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  • 特許-ゴルフボール及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】ゴルフボール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
A63B37/00 412
A63B37/00 540
A63B37/00 544
A63B37/00 422
A63B37/00 426
A63B37/00 332
A63B37/00 336
A63B37/00 340
A63B37/00 430
A63B37/00 550
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022577529
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 KR2021007560
(87)【国際公開番号】W WO2021256856
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】10-2020-0073179
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0077924
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521013873
【氏名又は名称】アトメタル テック ピーティーイー エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】ATTOMETAL TECH PTE. LTD.
【住所又は居所原語表記】23-14P International Plaza 10 Anson Road Singapore 079903 Singapore
(73)【特許権者】
【識別番号】521209041
【氏名又は名称】アトメタル テック コリア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Attometal Tech Korea Inc.
【住所又は居所原語表記】82, Hwanggeum 4―ro, Yangchon―eup, Gimpo―si, Gyeonggi―do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,チュンニョン ポール
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジェ キュ
【審査官】三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3060524(JP,U)
【文献】特開2007-319666(JP,A)
【文献】米国特許第06106414(US,A)
【文献】特開2016-179052(JP,A)
【文献】特開2009-285460(JP,A)
【文献】特開2015-147056(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0281800(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00-47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均直径が37~39mmであり、第1密度を有するコア;
前記コアを囲むように0.8~1.2mmの厚さで提供され、非晶質合金粉末を含み、第2密度を有するマントル;及び
前記マントルを囲むように1~1.4mmの厚さで提供され、第3密度を有するカバーを含み、
前記第1密度は、1.10~1.20(g/cm )であり、
前記第2密度は、0.95~1.15(g/cm )であり、
前記第3密度は、1.05~1.15(g/cm )であり
前記非晶質合金粉末の密度は、6~8(g/cm )である、ゴルフボール。
【請求項2】
前記第2密度は、前記第1密度及び前記第3密度より低い、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記非晶質合金粉末は、前記マントルに前記マントルの重量に対して12~16wt%含まれる、請求項に記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記非晶質合金粉末の平均粒子径は10μm~50μmである、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記コア、前記マントル、及び前記カバーの弾性係数は、順次低くなる、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項6】
