(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】ガスタービンの静翼組立体、静止部材セグメント及びガスタービンの静翼組立体の製造方法
(51)【国際特許分類】
F01D 9/04 20060101AFI20240531BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20240531BHJP
F02C 7/18 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
F01D9/04
F01D9/02 102
F02C7/18 E
(21)【出願番号】P 2023509056
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2022011781
(87)【国際公開番号】W WO2022202510
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2021048341
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤井 崇
(72)【発明者】
【氏名】羽田 哲
(72)【発明者】
【氏名】若園 進
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 啓太
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/152573(WO,A1)
【文献】特表2016-514232(JP,A)
【文献】特表2019-521277(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0275763(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/04
F01D 9/02
F02C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成された静止部材と、
シュラウドと翼体とが各々に設けられた複数の静翼セグメントであって、前記静止部材の径方向内側において前記静止部材の周方向に沿って設置され、前記シュラウドと前記静止部材との間にキャビティが設けられ、前記静止部材の周方向において前記シュラウドが互いに隣り合う複数の静翼セグメントと、
を備え、
前記静止部材は、前記静止部材の径方向外側から径方向内側に貫通する穴が設けられ、前記穴の中心軸線は、前記シュラウドの周方向端部に向けて配置されている、
ガスタービンの静翼組立体。
【請求項2】
前記シュラウドの周方向端部は、当該シュラウドに隣り合う他のシュラウドに締結部材によって締結される締結端部を含む、
請求項1に記載のガスタービンの静翼組立体。
【請求項3】
前記シュラウドの周方向端部は、当該シュラウドに隣り合う他のシュラウドにシール部材を介して接続されるシール端部を含む、
請求項1又は2に記載のガスタービンの静翼組立体。
【請求項4】
前記シュラウドの周方向端部は、前記静止部材側に突出する突出端部を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載のガスタービンの静翼組立体。
【請求項5】
前記穴の前記径方向内側の開口が前記静止部材の径方向からみて前記シュラウドの周方向端部と前記周方向において重なる、
請求項1から4のいずれか一項に記載のガスタービンの静翼組立体。
【請求項6】
前記静止部材は、前記静止部材の周方向において複数に分割され、
前記穴は、前記静止部材の分割面に隣り合う穴であって、前記穴の中心軸線は、前記静止部材の径方向内側に向けて前記静止部材の分割面側に傾いている、
請求項1から5のいずれか一項に記載のガスタービンの静翼組立体。
【請求項7】
前記穴は、前記静止部材の周方向に設けられた複数の穴であって、
前記複数の穴は、
前記穴の中心軸線が前記静止部材の径方向に配置された第1穴と、
前記穴の中心軸線が前記静止部材の径方向に対して傾斜しており、かつ、前記静止部材の径方向内側に向けて前記静止部材の分割面側に傾いている第2穴と、を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載のガスタービンの静翼組立体。
【請求項8】
前記静止部材は、周方向において複数に分割された複数の静止部材セグメントを有し、
前記静止部材セグメントの少なくとも一つは、前記周方向における中央部分の前記径方向外側の面から前記径方向外側に向けて突出する中央突出部を有し、
前記穴は、前記中央突出部に隣り合う穴であって、前記穴の中心軸線は、前記静止部材の径方向内側に向けて前記中央突出部側に傾いている、
請求項1から5のいずれか一項に記載のガスタービンの静翼組立体。
【請求項9】
環状に形成された静止部材の周方向において複数に分割され、前記静止部材を構成する
ガスタービンの静止部材セグメントであって、
前記静止部材の径方向外側から径方向内側に貫通する穴が、前記静止部材セグメントの周方向に複数設けられ、
複数の前記穴は、前記静止部材の径方向に対する角度が互いに異なる第1穴及び第2穴を含み、
前記第1穴は、前記穴の中心軸線が前記静止部材の径方向に配置され、
前記第2穴は、
前記穴の中心軸線が前記静止部材の径方向に対して傾斜しており、かつ、前記静止部材の径方向内側に向けて前記静止部材セグメントの分割面側に傾いている、
ガスタービンの静止部材セグメント。
【請求項10】
環状に形成された静止部材と、
シュラウドと翼体とが各々に設けられた複数の静翼セグメントであって、前記静止部材の径方向内側において前記静止部材の周方向に沿って設置され、前記シュラウドと前記静止部材との間にキャビティが設けられ、前記静止部材の周方向において前記シュラウドが互いに隣り合う複数の静翼セグメントと、
を備えるガスタービンの静翼組立体の製造方法であって、
前記静止部材に設けた前記静止部材の径方向外側から径方向内側に貫通する穴の中心軸線が、前記シュラウドの周方向端部に向くように前記静翼セグメントを配置する、
ガスタービンの静翼組立体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンの静翼組立体、静止部材セグメント及びガスタービンの静翼組立体の製造方法に関する。
本願は、2021年3月23日に日本国特許庁に出願された特願2021-048341号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タービン車室の内側車室を径方向外側から径方向内側に貫通する冷却空気通路が開示されている。かかる冷却空気通路を通った冷却空気は、タービン車室の内側に設けられている静翼段の冷却に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されている静翼段は、周方向に並んでいる複数の静翼で構成されるので、燃焼ガス流路を流れる燃焼ガスによって複数の静翼(シュラウド)の内周面と複数の静翼(シュラウド)の隣り合う端面(周方向端面)とが同時に加熱される二面加熱となる。このように二面加熱される部分は他の部分よりも温度が上昇しやすく他の部分より冷却が必要になる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された構成では二面加熱される部分に冷却空気が重点的に行き渡る構造ではないため、二面加熱される部分を他の部分よりも効果的に冷却できない。
