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特許7496895ファスナーストリンガー、スライドファスナー、並びに止め具部品及びスライドファスナーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】ファスナーストリンガー、スライドファスナー、並びに止め具部品及びスライドファスナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A44B 19/38 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
A44B19/38
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022570918
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048593
(87)【国際公開番号】W WO2022137471
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】董 宥辰
(72)【発明者】
【氏名】田村 和夫
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/095364(WO,A1)
【文献】特開2004-248809(JP,A)
【文献】特表2012-529973(JP,A)
【文献】特表2014-526316(JP,A)
【文献】登録実用新案第3170902(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 19/00-19/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファスナーエレメント(4a,4b)が設けられたファスナーテープ(3a,3b)と、
前記ファスナーエレメント(4a,4b)に隣接する位置で前記ファスナーテープ(3a,3b)に固着した止め具部品(5a,5b)を備えるファスナーストリンガー(2a,2b)であって、
前記止め具部品(5a,5b)は、磁性体(30a,30b)と、前記磁性体(30a,30b)の全体が露出することなく埋設された基部(6a,6b)を含み、
前記基部(6a,6b)は、両者の間に形成された界面に基づいて識別可能な第1及び第2樹脂部(41a,41b,42a,42b)を含み、
前記第1及び第2樹脂部(41a,41b,42a,42b)は、各々、前記磁性体(30a,30b)の少なくとも一つの所定面(34,35,36)の互いに異なる第1及び第2領域(31,32)を被覆するように設けられる、ファスナーストリンガー。
【請求項2】
前記磁性体(30a,30b)の少なくとも一つの所定面(34,35,36)は、前記第1及び第2樹脂部(41a,41b,42a,42b)により相補的に被覆されることを特徴とする請求項1に記載のファスナーストリンガー。
【請求項3】
前記磁性体(30a,30b)の各面(34,35,36)において前記第1及び第2領域(31,32)が前記第1及び第2樹脂部(41a,41b,42a,42b)により個別に被覆されることを特徴とする請求項1又は2に記載のファスナーストリンガー。
【請求項4】
前記第1樹脂部(41a,41b)は、前記第2樹脂部(42a,42b)により被覆されずに露出した1以上の露出面を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項5】
前記露出面は、前記磁性体(30a,30b)の中心軸(AX1,AX2)に関する径方向に延びることを特徴とする請求項4に記載のファスナーストリンガー。
【請求項6】
前記第2樹脂部(42a,42b)は、前記磁性体(30a,30b)の中心軸(AX1,AX2)に関する径方向に延びる露出面を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項7】
前記磁性体(30a,30b)の中心軸(AX1,AX2)上において前記第1及び第2樹脂部(41a,41b,42a,42b)の積層部分が設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項8】
前記基部(6a)は、前記磁性体(30a)が埋設された軸状突起(11)を有し、
前記軸状突起(11)の頂面は、前記第1及び第2樹脂部(41a,41b,42a,42b)それぞれの露出面を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項9】
前記基部(6a)は、前記磁性体(30a)が埋設された軸状突起(11)を有し、前記軸状突起(11)の側壁は、前記第1樹脂部(41a,41b)の壁部と前記第2樹脂部(42a,42b)の壁部が周方向に交互に設けられて成ることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項10】
前記基部(6b)は、前記磁性体(30b)が底面(21b)の直下に設けられた凹部(21)を有し、前記凹部(21)の底面(21b)は、前記第1及び第2樹脂部(41a,41b,42a,42b)それぞれの露出面を含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項11】
前記第1樹脂部(41a,41b)は、前記磁性体(30a,30b)を受容するべく構成され、
前記第2樹脂部(42a,42b)は、前記第1樹脂部(41a,41b)以外の前記止め具部品(5a,5b)の残部を構成することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項12】
