(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】リンギング制約を伴うスロットダイ位置調整
(51)【国際特許分類】
B05D 1/28 20060101AFI20240531BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B05D1/28
B05D3/00 D
(21)【出願番号】P 2023534895
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(86)【国際出願番号】 IB2020061688
(87)【国際公開番号】W WO2022123296
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-07-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】セコー,ロバート ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ヤペル,ロバート エー.
(72)【発明者】
【氏名】ガラシ,ニコラス エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ロウクサ,ペンティ ケー.
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ポール シー.
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ホルトカンプ,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】コスタッチ,グレゴリー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】エーラース,アルンド
(72)【発明者】
【氏名】ダーデル,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】レンヴィーユ,ダスティン ジェイ.
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-089146(JP,A)
【文献】特開2000-094497(JP,A)
【文献】特開平01-295822(JP,A)
【文献】特開平05-131527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/28
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットダイを調整する方法であって、前記スロットダイは、前記スロットダイの幅に沿って延びるアプリケータスロットであって、前記スロットダイを通る流体流路と流体連通しているアプリケータスロットと、チョーカーバー及び可撓性ダイリップからなる群のうちの少なくとも1つと、前記スロットダイの前記幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップに動作可能に結合されて、各アクチュエータのそれぞれの位置でスロット又はチョーカーバーの高さプロファイルを調整し、前記アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、を備え、前記方法は、
前記アプリケータスロットから提供される押出物の厚さ値を測定することと、
前記測定された厚さ値を前記スロットダイの前記幅に沿った対応する位置にマッピングすることと、
前記測定された厚さ値のデータ圧縮を実行して、前記測定された厚さ値の所望の厚さ値からの偏差を表す残差ベクトルを取得することと、
前記残差ベクトルに基づいて前記複数のアクチュエータのうちの1つ以上の位置を調整して、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップのための補正された形状を得ることと、を含み、前記調整することは、
前記残差ベクトルを使用して、提案されたアクチュエータ位置のセットについて予測されるリンギングの程度を決定することと、
次いでリンギング制約を適用して、前記予測されるリンギングの程度に対して前記リンギングの程度を低減する修正されたアクチュエータ位置のセットを取得することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記リンギングの程度が、前記スロット又はチョーカーバーの高さプロファイルの計算された曲率に従って予測される、請求項1に記載の方法
。
【請求項3】
1つ以上のアクチュエータが、アクチュエータ位置プロファイルをスロット又はチョーカーバーの高さプロファイルに変換する剛性行列に基づく個別アクチュエータ設定のセットに基づいて調整され、前記スロット又はチョーカーバーの高さプロファイルが、前記アプリケータスロットを通る流体流に起因するたわみの影響を除外する、請求項1
又は2に記載の方法
。
【請求項4】
押出物品の製造方法であって、
請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法に従ってスロットダイを調整することと、
前記スロットダイの前記アプリケータスロットを通して、前記調整されたスロットダイに基づいて押出物を押出して、前記押出物品を得ることと、
を含む、製造方法。
【請求項5】
スロットダイであって、
前記スロットダイの幅に沿って延びるアプリケータスロットであって、前記スロットダイを通る流体流路と流体連通しているアプリケータスロットと、
