(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】バッテリシステムおよびバッテリシステムを制御する方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240531BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20240531BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240531BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240531BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20240531BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/04 G
H02J7/00 P
B60L50/60
B60L58/12
B60L58/18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022175312
(22)【出願日】2022-11-01
【審査請求日】2022-11-22
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519031896
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アイマン アヤド
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-123193(JP,A)
【文献】特開2008-193757(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0118830(US,A1)
【文献】特開2019-110712(JP,A)
【文献】特開2015-213384(JP,A)
【文献】特開2014-226031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/04
B60L 50/60
B60L 58/12
B60L 58/18
G01R 31/396
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリシステム(1)であって、
それぞれ複数のバッテリセル(4)を含む複数の第1のバッテリモジュール(2)と、
それぞれ複数のバッテリセル(5)を含む複数の第2のバッテリモジュール(3)と、
を備え、
各第2のバッテリモジュール(3)は、DCDCコンバータを有するパワーエレクトロニクスユニット(14)を含み、
前記第1のバッテリモジュール(2)と前記第2のバッテリモジュール(3)とが直列に接続されており、前記第1のバッテリモジュール(2)は直接に直列に接続されており、前記第2のバッテリモジュール(3)は各自のパワーエレクトロニクスユニット(14)を介して接続されて
おり、
前記第1のバッテリモジュール(2)は高エネルギセルから構成されており、前記第2のバッテリモジュール(3)は高電力セルから構成されている、
バッテリシステム(1)。
【請求項2】
前記DCDCコンバータは、バックモード、ブーストモード、パススルーモード、バイパスモードおよび/またはオフモードで動作可能である、請求項1記載のバッテリシステム(1)。
【請求項3】
前記パワーエレクトロニクスユニット(14)は、各自の対応するモジュール(3)を、前記モジュール(3)が他のモジュール(2,3)に直列に接続されないバイパスモードへ切り替える手段を含む、請求項1記載のバッテリシステム(1)。
【請求項4】
前記バッテリシステム(1)は、さらに、前記パワーエレクトロニクスユニット(14)を制御するスマートバッテリ管理システム(11)を含み、前記スマートバッテリ管理システム(11)が、
‐充電状態および/または温度および/または前記モジュール(2,3)を挟んだ電圧降下を決定する手段と、
‐各DCDCコンバータのための最適出力電圧を決定する手段と、
‐前記DCDCコンバータの出力電圧が決定された最適出力電圧へ設定されるように前記DCDCコンバータを切り替えることによって前記パワーエレクトロニクスユニット(14)を制御する手段と、
を含む、請求項1記載のバッテリシステム(1)。
【請求項5】
各第1のバッテリモジュール(2)は、バッテリ平衡化のためのセル監視回路(13)を含む、請求項1記載のバッテリシステム(1)。
【請求項6】
請求項1から
5までのいずれか1項記載のバッテリシステム(1)を備えた電気車両。
【請求項7】
請求項1から
5までのいずれか1項記載のバッテリシステム(1)を制御する方法であって、
‐充電状態および/または温度および/またはモジュール(2,3)を挟んだ電圧降下を決定するステップと、
‐各DCDCコンバータのための最適出力電圧を決定するステップと、
