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特許7496864カバーゴム層用ゴム組成物、及び、コンベヤベルト
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  • 特許-カバーゴム層用ゴム組成物、及び、コンベヤベルト 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】カバーゴム層用ゴム組成物、及び、コンベヤベルト
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/32 20060101AFI20240531BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B65G15/32
C08L21/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022188958
(22)【出願日】2022-11-28
(62)【分割の表示】P 2018103763の分割
【原出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2023025116
(43)【公開日】2023-02-21
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2017129274
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】尻池 寛之
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-041062(JP,A)
【文献】特開2015-129232(JP,A)
【文献】特開2015-071489(JP,A)
【文献】特開平10-279036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/32
C08L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鉱石又は石炭を搬送するためのコンベヤベルトの搬送面を構成するカバーゴム層の形成に用いられ、
前記搬送面に対する前記鉄鉱石又は前記石炭の付着を抑制する付着抑制剤をゴムとともに含有し、
前記付着抑制剤として界面活性剤を含み、前記付着抑制剤としてさらに油脂を含んでいるカバーゴム層用ゴム組成物。
【請求項2】
前記付着抑制剤として滑剤を含み、前記ゴムとしてジエン系ゴムとともに熱可塑性エラストマーを含む請求項1記載のカバーゴム層用ゴム組成物。
【請求項3】
前記付着抑制剤として前記界面活性剤と滑剤との両方を含む請求項1又は2に記載のカバーゴム層用ゴム組成物。
【請求項4】
搬送面を構成するカバーゴム層を備えたコンベヤベルトであって、
前記カバーゴム層が、請求項1乃至の何れか1項に記載のカバーゴム層用ゴム組成物によって形成されているコンベヤベルト。
【請求項5】
前記搬送面を構成する第1のカバーゴム層と、
前記搬送面の反対面を構成する第2のカバーゴム層と、を備え、
前記第1のカバーゴム層の厚みが、前記第2のカバーゴム層の厚みよりも厚い請求項記載のコンベヤベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトの搬送面を構成するカバーゴム層の形成に用いられるゴム組
成物と、このゴム組成物で形成されたカバーゴム層を備えたコンベヤベルトとに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベヤは、従来、物品等の搬送装置として広く用いられており、該ベルトコン
ベヤの主要構成部材であるコンベヤベルトとしては、種々の形態のものが知られている。
このコンベヤベルトとしては、前記ベルト本体をゴム組成物で形成させたものが広く用
いられており、例えば、帆布やスチールコードを備えた心体層を2つのカバーゴム層の間
に挟み込んだタイプのものが広く用いられている。
前記コンベヤベルトとしては、長尺帯状のベルトを無端状に加工したベルト本体のみに
よって構成されたものの他に前記ベルト本体の幅方向に延在する横桟を設けたものやベル
ト本体の側縁に沿って延在するよう設けられた耳桟を有するものなどが従来広く知られて
いる。
【0003】
このようなベルトコンベヤは、通常、コンベヤベルトの搬送面を上向きにして搬送物を
搭載し、この状態でコンベヤベルトを周回させて荷下ろし場所まで搬送物を搬送すべく用
いられる。
そして、ベルトコンベヤは、通常、荷下ろし場所においてコンベヤベルトをターンさせ
るように構成されており、このターンによってコンベヤベルトの搬送面を上向きから下向
きへと変化させて搬送面に搭載した搬送物を落下させるように構成されている。
その後、コンベヤベルトは、搬送面を下向きにしたまま荷積み場所まで戻され、再び搬
送面が上向きとなるようにターンして搬送物が搭載される。
【0004】
ところでベルトコンベヤで搬送する搬送物が比較的細かな粒状である場合、振動や周囲
の気流などによって搬送物が搬送途中で飛散するおそれがある。
このような比較的細かな粒状の搬送物の搬送に用いられるコンベヤベルトとしては、従
来、パイプコンベヤなどと称されるコンベヤベルトが知られている(下記特許文献1参照
)。
また、搬送物が比較的細かな粒状であるような場合、搬送物が搬送面に付着し、荷下ろ