前記磁性体(30a,30b)は、磁気軸(AX1,AX2)に交差するように設けられた一対の主面(34,35)と前記一対の主面(34,35)の外周縁を接続する側面(36)を有する永久磁石であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項13】
前記止め具部品(5a,5b)は、前記基部(6a,6b)から前記ファスナーエレメント(4a,4b)に向けて延びる挿入部(7a,7b)を有し、前記挿入部(7a,7b)は、スライダー内にその後口を介して挿入されるように構成され、又は、スライダー内にその上翼板のフランジ部と下翼板のフランジ部の間の隙間を介して挿入されるように構成されることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項14】
前記界面は、前記磁性体(30a,30b)の少なくとも一つの所定面(34,35,36)から前記基部(6a,6b)の表面に到達するまで又は前記基部(6a,6b)の表面近傍まで延びる領域を含む、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項15】
ファスナーエレメント(4a,4b)が設けられたファスナーテープ(3a,3b)と、
前記ファスナーエレメント(4a,4b)に隣接する位置で前記ファスナーテープ(3a,3b)に固着した止め具部品(5a,5b)を備えるファスナーストリンガー(2a,2b)であって、
前記止め具部品(5a,5b)は、磁性体(30a,30b)と、前記磁性体(30a,30b)の全体が露出することなく埋設された基部(6a,6b)を含み、
前記基部(6a,6b)は、両者の間の界面を挟んで形成されて区別可能な隣接した樹脂部(41a,41b,42a,42b)を含み、
前記界面は、前記磁性体(30a,30b)の所定面(34,35,36)から離れる方向に前記所定面(34,35,36)から延びる領域を含み、前記所定面(34,35,36)が前記界面の領域によって第1及び第2領域(31,32)に区分される、ファスナーストリンガー。
【請求項16】
前記界面の前記領域は、前記所定面(34,35,36)から前記基部(6a,6b)の表面に到達するまで又は前記基部(6a,6b)の表面の近傍まで延びる、請求項15に記載のファスナーストリンガー。
【請求項17】
前記界面は、前記所定面(34,35,36)から間隔を空けて前記所定面(34,35,36)に沿って延びる領域を含む、請求項15又は16に記載のファスナーストリンガー。
【請求項18】
前記磁性体(30a,30b)が磁石であり、
前記所定面(34,35,36)は、前記磁石の磁気軸(AX1,AX2)に直交して配向される、請求項15乃至17のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ファスナーストリンガー、スライドファスナー、並びに止め具部品及びスライドファスナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スライドファスナーの開閉の利便性を高めるニーズがある。
【0003】
特許文献1は、スライドファスナーの止め具に関し、磁石を利用して止め具の操作の簡素化を促進することが開示されている。特には、第1及び第2部材の第1及び第2基部が重ね合わされる時、両者の間に磁気的な吸引力又は反発力が生じて第2基部が第1基部に対して相対的に回転する。この時、第2部材の第2挿入部がスライダーの上下フランジ間の隙間に向けて枢動する。このようにしてスライドファスナーを閉じるために必要な止め具の操作負担が軽減される。基部の収容部に永久磁石が収容される。
【0004】
特許文献2には、摺接板の凹部に磁石を嵌合により取り付けることが開示されている。
【0005】
特許文献3には、磁着可能なエレメントを有するスライドファスナーが開示されている。未磁化粒子を含むエラストマーを射出成形し、続いてこれに磁界を与えてその粒子を磁化する。磁界の強さと位置が適切に制御されて磁化された粒子がエラストマー内で列状のクラスターを形成する。続いて、エラストマーが硬化され、ファスナーエレメントの形状出しのための加工が行われる。
【0006】
特許文献4には、未着磁の磁石をネクタイに取り付けた後にその磁石を着磁することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2019/175944号
【文献】特許第4152216号公報
【文献】米国特許第10,709,212号明細書
【文献】実用新案登録第3,078,682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の一態様においては、止め具部品における磁性体の保持構造をより強化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係るファスナーストリンガーは、ファスナーエレメントが設けられたファスナーテープと、ファスナーエレメントに隣接する位置でファスナーテープに固着した止め具部品を備えるファスナーストリンガーであって、
止め具部品は、磁性体と、磁性体の全体が埋設された基部を含み、
基部は、両者の間に形成された界面に基づいて識別可能な第1及び第2樹脂部を含み、
第1及び第2樹脂部は、各々、磁性体の少なくとも一つの面の互いに異なる第1及び第2領域を被覆するように設けられる。第1及び第2樹脂部は、各々、第1及び第2領域に直に被覆する。各樹脂部と各領域が直に接触して両者の間に隙間がない。
【0010】
