(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】2つの部品の複合接続部
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20240531BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240531BHJP
C09J 171/00 20060101ALI20240531BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
H01L21/52 D
H01L21/52 E
C09J4/02
C09J171/00
C09J201/00
(21)【出願番号】P 2022556495
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2021055801
(87)【国際公開番号】W WO2021185617
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】102020107240.6
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519323089
【氏名又は名称】ナノワイヤード ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】NanoWired GmbH
【住所又は居所原語表記】Emanuel-Merck-Strasse 99, 64579 Gernsheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビヨレム,オラフ
(72)【発明者】
【氏名】ダッシンガー,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ケドナウ,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ルステイエ,ファラフ
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0069595(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017104923(DE,A1)
【文献】特開2006-257208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
C09J 4/02
C09J 171/00
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部品(2)を第二部品(3)に接続する方法であって、
a)
前記第二部品(3)の接触面(5)ではなく前記第一部品(2)の接触面(4)に、多数のナノワイヤ(1)を設けるステップと、
b)前記第一部品(2)の前記接触面(4)又は前記第二部品(3)の接触面(5)又はその両方に、
液体接着剤(6)を塗布するステップと、
c)前記第一部品(2)と前記第二部品(3)とを合わせるステップであって、
多数のナノワイヤ(1)を前記第二部品(3)の前記接触面(5)と接触させて、前記接触面(4、5)が前記接着剤(6)によって互いに接続するようにする、ステップと
を含
み、
ステップc)において、少なくとも前記第二部品(3)の前記接触面(5)は、最低90℃及び最高270℃の温度まで加熱される方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
接続部が形成された後に、前記ナノワイヤの少なくともいくつかは、前記接着剤に接触する、
方法。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか一項に記載の方法であって、
前記接着剤は、
アクリレート、
エポキシ接着剤、
架橋接着剤、
UV光により活性化可能な接着剤、
熱により活性化可能な接着剤、
二液型接着剤
のうちの1つである、
方法。
【請求項4】
請求項1~2のいずれか一項に記載の方法であって、
ステップa)において、前記第二部品(3)の前記接触面(5)に、多数のナノワイヤ(1)がさらに設けられ、
ステップc)において、前記第二部品(3)の前記接触面(5)にある前記ナノワイヤ(1)が前記第一部品(2)の前記接触面(4)に接触させられるように、前記部品(2、3)が合わせられる、
方法。
【請求項5】
請求項1~2のいずれか一項に記載の方法であって、
