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特許7496872二次電池及びその調製方法、当該二次電池を含む装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】二次電池及びその調製方法、当該二次電池を含む装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20240531BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240531BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20240531BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240531BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/587
H01M4/1393
H01M10/052
H01M10/04 Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022532139
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 CN2020088300
(87)【国際公開番号】W WO2021217586
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-05-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】康蒙
(72)【発明者】
【氏名】王家政
(72)【発明者】
【氏名】董▲曉▼斌
(72)【発明者】
【氏名】何立兵
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-511389(JP,A)
【文献】特表2019-508839(JP,A)
【文献】特開2018-088406(JP,A)
【文献】国際公開第2012/086826(WO,A1)
【文献】特開2013-008526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/00-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池であって、
負極集電体と、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層を含む負極フィルム層とを含む負極シートを備え、
前記第1の負極フィルム層は、負極集電体の少なくとも一方の表面に設けられ、且つ第1の負極活性材料を含み、
前記第2の負極フィルム層は、第1の負極フィルム層に設けられ、且つ第2の負極活性材料を含み、
前記第1の負極活性材料と前記第2の負極活性材料は、いずれも人造黒鉛を含み、
前記第1の負極活性材料は一次粒子を含み、且つ前記第1の負極活性材料における前記一次粒子の数量比率AがA≧50%を満たし、
前記第2の負極活性材料は、二次粒子を含み、且つ前記第2の負極活性材料における前記二次粒子の数量比率BがB≧30%を満たす、二次電池。
【請求項2】
前記Aは、A≧70%である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記Aは、80%≦A≦100%である、請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第2の負極活性材料は、二次粒子を含み、且つ前記第2の負極活性材料における前記二次粒子の数量比率Bが、B≧50%を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D10が、第2の負極活性材料の体積分布粒径D10よりも小さい、請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D10が、3μm~8μmであり、及び/又は、
前記第2の負極活性材料の体積分布粒径D10が、5μm~11μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D10が、4μm~7μmであり、及び/又は、
前記第2の負極活性材料の体積分布粒径D10が、6μm~10μmである、請求項6に記載の二次電池。
【請求項8】
前記第1の負極活性材料のタップ密度が、前記第2の負極活性材料のタップ密度よりも大きい、請求項1~7のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記第1の負極活性材料のタップ密度が、0.8g/cm~1.3g/cmであり、及び/又は、
前記第2の負極活性材料のタップ密度が、0.7g/cm~1.2g/cmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記第1の負極活性材料のタップ密度が、0.95g/cm~1.15g/cmであり、及び/又は、
前記第2の負極活性材料のタップ密度が、0.85g/cm~1.05g/cmである、請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D50が、第2の負極活性材料の体積分布粒径D50よりも大きい、請求項1~10のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項12】
前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D50が、13μm~21μmであり、及び/又は、
前記第2の負極活性材料の体積分布粒径D50が、11μm~19μmである、請求項1~11のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項13】
前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D50が、15μm~19μmであり、及び/又は、
前記第2の負極活性材料の体積分布粒径D50が、13μm~17μmである、請求項12に記載の二次電池。
【請求項14】
前記第1の負極活性材料の黒鉛化度が、第2の負極活性材料の黒鉛化度よりも大きく、ここで、前記黒鉛化度が、明細書の記載により測定される、請求項1~13のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項15】
前記第1の負極活性材料の黒鉛化度が、92%~97%であり、ここで、前記黒鉛化度が、明細書の記載により測定され、及び/又は、
前記第2の負極活性材料の黒鉛化度が、90%~95%であり、ここで、前記黒鉛化度が、明細書の記載により測定される、請求項1~14のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項16】
前記第1の負極活性材料の黒鉛化度が、93%~96%であり、ここで、前記黒鉛化度が、明細書の記載により測定され、及び/又は、
前記第2の負極活性材料の黒鉛化度が、92%~94%であり、ここで、前記黒鉛化度が、明細書の記載により測定される、請求項15に記載の二次電池。
【請求項17】
前記第1の負極活性材料の比表面積(SSA)が、1.6m/g~2.6m/gであり、及び/又は、
前記第2の負極活性材料の比表面積(SSA)が、0.7m/g~1.5m/gである、請求項1~16のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項18】
前記第1の負極活性材料の比表面積(SSA)が、1.8m/g~2.3m/gであり、及び/又は、
前記第2の負極活性材料の比表面積(SSA)が、0.8m/g~1.3m/gである、請求項17に記載の二次電池。
【請求項19】
前記第1の負極活性材料における人造黒鉛の質量比率が、50%以上であり、及び/又は、
前記第2の負極活性材料における人造黒鉛の質量比率が、80%以上である、請求項1~18のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項20】
前記第1の負極活性材料における人造黒鉛の質量比率が、60%~100%であり、及び/又は、