【0006】
本開示は、上述した問題点に鑑みてなされたもので、燃焼ガスによって二面加熱される部分を効果的に冷却できるガスタービンの静翼組立体、静止部材セグメント及びガスタービンの静翼組立体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係るガスタービンの静翼組立体は、
環状に形成された静止部材と、
シュラウドと翼体とが各々に設けられた複数の静翼セグメントであって、前記静止部材の径方向内側において前記静止部材の周方向に沿って設置され、前記シュラウドと前記静止部材との間にキャビティが設けられ、前記静止部材の周方向において前記シュラウドが互いに隣り合う複数の静翼セグメントと、
を備え、
前記静止部材は、前記静止部材の径方向外側から径方向内側に貫通する穴が設けられ、前記穴の中心軸線は、前記シュラウドの周方向端部に向けて配置されている。
【0008】
また、本開示に係るガスタービンの静止部材セグメントは、
環状に形成された静止部材の周方向において複数に分割され、前記静止部材を構成する静止部材セグメントであって、
前記静止部材の径方向外側から径方向内側に貫通する穴が、前記静止部材セグメントの周方向に複数設けられ、
複数の前記穴は、前記静止部材の径方向に対する角度が互いに異なる第1穴及び第2穴を含み、
前記第2穴は、前記静止部材の径方向内側に向けて前記静止部材セグメントの分割面側に傾いている。
【0009】
また、本開示に係るガスタービンの静翼組立体の製造方法は、
環状に形成された静止部材と、
シュラウドと翼体とが各々に設けられた複数の静翼セグメントであって、前記静止部材の径方向内側において前記静止部材の周方向に沿って設置され、前記シュラウドと前記静止部材との間にキャビティが設けられ、前記静止部材の周方向において前記シュラウドが互いに隣り合う複数の静翼セグメントと、
を備えるガスタービンの静翼組立体の製造方法であって、
前記静止部材に設けた前記静止部材の径方向外側から径方向内側に貫通する穴の中心軸線が、前記シュラウドの周方向端部に向くように前記静翼セグメントを配置する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、シュラウドの周方向端部を効果的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るガスタービンの静翼組立体が採用されるガスタービンを概略的に示す図である。
【
図2】実施形態に係るガスタービンの静翼組立体を概略的に示す正面図である。
【
図3】
図2に示したセグメントを示す斜視図である。
【
図4】
図2に示したガスタービンの静翼組立体の要部を拡大した縦断面図である。
【
図5】
図4に示したガスタービンの静翼組立体の要部を拡大した横断断面図である。
【
図6】
図5に示したガスタービンの静翼組立体の要部を拡大した展開図である。
【
図7】
図5に示したガスタービンの静翼組立体の要部を拡大した展開図である。
【
図8】
図2に示したガスタービンの静翼組立体の要部を拡大した横断断面図である。
【
図9】実施形態に係るガスタービンの静翼組立体の要部を拡大した横断断面図である。
【
図10】実施形態に係るガスタービンの静翼組立体に採用可能なセグメントの一例(例1)を模式的に示す図である。
【
図11】実施形態に係るガスタービンの静翼組立体に採用可能なセグメントの一例(例2)を模式的に示す図である。
【
図12】実施形態に係るガスタービンの静翼組立体に採用可能なセグメントの一例(例3)を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態に係るガスタービンの静翼組立体、静止部材セグメント及びガスタービンの静翼組立体の製造方法について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
図1に示すように、実施形態に係るガスタービンの静翼組立体1が採用されたガスタービン10は、圧縮機13、複数の燃焼器15及びタービン17を備えている。ガスタービン10は、圧縮機13及びタービン17を貫通して配置された、回転軸であるロータ軸12を備え、複数の燃焼器15はロータ軸12の周りに配置されている。圧縮機13、複数の燃焼器15及びタービン17は、ロータ軸12の軸線Cに沿って、空気の流れ方向上流から下流に向けて順次配置されている。
尚、以下の説明において、ロータ軸12の軸線方向をロータ軸方向、ロータ軸12の軸線を中心とする周方向をロータ周方向、ロータ軸12の軸線に直交する方向をロータ径方向という。
【0014】
圧縮機13は、ロータ軸12の回転を利用して圧縮空気を生成可能である。圧縮機13は、圧縮機ケーシング131、複数段の圧縮機静翼133及び複数段の圧縮機動翼135を有する。圧縮機ケーシング131は円筒形状に形成され、その内部をロータ軸12が貫通するとともに、その内部に圧縮機静翼133及び圧縮機動翼135を収容する円筒形状の空間(車室)を有している。また、圧縮機ケーシング131は、その空気流れ方向上流に取入口137を有し、その空気流れ方向下流に吐出口139を有している。取入口137は、空気流れ方向上流から圧縮機ケーシング131の内部に空気を取り入れ可能である。吐出口139は、ロータ軸12を中心とする円環形状に形成され、圧縮機13で生成された圧縮空気を吐出可能である。
【0015】
圧縮機静翼133は、ロータ軸12の軸線を中心としてロータ軸方向及びロータ周方向に整列した状態で圧縮機ケーシング131の内周に固定されている。圧縮機動翼135は、ロータ軸方向において圧縮機静翼133と交互に位置するように、ロータ軸12の軸線を中心としてロータ軸方向及びロータ周方向に整列した状態で、ロータ軸12の外周に固定されている。
【0016】
複数の燃焼器15の各々は、圧縮機13で生成された圧縮空気を利用して燃焼ガスを生成可能である。燃焼器15には、圧縮空気とともに燃料を供給可能であり、燃料が燃焼することで燃焼ガスが生成される。複数の燃焼器15は、燃焼器ケーシング151の内部に配置されている。燃焼器ケーシング151は、円筒形状に形成され、その内部をロータ軸12が貫通するとともに、その内部に複数の燃焼器15を収容する円筒状の空間(車室)を有している。
【0017】
複数の燃焼器15は、ロータ周方向に配置されている。複数の燃焼器15は、例えば、16個の燃焼器15で構成され、ロータ周方向において等間隔に配置されている。
【0018】
複数の燃焼器15の各々は、燃焼筒153及び尾筒155を有する。燃焼筒153には、圧縮機13で生成された圧縮空気とともに燃料を供給可能であり、燃料が燃焼されることで燃焼ガスが生成される。燃焼筒153は、円筒形状に形成され、燃焼筒の軸線がロータ軸方向に沿って配置されている。燃焼筒153の一端開口が給気口157とされ、当該給気口157が圧縮機13の吐出口139に向けて配置されている。尾筒155は、燃焼筒153で生成された燃焼ガスを燃焼筒153からタービン17に導出可能である。