ステップc)で、前記第一部品(2)と前記第二部品(3)とは、最小2MPa及び最大200MPaの少なくとも一方の圧力で互いに向かって押される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一部品を第二部品に接続する方法に関し、また、互いに接続された2つの部品の装置にも関し、特に電子部品に関連するものに関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な用途において、物体同士を接続するニーズは存在する。例えば、2つの金属物体や、異なる材料で作られた2つの物体を、互いに接続するような場合がある。特にエレクトロニクス分野がこれに該当する。従来技術からは、このような接続部を形成するための様々な方法が知られている。特に知られているのは、例えば、銅製の電気導体又は物体を、溶接・硬ろう付け・軟ろう付け・接着結合・ネジ締め・リベット締め・エンボス加工を用いて接続する方法である。この種の方法では、下準備された表面を互いに対して正確に合わせて接続される。したがって、接続対象の物体は、その長さ及び接続位置に関して、明確に且つ幾何学的に定められ準備される必要がある。さらに、接続部を作製するための準備、例えば、穿孔又は対応する接続要素の用意等を事前に行わなければならない。接着結合・ネジ締め・リベット締めによる接続技術は、室温で行う処理である。一方、溶接・軟ろう付け・硬ろう付けは、高温で行う処理であり、液体金属が製造され、これが所定容積に充填されたり、接合部と金属的に相互作用する。
【0003】
溶接は、通常は1400℃にもなる相当な温度が投入されるため、一方では、対象の物体を相当な程度まで加熱することにより可燃性材料による火災を引き起こす虞があるという不利な点がある。接続対象の物体の表面に視覚的変化も起こることがあり、これは特にラッカー、フィルム又はコーティングで前処理された表面では問題となる場合がある。加えて、溶接できない材料も多い。
【0004】
例えば銅の硬ろう付けも、相当な熱エネルギーが投入されるため、接続部に関連する部品がかなり(特に400℃超まで)加熱されることが起こり得る。これは、引火性材料を発火させかねない。
【0005】
例えば銅の軟ろう付けは、接続部のせん断強度が所望よりも低い一方で、軟ろう付けの場合には、温度負荷が変化することによる金属の脱混合、ひいては接続部の脆化につながるという不利な点がありうる。これにより、接続部の不具合が生じる場合がある。さらに、軟ろう付けは、例えば純銅よりも接続部の伝達抵抗が非常に大きいという不利な点がある。この他に軟ろう付け接続部の不利な点としては、機械的疲労強度が低いことがあるが、通常は約120℃までしか存在しない。このような接続部の酸性媒質に対する耐食性も不十分であることが多い。
【0006】
ネジ締め及びリベット締めの場合には、パーツを特に正確に結合しなければならない。また、ネジ締め又はリベット締めでの接続で必要な穴や構造により、構築物全体の視覚的及び機械的外観の視覚的損傷が生じることはよくある。さらに、構築の観点では、接続が行われるべき正確な位置が事前に分かっているようにすることが必要である。それにより、長さが決まっていない部品を使用することがより複雑になるか又は妨げられる場合がある。さらに、このような接続部の場合には、通常は部品間に残留間隙が存在する。毛細管現象によって残留間隙に水分が入り込むことがあり、続いて腐食が引き起こされる。腐食は接続部にダメージを与えかねない。また、接続部の電気や熱による伝達抵抗も増加する場合がある。さらに、ネジ締め又はリベット締め用の穴が、接続部の領域で漏れを引き起こすこともある。これにより、例えば容器又は圧力システムでこのような接続部を使用することが、特に、密閉手段がさらに必要である点で、より困難になる場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
このことから、本発明の目的は、先行技術に関連して考察された技術的な問題を解決するか又は少なくとも軽減することである。特に機械的に安定であり且つ特に良好な電気伝導性又は熱伝導性又はその両方を有する接続部が、特に信頼性が高く且つ簡易な態様で部品同士の間に形成されているか又は形成するように、第一部品を第二部品に接続する方法を提供すること、また、互いに接続された2つの部品の装置を提供することが意図されている。
【0008】
前述の目的は、独立特許請求項の特徴による方法及び装置によって達成される。従属請求項はそれぞれ、有利な構成を示している。請求項において個々に詳述する特徴は、技術的に有意な任意の態様で互いに組み合わせ可能であり、本発明の更なる変形例を詳述している本明細書の説明的な技術内容によって補完されうる。
【0009】
本発明によれば、第一部品を第二部品に接続する方法が提示される。この方法は、
a)第一部品の接触面に、多数のナノワイヤを設けるステップと、