前記第2の負極活性材料における人造黒鉛の質量比率が、90%~100%である、請求項19に記載の二次電池。
【請求項21】
次電池の負極シートを調製する二次電池の調製方法であって、
1)負極集電体の少なくとも一方の表面に、第1の負極活性材料を含む第1の負極フィルム層を形成する工程と、
2)前記第1の負極フィルム層に第2の負極活性材料を含む第2の負極フィルム層を形成する工程と、を含み、
前記第1の負極活性材料及び前記第2の負極活性材料は、いずれも人造黒鉛を含み、
前記第1の負極活性材料は一次粒子を含み、且つ第1の負極活性材料における前記一次粒子の数量比率がA≧50%であり、
前記第2の負極活性材料は二次粒子を含み、且つ前記第2の負極活性材料における前記二次粒子の数量比率BがB≧30%である、二次電池の調製方法。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか一項に記載の二次電池を含むことを特徴とする、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電気化学技術分野に属し、より具体的に、二次電池及びその調製方法、当該二次電池を含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、新型高電圧、高エネルギー密度の充電可能な電池として、軽量、エネルギー密度が高く、汚染がなく、記憶効果がなく、使用寿命が長い等の際立った特徴を有するので、新エネルギー業界に広く適用されている。
【0003】
新エネルギー業界の発展に伴い、二次電池に対するより高い使用要求が提出される。しかしながら、二次電池のエネルギー密度の上昇は、通常電池の動力学的性能及び使用寿命に悪影響を及ぼす傾向がある。したがって、高いエネルギー密度を前提として、如何に他の電気化学的性能との両立を可能にするかということは、電池設計分野における重要な課題である。
【0004】
そこで、上記課題を解決することができる二次電池を提供することが必要となる。
【発明の概要】
【0005】
本願は、背景技術における課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、より高いエネルギー密度を有することを前提として、同時に優れた急速充電性能とサイクル性能を兼ね備える二次電池及びその調製方法、当該二次電池を含む装置を提供することである。
【0006】
上記発明の目的を達成するために、本願に係る第1の態様は、二次電池であって、
負極集電体と、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層を含む負極フィルム層とを含む負極シートを備え、
前記第1の負極フィルム層は、負極集電体の少なくとも一方の表面に設けられ、且つ第1の負極活性材料を含み、
前記第2の負極フィルム層は、第1の負極フィルム層に設けられ、且つ第2の負極活性材料を含み、
前記第1の負極活性材料と前記第2の負極活性材料は、いずれも人造黒鉛を含み、
前記第1の負極活性材料は一次粒子を含み、且つ前記第1の負極活性材料において前記一次粒子の数量比率AがA≧50%を満たす、二次電池を提供する。
【0007】
本願に係る第2の態様は、前記二次電池の負極シートを調製する二次電池の調製方法であって、
1)負極集電体の少なくとも一方の表面に、第1の負極活性材料を含む第1の負極フィルム層を形成する工程と、
2)前記第1の負極フィルム層に第2の負極活性材料を含む第2の負極フィルム層を形成する工程と、を含み、
ここで、前記第1の負極活性材料及び前記第2の負極活性材料は、いずれも人造黒鉛を含み、
前記第1の負極活性材料は一次粒子を含み、且つ第1の負極活性材料における前記一次粒子の数量比率がA≧50%である、二次電池の調製方法を提供する。
【0008】
本願に係る第3の形態は、本願の第1の形態に係る二次電池又は本願の第2の形態に係る方法により調製された二次電池を含む装置を提供する。
【0009】
本願は、従来技術と比較して、少なくとも以下のような効果を有する。
【0010】
本願に係る二次電池の負極シートは、二重コーティング構造を含み、且つ設計時に各コーティングの活性材料の異なる組成を制御することで、より高いエネルギー密度を前提として二次電池に優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を兼ね備えさせる。本願に係る装置は、本願に係る二次電池を含むため、少なくとも前記二次電池と同じ利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本願に係る二次電池の一実施形態の模式図である。
図2】本願に係る二次電池における負極シートの一実施形態の模式図である。
図3】本願に係る二次電池における負極シートの他の実施形態の模式図である。
図4】本願に係る二次電池の一実施形態の分解模式図である。
図5】電池モジュールの一実施形態の模式図である。
図6】電池パックの一実施形態の模式図である。
図7図6の分解図である。
図8】本願に係る二次電池が電源として用いられる装置の一実施形態の模式図である。
図9】第1の負極活性材料の一実施形態における一次粒子のSEM図である。
図10】第2の負極活性材料の一実施形態における二次粒子のSEM図である。
【符号の説明】
【0012】
なお、符号については、以下のように説明する。
1電池パック
2上部筐体
3下部筐体
4電池モジュール
5二次電池
51ケース
52電極アセンブリ
53カバープレート
10負極シート
101負極集電体
102第2の負極フィルム層
103第1の負極フィルム層
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、具体的な実施形態を参照し、本願を更に説明する。理解すべきものとして、これらの具体的な実施形態は、単に本願を説明するためのものであるが、本願に係る範囲を限定するものではない。
【0014】
簡略化するために、本明細書には、いくつかの数値範囲のみが具体的に開示される。しかしながら、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。任意の下限は、他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。同様に、任意の上限は、任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、単独で開示された各点又は単一の数値自体は、下限又は上限として任意の他の点又は単一の数値と組み合わせて或いは他の下限又は上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。
【0015】
説明すべきものとして、本明細書の記載において、特に説明しない限り、「以上」及び「以下」は、対象となる数字を含み、「1種類又は複数種類」における「複数種類」は、2種類又は2種類以上を意味する。
【0016】
特に説明しない限り、本願に使用される用語は、当業者が一般的に理解する公知の意味を有する。特に説明しない限り、本願において言及された各パラメータの数値は、本技術分野の通常の様々な測定方法で測定することができる(例えば、本願の実施例に記載された方法に従って測定することができる)。
二次電池
【0017】
本願に係る第1の態様は、二次電池を提供する。当該二次電池は、正極シートと、負極シートと、電解質とを備える。電池の充放電過程において、活性イオンは、正極シートと負極シートとの間で往復して挿入・脱離する。電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。
[負極シート]
【0018】
二次電池について、電池のエネルギー密度を向上させるために、常に負極フィルム層の厚さは増大するが、厚さの増大は、電池の急速充電性能やサイクル性能に影響を及ぼす。その原因として、負極活性材料がサイクル過程に膨張するため、活性材料と基材との間の接着力を低下させ、脱膜まで引き起こす。厚さが増大すると、この現象がより深刻になる。同時に、厚さが増大すると、活性イオンの拡散経路が長くなるため、電池の急速充電性能にも影響を及ぼす。そのため、如何により高いエネルギー密度を有することを前提として電池に優れた急速充電性能とサイクル性能を兼ね備えさせることは、技術面で依然として大きな課題である。
【0019】
