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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】ベルト
(51)【国際特許分類】
   F16G 1/08 20060101AFI20240531BHJP
   F16G 1/28 20060101ALI20240531BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20240531BHJP
   H02G 11/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
F16G1/08 A
F16G1/28 E
H02G3/04 062
H02G11/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022576842
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2022041344
(87)【国際公開番号】W WO2023090185
(87)【国際公開日】2023-05-25
【審査請求日】2022-12-13
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2021186219
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】高原 将人
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】尾崎 和寛
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-55845(JP,A)
【文献】特開2009-52710(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002899(WO,A1)
【文献】特開2017-36829(JP,A)
【文献】特開2000-355055(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105424756(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト本体と、
導電性を有する芯線を含む1又は複数の通電用芯体コードと、
上記通電用芯体コードより単位長当たりの電気抵抗が高い1又は複数の補強用芯体コードと
を備え、
上記ベルト本体の主成分が、エラストマーであり、
上記ベルト本体が、厚さ方向に貫通する1又は複数のベルト穴を有し、
上記通電用芯体コード及び上記補強用芯体コードが、上記ベルト本体の幅方向に間隔を空けて長さ方向に沿って上記ベルト本体に埋設されており、
上記通電用芯体コードと上記ベルト穴の周縁との距離が0.7mm以上であり、
上記ベルト穴が、上記補強用芯体コードを切断するように、上記補強用芯体コード上に設けられているベルト。
【請求項2】
上記幅方向の最も外側に位置する芯体コードがそれぞれ補強用芯体コードである請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
複数の上記通電用芯体コードを有し、
隣接する上記通電用芯体コードの間に上記補強用芯体コードが配置されている請求項1又は請求項2に記載のベルト。
【請求項4】
複数の上記通電用芯体コードを有し、
2本以上5本以下の上記通電用芯体コードが連続して隣接する芯体コード群が形成されている請求項1又は請求項2に記載のベルト。
【請求項5】
上記通電用芯体コードが、上記芯線を被覆するように周面を構成する被覆膜を有し、
上記被覆膜が、上記ベルト本体に接着されていない請求項1又は請求項2に記載のベルト。
【請求項6】
上記被覆膜が、絶縁体で構成されている請求項5に記載のベルト。
【請求項7】
上記被覆膜の主成分の融点が、上記ベルト本体の主成分の融点より大きい請求項5に記載のベルト。
【請求項8】
記被覆膜の主成分が、フッ素樹脂である請求項5に記載のベルト。
【請求項9】
上記ベルト本体が、難燃剤を含む請求項1又は請求項2に記載のベルト。
【請求項10】
上記通電用芯体コードの芯線が、軟銅線又は銅合金線である請求項1又は請求項2に記載のベルト。
【請求項11】
上記通電用芯体コードの芯線が、単線、集合撚り線又はロープ撚り線である請求項1又は請求項2に記載のベルト。
【請求項12】
上記通電用芯体コードが、シールド線、ケーブル又はシールド付きケーブルである請求項1又は請求項2に記載のベルト。
【請求項13】
上記通電用芯体コードが、少なくとも一端側にコネクタを有する請求項1又は請求項2に記載のベルト。
【請求項14】
平ベルトである請求項1又は請求項2に記載のベルト。
【請求項15】
上記ベルト本体の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部を備える歯付ベルトである請求項1又は請求項2に記載のベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
工場や倉庫等での物品の昇降や搬送に、ベルトが用いられる場合がある。この場合、例えばベルトに開けた貫通孔を介してネジにより台車をベルトに固定し、上記ベルトを駆動するプーリの回転動作により、この台車を上下あるいは左右に移動させる。上記物品は、上記台車に積載されて昇降や搬送される。
