止制御」である地上子の制御情報に停止限界点キロ程を含めて記憶しておき、特定地上子の種別が「停止制御」の場合に、当該特定地上子の停止限界点キロ程を用いて速度制御処理を行う構成としてもよい。停止限界点キロ程は、図1の地上子5bの例でいえば、図示しない線路起点から信号機7に係る停止限界点P1までの線路距離(信号機7のキロ程から所定距離(例えば10m)手前の位置)として、予め設定される。
【0070】
図8は、本変形例における地上子属性情報200Aのデータ構成例を示す図である。図8に示すように、地上子属性情報200Aは、検出対象の地上子毎に、該当する地上子を識別するための地上子番号201と、当該地上子の属性情報203Aとを対応付けて設定したデータテーブルである。
【0071】
そして、本変形例の地上子属性情報200Aには、図8における地上子番号「No.4」の地上子のように、種別が「停止制御」である地上子の属性情報203Aにおいて、当該地上子の内方直近信号機に係る停止限界点の線路上の位置を表す停止限界点キロ程を含む制御情報が設定される。本実施形態では、種別が「停止制御」である地上子の制御情報には、停止制御開始点キロ程と、停止限界点キロ程とが設定される。図8では、停止制御開始点キロ程が、当該地上子の設置位置キロ程と一致する例を示している。
【0072】
本変形例の速度制御処理では、車上装置10は、種別が「停止制御」である地上子を検出・特定し、現在走行位置を補正した場合は、当該地上子の内方直近信号機が停止現示であるので、特定地上子の停止限界点キロ程までに停止させる速度パターンを、照査速度として設定する。
【0073】
図9は、本変形例の速度制御処理を説明するための図であり、図5と同様に、横軸をキロ程とし、縦軸を速度として、照査速度の設定例を太い実線で示している。本変形例の速度制御処理は、種別が「停止制御」である4番の地上子を検出・特定した場合の処理が、上記実施形態で図5を参照して説明した速度制御処理と異なる。4番の地上子は種別が「停止制御」であるので、地上子属性情報200Aにおいて4番の地上子の属性情報203Aには、制御情報として停止制御開始点キロ程と、停止限界点キロ程と、が設定されている。例えば、設置位置キロ程と同位置のキロ程(F)が停止制御開始点キロ程として設定され、キロ程(H)が停止限界点キロ程として設定されている。
【0074】
本変形例では、車上装置10は、列車が4番の地上子に差し掛かり、車上子110を介して当該地上子を検出した場合には地上子特定処理を実行し、当該地上子が4番の地上子であることを特定できた場合には走行位置補正処理を実行して、当該地上子の設置位置キロ程(F)で現在走行位置を補正する。続いて、車上装置10は、線路条件情報210から現在走行位置を検索し、停止制御に用いる停止制御開始時初速度および停止制御適用勾配を設定する。例えば、図5の例と同様の要領で、停止制御開始点キロ程(F;14,240m)における制御速度70km/h(図3を参照)を読み出し、停止制御開始時初速度として設定する。また、停止制御開始点キロ程(F;14,240m)における勾配-20‰(図3を参照)を読み出し、停止制御適用勾配として設定する。続いて、設定した停止制御開始時初速度および停止制御適用勾配と、列車性能とに基づいて、停止制御開始点キロ程(F)から制動を開始し、停止限界点キロ程(H)までに停止させる速度パターンを、照査速度として設定する。その後は、車上装置10は、現在走行位置と、照査速度と、に基づいて速度制御を行う。
【0075】
本変形例によれば、種別が「停止制御」である地上子を検出し、当該地上子を特定した場合に、特定地上子の内方直近の信号機に係る停止限界点までに停止させる速度パターンを作成して、照査速度を設定することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 車上装置、110 車上子、120 測位部、130 操作入力部、140 表示部、150 通信部、160 車上制御部、161 走行位置算出部、162 地上子特定部、163 走行位置補正部、164 制御情報取得部、165 速度制御部、167 特定失敗時速度制御部、190 車上記憶部、191 列車制御プログラム、193 測位経緯度情報、195 走行位置情報、200,200A 地上子属性情報、210 線路条件情報、1 列車、3 線路、5 地上子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9