本発明者らは、負極シートの調製工芸を調整することにより、本願に係る技術的目的を達成できることを多くの実験により見出した。具体的に、本願に係る二次電池における負極シートは、負極集電体と、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層を含む負極フィルム層とを含む。前記第1の負極フィルム層は、負極集電体の少なくとも一方の表面に設けられ、且つ第1の負極活性材料を含む。前記第2の負極フィルム層は、第1の負極フィルム層に設けられ、且つ第2の負極活性材料を含む。前記第1の負極活性材料及び前記第2の負極活性材料は、いずれも人造黒鉛を含む。第1の負極活性材料は、一次粒子を含み、且つ前記第1の負極活性材料における前記一次粒子の数量比率AがA≧50%を満たす。
【0020】
本発明者らの検討から分かるように、負極シートが上記の設計条件を満たす場合、二次電池は、より高いエネルギー密度を有する前提で、優れた急速充電性能とサイクル性能とを兼ね備えることができる。具体的に、第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料がいずれも人造黒鉛を含み、且つ第1の負極活性材料において一次粒子の数量比率がA≧50%である場合、第1の負極活性材料と集電体との接触面を効果的に増大させることができる。このような多面的な接触は、長期の複数回充放電の接着信頼性を保証するとともに、電子の伝導効率も向上させる。これにより、電池のサイクル性能と急速充電性能を効果的に改善することができる。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第1の負極活性材料における前記一次粒子の数量比率Aは、A≧70%、より好ましくは80%≦A≦100%を満たす。例えば、Aの範囲は、75%≦A≦98%、80%≦A≦95%、85%≦A≦100%、90%≦A≦100%等であることができる。
【0022】
本発明者らは、鋭意検討した結果、本願に係る負極活性材料、負極フィルム層が上記設計条件を満たした上で、さらに下記のパラメータの1つ又は複数を選択可能に満たすと、二次電池の性能をさらに向上させることができることを発見した。
【0023】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第2の負極活性材料は、二次粒子を含む。また、前記第2の負極活性材料における前記二次粒子の数量比率Bは、B≧30%を満たす。本発明者らの検討から分かるように、第2の負極フィルム層はセパレータ側により近く、その存在する区域の活性イオン濃度は高くなる。第2の負極フィルム層における活性材料に、一定の含有量の二次粒子を含む場合、それが提供できる脱離活性イオンチャネルは増加し、当該区域の活性イオンの実際の分布と正確に一致させるために、電池の急速充電性能及びサイクル性能をさらに改善することができる。より好ましくは、第2の負極活性材料における前記二次粒子の数量比率は、B≧50%を満たす。例えば、Bの範囲は、30%≦B≦100%、40%≦B≦85%、45%≦B≦98%、50%≦B≦100%、55%≦B≦95%、60%≦B≦98%、80%≦B≦99%、70%≦B≦95%等であることができる。
【0024】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第1の負極活性材料における人造黒鉛の質量比率は、≧50%、より好ましくは60%~100%である。
【0025】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第2の負極活性材料における人造黒鉛の質量比率は、≧80%、より好ましくは90%~100%である。
【0026】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D10は、第2の負極活性材料の体積分布粒径D10よりも小さい。体積分布粒径D10は、活性材料における小さな粒子の割合を示すものである。第1の負極活性材料の体積分布粒径D10が第2の負極活性材料の体積分布粒径D10よりも小さい場合、電池の体積エネルギー密度及び急速充電性能をさらに改善することができる。
【0027】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D10は、3μm~8μm、より好ましくは4μm~7μmであってもよい。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第2の負極活性材料の体積分布粒径D10は、5μm~11μm、より好ましくは6μm~10μmであってもよい。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第1の負極活性材料のタップ密度は、前記第2の負極活性材料のタップ密度よりも大きい。第1の負極活性材料のタップ密度が前記第2の負極活性材料のタップ密度よりも大きいと、電池により高い体積エネルギー密度と優れた急速充電性能を両立させることができる。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第1の負極活性材料のタップ密度は、0.8g/cm~1.3g/cm、より好ましくは0.95g/cm~1.15g/cmであることができる。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第2の負極活性材料のタップ密度は、0.7g/cm~1.2g/cm、より好ましくは0.85g/cm~1.05g/cmであることができる。
【0032】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D50は、第2の負極活性材料の体積分布粒径D50よりも大きい。第1の負極活性材料の体積分布粒径D50は、第2の負極活性材料の体積分布粒径D50よりも大きい場合、電池の充放電過程において活性イオンの濃度の勾配分布とのマッチングが良好となり、電池の急速充電性能を効果的に向上させることができる。また、第1の負極活性材料は、粒径が大きく、活性イオンを受容するための空孔が多い(即ち、1グラムあたりの容量が大きい)ので、電池の質量エネルギー密度の向上に寄与する。また、第2の負極活性材料は、粒径が小さく、その表面への接着剤の付着部位が多く、冷間プレス処理時にその粒子の破砕程度が小さく、材料に新たな表面が生じる確率が低下するため、電池の充放電過程において強い電子伝導能力を持ち、電解液の「ブリッジ切れ」という現象を効果的に抑制することができ、電池のサイクル寿命をさらに向上させることができる。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第1の負極活性材料の体積分布粒径D50は、13μm~21μm、より好ましくは15μm~19μmであってもよい。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第2の負極活性材料の体積分布粒径D50は、11μm~19μm、より好ましくは13μm~17μmであってもよい。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第1の負極活性材料の黒鉛化度は、第2の負極活性材料の黒鉛化度よりも大きい。第1の負極活性材料の黒鉛化度が第2の負極活性材料の黒鉛化度よりも大きいと、電池のエネルギー密度及びサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第1の負極活性材料の黒鉛化度は、92%~97%、より好ましくは93%~96%であってもよい。
【0037】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第2の負極活性材料の黒鉛化度は、90%~95%、より好ましくは92%~94%であってもよい。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第1の負極活性材料の比表面積(SSA)は、第2の負極活性材料の比表面積(SSA)よりも大きい。第1の負極活性材料の比表面積(SSA)が第2の負極活性材料の比表面積(SSA)よりも大きいと、電池のエネルギー密度及び急速充電性能をさらに向上させることができる。