コア用ゴム混合物を用意し、コア用ゴム混合物をプレス成形し研磨処理して、平均直径が37~39mmであり、第1密度を有するコアを製作するコア形成段階;
マントル形成用樹脂に非晶質合金粉末を混合してマントル用樹脂混合物を用意し、前記コアを囲むようにマントル用樹脂混合物を射出成形した後、研磨処理して、厚さが0.8~1.2mmであり、第2密度を有するマントルを形成するマントル形成段階;及び
カバー形成用樹脂に添加剤を混合してカバー形成用混合物を用意し、前記マントルを囲むようにカバー形成用樹脂混合物をキャスティング成形して、厚さが1~1.4mmであり、第3密度を有するカバーを形成するカバー形成段階;を含み、
前記第1密度は、1.10~1.20(g/cm )であり、
前記第2密度は、0.95~1.15(g/cm )であり、
前記第3密度は、1.05~1.15(g/cm )であり、
前記非晶質合金粉末の密度は、6~8(g/cm )である、ゴルフボールの製造方法。
【請求項7】
前記第2密度は、前記第1密度及び前記第3密度よりも低い、請求項に記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項8】
前記非晶質合金粉末の平均粒子径は、10μm~50μmであり、
前記非晶質合金粉末は、前記マントル用樹脂混合物に前記マントル用樹脂混合物の重量に対して12~16wt%含まれる、請求項に記載のゴルフボールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質金属粉末を含むゴルフボールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールは、ゴルフに用いられるボールであって、公認ゴルフボールは、重量45.93g以下、直径42.67mm以上と規定されているが、これはゴルフボールの重量が重くなるか、または大きさが小さくなると、運動量が増加したり、空気の抵抗を少なく受けるようになるためである。よって、ユーザーのニーズに応じてサイズが小さく、重量を高めた一部のゴルフボールは、非公認ゴルフボールとして用いられることもある。
【0003】
このようなゴルフボールは、コア(Core)及び上記コアを覆う外皮層が、2~3層またはそれ以上に形成された構造からなる。コアの素材及びコアを囲んでいる外皮層の素材は、ゴルフボールの弾道、飛距離などを決める主な要素である。
【0004】
このとき、一般的にゴルフボールは、ポリブタジエンゴム材質の高弾性コアと、ポリウレタン、アイオノマープラスチック(Ionomer Plastic)材質のカバーで構成されており、コアとカバーとの間に外部コアまたは内部カバーなどとも称される中間層が備えられることができる。
【0005】
すなわち、コアはゴルフボールの飛距離を決定する高弾性材質であり、カバーは保護層としてゴルフボールの摩耗を防止し、中間層は、カバーの材質に応じて、スピン量や飛距離を改善するための様々な材質で構成されうる。例えば、カバーが弾性の高い材質である場合、中間層には硬度を高めるための材質が用いられ、カバーが硬度の高い材質である場合、中間層に弾性を高めるための材質が用いられうる。
【0006】
しかしながら、単に、カバーの弾性や硬度に応じてその反対の材質を中間層に用いる場合、ゴルフボール全体の密度のバランスや慣性モーメントの設計においては、不利な機能が発生しうる。
【0007】
また、従来のゴルフボールは、スイング時の飛距離や回転量に焦点を合わせるようにゴルフボールが設計され、アプローチやパッティングの際に有利な機能を発現するゴルフボールについては、ほとんど製品が開発されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第2001-0000252号公報(2001.01.05)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一側面によると、ゴルフボールに伝わる衝撃エネルギーを運動エネルギーに効率よく変えて飛距離の損失を最小化し、パッティング時のスキッド区間が短く、フォワードスピンへの変換が速く行われるゴルフボール及びその製造方法が提供されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によるゴルフボールは、平均直径が37~39mmであり、第1密度を有するコア;上記コアを囲むように0.8~1.2mmの厚さで提供され、非晶質合金粉末を含み、第2密度を有するマントル;及び、上記マントルを囲むように1~1.4mmの厚さで提供され、第3密度を有するカバーを含むことができる。