幾つかの実施形態においては、磁性体の少なくとも一つの面は、第1及び第2樹脂部により相補的に被覆される、又は、磁性体の各面において第1及び第2領域が第1及び第2樹脂部により個別に被覆される。幾つかの実施形態においては、第1樹脂部は、第2樹脂部により被覆されずに露出した1以上の露出面を有する。露出面は、磁性体の中心軸に関する径方向に延び得る。幾つかの実施形態においては、第2樹脂部は、磁性体の中心軸に関する径方向に延びる露出面を有する。幾つかの実施形態においては、磁性体の中心軸上において第1及び第2樹脂部の積層部分が設けられる。
【0011】
幾つかの実施形態においては、基部は、磁性体が埋設された軸状突起を有し、軸状突起の頂面は、第1及び第2樹脂部それぞれの露出面を含む。基部は、磁性体が埋設された軸状突起を有し、軸状突起の側壁は、第1樹脂部の壁部と第2樹脂部の壁部が周方向に交互に設けられて成り得る。基部は、磁性体が底面の直下に設けられた凹部を有し、凹部の底面は、第1及び第2樹脂部それぞれの露出面を含み得る。
【0012】
幾つかの実施形態においては、(a)磁性体が少なくとも部分的に埋設された軸状突起が基部に設けられ、軸状突起の側壁が第1樹脂部の壁部と第2樹脂部の壁部を含む、又は(b)磁性体が底面の直下に設けられた凹部が基部に設けられ、凹部の底面が第1樹脂部の露出面と第2樹脂部の露出面を含む。
【0013】
第1樹脂部は、磁性体を受容するべく構成され、第2樹脂部は、第1樹脂部以外の止め具部品の残部を構成し得る。磁性体は、磁気軸に交差するように設けられた一対の主面と一対の主面の外周縁を接続する側面を有する永久磁石であり得る。
【0014】
本開示の別態様に係るスライドファスナーは、一対のファスナーストリンガーと、一対のファスナーストリンガーを開閉するべく移動可能であるスライダーを備えるスライドファスナーであって、
一対のファスナーストリンガーそれぞれが、磁性体として永久磁石が設けられた上述のいずれかに記載のファスナーストリンガーであり、
一対のファスナーストリンガーそれぞれに含まれる一対の止め具部品には、当該一対の止め具部品の積層に帰結するべく互いに磁気的に吸引されるように永久磁石が設けられ、
一対の止め具部品の一方が、永久磁石の磁気軸に関する周方向に沿って延びるに応じて傾斜する傾斜面を有し、
一対の止め具部品の他方が、一対の止め具部品の永久磁石の磁気的吸引に応じて傾斜面上を摺動する摺動部を有する。
【0015】
本開示の更なる別態様に係る止め具部品の製造方法は、ファスナーストリンガーのファスナーテープに固着するべき又は固着した止め具部品の製造方法であって、
磁性体が埋設されるように止め具部品を射出成形し、
射出成形後、止め具部品に磁界を付与して磁性体を磁化させる。
【0016】
幾つかの実施形態においては、射出成形は、少なくとも2回の射出成形を含み、初回の射出成形において磁性体の少なくとも一つの面の第1領域が第1樹脂部により被覆され、次回の射出成形において磁性体の少なくとも一つの面の第2領域が第2樹脂部により被覆される。
【0017】
本開示のまた更なる別態様に係るスライドファスナーの製造方法は、磁着可能かつ分離可能な止め具を有するスライドファスナーの製造方法であり、上述のいずれかに記載のファスナーストリンガーをペアとして組み合わせ、このペアに含まれる結合した止め具部品のペアに方向が一定の磁界を付与して各止め具部品に埋設された磁性体を磁化することを含む。
【発明の効果】
【0018】
本開示の一態様によれば、止め具部品における磁性体の保持構造をより強化することが促進される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の一態様に係る開状態のスライドファスナーの概略的な上面図である。
図2】左側ファスナーストリンガーの概略的な下面図である。
図3】左側ファスナーストリンガーの概略的な右側面図である。
図4】右側ファスナーストリンガーの概略的な下面図である。
図5】左側ファスナーストリンガーの概略的な断面模式図であり、図1の鎖線X5-X5に沿う左側止め具部品の概略的な断面構成を示す。
図6】右側ファスナーストリンガーの概略的な断面模式図であり、図4の鎖線X6-X6に沿う右側止め具部品の概略的な断面構成を示す。
図7】左右の止め具部品の永久磁石の磁気的吸引に応じてスライダー内に右側止め具部品の挿入部が自動的に挿入されることを示す概略図である。
図8】止め具部品の製造方法を示す概略的なフローチャートである。
図9】1次射出成形工程により左側磁性体の各面の第1領域が第1樹脂部により被覆されることを示す概略的な工程図である。
図10】1次射出成形工程により右側磁性体の各面の第1領域が第1樹脂部により被覆されることを示す概略的な工程図である。
図11】2次射出成形工程により左側磁性体の各面の第2領域(図11では不図示)が第2樹脂部により被覆され、また第1樹脂部が第2樹脂部により被覆されることを示す概略的な工程図である。
図12】2次射出成形工程により右側磁性体の各面の第2領域が第2樹脂部により被覆され、また第1樹脂部が第2樹脂部により被覆されることを示す概略的な工程図である。
図13】左側磁性体が第1樹脂部により部分的に被覆された1次成形品の概略的な斜視図である。
図14図13に示した1次成形品の概略的な上面図である。
図15図13に示した1次成形品の概略的な下面図である。
図16図15に示した1次成形品の概略的な断面模式図であり、図15の鎖線X16-X16に沿う断面を示す。
図17図15に示した1次成形品の概略的な断面模式図であり、図15の鎖線X17-X17に沿う断面を示す。
図18】右側磁性体が第1樹脂部により部分的に被覆された1次成形品の概略的な斜視図である。
図19図18に示した1次成形品の概略的な上面図である。
図20図18に示した1次成形品の概略的な下面図である。