【0019】
上述した燃焼器15では、高温高圧の圧縮空気が給気口157から燃焼筒153の内部に流れ込むと、圧縮空気がメイン燃焼バーナから噴射された燃料と混合され、予混合気の旋回流を生成する。
【0020】
タービン17は、燃焼ガスを利用してロータ軸12の回転動力を生成可能である。タービン17は、タービンケーシング171、複数段の静翼組立体1及び複数段のタービン動翼175を有する。タービンケーシング171は円筒形状に形成され、その内部をロータ軸12が貫通するとともに、その内部に静翼組立体1及びタービン動翼175を収容する円筒形状の空間(車室)を有している。また、タービンケーシング171は、その空気流れ方向下流に排気室177を有している。排気室177は、排気ディフューザ179を有し、ロータ軸12の回転動力を生成した排気ガスを排出可能である。複数段の静翼組立体1は、ロータ軸12の軸線を中心としてロータ軸方向及びロータ周方向に整列した状態でタービンケーシング171の内側に固定されている。複数段のタービン動翼175は、ロータ軸方向において静翼組立体1と交互に位置するように、ロータ軸12の軸線を中心としてロータ軸方向及びロータ周方向に整列した状態で、ロータ軸の外周に固定されている。
【0021】
ロータ軸12は、圧縮機側の端部が軸受部121に支持され、排気室側の端部が軸受部123に支持されている。これにより、ロータ軸12は、ロータ軸12の軸線を中心として回転自在である。また、ロータ軸12は、図に明示しないが、圧縮機側の端部に発電機の駆動軸が連結されている。
【0022】
上述したガスタービン10は、圧縮機13の取入口から空気が取り込まれ、かかる空気が複数段の圧縮機静翼133と複数段の圧縮機動翼135を通過することで圧縮される。これにより、圧縮機13を通過した空気は高温高圧の圧縮空気となる。そして、この高温高圧の圧縮空気は、燃焼器15に燃料とともに供給され、燃料が燃焼することで高温高圧の燃焼ガスが生成される。この燃焼ガスがタービン17の複数段の静翼組立体1と複数段のタービン動翼175とを通過することでロータ軸12の回転動力が生成され、ロータ軸12が回転駆動される。そして、ロータ軸12に連結された発電機に回転動力を付与することで発電が行われる。一方、ロータ軸12を回転駆動した後の排気ガスは、排気室の排気ディフューザを経て排気ガスとして大気に放出される。
【0023】
本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1は、上述した複数段の静翼組立体1のうち少なくとも一つの静翼組立体1である。ここでは、燃焼ガスの流れ方向上流側から三段目の静翼組立体1を例に説明するが、本発明にかかるガスタービン10の静翼組立体1は燃焼ガスの流れ方向上流側から三段目の静翼組立体1に限られるものではない。
【0024】
図2に示すように、本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1は、環状に形成された静止部材3と、シュラウド6(
図3参照)と翼体7とが各々に設けられた複数の静翼セグメント5と、を備えている。
【0025】
静止部材3は、複数の静翼セグメント5(翼体7)をタービンケーシング171の内側に設置するためのもので、翼環とも称される。静止部材3は、例えば、円環状に形成され、タービンケーシング171の内側に設置される。静止部材3は、静止部材3の径方向に延びる分割面3abで分割される少なくとも二つの構成部材(静止部材セグメント)によって構成されているが、さらに複数の構成部材に周方向で分割されていても良い。
【0026】
図2に示す例では、分割面3abは、静止部材3の径方向に延びる水平面HZに設けられ、上述した少なくとも二つの構成部材は、分割面3abで分割される下半部3Aと上半部3Bとによって構成される。
図2に示す例では、下半部3Aの開口縁部(下半部3Aの周方向端部)と上半部3Bの開口縁部(上半部3Bの周方向端部)とに各々フランジ3A1,3B1が設けられ、上半部3Bに設けられたフランジ3B1には貫通穴3B12が設けられ、下半部3Aに設けられたフランジ3A1にはネジ穴3A12が設けられる(
図5参照)。そして、上半部3Bのフランジ3B1に設けられた貫通穴3B12に挿入されたボルトBTが下半部3Aのフランジ3A1に設けられたネジ穴3A12に嵌合することによって下半部3Aに上半部3Bが接合される。尚、
図2に示す例では、下半部3Aと上半部3Bとに各々設けられたフランジ3A1,3B1と熱伸びによる変形量のバランスを取るべく、下半部3Aの周方向中央と上半部3Bの周方向中央に各々ダミーフランジ3A2,3B2を備えている。
【0027】
図2に示すように、複数の静翼セグメント5は、静止部材3の径方向内側において静止部材3の周方向に沿って設置され、シュラウド6と静止部材3との間にキャビティCVが設けられ(
図4参照)、静止部材3の周方向においてシュラウド6が互いに隣り合う(
図5参照)。
【0028】
図3に示すように、複数の静翼セグメント5の各々は、一つのシュラウド6に一つの翼体7が設けられるが、一つのシュラウド6に二以上の翼体7が設けられてもよい。シュラウド6は、静止部材3の径方向内側に沿って設けられる隔壁であり、翼体7はシュラウド6から静止部材3の径方向内側に延びる静止翼である。翼体7の先端(静止部材3の径方向内側端)にはシュラウド6(以下「外側シュラウド6」という)よりも径の小さな内側シュラウド8が設けられる。これにより、複数の静翼セグメント5の各々では、外側シュラウド6と内側シュラウド8との間に翼体7が設けられる。
【0029】
図3に示す例では、静止部材3の周方向において外側シュラウド6が互いに隣り合う二つの静翼セグメント5A,5Bは一組となって互いに締結され、静止部材3の径方向内側において静止部材3の周方向に沿って設置される。一組となって互いに締結される二つの静翼セグメント5A,5Bの外側シュラウド6は、外側シュラウド6の締結面側となる周方向端部61が締結端部611となり、外側シュラウド6の締結面と反対側となる周方向端部61がシール端部612となる。そして、外側シュラウド6の締結端部611には締結部63が設けられ、外側シュラウドのシール端部には突出端部64が設けられる。
【0030】
互いに隣り合う外側シュラウド6の各々に設けられた締結部63は、締結部材65によって互いに締結され、互いに隣り合う外側シュラウド6のシール端部612は、シール部材66(
図6及び
図7参照)を介して互いに接続される。締結部材65は、例えば、ボルトとナットによって構成されるが、これに限定されるものではない。シール部材66は、例えば、シール板であり、シール端部612に設けられた溝に嵌め込まれるが、これに限定されるものではない。
【0031】
また、各静翼セグメント5の外側シュラウド6は、前端側取付部621と後端側取付部622とを有している。前端側取付部621は、外側シュラウド6の前端部の径方向外側(静止部材3の径方向内側に対向する側)に設けられ、後端側取付部622は、後端部の径方向外側に設けられている。
