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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】圧縮ガス貯留装置、車両
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/04 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
F17C13/04 301D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022544109
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2020087933
(87)【国際公開番号】W WO2021151607
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】102020201172.9
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】シャイヒ,ウド
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102016004577(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0050160(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017004451(DE,A1)
【文献】西独国特許出願公開第03835904(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00343615(EP,A1)
【文献】国際公開第2012/150180(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102018000756(DE,A1)
【文献】特表2019-521296(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018206345(DE,A1)
【文献】特表2019-525083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/04
F17C 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留管(1)を含み、前記貯留管に少なくとも1つの圧縮ガス容器(2)が弁(3)を介して接続されている、圧縮ガスの貯留装置において、前記貯留管(1)が、前記少なくとも1つの圧縮ガス容器(2)を気密に接続するために少なくとも1つの接続部材(4)を有し、前記接続部材(4)内に、フィルタ機能と遮断機能とを持つ安全要素(5)が組み込まれており、
前記安全要素(5)が、前記接続部材(4)内で往復動可能に受容されているフィルタユニット(6)を含み、前記フィルタユニットが、前記圧縮ガス容器(2)とは逆の側のその端部において溶融リング(7)を介して支持され、且つ前記接続部材(4)内に組み込まれている密封座(8)に対し軸線方向に間隔をもって保持されている、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記安全要素(5)の前記遮断機能は熱で起動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記溶融リング(7)が金属材料から作製されることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記圧縮ガス容器(2)を前記貯留管(1)に接続させている前記弁(3)が流量調整弁であり、前記弁(3)と前記安全要素(5)とが直列に接続されて、協働で他の安全要素としての遮断弁を形成していることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記圧縮ガス容器(2)が、首状の端部部分(2.1)を介して前記接続部材(4)上に直接に、または、スイベルナットの補助のもとに間接的に螺着されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記圧縮ガス容器(2)が、他の首状の端部部分(2.2)の領域に、密閉体(9)を有し、前記密閉体内に前記安全要素(5)とは異なる構造を有する