【0003】
上記台車には、例えば積み込んだ荷が台車から滑り落ちないようにストッパーが搭載されているものがある。このストッパーは台車に荷を搭載する時や荷を積み降ろす時には障害とならないように格納可能に電気制御される場合がある。このように台車には電気により制御される付加機能が搭載されている場合が少なくない。
【0004】
このような付加機能を制御する電気信号や電源の配線(以下、単に「配線」ともいう)を、芯体コードと兼用するベルトが提案されている(特開2019-60403号公報参照)。このベルトでは、芯体コードを通電可能な材質とすることで、給電ケーブルとしても兼用しているので、ベルトの厚みの増加を抑止しつつ、配線をベルト内に埋設することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-60403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ベルトの芯体コードを配線としても用いる場合、芯体コードの本数はベルトに必要な強度により決まる本数と、必要な配線数とのうちの多い方の本数で決まることとなる。このため、配線数が多くなると芯体コードの本数は配線数で決まることとなり、ベルトの幅が不必要に大きくなり易い。ベルトの幅が不必要に大きくなると、このベルトを組み込んだ装置、例えば台車の小型化が困難となる場合がある。
【0007】
本発明はこのような不都合に鑑みてなされたものであり、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数を確保しつつ幅の増加を抑止できるベルトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るベルトは、ベルト本体と、導電性を有する芯線を含む1又は複数の通電用芯体コードと、上記通電用芯体コードより単位長当たりの電気抵抗が高い1又は複数の補強用芯体コードとを備え、上記ベルト本体が、厚さ方向に貫通する1又は複数のベルト穴を有し、上記通電用芯体コード及び上記補強用芯体コードが、上記ベルト本体の幅方向に間隔を空けて長さ方向に沿って上記ベルト本体に埋設されており、上記通電用芯体コードと上記ベルト穴の周縁との距離が0.5mm以上である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のベルトは、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数を確保しつつ幅の増加を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るベルトを示す模式的斜視図である。
図2図2は、図1のベルトのA-A線での模式的断面図である。
図3図3は、図1のベルトのB-B線での模式的断面図である。
図4図4は、図1とは異なる実施形態に係るベルトを示す模式的斜視図である。
図5図5は、図3及び図4とは異なる実施形態に係るベルトの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0012】
本発明の一実施形態に係るベルトは、ベルト本体と、導電性を有する芯線を含む1又は複数の通電用芯体コードと、上記通電用芯体コードより単位長当たりの電気抵抗が高い1又は複数の補強用芯体コードとを備え、上記ベルト本体が、厚さ方向に貫通する1又は複数のベルト穴を有し、上記通電用芯体コード及び上記補強用芯体コードが、上記ベルト本体の幅方向に間隔を空けて長さ方向に沿って上記ベルト本体に埋設されており、上記通電用芯体コードと上記ベルト穴の周縁との距離が0.5mm以上である。
【0013】
当該ベルトでは、通電用芯体コードの単位長当たりの電気抵抗が補強用芯体コードよりも低いので通電に必要な電気抵抗を確保するための通電用芯体コードの並列数を下げることができる。また、当該ベルトは、主に補強用芯体コードで強度を維持することができる。さらに、当該ベルトは、通電用芯体コードとベルト穴の周縁との距離を上記下限以上とするので、当該ベルトの使用時に通電用芯体コードがベルト穴を貫通するネジと干渉することを抑止する。このため、全ての通電用芯体コードにおいて所望の電流値を確保し易く、有効に機能させることができる。従って、当該ベルトは、必要な芯体コード数を低減できるため、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数を確保しつつ幅の増加を抑止できる。
【0014】
上記幅方向の最も外側に位置する芯体コードがそれぞれ補強用芯体コードであるとよい。上記幅方向の最も外側に位置する芯体コードは、当該ベルトの側面からの擦れによる摩耗等により電気抵抗が経年増加するおそれがある。このため、上記幅方向の最も外側に位置する芯体コードをそれぞれ補強用芯体コードとし、電気信号あるいは電源の配線に用いないことで、配線としての信頼性を高めることができる。
【0015】
複数の上記通電用芯体コードを有し、隣接する上記通電用芯体コードの間に上記補強用芯体コードが配置されているとよい。このように隣接する上記通電用芯体コードの間に上記補強用芯体コードを配置することで、当該ベルトの強度が局所的に低下することを抑止できる。
【0016】