【0011】
上記第2密度は、上記第1密度及び上記第3密度よりも低いのでありうる。
【0012】
上記第1密度は1.10~1.20(g/cm)であり、上記第2密度は0.95~1.15(g/cm)であり、上記第3密度は1.05~1.15(g/cm)でありうる。
【0013】
上記非晶質合金粉末の密度は、6~8(g/cm)でありうる。
【0014】
上記非晶質合金粉末は、上記マントルに、上記マントルの重量に対して12~16wt%含まれうる。
【0015】
上記非晶質合金粉末の平均粒子径は、10μm~50μmでありうる。
【0016】
上記コア、上記マントル、上記カバーの弾性係数は、順次低くなりうる。
【0017】
本発明の他の一側面によるゴルフボールの製造方法は、コア用ゴム混合物を用意し、コア用ゴム混合物をプレス成形し研磨処理して、平均直径が37~39mmであり、第1密度を有するコアを製作するコア形成段階;マントル形成用樹脂に非晶質合金粉末を混合してマントル用樹脂混合物を用意し、上記コアを囲むようにマントル用樹脂混合物を射出成形した後、研磨処理することで、厚さが0.8~1.2mmであり、第2密度を有するマントルを形成するマントル形成段階;及び、カバー形成用樹脂に添加剤を混合してカバー形成用混合物を用意し、上記マントルを囲むようにカバー形成用樹脂混合物をキャスティング成形することで、厚さが1~1.4mmであり、第3密度を有するカバーを形成するカバー形成段階;を含むことができる。
【0018】
上記第2密度は、上記第1密度及び上記第3密度よりも低いのでありうる。
【0019】
上記第1密度は、1.10~1.20(g/cm)であり、上記第2密度は、0.95~1.15(g/cm)であり、上記第3密度は、1.05~1.15(g/cm)でありうる。
【0020】
上記非晶質合金粉末の密度は、6~8(g/cm)であり、上記非晶質合金粉末の平均粒子径は10μm~50μmであり、上記非晶質合金粉末は、上記マントル用樹脂混合物を上記マントル用樹脂混合物の重量に対して12~16 wt.%含むのでありうる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一側面によると、飛距離特性を向上させながらも、パッティング時の正確性を効果的に向上させることができるゴルフボール、及びその製造方法を提供することができる。
【0022】
本発明の技術的効果は、上述の事項に限定されるものではなく、通常の技術者が下記に記載された説明から推論できる効果を含む概念として解釈することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施例によるゴルフボールの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、ゴルフボール及びその製造方法に関するものであって、以下では、本発明の好ましい実施例を説明する。本発明の実施例は、様々な形に変形することができ、本発明の範囲が、以下で説明される実施例に限定されるものと解釈されてはいけない。本実施例は、当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に本発明をさらに詳細に説明するために提供されるものである。
【0025】
以下では、図面を参照しながら本発明の実施例によるゴルフボールについて説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施例によるゴルフボールの断面図である。
【0027】
本発明の一側面によるゴルフボールは、カバー10、マントル20、及びコア30を含むことができる。
【0028】
コア30は、本発明によるゴルフボールの内側中心部に位置し、一定の半径を有する球形で提供されることができる。すなわち、コア30は、ゴルフボールの中心部を含む最内側の構造層であり、平均直径が37~39mmの球形で構成され、弾性を有するゴム素材で構成されることができる。
【0029】
平均直径を測定する方法は特に制限されず、当該技術分野における通常の技術者が、通常、適用することができる方法が適用され得る。一例として、ゴルフボールの中心が切断面に位置するようにゴルフボールを切断し、切断面上で、ゴルフボールの中心を通る2つ以上の任意の直線を仮定して測定することで、コア径の平均値を算出することができる。
【0030】