‐前記DCDCコンバータの出力電圧が決定された最適出力電圧へ設定されるように前記DCDCコンバータを切り替えることによってパワーエレクトロニクスユニット(14)を制御するステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記方法は、バッテリモジュール(3)に対して決定された最適出力電圧が0Vである場合に、前記DCDCコンバータをバイパスモードへ切り替えることによって、対応するパワーエレクトロニクスユニット(14)を制御するステップを含む、請求項
7記載の方法。
【請求項9】
第1のバッテリモジュール(2)の全てのセル(4)が相互間でかつ他の第1のバッテリモジュール(2)のセル(4)間で平衡化される一方、第2のバッテリモジュール(3)のセル(5)は相互間でのみ平衡化される、請求項
7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリシステムに関し、例えばハイブリッド車両用または完全電気車両用のバッテリシステムに関する。さらに、本発明は、このようなバッテリシステムを制御する方法に関する。
【0002】
バッテリ電気車両またはプラグインハイブリッド電気車両の高電圧バッテリパックは、典型的には、バッテリセルを並列にかつ直列にグループ化してバッテリセルモジュールを組み上げることにより構築されている。この場合、これらのモジュールは、バッテリパックのDCリンクにおいて要求されている高電圧を形成するために直列に接続されている。
【0003】
この種のバッテリパックについて、各モジュールに対するセル監視回路を使用して、各セルの温度および電圧が監視され、データがバッテリ管理コントローラに送信される。バッテリ管理コントローラは、各セルの充電状態およびSOH(健康状態)を判定する。バッテリ管理コントローラは、決定された充電状態およびSOHに従い、公知の方法によってセル電圧を平衡化することができるセル平衡化回路に制御信号を送信する。
【0004】
セルの不平衡は、セルが、容量、内部抵抗、化学的劣化、およびセル間温度に関して異なるという事実から生じる。セルの平衡化は、総記憶容量および寿命の低下をもたらすセルの過充電および過放電を防止するために重要である。さらに、不平衡により過電圧が生じることもあり、こうした過電圧によりセルが破壊されて重大な損傷が引き起こされることもある。
【0005】
セルの不平衡の別の問題は、バッテリの不完全な充電を生じさせ、これにより容量の低下およびバッテリエネルギの不完全な使用をもたらす可能性があるということである。比較的安価であるが低速となる、または比較的高速であるが高価となる、能動平衡化技術および受動平衡化技術が存在する。
【0006】
電気車両におけるバッテリのより効率的な充放電を達成するための他のアプローチが行われてきた。特に、DCDCコンバータは、各モジュールの出力電圧を制御するために各バッテリモジュールに割り当てられている。このようなバッテリシステムは、例えば、独国特許出願公開第1020009027833号明細書および米国特許出願公開第2008/0042493号明細書に開示されている。当該システムにより個々のバッテリモジュールのきわめてフレキシブルな充放電が可能となるが、当該システムは比較的複雑であり、動作時に相当量の熱を生成する多数の電力部品を要する。
【0007】
したがって、本発明の課題は、改善された寿命および容量を有し、安全であって操作が容易なバッテリシステムを提供することである。
【0008】
この課題は、独立請求項によるバッテリシステムによって達成される。
【0009】
有利な実施形態および発展形態は各従属請求項の対象となっている。
【0010】
本発明の一態様によれば、それぞれ複数のバッテリセルを備えた複数の第1のバッテリモジュールと、それぞれ複数のバッテリセルを備えた複数の第2のバッテリモジュールとを備え、各第2のバッテリモジュールは、DCDCコンバータを有するパワーエレクトロニクスユニットを含む、バッテリシステムが提供される。第1のバッテリモジュールと第2のバッテリモジュールとは直列に接続されており、第1のバッテリモジュールは直接に直列に接続されており、第2のバッテリモジュールは各自のパワーエレクトロニクスユニットを介して接続されている。
【0011】
「バッテリモジュール/バッテリセルの数」なる表現は、ここでは、「少なくとも1つのバッテリモジュール/バッテリセル」を示すために使用される。
【0012】
例えば、バッテリシステムは電気車両用のものであり、特にハイブリッド車両用もしくは完全電気車両用のものである。代替的に、バッテリシステムは、定置式の電力貯蔵部の一部であってもよい。例えば、バッテリシステムは、太陽光発電システム用のものであってよい。
【0013】