複数の上記通電用芯体コードを有し、2本以上5本以下の上記通電用芯体コードが連続して隣接する芯体コード群が形成されているとよい。このように芯体コード群を構成することで、例えば電源配線等のように低抵抗が要求される配線に対して並列接続を行い易い。また、同一信号に対して並列して通電用芯体コードを用いる場合、芯体コード群を構成する通電用芯体コード間の平均間隔を狭くすることができるので、当該ベルトの幅の増加をさらに抑止できる。
【0017】
上記通電用芯体コードが、上記芯線を被覆するように周面を構成する被覆膜を有し、上記被覆膜が、上記ベルト本体に接着されていないとよい。このように被覆膜により通電用芯体コードをベルト本体に接着しない構成とすることで、通電用芯体コードがベルト本体から長さ方向のストレスを受けることを回避できるので、電気的特性の変化や断線を抑止することができる。
【0018】
上記被覆膜が、絶縁体で構成されているとよい。このように上記被覆膜を絶縁体で構成することで、上記通電用芯体コードが他の通電用芯体コード等と接触した際の電気的特性の変化を抑止できる。
【0019】
上記被覆膜の主成分の融点が、上記ベルト本体の主成分の融点より大きいとよい。このように上記被覆膜の主成分の融点を上記ベルト本体の主成分の融点より大きくすることで、上記被覆膜が上記ベルト本体に接着されることを抑止できる。
【0020】
上記ベルト本体の主成分が、エラストマーであり、上記被覆膜の主成分が、フッ素樹脂であるとよい。このように上記ベルト本体の主成分をエラストマーとし、上記被覆膜の主成分をフッ素樹脂とすることで、容易に上記被覆膜が上記ベルト本体に接着されることを抑止できる。
【0021】
上記ベルト本体が、難燃剤を含むとよい。このように上記ベルト本体に難燃剤を含めることで、通電による発熱でベルト本体が燃焼することをより確実に抑止できる。
【0022】
上記通電用芯体コードの芯線が、軟銅線又は銅合金線であるとよい。銅は単位長当たりの電気抵抗が低く、通電用途に好適である。また、軟銅線及び銅合金線は屈曲し易いため、断線等の不具合が生じることを抑止できる。
【0023】
上記通電用芯体コードの芯線が、単線、集合撚り線又はロープ撚り線であるとよい。上記通電用芯体コードの芯線を単線とすることで、芯体の断面が最密となるので、芯線を低抵抗化し易い。また、上記通電用芯体コードの芯線を集合撚り線又はロープ撚り線とすることで、芯体の強度が高められ断線等の不具合が生じることを抑止できるとともに、当該ベルトの屈曲疲労性を向上させることができる。
【0024】
上記通電用芯体コードが、シールド線、ケーブル又はシールド付きケーブルであるとよい。このように上記通電用芯体コードをシールド線、ケーブル又はシールド付きケーブルとすることで、上記通電用芯体コードのノイズ耐性を高めることができる。
【0025】
上記通電用芯体コードが、少なくとも一端側にコネクタを有するとよい。このように上記通電用芯体コードの少なくとも一端側にコネクタを設けることで、当該ベルトと他の機器との配線を容易に行うことができる。
【0026】
当該ベルトが、平ベルトであるとよい。当該ベルトは、通電機能を必要とする平ベルトに好適に用いることができる。
【0027】
当該ベルトが、上記ベルト本体の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部を備える歯付ベルトであるとよい。当該ベルトは、通電機能を必要とする歯付ベルトに好適に用いることができる。
【0028】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の一実施形態に係るベルトについて、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
〔第1実施形態〕
図1図2及び図3に示すベルト1は、ベルト本体10と、4本の通電用芯体コード20と、6本の補強用芯体コード30とを備える。当該ベルト1は、平ベルトである。当該ベルト1は、通電機能を必要とする平ベルトに好適に用いることができる。
【0030】
また、ベルト本体10は、厚さ方向に貫通する1又は複数の(図1では3つの)ベルト穴11を有し、通電用芯体コード20及び補強用芯体コード30は、ベルト本体10の幅方向に間隔を空けて長さ方向に沿ってベルト本体10に埋設されている。
【0031】
<ベルト本体>
ベルト本体10の主成分は、ゴム又は樹脂である。上記ゴムとしては、エチレン-プロピレンゴム(EPR)やエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)等のエチレン-α-オレフィンゴム、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加ニトリルゴム(H-NBR)等を挙げることができる。上記ゴムは、これらのうちの1種でもよいが、2種以上をブレンドしたものであってもよい。上記樹脂としては、熱可塑性のポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等を挙げることができる。中でもベルト本体10の主成分が、エチレン-α-オレフィンゴム、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル等のエラストマーであることが好ましく、熱可塑性ウレタン、ポリアミド及びポリエステルがより好ましい。熱可塑性ウレタンは、低発塵性で耐摩耗性に優れる。ポリアミドは、耐油性、耐薬品性及び耐摩耗性に優れる。ポリエステルは、耐水性、低温柔軟性、強度及び耐疲労性に優れる。ここで、「主成分」とは、最も含有量の多い成分を意味し、好ましくは含有量が50質量%以上、より好ましくは90質量%以上の成分をいう。