少なくとも1つの他の安全要素が組み込まれていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの他の安全要素が、破壊ディスク(11)を組み込んだ脱気弁(10)、および/または、温度制限弁(12)であることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記貯留管(1)内に、外部から手動で操作可能な少なくとも1つの遮断要素(13)が遮断ねじの形態で組み込まれ、さらに、前記遮断要素(13)の数量が前記圧縮ガス容器(2)の数量に対応していることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記圧縮ガスは、水素または天然ガスであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記金属材料は、ビスマスをベースにした金属合金であることを特徴とする、請求項3に記載の装置
【請求項11】
前記金属材料の融点が300℃以下であることを特徴とする、請求項3に記載の装置
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の装置を備える車両
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部の構成要件を備えた圧縮ガス貯留装置に関するものである。圧縮ガスはたとえば水素または天然ガスであってよく、水素または天然ガスは燃料電池システムまたは内燃機関にそれぞれのガスを供給するために車両に搭載して携行される。
【0002】
本発明は、さらに、本発明による装置を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0003】
圧縮ガスは、移動体用途において、通常ただ1つの圧縮ガスタンク内または複数の圧縮ガス容器内或いは圧縮ガスボトル内で貯留される。安全上の理由から、どの時点においてもタンク或いはボトルの密封性が保証されていなければならない。それ故、圧縮ガス容器を確実に密閉するため、無電流状態で閉じている安全電磁弁が使用され、その結果欠陥がある場合にはガス流出自体が確実に回避される。法的には、圧縮ガス容器ごとにこの種の安全電磁弁(“Shut-Off-Valve”)があって、容器表面または容器内部に直接装着されていなければならないことが規定されていることがある。したがって、容器の数量に依存して弁の数量が急速に増すことがある。
【0004】
特許文献1から、それぞれタンク弁と管要素とを介して1つの共通の集積容量部に接続されている複数の圧縮ガス容器を備えた圧縮ガス用貯留機構が知られている。「レール」とも呼ぶことができる集積容量部は、配管コストを減少させる。加えて、集積容量部は、従来はガス供給管またはガス排出管の中にあった弁機構が集積容量部の中に組み込まれているように拡張されている。これに伴って接合個所の数量が減少し、このことは密封問題に関し有利である。組み込まれている弁機構は、好ましくはガス供給管の領域にある逆止弁と、ガス排出管の領域にある遮断弁である。集積容量部内の圧力レベルは圧縮ガス容器の定格圧力に対応しているので、集積容量部内に組み込まれている弁機構を介して周囲の管に対する密封を行うことができる。圧縮ガス容器を集積容量部に接続させている複数のタンク弁は、それぞれ燃料供給機能と取り出し機能とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102017004451号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、前述した種類の貯留装置を次のように改良すること、すなわちたとえば定格圧力が900バールまたはそれ以上の圧縮ガス容器の使用を可能にするために、高度な安全条件を十分に満たすように改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するため、請求項1の構成要件を備えた装置が提案される。本発明の有利な更なる構成は従属項から読み取れる。さらに、本発明による装置を備えた車両が提示される。
【0008】
圧縮ガス、たとえば水素または天然ガスを貯留するために提案された装置は、貯留管を含み、貯留管には少なくとも1つの圧縮ガス容器が弁を介して接続されている。本発明によれば、貯留管は、少なくとも1つの圧縮ガス容器を気密に接続するために少なくとも1つの接続部材を有している。加えて、接続部材内には、フィルタ機能と遮断機能とを持つ安全要素が組み込まれている。