【0032】
図4に示すように、前端側取付部621は、静止部材3の前端部に取り付けられる部分であり、外側シュラウド6の前端部に沿って設けられ、静止部材3と外側シュラウド6との間に設けられる円環状のキャビティCVを燃焼ガスから隔絶している。後端側取付部622は、静止部材3の軸方向中程に取り付けられる部分であり、外側シュラウド6の後端部に沿って設けられ、キャビティCVを燃焼ガスから隔絶している。
【0033】
キャビティCVは、ガスタービン10のロータ軸の軸線Cを中心とする周方向に延在する円環状であって、静止部材3とタービンケーシング171(
図1参照)との間に設けられる空間Xと後述する静止部材3を貫通する穴31を介して連通している。これにより、圧縮機13から抽気され、空間Xに供給された空気は、静止部材3を貫通する穴31を通りキャビティCVに供給される。
【0034】
また、外側シュラウド6は、インピンジメント板取付段部68(
図6及び
図7参照)を有している。インピンジメント板取付段部68は、外側シュラウド6のキャビティCVに臨む面(外側シュラウド6の径方向外側となる面)にインピンジメント板69を取り付けるための段部であり、前端側取付部621、後端側取付部622、締結部63及び突出端部64の内側に額縁状に設けられている。
【0035】
図5から
図7に示すように、本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1では、静止部材3には、静止部材3の径方向外側から内側に貫通する穴31が設けられている。穴31は、中心軸線CNが直線のものに限られるものではなく、中心軸線CNが屈曲しているものや湾曲しているものであってもよい。穴31の中心軸線CNは、静止部材3の径方向外側から外側シュラウド6の周方向端部61に向けて配置されている。上述したように穴31の中心軸線CNが屈曲したり湾曲したりしている場合には、静止部材3の内周側において外側シュラウド6の周方向端部61に向かうものであれば、静止部材3の径方向外側から外側シュラウド6の周方向端部61に向けて配置されているものに含まれる。また、穴31は、断面が円形のものに限られるものではなく、非円形、例えば、楕円形、矩形、多角形のいずれであってもよく、また、非対称形状であってもよい。そして、穴31がこれらの形状である場合に、中心軸線CNは、これらの形状の重心を通るものとする。さらに、穴31の断面形状は穴31の延在方向において同一である必要はなく、穴31の延在方向において断面形状が異なっていてもよい。例えば、穴31は、一端(入口)よりも他端(出口)の断面形状のほうが大きい末広がりとなる形状(テーパ形状)であってもよいし、一端よりも他端の断面形状のほうが小さい尻窄まりとなる形状(テーパ形状)であってもよい。この穴31は、圧縮機13から抽気された空気(圧縮空気)を外側シュラウド6の周方向端部61に向けて噴出するための穴であり、空気穴又はFH(Feed Hole)穴とも称される。
【0036】
上述した本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1では外側シュラウド6の内周面と複数の外側シュラウド6が周方向に隣り合う端面とが同時に加熱されるので、外側シュラウド6の周方向端部61が二面加熱となり、他の部分よりも温度が上昇しやすく他の部分よりも冷却が必要となる。本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1によれば、穴31の中心軸線CNは、静止部材3の径方向外側から外側シュラウド6の周方向端部61に向けて配置されているので、圧縮機13から抽気された空気(圧縮空気)を静止部材3の径方向外側の空間Xに供給すれば、空気は静止部材3の径方向外側から径方向内側に貫通する穴31を通り外側シュラウド6の周方向端部61に向けて噴出する。これにより、二面加熱される外側シュラウド6の周方向端部61は他の部分よりも優先して冷却され、二面加熱される外側シュラウド6の周方向端部61を効率的に冷却できる。
【0037】
図5から
図7に示すように、本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1では、外側シュラウド6の周方向端部61は、当該外側シュラウド6と隣り合う他の静翼セグメント5の外側シュラウド6と締結部材65によって締結される締結端部611を含む。
【0038】
上述した本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1では上述したように外側シュラウド6の周方向端部61が二面加熱となり、他の部分よりも冷却が必要になるが、締結部材65によって締結される締結端部611は特に冷却が必要となる。本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1では、静止部材3の径方向外側から内側に貫通する穴31B,31D,31E,31Fが静止部材3の径方向外側から締結端部611に向かうので、圧縮機13から抽気された空気(圧縮空気)を静止部材3の径方向外側に供給すれば、空気は静止部材3の径方向外側から内側に貫通する穴31B,31D,31E,31Fを通り外側シュラウド6の締結端部611に向けて噴出するので、特に冷却が必要となる外側シュラウド6の締結端部611を効率的に冷却できる。
【0039】
図5から
図7に示すように、本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1では、外側シュラウド6の周方向端部61は、当該外側シュラウド6と隣り合う他の静翼セグメント5の外側シュラウド6とシール部材66を介して接続されるシール端部612を含む。
【0040】
上述した本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1では上述したように外側シュラウド6の周方向端部61が二面加熱となり、他の部分よりも冷却が必要になるが、シール部材66によって接続されるシール端部612も冷却が必要となる。本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1では、静止部材3の径方向外側から内側に貫通する穴31A,31C,31Gが静止部材3の径方向外側からシール端部612に向かうので、圧縮機13から抽気された空気(圧縮空気)を静止部材3の径方向外側に供給すれば、空気は静止部材3の径方向外側から内側に貫通する穴31A,31C,31Gを通り外側シュラウド6のシール端部612に向けて噴出するので、冷却が必要となる外側シュラウド6のシール端部612を効率的に冷却できる。
【0041】
図5から
図7に示すように、本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1では、外側シュラウド6の周方向端部61は、静止部材側に突出する突出端部64を含む。突出端部64は、例えば、外側シュラウド6に設けられる締結部63又はシール端部612に設けられる突出端部であるが、これに限られるものではない。