b)第一部品の接触面又は第二部品の接触面又はその両方に、接着剤を塗布するステップと、
c)第一部品と第二部品とを合わせるステップであって、
多数のナノワイヤを第二部品の接触面と接触させて、接触面同士が接着剤によって互いに接続するようにする、ステップと
を含む。
【0010】
本方法によって、特に低い温度で又は特に低い力の印加で又はその両方で、部品同士を互いに接続することが可能である。特に、本方法を行う際に部品の温度が250℃を超えないこと、且つ、部品に作用する圧力は大きくとも20MPaであること、というよくある要件を満たすことが可能となる。この場合には、化学的に反応性が高い物質を使用する必要はない。前述の利点は、多数のナノワイヤを介した接続部を形成することによって可能になる。
【0011】
第一部品及び第二部品は、例えば、半導体部品、コンピュータチップ、マイクロプロセッサ又はプリント回路基板等の電子部品であることが好ましい。第一部品又は第二部品又はその両方は、少なくとも部分的に電気伝導性又は熱伝導性又はその両方であることが好ましい。本方法によって、2つの部品の間の電気伝導性又は熱伝導性又はその両方である接続部を得ることが可能である。
【0012】
ここで使用される意味における電気伝導性や熱伝導性は、特に金属(例として銅)に存在するものであり、一般に「電気伝導性の」又は同義語として「電気伝導的な」、「熱伝導性の」又は「熱伝導的な」とも言われる。特に、一般に電気絶縁又は熱絶縁又はその両方であるとみなされる材料が電気伝導性であるか又は熱伝導性であるか又はその両方であるとみなされることは、ここでは意図されていない。
【0013】
本方法は、エレクトロニクスの分野での用途に制限されない。例えば、(第一部品としての)センサ等の部品が(第二部品としての)壁又はマウントに、本方法によって固定されることも可能である。本方法を用いて、特に機械的に安定であり、且つ、電気伝導性であるか又は熱伝導性であるか又はその両方である接続部を、第一部品と第二部品との間に形成することが可能である。このように、本方法は、2つの部品の間に対応する接続部が必要とされる全ての分野で採用されうる。本方法は、所定の大きさの部品に限定されることもない。したがって、本方法は、例えばエレクトロニクス、特にマイクロエレクトロニクスの分野での用途に、又は、巨視的レベルの相当な大きさの部品の接続に適する。
【0014】
部品は、それぞれの接触面を介して互いに接続することができる。接触面は、特に、それぞれの部品の表面の、空間的に区別される領域である。特に、接触面は、接続部の形成によって区別されることが好ましい。これは、接触面が最初は部品の表面の他の部分と異なっていないこと、且つ、接触面は接続部の形成によってはじめて接続部の上に形成されたエリアであることから、接触面が区別されることを意味する。この場合、接触面は、最初は、部品の表面の他の部分と概念的に区別されるにすぎない。接触面の領域で、ナノワイヤと接着剤がそれぞれの部品と接触することができる。
【0015】
接触面はいずれも、それぞれの部品の表面の単に連続した形の領域であることが好ましい。あるいは、第一部品又は第二部品又はその両方の接触面それぞれが、それぞれの部品の表面の複数の別々の小領域にさらに分割されることが可能である。したがって、接触面は、各部品の表面の2つ以上の別々の部分から構成されることができる。接触面は、電気伝導性又は電気絶縁であるか又は熱伝導性又は熱絶縁であるか又はそれらの組み合わせでありうる。接触面は、電気伝導性であるか又は熱伝導性であるか又はその両方であることが好ましい。
【0016】
部品は、剛性設計のものであるか、又は少なくとも1つの剛性表面を有し、その上にそれぞれの接触面が設けられることが好ましい。これは特に、部品(又は少なくとも接触面)が可撓性でないことが好ましいことを意味する。剛性の部品又は接触面により、接続部を本方法にしたがって特に満足できる態様で形成することが可能となる。例えば部品のうちの1つを可撓性設計のものとすれば、ナノワイヤの荷重のために接続部が壊れることもあるかもしれない。しかし、厳密な状況次第では、可撓性部品又は接触面を用いて、本方法を有利に実施することも可能となる。
【0017】
本方法では、部品同士の間の又はその接触面同士の間の接続部は、一方では多数のナノワイヤを介して且つ他方では接着剤を介して、形成される。
【0018】
本明細書におけるナノワイヤとは、数ナノメートルから数マイクロメートルの範囲のサイズをワイヤ状の任意の材料体を意味するものと理解されるべきである。ナノワイヤは、例えば円形状、楕円形状、多角形状の底面を有してもよい。特に、ナノワイヤは六角形状の底面を有してもよい。接続部に関連する全てのナノワイヤは、同じ材料から形成されることが好ましい。