【0009】
提案された装置の貯留管は、-とりわけ-冒頭で述べた従来技術の集積容量部の利点を有している。これは、特に、ただ1つの圧縮ガス容器よりも多くの圧縮ガス容器が貯留管に接続される場合に言える。というのは、この場合には共通の貯留管を介して配管コストを低減できるからである。さらに、安全電磁弁(“Shut-Off-Valve”)を共通の貯留管内に組み込むことができ、その結果それぞれの個々の圧縮ガス容器に安全電磁弁を備えさせる必要がない。安全電磁弁にタンク機能が組み込まれている限りにおいては、これを解除して、貯留管の他端において付加的な逆止弁ユニットによってこの機能を実現させることができる。この処置は、複雑性がより少なく、より小さな横断面および/または磁力を要する安全電磁弁の使用を可能にさせる。加えて、少なくとも1つの圧縮ガス容器を貯留管に接続させている弁は、簡潔な、受動性の、または、圧力制御される弁として形成されていてよい。
【0010】
さらに、本発明による装置の貯留管は、冒頭で述べた従来技術を越える利点を有している。たとえば、貯留管の少なくとも1つの接続部材によって組み立てが簡単になる。加えて、貯留管への少なくとも1つの圧縮ガス容器の接続を行う弁を接続部材内に組み込むことができる。これは接合個所または密封個所の数量を低減させ、加えて設置空間を節約するのに役立つ。
【0011】
これとは別に、本発明による装置では、フィルタ機能と遮断機能とを有する少なくとも1つの安全要素が接続部材内に組み込まれている。提案した機能統合により、装置の複雑性をさらに減少させることができる。同時に、より高度な安全条件を充足させることができる。フィルタ機能により、有害粒子の侵入が阻止される。遮断機能により、好ましくは危険な場合に起動されるような、たとえば火によって生じうる許容しがたいほどの高い温度上昇の場合に起動されるような付加的な安全レベルが実現される。
【0012】
それ故、本発明の更なる構成では、安全要素の遮断機能が熱で起動可能であることが提案される。好ましくは、遮断機能の起動は、特定の臨界値を越える温度上昇の際に行われる。温度上昇は、システム内で同時に圧力が上昇することによって生じうるものであり、或いは、外部から、たとえば火によって生じうるものである。遮断機能が熱で起動可能であることによって、付加的なアクチュエータ技術は必要ない。これは、故障時または危険時の安全性を向上させる。
【0013】
本発明の有利な実施態様によれば、安全要素は、接続部材内で往復動可能に受容されているフィルタユニットを含み、フィルタユニットは、圧縮ガス容器とは逆の側の端部において溶融リングを介して支持され、且つ接続部材内に組み込まれている密封座に対し軸線方向に間隔をもって保持されている。これは、臨界値を越える温度上昇の際に、すなわち溶融リングの溶融温度以上の値を越える温度上昇の際に、溶融リングが溶融し始めることを意味している。したがって、フィルタユニットはその支台を失って、加えられている差圧がフィルタユニットを密封座の中へ押し付ける。フィルタユニットは、圧縮ガスが圧縮ガス容器から貯留管へ到達するまでに経由する接続部材内の流動横断面を密閉し、その結果圧縮ガス容器から圧縮ガスはさらに逃げることができない。なぜなら、フィルタユニットに差圧が生成され続けている間、圧縮ガス容器内の圧力がフィルタユニットを密封座内へ押し付けるからである。
【0014】
有利には、溶融リングは金属材料から、特にたとえばビスマスをベースにした金属合金から作製されている。この種の材料の融点は比較的低く、その結果-たとえば火災の場合に-溶融リングは高くなった放射熱によって短時間後にはすでに溶け始める。合金の場合、合金比率を介してその都度の反応点を調整することができる。たとえば、反応点または融点はほぼ130℃ないし140℃付近にあってよく、その結果「低溶融合金」が存在することになる。重要なことは、溶融リングの反応点または融点が臨界状態の密封要素および閉鎖要素のそれぞれの融点以下にあり、その結果圧縮ガスがコントロール不能になって流出する前に保護機能を発揮できることである。
【0015】
気密な弁の臨界状態の密封要素および/または閉鎖要素はプラスチックから作製されていることが多いので、これらは火災の場合に溶けて、その機能を失うことがあり、特に外部に対して圧縮ガス容器を密封する機能を失うことがある。ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の融点は、たとえばほぼ340℃付近であり、ポリアミドのそれはほぼ400℃付近である。それ故、理想的には、溶融リングを形成するための金属材料は、その融点が300℃以下、さらに好ましくは250℃以下、特に有利には200℃以下であるものが選定される。