【0042】
上述した本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1では上述したように外側シュラウド6の周方向端部61が二面加熱となり、他の部分よりも冷却が必要になり、加えて、静止部材側に突出する突出端部64も冷却が必要となる。本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1では、静止部材3の径方向外側から内側に貫通する穴が外側シュラウド6の突出端部64に向かうので、圧縮機13から抽気された空気(圧縮空気)を静止部材3の径方向外側に供給すれば、空気は静止部材3の径方向外側から内側に貫通する穴31を通り外側シュラウド6の突出端部64に向けて噴出するので、冷却が必要となる外側シュラウド6の突出端部64を効率的に冷却できる。
【0043】
図5から
図7に示すように、本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1では、静止部材3の径方向外側から径方向内側に貫通する穴31A~31D,31F,31Gの内側開口が静止部材3の径方向からみて外側シュラウド6の周方向端部61と静止部材3の周方向において重なる。
【0044】
上述した本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1によれば、圧縮機13から抽気された空気が静止部材3を径方向外側から径方向内側に貫通する穴31A~31D,31F,31Gの内側開口から外側シュラウド6の周方向端部61に向けて噴出するので、燃焼ガスによって加熱された外側シュラウド6の周方向端部61を効率的に冷却できる。
【0045】
図5に示すように、静止部材3が静止部材3の径方向に延びる水平面HZに設けられる分割面3abで分割される下半部3Aと上半部3Bとによって構成される場合には、下半部3Aの開口縁部と上半部3Bの開口縁部とに各々フランジ3A1,3B1が設けられ、上半部3Bに設けられたフランジ3B1には貫通穴3B12が設けられ、下半部3Aに設けられたフランジ3A1にはネジ穴3A12が設けられる。そして、上半部3Bのフランジ3B1に設けられた貫通穴3B12に挿入されたボルトBTが下半部3Aのフランジ3A1に設けられたネジ穴3A12に嵌合することによって下半部3Aに上半部3Bが接合される。よって、下半部3Aに設けられたフランジ3A1や上半部3Bに設けられたフランジ3B1には静止部材3の径方向外側から内側に貫通する穴を設けることができない。
【0046】
本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1では、静止部材3が静止部材3の周方向において複数に分割される場合に、静止部材3を貫通する穴31のうち、静止部材3の分割面3abに隣り合う穴31Eの中心軸線CNは、静止部材3の径方向内側に向けて静止部材3の分割面3ab側に傾いている。
【0047】
例えば、
図5に示すように、静止部材3が静止部材3の径方向に延びる分割面3abで分割される少なくとも二つの構成部材によって構成される場合に、静止部材3を貫通する穴31のうち静止部材3の周方向において分割面3abに隣り合う穴31Eの中心軸線CNは静止部材3の径方向内側に向けて静止部材3の分割面3ab側に傾いている。
【0048】
上述した本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1によれば、圧縮機13から抽気された空気が、静止部材3の周方向において分割面3abに隣り合う穴31Eを通り、分割面3abの径方向内側に設置された外側シュラウド6の周方向端部61に向けて噴出するので、静止部材3の周方向において分割面3abの径方向内側に設置された外側シュラウド6の周方向端部61を効果的に冷却できる。
【0049】
図5から
図7に示す例では、
図7に示すように、外側シュラウド6のシール端部612が分割面3abを横切るように静翼セグメント5が配置され、
図5に示すように、分割面3abに最も近い外側シュラウド6の締結端部611に向かう穴31Eは、静止部材3の径方向に対してθだけ傾けて設けられる。よって、圧縮機13から抽気された空気(圧縮空気)を静止部材3の径方向外側に供給すれば、空気は穴31Eを通り分割面3abに最も近い外側シュラウド6の締結端部611に向けて噴出するので、分割面3abに最も近い外側シュラウド6の締結端部611を効率的に冷却できる。
【0050】
図5に示すように、本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1では、静止部材3を貫通する穴31は、静止部材3の周方向に設けられた複数の穴31である。複数の穴31は、穴31の中心軸線CNが静止部材3の径方向に配置された穴(第1穴)31A~31D,31F~31Gと、穴31の中心軸線CNが静止部材3の径方向に対して傾斜しており、かつ、静止部材3の径方向内側に向けて静止部材3の分割面3ab側に傾いている穴(第2穴)31Eと、を含む。
【0051】
上述した実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1によれば、圧縮機13から抽気された空気が、第1穴31A~31D,31F~31Gと第2穴31Eとを通り噴出するので、静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)の分割面3abの径方向内側に設置された外側シュラウド6の周方向端部61も効果的に冷却できる。
【0052】
図5に示すように、本実施形態に係るガスタービン10の静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)は、環状に形成された静止部材3の周方向において複数に分割され、静止部材3を構成する。静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)には、静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)の径方向外側から径方向内側に貫通する穴31が、静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)の周方向に複数設けられている。複数の穴31は、穴31の中心軸線CNが静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)の径方向に配置された穴(第1穴)31A~31D,31F~31Gと、穴31の中心軸線CNが静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)の径方向に対して傾斜しており、かつ、静止部材3の径方向内側に向けて静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)の分割面3ab側に傾いている穴(第2穴)31Eと、を含む。
【0053】