ゴルフボールの弾性力確保の側面から、コアの平均直径が37mm以上であることが好ましい。但し、コアの直径が過度に大きくなる場合、マントルとカバーの厚さ及び密度の設定に制約が伴ってゴルフボールの性能が低下する可能性があるため、コアの平均直径を39mm以下に制限することができる。
【0031】
ここで、ゴム素材は、従来のゴルフボールのコア30の材料として用いられるものであれば特に限定されず、いかなるものであっても使用可能である。例えば、天然ゴム、合成ゴム、及びその混合物を用いることができ、好ましくはポリブタジエンゴム、より好ましくは40%以上のシス結合を有するシス-1,4-ブタジエンゴムが用いられることができる。
【0032】
また、ポリブタジエンゴムをゴム素材として用いる場合、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ネオプレン、及びEPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)からなる群から選択された1つ以上を、ポリブタジエンゴムと混合して用いることができる。
【0033】
一方、ゴム素材としてポリブタジエンゴムが用いられる場合、ポリブタジエンの密度は0.91(g/cm)であるため、密度を調節するために、ゴム素材に充填剤を用いることができる。本発明にて、一般的に用いられる充填剤が用いられうる。調節されたコアの密度(第1密度)は、1.10~1.20g/cmが好ましい。
【0034】
弾性係数の確保による飛距離増大の側面から、コアの密度は1.10g/cm以上であることが好ましい。但し、コアの密度が過度である場合、ゴルフボール全体の慣性モーメント(MOI)が弱くなって、スピン量が増加するため、却ってゴルフボールの総飛距離が減少する可能性がある。したがって、コアの密度は1.20g/cm以下の範囲に制限することが好ましい。
【0035】
コアには、一般的に用いられる架橋剤、酸化防止剤などの追加の添加剤も、非制限的に用いられうる。
【0036】
マントル20は、コア30の外表面に0.8~1.2mmの厚さを有するように形成される。マントル20に用いられる高分子は、高弾性のアイオノマー(Ionomer)樹脂やポリエステルエラストマー樹脂が用いられうるのであり、マントルの密度を調節するために充填剤が添加されうる。
【0037】
例えば、高弾性のアイオノマー(Ionomer)樹脂としては、デュポン(Dupont)社のサーリン(登録商標)(SURLYN)が用いられうるのであり、ポリエステルエラストマー樹脂としては、コーロンプラスチック(KOLON PLASTIC)社のコペル(KOPEL)が用いられうる。本発明では、マントル20の密度を容易に調節するために、アイオノマー(Ionomer)樹脂またはポリエステルエラストマー樹脂が用いられうる。アイオノマー樹脂は、密度が1.0g/cm以下であり、ポリエステルエラストマーは、密度が1.15g/cm以上であることができる。
【0038】
マントルの高分子には、非晶質合金粉末が混合されて形成されるが、非晶質合金粉末が混合されることで、マントルは弾性係数が大きくなって、衝撃エネルギーを運動エネルギーに転換させる能力が大きくなる。
【0039】
ここで、非晶質合金粉末は密度が6~8(g/cm)であり、マントルに12~16wt.%含まれ、平均粒子径が10μm~50μmでありうる。より好ましくは20~30μmでありうる。マントルの弾性係数の確保の側面から、非晶質合金粉末の密度が6g/cm以上であることが好ましく、非晶質合金粉末は、マントル全体の重量に対して12wt%以上の範囲でマントルに含まれることが好ましい。但し、非晶質合金粉末の密度が過度に高いか、非晶質合金粉末がマントルに過度に添加される場合、コアの弾性係数よりもマントルの弾性係数が高くなって、飛距離の増大効果が相殺されるか、またはマントルの製造時に、非晶質合金粉末が高分子に均一に分散されないことがありうる。したがって、非晶質合金粉末の密度は8g/cm以下であることが好ましく、非晶質合金粉末は、マントル全体の重量に対して16wt%以下の範囲でマントルに含まれることが好ましい。
【0040】
非晶質合金粉末の均一分散の側面から、非晶質合金粉末の平均粒子径が小さいほど有利である。但し、非晶質合金粉末の平均粒子径が過度に小さい場合、非晶質合金粉末の添加量に比べて弾性係数の増大効果が僅かでありうるため、非晶質合金粉末は10μm以上の平均粒子径を有することが好ましい。一方、非晶質合金粉末の平均粒子径が過度に大きい場合、非晶質合金粉末の不均一な分散による不規則な弾性が表れうるのであり、それによってゴルフボールの全体的な性能が低下する可能性がある。したがって、非晶質合金粉末の平均粒子径を50μm以下の範囲に制限することができる。
【0041】