本発明によれば、バッテリシステムのうち幾つかのバッテリモジュールは、DCDCコンバータを有するパワーエレクトロニクスユニットを備えている。DCDCコンバータは、それぞれ2つの入力端子と2つの出力端子とを有しており、入力端子は、対応するモジュールのバッテリセルに接続されており、出力端子は、隣のバッテリモジュールすなわち後続のバッテリモジュールおよび先行のバッテリモジュールに直列に接続されている。つまり、第2のバッテリモジュールは、各自のパワーエレクトロニクスユニットを介して直列に接続されている。対照的に、第1のバッテリモジュールは、こうしたパワーエレクトロニクスユニットを含んでいないが、直接に隣のバッテリモジュールに直列に接続されている。
【0014】
当該バッテリシステムは、第1のバッテリモジュールがきわめてシンプルに構築され、第2のバッテリモジュールがきわめてフレキシブルに充放電可能となるという利点を有する。特に、第2のバッテリモジュールのそれぞれから引き出される電流を、バッテリモジュールの均一な負荷が保証されるように最適化することができる。さらに、400Vまたは800Vの充電ステーションのいずれからもバッテリを充電することができる。第2のモジュール上のDCDCコンバータにより、DCリンク側の電圧をより高い値に昇圧することができる。
【0015】
種々異なる種類のバッテリセル、特に新たなバッテリセルと既に使用されているバッテリセルとを、バッテリシステムにおいて使用することができる。このことは、必要に応じてバッテリモジュールを選択でき、バッテリセルおよびバッテリモジュールのリサイクルが改善および促進されるという利点を有する。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、第1のバッテリモジュールは高エネルギセルから構成されており(または主に構成されており、または主としてこれを備えているかもしくはこれのみを備えており)、第2のバッテリモジュールは高電力セルから構成されている(または主に構成されている、または主としてこれを備えているかもしくはこれのみを備えている)。
【0017】
高電力セルは、レンジまたはランタイムよりも電力に焦点を当てた用途に使用されるバッテリセルである。今日、高電力セルは、例えば、ニッケルマンガンコバルト酸化物カソードと組み合わされたチタン酸リチウム酸化物アノード、またはグラファイトアノードと組み合わされたリン酸鉄リチウムカソードを有することができる。他方、高エネルギセルは、例えば、ケイ素ドープされたグラファイトアノードおよび遷移金属カソードを有することができる。高エネルギセルは、典型的には、より多量のエネルギ活性材料を含み、より高い容量を有する。概して、高エネルギセルは高エネルギ密度用に最適化されており、高電力セルは高電力密度用に最適化されている。
【0018】
両方のタイプのセルを、例えば電気車両において有利に使用することができるが、高電力セルがトラクションユニットへの接続およびトラクションユニットからの切断が可能なバッテリモジュールとしてグループ化される場合に、高エネルギセルと高電力セルとを組み合わせることが特に有利である。当該実施形態によれば、高エネルギセルを備えた第1のバッテリモジュールは、基本モード、例えば市街地での低パフォーマンス走行において電気車両にエネルギを供給するために使用され、これに対して、高電力セルから構成されている(または主に構成されている、または主としてこれを備えているかもしくはこれのみを備えている)第2のバッテリモジュールは、例えば高速道路走行時かつ/または急加速時に高パフォーマンスが必要とされる状況において付加的に接続されうる。
【0019】
DCDCコンバータは、好ましくは、バックモード、ブーストモード、パススルーモード、バイパスモード、および/またはオフモードで動作可能である。好ましくは、第2のバッテリモジュールに割り当てられたパワーエレクトロニクスユニットの全てのDCDCコンバータがこれらのモードで動作可能である。したがって、DCDCコンバータを使用して、各第2のバッテリモジュールの出力電圧をフレキシブルに調整することができる。さらに、各第2のバッテリモジュールは、そのバッテリセルからエネルギが引き出されないようにバイパス可能である。
【0020】
一実施形態によれば、パワーエレクトロニクスユニットは、各自の対応するモジュールを、各モジュールが他のモジュールに直列に接続されないバイパスモードへ切り替える手段を含む。モジュールをバイパスモードへ切り替える当該手段は、特に、少なくとも1つのDCDCコンバータおよび各自の対応するコントローラを備えたパワーエレクトロニクスユニット、特にバッテリ管理システムであってよい。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、バッテリシステムは、パワーエレクトロニクスユニットを制御するスマートバッテリ管理システムをさらに含み、ここで、スマートバッテリ管理システムは、充電状態および/または温度および/またはモジュールを挟んだ電圧降下を決定する手段と、各DCDCコンバータのための最適出力電圧を決定する手段と、出力電圧が決定された最適出力電圧に設定されるようにDCDCコンバータを切り替えることによってパワーエレクトロニクスユニットを制御する手段とを含む。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、各第1のバッテリモジュールは、バッテリ平衡化のための監視回路を含む。これにより、DCDCコンバータを含むパワーエレクトロニクスユニットを備えていない第1のバッテリモジュールのセルが充電中および放電中に平衡化されることが保証される。有利には、第2のバッテリモジュールもバッテリ平衡化のための監視回路を含むが、ここでの平衡化は、それぞれ異なる第2のモジュールのセル間ではなく、モジュールレベルのみで行われる。