【0019】
ナノワイヤは金属から形成されることが好ましい。ナノワイヤは、各接触面のうちの1つの材料から形成されることが特に好ましい。両方の接触面が同じ材料から形成されることも好ましい。その場合は、ナノワイヤは2つの接触面と同じ材料から形成されることが好ましい。
【0020】
ナノワイヤは、100nm[ナノメートル]~100μm[マイクロメートル]の範囲の長さ、特に500nm~30μmの範囲の長さを有することが好ましい。さらに、ナノワイヤは、10nm~10μmの範囲の直径、特に30nm~2μmの範囲の直径を有することが好ましい。本明細書における「直径」という表現は円形の底面に関するものであり、これから逸脱する底面の場合には、同様の直径の定義を用いるものとする。使用される全てのナノワイヤが同じ長さ及び同じ直径を有することが特に好ましい。
【0021】
接続部は、特に、接続される接触面同士の間に多数のナノワイヤを設けることで形成されることが好ましい。ナノワイヤのサイズがナノメートル範囲であるために、接続部の表面(すなわちファンデルワールス力等の力が原子レベルで作用するエリア)は特に大きい。よって、接続部は、特に良好な電気伝導性及び熱伝導性の少なくとも一方を有することができる。加えて、ナノワイヤは接続部の機械的安定性にも貢献することができる。しかし、機械的安定性は、好ましくは、接着剤を主に用いて得ることもできる。機械的安定性は、接着剤を用いることのみで得ることも可能である。特に良好な電気伝導性及び熱伝導性の少なくとも一方を有する接続部では、ナノワイヤは電気伝導性材料及び熱伝導性材料の少なくとも一方から形成されることが好ましい。ここでは、銅を使用することが特に好ましい。また、接触面は、電気伝導性又は熱伝導性又はその両方を有する材料から形成されることが好ましく、特に銅から形成されることが好ましい。さらに上述したように、銅を使用することは、特に溶接接続部の場合には不可能である。本方法によって得られる接続部の大きな表面により、接続部の電気伝導性だけでなく熱伝導性も特に高くすることが可能となる。これにより、例えば接続部に関連する部品の冷却をが改善しうる。特に、このために、ナノワイヤ又は接触面又はその両方に銅を使用することが好ましい。
【0022】
前述の接続部はさらに、特に簡易な態様で、工具なしで形成可能である。ナノワイヤを介して接触面を接続するには、接続対象の接触面を単に合わせればよい。圧力を選択的にかけることができるが、絶対に必要なわけではない。接着剤を介した接続部の形成は、一方又は両方の接触面へ接着剤を単に塗布して且つさらに2つの接触面を合わせることによって行われる。接触面同士が合わされると、接触面は、ナノワイヤ及び接着剤の両方を介して互いに接続される。
【0023】
本方法のステップa)で、第一部品の接触面に、したがって第一部品の表面の少なくとも一部に、多数のナノワイヤが設けられる。これにより、特にナノワイヤのガルバニック成長を用いて行うことが可能である。一方、「設けられる」とは、この場合、ナノワイヤが本方法の一部として第一部品の接触面に設けられることを意味すると理解されるものとする。しかしながら、他方では、「設けられる」とは、接触面上にナノワイヤが既に設けられている第一部品を使用することも含む。したがって、例えば、対応して準備された第一部品がサプライヤーから入手し、本方法に使用することが可能である。このように準備された第一部品を入手することも、ここで用いられる意味でのナノワイヤを設けることに該当する。本方法は特に、ナノワイヤは、関連する接触面の両方に設けられる必要はなく、接触面の1つにのみ設けられればよいという利点がある。
【0024】
ナノワイヤは、該ナノワイヤが接触面に対して略直角(好ましくは直角)であるように第一部品の接触面に設けられることが好ましい。ステップa)において設けられるナノワイヤ全体を、特にナノワイヤの芝と言ってもよい。しかし、ナノワイヤは、第一部品の接触面上に任意の向きで設けることもできる。第一部品の接触面を複数の(接続された又は別々の)小領域にさらに分割し、ナノワイヤが異なる小領域で異なる方向を向くことも可能である。このようにして、特に、ナノワイヤはせん断力に特に満足に耐えることもできるため、ナノワイヤは接続部の機械的安定性に特に大きく貢献しうる。さらに、ナノワイヤは、特にその長さ、直径、材料及び密度(ナノワイヤの密度は単位面積当たりに提供されるナノワイヤ数を指す)に関して、第一部品の接触面の異なる所で異なる構成を有することが可能である。
【0025】
本方法のステップb)において、第一部品の接触面及び第二部品の接触面の少なくとも一方に、接着剤が塗布される。
【0026】