チョーカーバー及び可撓性ダイリップからなる群のうちの少なくとも1つと、
前記スロットダイの前記幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップに動作可能に結合されて、各アクチュエータのそれぞれの位置でスロット又はチョーカーバーの高さプロファイルを調整し、前記アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、
を含むスロットダイと、
前記アプリケータスロットから提供される押出物の厚さ値を受信し、前記受信した厚さ値を前記スロットダイの前記幅に沿った対応する位置にマッピングし、前記受信した厚さ値のデータ圧縮を実行して、前記受信した厚さ値の所望の厚さ値からの偏差を表す残差ベクトルを取得し、前記残差ベクトルに基づいて前記複数のアクチュエータのうちの1つ以上の位置を調整して、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップの補正された形状を得るように構成されたコントローラであって、前記調整が、前記残差ベクトルを使用して、提案されたアクチュエータ位置のセットについて予測されるリンギングの程度を決定することと、次いでリンギング制約を適用して、前記予測されるリンギングの程度に対して前記リンギングの程度を低減する修正されたアクチュエータ位置のセットを取得することと、を含む、コントローラと、
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットダイ、並びにそれに関連するアセンブリ、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スロットダイは、アプリケータスロットを形成するダイリップを含む。アプリケータスロットの幅は、移動するウェブの幅、又はフィルムなどの押出物を受け取るローラの幅に沿って延びることができる。本明細書で使用されるとき、スロットダイ及びスロットダイの構成要素に関して、「幅」は、スロットダイ及びその構成要素のクロスウェブ(又はクロスローラ)寸法を指す。この点に関して、スロットダイのアプリケータスロットは、スロットダイの幅に沿って延びる。
【0003】
スロットダイは、一般に、押出物、コーティング、及び他の押出物品を形成するために使用される。例として、スロットダイは、移動する可撓性基材つまり「ウェブ」に液体材料を塗布するためのスロットダイコーティングにおいて使用することができる。スロットダイコーティングの技術には多くのバリエーションがある。一例として、コーティング材料は、室温又は制御された温度であってもよい。コーティング材料が処理のために溶融又は液化されることを確実にするためにコーティング材料温度が上昇される場合、これは、しばしば「ホットメルト」コーティングと呼ばれる。他の例では、コーティング材料は、溶媒希釈剤を含むことができる。溶媒は、水、有機溶媒、又はコーティングの成分を溶解若しくは分散させる任意の好適な流体であってもよい。溶媒は、典型的には、乾燥によってなど、後続の処理において除去される。コーティングは、単一又は複数の層を含むことができ、いくつかのスロットダイを使用して、複数の層を同時に塗布することができる。コーティングは、ダイの幅にわたる連続コーティングであってもよく、又は代わりに、ストリップから構成されてもよく、各ストリップは、ダイの幅の一部分のみにわたって延び、隣接するストリップから分離されている。
【0004】
スロットダイはまた、薄膜押出物又は他の押出物を含む押出物を形成するために使用される。いくつかの例では、押出物は、押出コーティングであってもよく、ウェブ基材に適用されてもよく、このプロセスは、押出コーティングと呼ばれることがある。他の例では、押し出された材料は、フィルム又はウェブを直接形成する。押し出されたフィルムは、その後、長さ延伸又は幅出し操作によって加工されてもよい。コーティングと同様に、押出物は、単一層又は複数層を含んでもよい。
【0005】
フィルム又はコーティングなどの押出物の厚さは、他の要因の中でも、スロットダイを通る押出物の流量に依存する。一例では、スロットダイは、所望の厚さプロファイルを提供するために、スロットダイを通る押出物の流量を局所的に調整するために使用することができる調整可能なチョーカーバーを流路内に含むことができる。スロットダイはまた、所望の厚さプロファイルを提供するために、アプリケータスロット自体の断面高さ(すなわち、スロット高さ)を局所的に調整し、アプリケータスロットからの押出物の流量を制御するために使用することができる、可撓性ダイリップを含むことができる。
【0006】
スロットダイは、押出物に所望の厚さプロファイルを提供するために、アプリケータスロットの幅に沿って離間した複数のアクチュエータを含んでもよい。例えば、各アクチュエータは、チョーカーバー又は可撓性ダイリップの局所的な位置調整を提供するように構成することができる。スロットダイを使用する押出プロセスの過程で、押出物のクロスウェブプロファイルを測定することができる。次いで、各アクチュエータは、アプリケータスロットの幅にわたって押出物に均一な厚さなどの所望の厚さプロファイルを提供するように、個々に調整することができる。
【発明の概要】
【0007】