し場所で落下せずに荷積み場所に戻る途中で落下してしまうことがある。
このため、上記のパイプコンベヤでは、本来であれば荷下ろし後はコンベヤベルトを筒
状にする必要はないものの付着物が落下することを防ぐために荷積み場所に戻す際にもコ
ンベヤベルトを筒状に丸めるような形で使用されたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-310809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなことからコンベヤベルトのカバーゴム層には、搬送物に対する付着抑制効
果を付与することが要望されている。
そして、このような要望は、比較的細かな粒状の搬送物を搬送するパイプコンベヤだけ
に対して求められているものではなく各種のコンベヤベルトに対して広く一般に求められ
ている事項である。
しかしながら、この種の要望を満足させるための十分な検討が行われておらず、搬送物
の付着が十分抑制されたコンベヤベルトは提供されていない。
そこで本発明は、上記のような問題を満足させることを課題としており、搬送物に対す
る付着性の抑制されたコンベヤベルトを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った結果、コンベヤベルトの搬送面
を構成するカバーゴム層の形成に用いるゴム組成物に界面活性剤や滑剤を含有させること
で上記要望が満足され得ることを見出して本発明を完成させるに至ったものである。
【0008】
即ち、本発明のカバーゴム層用ゴム組成物は、コンベヤベルトの搬送面を構成するカバ
ーゴム層の形成に用いられ、前記搬送面に対する搬送物の付着を抑制する付着抑制剤をゴ
ムとともに含有し、界面活性剤、及び、滑剤からなる群より選択される1種以上が前記付
着抑制剤として含まれている。
【0009】
また、上記課題を解決すべく本発明は、搬送面を構成するカバーゴム層を備えたコンベ
ヤベルトであって、前記カバーゴム層が、上記のようなカバーゴム層用ゴム組成物によっ
て形成されているコンベヤベルトを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、搬送物の付着が抑制されたカバーゴムの形成に有効なゴム組成物が提
供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態のコンベヤベルトの構造を示した概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
なお、ここでは平坦な長尺帯状のベルトが無端状に加工されてなるベルト本体のみを有
し、横桟や耳桟等の備えられていないコンベヤベルトを例にして本発明を説明する。
図1は、本実施形態のコンベヤベルトを示した図で、ベルト本体をその長手方向と直交
する仮想平面によって切断した断面を概略的に示した図である。
【0013】
この図にも示されているように本実施形態に係るコンベヤベルトは、厚み方向に3層の
積層構造を有するベルト本体を備えている。
具体的には、本実施形態のベルト本体1は、2層のカバーゴム層10の間に心体層20
が介装されたものである。
言い換えれば、本実施形態のベルト本体1は、心体層20の表裏両面にカバーゴム層1
0が積層されたものである。
本実施形態におけるコンベヤベルトのベルト本体1は、搬送物が載置される外周面(以
下、「搬送面」或いは「表面」ともいう)を構成する第1のカバーゴム層10aと、内周
面(以下「搬送面の反対面」或いは「裏面」ともいう)を構成する第2のカバーゴム層1
0bとの2層のカバーゴム層の間の心体層20が帆布によって構成されている。
なお、本実施形態においては、前記帆布とカバーゴム層とが図示していない接着ゴムに
よって接着されている。
【0014】
本実施形態におけるコンベヤベルトの前記第1のカバーゴム層10a及び前記第2のカ
バーゴム層10bは、搬送物の付着防止性に優れたゴム弾性体で形成されている。
本実施形態での該ゴム弾性体は、架橋されたゴム組成物からなるものである。
カバーゴム層を形成するカバーゴム層用ゴム組成物(以下、単に「ゴム組成物」ともい
う)は、ゴムと、付着抑制剤とを含んでいる。
該付着抑制剤は、搬送面に対する搬送物の付着を抑制するためのものである。
なお、搬送面に対する搬送物の付着を抑制する効果を発揮して前記付着抑制剤として利
用可能であるかどうかは、後段の実施例において「『付着抑制効果の検証』のための方法
」として具体的に示した方法で確かめることができる。
即ち、付着抑制剤の有無以外に配合内容を共通したゴム組成物によって「付着抑制効果
の検証」を実施し、付着抑制剤を所定以上(例えば、ゴム100質量部に対して10質量
部以上)の割合で配合した検証結果と付着抑制剤を含有させない場合の検証結果とにおい
て有意差が認められれば当該付着抑制剤が有効に機能するものであると判断することがで
きる。
【0015】
本実施形態のゴム組成物は、界面活性剤及び滑剤からなる群から選択される1種以上の
化合物を前記付着抑制剤として含有している。
本実施形態のゴム組成物は、充填剤、架橋剤、及び、添加剤などをさらに含んでいる。
【0016】
本実施形態のゴム組成物は、前記ゴムとしてジエン系ゴムと熱可塑性エラストマーとを
含有している。
本実施形態のゴム組成物に含有されるジエン系ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴ
ム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどが挙げられる。
これらの内、本実施形態のゴム組成物には、天然ゴムとブタジエンゴムとを含有させる
ことが好ましい。
本実施形態のゴム組成物には、市販されている複数種の天然ゴムの中から1種類のみを
選択して含有させても複数種のものをブレンドして含有させてもよい。
ブタジエンゴムについても同様で、市販されている複数種のブタジエンゴムの中から1
種類のみを選択してゴム組成物に含有させても複数種のものをブレンドしてゴム組成物に
含有させてもよい。
【0017】
ゴム組成物が含む全てのゴムに占める天然ゴムの質量割合は、30質量%以上であるこ
とが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが
特に好ましい。
ゴム組成物が含む全てのゴムに占める天然ゴムの質量割合は、95質量%以下であるこ
とが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることが
特に好ましい。
【0018】
ゴム組成物が含む全てのゴムに占めるブタジエンゴムの質量割合は、20質量%以上で
あることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上である
ことが特に好ましい。
ゴム組成物が含む全てのゴムに占めるブタジエンゴムの質量割合は、55質量%以下で
あることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下である
ことが特に好ましい。
【0019】
ゴム組成物に含まれる天然ゴムとブタジエンゴムとの合計量を100質量部とした際に
、これら以外のゴムの含有量は、15質量部未満であることが好ましく、12.5質量部
未満であることがより好ましく、10質量部未満であることが特に好ましい。
ゴム組成物に含まれる天然ゴムとブタジエンゴムとの合計量を100質量部とした際に
、これら以外のゴムの含有量は、0質量部を超えることが好ましく、1質量部を超えるこ
とがより好ましく、2質量部を超えることが特に好ましい。
【0020】
天然ゴム及びブタジエンゴム以外にゴム組成物に含有させることが好適なゴムとしては
、前記熱可塑性エラストマーが挙げられる。
該熱可塑性エラストマーは、例えば、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO
)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー
(TPU)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)とすることができる。
【0021】
前記熱可塑性エラストマーは、例えば、極性の低い低極性ブロックを複数有するブロッ
ク共重合体であることが好ましい。
前記低極性ブロックの構成単位となるモノマーとしては、炭素数2以上のα-オレフィ
ンが挙げられる。
該モノマーは、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテ
ン、1-ヘキセン、1-デセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン
、1-オクテンなどが挙げられる。
前記熱可塑性エラストマーを構成する、複数の低極性ブロックの内の一つの低極性ブロ
ックは、エチレンで構成されていることが好ましく、複数の低極性ブロックの内の他の低
極性ブロックは、α-オレフィンで構成されていることが好ましい。
前記熱可塑性エラストマーは、エチレン・α-オレフィンブロック共重合体であること
が好ましい。
前記熱可塑性エラストマーを構成するα-オレフィンは、1-オクテンであることが好
ましい。
即ち、前記熱可塑性エラストマーは、エチレン・1-オクテンブロック共重合体である
ことが好ましい。
【0022】
ゴム組成物に含まれる天然ゴムとブタジエンゴムとの合計量を100質量部とした際に
、前記第1の熱可塑性エラストマーの含有量は、0.5質量部以上であることが好ましく
、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることが特に好ましい。
ゴム組成物に含まれる天然ゴムとブタジエンゴムとの合計量を100質量部とした際に
、前記第1の熱可塑性エラストマーの含有量は、6質量部以下であることが好ましく、5
質量部以下であることがより好ましい。
【0023】
ゴム組成物に含有させる熱可塑性エラストマーは、前記界面活性剤や前記滑剤とジエン
系ゴムとの親和性を向上させる上において極性基を有する繰り返し単位を備えるものであ
ってもよい。
前記熱可塑性エラストマーは、例えば、ポリアクリル酸エステルブロックなどの高極性
ブロックと該高極性ブロックよりも極性の低い低極性ブロックとを有するブロック共重合
体であってもよい。
前記低極性ブロックの構成単位となるモノマーとしては、炭素数2以上のα-オレフィ
ンが挙げられる。
該モノマーは、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテ
ン、1-ヘキセン、1-デセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン
、1-オクテンなどが挙げられる。
前記高極性ブロックの構成単位となるモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタク
リル酸等の不飽和酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸と炭素数1~
10のアルキルアルコールとから形成されるアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、
メタクリル酸エチル等のメタクリル酸と炭素数1~10のアルキルアルコールとから形成
されるメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビ
ニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸ポリエチレング
リコール、アクリル酸ポリテトラメチレングリコール等のアクリル酸と分子量80~60
00の長鎖グリコールとから形成されるアクリル酸エステル;メタクリル酸ポリエチレン
グリコール、メタクリル酸ポリテトラメチレングリコール等のメタクリル酸と分子量80
~6000の長鎖グリコールとから形成されるメタクリル酸エステル;メタクリル酸グリ
シジル等の不飽和エポキシ化合物;3-ヒドロキシ-1-プロペン、4-ヒドロキシ-1
-ブテン、シス-1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、メタクリル酸2-ヒドロキシエチ
ル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル、クロト
ン酸2-ヒドロキシエチル等の水酸基を有する化合物;マレイン酸、フマル酸、無水マレ
イン酸、マレイミドなどが挙げられる。
【0024】
前記熱可塑性エラストマーが低極性ブロックと高極性ブロックとを含有する場合、前記
熱可塑性エラストマーは、低極性ブロックの質量割合が55質量%以上95質量%以下(
高極性ブロックが5質量%以上45質量%以下)であることが好ましい。
本実施形態のゴム組成物は、熱可塑性エラストマーを1種単独で含有する必要はなく、
複数種類の熱可塑性エラストマーを含有してもよい。
【0025】
前記付着抑制剤としてゴム組成物に含有される界面活性剤としては、例えば、アニオン
系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤な
どが挙げられる。
【0026】
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、ア
ルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルスル
ホン酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、モノアルキルリン酸エス
テル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルナトリウム、脂肪酸エステル
スルホン酸ナトリウム、脂肪酸エステル硫酸エステルナトリウム、脂肪酸アルキロースア
ミド硫酸エステルナトリウム、脂肪酸アミドスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0027】
前記カチオン系界面活性剤としては、例えば、塩化アルキルメチルアンモニウム、塩化
アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキル
ジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルピリジニウムなどが挙げられる。
【0028】
前記ノニオン系界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪
酸エステル、ポリオキシエチレンラノリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタ
ン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、イソプロパノー
ルアミド、アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアミン、ポリオキシエチレンア
ルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0029】
前記両性イオン界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン、アルキルベタイン
、スルホベタイン、ホスホベタインなどが挙げられる。
【0030】
本実施形態のゴム組成物に界面活性剤を含有させる場合、当該界面活性剤は、1種単独
で含有させる必要はなく、複数種類のものを含有させてもよい。
【0031】
前記付着抑制剤としてゴム組成物に含有される滑剤としては、例えば、脂肪酸塩や脂肪
酸アミドなどが挙げられる。
【0032】
前記脂肪酸塩としては、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘミン
酸などの飽和脂肪酸;エルカ酸、オレイン酸、ブラシジン酸、エライジン酸などの不飽和