上述した実施形態に係る静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)によれば、圧縮機13から抽気された空気が、第1穴31A~31D,31F~31Gと第2穴31Eとを通り噴出するので、静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)の分割面3abの径方向内側に設置された外側シュラウド6の周方向端部61も効果的に冷却できる。
【0054】
図2に示すように、本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1では、静止部材3は、周方向において複数に分割された複数の静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)を有する。静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)は、周方向外側の面(外周面)から径方向外側に突出するダミーフランジ3A2,3B2を有する。尚、静止部材3は、静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)の各々にダミーフランジ3A2,3B2を有するものであってもよいが、少なくとも一つの静止部材セグメント(上半部3B(下半部3A))にダミーフランジ(3A3B)を有するものであってもよい。
【0055】
図8に示すように、ダミーフランジ3B2(3A2)に設けられる穴31P,31Qの中心軸線CNは、静止部材3の径方向に対して傾いている。
【0056】
上述した本実施形態に係るガスタービンの静翼組立体1によれば、圧縮機13から抽気された空気が、ダミーフランジ3B2(3A2)に設けられ、静止部材3の径方向に対して傾いた穴31P,31Qを通り噴出するので、ダミーフランジ3B2(3A2)の径方向内側に設置された外側シュラウド6の周方向端部61を効果的に冷却できる。
【0057】
図8に示す例では、静止部材3のダミーフランジ3B2(3A2)に設けられる一の穴31Pは、外側シュラウド6の締結端部611に向けて、静止部材3の径方向に延びる垂直面(水平面HZと直交する面)と平行に設けられる。よって、圧縮機13から抽気された空気(圧縮空気)を静止部材3の径方向外側の空間Xに供給すれば、空気は一の穴31Pを通りダミーフランジ3B2(3A2)の径方向内側に設置された外側シュラウド6の締結端部611に向けて噴出するので、ダミーフランジ3B2(3A2)の内側に設置される外側シュラウド6の締結端部611を効果的に冷却できる。また、
図8に示す例では、静止部材3のダミーフランジ3B2(3A2)に設けられる他の一の穴31Qは、外側シュラウド6のシール端部612に向けて、静止部材3の径方向に延びる垂直面(水平面HZと直交する面)と平行に設けられる。よって、圧縮機13から抽気された空気(圧縮空気)を静止部材3の径方向外側に供給すれば、空気は他の一の穴31Qを通りダミーフランジ3B2(3A2)の径方向内側に設置された外側シュラウド6のシール端部612に向けて噴出するので、ダミーフランジ3B2(3A2)の内側に設置される外側シュラウド6のシール端部612を効果的に冷却できる。
【0058】
図9に示すように、ダミーフランジ3B2(3A2)から外れた位置に穴31が設けられる静止部材3では、ダミーフランジ3B2(3A2)に隣り合う穴31p,31rの中心軸線CNは、静止部材3の径方向内側に向けてダミーフランジ3B2(3A2)側に傾いている。
【0059】
このような構成によれば、圧縮機13から抽気された空気が、ダミーフランジ3B2(3A2)に隣り合う穴31p,31rであって、穴31p,31rの中心軸線CNが静止部材3の径方向内側に向けてダミーフランジ3B2(3A2)側に傾いている穴31p,31rを通り噴出するので、ダミーフランジ3B2(3A2)の径方向内側に設置された外側シュラウド6の周方向端部61を効果的に冷却できる。
【0060】
図9に示す例では、ダミーフランジ3B2(3A2)から外れた位置に設けられる穴31p,31rは、外側シュラウド6の締結端部611に向けて、静止部材3の径方向に延びる垂直面(水平面HZと直交する面)に対して傾いて設けられる。よって、圧縮機13から抽気された空気(圧縮空気)を静止部材3の径方向外側の空間Xに供給すれば、空気は穴31p,31rを通りダミーフランジ3B2(3A2)の径方向内側に設置された外側シュラウド6の締結端部611に向けて噴出するので、ダミーフランジ3B2(3A2)の内側に設置される外側シュラウド6の締結端部611を効果的に冷却できる。また、
図9に示す例では、静止部材3のダミーフランジ3B2(3A2)に設けられる穴31qは、外側シュラウド6のシール端部612に向けて、静止部材3の径方向に延びる垂直面(水平面HZと直交する面)と平行に設けられる。よって、圧縮機13から抽気された空気(圧縮空気)を静止部材3の径方向外側の空間Xに供給すれば、空気は一の穴31qを通りダミーフランジ3B2(3A2)の径方向内側に設置された外側シュラウド6のシール端部612に向けて噴出するので、ダミーフランジ3B2(3A2)の内側に設置される外側シュラウド6のシール端部612を効果的に冷却できる。
【0061】
本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1の製造方法は、上述したガスタービン10の静翼組立体1の製造方法であって、静止部材3の径方向外側から径方向内側に貫通する穴31の中心軸線CNが外側シュラウド6の周方向端部61に向くように静翼セグメント5を配置する。これにより、静止部材3の穴31の延長線上に外側シュラウド6の周方向端部が位置するように静止部材3に静翼セグメント5が設置される。
【0062】
上述した本実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1の製造方法によれば、静止部材3の径方向外側から径方向内側に貫通する穴31の中心軸線CNが外側シュラウド6の周方向端部61に向くように静翼セグメント5を配置するので、圧縮機13から抽気された空気が静止部材3の径方向外側から径方向内側に貫通する穴31を通り外側シュラウド6の周方向端部61に噴出する。これにより、燃焼ガスによって加熱された外側シュラウド6の周方向端部61を効果的に冷却できる。
【0063】
図10から
図12は、実施形態に係るガスタービン10の静翼組立体1A,1B,1Cに採用可能な静翼セグメント5X,5Y,5Zを示す展開図である。尚、
図10から
図12では、外側シュラウド6A,6B,6Cを便宜状直線状に表しているが、静止部材3の内周に沿って形成される円弧状に形成されるものである。
【0064】
図10に示す静翼セグメント5Xは、外側シュラウド6Aの周方向端部61Aの一方に締結部63Aが設けられ、他方に突出端部64Aが設けられた静翼セグメントである。締結部63Aの内側にはインピンジメント板69Aを取り付けるためのインピンジメント板取付段部68Aが設けられる。
【0065】