【0039】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第1の負極活性材料の比表面積(SSA)は、1.6m/g~2.6m/g、より好ましくは1.8m/g~2.3m/gである。
【0040】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第2の負極活性材料の比表面積(SSA)は、0.7m/g~1.5m/g、より好ましくは0.8m/g~1.3m/gである。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態では、前記負極フィルム層の厚さは、≧60μm、より好ましくは65μm~80μmである。説明すべきものとして、前記負極フィルム層の厚さは、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層の厚さの合計である。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態では、前記第2の負極フィルム層と前記第1の負極フィルム層との厚さ比は、1:1~3:2である。第1、第2の負極フィルム層の厚さ比が所与の範囲にあると、上下層の勾配細孔分布の形成が容易となり、正極から脱離した活性イオンの負極フィルム層表面での液相伝導の抵抗が小さくなり、表層のイオンの堆積によるリチウム溶出の問題を引き起こさない。同時に、活性イオンのフィルム層中への均一な拡散は、分極の減少に有利であり、電池の急速充電性能及びサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0043】
いくつかの好ましい実施形態では、前記負極フィルム層の面密度は、8mg/cm~13mg/cm、好ましくは9mg/cm~12.5mg/cmである。説明すべきものとして、前記負極フィルム層の面密度とは、負極フィルム層全体の面密度(即ち、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層の面密度の合計)を意味する。
【0044】
いくつかの好ましい実施形態では、前記負極フィルム層の圧縮密度は、1.4g/cm~1.7g/cm、好ましくは1.5g/cm~1.65g/cmである。説明すべきものとして、前記負極フィルム層の圧縮密度とは、負極フィルム層全体の圧縮密度(即ち、負極フィルム層の面密度と厚さとの比)を意味する。負極フィルム層の圧縮密度が所与の範囲内にあると、負極シートがより高い可逆容量を有すると同時に、良好な低サイクル膨張性能と動力学的性能を有し、これにより電池のエネルギー密度、急速充電能力及びサイクル性能をさらに改善する。
【0045】
本願において、一次粒子及び二次粒子は、本技術分野で公知の意味を有する。一次粒子とは、凝集状態を形成していない粒子を意味する。二次粒子とは、二つ又は二つ以上の一次粒子が凝集する凝集状態の粒子を意味する。一次粒子と二次粒子は、走査型電子顕微鏡を用いて撮影したSEM画像により容易に区別することができる。例えば、図9は、典型的な第1の負極活性材料における一次粒子のSEM像を示す。図10は、典型的な第2の負極活性材料における二次粒子のSEM像を示す。
【0046】
負極活性材料における一次粒子又は二次粒子の数量比率は、本技術分野で知られている方法を用いて測定し、例えば、走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。一例として、一次粒子の数量比率の測定方法は、負極活性材料を導電性接着剤に敷き詰めて付着させて長さ×幅=6cm×1.1cmの測定試料を作製し、走査型電子顕微鏡(例えば、ZEISS Sigma300)を用いて粒子形態を測定する方法であることができる。測定については、JY/T010-1996を参照することができる。測定結果の正確性を確保するために、測定試料の中からランダムに複数(例えば、20個)の異なる区域を選んでスキャン測定を行い、且つ一定の拡大倍率(例えば、1000倍)で各測定区域において一次粒子の個数が全粒子の個数に対する百分率を算出する。即ち、当該区域における一次粒子の数量比率である。負極活性材料において一次粒子の数量比率として、複数の測定区域の算出結果の平均値を数量比率選択する。同様に、負極活性材料における前記二次粒子の数量比率を測定することができる。
【0047】
本願において、負極活性材料のタップ密度は、本技術分野で公知の意味を有し、本技術分野で知られている方法を用いて測定することができる。例えば、標準GB/T5162-2006及びGB/T24533-2009を参照し、粉体タップ密度測定機(例えば、丹東百特BT-301)を使用して25mLのメスシリンダーで測定することができる。
【0048】
本願において、負極活性材料のD10、D50は、いずれも本技術分野で公知の意味を有し、本技術分野で知られている方法を用いて測定することができる。例えば、標準GB/T19077.1-2016を参照し、レーザー粒度分析器(例えば、Malvern Master Size 3000)を使用して測定することができる。
【0049】
ここで、D10、D50は、次のように物理的に定義されている。
10:負極活性材料の累積体積分布百分率が10%に達した時に対応する粒径。
50:負極活性材料の累積体積分布百分率が50%に達した時に対応する粒径。
【0050】
本願において、負極活性材料の黒鉛化度は、本技術分野で公知の意味を有し、本技術分野で知られている方法を用いて測定することができる。例えば、X線回折計(例えば、Bruker D8 Discover等)を使用して測定することができる。測定標準については、JIS K 0131-1996、JB/T4220-2011を参照してd002の大きさを測定することができる。次に、式G=(0.344-d002)/(0.344-0.3354)×100%に従って黒鉛化度を算出する。ここで、d002は、ナノメートル(nm)で表される負極活性材料の結晶構造の層間隔である。X線回折分析測定では、通常に放射線源としてCuKα線を使用し、放射線波長λ=1.5418Åであり、走査2θ角の範囲が20°~80°であり、走査速度が4°/minであってもよい。
【0051】
本願において、負極活性材料の比表面積(Specific surface area、SSA)は、本技術分野で公知の意味を有し、本技術分野で知られている方法を用いて測定することができる。例えば、GB/T19587-2017を参照し、窒素ガス吸着比表面積分析測定法を用いて測定してBET(Brunauer Emmett Teller)法で算出することができる。ここで、窒素ガス吸着比表面積分析測定は、米国Micromeritics社のTri-Star 3020型である比表面積孔径分析測定機によって測定することができる。
【0052】
本願において、負極フィルム層の厚さは、テントウサンドマイクロメータ(tenthousandth micrometer)で測定することができる。例えば、Mitutoyo293-100型、精度が0.1μmであるテントウサンドマイクロメータで測定することができる。
【0053】
本願において、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層のそれぞれの厚さは、走査型電子顕微鏡(例えば、ZEISS Sigma 300)を用いて測定することができる。一例として、測定方法は、まず、負極シートを一定の大きさの測定試料(例えば、2cm×2cm)に裁断し、パラフィンワックスにより負極シートを試料台に固定し、次に、試料台を試料ホルダーに取り付けて固定し、アルゴンイオン断面バフ研磨機(例えば、IB-19500CP)の電源を投入し、真空(例えば、10-4Pa)を引き、アルゴンガス流量(例えば、0.15MPa)と、電圧(例えば、8KV)と、バフ研磨時間(例えば、2時間)とを設定し、試料台を揺動モードに調整してバフ研磨する方法であってもよい。試料の測定は、JY/T010-1996を参照することができる。測定結果の正確性を確保するため、測定試料の中からランダムに複数(例えば、10個)の異なる区域を選んで走査測定を行い、一定の拡大倍率(例えば、500倍)で、標尺から測定区域において第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層のそれぞれの厚さを読み取る。複数の測定区域の測定結果の平均値を第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層の厚さの平均値とする。
