IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許7496877改善されたキャップを備える予燃焼室点火プラグ
<>
  • 特許-改善されたキャップを備える予燃焼室点火プラグ 図1
  • 特許-改善されたキャップを備える予燃焼室点火プラグ 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】改善されたキャップを備える予燃焼室点火プラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/54 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
H01T13/54
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022540999
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 EP2020085229
(87)【国際公開番号】W WO2021144076
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】102020200406.4
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】カスケ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】イルマツ,ウグール
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-532225(JP,A)
【文献】実開昭53-130325(JP,U)
【文献】特開2015-130302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線(X-X)を有する予燃焼室点火プラグであって、
-ハウジング(6)と、
-前記予燃焼室点火プラグの燃焼室側の端(10)に配置されたキャップ(3)と、
を備え、
-前記キャップ(3)が燃焼室側の外面(34)に凹部(8)を有し、
前記キャップ(3)の前記凹部(8)に通じる第1の通過開口(31)が前記キャップ(3)に設けられていて、
前記第1の通過開口(31)が開口する前記凹部(8)は、前記予燃焼室点火プラグの前記中心軸線(X-X)に対して非対称に形成されている、予燃焼室点火プラグ。
【請求項2】
前記キャップ(3)の内面(33)が凹面状に形成されている、請求項1記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項3】
前記凹部(8)が凹面状に形成されている、請求項1または2記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項4】
前記ハウジング(6)がおねじ(4)を有し、前記キャップ(3)の前記凹部(8)が前記おねじ(4)のねじ山始端(40)に依存して位置決めされていて、
前記凹部(8)の中心と前記ハウジングのねじ山始端(40)が、前記予燃焼室点火プラグの前記中心軸線(X-X)を含む平面上に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項5】
前記凹部(8)が部分球面の幾何学的形状を有する窪みである、請求項1から4までのいずれか1項記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項6】
前記キャップ(3)が、前記凹部(8)の外側で前記キャップ(3)を通って延びる少なくとも1つの別の通過開口(32)を有し、前記予燃焼室点火プラグの中心軸(X-X)に対する前記第1の通過開口(31)の第1の中心線M1の第1の角度αが前記予燃焼室点火プラグの前記中心軸(X-X)に対する前記別の通過開口(32)の第2の角度βとは異なる、請求項1から5までのいずれか1項記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項7】
前記キャップ(3)が正確に単一の凹部(8)を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の予燃焼室点火プラグ。
【請求項8】
前記キャップ(3)がMIM部品または焼結部品である、請求項1から7までのいずれか1項記載の予燃焼室点火プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な燃焼室ジオメトリに個別に適合可能な改善されたキャップを備える予燃焼室点火プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