図21図20に示した1次成形品の概略的な断面模式図であり、図20の一点鎖線X21-X21に沿う断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、様々な実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本願に開示されたファスナーストリンガー及び止め具部品の製造方法にのみ有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々なファスナーストリンガー及び止め具部品の製造方法にも通用する普遍的な特徴として理解される。
【0021】
以下、前後方向は、スライドファスナーを開閉するべくスライダーが動く方向(図1を正面視して上下方向)に一致する。左右方向は、前後方向に直交し、かつファスナーテープのテープ面に平行な方向(図1を正面視して左右方向)である。上下方向は、前後方向に直交し、かつファスナーテープのテープ面に垂直な方向である。ファスナーテープのテープ面は、ファスナーテープの厚みを規定する面である。
【0022】
スライドファスナー1は、左右のファスナーストリンガー2a,2bと、スライドファスナー1を開閉するためのスライダー40を有する。スライダー40の前進によりスライドファスナー1が閉じられ、左右のファスナーストリンガー2a,2bが結合する。スライダー40の後進によりスライドファスナー1が開けられ、左右のファスナーストリンガー2a,2bが非結合になる。
【0023】
スライダー40は、上翼板81、下翼板、及び上翼板81と下翼板を連結する連結柱83を有する。連結柱83の左右の前口が設けられる。これらの前口の反対側に一つの後口が設けられる。スライダー40の後口を介して後述の挿入部7aがスライダー40内に挿入される。上翼板81の左右側縁部には、下方に突出し、かつ前後方向に延びるフランジ部86が設けられる。下翼板の左右側縁部には、上方に突出し、かつ前後方向に延びるフランジ部が設けられる。これらの上下のフランジ部の間の隙間に後述の挿入部7bが挿入される。スライダー40が止め具部品5a,5bから前方に離れて位置する時、スライダー40の上下のフランジ部の間の隙間にファスナーテープ3bが挿入される。
【0024】
ファスナーストリンガー2a,2bは、各々、ファスナーエレメント4a,4bが設けられたファスナーテープ3a,3bと、ファスナーエレメント4a,4bに隣接する位置でファスナーテープ3a,3bに固着した止め具部品5a,5bを有する。ファスナーテープは、前後方向に長尺で柔軟性のある帯体であり、織物、編物、又はこれらの混在物である。ファスナーエレメントは、相手方エレメントと結合可能に構成され、例えば、樹脂製又は金属製エレメント、或いはモノフィラメントが螺旋状に巻かれたコイル状エレメントである。ファスナーエレメントは、射出成形、加締付け、縫付け、又は接着によりファスナーテープに取り付けられる。図示のファスナーエレメントは、基部、首部、及び頭部を有する樹脂製エレメントである。基部がファスナーテープの側縁部に固着している。
【0025】
止め具部品5a,5bは、お互いに分離可能に結合可能である。止め具部品5a,5bは、各々、基部6a,6bと、基部6a,6bからファスナーエレメント4a,4bに向けて(即ち、前方に)延びる挿入部7a,7bを有する。各基部6a,6bには磁性体30a,30bの全体が埋設されている(図5及び図6参照)。磁性体30a,30bはお互いに異なる形状を有し、ここでは、磁性体30aが円柱状の形状を有し、磁性体30bが円板状の形状を有する。上述のように、挿入部7aは、スライダー40内にその後口を介して挿入される。挿入部7bは、スライダー40内にその上翼板81のフランジ部と下翼板のフランジ部の間の隙間を介して挿入される。なお、止め具部品5a,5bの構成を左右逆にしても構わない。
【0026】
左側止め具部品5aの基部6aは、磁性体30aが埋設された軸状突起11を有する。軸状突起11は、下方に突出して設けられる。右側止め具部品5bの基部6bは、磁性体30bが底面21bの直下に設けられた凹部21を有する。図1~5,6に示す止め具部品の基部に埋設された磁性体は、未着磁の磁性体が磁化された永久磁石である(以下、磁性体30a,30bを永久磁石30a,30bと呼ぶ場合がある)。従って、左側止め具部品5aの基部6aと右側止め具部品5bの基部6bが空間的に近くに位置づけられると(例えば、基部6aの下方に基部6bが配置されると)、基部6bの永久磁石30bと基部6aの永久磁石30aの間に生じる磁気的吸引により基部6aと基部6bが積層されて基部6aの軸状突起11が基部6bの凹部21に嵌合する。
【0027】
永久磁石30a,30bは、ネオジウム磁石といった希土類磁石であり得る。永久磁石30a,30bは、合計3つの面として、磁気軸AX1,AX2に交差するように設けられた(或いは、永久磁石の厚みを画定する)一対の主面34,35と、一対の主面34,35の外周縁を接続する側面36を有する(図5及び図6参照)。側面36は、磁気軸AX1,AX2の径方向外側の位置で磁気軸AX1,AX2に沿って延びて主面34の外周縁と主面35の外周縁を接続する。
【0028】
永久磁石30a,30bの磁気軸AX1,AX2は、磁性体30a,30bの中心軸に一致する。磁気軸は、永久磁石のN極とS極の配置方向に延びる軸であり、永久磁石の周囲に生じる磁力線に基づいて定まる。磁性体30aの中心軸AX1は、軸状突起11の中心軸に一致する。磁性体30bの中心軸AX2は、凹部21の深さ方向に一致する。なお、永久磁石30a,30bを角柱形状及び多角形平板に形状付けることもできる。円錐又は角錐又は球体といった他の形状も採用可能である。
【0029】