脂肪酸などの金属塩が挙げられ、これらのマグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩
、カリウム塩などが挙げられる。
前記脂肪酸アミドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステア
リン酸アミド、ベヘミン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ブラシジン酸ア
ミド、エライジン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸
アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドなどが挙げら
れる。
【0033】
本実施形態のゴム組成物に滑剤を含有させる場合、当該滑剤は、1種単独で含有させる
必要はなく、複数種類のものを含有させてもよい。
【0034】
前記滑剤としては、脂肪酸アミドが好適である。
脂肪酸アミドの炭素数は、10~25が好ましく、12~22がより好ましい。
脂肪酸アミドの融点は、40℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上95℃以下が
より好ましい。
【0035】
脂肪酸アミドの融点は、毛細管用いたいわゆる透明法によって測定できる。
具体的には、脂肪酸アミドの融点は、JIS K6220-1:2015「ゴム用配合
剤-有機薬品-試験方法-第1部:全般」の「7.5.2目視法」に基づく試験方法にて
測定することができる。
【0036】
前記滑剤として用いられる脂肪酸アミドは、不飽和結合を有することでゴム組成物を架
橋する際にジエン系ゴムとの間に化学結合を形成させることができ、ブリードアウトによ
ってカバーゴム層から失われてしまうことが抑制され得る。
前記脂肪酸アミドは、よう素価が70以上であることが好ましい。
前記脂肪酸アミドのよう素価は、72以上であることがより好ましい。
該脂肪酸アミドのよう素価は、90以下であることが好ましく、85以下であることが
より好ましく、80以下であることが特に好ましい。
本実施形態において滑剤として用いる脂肪酸アミドは、エルカ酸アミドであることが好
ましい。
【0037】
脂肪酸アミドのよう素価は、JIS K0070:1992「化学製品の酸価、けん化
価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法、」に記載の方法に基づ
いて測定することができる。
【0038】
ゴム組成物に含まれる天然ゴムとブタジエンゴムとの合計量を100質量部とした際に
、前記滑剤の含有量は、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であるこ
とがより好ましく、2質量部以上であることが特に好ましい。
ゴム組成物に含まれる天然ゴムとブタジエンゴムとの合計量を100質量部とした際に
、前記滑剤の含有量は、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であること
がより好ましく、5質量部以下であることが特に好ましい。
【0039】
本実施形態における前記ゴム組成物のゴムには、前記付着抑制剤としてさらに油脂を含
有させることが好ましい。
【0040】
油脂としては炭素数が6個から18個程度の炭化水素鎖(水素が結合した炭素が連鎖状
に結合したもの)の末端にカルボキシル基が結合した脂肪酸や脂肪酸エステルが挙げられ
る。
前記油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、パーム油、やし油などの植物油;牛脂、
ラード、肝油などの動物油;パラフィン系鉱物油などの鉱物油が挙げられる。
【0041】
本実施形態のゴム組成物に油脂を含有させる場合、当該油脂は、1種単独で含有させる
必要はなく、複数種類のものを含有させてもよい。
【0042】
前記界面活性剤、前記滑剤、並びに、前記油脂は、カバーゴムの表面にブリードアウト
して搬送物の付着を抑制する。
そして、前記熱可塑性エラストマーは、このブリードアウトを緩慢にさせる機能を発揮
する。
なかでも前記熱可塑性エラストマーは、前記滑剤の除放性に有効である。
従って、本実施形態のゴム組成物は、前記付着抑制剤として前記滑剤を含み、前記ゴム
がジエン系ゴムとともに熱可塑性エラストマーをさらに含んでいることが好ましい。
【0043】
前記滑剤や前記油脂が不飽和結合を有する場合、搬送面にブリードアウトした後に紫外
線などによって高分子量化して粘着性を有する化合物を生じさせるおそれがある。
そのため、前記滑剤や前記油脂は、不飽和結合が少ないか、不飽和結合が一定以上で日
光に晒されるなどした際にいち早く被膜形成して乾燥」状態になるものが好ましい。
従って、前記滑剤や前記油脂は、JIS K0070-1992「化学製品の酸価、け
ん化価、エステル価、よう素価、水酸基価、及び不けん化物の試験方法」によって求めら
れるよう素価が100以下か130以上かの何れかであることが好ましく、よう素価が9
0以下か150以上かのいずれかであることがより好ましい。
【0044】
本実施形態においては、ゴム組成物に複数の付着抑制剤を含有させることが好ましい。
本実施形態のゴム組成物は、前記付着抑制剤として前記界面活性剤を含み、前記付着抑
制剤としてさらに油脂を含んでいることが好ましい。