特に図示はしないが、かかる静翼セグメント5Xが採用されたガスタービン10の静翼組立体1Aでは、静止部材は、静止部材の径方向外側から締結端部611Aに向けて静止部材の径方向外側から径方向内側に貫通する穴を有する。かかるガスタービン10の静翼組立体1Aでは、圧縮機13から抽気された空気が外側シュラウド6Aの締結端部611Aに向けて噴出するので、特に冷却が必要となる外側シュラウド6Aの締結端部611Aを効率的に冷却できる。また、特に図示はしないが、ガスタービン10の静翼組立体1Aでは、更に、静止部材は、静止部材の径方向外側から突出端部64Aに向けて静止部材の径方向外側から径方向内側に貫通する穴を有していてもよい。かかるガスタービン10の静翼組立体1Aでは、圧縮機13から抽気された空気が外側シュラウド6Aの締結端部611Aのほか、突出端部64Aに向けて噴出するので、特に冷却が必要な外側シュラウド6Aの締結端部611Aのほか、冷却が必要な突出端部64Aを効率的に冷却できる。
【0066】
図11に示す静翼セグメント5Yは、外側シュラウド6Bのシール端部612Bの各々に突出端部64Bが設けられた静翼セグメントであり、突出端部64Bにはインピンジメント板69Aが架け渡されている。
【0067】
特に図示しないが、かかる静翼セグメント5Yが採用されたガスタービン10の静翼組立体1Bでは、静止部材の径方向外側から突出端部64Bに向けて静止部材の径方向外側から径方向内側に貫通する穴を有する。かかるガスタービン10の静翼組立体1Bでは、圧縮機13から抽気された空気が外側シュラウド6Bの突出端部64Bに向けて噴出するので、冷却が必要な外側シュラウド6Bの突出端部64Bを効率的に冷却できる。
【0068】
図12に示す静翼セグメント5Zは、外側シュラウド6Cのシール端部612Cが他の部分と同一の厚みを有する(静止部材側に突出する突出端部ではない)。かかる静翼セグメント5Zには箱状に形成されたインピンジメント板69Cが伏せた状態で設けられる。
【0069】
特に図示しないが、かかる静翼セグメント5Zが採用されたガスタービン10の静翼組立体1Cでは、静止部材は、静止部材の径方向外側からシール端部612Cに向けて静止部材の径方向外側から径方向内側に貫通する穴を有する。かかるガスタービン10の静翼組立体1Cでは、圧縮機13から抽気された空気が外側シュラウド6Cのシール端部612Cに向けて噴出するので、冷却が必要な外側シュラウド6Cのシール端部612Cを効率的に冷却できる。
【0070】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、静翼セグメント5は、一つのシュラウド6に一つの翼体7が設けられるものに限定されるものではなく、綴翼のように、一つのシュラウド6の周方向に二以上(複数)の翼体7が設けられていてもよい。
【0071】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば、以下のように把握される。
【0072】
[1]の態様に係るガスタービン(10)の静翼組立体(1)は、
環状に形成された静止部材(3)と、
シュラウド(6)と翼体(7)とが各々に設けられた複数の静翼セグメント(5)であって、前記静止部材(3)の径方向内側において前記静止部材(3)の周方向に沿って設置され、前記シュラウド(6)と前記静止部材(3)との間にキャビティ(CV)が設けられ、前記静止部材(3)の周方向において前記シュラウド(6)が互いに隣り合う複数の静翼セグメント(5)と、
を備え、
前記静止部材(3)は、前記静止部材(3)の径方向外側から径方向内側に貫通する穴(31)が設けられ、前記穴(31)の中心軸線(CN)は、前記シュラウド(6)の周方向端部(61)に向けて配置されている。
【0073】
本開示に係るガスタービン(10)の静翼組立体(1)によれば、圧縮機(13)から抽気された空気が静止部材(3)の径方向外側から径方向内側に貫通する穴(31)を通りシュラウド(6)の周方向端部(61)に噴出するので、燃焼ガスによって二面加熱される部分、すなわち、シュラウド(6)の周方向端部(61)を効果的に冷却できる。
【0074】
[2]別の態様に係るガスタービン(10)の静翼組立体(1)は、[1]に記載のガスタービン(10)の静翼組立体(1)であって、
前記シュラウド(6)の周方向端部(61)は、当該シュラウド(6)に隣り合う他のシュラウド(6)に締結部材(65)によって締結される締結端部(611)を含む。
【0075】
このような構成によれば、圧縮機(13)から抽気された空気が静止部材(3)の径方向外側から径方向内側に貫通する穴(31B,31D,31E,31F)を通りシュラウド(6)の締結端部(611)に向けて噴出するので、燃焼ガスによって二面加熱されるシュラウド(6)の締結端部(611)を効果的に冷却できる。
【0076】
[3]別の態様に係るガスタービン(10)の静翼組立体(1)は、[1]又は[2]に記載のガスタービン(10)の静翼組立体(1)であって、
前記シュラウド(6)の周方向端部(61)は、当該シュラウド(6)に隣り合う他のシュラウド(6)にシール部材(66)を介して接続されるシール端部(612)である。
【0077】
このような構成によれば、圧縮機(13)から抽気された空気が静止部材(3)の径方向外側から径方向内側に貫通する穴(31A,31C,31G)を通りシュラウド(6)のシール端部(612)に向けて噴出するので、燃焼ガスによって二面加熱されるシュラウド(6)のシール端部(612)を効果的に冷却できる。
【0078】
[4]別の態様に係るガスタービン(10)の静翼組立体(1)は、[1]から[3]のいずれか一つに記載のガスタービン(10)の静翼組立体(1)であって、
前記シュラウド(6)の周方向端部(61)は、前記静止部材側に突出する突出端部(64)を含む。
【0079】
このような構成によれば、圧縮機(13)から抽気された空気が静止部材(3)の径方向外側から径方向内側に貫通する穴(31)を通りシュラウド(6)の突出端部(64)に向けて噴出するので、燃焼ガスによって加熱されるシュラウド(6)の突出端部(64)を効果的に冷却できる。
【0080】
[5]別の態様に係るガスタービン(10)の静翼組立体(1)は、[1]から[4]のいずれか一つに記載のガスタービン(10)の静翼組立体(1)であって、
前記穴(31A~31D,31F,31G)の径方向内側の開口が前記静止部材(3)の径方向からみて前記シュラウド(6)の周方向端部(61)と前記周方向において重なる。
【0081】
このような構成によれば、圧縮機(13)から抽気された空気が静止部材(3)を径方向外側から径方向内側に貫通する穴(31A~31D,31F,31G)の径方向内側の開口からシュラウド(6)の周方向端部(61)に向けて噴出するので、燃焼ガスによって二面加熱されるシュラウド(6)の周方向端部(61)を効果的に冷却できる。
【0082】
[6]別の態様に係るガスタービン(10)の静翼組立体(1)は、[1]から[5]のいずれか一つに記載のガスタービン(10)の静翼組立体(1)であって、
前記静止部材(3)は、前記静止部材(3)の周方向において複数に分割され、