基部6aは、軸状突起11の周囲に設けられた外周部12を有する。外周部12には摺動部13p,13q,13rが設けられる。基部6bは、凹部21の周囲に設けられた外周部22を有する。外周部22には傾斜面23p,23q,23rが設けられる。上述のように永久磁石間の磁気的吸引により軸状突起11が凹部21に嵌合する過程で、摺動部13p,13q,13rと傾斜面23p,23q,23rが接触し、摺動部13p,13q,13rが傾斜面23p,23q,23rを下ることで基部6aに対して基部6bが回転する。軸方向に働く磁気的吸引力が軸方向周りの回転力に変換されると言える。
【0030】
挿入部7aは、挿入部7bを受容するべく右側で開口するように構成される。図3に示すように、挿入部7aが上板14と下板15を有し、これらの間で挿入空間16が画定される。また、図2に示すように、ファスナーテープ3aの上下両面において挿入部7aに隣接して棒部8aが設けられ、ファスナーテープ3aの上下両面においてフランジ通路が画定される。棒部8aは、挿入部7aと同様、基部6aから前方に延びる。挿入部7aと棒部8aの間のフランジ通路にスライダー40のフランジが挿入され、挿入部7a上にスライダー40が留まることが促進される。
【0031】
挿入部7bは、ファスナーテープ3bから左方に離れるに応じてテーパー状に形状づけられた挿入端部を有し、スライダー40の右側の上下フランジ部の間の隙間へ円滑に挿入される。挿入部7bの前端には疑似ファスナーエレメント4b’が結合し、スライダー40は、止め具上からファスナーエレメント4a,4b上へ円滑に移動できる。挿入部7bには挿入端部の反対側で棒部8bが連結する。棒部8bは、ファスナーテープ3bの上下両面で突出して設けられ、スライダー40の右側の上下フランジ部に衝突する。棒部8bによりスライダー40内に挿入される挿入部7bの停止位置が定められる。
【0032】
図7に示すように、スライダー40が最後端に位置付けられている時(即ち、スライダー40内に挿入部7aが挿入されている時)、基部6aの下方に基部6bが配置されると、基部6bの永久磁石30aと基部6aの永久磁石30bの間に磁気的吸引が生じる。この磁気的吸引力に応じて基部6aと基部6bが積層されて基部6aの軸状突起11が基部6bの凹部21に嵌合する。軸状突起11が凹部21に嵌合する過程で(すなわち、基部6a,6bの軸方向沿いに接近する過程で)、摺動部13p,13q,13rと傾斜面23p,23q,23rが接触し、摺動部13p,13q,13rが傾斜面23p,23q,23rを下る。これに応じて基部6aに対して基部6bが反時計回りに回転し、スライダー40の右側の上下フランジ部の間の隙間を介してスライダー40内に挿入部7bが挿入される。スライダー40を前進させることにより挿入部7aの挿入空間16に挿入部7bが挿入されて左右の止め具部品5a,5bが結合する。スライダー40が更に前進すると、左右のファスナーエレメント4a,4bが結合する。
【0033】
摺動部13p,13q,13rは、永久磁石30aの磁気軸AX1に関する周方向に沿って配置される。同様、傾斜面23p,23q,23rは、永久磁石30bの磁気軸AX2に関する周方向に沿って配置される。各傾斜面は、永久磁石30bの磁気軸AX2に関する周方向に沿って延びるに応じて傾斜する。永久磁石30a,30bの磁気的吸引に応じて摺動部13p,13q,13rが傾斜面23p,23q,23r上を摺動する(下る)。摺動部を3つ設けることで回転安定性が高められるが、1つだけ設けても構わない。傾斜面についても同様である。無論、摺動部及び傾斜面を設けず、基部6aに対して基部6bを手動で回転させても良い。永久磁石30a,30bは、お互いの磁気軸AX1,AX2が合致するように整列されるため、軸状突起11と凹部21を省略することもできる。
【0034】
基部6aは、挿入部7aの後方に隣接して設けられ、軸状突起11と同様に下方に突出した案内部17を有する。案内部17は、挿入部7aの開口と空間的に連通した溝を定めるように設けられ、また、右方に向けて下り傾斜する案内面を有する。基部6a,6bがお互いに磁気的に吸引される時、案内部17の案内面上に挿入部7bが配置されてしまうことがある。この場合でも、挿入部7bは、案内部17の案内面を下って右側に時計回りに枢動することができる。挿入部7bは、案内部17の案内面を下り終えると、上述と同様にしてスライダー40の右側の上下フランジ部の間の隙間を介してスライダー40内に進入することができる。
【0035】
本実施形態においては、基部6aは、両者の間に形成された界面に基づいて識別可能な第1及び第2樹脂部41a,42aを含む(図2図3,及び図5を参照)。第1及び第2樹脂部41a,42aは、各々、磁性体30aの少なくとも一つの面の互いに異なる第1及び第2領域31,32を被覆するように設けられる(図17を参照)。これにより、磁性体30aの周囲での樹脂部厚の増加を抑制しつつ、止め具部品5aにおける磁性体30aの保持構造を強化することができる。具体的には、磁性体30aの少なくとも一つの面上で第1及び第2樹脂部41a,41b,42a,42bの厚みを増すことができ、また第1樹脂部41a,41bの間に第2樹脂部42a,42bが入り込んで両者の強固な連結が促進される。磁性体を凹部に収納し、この凹部を蓋により閉鎖する場合と比べて、蓋の固定に必要な構造(例えば、爪部とこれが嵌合する凹部)自体を省略することができる。
【0036】
念のため述べれば、第1樹脂部41aが第1領域31を被覆する時、第1樹脂部41aが第1領域31に直に接触する(両者の間に隙間がない)。同様、第2樹脂部42aが第2領域32を被覆する時、第2樹脂部42aが第2領域32に直に接触する(両者の間に隙間がない)。第1及び第2樹脂部41a,42aは、同一の樹脂材料から形成可能であるが、両者の間に形成された界面に基づいて識別可能である。第2領域32は、例えば、1次射出成形時の磁性体と金型面の接触により確保することができる。