【0023】
本発明の一態様によれば、電気車両は上述したバッテリシステムを備えている。電気車両は、例えば、バッテリ電気車両またはプラグインハイブリッド電気車両であってよい。
【0024】
本発明の別の態様によれば、説明しているバッテリシステムを制御する方法が提供される。当該方法は、充電状態および/または温度および/またはモジュールを挟んだ電圧降下を決定することと、各DCDCコンバータのための最適出力電圧を決定することと、出力電圧が決定された最適出力電圧に設定されるようにDCDCコンバータを切り替えることによってパワーエレクトロニクスユニットを制御することとを含む。
【0025】
当該方法は、バッテリシステムに関連して既に説明した利点を有する。
【0026】
一実施形態によれば、バッテリモジュールに対して決定された最適出力電圧が0Vである場合、DCDCコンバータをバイパスモードへ切り替えることによって、パワーエレクトロニクスユニットが制御される。
【0027】
一実施形態によれば、第1のバッテリモジュールの全てのセルは、相互間でかつ他の第1のバッテリモジュールのセル間で平衡化されている(平衡化される)のに対し、第2のバッテリモジュールのセルは相互間でのみ平衡化されている(相互間でのみ平衡化される)。
【0028】
モジュールおよび/またはバッテリのセル上での均一な負荷を達成するために、バッテリセルの平衡化が行われる。セルの平衡化のために、各セルの温度および電圧が決定され、各セルの充電状態が計算される。充電状態の平衡化のために、より高い電圧を有するセルを、均一な充電状態に達するまで小さな負荷で放電させることができる。
【0029】
当該実施形態によれば、第1のバッテリモジュールのセルは、従来の方式で、相互間でかつ他の第1のバッテリモジュールのセル間で平衡化される。しかし、第2のバッテリモジュールのセルは相互間でのみ平衡化される。なぜなら、第2のバッテリモジュールは、パワーエレクトロニクスユニットによって相互に分離されているからである。
【0030】
バッテリシステムおよび方法は、バッテリセルの各グループを個別に制御することができ、さらにはバイパスすることもできるという利点を有する。これにより、バッテリセルの利用効率が高まる。バッテリセルの寿命が30%まで延長可能となり、また利用可能なDCリンク電圧の広い範囲によって全体的なシステム効率が向上する。
【0031】
さらに、異なる種類のセルおよび/または異なる銘柄のセルを一緒に使用して、制限なしにバッテリを構成することができ、このバッテリは800Vまでの任意のDC電圧から充電することができる。
【0032】
本発明の実施形態を、概略図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態によるバッテリシステムを示す図である。
【
図2】
図1によるバッテリシステムの一部を示す図である。
【0034】
図1には、バッテリシステム1が示されている。バッテリシステム1は、複数の第1のバッテリモジュール2および複数の第2のバッテリモジュール3を含む。
図1に示されている実施形態では、2つのみの第1のバッテリモジュール2およびN個の第2のバッテリモジュール3が存在する。しかし、代替的な実施形態では、より少数またはより多数の第1のバッテリモジュール2が設けられていてもよい。
【0035】
以下ではバッテリシステムを電気車両用のバッテリシステムとして開示する。当該バッテリシステムは、定置式の電力貯蔵部にも使用可能であることに留意されたい。例えば、バッテリシステムは太陽光発電システムにも使用可能である。
【0036】
バッテリモジュール2,3は、直列に接続されており、バッテリシステム1のメインコンタクタ7,9間にDCリンク電圧が形成される。
【0037】
第1のバッテリモジュール2は、直列接続されかつ並列接続されて第1のバッテリモジュール2を形成する複数のバッテリセル4から構成されている。また、各第1のバッテリモジュール2は、セル電圧およびセル温度を監視するセル監視回路13を有する。セル監視回路13は、バッテリシステム1のバッテリ管理システム11と通信し、バッテリ管理システム11に電圧および温度の測定値を送信する。
【0038】
また、第2のバッテリモジュール3も、相互に直列接続されかつ並列接続されたバッテリセル5から構成されている。第2のバッテリモジュール3もまた、セル電圧およびセル温度を監視するセル監視回路13を含む。さらに、第2のバッテリモジュール3はそれぞれ、DCDCコンバータを有するパワーエレクトロニクスユニット14を備えている。