本明細書に記載されるのは、剛性行列及びその逆行列を使用して、アクチュエータ設定をスロットダイプロファイルに効率的かつ正確に変換し、逆もまた同様である、改善された方法である。逆剛性行列を使用して1つの位置のみでスロット高さに対する調整を行う場合、計算された解が「リンギング」と呼ばれる現象を示す傾向がある。リンギングは、隣接するアクチュエータがスロット高さ調整の位置の隣で大きな規模で反対方向に移動するときに生じる望ましくない状態である。これは、隣接するアクチュエータが同じチョーカーバー又は可撓性ダイリップに物理的に接続されており、したがって協働して移動しなければならないために生じる。激しいリンギングは、アクチュエータを不必要にそれらの力及び曲げ限界に到達させ、それによって、この自動化システムを使用して達成することができるコーティング均一性の程度を制限する可能性がある。
【0008】
コントローラが、リンギング制約を使用して、リンギングを引き起こすアクチュエータの移動に数学的に「ペナルティを課す」解決策が提供される。この構成の下で、リンギングの程度は、定量化され、リンギングをある値未満にするアクチュエータ設定のための解決策は、スロットギャップ精度におけるある小さな偏差を受け入れることと引き換えに受け入れることができる。リンギング制約は、提供される制御システムを使用して達成可能な効率、ロバスト性、及びコーティング均一性を更に支援することができる。
【0009】
第1の態様では、スロットダイを調整する方法が提供される。スロットダイは、スロットダイの幅に沿って延びるアプリケータスロットであって、スロットダイを通る流体流路と流体連通しているアプリケータスロットと、チョーカーバー及び可撓性ダイリップからなる群のうちの少なくとも1つと、スロットダイの幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、チョーカーバー又は可撓性ダイリップに動作可能に結合されて、そのそれぞれの位置でスロット又はチョーカーバーの高さプロファイルを調整し、アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、を備える。本方法は、アプリケータスロットから提供される押出物の厚さ値を測定することと、測定された厚さ値をスロットダイの幅に沿った対応する位置にマッピングすることと、測定された厚さ値のデータ圧縮を実行して、測定された厚さ値の所望の厚さ値からの偏差を表す残差ベクトルを取得することと、残差ベクトルに基づいて複数のアクチュエータのうちの1つ以上の位置を調整して、チョーカーバー又は可撓性ダイリップのための補正された形状を得ることと、を含み、調整することは、残差ベクトルを使用して、提案されたアクチュエータ位置のセットについて予測されるリンギングの程度を決定することと、次いでリンギング制約を適用して、予測されるリンギングの程度に対してリンギングの程度を低減する修正されたアクチュエータ位置のセットを取得することと、を含む、ことと、を含む。
【0010】
第2の態様では、スロットダイを調整する方法であって、スロットダイは、スロットダイの幅に沿って延びるアプリケータスロットであって、スロットダイを通る流体流路と流体連通しているアプリケータスロットと、チョーカーバー及び可撓性ダイリップからなる群のうちの少なくとも1つと、スロットダイの幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、チョーカーバー又は可撓性ダイリップに動作可能に結合されて、そのそれぞれの位置でスロット又はチョーカーバーの高さプロファイルを調整し、アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、を備え、方法は、アプリケータスロットから提供される押出物の厚さ値を測定することと、測定された厚さ値をスロットダイの幅に沿った対応する位置にマッピングすることと、測定された厚さ値のデータ圧縮を実行して、測定された厚さ値の所望の厚さ値からの偏差を表す残差ベクトルを取得することと、残差ベクトルに基づいて複数のアクチュエータのうちの1つ以上の位置を調整して、チョーカーバー又は可撓性ダイリップの補正された形状を得ることと、を含み、調整することは、スロット又はチョーカーバーの高さ制約を適用して、それによって、1つ以上の調整されたアクチュエータ位置が、チョーカーバー又は可撓性ダイリップの対応する部分に沿って平均現在スロット又はチョーカーバー高さを維持するように予測されることを含む、方法が提供される。
【0011】
第3の態様では、スロットダイを調整する方法であって、スロットダイは、スロットダイの幅に沿って延びるアプリケータスロットであって、スロットダイを通る流体流路と流体連通しているアプリケータスロットと、チョーカーバー及び可撓性ダイリップからなる群のうちの少なくとも1つと、スロットダイの幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、チョーカーバー又は可撓性ダイリップに動作可能に結合されて、そのそれぞれの位置でスロット又はチョーカーバーの高さプロファイルを調整し、アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、を備える、方法が提供される。本方法は、アプリケータスロットから提供される押出物の厚さ値を測定することと、測定された厚さ値をスロットダイの幅に沿った対応する位置にマッピングすることと、測定された厚さ値のデータ圧縮を実行して、測定された厚さ値の所望の厚さ値からの偏差を表す残差ベクトルを取得することと、残差ベクトルに基づいて複数のアクチュエータのうちの1つ以上の位置を調整して、チョーカーバー又は可撓性ダイリップの補正された形状を得ることと、を含み、厚さ値をスロットダイの幅に沿った対応する位置にマッピングすることが、押出物の1つ以上の横断縁部における位置変動を考慮するために、測定された厚さ値を拡張及び/又は調整することを含む。