【0016】
溶融リングは、好ましくは接続部材のリング状段部で軸線方向に支持されている簡潔なリングとして形成されていてよい。フィルタユニットのための密封座は、有利には、接続部材の他のリング状段部によって形成される。溶融リングがあれば、段部は圧縮ガス容器から流出する圧縮ガスを方向転換させるために利用することができる。というのは、好ましくはフィルタユニットは中空筒状のフィルタを有し、この中空筒状のフィルタの中へ圧縮ガス容器からの圧縮ガスが軸線方向に流入するからである。圧縮ガスは、フィルタによって、半径方向内側でフィルタによって画成され且つ半径方向外側で接続部材によって画成される環状空間内へ流入する。このとき濾過物は、環状空間を介して段部または密封座の方向へ案内されて方向転換する。その後圧縮ガスは、フィルタユニットの端面側に配置されているフィルタ受容部の半径方向の孔を介して再び半径方向内側へ誘導される。フィルタ受容部は、同時に、密封座と協働する密封面をも成すことができる。密封面は半径方向の孔の上流側に配置されているのが好ましく、その結果密封面が密封座に当接すると半径方向の孔が密閉される。
【0017】
さらに、圧縮ガス容器を貯留管に接続させている弁が流量調整弁であることが提案される。好ましくは、弁と安全要素とは直列に接続されて、協働で他の安全要素としての遮断弁を形成している。このようにして、さらに高度な安全条件を充足させることができる。たとえば、第1の安全要素のフィルタユニットは、流量調整弁の可動な弁要素のための密封座として用いることができる。このため、フィルタユニットは、好ましくは、端面側に配置されるリング状のフィルタ受容部を有する。通常時に遮断弁を開いたままにしておくため、好ましくは、フィルタユニットと流量調整弁の弁要素との間にばねが配置されている。よって、遮断弁は圧力制御されている。すなわち、圧力上昇の場合、または、特定の臨界値を越えて流速が高くなった場合、弁要素はばねのばね力に抗してフィルタユニットによって形成されている密封座の中へ押し付けられて、閉じる。加えられている差圧のために、圧力平衡が再び形成されるまで弁要素の位置は保持される。圧縮ガス容器が貯留管から引き剥がれる場合、これはまずもって、圧縮ガス容器内の圧力がほぼ周囲圧に相当して他の安全要素が反応した状況と考えられる。
【0018】
フィルタユニットと溶融リングとから成る安全要素と流量調整弁とが直列に接続されていることにより、これらを接続部材の中に簡単に組み込むことができる。位置固定のため、取り付け後に安全ねじを接続部材の中に挿入または螺入させてよい。安全ねじは、圧縮ガスが接続されている圧縮ガス容器から接続部材の中へ、よって貯留管の中へ到達するように、中央の貫流穴を有しているのが好ましい。
【0019】
本発明による装置の少なくとも1つの圧縮ガス容器は、特にボトル状に形成されていてよい。すなわち、圧縮ガス容器は少なくとも1つの首状の端部部分を有している。首状の端部部分は、密封すべき直径が小さくなるので、圧縮ガス容器を貯留管に気密に接続するのを容易にする。
【0020】
有利には、圧縮ガス容器は、好ましくは首状の端部部分を介して接続部材上に直接に、または、スイベルナットの補助のもとに間接的に螺着されている。螺合は気密な結合を容易にするばかりでなく、必要な場合に、たとえば欠陥のある圧縮ガス容器を交換するために、圧縮ガス容器の簡単な取り外しを可能にする。圧縮ガス容器が接続部材上に直接螺着されている限りにおいては、好ましくは首状の端部部分は雌ねじを有し、雌ねじを用いて圧縮ガス容器を接続部材の雄ねじ上に螺着させる。スイベルナットを使用する場合には、スイベルナットを接続部材上に螺着させる。択一的に、圧縮ガス容器を接続部材と高圧密封性があるように結合するために他の任意の固定方法を選択してよい。
【0021】
さらに、有利には、圧縮ガス容器は、他の、好ましくは首状の端部部分の領域に、密閉体を有し、密閉体内に少なくとも1つの他の安全要素が組み込まれている。密閉体は、特に、取り付けが簡単で取り外しも簡単な密閉ねじであってよい。このため、有利には、密閉ねじは雄ねじを有し、圧縮ガス容器の好ましくは首状の端部部分は雌ねじを有している。少なくとも1つの他の安全要素を設けることで、安全性がさらに向上する。この他の安全要素を密閉体の中に組み込むことにより、必要な場合にこれを簡単に交換できる。