【0039】
第1のバッテリモジュール2は、第2のバッテリモジュール3とは異なる種類のバッテリセル4を含んでいてよい。特に、バッテリセル4は高エネルギセルであってよく、これに対してバッテリセル5は高電力セルであってよい。
【0040】
DCDCコンバータを使用して、対応する第2のバッテリモジュール3の出力電圧を所定の値に設定することができる。このことを達成するために、パワーエレクトロニクスユニット14のDCDCコンバータは、バックモード、ブーストモードで動作可能であり、好ましくはさらにパススルーモードおよびバイパスモードでも動作可能である。
【0041】
第1のバッテリモジュール1は、接続部18によって示されているように、相互に直列に直接に接続されている。これに対して、第2のバッテリモジュール3は、接続部19によって示されているように、各自のパワーエレクトロニクスユニット14を介して相互に直列に接続されている。電気車両の運転時、すなわちバッテリの充電中またはバッテリからの電流の引き出し中、車両制御ユニット12と通信するバッテリ管理システム11は、第1のバッテリモジュール2および第2のバッテリモジュール3からの全ての電圧測定値および温度測定値を受信し、次いで、各セルの充電状態および各モジュール2,3の平均充電状態を推定する。車両制御ユニット12から要求された所定のDCリンク電圧に対して、バッテリ管理システム11は、どの第2のバッテリモジュール3がDCリンク電圧に寄与しており、よって第1のバッテリモジュール2に接続されるべきかを判別する。当該モジュール3のそれぞれのDCDCコンバータのための基準電圧が計算される。これに従って、第2のバッテリモジュール3のDCDCコンバータは、所望の出力電圧を送出するかまたは所定の第2のバッテリモジュール3をバイパスするように制御される。
【0042】
よって、DCDCコンバータを備えたパワーエレクトロニクスユニット14は、第2のバッテリモジュール3を相互に分離しており、さらにこれを第1のバッテリモジュール2から分離している。
【0043】
電圧および温度の測定値から、バッテリ管理システム11は、第1のバッテリモジュール2間の充電状態の差と、第2のバッテリモジュール3のそれぞれの間の充電状態の差とを計算することができる。その結果、バッテリ管理システム11は、相互に依存する第1のバッテリモジュール2のバッテリセル4が平衡化されるよう、セル監視回路13を制御することができる。第2のバッテリモジュール3はパワーエレクトロニクスユニット14によって相互に分離されているので、モジュールレベルのみで平衡化されなければならない。
【0044】
バッテリシステム1はさらに、バッテリモジュール2,3への接続のための2つのメインコンタクタ7および9を有するバッテリジャンクションボックス6を含んでいる。バッテリジャンクションボックス6は、DC充電ヒューズ16およびメインヒューズ17、ならびにDC充電+、AC充電器+、DCリンク+、AC充電器-、DCリンク-およびDC充電-のための各端子15を含んでいる。
【0045】
通常、バッテリ管理システム11は、バッテリジャンクションボックス6のハウジング内に配置されている。また、バッテリ管理システム11がバッテリジャンクションボックス6外に配置されていてもよい。
【0046】
図2には、
図1によるバッテリシステム1の1つの第2のバッテリモジュール3およびそのパワーエレクトロニクスユニット14が示されている。セル監視回路は
図2には示されていない。この実施形態によれば、パワーエレクトロニクスユニット14は、DCDCコンバータと、パワーエレクトロニクスユニット14の異なる動作モードを制御するための付加的なスイッチとを含む。バック/ブーストモードでは、スイッチS3およびS4がオンとなり、スイッチS1とスイッチS2とが切り替えられる。バック/ブーストモードでは、第2のバッテリモジュール3の充電状態に応じて、かつ車両制御ユニット12からの要求に応じて、端子20,21間の電圧降下を所定の電圧に設定することができる。
【0047】
バイパスモードでは、スイッチS1,S2,S4がオンとなり、スイッチS3がオフとなって、第2のバッテリモジュール3がバイパスされる。当該モードは、特定の第2のバッテリモジュール3が電気車両の動作に寄与しなくてよい場合、または特定の第2のバッテリモジュール3が欠陥を有する場合に、選択可能である。
【0048】
パススルーモードでは、スイッチS1,S3,S4がオンであり、スイッチS2がオフである。当該モードでは、第2のバッテリモジュール3が、出力電圧を調整することなく、従来のモードで第1のバッテリモジュール2として動作する。
【0049】
さらに、パワーエレクトロニクスユニット14は、スイッチS1およびS2がオフであってスイッチS3およびS4がオンであるスタンバイモードと、全てのスイッチがオフであって高電圧が存在しない開回路モードとで動作することができる。
【0050】
スイッチS1,S2,S3,S4は、バッテリ管理システム11によって制御される。