【0037】
上述と同様の説明が基部6bにも当てはまる。基部6a,磁性体30a、及び第1及び第2樹脂部41a,42aを、基部6b,磁性体30b、第1及び第2樹脂部41b,42bで置き換えて上述の説明を読むものとして重複説明は省略する。基部6bについて、図1図4図6が参照される。図6には、磁性体30bの各主面34,35において第1領域31が第1樹脂部41bにより被覆され、第2領域32が第2樹脂部42bにより被覆されることが図示されている。
【0038】
永久磁石30a,30bの少なくとも一つの面(例えば、主面及び/又は側面)は、第1樹脂部41a,41bと第2樹脂部42a,42bにより相補的に被覆され得る。永久磁石30a,30bの面が第1及び第2樹脂部により被覆されずに止め具部品5a,5bにおいて部分的に露出してしまうことが回避される。或いは、その露出を抑制するための追加の樹脂部を設ける必要性が解消される。有利には、永久磁石30a,30bの主面34,35及び側面36の各面(換言すれば、全ての面)において第1及び第2領域31,32が第1及び第2樹脂部41a,41b,42a,42bにより個別に被覆される。
【0039】
第1樹脂部41a,41bは、第2樹脂部42a,42bにより被覆されずに止め具部品5a,5bにおいて露出した1以上の露出面を有し得る。磁性体30a,30bの周囲における樹脂部の厚みに関して制約がある中、第1樹脂部41a,41bを厚く形成することができ、第1樹脂部41a,41bの強度を確保することができる。なお、第1樹脂部41a,41b露出面は、2次射出成形時の1次成形品と金型面の接触により確保される。成形不良の抑制の観点から、第1樹脂部41a,41bの露出面又は第2樹脂部42a,42bの露出面は、磁性体30a,30bの中心軸に関する径方向に沿って延びることが好ましい。
【0040】
以下、より具体的に説明する。図1に示すように、基部6bの凹部21の底面21bは、第1樹脂部41bの露出面と第2樹脂部42bの露出面の組み合わせにより構成される。凹部21の底面21bにおいて、第1樹脂部41bは、放射状(Y字状)に形成された露出面を有する。放射状の露出面は、中央面と、中央面から径方向外側に延びる複数の延在面を有する。延在面の間には第2樹脂部42bの露出面がある。第2樹脂部42bの露出面は、磁性体30bの中心軸AX2に関する周方向において等間隔で配置される。このように第1樹脂部41bの放射状の露出面と合計3つの第2樹脂部42bの露出面により凹部21の底面21bが形成される。
【0041】
図4に示すように、凹部21とは反対側の基部6bの下面が、第1樹脂部41bの露出面と第2樹脂部42bの露出面の組み合わせにより構成される。凹部21とは反対側の基部6bの下面において、第2樹脂部42bは、放射状(Y字状)に形成された露出面を有する。放射状の露出面は、中央面と、中央面から径方向外側に延びる複数の延在面を有する。延在面の幅は、径方向内側と径方向外側で異なる。延在面が中央面から離間するに応じて、延在面の幅が漸減し、径方向内側と径方向外側の境界を越えた後、延在面の幅が急増する。延在面の径方向外側の領域が扇形に形状付けられる。延在面の間には第1樹脂部41bの露出面がある。第1樹脂部41bの各露出面は、磁性体30bの中心軸AX2に関して径方向外側に延びる。従って、第1樹脂部41bの合計3つの露出面は、放射状に形成されていると言える。第1樹脂部41bの合計3つの露出面は、磁性体30bの中心軸AX2に関する周方向において等間隔で配置される。このように第2樹脂部42bの放射状の露出面と合計3つの第1樹脂部41bの露出面により基部6bの下面が形成される。
【0042】
なお、基部6bの下面側では、磁性体30bの中心軸AX2沿いに第1樹脂部41bと第2樹脂部42bが積層されており、即ち、第1樹脂部41bが第2樹脂部42bにより被覆されている。これにより、第1樹脂部41bの間の溝内に第2樹脂部42bになるべき溶融樹脂が円滑に流入することが促進される。結果として、第1及び第2樹脂部の強固な連結が達成され、磁性体の保持構造も強化される。基部6bの上面側でも、上述と同様に、第1樹脂部41bを第2樹脂部42bで被覆しても良い。
【0043】
図2に示すように、軸状突起11の頂面及び/又は側面は、第1樹脂部41a及び第2樹脂部42aの露出面の組み合わせにより構成される。軸状突起11の頂面で、第2樹脂部42aは、放射状(Y字状)に形成された露出面を有する。放射状の露出面は、中央面と、中央面から径方向外側に延びる複数の延在面を有する。延在面の間には第1樹脂部41aの露出面がある。この第1樹脂部41aの露出面は、磁性体30aの中心軸AX1に関する周方向において等間隔で配置される。
【0044】
軸状突起11の側面では、磁性体30aの中心軸AX1に関する周方向において第1樹脂部41aの露出面と第2樹脂部42aの露出面が周方向に交互に設けられる。第1及び第2樹脂部41a,42aの露出面は、各々、軸状突起11の頂面及び側面の両方に亘る範囲で形成される。従って、軸状突起11の側壁は、磁性体30aの中心軸AX1に関する周方向において第1樹脂部41aの壁部と第2樹脂部42aの壁部が周方向に交互に設けられて成る。磁性体30aの周囲における樹脂部の厚みに関して制約がある中、各樹脂部を厚く形成することができ、磁性体30aの周囲の樹脂部の強度を確保することができる。
【0045】