【0012】
第4の態様では、押出物品の製造方法であって、前述の方法のうちの1つに従ってスロットダイを調整することと、スロットダイのアプリケータスロットを通して、調整されたスロットダイに基づいて押出物を押出して、押出物品を得ることと、を含む、製造方法が提供される。
【0013】
第5の態様では、システムが提供され、システムは、スロットダイであって、スロットダイの幅に沿って延びるアプリケータスロットであって、スロットダイを通る流体流路と流体連通しているアプリケータスロットと、チョーカーバー及び可撓性ダイリップからなる群のうちの少なくとも1つと、スロットダイの幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、チョーカーバー又は可撓性ダイリップに動作可能に結合されて、そのそれぞれの位置でスロット又はチョーカーバーの高さプロファイルを調整し、アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、を含むスロットダイと、アプリケータスロットから提供される押出物の厚さ値を受信し、受信した厚さ値をスロットダイの幅に沿った対応する位置にマッピングし、受信した厚さ値のデータ圧縮を実行して、受信した厚さ値の所望の厚さ値からの偏差を表す残差ベクトルを取得し、残差ベクトルに基づいて複数のアクチュエータのうちの1つ以上の位置を調整して、チョーカーバー又は可撓性ダイリップの補正された形状を得るように構成されたコントローラであって、調整が、残差ベクトルを使用して、提案されたアクチュエータ位置のセットについて予測されるリンギングの程度を決定することと、次いでリンギング制約を適用して、予測されるリンギングの程度に対してリンギングの程度を低減する修正されたアクチュエータ位置のセットを取得することと、を含む、コントローラと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】動作中の例示的なスロットダイであって、複数のアクチュエータを有するチョーカーバーを含み、各アクチュエータは、そのそれぞれの位置でスロット又はチョーカーバーの高さプロファイルを調整して、その位置での流体流の局所的な調整を提供するように動作可能である、スロットダイを示す図である。
【
図3】位置センサを含むアクチュエータアセンブリと、位置センサの出力に基づいてアクチュエータアセンブリの位置を選択するためのコントローラとを示す概略図である。
【
図4A】スロットダイの調整のための例示的なプロセスを示す概略図である。
【
図4B】スロットダイの調整のための例示的なプロセスを示す概略図である。
【
図5】所与の目標スロット高さプロファイルから得られるアクチュエータ位置について観察されるリンギング現象を示すチャートである。
【
図6】アクチュエータ設定プロファイルにリンギング制約を適用する効果を示すチャートである。
【
図7】例示的なスロットダイにおける基準点(すなわち、基準)アクチュエータ位置に対するアクチュエータ位置(単位)の偏差を示すチャートである。
【
図8】
図7のスロットダイの計算された可撓性ダイリッププロファイルを示すチャートである。
【
図9】
図7~
図8のスロットダイの中立(すなわち、静止)スロット高さプロファイルを示すチャートである。
【
図10】
図7~
図9のスロットダイ構成に基づく例示的なダイスロット調整プロセスを使用して作製されたコーティングの厚さプロファイルを示すチャートである。
【
図11】基準点スロット及び基準点アクチュエータ位置と共に、現在のアクチュエータ位置から計算された、計算されたダイスロット高さプロファイルを示すチャートである。
【
図12】アクチュエータ位置を決定するために使用される剛性行列を当てはめる異なる方法によってリンギングがどのように影響を受け得るかを示すチャートである。
【
図13】様々な押出ダイの正規化剛性パラメータを示すチャートである。
【0015】
明細書及び図面中の参照文字が繰り返して使用されている場合、本開示の同じ又は類似の特徴又は要素を表すことを意図している。当業者は多くの他の修正形態及び実施形態を考案することができ、それらは本開示の原理の範囲及び趣旨に含まれることを理解されたい。図は、縮尺通りに描かれていないことがある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用する場合、「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、一定の状況下で一定の利点をもたらすことができる、本明細書に記載の実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況下で好ましい場合がある。更にまた、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを示唆するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から除外することを意図するものでもない。