第一の好ましい実施形態では、接着剤は、第一部品の接触面にのみ塗布される。この場合、ナノワイヤが接着剤の塗布後に接触面に対して直角に設けられるように、接着剤が第一部品の接触面に塗布されることが好ましい。したがって、ナノワイヤは、接着剤の塗布によって倒されることはない。これは、例えば十分に粘性が低い接着剤を使用して、塗布の際にこれに対応する低い力がナノワイヤに加えられることで、実現可能である。あるいは、接着剤又はその化学的前駆体は、ナノワイヤが成長する間に、第一部品の接触面に塗布しておくことが可能である。このように、これに関してステップa)及びb)は同時に行われうる。接着剤及びナノワイヤの両方が同じ表面に設けられることにより、ステップc)において接続部が特に信頼性の高い態様で形成可能である。2つの部品を合わせる、特に接着剤で合わせることで、ナノワイヤが倒れたり座屈したり変位したりすることは起きないはずである。2つの部品を合わせる前に既にナノワイヤの間に位置する接着剤は、ナノワイヤを安定化させる。各ナノワイヤの端が第二部品の接触面に接触するために、ナノワイヤの端が第二部品の接触面に達することも可能となり、特に信頼性の高い態様で達することが可能となる。接着剤が第一部品の接触面以外にも塗布されるとすれば、各ナノワイヤはステップc)において接着剤に浸漬せざるおえないことになる。この場合は、接着剤によりナノワイヤの端が第二部品の接触面に達するのが阻止されることがある。これは、接着剤が第二部品の接触面に過剰な厚さの層として存在する場合に特に当てはまる。しかし、接着剤が第二部品の接触面上に十分少量だけ存在する場合には、各ナノワイヤの端が第二部品の接触面に達することが可能である。以下に記載される2つの好ましい実施形態は、これを可能にする。
【0027】
第二の好ましい実施形態では、接着剤は第二部品の接触面にのみ塗布される。この場合は、ステップa)において第一部品の接触面にのみナノワイヤが設けられることが好ましい。その場合、接着剤とナノワイヤは、2つの接触面の異なる接触面上に設けられる。この実施形態により、2つの接触面のいずれにも接着剤及びナノワイヤの両方が設けられる必要がないため、本方法を特に簡易な態様で行うことが可能になる。したがって、ステップa)とb)は、互いに独立して行われうる。ステップc)において部品が合わされる場合は、各ナノワイヤの端が第二接触面と接触するまでナノワイヤが接着剤に押し込まれることが可能である。このためには、接着剤が、第二部品の接触面に十分に薄い層厚で塗布されることが好ましい。
【0028】
第三の好ましい実施形態では、接着剤は、第一部品の接触面と第二部品の接触面との両方に塗布される。そのため、第一及び第二の好ましい実施形態の利点を互いに組み合わせることができる。例えば、第二の好ましい実施形態で必要とされるよりも薄い厚さで、接着剤を第二部品の接触面に塗布することが可能である。したがって、各ナノワイヤの端が接着剤のせいで第二部品の接触面に達しないリスクが低減される。同様に、第一部品の接触面に塗布される接着剤の量は少なくなっている。これにより、ナノワイヤを備えた第一部品の接触面に塗布しなければならない接着剤が第一の好ましい実施形態によって必要とされるよりも少ないため、第一実施形態と比較して本方法を行うことがより容易になる。さらに、第三の好ましい実施形態では、二液型接着剤が使用されることが特に好ましい。その場合、二液型接着剤の第一構成成分を第一部品の接触面に塗布することができ、二液型接着剤の第二構成成分を第二部品の接触面に塗布することができる。二液型接着剤の2つの構成成分は、部品が合わされたときにはじめて互いに接触する。その結果、二液型接着剤の硬化が早過ぎてしまうことを阻止することができる。
【0029】
本方法のステップc)では、部品同士又は接触面同士が合わせられる、すなわち互いに向かって移動される。その結果、第一部品の接触面上のナノワイヤが第二部品の接触面と接触する。この場合、第一部品の接触面から離れた各ナノワイヤの端が第二部品の接触面と接触することが好ましい。このように、接続部が形成された後に、各ナノワイヤは、第一端により第一部品の接触面に接続され、第二端により第二部品の接触面に接続される。一部品と第二部品との間の接続部は、ステップc)によって完全に形成された状態になることが可能である。これは、特に速硬化接着剤の場合に当てはまる。
【0030】
方法ステップa)~c)は、好ましくは、記載した順序で行われ、特に連続して行われる。特に、ステップa)及びb)は、ステップc)が開始する前に行われ、特にステップc)が開始する前に終了することが好ましい。しかし、ステップa)及びb)は、完全に又は部分的に時間的に重なる態様で行うことができる。特に、ステップa)及びb)は、ステップb)においてナノワイヤも設けられる接触面に接着剤が塗布されない場合には、互いに独立して行うこともできる。その場合、ステップb)をステップa)の前に行うこともできる。