予燃焼室点火プラグは、従来技術から様々な形態で知られている。予燃焼室点火プラグの予燃焼室は、通常、キャップによって内燃機関の燃焼室に対して画定される。キャップには通過開口が設けられているので、予燃焼室内での点火後にトーチジェットが通過開口を通って内燃機関の燃焼室に到達でき、そこにある燃料空気混合物を着火することができる。この場合、予燃焼室点火プラグのキャップは、均一で丸屋根のような基本形状を有する。したがって、使用環境の特定の位置関係では、例えば燃焼室内の予燃焼室点火プラグ自体の角度位置によって、または、例えば噴射弁などの他のコンポーネントが予燃焼室点火プラグの隣に配置されることにより、不都合な流れ状況が支配する可能性があることが確認された。このことは、予燃焼室点火プラグの予燃焼室内での新鮮ガスと残留ガスとの交換が可能でなくなるか、または不十分にしか可能でないことをもたらし得る。さらに、予燃焼室点火プラグのキャップのキャップ形状によって、噴射弁に吹きかけられるか、または高温ガスが流れてくる可能性もあり、そのことが過熱につながるかもしれない。
【発明の概要】
【0003】
それに対して、請求項1の特徴を有する本発明による予燃焼室点火プラグは、簡単で安価な製造性の他に、予燃焼室点火プラグが突出する燃焼室内のガス流に的確に影響を及ぼし、それにより格段に向上したガス流誘導が可能になるという利点を有する。特に、例えば高温排気エアなどの高温の媒体の流入および/または流出を的確に制御できる。さらに、本発明による予燃焼室点火プラグは、予燃焼室内の新鮮ガスと残留ガスの最適化された交換を有する。これによって、様々な動作状況において、予燃焼室点火プラグの予燃焼室内の混合物の確実な点火を常に可能にすることができる。このことは、本発明によれば、予燃焼室点火プラグのキャップが燃焼室側の面に凹部を有することによって達成される。したがって、キャップにおける凹部が噴射弁または内燃機関の他の部品の領域で流れに影響を及ぼすようにした予燃焼室点火プラグの相応の位置決め、およびジオメトリによって、上記の利点を達成することができる。その場合、凹部の幾何学的形態を、燃焼室の個別の実情に適合させることができる。
【0004】
従属請求項は、本発明の好ましい発展形態を示す。
【0005】
キャップの外面の凹部に通じる少なくとも1つの第1の通過開口がキャップに設けられていることが特に好ましい。したがって、キャップの外面の凹部によって、予燃焼室点火プラグの予燃焼室から第1の通過開口を通ってキャップから出るトーチジェットに直接、流れに有利に影響を及ぼすことができる。凹部によって、例えば第1の通過開口を通って出るトーチジェットを、特に容易に発火し得る燃料と空気の混合物が入った燃焼室内の領域に直接導くことができる。
【0006】
キャップにおいて、複数の通過開口が凹部に通じることが特に好ましい。これによって、キャップから出るガスもしくはトーチジェット、ならびにキャップに流れ込むガスの流れの影響に関して特に高い可変性を達成することができる。それにより予燃焼室点火プラグの予燃焼室内のガス交換を特に良好に行うことができる。
【0007】
凹部がキャップの燃焼室側の外面にだけ設けられていることが特に好ましい。キャップの内面は、凹部なし、および/または凸部なし、またはそれに類するものがなしに形成されている。キャップの内面が一貫して凹面状に形成されていることが特に好ましい。
【0008】
本発明の特に好ましい実施形態では、凹部はキャップの外面に凹面状に形成されている。それにより、特に流れに有利に形成される窪み形状の凹部をキャップの外面に設けることができる。その場合、凹部は、殊に部分球面または部分楕円体の形で設けられている。
【0009】
本発明の別の好ましい実施形態では、予燃焼室点火プラグのハウジングがねじ山を有し、キャップの凹部が、ねじ山のねじ山始端および/またはねじ山終端に依存して位置決めされている。それによって、予燃焼室点火プラグを組み付ける場合に、キャップの凹部のポジションが常に燃焼室内の適切な箇所に配置されることを確保することができる。
【0010】
その場合、予燃焼室点火プラグのキャップの凹部の中心とハウジングのねじ山始端が、予燃焼室点火プラグの中心軸を含む平面上に配置されることが特に好ましい。換言すると、予燃焼室点火プラグの凹部とねじ山始端が一本の線上に位置する。キャップの凹部が対称の窪みであることがさらに好ましい。
【0011】
殊に、キャップは、凹部の外側でキャップを通って延びる少なくとも1つの別の通過開口を有する。その場合、予燃焼室点火プラグの中心軸に対する、キャップの凹部に通じる第1の通過開口の中心線の第1の角度αが、キャップにおける別の通過開口の第2の角度βとは異なることがさらに好ましい。殊に、キャップは、予燃焼室点火プラグの中心軸に対して正確に単一の凹部を有する。
【0012】
キャップが非対称に形成されていることがさらに好ましい。
【0013】
予燃焼室点火プラグとキャップの特に安価な製造性を可能にするために、キャップは、殊にMIM部品(metal injection moulding)または焼結部品である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例による予燃焼室点火プラグの模式的断面図である。