【0054】
本願において、負極フィルム層の面密度は、本技術分野で公知の意味を有し、本技術分野で知られている方法を用いて測定することができる。一例として、測定方法は、例えば、片面コーティングされ冷間プレスされた負極シート(両面コーティングされた負極シートであれば、その片面の負極フィルム層を先に拭き取ることができる)を取り、面積S1の小さな円形シートに切断し、その重さを秤量してM1と記録し、次に、上記秤量後の負極シートの負極フィルム層を拭き取り、負極集電体の重量を秤量し、M0と記録し、負極フィルム層の面密度=(負極シートの重量M1-負極集電体の重量M0)/S1。測定結果の正確性を確保するために、複数組(例えば、10組)の測定試料を測定し、その平均値を測定結果として算出することができる。
【0055】
本願において、負極フィルム層の圧縮密度は、本技術分野で公知の意味を有し、本技術分野で知られている方法を用いて測定することができる。負極フィルム層の面密度及び厚さは、例えば、先に上記測定方法に従って求められ、負極フィルム層の圧縮密度=負極フィルム層の面密度/負極フィルム層の厚さである。
【0056】
説明すべきものとして、上記負極活性材料についての各種パラメータの測定は、塗布前にサンプリングし行ってもよいし、冷間プレス後の負極フィルム層からサンプリングし行ってもよい。
【0057】
上記測定試料を冷間プレス後の負極フィルム層からサンプリングして測定した場合、一例として、以下のようにしてサンプリングすることができる。
(1)まず、冷間プレス後の負極フィルム層を任意に選択し、第2の負極活性材料をサンプリング(例えば、ブレードで切粉をサンプリングすることが選択できる)し、削りの深さが第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との境界区域を超えていない。
(2)次に、第1の負極活性材料をサンプリングし、負極フィルム層の冷間プレス過程において第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との間の境界区域に融合層が存在する(即ち、融合層に第1の活性材料と第2の活性材料とが同時に存在する)可能性がある。測定の正確性のために、第1の負極活性材料をサンプリングする際、融合層を切削した後、第1の負極活性材料から切粉をサンプリングすることができる。
(3)上記で得られた第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料をそれぞれ脱イオン水中に置き、第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料を吸引濾過し、乾燥する。また、乾燥後の各負極活性材料を一定の温度及び時間(例えば、400℃、2時間)で焼成し、接着剤及び導電性カーボンを除去し、第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料の測定試料が得られる。
【0058】
上記サンプリング過程において、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との境界区域の位置を、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いて補助的に判断することができる。
【0059】
本願で使用される負極活性材料は、いずれも市販されている。
【0060】
本願に係る二次電池において、前記負極フィルム層は、負極集電体の片面に設けられてもよいし、負極集電体の両面に同時に設けられてもよい。
【0061】
図2は、本願に係る負極シート10の一実施形態の模式図を示している。負極シート10は、負極集電体101と、負極集電体の両面にそれぞれ設けられる第1負極フィルム層103と、第1負極フィルム層103に設けられる第2負極フィルム層102とから構成する。
【0062】
図3は、本願に係る負極シート10の他の実施形態の模式図を示している。負極シート10は、負極集電体101と、負極集電体の片面に設けられる第1負極フィルム層103と、第1負極フィルム層103に設けられる第2負極フィルム層102とから構成する。
【0063】
なお、本願における各負極フィルム層のパラメータ(例えば、フィルム層の厚さ、面密度、圧縮密度等)とは、いずれも片面のフィルム層のパラメータ範囲を意味する。負極集電体の両面に負極フィルム層が設けられる場合、いずれか一方の表面のフィルム層のパラメータが本願を満たすと、本願に係る保護範囲内にあると考えられる。なお、本願に記載のフィルム層厚、面密度等の範囲とは、いずれも電池を組み立てるために用いられる冷間プレス後のフィルム層のパラメータを意味する。
【0064】
本願に係る二次電池において、前記負極集電体は、従来の金属箔又は複合集電体(高分子基材に金属材料を設けて複合集電体を形成してもよい)を用いることができる。一例として、負極集電体は銅箔を用いることができる。
【0065】
本願に係る二次電池において、前記第1の負極フィルム層及び/又は前記第2の負極フィルム層は、通常に負極活性材料と、選択可能な接着剤と、選択可能な導電剤と、他の選択可能な助剤とを含み、通常負極フィルム層スラリーの塗布、乾燥によるものである。負極フィルム層スラリーは、通常に負極活性材料と、選択可能な導電剤及び接着剤等とを溶媒に分散させて均一に攪拌することにより形成される。溶媒として、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよい。他の選択可能な助剤として、例えば、増粘剤及び分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、PTCサーミスタ材料等であってもよい。
【0066】
一例として、導電剤は、超導電カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
【0067】
一例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)のうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
【0068】
本願に係る二次電池において、前記第1の負極活性材料及び/又は前記第2の負極活性材料は、本願に記載の負極活性材料以外、一定量の他の通常の負極活性材料を選択的に含むことができる。例えば、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素系材料、スズ系材料、チタン酸リチウムのうちの1種類又は複数種類である。前記ケイ素系材料は、単体ケイ素、ケイ素の酸化物、ケイ素炭素複合体、ケイ素合金から選択される1種類又は複数種類であってもよい。前記スズ系材料は、単体スズ、スズの酸化物、スズ合金から選択される1種類又は複数種類であってもよい。当該材料の調製方法は公知である。これらの材料は市販されている。当業者であれば、実際の使用状況に応じて適宜的に選択することができる。
【0069】
本願に係る二次電池において、前記負極シートは、前記負極フィルム層以外、他の付加機能層を排除するものではない。例えば、いくつかの実施形態では、本願に係る負極シートは、負極集電体と第1のフィルム層との間に設けられる導電性コーティング(例えば、導電剤及び接着剤からなる)をさらに含むことができる。他の実施形態では、本願に係る負極シートは、第2のフィルム層の表面に設けられる保護層をさらに含むことができる。
[正極シート]
【0070】
本願に係る二次電池では、前記正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一方の表面に設けられ、且つ正極活性材料を含む正極フィルム層とを含む。
【0071】
理解できるように、正極集電体は、自身の厚さ方向において対向する2つの表面を有する。正極フィルム層は、正極集電体の2つの対向する表面のいずれか一方又は両方に積層される。
【0072】
本願に係る二次電池において、前記正極集電体は、従来の金属箔又は複合集電体(高分子基材に金属材料を設けて複合集電体を形成してもよい)を用いることができる。一例として、正極集電体はアルミニウム箔を用いることができる。
【0073】