【0031】
接続部は、接着剤に加えて、さらにナノワイヤを介して形成される。これは、各ナノワイヤが接触面に接続することで、特に第二部品の接触面に向いた各ナノワイヤの端が接触面に接続することで行われる。この接続部は原子レベルで形成される。この原子レベルで進行するプロセスは、焼結の際に生じるプロセスに類似する。得られる接続部は、気密又は液密又はその両方とすることができ、これにより、特に接続部の又は互いに接続された部品の又はその両方の腐食が、接続部の領域で阻止又は少なくとも限定することができる。接着剤によってこれを補強することができる。特に、形成される接続部は、完全に金属製とみなせる。ナノワイヤを介した接続部の形成は、「KlettWelding」[フックアンドループ溶接]とも言われる。これは、多数のナノワイヤを用いて、したがって多数の細長い毛髪状の構造体を用いて、接続部が得ること、を表している。多数のナノワイヤにより、接触面の不均一さや粗さを補うことができる。この方法は、接着剤を介した接続部の形成とともに、「KlettGlueing」[フックアンドループ接着]とも言われる。
【0032】
この方法の好ましい実施形態によれば、接続部が形成された後に、ナノワイヤの少なくともいくつかが接着剤に接触する。
【0033】
接続部は、各ナノワイヤが接着剤の領域に設けられるように形成されることが好ましい。したがって、ナノワイヤと接着剤とが重なる。したがって、接続部は、ナノワイヤが第一領域に設けられて且つ接着剤が第一領域に隣接するか又は第一領域から離れた第二領域に設けられるようには、形成されない。むしろ、第一領域と第二領域は、少なくとも部分的に重なり、好ましくは完全に重なる。第一領域と第二領域が部分的に重なる場合は、各ナノワイヤは重なり領域で接着剤に接触する。第一領域と第二領域が完全に重なる場合は、第一領域と第二領域との区別はない。その場合、ナノワイヤと接着剤とが同じ領域に設けられる。その結果、全てのナノワイヤが接着剤に接触する。各ナノワイヤが接着剤によって囲まれる場合は、ナノワイヤは、したがって接続部は、接着剤により、特に腐食に対して、特に良好に保護されることができる。
【0034】
本実施形態の代わりに、ナノワイヤが第一領域に設けられて且つ接着剤が第一領域に隣接するか又は第一領域から離れた第二領域に設けられるように接続部が形成されることが好ましい。第二領域が第一領域を囲むことが特に好ましい。その場合、また、ナノワイヤを、したがって接続部を、接着剤により、特に腐食から保護することが可能である。
【0035】
本方法のさらに好ましい実施形態によれば、接着剤は、ステップb)の塗布における塗布することのとき、液体である。
【0036】
液体接着剤は、ナノワイヤ間の空間が特に簡易な態様で接着剤で満たされることができるように、ナノワイヤの周りに特に容易に広げることが可能である。一方では、これは、接着剤が第一部品の接触面に塗布される場合に当てはまる。その場合は、液体接着剤は、塗布中にナノワイヤの周りに特に容易に広げることが可能である。しかし、他方では、これは、接着剤が第二部品の接触面に塗布される場合にも当てはまる。その場合は、ステップc)において2つの部品が合わされるときに接着剤がナノワイヤの周りに広がるように、ナノワイヤは、特に簡易な態様で接着剤に入ることが可能である。
【0037】
本方法のさらに好ましい実施形態によれば、接着剤は、
アクリレート、
エポキシ接着剤、
架橋接着剤、
UV光により活性化可能な接着剤、
熱により活性化可能な接着剤、
二液型接着剤
のうちの1つである。
【0038】
接着剤は、粘度が低いことが好ましい。接着剤は1N/mmの剥離力に耐えることが好ましい。
【0039】
前述の接着剤の1つ又は複数の混合物を使用することも可能である。前述の接着剤は、本方法に特に良く適していることが実証されている。したがって、前述の接着剤の全てによって、特に機械的に安定な接続部を、2つの部品の間に得ることが可能であり、このとき、各ナノワイヤは、接着剤により、特に小さい程度の悪影響を同時に受ける。特に、前述の接着剤の場合には、2つの部品を合わせたことにより且つ接着剤のおかげで、ナノワイヤが倒されたり座屈したり変位したりするリスクが特に低いことが実証されている。
【0040】
本方法のさらに好ましい実施形態によれば、ステップa)において、第二部品の接触面に多数のナノワイヤがさらに設けられる。ステップc)において、第二部品の接触面にあるナノワイヤが第一部品の接触面に接触させられるように、部品が合わせられる。
【0041】
第二部品の接触面にナノワイヤを設けることについては、第一部品の接触面にナノワイヤを設けることに関する上述の記載が対応して当てはまる。
【0042】