本発明において、非晶質合金粉末の組成は特に制限されないが、鉄を含む鉄系非晶質合金粉末が好ましく用いられうる。
【0042】
非晶質合金粉末の組成は、非制限的であるが、強度を高める鉄、耐食性を有するクロムやモリブデニウムを含み、非晶質形成能を強化させる炭素、ホウ素などが含まれることが好ましい。例えば、鉄100重量部に対して、上記クロム含有量は25.4~55.3重量部、及び上記モリブデニウム含有量は35.6~84.2重量部を含む粉末が用いられうる。
【0043】
マントルの密度(第2密度)は0.95~1.15g/cmが好ましく、マントルの厚さは0.8~1.2mmが好ましい。ここで、マントルの厚さとは、ゴルフボールの断面のうち、複数の地点で測定したマントルの厚さの平均値を意味しうる。マントルは、コアまたはカバーよりも低い密度を有するため、全体的に密度バランスを合わせる機能を果たす。弾性係数の確保による飛距離増大の側面からマントルの密度は0.95g/cm以上であることが好ましく、マントルの厚さは1.2mm以下であることが好ましい。一方、本発明の発明者らの研究結果によると、非晶質合金粉末が含まれたマントルは、その密度が低く、マントルの厚さが厚いほど、パッティング時に発生するゴルフボールのスキッド(skid; 滑り)区間の長さが短くなる傾向性を示すという点を確認することができた。すなわち、本発明はマントルの密度を1.15g/cm以下の範囲に制限し、マントルの厚さを0.8mm以上の範囲に制限するため、パッティング時のゴルフボールのスキッド区間を減らして、設定した方向の通りにゴルフボールが転がるようにするローリング特性を、効果的に確保することができる。
【0044】
したがって、充填剤は、マントル20の密度を調節するために、別途に用いられうるが、場合によっては上述した非晶質合金粉末が充填剤の機能を行うこともできる。
【0045】
マントル20の外表面には、1mm~1.4mmの厚さを有するカバー10が備えられることができる。カバーの厚さも、ゴルフボールの断面のうち、複数の地点で測定したカバーの厚さの平均値を意味することができる。カバー10の表面上には、ディンプル(Dimple)が形成されうる。
【0046】
カバーは、製造しようとするボールの硬度特性に応じて、アイオノマーまたはウレタン樹脂が用いられうるのであり、充填剤及び顔料を含むことができる。
【0047】
カバーの密度(第3密度)は1.05~1.15g/cmでありうる。耐久性及び弾性係数の確保の側面から、カバーの密度は1.05g/cm以上であることが好ましい。一方、カバーの密度が過度に高い場合、コアの弾性力を相殺することで、却ってゴルフボールの飛距離が減少するようになるため、カバーの密度は1.15g/cm以下であることが好ましい。また、ゴルフボールの弾性係数、スピン量及びスキッド区間の最適化のために、カバーの第3密度はコアの第1密度と同一であるか又は低いことが好ましく、カバーの第3密度がマントルの第2密度よりも高いことが、より好ましい。また、ゴルフボールの弾性係数、スピン量、及びスキッド区間の最適化のために、カバーの弾性係数は、コア及びマントルの弾性係数よりも低いことが好ましい。
【0048】
耐久性及び弾性係数の確保の側面から、カバーの厚さは1mm以上であることが好ましい。一方、カバーの厚さが過度に厚い場合、ゴルフボール内におけるマントル及びコアが占める比重が減少するようになるために、却って、目的とする弾性係数を確保できなくなるだけでなく、スキッド区間が増加する現象が発生するようになるのであるから、カバーの厚さは、1.4mm以下の範囲が好ましいといえる。
【0049】
本発明の他の一側面によるゴルフボールの製造方法は、コア形成段階、マントル形成段階、及びカバー形成段階を含む。
【0050】
コア形成段階はブタジエン及び充填剤、酸化防止剤の添加剤を混合してニーダーとロールミルで均一に混合してコア用ゴム混合物を用意し、コア用ゴム混合物をプレス成形し研磨処理して、ゴルフボールのコアを製作する段階である。プレス成形及び研磨処理によって提供されるコアは、1.10~1.20g/cmの密度(第1密度)及び37~39mmの平均直径を満たすことができる。
【0051】
マントル形成段階は、マントル形成用樹脂であるアイオノマー樹脂やポリエステルエラストマー樹脂に、非晶質合金粉末を混合してマントル用樹脂混合物を用意しておき、コアを囲むようにマントル用樹脂混合物を射出成形した後、研磨処理してマントルを形成することができる。マントル形成段階で用いられる非晶質合金粉末は、上述した粒径及び物性を有する非晶質合金粉末でありうる。射出成形及び研磨処理されたマントルは、0.95~1.15g/cmの密度(第2密度)及び0.8~1.2mmの厚さを満たすことができる。