【0032】
ベルト本体10の平均厚さは、当該ベルト1に要求される強度等により適宜決定されるが、例えば1mm以上10mm以下とできる。
【0033】
ベルト本体10の幅及び長さは、当該ベルト1の用途に応じて適宜決定される。なお、当該ベルト1は、両端部を有するオープンベルトとして主に用いられる。
【0034】
ベルト本体10は、各種添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、防曇剤、難燃剤、表面調整剤、顔料、フィラー、ワックス等が挙げられる。
【0035】
中でもベルト本体10が難燃剤を含むことが好ましい。このように上記ベルト本体に難燃剤を含めることで、通電による発熱でベルト本体が燃焼することをより確実に抑止できる。特にベルト本体10の主成分が、エラストマーである場合に効果が高い。
【0036】
上記難燃剤としては、塩素系有機化合物、臭素系有機化合物等のハロゲン含有有機化合物、リン系有機化合物等のハロゲン非含有有機化合物などが挙げられる。中でも臭素系有機化合物が好ましく、具体的にはデカブロモジフェニルエタン(DBDPE)が挙げられる。
【0037】
ベルト本体10の主成分100質量部に対する上記難燃剤の含有量の下限としては、5質量部が好ましく、15質量部がより好ましい。一方、上記難燃剤の含有量の上限としては、30質量部が好ましく、20質量部がより好ましい。上記難燃剤が上記下限未満であると、難燃性の向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記難燃剤が上記上限を超えると、ベルト本体10の主成分により得られる本来の特性を阻害するおそれがある。
【0038】
上記難燃剤に加えて、ベルト本体10は難燃助剤を含むことが好ましい。このようにベルト本体10に難燃助剤を含めることで、難燃性向上効果を発現し易くすることができる。上記難燃助剤としては、例えば三酸化アンチモンを挙げることができる。
【0039】
ベルト本体10の主成分100質量部に対する上記難燃助剤の含有量の下限としては、1質量部が好ましく、5質量部がより好ましい。一方、上記難燃助剤の含有量の上限としては、20質量部が好ましく、10質量部がより好ましい。上記難燃助剤が上記下限未満であると、難燃性向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記難燃助剤が上記上限を超えると、含有量の増加に対して得られる効果が飽和し、費用対効果が不十分となるおそれがある。
【0040】
ベルト穴11は、例えば台車等の連結対象物を当該ベルト1に固定するために用いられ、具体的には例えばネジが差し込まれて当該ベルト1と締結される。ベルト穴11の断面形状は、特に限定されるものではないが、一般には円形状とされる。以下、ベルト穴11の断面が円形状であることを前提に説明するが、他の形状を排除するものではない。
【0041】
ベルト穴11は、単数であってもよいが、上記連結対象物が回転することを抑止するため複数設けられることが好ましい。また、上記連結対象物の重量に応じて、ベルト穴11の数は3以上としてもよい。あるいは、取り付け位置の調整が可能となるようにベルト穴11を上記連結対象物への締結数より多く設けることも可能である。
【0042】
ベルト穴11は、ベルト本体10の幅方向中央部に設けられることが好ましい。ベルト穴11をベルト本体10の幅方向中央部に設けることで、上記連結対象物を安定して連結することができる。
【0043】
また、ベルト穴11は、一般にベルト本体10の長さ方向の一方の端部又は両端部に設けられる。上記連結対象物は、ベルト本体10の長さ方向の端部に連結される場合が多いためである。
【0044】
複数のベルト穴11が設けられている場合、複数のベルト穴11は、その中心が長さ方向に沿って並ぶように配列される。隣接するベルト穴11間は、上記連結対象物が締結できるように適宜定められる。複数のベルト穴11は、等間隔に並んでいることが好ましい。このように複数のベルト穴11を等間隔で並べることで、上記連結対象物を締結する際に、本体ベルト10にかかる圧力が均一に分散され易くなり、局所的に圧力が集中してベルト本体10が損傷することを抑止できる。
【0045】
ベルト穴11の直径の下限としては、2mmが好ましく、3mmがより好ましい。一方、ベルト穴11の直径の上限としては、7mmが好ましく、6mmがより好ましい。ベルト穴11の直径が上記下限未満であると、上記連結対象物との締結強度が十分に確保できないおそれがある。逆に、ベルト穴11の直径が上記上限を超えると、ベルト穴11近傍のベルト本体10の強度が不足するおそれや、通電用芯体コード20のコード数が十分に確保できなくなるおそれがある。
【0046】
<通電用芯体コード>
通電用芯体コード20は、線状体であり、例えば円形断面を有する。通電用芯体コード20は、図3に示すように、導電性を有する芯線21を含むとともに、芯線21を被覆するように周面を構成する被覆膜22を有する。
【0047】
また、通電用芯体コード20は、図1に示すように、少なくとも一端側にコネクタ23を有するとよい。コネクタ23は、通電用芯体コード20を当該ベルト1外の信号線と接続するための部材である。このように通電用芯体コード20の少なくとも一端側にコネクタ23を設けることで、当該ベルト1と他の機器との配線を容易に行うことができる。なお、コネクタ23は、通電用芯体コード20の両端に設けられてもよい。