本実施形態では、ナノワイヤを用いた接続部は、第一部品の接触面のナノワイヤが第二部品の接触面と接触することと、第二部品の接触面のナノワイヤが第一部品の接触面と接触することにより、もたらされる。第一部品の接触面にのみナノワイヤが設けられる実施形態と比較して、本実施形態ではナノワイヤによって補強された接続部が作製される。その結果、接続部は、特に良好な電気伝導性又は熱伝導性又はその両方を有しうる。接続部の機械的安定性に対するナノワイヤの寄与も特に大きくすることができる。
【0043】
本実施形態では、接着剤は、両方の接触面に塗布されることが好ましい。これにより、接触面それぞれにおいて必要とされる接着剤は比較的少量で済む。あるいは、接着剤は、2つの接触面のうちの1つだけに塗布されることが好ましい。これにより、2つの接触面のうちの1つだけに接着剤及びナノワイヤの両方が設けられるため、本方法を行うことがより容易になる。
【0044】
本実施形態では、
a)第一部品の接触面に第一の多数のナノワイヤを設け、且つ、第二部品の接触面に第二の多数のナノワイヤを設けるステップと、
b)第一部品の接触面及び第二部品の接触面の少なくとも一方に、接着剤を塗布するステップと、
c)第一部品と第二部品とを合わせるステップであって、
第一の多数のナノワイヤを第二部品の接触面と接触させ、第二の多数のナノワイヤを第一部品の接触面と接触させ、接触面が接着剤によって互いに接続されるようにする、ステップ
のように、ステップa)~c)が行われることが好ましい。
【0045】
この方法のさらに好ましい実施形態によれば、ステップc)において、少なくとも第二部品の接触面は、最低90℃及び最高270℃の温度の少なくとも一方まで加熱される。
【0046】
ステップc)において、少なくとも第二部品の接触面が150℃~270℃の範囲内の温度に加熱されることが好ましい。
【0047】
一方では、加熱を用いて、接着剤を硬化することが可能である。他方では、加熱によって、各ナノワイヤと第二部品の接触面との間の接続部を補強することが可能である。したがって、第二部品の接触面のみが加熱されればよい。実際には、このような加熱では、第一部品の接触面、第二部品の接触面、ナノワイヤ、接着剤、第一部品の一部又は全体、第二部品の一部又は全体、、又は、これらの組み合わせに対して、加熱が行われるのかどうかについて区別できないことが多い。これは、特に熱伝導性材料が使用される場合に当てはまる。ナノワイヤ間の接続部の形成のために、第二部品の接触面以外の要素を(共に)加熱する必要はないが、有害でもない。接着剤を硬化させるために、接着剤以外の要素を(共に)加熱する必要はないが、有害でもない。ステップc)において、少なくとも第二部品の接触面及び接着剤が、150℃~270℃の範囲内の温度に加熱されることが好ましい。
【0048】
したがって、ステップc)による加熱は特に、第一部品と第二部品とが、ナノワイヤと接着剤とを含めてまとめて、例えば炉内で、加熱されることで行うことができる。しかし、あるいは、熱を、接続部の領域に、特に第二部品の接触面の領域に局所的に導くことも可能である。
【0049】
接続部を形成するには、前述の150℃の最低温度に一回、短時間でも少なくとも到達すればよい。最低温度を維持する必要はない。しかし、ステップc)で加熱が行われる温度が少なくとも10秒間、好ましくは少なくとも30秒間維持されることが好ましい。これにより、接続部を望んだとおりに形成することが可能となる。原則として、温度がより長く維持されることは有害ではない。
【0050】
ステップc)において部品同士が合わされればよい。この場合、特に接着剤が2つの部品を互いに向かって引っ張ることができるため、圧力をかける必要はない。しかし、本方法の好ましい実施形態によれば、ステップc)において、第一部品と第二部品は、最小2MPa特に最小10MPa、及び、最大200MPa特に最大20MPaの少なくとも一方の圧力で互いに向かって押される。
【0051】
使用される圧力は、2~200MPaの範囲内、特に10~70MPaの範囲内にあることが好ましい。15MPaの圧力が特に好ましい。
【0052】
一方では、圧力を印加することにより、接続部が接着剤を用いて特に機械的に安定な態様で形成されることを可能にする。他方では、圧力を印加することにより、ナノワイヤを介した接続部を補強することが可能となる。
【0053】
前述の過熱が行われる場合、圧力は、温度がその指定された下限を超える期間に少なくともおいては、指定された下限を上回る。 したがって、この点で、少なくともナノワイヤ及び第二部品の接触面は、少なくともこの期間においては、対応する圧力と対応する温度との両方に曝される。これにより、圧力及び温度の作用により接続部を形成することができる。
【0054】