【0022】
前記少なくとも1つの他の安全要素は、破壊ディスクを組み込んだ脱気弁、および/または、温度制限弁であるのが好ましい。2つの安全要素が設けられている限りにおいては、これらは好ましくは並列に配置され、または、並列に接続され、その結果これらは互いに独立にその機能を果たすことができる。
【0023】
破壊ディスクを備えた脱気弁が設けられている限りにおいては、破壊ディスクにじかに圧縮ガス容器の圧力が加わる。圧力が臨界値を越えて上昇すると、破壊ディスクが壊れて、脱気横断面を外側へ開放する。圧縮ガス容器内にある圧縮ガスはコントロールされながら外側へ放出されて減圧が行われる。理想的には、脱気弁は手動で操作可能であり、たとえば螺合解除させて開けることによって操作可能であり、その結果圧縮ガス容器を手動で無圧で設置することもできる。位置固定して挿着されている絞りを介して流速を減少させることができ、その結果流速は非臨界範囲内にある。
【0024】
温度制限弁が設けられている限りにおいては、これは、圧縮ガス容器内の温度が臨界値を越えて上昇すると開く。この場合に弁が開いて、圧縮ガスを圧縮ガス容器から流出することのできる横断面を開放し、その結果減圧が行われる。
【0025】
有利な態様では、貯留管内に、好ましくは外部から手動で操作可能な少なくとも1つの遮断要素がたとえば遮断ねじの形態で組み込まれている。少なくとも1つの遮断要素は、システムを空にする必要なしに個々の圧縮ガス容器の交換を可能にする。すなわち、1つよりも多くの圧縮ガス容器が貯留管に接続されている限りにおいては、機能性が維持され続ける。このため、遮断要素は、有利には、貯留管の主流路ではなく副路のみが遮断されるように構成されて位置決めされている。複数の圧縮ガス容器のそれぞれを必要な場合に交換できるようにするため、好ましくは遮断要素の数量は圧縮ガス容器の数量に対応しており、その結果各圧縮ガス容器には、好ましくは手動で操作可能な遮断要素が付設されている。
【0026】
さらに、貯留管内に、特に接続部材の領域に、たとえば温度センサおよび/または圧力センサのような他の構成要素を組み込んでよい。この場合、これらは容易に、簡潔に共通の貯留管またはレールを介して密封、結合および/または接触させることができる。
【0027】
さらに、本発明による装置は有利には移動体用途で使用されるので、本発明による装置を備えた車両が提案される。この場合、圧縮ガスは、特に燃料電池システムまたは内燃エンジンを作動させるための水素であってよい。さらに、圧縮ガスは、内燃エンジンを作動させるために車両に搭載される本発明による装置を用いて貯留される天然ガスであってよい。
次に、本発明の有利な実施形態を、添付の図面を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】圧縮ガスを貯留するための本発明による装置の縦断面図である。
図2】圧縮ガス容器の第1の端部部分の領域における図1の拡大部分図である。
図3】圧縮ガス容器の第2の端部部分の領域における図1の拡大部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に図示した圧縮ガス貯留装置は、1つの共通の貯留管1に接続されている複数の圧縮ガス容器2を含んでいる。図1では、図が装置の一部のみを示しているにすぎないので、2つの圧縮ガス容器2しか図示されていない。同様の態様で装置は右側へ続いている。「レール」とも呼ぶことができる共通の貯留管1は、1つの主管21と複数の分岐管22とを含んでいる。分岐管22を介してそれぞれ1つの圧縮ガス容器2の内容物が主管21内へ達する。それ故、分岐管22の数量は圧縮ガス容器2の数量に対応している。分岐管22は接続部材4を貫通し、接続部材には圧縮ガス容器2が気密に載置され、たとえば螺着または圧着されている。このため、各圧縮ガス容器2は首状の端部部分2.1を有し、端部部分はそれぞれの接続部材4と摩擦結合式および/または形状結合式に結合させることができ、その結果結合には高圧密封性がある。他方、各圧縮ガス容器2は他の首状の端部部分2.2を有し、この端部部分には密閉体9が、たとえば密閉ねじが挿入または螺入されている。
【0030】
共通の貯留管1内またはレール内には安全電磁弁20が組み込まれ、より厳密には、これを介して主管21が遮断可能であるように組み込まれている。したがって、安全電磁弁20を複数の圧縮ガス容器2のそれぞれに組み込む必要はない。さらに、個々の分岐管22を遮断するために手動で操作可能な遮断要素13が設けられている。操作の際、遮断要素はそれぞれの分岐管22を遮断するにすぎず、主管21を遮断せず、その結果その他の点では機能は維持され続ける。これは、たとえば、ただ1つの圧縮ガス容器を交換すべき場合に有利である。