【0048】
通電用芯体コード20は、シールド線、ケーブル又はシールド付きケーブルであるとよい。このように通電用芯体コード20をシールド線、ケーブル又はシールド付きケーブルとすることで、通電用芯体コード20のノイズ耐性を高めることができる。
【0049】
通電用芯体コード20の平均径の下限としては、0.2mmが好ましく、0.5mmがより好ましく、1mmがさらに好ましい。一方、通電用芯体コード20の平均径の上限としては、2.5mmが好ましく、1.5mmがより好ましい。通電用芯体コード20の平均径が上記下限未満であると、通電用芯体コード20の電気抵抗が十分に下げられず、電気信号あるいは電源として機能を十分に果たさないおそれがある。逆に、通電用芯体コード20の平均径が上記上限を超えると、当該ベルト1の幅が大きくなり過ぎるおそれがある。
【0050】
(芯線)
芯線21としては、スチール線や銅線等を挙げることができる。中でも銅線が好ましく、軟銅線又は銅合金線がより好ましい。銅線は単位長当たりの電気抵抗が低く、通電用途に好適である。また、軟銅線及び銅合金線は屈曲し易いため、断線等の不具合が生じることを抑止できる。
【0051】
通電用芯体コード20の芯線21は、単線、集合撚り線又はロープ撚り線であるとよい。通電用芯体コード20の芯線21を単線とすることで、芯線21の断面が最密となるので、芯線21を低抵抗化し易い。また、通電用芯体コード20の芯線21を集合撚り線又はロープ撚り線とすることで、芯線21の強度が高められ断線等の不具合が生じることを抑止できるとともに、当該ベルト1の屈曲疲労性を向上させることができる。
【0052】
(被覆膜)
被覆膜22は、絶縁体で構成されているとよい。このように被覆膜22を絶縁体で構成することで、通電用芯体コード20が他の通電用芯体コード20等と接触した際の電気的特性の変化を抑止できる。また、当該ベルト1は、通電用芯体コード20を下方から支持しつつ製造されるため、その支持点において、図2に示すように、製造後の当該ベルト1に通電用芯体コード20の一部がベルト本体10から露出する露出部20aが存在する場合がある。このように露出部20aが存在しても、絶縁体で構成された被覆膜22を有することで、通電用芯体コード20に電流が流れた場合の短絡や感電を防止することができる。
【0053】
また、被覆膜22が、ベルト本体10に接着されていないとよい。このように被覆膜22により通電用芯体コード20をベルト本体10に接着しない構成とすることで、通電用芯体コード20がベルト本体10から長さ方向のストレスを受けることを回避できるので、電気的特性の変化や断線を抑止することができる。また、通電用芯体コードに電流が流れた際に発生する熱によりベルト本体の劣化や変形を防止することができる。被覆膜22は、特にベルト本体10の主成分がエラストマーである場合、ベルト本体10の熱劣化に対して効果的に機能する。
【0054】
被覆膜22の主成分の融点は、ベルト本体10の主成分の融点より大きいとよい。このように被覆膜22の主成分の融点をベルト本体10の主成分の融点より大きくすることで、被覆膜22がベルト本体10に接着されることを抑止できる。また、通電用芯体コード20に過電流が流れること等により通電用芯体コード20が高熱となり、ベルト本体10の溶融温度を超えた場合であっても、被覆膜22の溶融温度を超えなければ、被腹膜22が保護膜として機能し、ベルト本体10の劣化や損傷を防ぐことができる。
【0055】
被覆膜22の主成分としては、フッ素樹脂が好ましく、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)がより好ましい。また、エラストマーを主成分とするベルト本体10と組み合わせるとよい。このようにベルト本体10の主成分をエラストマーとし、被覆膜22の主成分をフッ素樹脂とすることで、容易に被覆膜22がベルト本体10に接着されることを抑止できる。
【0056】
(ベルト穴との関係)
図3に示すように、ベルト穴11は、後述する補強用芯体コード30上に設けられてもよい。つまり、ベルト穴11によって補強用芯体コード30が切断されてもよい。この場合、補強用芯体コード30はベルト穴11が設けられていない領域を補強することとなる。一方、ベルト穴11は、電気的な接続を喪失してしまうため、通電用芯体コード20上には設けることができない。逆に言えば、通電用芯体コード20は、ベルト穴11を避けて配設される。
【0057】
ここで通電用芯体コード20をベルト穴11から離す距離について検討する。ベルト穴11にネジが差し込まれ、連結対象物と当該ベルト1とが締結される。ネジの上面部は構造上ベルト穴11より直径が大きいから、上記連結対象物に当該ベルト1を固定すべくネジを締めていくと、ネジ上面部が当該ベルト1に押し付けられる。このとき、ネジ上面部に近い領域に通電用芯体コード20が配置されていると、この押し付け圧力により通電用芯体コード20の抵抗値が変化し、所望の電気的特性が得られないおそれが生じる。このため、通電用芯体コード20は、ねじ止めの押し付け力により電気的特性が変化しないようにベルト穴11から一定の距離を離す必要がある。具体的には、通電用芯体コード20とベルト穴11の周縁との距離(図3に示す距離D)の下限としては、0.5mmであり、0.7mmがより好ましい。一方、上記距離Dの上限は、特に限定されるものではないが、大きく取り過ぎると必要な本数の通電用芯体コード20を配置することができなくなるおそれがあるという観点で、例えば5mmとすることができる。