なお、軸状突起11の頂面側では、磁性体30aの中心軸AX1沿いに第1樹脂部41aと第2樹脂部42aが積層されており、即ち、第1樹脂部41bが第2樹脂部42bにより被覆されている。これにより、第1樹脂部41aの間の溝内に第2樹脂部42aになるべき溶融樹脂が円滑に流入することが促進される。結果として、第1及び第2樹脂部の強固な連結が達成され、磁性体の保持構造も強化される。軸状突起11の頂面と反対側の磁性体30aの主面上においても第1及び第2樹脂部41a,42aが積層される。
【0046】
永久磁石30a,30b間の磁気的吸引力を高めるため、軸状突起11の頂面側の永久磁石30aの主面上で樹脂部を薄く形成し、同様、凹部21の底面21b側の永久磁石30bの主面上で樹脂部を薄く形成すると良い。しかしながら、強度確保の観点から樹脂部の厚みに関して制約がある。上述のように第1及び第2樹脂部が磁性体のある面の第1及び第2領域を個別に被覆することにより、樹脂厚の制約がある中、第1及び第2樹脂部の所望の厚みを確保することが促進される。第1及び第2樹脂部が無駄に積層されず、止め具部品の大型化を抑制できる。これに際して、磁性体の中心軸(永久磁石の磁気軸)上においては第1樹脂部を第2樹脂部で被覆する。これにより、第1樹脂部の間の溝内への第2樹脂部の円滑な流入が促進される。また更に、第1樹脂部が露出面を有しない程まで第2樹脂部により被覆しないことで止め具部品の大型化を抑制できる。
【0047】
第1樹脂部41a,41bの露出面の形状、場所、範囲、及び個数は様々に変更可能である。第2樹脂部42a,42bの露出面についても同様である。基部6aの上面では第1樹脂部41aは露出面を有しないが有しても良い。
【0048】
各ファスナーストリンガー2a,2b(同時に、止め具部品5a,5b)は、図8に示すように止め具部品の射出成形と、これに続く磁性体の磁化(すなわち、着磁)により製造可能である。射出成形に際して、未着磁の磁性体を用いることで永久磁石を用いる場合に生じ得る問題を回避することができる。例えば、未着磁の磁性体を用いる場合、チャックやグリッパーによる搬送過程で、周囲の磁性部品に磁着することがない。また、金型が磁性を有するか否かを確認する手間もない。着磁に関しては、電磁石を用いて強磁場を生成し、ここに未着磁の磁性体が埋設された止め具部品を配置することで達成可能である。
【0049】
射出成形は、1次及び2次射出成形の2段階で行うことができる。1次射出成形においては、図9及び図10に示すように、磁性体30a,30bが上下型18,19により画定される成形キャビティーに配置される。好適には、下型18と上型19の間で磁性体30a,30bが挟まれて保持され、その変位が抑制される。なお、磁性体30a,30bの挟み込みのために適切な型締め力が設定される。
【0050】
磁性体30a,30bの面(例えば、主面34,35及び側面36)の第1領域31は、成形キャビティー内で露出している。磁性体30a,30bの面(例えば、主面34,35及び側面36)の第2領域32は、下型18又は上型19の金型面に接触している。ゲートを介して成形キャビティーに溶融樹脂が流入し、続いて上下型の冷却により溶融樹脂が硬化する。このようにして1次成形品60a(図13乃至図17参照)と1次成形品60b(図18乃至図21参照)が得られる。第1樹脂部41aが第1領域31に固着する。第1樹脂部41aは、第2領域32に固着しない。第2領域32は、第1樹脂部41aにより被覆されずに露出したままである。
【0051】
2次射出成形に際して、図11及び図12に示すように、1次成形品60a,60bが上下型18により画定される成形キャビティーに配置される。好適には、下型18と上型19の間で1次成形品60a,60bが挟まれて保持され、その変位が抑制される。1次成形品60a,60bの面(例えば、主面34,35及び側面36)の第2領域32は、成形キャビティー内で露出している。1次成形品60a,60bの第1樹脂部41a,41bが部分的に下型18又は上型19の金型面に接触する。この第1樹脂部41a,41bの接触面が止め具部品における第1樹脂部41a,41bの露出面になる。
【0052】
ゲートを介して成形キャビティーに溶融樹脂が流入し、続いて上下型の冷却により溶融樹脂が硬化する。このようにして止め具部品5a,5b(同時に、止め具部品5a,5bが固着したファスナーストリンガー2a,2b)が得られる。第2樹脂部42a,42bが第2領域32に固着する。第2樹脂部42a,42bは、磁性体30a,30bに限らず、第1樹脂部41a,41bにも固着する。なお、2次射出成形の成形キャビティーにはファスナーテープ3a,3bの側縁部も配置されており、この結果、止め具部品5a,5bがファスナーテープ3a,3bに固着する。
【0053】
図13乃至図17に示す1次成形品60aを参照することにより磁性体30aの主面34,35及び側面36それぞれが第1樹脂部41a及び第2樹脂部42aにより相補的に被覆されることが理解できる。また、第1樹脂部41aが磁性体30aを受容するべく構成され、また、第2樹脂部42aが第1樹脂部41a以外の止め具部品5aの残部を構成することも理解できる。
【0054】
1次成形品60aは、磁性体30aの主面34,35を被覆する被覆部64,65と、磁性体30aの側面36を被覆する複数の壁部66を有する。複数の壁部66を介して被覆部64,65が連結される。磁性体30aの主面34において第1領域31が第2領域32よりも広い。磁性体30aの主面35及び側面36についても同様である。このように第2領域32よりも第1領域31を広くすることにより、2次射出成形時の下型18上の1次成形品60aの安定性が高められる。なお、被覆部64,65及び壁部66は、磁性体30aの各面に密着している。
【0055】