本願に係る二次電池において、前記正極活性材料は、本技術分野で公知の二次電池に用いられる正極活性材料を用いることができる。例えば、正極活性材料は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、及びこれらのそれぞれの改質化合物ののうちの1種類又は複数種類を含むことができる。リチウム遷移金属酸化物の例として、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びこれらの改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含むことができるが、これらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例として、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料及びこれらの改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含むことができるが、これらに限定されない。本願は、これらの材料に限定されるものではなく、二次電池の正極活性材料として用いられる従来公知の他の材料を用いることもできる。
【0074】
いくつかの好ましい実施形態では、電池のエネルギー密度をさらに向上させるために、正極活性材料は、式1で表されるリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含んでいてもよい。
LiNiCo 式1
【0075】
前記式1において、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、1≦e≦2、0≦f≦1である。Mは、Mn、Al、Zr、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBから選択される1種類又は複数種類である。Aは、N、F、S及びClから選択される1種類又は複数種類である。
本願において、上記各材料の改質化合物は、材料に対しドープ改質及び/又は表面被覆の改質を行ったものであってもよい。
【0076】
本願に係る二次電池において、前記正極フィルム層には、接着剤と導電剤がさらに選択的に含まれていてもよい。
【0077】
一例として、正極フィルム層に用いられる接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
【0078】
一例として、正極フィルム層に用いられる導電剤は、例えば、超導電カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
[電解質]
【0079】
電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。本願において、電解質の種類は、特に限定されず、必要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、固体電解質及び液体電解質(即ち、電解液)から選択される少なくとも1種類であってもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、電解質は、電解液を使用する。電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、電解質塩は、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiAsF(ヘキサフルオロヒ酸リチウム)、LiFSI(ジフルオロスルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiBOB(ジシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiPO(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(ジフルオロジシュウ酸リン酸リチウム)及びLiTFOP(テトラフルオロシュウ酸リン酸リチウム)から選択される1種類又は複数種類であってもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1、4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)から選択される1種類又は複数種類であってもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、電解液には、添加剤がさらに選択的に含まれてもよい。例えば、添加剤は、負極成膜用添加剤を含んでもよいし、正極成膜用添加剤を含んでもよいし、電池の特定の性能を改善できる添加剤、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤等を含んでもよい。
[セパレータ]
【0084】
電解液を用いた二次電池及びいくつかの固体電解質を用いた二次電池には、セパレータが更に含まれている。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設けられ、隔離の作用を果たす。本願において、セパレータの種類は、特に限定されず、化学安定性及び機械安定性に優れた公知の多孔質構造セパレータを任意に選択することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンから選択される1種類又は複数種類であってもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同一であっても異なっていてもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、正極シート、負極シート、及びセパレータは、巻回工芸又は積層工芸によって電極アセンブリを作製することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、二次電池は、外装を含むことができる。当該外装は、上記電極アセンブリ及び電解質を封止するために用いることができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、二次電池の外装は、硬質プラスチックシェル、アルミニウムシェル、鋼シェル等のような硬質シェルであってもよい。二次電池の外装は、袋状のソフトパック等のようなソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質は、プラスチックであってもよく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等のうちの1種類又は複数種類であってもよい。
【0089】
本願において、前記二次電池の形状は、特に限定されず、円筒形、角形、又は他の任意の形状であってよい。図1には、一例としての角形構造の二次電池5が示されている。
【0090】
いくつかの実施形態では、図4を参照すると、外装は、ケース51とカバープレート53とを含むことができる。ここで、ケース51は、底板と、底板に接続する側板とを含み、底板及び側板の嵌合により収容室を形成する。ケース51は、収容室と連通する開口を有する。カバープレート53は、前記収容室を密閉するように前記開口を覆っているために用いられる。正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回工芸又は積層工芸で電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容室に封止される。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤される。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、1個又は数個であってもよく、必要に応じて調整することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、二次電池は、電池モジュールに組み立てもよい。電池モジュールに含まれる二次電池の数は、複数であってもよい。具体的な数は、電池モジュールの用途及び容量に応じて調整されてもよい。
【0092】