【0058】
<補強用芯体コード>
補強用芯体コード30は、線状体であり、例えば円形断面を有する。補強用芯体コード30は、芯線31を含み、通電用芯体コード20より単位長当たりの電気抵抗が高い。
【0059】
補強用芯体コード30は、導電性を有してもよいが、絶縁性を有することが好ましい。補強用芯体コード30を、絶縁性を有するものとすることで、仮に通電用芯体コード20と接触した場合であっても、通電用芯体コード20の電気信号あるいは電源としての機能に影響が生じ難い。従って、通電用芯体コード20と補強用芯体コード30との間隔を狭くすることが可能であり、当該ベルト1の幅の増加を抑止し易い。
【0060】
補強用芯体コード30の芯線31は、通電用芯体コード20の芯線21と同じ材質とすることもできるが、補強用芯体コード30の芯線31は、通電用芯体コード20の芯線21と異なる材質とするとよい。このように補強用芯体コード30の芯線31を通電用芯体コード20の芯線21と異なるものとすることで、通電用芯体コード20の芯線21として電気抵抗率の低いものを採用することが可能となるため、必要な電気抵抗を確保するための通電用芯体コード20の並列数を下げ易い。中でも、通電用芯体コード20の芯線21を電気抵抗率の低い銅線とし、補強用芯体コード30の芯線31を絶縁性を有するアラミド線とすることが好ましい。
【0061】
また、補強用芯体コード30の芯線31が導電性を有する場合にあっては、通電用芯体コード20の芯線21を絶縁性を有する被覆膜22で被覆された銅線とし、補強用芯体コード30の芯線31をスチール線とすることが好ましい。スチール線は剛性が高く、径が小さいものであっても強度を維持することができる。この補強用芯体コード30は絶縁層(被覆膜)を有さない構成とすることができる。通電用芯体コード20が被覆膜22を有しているので、絶縁層を有さないスチール線が仮に通電用芯体コード20と接触した場合であっても、通電用芯体コード20の電気信号あるいは電源としての機能に影響が生じ難い。このように補強用芯体コード30は、絶縁層を設ける必要がなく、かつ径を小さくできるので、特に幅方向のスペースを必要としない。従って、補強用芯体コード30の芯線31をスチール線とすることで、通電用芯体コード20の配設領域を広く確保しつつ、当該ベルト1の強度を維持することができる。以上から、通電用芯体コード20の芯線21を絶縁性を有する被覆膜22で被覆された銅線とし、補強用芯体コード30の芯線31をスチール線とすることで、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数を確保しつつ当該ベルト1の幅の増加をさらに抑止できる。
【0062】
補強用芯体コード30の平均径の下限としては、0.1mmが好ましく、0.2mmがより好ましく、0.5mmがさらに好ましい。一方、補強用芯体コード30の平均径の上限としては、2mmが好ましく、1mmがより好ましい。補強用芯体コード30の平均径が上記下限未満であると、補強用芯体コード30の強度が不足するおそれがある。逆に、補強用芯体コード30の平均径が上記上限を超えると、当該ベルト1の重量が重くなり過ぎるおそれ、当該ベルト1の曲げ剛性が高くなり過ぎ、特に小径のプーリに巻き付き難くなるおそれや、補強用芯体コード30を被覆するためのベルト本体10の厚みが厚くなり過ぎるおそれがある。
【0063】
<通電用芯体コードと補強用芯体コードとの関係>
通電用芯体コード20の平均径は、補強用芯体コード30の平均径より大きいとよい。このように通電用芯体コード20の平均径を補強用芯体コード30の平均径より大きくすることで、通電用芯体コード20の単位長当たりの電気抵抗を容易に下げることができる。特に、通電用芯体コード20の材質と補強用芯体コード30の材質とが同じものである場合は、通電用芯体コード20の平均径を補強用芯体コード30の平均径より大きくすることで、単位長当たりの電気抵抗を下げることが可能となる。
【0064】
4本の通電用芯体コード20及び6本の補強用芯体コード30(まとめて「芯体コード」ともいう)は、図3に示すように、ベルト本体10の一方の面から芯体コードの外周へ至る最短距離が一定となるように並べられている。このような配列とすることで、10本の芯体コードを下方から支持しつつ、押出成形することで容易にベルト本体10を製造することができる。
【0065】
ベルト本体10の幅方向の最も外側に位置する芯体コードがそれぞれ補強用芯体コード30であるとよい。上記幅方向の最も外側に位置する芯体コードは、当該ベルト1の側面からの擦れによる摩耗等により電気抵抗が経年増加するおそれがある。このため、上記幅方向の最も外側に位置する芯体コードをそれぞれ補強用芯体コード30とし、電気信号あるいは電源の配線に用いないことで、配線としての信頼性を高めることができる。
【0066】