さらなる態様として、第一部品と第二部品とを含む装置であって、第一部品の接触面と第二部品の接触面は、接着剤によって且つ多数のナノワイヤによって、互いに接続されている、装置が提示される。接着剤は、
アクリレート、
エポキシ接着剤、
架橋接着剤、
UV光により活性化可能な接着剤、
熱により活性化可能な接着剤、
二液型接着剤
のうちの1つであることが好ましい。
【0055】
本方法の前述の特別な利点及び設計の特徴は、本装置に適用及び転用可能であり、その逆も同様である。本装置は、本方法を用いて作製されることが好ましい。本装置において、ナノワイヤの少なくともいくつかは接着剤に接触する。ナノワイヤの全てが接着剤に接触する状態であることが特に好ましい。
【0056】
装置の好ましい実施形態によれば、ナノワイヤ間の中間空間は、接着剤で満たされる。
【0057】
ナノワイヤは、接着剤によって包まれることが好ましい。これは、ナノワイヤの外側面が接着剤によって完全に覆われることを意味する。ナノワイヤの端面は、接着剤ではなく接触面に接触する。
【0058】
装置のさらに好ましい実施形態によれば、接触面は、ナノワイヤを用いて、互いに対して電気伝導可能であるか又は熱伝導可能であるか又はその両方の態様で接続される。
【0059】
2つの接触面の間において、電気伝導性又は熱伝導性又はその両方を有する接続部は、ナノワイヤを介して実現することができ、特にナノワイヤが電気伝導性又は熱伝導性又はその両方を有する材料から形成され且つナノワイヤが2つの接触面の間の距離全体に亘って延在することで実現することができる。後者は、ナノワイヤそれぞれの第一端が第一部品の接触面に接触し、ナノワイヤそれぞれの第二端が第二部品の接触面に接触することを意味する。
【0060】
これは特に、接触面が互いに対して平行に配され、ナノワイヤが接触面に対して直角に配されている、本装置の好ましい実施形態において可能である。
【0061】
特に本実施形態では、このようにナノワイヤが2つの接触面の間の距離全体に亘って延在することが可能である。この点で、接触面、ひいては部品もナノワイヤを介して互いに接触することが可能である。
【0062】
本発明及び技術分野は、図面に基づいて以下により詳細に説明する。図面には、特に好ましい例示的実施形態を示す。しかし、本発明はそれに制限されない。特に、図面、特に図示されるサイズ比は、模式的なものにすぎないことに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】
図1は、第一部品2を第二部品3に接続する、本発明による方法を示す。
【
図2】
図2は、
図1の方法を用いて互いに接続された部品の、本発明による装置7を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1は、第一部品2を第二部品3に接続する方法を示す。使用される参照符号は
図2に関するものである。
この方法は、
a)第一部品2の接触面4上に、及び、選択的に第二部品3の接触面5上に、多数のナノワイヤ1を設けるステップと、
b)第一部品2の接触面4又は第二部品3の接触面5又はその両方に、接着剤6を塗布するステップであって、接着剤6は塗布するときに液体であるのが好ましく、使用される接着剤は、
アクリレート、
エポキシ接着剤、
架橋接着剤、
UV光により活性化可能な接着剤、
熱により活性化可能な接着剤、
二液型接着剤
のうちの1つであることが好ましい、ステップと、
c)第一部品2と第二部品3とを合わせるステップであって、多数のナノワイヤ1を第二部品3の接触面5と接触させて、接触面4、5が接着剤6によって互いに接続するようにする、ステップと、
を含む。この場合、少なくとも第二部品3の接触面5は、最低150℃及び最高270℃の少なくとも一方の温度まで加熱されることが好ましい。第一部品2と第二部品3は、最小2MPa及び最大200MPaの少なくとも一方の圧力で互いに向かって押されることが好ましい。
【0065】
図2は、
図1の方法を用いて得られる装置7を示す。この装置7は、第一部品2と第二部品3とを備える。2つの部品2、3は、それぞれの接触面4、5を有する。接触面4、5は、接着剤6によって且つ多数のナノワイヤ1によって互いに接続される。ナノワイヤ1間の中間空間は、接着剤6で満たされる。ナノワイヤ1は全て、接着剤6に接触する。接触面4、5は、ナノワイヤ1を用いて、互いに対して電気伝導可能であるか又は熱伝導可能であるか又はその両方の態様で接続される。接触面4、5は互いに対して平行に配され、ナノワイヤ1は接触面4、5に対して直角に配される。
【符号の説明】
【0066】
1 ナノワイヤ
2 第一部品
3 第二部品
4 第一部品の接触面
5 第二部品の接触面
6 接着剤
7 装置