図2図1による予燃焼室点火プラグのキャップの模式的拡大詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照しながら本発明の好ましい実施例を詳しく説明する。
【0016】
以下、図1および図2を参照しながら本発明の好ましい実施例による予燃焼室点火プラグ1を詳しく説明する。
【0017】
図1から見て取れるように、予燃焼室点火プラグ1は、断面が実質的にU字形のキャップ3によって画定される予燃焼室2を備えている。キャップ3は、予燃焼室点火プラグのハウジング6に、例えば溶接接合9によって取り付けられている。キャップ3は、予燃焼室点火プラグの設置空間側の端10に配置されている。
【0018】
予燃焼室点火プラグ1は、中心電極5と絶縁体7とをさらに有している。
【0019】
ハウジング6は、ハウジング6の燃焼室側の端に配置されたおねじ4を有する。ハウジング6にキャップ3が隣接する。
【0020】
おねじ4は、シリンダヘッド、またはそれに類するものに予燃焼室点火プラグを取り付けるために用いられる。
【0021】
キャップ3には、複数の通過開口31、32がさらに設けられている。その場合、予燃焼室点火プラグの予燃焼室2内で点火すると、いわゆるトーチジェット(Fackelstrahlen)が通過開口31、32を通って内燃機関の燃焼室に出力され、次いでここで燃料と空気の混合物が着火される。その場合、通過開口31、32のポジションと数は可変であり得る。
【0022】
各内燃機関は、噴射弁噴射ジェットに対する予燃焼室点火プラグ1の位置、および噴射弁の位置、ならびに、例えばピストンのジオメトリや設置空間における他のコンポーネントの配置などの他の幾何学的境界条件に関して異なった条件を有するので、流れ誘導の最適化のためには、予燃焼室点火プラグを個別に適合させることが望ましい。このことは、キャップ3が非対称に形成されることによって達成される。
【0023】
キャップ3は、この実施例では窪み形状の凹部である凹部8を燃焼室側の外面34に有する。その場合、凹部8は、部分球面の幾何学的形状を有する。
【0024】
その場合、図2から詳細に見て取れるように、第1の通過開口31が凹部8に通じている。その場合、第1の通過開口31は、直線状に形成され、かつ中心線M1を有する。中心線M1は、予燃焼室点火プラグ1の中心軸X-Xに対して第1の角度αで配置されている。
【0025】
図2は、予燃焼室点火プラグの中心軸X-Xに対して第2の角度βで配置されている第2の中心線M2を含む第2の通過開口32をさらに有する。その場合、角度βは角度αよりも大きい。
【0026】
さらに、キャップ3が一貫して凹面状の内面33を有する。
【0027】
したがって、第1の通過開口31が通じる凹部8を有するキャップ3が非対称の形態であることによって、一方で、予燃焼室2内のガスを交換するためにガス交換する場合のみならず、トーチジェットが予燃焼室2から第1の通過開口31を介して出る場合も最適なガス流を達成することができる。例えば、第1の通過開口31から出るトーチジェットを、高い点火能力を有する燃焼室内の領域に向くように向けることができる。
【0028】
さらに、第1の通過開口31の第1の中心線M1とおねじ4のねじ山始端40とが一平面(図2に示される切断平面)上に位置し、この平面は予燃焼室点火プラグ1の中心軸X-Xも含む。それによって、シリンダヘッドまたはそれに類するものに予燃焼室点火プラグ1を組付ける場合に、非対称に形成されたキャップ3の凹部8の正確な位置決めを達成することができる。したがって、特に、燃焼室における凹部8の不正確な位置決めにより望ましい最適化されたガス流誘導がもたらされないであろう組付け間違いを回避することができる。
【0029】
したがって、ねじ山始端40に対する凹部8の予め定められた方向づけのみならず、ねじ山始端40に対する第1の通過開口31の予め定められた方向づけも達成することができる。
【0030】
したがって、キャップ3の外面に少なくとも1つの凹部8を設けるという本発明による好都合な着想によって、予燃焼室2からガスが流出する場合のみならず、予燃焼室2にガスが流入する場合も的確なガス流を達成することができる。その場合、凹部8の幾何学的形状は、それぞれ、燃焼室に存在する実情に適合させることができる。キャップ3は、例えばMIM法または焼結によって安価に製造することができる。
【0031】
キャップ3の外面34に複数の凹部8が設けられることも可能であるということを述べておきたい。キャップ3の凹部に複数の通過開口が通じていることも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 予燃焼室点火プラグ
2 予燃焼室
3 キャップ
4 おねじ
5 中心電極
6 ハウジング
7 絶縁体
8 凹部
9 溶接接合
10 予燃焼室点火プラグの燃焼室側の端
31、32 通過開口
33 内面
34 外面
40 ねじ山始端
M1 中心線
α 第1の角度
β 第2の角度
X-X 予燃焼室点火プラグの中心軸
図1
図2