最も外側に配設される補強用芯体コード30の中心軸と、これと近接するベルト本体10の側面との平均距離(「補強用芯体コード30とベルト本体10の側面との平均距離」ともいう)の下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、上記補強用芯体コード30とベルト本体10の側面との平均距離の上限としては、1mmが好ましく、0.7mmがより好ましい。上記補強用芯体コード30とベルト本体10の側面との平均距離が上記下限未満であると、当該ベルト1の製造時に、最も外側に配設される補強用芯体コード30がベルト本体10の側面から露出するおそれがある。逆に、上記補強用芯体コード30とベルト本体10の側面との平均距離が上記上限を超えると、ベルト本体10の側縁が駆動時にばたつき易くなり、補強用芯体コード30による駆動の正確性の向上効果が不十分となるおそれがある。
【0067】
当該ベルト1では、図3に示すように、隣接する通電用芯体コード20の間に補強用芯体コード30が配置されている。このように隣接する通電用芯体コード20の間に補強用芯体コード30を配置することで、当該ベルト1の強度が局所的に低下することを抑止できる。
【0068】
通電用芯体コード20と補強用芯体コード30との配列は、ベルト本体10の長さ方向の中心を軸として対称であるとよい。当該ベルト1は駆動時には張力をかけて使用されるが、このように通電用芯体コード20と補強用芯体コード30を対称に配列することで、ベルト本体10の幅方向に対して均一に張力がかかり、当該ベルト1の走行時の片寄りを防止することができる。
【0069】
隣接する芯体コードの平均ピッチP(図3参照;隣接する芯体コードの中心軸間の当該ベルト1の幅方向の平均距離)の下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、平均ピッチPの上限としては、4mmが好ましく、1mmがより好ましい。平均ピッチPが上記下限未満であると、複数の通電用芯体コード20間の絶縁性が十分に確保できないおそれや、当該ベルト1の可撓性が不十分となるおそれがある。逆に、平均ピッチPが上記上限を超えると、当該ベルト1が幅方向に不要に大きくなるおそれや、補強用芯体コード30による当該ベルト1の強度、耐久性、駆動の正確性等の向上効果が不十分となるおそれがある。なお、ベルト穴11と重なる位置に芯体コードを配置しない場合にあっては、このベルト穴11を挟んで配置される2本の芯体コード間の平均ピッチPについては、この限りではない。
【0070】
平均ピッチPは、隣接する芯体コードの種類(通電用芯体コード20及び補強用芯体コード30)の組み合わせによらず、一定ピッチであることが好ましい。つまり、隣接する通電用芯体コード20間、隣接する補強用芯体コード30間及び隣接する通電用芯体コード20-補強用芯体コード30間で、その隣接する芯体コードの組み合わせによらず平均ピッチPは等しいことが好ましい。このように芯体コードの種類によらず等ピッチで芯体コードを配置することで、ベルト本体10の駆動時にばたつきが発生することを抑止できる。また、平均ピッチPを等しくすることで、各芯体コードに均一に荷重がかかるので、特定の芯線コードに局所的に荷重がかかることによる早期断線や通電用芯体コード20の電気抵抗の上昇を防ぐことができる。なお、「平均ピッチPが等しい」とは、完全に等しい場合に加えて、各平均ピッチPが実用的な誤差の範囲(例えば中央値から5%以下の誤差の範囲)に収まっている場合を含む。
【0071】
<当該ベルトの製造方法>
当該ベルト1は、例えば押出成形工程を備える製造方法により製造することができる。
【0072】
(押出成形工程)
押出成形工程では、押出成形により通電用芯体コード20及び補強用芯体コード30が埋設されたゴム又は樹脂組成物を主成分とする押出成形体を形成する。
【0073】
具体的には、複数の芯体コード(通電用芯体コード20及び補強用芯体コード30)を押出機のシリンダ先端に取り付けたクロスヘッドに挿通しながら、その両側を溶融したゴム又は樹脂組成物で被覆するように押出成形する。あるいは、溶融押出したゴム又は樹脂組成物と複数の芯体コードとを一対のロールで挟み込み加圧することで、複数の芯体コードをゴム又は樹脂組成物内に埋め込んでもよい。
【0074】
押出成形においてゴム又は樹脂組成物を溶融させるための加熱温度は、ゴム又は樹脂の種類や硬化剤の利用の有無等に依存するが、上記加熱温度の下限としては、150℃が好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、250℃が好ましい。上記加熱温度が上記下限未満であると、ゴム又は樹脂組成物が十分に溶融せず、押出成形が困難となるおそれがある。逆に、上記加熱温度が上記上限を超えると、押出成形体が不要に熱くなるため、冷却時間が不要に長くなり、当該ベルト1の製造効率が低下するおそれがある。
【0075】
上記押出成形体を冷却することで、当該ベルト1を得ることができる。
【0076】
<利点>
当該ベルト1では、通電用芯体コード20の単位長当たりの電気抵抗が補強用芯体コード30よりも低いので通電に必要な電気抵抗を確保するための通電用芯体コード20の並列数を下げることができる。また、当該ベルト1は、主に補強用芯体コード30で強度を維持することができる。さらに、当該ベルト1は、通電用芯体コード20とベルト穴11の周縁との距離Dを0.5mm以上とするので、当該ベルト1の使用時に通電用芯体コード20がベルト穴11を貫通するネジと干渉することを抑止する。このため、全ての通電用芯体コード20において所望の電流値を確保し易く、有効に機能させることができる。従って、当該ベルト1は、必要な芯体コード数を低減できるため、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数を確保しつつ幅の増加を抑止できる。