【0017】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、文脈上別段の明記がない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の指示物を含むものとする。したがって、例えば、「a」又は「the」が付いた構成要素への言及には、構成要素及び当業者に公知のその均等物のうちの1つ以上を含んでもよい。更に、「及び/又は」という用語は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0018】
「含む」という用語及びその変化形は、これらの用語が添付の記載に現れた場合、限定的意味を有しないことに注意されたい。また更に、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、本明細書では互換的に使用される。左、右、前方、後方、上部、底部、側、上方、下方、水平、垂直などの相対語が、本明細書において使用される場合があり、その場合、特定の図面において見られる視点からのものである。しかしながら、これらの用語は、記載を簡単にするために使用されるに過ぎず、決して本発明の範囲を制限するものではない。
【0019】
本明細書全体において、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」又は「ある実施形態」に対する言及は、その実施形態に関して記載される特定の特徴、構造、材料又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所にある「1つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」又は「実施形態では」などの句の出現は、必ずしも本発明の同一の実施形態に言及しているわけではない。該当する場合、商品名は、全て大文字で記載する。
【0020】
図1及び
図2は、スロットダイ10を示す。スロットダイ10は、上部ダイブロック2と下部ダイブロック3とを含む。上部ダイブロック2は、下部ダイブロック3と組み合わせて、スロットダイ10を通る流体流路を形成する。流体流路は、入口5と、ダイキャビティ4と、アプリケータスロット6とを含む。アプリケータスロット6は、上部ダイブロック2に取り付けられた回転ロッド12と下部ダイブロック3のダイリップ13との間にある。スロットダイ10は、そのアプリケータスロットに回転ロッド12を含むので、スロットダイ10は、回転ロッドダイと呼ばれることがある。
【0021】
スロットダイ10は、スロットダイ10内の流体流路の幅にわたって延びているチョーカーバー11を含む。一例として、チョーカーバー11におけるスロットダイ10内の流体流路の幅は、チョーカーバー11がアプリケータスロット6の幅に沿って延びるように、アプリケータスロット6の幅とほぼ同じであってもよい。アクチュエータアセンブリ200は、共通の取付ブラケット9に取り付けられており、スロットダイ10の幅に沿って離間している。いくつかの実施例では、取付ブラケット9は、セグメント化されていてもよく、例えば、取付ブラケット9は、各アクチュエータアセンブリ200のための別個の構造体を含んでもよい。各アクチュエータアセンブリ200は、スロットダイ10内の押出物の流体流路内のチョーカーバー11の位置を変更することによって、スロットダイ10の幅に沿ったそのそれぞれの位置でスロット又はチョーカーバーの高さプロファイルを調整し、アプリケータスロット6を通る流体流の局所的な調整を提供するように動作可能である。本明細書において、実施例及び説明における「スロット高さ」への言及は、類似のスロットダイ構成における「チョーカーバー高さ」と同等に扱うことができることを理解されたい。
【0022】
スロットダイ10の動作中、押出物は、流体流路入口5でスロットダイ10に入り、押出物がアプリケータスロット6を通って出て移動ローラ7に適用されるまで、ダイキャビティ4を含むスロットダイ10の流体流路を通って進み続ける。いくつかの実施形態では、押出物を、移動するウェブ(図示せず)に適用することができる。他の実施形態では、押出物をローラ7に直接適用することができる。任意選択的に、押出物及びウェブを一連のローラを通して搬送して、押出物を冷却することができる。
【0023】
1つ以上の追加のプロセスが、ローラ7の下流で押出物に対して行われてもよい。このようなプロセスとしては、延伸、コーティング、テクスチャリング、印刷、切断、圧延、及び積層が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかのプロセスでは、製造剥離ライナーを除去して、剥離ライナーを追加することができ、又は1つ以上の追加の層(積層転写テープなど)を追加することができる。硬化工程も行うことができ、e-ビーム、熱、又は紫外線(ultraviolet、UV)光などの化学線への曝露によって実施することができる。
【0024】
図2に示すように、スロットダイは、共通の取付ブラケット9に取り付けられた1組のアクチュエータアセンブリ200を含む。5つのアクチュエータアセンブリ200が示されているが、異なる数のアクチュエータアセンブリも可能である。各アクチュエータアセンブリ200は、チョーカーバー11に取り付けられている、又は他の方法でチョーカーバー11に係合されており、アクチュエータアセンブリ200は、チョーカーバー11の幅に沿って離間している。アクチュエータの各々は、そのそれぞれの位置でチョーカーバーの高さプロファイルを調整して、スロットダイ内の流体流路内のチョーカーバー11の位置の局所的な調整を提供するように動作可能である。
【0025】