図5は、一例としての電池モジュール4である。図5を参照して、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長さ方向に沿って順に並んでもよい。もちろん、他の任意の方法で配列することも可能である。さらに、複数の二次電池5を締結具により固定することができる。
【0093】
選択的に、電池モジュール4は、複数の二次電池5が収容される収容空間を有するハウジングをさらに備えてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、上記電池モジュールは、電池パックに組み立てもよい。電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの用途及び容量に応じて調整することができる。
【0095】
図6及び図7は、一例としての電池パック1である。図6及び図7を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと、電池ボックスに配置された複数の電池モジュール4が含まれてもよい。電池ボックスは、上部筐体2と下部筐体3とを備える。上部筐体2は、下部筐体3を覆っており、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方法で電池ボックス内に配列することができる。
二次電池の調製方法
【0096】
本願に係る第2の態様は、前記二次電池の負極シートを調製する二次電池の調製方法であって、
1)負極集電体の少なくとも一方の表面に、第1の負極活性材料を含む第1の負極フィルム層を形成する工程と、
2)前記第1の負極フィルム層に第2の負極活性材料を含む第2の負極フィルム層を形成する工程と、を含み、
ここで、前記第1の負極活性材料及び前記第2の負極活性材料が、いずれも人造黒鉛を含み、
前記第1の負極活性材料が一次粒子を含み、且つ第1の負極活性材料における前記一次粒子の数量比率がA≧50%である、二次電池の調製方法を提供している。
【0097】
上記調製工程では、前記第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層を同時に塗布してもよいし、2回に分けて塗布してもよいが、前記第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層とを同時に塗布することが好ましい。一回での同時塗布は、上下の負極フィルム層間の接着性をより良くし、電池のサイクル性能をより改善することに役立つ。
【0098】
本願に係る負極シートの調製方法以外に、本願に係る二次電池の他の構成及び調製方法自体は公知である。例えば、本願に係る正極シートは、以下の調製方法に従って調製することができる。正極活性材料及び選択可能な導電剤(例えば、カーボンブラック等の炭素材料)、接着剤(例えば、PVDF)等を混合して溶媒(例えば、NMP)中に分散させ、均一に攪拌した後、正極集電体に塗布し、乾燥後、正極シートが得られる。正極集電体として、アルミニウム箔等の金属箔や多孔質金属板等の材料を用いることができる。正極シートを作製する際、正極集電体の非コーティング区域に、打ち抜きやレーザーダイカット等の方法により正極シートを得ることができる。
【0099】
最後に、正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層し、セパレータが正/負極シート間で隔離の作用を果たす。その後、巻回(又は積層)工芸を採用して電極アセンブリを形成する。電極アセンブリを外装に置き、乾燥後に電解液を注入し、真空封止、静置、化成、整形等の工程を経て、二次電池が得られる。
装置
【0100】
本願に係る第3の態様は、装置を提供している。当該装置は、本願に係る第1の態様の二次電池、又は本願に係る第2の態様に係る方法によって調製された二次電池を含む。前記二次電池は、前記装置の電源として用いられてもよいし、前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。本願に係る装置は、本願に係る二次電池を採用するので、少なくとも前記二次電池と同様の利点を有する。
【0101】
前記装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコン等)、電気自動車(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラック等)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等であってもよいが、これらに限定されない。
【0102】
前記装置は、その使用要求に応じて、二次電池、電池モジュール、又は電池パックを選択することができる。
【0103】
図8は、一例としての装置である。当該装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。当該装置の二次電池に対する高倍率及び高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用することができる。
【0104】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコン等であってもよい。当該装置は、通常薄型化を要求するため、電源として二次電池を採用することができる。
【0105】
以下、実施例に基づいて本願の有益な効果をさらに説明する。
実施例
【0106】
本願に係る発明の目的、技術案及び有益な技術効果をより明確にするために、以下、実施例を参照して本願をさらに詳細に説明する。しかしながら、理解すべきものとして、本願に係る実施例は、単に本願を解釈するためのものであり、本願を限定するものではなく、且つ明細書に記載された実施例に限定されるものではない。具体的な実験条件や操作条件が実施例に明記されていない場合、通常の条件に従って作成したり、材料供給者が推薦する条件に従って作成したりする。
一 二次電池の調製
実施例1
1)正極シートの調製
【0107】
正極活性材料LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811)と導電性カーボンブラックSuper-P、接着剤ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を96.8:1:2.2の重量比でN-メチルピロリドン溶媒において十分に攪拌し、均一に混合した後、スラリーをアルミニウム箔基材に塗布し、乾燥、冷間プレス、分割、切断することにより、正極シートが得られる。ここで、正極フィルム層の面密度は、17.3mg/cmであり、圧縮密度は、3.5g/cmである。
2)負極シートの調製
【0108】
第1の段階において、負極スラリー1を調製する。第1の負極活性材料、接着剤(SBR)、増粘剤(CMC-Na)及び導電性カーボンブラック(Super-P)を96.2:1.8:1.2:0.8の重量比で適量の脱イオン水において十分に攪拌して混合し、負極ペースト1を調製する。ここで、第1の負極活性材料における一次粒子の数量比率Aは、50%である。
【0109】
第2の段階において、負極スラリー2を調製する。第2の負極活性材料、接着剤SBR、増粘剤(CMC-Na)及び導電性カーボンブラック(Super-P)を96.2:1.8:1.2:0.8の重量比で適量の脱イオン水において十分に攪拌して混合し、負極ペースト2を調製する。ここで、第2の負極活性材料における二次粒子の数量比率Bは、95%である。
【0110】
第3の段階において、負極スラリー1と負極スラリー2をダブルキャビティコーティングダイ装置により同時に押し出す。負極スラリー1を集電体に塗布して第1の負極フィルム層を形成し、負極スラリー2を第1の負極フィルム層に塗布して第2の負極フィルム層を形成する。ここで、負極フィルム層の面密度は、11.0mg/cmであり、圧縮密度は、1.65g/cmである。
【0111】
第4の段階において、オーブンによって塗布から得られた湿膜を異なる温度の範囲に乾燥させて乾燥の電極シートを得り、さらに冷間プレスを経て必要な負極フィルム層が得られる。また、分割、切断等の工程を経て、負極シートが得られる。
3)セパレータ
【0112】
セパレータとしてPEフィルムを選択する。
4)電解液の調製
【0113】