【0052】
カバー形成段階は、カバー形成用樹脂であるアイオノマー樹脂やウレタン樹脂に添加剤を混合してカバー形成用混合物を用意し、マントルを囲むようにカバー形成用樹脂混合物をキャスティングまたは射出成形することができる。
【0053】
この後、カバーのしわ部分を整えて表面処理してコーティング層を形成した後、印刷機でマーキングし、品質検査してゴルフボールを製造することができる。最終製造されたゴルフボールにおけるカバーの密度(第3密度)は、1.05~1.15g/cmの範囲を満たすことができ、カバーの厚さは1~1.4mmの範囲を満たすことができる。
【実施例
【0054】
以下では、実施例を挙げて、本発明のゴルフボールをより具体的に説明する。下記実施例は、本発明をより詳細に説明するために提供されるものであって、本発明の範囲が、下記実施例に記載された事項に限定されるものではないという点に、留意する必要がある。
【0055】
<実施例>
ポリブタジエンゴム、充填剤、酸化防止剤(Antioxidant)をニーダー及びロールミルで均一に混合してコア用ゴム混合物を用意した後、コア用ゴム混合物をプレス成形し、研磨して、表1に記載された直径及び密度を有するゴルフボールのコアを製作した。コアの密度は、充填剤の添加量を調節して制御した。
【0056】
その後、アイオノマー樹脂、充填剤、非晶質合金粉末を添加してマントル用樹脂組成物を製造した後、マントル用樹脂組成物を射出成形して研磨処理して表1に記載された厚さのマントルを形成した。非晶質合金粉末は、鉄100重量部に対して25.4~55.3重量部のクロム及び35.6~84.2重量部のモリブデンを含み、その他のホウ素または炭素が微量含まれた非晶質合金粉末を用い、非晶質合金粉末の平均粒子径を約30μmに制御した後、樹脂組成物に添加した。No.10の場合、密度5g/cmの非晶質合金粉末を用いて、マントルの密度が多少低く実現されたのであり、No.11の場合、密度が9g/cmの非晶質合金粉末を用いて、マントルの密度が多少高く実現された。残りのゴルフボールは、密度7g/cmの非晶質合金粉末を用いてマントルを製造した。非晶質合金粉末は、マントル用樹脂組成物の重量に対して14wt%の重量を満たすようにマントル用樹脂組成物に添加された。
【0057】
次に、アイオノマー、添加剤を用いてカバー用樹脂混合物を製造した。コアが含まれているマントルの外表面を囲むようにカバー用樹脂混合物をキャスティング成形し、研磨して、表1に記載された厚さ及び密度を有するカバーを形成した。カバーの密度は、充填剤の添加量を調節して制御した。
【0058】
【表1】
【0059】
R&A及びUSGAで使用中のGolf Laboratories社の製品と同一のスイングロボットを用いて、表1の条件により提供されたゴルフボールのドライバー飛距離試験(ヘッドスピード100MPH模写)を実施し、各ゴルフボールのボールスピード(Ball Speed、MPH)、ランチアングル(打ち出し角度;Launch Angle、°)、総スピン量(Total Spin、RPM)、キャリー距離(Carry、m)、及び総距離(Total、m)を測定して、その結果を表2に記載した。
【0060】
また、パタースイングロボットを用いて、表1の条件で製造されたゴルフボールのパッティングストローク試験(パタースピード3MPH模写)をさらに行い、各ゴルフボールの打撃地点から、バックスピン(back spin)区間を経て、フォワードスピン(forward spin)に転換される地点までの、スキッド距離(Skid、m)を測定して、表2にまとめて記載した。
【0061】
【表2】
【0062】
表1及び表2によると、本発明が制限するコア、マントル、及びカバーの厚さ及び密度を満たす発明例は、ゴルフボールの飛距離を決定する主要要素であるボールスピードが速くなり、スピン量が減少して、総合的に240m以上の総距離、及び0.7m以下のスキッド距離を同時に満たす一方、本発明が制限するコア、マントル、及びカバーの厚さ及び密度のいずれか1つ以上を満たさない比較例は、240m以上の総距離及び0.7m以下のスキッド距離を同時に満たさないことを確認することができる。
【0063】
したがって、本発明の一側面によると、飛距離特性を向上させながらも、パッティング時の正確性を効果的に向上させることができるゴルフボール及びその製造方法を提供することができる。
【0064】
以上、実施例を挙げて本発明を詳細に説明したが、これと異なる形態の実施例も可能である。したがって、以下に記載される特許請求の範囲の技術的思想及び範囲は、実施例に限定されない。
【符号の説明】
【0065】
10 カバー
20 マントル
30 コア
図1