被覆部64,65には、各々、径方向内側に延びる溝64a,65aが設けられる。溝64aは、磁性体30aの主面34をその外周部にて露出させるように形成される。溝65aについても同様である。被覆部65の中央部では第1樹脂部41aが薄く形成され、溝65a同士が空間的に連通している(結果としてY字状の溝が形成される)。従って、2次射出成形時、溶融樹脂は、溝65aに円滑に流入して流動することができる。周方向で隣り合う壁部66の間には縦溝66aが形成される。縦溝66aと溝65aが連続し、磁性体30aの側面36及び主面35に亘って連続的に延びる溝が形成される。縦溝66aは、後述の連結部62の間のスロットにも連通しており、2次射出成形時、溶融樹脂がより自由に流動できる。
【0056】
被覆部65は、中央部65pと、中央部65pから径方向外側に延びる複数の延在部65qを有する。中央部65pは、延在部65qよりも薄く、上述の中央部65p上での(3つの)溝65aの空間的な連通が確保される。延在部65qは、径方向外側に延びるに応じて幅広になり、端的には、扇形形状を有する。従って、溝65aは、径方向に実質的に一定幅で延びることができる。
【0057】
1次成形品60aは、磁性体30aの中心軸AX1から径方向外側に突出した環状フランジ61を有することができる。環状フランジ61は、複数の連結部62を介して被覆部64の外周縁に連結される。環状フランジ61を設けることによりチャック又はグリッパーにより1次成形品60aを安定把持することができる。環状フランジ61は、2次射出成形時の溶融樹脂の流動を阻害し得る。従って、環状フランジ61の内側(例えば、環状フランジ61と被覆部64の間)に溝63を形成しても良い。連結部62の間のスロットを介して溶融樹脂は縦溝66aに流入することもできる。なお、図示例では、溝64aと溝65aは、周方向において非重畳に、相補的に設けられるが、必ずしもこの限りではない。すなわち、周方向において隣り合う溝65aの間に溝64aが配置され、逆も然りである。
【0058】
図18乃至図21に示す1次成形品60bを参照することにより磁性体30bの主面34,35及び側面36それぞれが第1樹脂部41b及び第2樹脂部42bにより相補的に被覆されることが理解できる。また、第1樹脂部41bが磁性体30bを受容するべく構成され、また、第2樹脂部42bが第1樹脂部41b以外の止め具部品5bの残部を構成することも理解できる。
【0059】
1次成形品60aについてした説明は、1次成形品60bにも概ね当てはまり、重複説明は省略する。例えば、第2領域32よりも第1領域31が広いこと、被覆部64,65に径方向内側に延びる溝が設けられること、被覆部65が中央部65pと複数の延在部65qを有することは、1次成形品60aのみならず1次成形品60bにも当てはまる。しかしながら、1次成形品60aとは異なり、1次成形品60bでは、被覆部64が放射状に形状付けられ、また延在部65qの幅が実質的に一定である。
【0060】
被覆部64は、中央部64pと、中央部64pから径方向外側に延びる複数の延在部64qを有する。中央部64pは延在部64qよりも薄く形成されておらず、中央部64pにより(3つの)溝64bの空間的な連通が阻止される。延在部64qは、一定の幅を有しつつ径方向外側に延びる。従って、延在部64qの間の溝64bは径方向内側にて幅狭であり、径方向外側で幅広の扇形に形状付けられる。溝64b、縦溝66b、及び溝65bが連通して磁性体30bの主面34、側面36及び主面35に亘って延びる一つの溝を形成する。
【0061】
1次成形品60a,60bは、図示の形状に限らず、様々な別形状に変形可能である。
【0062】
スライドファスナーの製造方法については、出願時の技術水準と上述の説明、特には、止め具部品の製造方法を踏まえ、当業者により理解可能である。以下、本願の止め具部品との関係において特有な改良点について説明する。
【0063】
止め具部品に埋設された磁性体30a,30bを磁化するタイミングについて、有利には、一対のファスナーストリンガーを用いてスライドファスナー1を組み立てた後に行う。スライドファスナー1において止め具部品5a,5bが互いに結合しており、基部6aと基部6bが積層されている。従って、基部6aの磁性体30aと基部6bの磁性体30bも間隔を空けて上下に配列される。この状態でスライドファスナー1の後端部に方向が一定の磁界(例えば、磁力線が上下方向沿いに延びる磁界)を付与する。すると、図5及び図6の参照から良く理解されるように、磁性体30aの下半分がS極(第1極)となり、上半分がN極(第2極)となる。同様、磁性体30bの下半分がS極(第1極)となり、上半分がN極(第2極)となる。組立状態のスライドファスナー1の後端部に方向が一定の磁界を付与することにより磁性体30a,30bがN極及びS極に関して反対に磁化されることが回避される。
【0064】
なお、着磁前の磁性体30a,30bを未着磁の磁性体と呼んだが、僅かに磁化されたものであっても構わない。未着磁の磁性体30a,30bは、全く磁界を生成しないものに限られず、磁束密度が小さい磁界を生成するものであっても構わない。
【0065】
上述の教示を踏まえ、当業者は、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。
【符号の説明】
【0066】
1 スライドファスナー
2a,2b ファスナーストリンガー
3a,3b ファスナーテープ
4a,4b ファスナーエレメント
5a,5b 止め具部品
6a,6b 基部
7a,7b 挿入部

30a,30b 磁性体(永久磁石)
41a,41b 第1樹脂部
42a,42b 第2樹脂部
31 第1領域
32 第2領域
34,35 主面
36 側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21