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を1:1:1の体積比で混合する。次に、混合の有機溶媒において、1mol/Lの割合で十分に乾燥したリチウム塩LiPFを溶解させ、電解液を調製する。
5)電池の作製
【0114】
上記正極シート、セパレータ、負極シートを順次に積層し、巻回後に電極アセンブリが得られる。電極アセンブリを外装に入れ、上記電解液を注入し、封止、静置、化成、エージング等の工程を経た後、二次電池が得られる。
【0115】
実施例2~35及び比較例1~3に係る二次電池は、実施例1に係る二次電池に対してその調製方法が類似しているが、負極シートの組成及び製品のパラメータを調整したものである。異なる製品パラメータの詳細は表1~表3を参照する。
二 性能パラメータの測定方法
1 急速充電性能の測定
【0116】
25℃で、各実施例と比較例の電池を1C(即ち、1h以内に理論容量を完全に放電する電流値)の電流で1回目の充電と放電を行い、充電が定電流定電圧充電であり、終止電圧が4.2V、カットオフ電流が0.05C、放電終止電圧が2.8Vであり、その理論容量をC0に記録する。次に、電池は、順に0.5C0、1C0、1.5C0、2C0、2.5C0、3C0、3.5C0、4C0、4.5C0で4.2Vのフルカットオフ電圧又は0Vの負極カットオフ電位までに定電流充電し、毎回の充電が完了した後に1C0で2.8Vまで放電する。異なる充電倍率で10%、20%、30%、…、80%のSOC状態まで充電した時に対応するアノード電位を記録し、異なるSOC状態での倍率-アノード電位曲線を描く。線形フィッティングした後に、異なるSOC状態でのアノード電位が0Vである時に対応する充電倍率を得り、当該充電倍率が当該SOC状態での充電ウィンドウであり、それぞれ、C10%SOC、C20%SOC、C30%SOC、C40%SOC、C50%SOC、C60%SOC、C70%SOC、C80%SOCとする。式(60/C20%SOC+60/C30%SOC+60/C40%SOC+60/C50%SOC+60/C60%SOC+60/C70%SOC+60/C80%SOC)*10%に応じて、当該電池の10%~80%SOCからの充電時間Tを算出し、当該時間が短いほど、電池の急速充電性能が優れることを示す。
2 サイクル性能測定
【0117】
25℃で、各実施例及び比較例に係る電池に対して1Cの電流で1回目の充電及び放電を行い、充電が定電流定電圧充電であり、終止電圧が4.2Vであり、カットオフ電流が0.05Cであり、放電終止電圧が2.8Vであり、電池セルの初回サイクル時の放電容量Cbを記録する。その後、サイクル寿命の検出を行い、測定条件が常温(25℃)で1C/1Cサイクルを行うことであり、電池セルの放電容量Ceを随時記録する。CeとCbの比は、サイクル容量維持率であり、サイクル容量維持率が80%となった時に測定を停止し、サイクル数を記録する。
三 各実施例、比較例の測定結果
【0118】
上記方法に従って、各実施例及び比較例に係る電池をそれぞれ調製し、各性能パラメータを測定した結果を下記表1~表3に示す。
【0119】
まず、実施例1~13及び比較例1~3のデータから分かるように、第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料はいずれも人造黒鉛を含み、第1の負極活性材料において一次粒子の数量比率がA≧50である場合のみに、得られた二次電池は、優れたサイクル性能と急速充電性能を兼ね備える。第1の負極活性材料が天然黒鉛のみを含む場合(比較例3)、電池のサイクル性能が悪い。第1の負極活性材料と第2の負極活性材料はいずれも人造黒鉛を含むが、第1の負極活性材料において一次粒子の数量比率がA<50%である場合(比較例1、2)、電池のサイクル性能と急速充電性能はいずれも劣っている。また、実施例1~13のデータを比較すると、サイクル性能と急速充電性能のみでは、第1の負極活性材料において一次粒子の数量比率Aは相対的に高いはずであることが分かる。一般的に、A≧70%が効果的であり、最も好ましくは、80%≦A≦100%である。
【0120】
また、実施例5及び実施例8~13のデータから示すように、第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料はいずれも人造黒鉛を含み、且つ第1の負極活性材料における一次粒子の数量比率がA≧50%であることを前提として、第2の負極活性材料における二次粒子の数量比率Bは、電池の性能にもある影響を与える。特に、B≧30%であると、電池の急速充電性能及びサイクル性能を大幅に向上させることができる。
【0121】
表2における実施例14~24の実験データは、負極活性材料の粒子径(及びその分布)の電池性能への影響をさらに示す。実施例14では、第1の負極活性材料のD10が小さすぎるため、第1の負極フィルム層の空孔を閉塞し、急速充電性能が低下する。実施例20では、第1の負極活性材料のD10が大きすぎるため、エネルギー密度に影響を与える。同じエネルギー密度の設計を保証するために圧密を向上させるしかないため、気孔率が低下して急速充填性能を低下させ、さらに粒子の破砕、サイクル性能の悪化を引き起こす可能性がある。実施例21では、第2の負極活性材料のD10が小さすぎるため、第2の負極フィルム層の空孔が閉塞して圧縮が難くなり、急速充電性能及びサイクル性能を低下させる。実施例23では、第2の負極活性材料のD10が大きすぎるため、電子コンダクタンスと電荷交換インピーダンスに影響を与えるため、急速充電性能に影響を与える。また、実施例24に示すように、第1の負極活性材料のD10が第2の負極活性材料のD10よりも大きい場合、下層の負極フィルム層への圧縮がより難しくなる。同じエネルギー密度の設計を保証するために圧密を向上するしかないため、上層の負極フィルム層が全ての圧力を受けるため、上層の気孔率が小さくなり、急速充電性能が悪化する。上層が押し潰されると、さらに空孔が閉塞し、サイクル性能が悪化する。
【0122】
表3における実施例25~35の実験データは、負極活性材料のタップ密度の電池性能への影響をさらに示す。一般に、第1の負極フィルム層のタップ密度が小さいほど、エネルギー密度が低くなる。そのため、第1の負極フィルム層のタップ密度が小さすぎると(例えば、実施例25)、同じエネルギー密度の設計を保証するために圧密を向上させるしかなく、これにより気孔率が低下して急速充電性能を低下させ、粒子の破砕、サイクル性能の悪化を引き起こす可能性がある。一般に、第1の負極フィルム層のタップ密度が大きいほど、充填が密になるため、第1の負極フィルム層のタップ密度が大きすぎると(例えば、実施例31)、第1の負極フィルム層の気孔率が低下して急速充電性能に影響を与え、同時にサイクル性能の後期のダイナミクスが不足し、減衰が速くなる。第2の負極フィルム層のタップ密度が小さすぎると(例えば、実施例32)、圧縮が難しくなる。同じエネルギー密度の設計を保証するために圧密を向上させるしかなく、これにより気孔率が低下して急速充電性能を低下させ、さらに粒子の破砕、サイクル性能の悪化を引き起こす。一方、第2の負極フィルム層のタップ密度が大きすぎると(例えば、実施例34)、充填が密すぎ、第2の負極フィルム層の気孔率が低下して急速充電性能に影響を与える。また、サイクル性能の後期のダイナミクスが不足するため、電池の減衰が速くなる。また、実施例35に示すように、第2の負極フィルム層のタップ密度が第1の負極フィルム層のタップ密度よりも大きい場合、第2の負極フィルム層の充填がより密になり、急速充電性能に影響を与える。また、粒子の破砕を引き起こり、サイクル性能に影響を与える。
【0123】
なお、上記明細書の記載及び示唆によれば、当業者は、上記実施形態に対して適切な変更及び修正を行うことができる。したがって、本願は、上記記載及び説明された具体的な実施形態に限定されるものではなく、本願へのいくつかの修正及び変更も、本願の特許請求の範囲内に含まれる。また、本明細書では、いくつかの特定の用語が使用されるが、これらの用語は、単に説明を容易にするためのものであり、本願を限定するものではない。

【0124】
表1
【0125】
表2
【0126】
表3
図1
図2
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図4
図5
図6
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図8
図9
図10