本実施形態のゴム組成物は、前記付着抑制剤として前記界面活性剤と前記滑剤との両方
を含んでいることが好ましい。
【0045】
これらの付着抑制剤は、前記ジエン系ゴムに対して所定の割合でゴム組成物に含有させ
ることが好ましい。
付着抑制剤の合計含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して1質量部以上35質量
部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、
8質量部以上17質量部以下であることがさらに好ましい。
【0046】
本実施形態のゴム組成物は、カバーゴム表面への付着抑制剤の過剰なブリードアウトを
抑制する上において相溶化剤をさらに含有することが好ましい。
前記相溶化剤は、熱可塑性樹脂であることが好ましく、低極性ブロックと高極性ブロッ
クとを備えたブロック共重合体であることが好ましい。
前記相溶化剤として用いるブロック共重合体での低極性ブロックは、エチレンで構成さ
れていることが好ましい。
該ブロック共重合体の高極性ブロックは、アクリル酸で構成されていることが好ましい

即ち、本実施形態のゴム組成物は、前記相溶化剤としてエチレン・エチルアクリレート
ブロック共重合体(EEA)を含有することが好ましい。
【0047】
本実施形態のゴム組成物は、エチレン・エチルアクリレートブロック共重合体とは別の
相溶化剤をさらに含有することが好ましい。
即ち、本実施形態のゴム組成物は、エチレン・エチルアクリレートブロック共重合体で
ある第1の相溶化剤と、該第1の相溶化剤とは異なる第2の相溶化剤とを含有することが
好ましい。
【0048】
前記第2の相溶化剤は、第1の相溶化剤と同じか又は異なるエチレン・エチルアクリレ
ートブロック共重合体に対して別のブロック共重合体をグラフトさせたグラフト共重合体
であることが好ましい。
即ち、前記第2の相溶化剤は、エチレン・エチルアクリレートブロック共重合体が主鎖
を構成し、該別のブロック共重合体からなる側鎖を有するグラフト共重合であることが好
ましい。
前記グラフト共重合の側鎖を構成するブロック共重合体は、n-ブチルアクリレート・
2-ヒドロキシプロピルアクリレート・スチレン三元共重合体であることが好ましい。
【0049】
ゴム組成物に含まれる天然ゴムとブタジエンゴムとの合計量を100質量部とした際に
、前記第1の相溶化剤の含有量は、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以
上であることがより好ましく、2質量部以上であることが特に好ましい。
ゴム組成物に含まれる天然ゴムとブタジエンゴムとの合計量を100質量部とした際に
、前記第1の相溶化剤の含有量は、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下
であることがより好ましい。
【0050】
ゴム組成物に含まれる天然ゴムとブタジエンゴムとの合計量を100質量部とした際に
、前記第2の相溶化剤の含有量は、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以
上であることがより好ましく、2質量部以上であることが特に好ましい。
ゴム組成物に含まれる天然ゴムとブタジエンゴムとの合計量を100質量部とした際に
、前記第2の相溶化剤の含有量は、6質量部以下であることが好ましく、5質量部以下で
あることがより好ましい。
【0051】
ゴム組成物に含まれる天然ゴムとブタジエンゴムとの合計量を100質量部とした際に
、全ての相溶化剤の合計含有量は、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上で
あることがより好ましく、4質量部以上であることが特に好ましい。
ゴム組成物に含まれる天然ゴムとブタジエンゴムとの合計量を100質量部とした際に
、全ての相溶化剤の合計含有量は、16質量部以下であることが好ましく、15質量部以
下であることがより好ましく、14質量部以下であることが特に好ましい。
【0052】
本実施形態のゴム組成物は、前記のように充填剤、架橋剤、及び、添加剤をさらに含有
している。
前記充填剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、
クレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
本実施形態のゴム組成物には、充填剤を1種単独で含有させる必要はなく、複数種類の
充填剤を含有させてもよい。
【0053】
上記に例示のもののなかでも、カーボンブラックは、ゴムの補強効果にとりわけ優れて
いることから前記ゴム組成物に含有させることが好ましい。
本実施形態のゴム組成物は、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラック
を20質量部以上100質量部以下含有していることが好ましく、カーボンブラックを3
0質量部以上90質量部以下含有していることがより好ましい。
【0054】
前記ゴム組成物に含有させる架橋剤としては、硫黄や有機過酸化物が挙げられる。
本実施形態のゴム組成物に含有させる架橋剤としては、硫黄が好ましい。
また、前記ゴム組成物には、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンア
ミドなどの加硫促進剤や、酸化亜鉛などの加硫促進助剤などをさらに含有させてもよい。