【0031】
1つの圧縮ガス容器2の貯留管1への接続領域を説明するために、この領域を拡大図で示している図2を参照する。図示されているのは、接続部材4を備えた貯留管1の一部分であり、この一部分上に圧縮ガス容器2が螺着されている。接続部材4内または分岐管22内には、本実施形態では安全要素5と弁3とが組み込まれており、これらは本実施形態では協働して遮断弁を形成している。
【0032】
安全要素5はフィルタユニット6を含み、フィルタユニットは、金属製の溶融リング7を介して軸線方向に支持され、且つ密封座8に対し間隔をもって保持されている。密封座8は、接続部材4の段部によって形成される。フィルタユニット6は、2つのフィルタ受容部6.2,6.3の間に配置されている中空筒状のフィルタ6.1を含んでいる。主管21側のフィルタ受容部6.2は密閉体を形成し、その結果圧縮ガスは圧縮ガス容器2からフィルタ6.1を介して半径方向外側へ環状室17内へ誘導される。その際、圧縮ガス内に粒子が含まれていれば、フィルタ内側で分離される。濾過物は、環状室17を介して、密封座8を形成している接続部材4の段部へ到達する。ここでガス流は方向転換して、フィルタ受容部6.2内に形成されている半径方向の孔6.4を通って分岐管22内へ誘導される。したがって、フィルタユニット6はフィルタ機能と保護機能とを果たす。さらに、フィルタユニットは、金属製の溶融リング7で支持されているので、熱で起動可能な安全要素5を形成している。というのは、臨界値を越えて温度が上昇すると溶融リングが融けて、フィルタユニット6に加えられている差圧がこれを密封座8内へ押し付けるからである。その際、フィルタ受容部6.2に形成されている密封面6.5が密封座8を形成している接続部材4の段部に当接し、その結果圧縮ガスは圧縮ガス容器2からそれ以上分岐管22内へ逃げることができなくなる。このようにして安全要素5はフィルタ機能と遮断機能とを果たす。
【0033】
同様に接続部材4内または分岐管22内に組み込まれている弁3は、安全要素5の上流側に接続され、流量調整弁として実施されている。弁は可動な弁要素23を有し、弁要素はばね16のばね力によって開放位置で保持され、その結果弁3が開いたときに圧縮ガス容器2から流出する圧縮ガスは弁要素23のまわりを環流する。流速が臨界値を越えて上昇すると、弁要素23はばね16のばね力に抗して、本実施形態では下流側に接続されているフィルタユニット6のフィルタ受容部6.3によって形成される密封座6.7の方向へ移動する。弁要素23の密封面18が密封座6.7に当接すると、弁要素23はフィルタ受容部6.3の供給穴6.6を閉鎖し、その結果圧縮ガスはそれ以上分岐管22内へ到達しない。したがって、弁3と安全要素5のフィルタユニット6とは協働して遮断弁または他の安全要素5を形成している。
【0034】
安全要素5と弁3とを接続部材4の内部で位置固定するため、接続部材には、端部側に、中央に貫流穴19を備えた安全ねじ14がねじ込まれている。
【0035】
図1に図示した装置の各圧縮ガス容器2は、貯留管1とは逆の側のその端部に他の複数の安全要素を有している。これらの安全要素は密閉体9内または密閉ねじ内に組み込まれており、以下に図3を用いてより詳細に説明する。
【0036】
図3からわかるように、密閉体9内には、破壊ディスク11を備えた脱気弁10が他の安全要素として組み込まれている。圧縮ガス容器2内の圧力が臨界値を越えて上昇したときに破壊ディスクが壊れて、これによって脱気弁10が開く。このとき脱気弁10を介して圧縮ガスを排出させ、よって減圧させることができる。圧縮ガスの排出をコントロールできるようにするため、脱気弁10の上流側には絞り15が接続されている。
【0037】
脱気弁10の横に、または、並列に、温度制限弁12が他の安全要素として密閉体9の中に組み込まれている。臨界温度を越えると、この温度制限弁が開いて逃し穴24を開放し、これを介して圧縮ガスを排出させることができ、その結果圧縮ガス容器2内の圧力が低下する。
【符号の説明】
【0038】
1 貯留管
2 圧縮ガス容器
2.1 圧縮ガス容器の首状の端部部分
2.2 圧縮ガス容器の他の首状の端部部分
3 弁
4 接続部材
5 安全要素
6 フィルタユニット
7 溶融リング
8 密封座
9 密閉体
10 脱気弁
11 破壊ディスク
12 温度制限弁
13 遮断要素
図1
図2
図3