前記穴(31)は、前記静止部材(3)の分割面に隣り合う穴(31E)であって、前記穴(31E)の中心軸線(CN)は、前記静止部材(3)径方向内側に向けて前記静止部材(3)の分割面(3ab)側に傾いている。
【0083】
このような構成によれば、圧縮機(13)から抽気された空気が、静止部材(3)の分割面に隣り合う穴(31E)を通り、静止部材(3)の周方向において分割面(3ab)の径方向内側に設置されたシュラウド(6)の周方向端部(61)に向けて噴出するので、静止部材(3)の周方向において分割面(3ab)の径方向内側に設置されたシュラウド(6)の周方向端部(61)を効果的に冷却できる。
【0084】
[7]別の態様に係るガスタービン(10)の静翼組立体(1)は、[1]から[5]のいずれか一つに記載のガスタービン(10)の静翼組立体(1)であって、
前記穴は、前記静止部材の周方向に設けられた複数の穴であって、
前記複数の穴は、
前記穴の中心軸線(CN)が前記静止部材の径方向に配置された第1穴(31A~31D,31F~31G)と、
前記穴の中心軸線(CN)が前記静止部材の径方向に対して傾斜しており、かつ、前記静止部材の径方向内側に向けて前記静止部材の分割面側に傾いている第2穴(31E)と、を含む。
【0085】
このような構成によれば、圧縮機(13)から抽気された空気が、第1穴(31A~31D,31F~31G)と第2穴(31E)とを通り噴出するので、静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)の分割面(3ab)の径方向内側に設置されたシュラウド(6)の周方向端部(61)も効果的に冷却できる。
【0086】
[8]別の態様に係るガスタービン(10)の静翼組立体(1)は、[1]から[5]のいずれか一つに記載のガスタービン(10)の静翼組立体(1)であって、
前記静止部材は、周方向において複数に分割された複数の静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)を有し、
前記静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)の少なくとも1つは、前記周方向における中央部分の前記径方向外側の面から前記径方向外側に突出する中央突出部(ダミーフランジ3B2(3A2))を有し、
前記穴は、前記中央突出部(ダミーフランジ3B2(3A2))に隣り合う穴であって、前記穴の中心軸線(CN)は、前記静止部材の径方向内側に向けて前記中央突出部(ダミーフランジ3B2(3A2))側に傾いている。
【0087】
このような構成によれば、圧縮機(13)から抽気された空気が、中央突出部(ダミーフランジ3B2(3A2))に隣り合う穴(31r、31p)であって、穴の中心軸線(CN)が静止部材の径方向内側に向けて中央突出部(ダミーフランジ3B2(3A2))側に傾いている穴(31r、31p)を通り噴出するので、中央突出部(ダミーフランジ3B2(3A2))の径方向内側に設置されたシュラウド(6)の周方向端部を効果的に冷却できる。
【0088】
[9]の態様に係る静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)は、
環状に形成された静止部材(3)の周方向において複数に分割され、前記静止部材(3)を構成する静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)であって、
前記静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)の径方向外側から径方向内側に貫通する穴(31)が、前記静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)の周方向に複数設けられ、
複数の前記穴(31)は、前記静止部材(3)の径方向に配置された第1穴(31A~31D,31F~31G)及び第2穴(31E)を含み、
前記第2穴(31D)は、前記静止部材(3)の径方向内側に向けて前記静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)の分割面(3ab)側に傾いている。
【0089】
このような構成によれば、圧縮機(13)から抽気された空気が、第1穴(31A~31D,31F~31G)及び第2穴(31E)を通り噴出するので、静止部材セグメント(下半部3A,上半部3B)の分割面(3ab)の径方向内側に設置されたシュラウド(6)の周方向端部(61)も効果的に冷却できる。
【0090】
[10]の態様に係るガスタービン(10)の静翼組立体1の製造方法は、
環状に形成された静止部材(3)と、
シュラウド(6)と翼体(7)とが各々に設けられた複数の静翼セグメント(5)であって、前記静止部材(3)の径方内側において前記静止部材(3)の周方向に沿って設置され、前記シュラウド(6)と前記静止部材(3)との間にキャビティ(CV)が設けられ、前記静止部材(3)の周方向において前記シュラウド(6)が互いに隣り合う複数の静翼セグメント(5)と、
を備えるガスタービン(10)の静翼組立体(1)の製造方法であって、
前記静止部材(3)に設けた前記静止部材(3)の径方向外側から径方向内側に貫通する穴(31)の中心軸線(CN)が、前記シュラウド(6)の周方向端部(61)に向くように前記静翼セグメント(5)を配置する。
【0091】
このような製造方法によれば、静止部材(3)の径方向外側から径方向内側に貫通する穴(31)の中心軸線(CN)がシュラウド(6)の周方向端部(61)に向くように静翼セグメント(5)を配置するので、圧縮機(13)から抽気された空気が静止部材(3)の径方向外側から径方向内側に貫通する穴(31)を通りシュラウド(6)の周方向端部に噴出する。これにより、燃焼ガスによって二面加熱される部分、すなわちシュラウド(6)の周方向端部(61)を効果的に冷却できる。
【符号の説明】
【0092】
1,1A,1B,1C ガスタービンの静翼組立体
3 静止部材
3ab 分割面
3A 下半部
3A1 フランジ
3A12 ネジ穴
3A2 ダミーフランジ(中央突出部)
3B 上半部
3B1 フランジ
3B12 貫通穴
3B2 ダミーフランジ(中央突出部)
31,31A~31G,31P,31Q,31p,31q,31r 穴
5,5A,5B,5X,5Y,5Z 静翼セグメント
6,6A,6B,6C 外側シュラウド(シュラウド)
61 周方向端部
611,611A 締結端部
612,612B,612C シール端部
621 前端側取付部
622 後端側取付部
63,63A 締結部
64,64A,64B 突出端部
65 締結部材
66 シール部材
68 インピンジメント板取付段部
69,69A,69B,69C インピンジメント板
7 翼体
8 内側シュラウド
10 ガスタービン
12 ロータ軸
121,123 軸受部
13 圧縮機
131 圧縮機ケーシング
133 圧縮機静翼
135 圧縮機動翼
137 取入口
139 吐出口
15 燃焼器
151 燃焼器ケーシング
153 燃焼筒
155 尾筒
157 給気口
17 タービン
171 タービンケーシング
175 タービン動翼
177 排気室
179 ディフューザ