【0055】
前記添加剤としては、例えば、アミン-ケトン系化合物、芳香族第二級アミン系化合物
、ベンズイミダゾール系化合物、特殊ワックスなどの老化防止剤;難燃剤;耐候剤;など
といった機能性薬剤が挙げられる。
また、前記添加剤としては、例えば、プロセスオイル、素練促進剤、スコーチ防止剤な
どの加工性改良剤が挙げられる。
【0056】
なお、前記コンベヤベルトは、前記第1のカバーゴム層10aと前記第2のカバーゴム
層10bとの形成に、共通するゴム組成物を用いても良く、それぞれを異なるゴム組成物
によって形成させるようにしてもよい。
また、第1のカバーゴム層10aと第2のカバーゴム層10bとは厚みなどが異なって
いても共通していてもよい。
特に、前記コンベヤベルトは、前記第1のカバーゴム層の厚みが、前記第2のカバーゴ
ム層の厚みよりも厚いことが好ましい。
例えば、前記搬送面を構成する第1のカバーゴム層10aの厚みは、前記搬送面の反対
面を構成する第2のカバーゴム層10bの厚みの1.1倍以上であることが好ましく、1
.5倍以上であることがより好ましく、2倍以上であることが特に好ましい。
第1のカバーゴム層10aの厚みは、通常、5mm以上15mm以下とされ、前記第2
のカバーゴム層10bの厚みは、通常、1mm以上5mm未満とされる。
【0057】
前記心体層20を形成させるための帆布については特に限定されることなく一般的なコ
ンベヤベルトに用いられているものを本実施形態においても採用することができる。
また、心体層20は、帆布でなくスチールコードなどを用いて形成してもよい。
【0058】
さらに、前記接着ゴムについても、特に限定されることなく一般的なコンベヤベルトに
用いられているものを本実施形態においても採用することができる。
【0059】
本実施形態のコンベヤベルトは、その製造方法が特に限定されるものではなく、一般的
なコンベヤベルトと同様に製造することができる。
該コンベヤベルトは、例えば、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、オープンロー
ル等を用いてカバーゴム層用のゴム組成物を混練した後、カレンダー等を用いて当該ゴム
組成物をシート状にさせてカバーゴム層用未加硫シートを作製し、接着ゴムを表面担持さ
せた帆布と前記未加硫シートとを加硫一体化させて製造することができる。
【0060】
なお、本実施形態においては、カバーゴム層用ゴム組成物をカバーゴム層のみに利用す
る必要はなく、接着ゴムや耳ゴムなどの形成に用いても良い。
また、本実施形態においては、心体層の両面にカバーゴム層を備えた態様を例示してい
るが、本実施形態のカバーゴム層用ゴム組成物で形成されるカバーゴム層は、少なくとも
心体層の片面側(搬送面側)に備えられていればよい。
本実施形態においては、コンベヤベルトとして平坦な帯状のベルト本体のみを有するも
のを例示しているが、プレス面に凹凸を有する熱プレスを用いて作製されることによって
ベルト本体自体に立体形状の付与されたコンベヤベルトや、平坦な帯状のベルト本体に横
桟や耳桟を別部品として取り付けたタイプのコンベヤベルトについても本発明のコンベヤ
ベルトとして意図する範囲のものである。
そして、横桟や耳桟を有するコンベヤベルトにおいては、コンベヤベルト用ゴム組成物
をこの横桟や耳桟の形成に用いることも可能である。
【実施例
【0061】
以下に本発明の実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定
されるものではない。
【0062】
(使用材料)
下記表1には、付着抑制剤の添加に用いた配合剤の略称とその具体的な内容とを示す。
【表1】
【0063】
また、下記表2には、老化防止剤の略称とその具体的な内容とを示す。
【表2】
上記のような原料を表3に示す配合割合で含有するゴム組成物を用いて加硫ゴムシート
を作製し、該加硫ゴムシートによって各評価を実施した。
【0064】
【表3】
【0065】
なお、上記配合にける硫黄としては、具体的には「オイルサルファー」を使用した。
また、加硫促進剤としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンア
ミドを使用した。
【0066】
(評価1:付着抑制効果の検証)
各実施例、表3に示した配合内容で評価用のゴムシート(架橋ゴムシート)を作製し、
以下の1)~5)の手順で搬送物の付着性を評価した。

1)ポリ容器に、所定の水分率に調整した細かな粒状の石炭を入れる。
2)同ポリ容器にゴムシートから所定形状に切り出した試験片を入れる。
3)回転式攪拌装置にポリ容器をセットし、内容物(石炭、試験片)を攪拌する。
4)試験片を取り出し、片側表面に付着した石炭を採取する。
5)採取した石炭の質量を測定する。
【0067】
また、上記の1)~5)の手順と同様にして細かな粒状鉄鉱石(分級によって粒子径2
mm以下に調整した鉄鉱石)を使った付着試験を実施した。
さらに、上記の1)~5)の手順と同様にして真砂土を使った付着試験を実施した。
結果を表3に併せて示す。
【0068】
上記の結果から、本発明によれば、コンベヤベルトに対して、優れた付着抑制効果を発
揮させ得ることがわかる。
【符号の説明】
【0069】
1:ベルト本体(コンベヤベルト)、10:カバーゴム層(10a:第1のカバーゴム
層、10b:第2のカバーゴム層)、20:心体層¥
図1