【0077】
〔第2実施形態〕
図4に示すベルト2は、ベルト本体10と、ベルト本体10の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部40と、導電性を有する芯線21を含む4本の通電用芯体コード20と、通電用芯体コード20より単位長当たりの電気抵抗が高い6本の補強用芯体コード30とを備え、ベルト本体10が、厚さ方向に貫通する1又は複数のベルト穴11を有し、通電用芯体コード20及び補強用芯体コード30が、ベルト本体10の幅方向に間隔を空けて長さ方向に沿ってベルト本体10に埋設されており、通電用芯体コード20とベルト穴11の周縁との距離Dが0.5mm以上である。
【0078】
当該ベルト2は、歯部40以外は図1に示すベルト1と同様に構成できるので、同一符号を付して詳細説明を省略する。なお、当該ベルト2においては、ベルト穴11は、図4に示すように、歯部40間に設けられてもよいが、歯部40を貫通するように設けることもできる。また、複数のベルト穴11を有する場合のベルト穴11の間隔は、図4に示すように、歯部40の間隔と一致していてもよいが、一致していなくともよい。
【0079】
<歯部>
歯部40は、断面が台形、三角形、半円形、山形、波形、正規分布曲線状等の凸条部である。また、歯部40は、その稜線(軸方向)がベルト本体10の幅方向と一致するように配設されている。
【0080】
歯部40の平均高さ及び歯部40間のピッチは、当該ベルト2の用途に応じて適宜決定される。歯部40の平均高さは、例えば1.0mm以上10mm以下とできる。また、歯部40間のピッチは、例えば2mm以上25mm以下とできる。
【0081】
歯部40の主成分は、ベルト本体10と同様とできる。また、歯部40にはベルト本体10と同様の添加剤を含めてもよい。
【0082】
<利点>
当該ベルト2は、通電機能を必要とする歯付ベルトに好適に用いることができる。
【0083】
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【0084】
上記実施形態では、本発明のベルトが4本の通電用芯体コードと、6本の補強用芯体コードとを備える場合を例にとり説明したが、通電用芯体コード及び補強用芯体コードのコード数は、上述に限定されるものではなく、それぞれ1又は複数の任意の本数で構成し得る。通電用芯体コードのコード数は、必要とされる電気信号や電源の配線数に応じて適宜決定され、補強用芯体コードのコード数は、当該ベルトに必要な強度に応じて適宜決定される。
【0085】
上記実施形態では、通電用芯体コードが被覆膜を有する場合を説明したが、被覆膜は必須の構成要素ではなく、芯体のみで構成された通電用芯体コードを備えるベルトも本発明の意図するところである。
【0086】
上記実施形態では、通電用芯体コードが少なくとも一端側にコネクタを有する場合を説明したが、通電用芯体コードがコネクタを有さないベルトも本発明の意図するところである。
【0087】
上記実施形態では、隣接する通電用芯体コードの間に補強用芯体コードが配置されている構成について説明したが、通電用芯体コード及び補強用芯体コードの配列は、これに限定されるものではない。図5に示すベルト3のように、通電用芯体コード20が連続して隣接する芯体コード群24が形成されている構成とすることができる。このように芯体コード群24を構成することで、例えば電源配線等のように低抵抗が要求される配線に対して並列接続を行い易い。なお、当該ベルト3は、芯体コード群24が形成されている以外は、図3に示すベルト1と同様に構成することができるので、対応する構成には同一符号を付し詳細説明を省略する。
【0088】
芯体コード群24を構成する通電用芯体コード20の本数としては、2本以上5本以下が好ましい。上記本数が上記下限未満であると、芯体コード群24が形成できない。逆に、上記本数が上記上限を超えると、この芯体コード群24の補強用芯体コード30間の間隔が大きくなり過ぎ、芯体コード群24付近の強度が低下するおそれがある。
【0089】
芯体コード群24を構成する通電用芯体コード20間の平均間隔は、通電用芯体コード20と補強用芯体コード30との間の平均間隔より小さいことが好ましい。同一信号に対して並列して通電用芯体コード20を用いる場合、芯体コード群24を構成する通電用芯体コード20間の平均間隔を狭くすることができるので、当該ベルト3の幅の増加をさらに抑止できる。
【0090】
図5に示すベルト3では、芯体コード群24が1箇所に設けられている構成を示しているが、芯体コード群24は複数箇所に設けてもよい。また、図5に示すように、芯体コード群24に属さない単独の通電用芯体コード20が設けられていてもよいし、全ての通電用芯体コード20がいずれかの芯体コード群24に属する構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のベルトは、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数を確保しつつ幅の増加を抑止できる。
【符号の説明】
【0092】
1、2、3 ベルト
10 ベルト本体
11 ベルト穴
20 通電用芯体コード
20a 露出部
21 芯線
22 被覆膜
23 コネクタ
24 芯体コード群
30 補強用芯体コード
31 芯線
40 歯部
D 距離
P 平均ピッチ
図1
図2
図3
図4
図5