図3に関して後述するように、アクチュエータアセンブリ200の各々は、リニアアクチュエータを駆動するモータを含むことができる。アクチュエータアセンブリ200の各々はまた、リニアアクチュエータの出力シャフトの位置移動を検出する、線形可変差動変圧器(linear variable differential transformer、LVDT)又はリニアエンコーダなどの精密センサを含むことができる。リニアアクチュエータアセンブリ200の出力シャフトは、各リニアアクチュエータアセンブリ200がチョーカーバーの局所位置を調整するように動作可能であるように、チョーカーバー11の幅に沿って離間している。以下で更に詳細に説明するように、各リニアアクチュエータの位置は、押出物の所望のクロスウェブプロファイルを提供するように個々に選択可能である。加えて、リニアアクチュエータアセンブリ200の位置は、スロットダイ10内のチョーカーバー11に隣接する流体流路の全断面積を調整することによって、スロットダイ10の動作中にダイキャビティ4内に所望のダイキャビティ圧力を提供するように正確に調整することができる。他の実施例では、各アクチュエータアセンブリ200の位置は、反復又はランダムパターン化特徴などのパターン化特徴を有する押出物を生成するように能動的に制御されてもよい。本明細書で言及されるとき、アクチュエータ又はアクチュエータアセンブリの位置への言及は、より具体的には、アクチュエータ出力シャフトの相対的配置を指すことが意図される。
【0026】
スロットダイ10の変形例も可能であり、その場合、アクチュエータアセンブリは、チョーカーバーの代わりに可撓性ダイリップ又は回転ロッドに係合されている。アクチュエータアセンブリはまた、アプリケータスロットの両側から流体流路の断面積を調整するために存在してもよい。これらの実施形態では、様々な組み合わせが可能であり、例えば、回転ロッドダイは、チョーカーバー及び可撓性ダイリップの両方を備えて構成することができ、各々は、回転ロッドダイの幅に沿って離間した複数のアクチュエータを介して正確に調整することができる。
【0027】
図3は、個々のアクチュエータアセンブリ200と、0バックラッシュカプラ240と、コントローラ300とを含むアセンブリを示す。
図1及び
図2に示すように、アクチュエータアセンブリ200は、例えば、スロットダイ10と同様にスロットダイ内の流体流路の高さを調整することによって、スロットダイの流体流路の局所的な調整を提供するために、スロットダイに使用されてもよい。
【0028】
アクチュエータアセンブリ200は、モータ210と、モータ210に結合されたリニアアクチュエータ220と、位置センサ230とを含む。一例として、モータ210は、ステッピングモータであってもよい。モータ210の出力シャフト(図示せず)は、リニアアクチュエータ220に機械的に結合されている。センサ230は、リニアアクチュエータ220の位置を感知する。例えば、センサ230は、LVDTセンサ又はリニアエンコーダであってもよい。センサ230は、クランプ232によってリニアアクチュエータ220の出力シャフト222に固定されており、リニアアクチュエータ220の出力シャフト222の相対位置を正確に測定する。他の実施例では、センサ230は、0バックラッシュカプラ240、ダイアクチュエータリンク機構252、可撓性ダイリップ32、回転ロッド22、又はチョーカーバー11を測定してもよい。アクチュエータアセンブリ200として使用するのに適したアクチュエータアセンブリは、Honeywell International Incorporated(Morristown,New Jersey)から入手可能である。
【0029】
コントローラ300は、一般に専用コンピュータであり、モータ210及びセンサ230の両方から位置入力を受信する。例えば、モータ210は、ステッピングモータであってもよく、ステッピングモータの既知の基準位置からステッピングモータが取った「ステップ」の数の指標を提供してもよい。センサ230は、モータ210によって提供されるよりも正確な位置情報をコントローラ300に提供することができる。コントローラ300は、モータ210に命令を与えて、アクチュエータ220の出力シャフト222を予め選択された位置に駆動する。例えば、コントローラ300は、予め選択された位置に従ってアクチュエータ220の出力シャフト222を位置決めするために、モータ210を動作させながら、センサ230を用いてアクチュエータ220の出力シャフト222の位置を監視してもよい。いくつかの実施例では、コントローラ300は、1組のアクチュエータアセンブリ200を同時に又は順次に、のいずれかで制御することができる。例えば、コントローラ300は、
図2に示されるスロットダイ10のアクチュエータアセンブリ200の各々を制御することができる。
【0030】
スロットダイ10では、アクチュエータ220の出力シャフト222は、0バックラッシュカプラ240によってダイアクチュエータリンク機構252に有利に接続することができる。0バックラッシュカプラ240は、この実施例では、互いにねじ留めされる2つの半体、すなわち下半分242及び上半分244を含む。下半分242は、ねじでダイアクチュエータリンク機構252に直接取り付けられている。加えて、0バックラッシュカプラ240は、アクチュエータ220の出力シャフト222の端部にボルト留めされる積層突出アセンブリを含む。積層突出アセンブリは、絶縁ディスク248を取り囲む2つの金属ディスク246を含む。一例として、絶縁ディスク248は、セラミック材料を含むことができる。下半分242及び上半分244は、組み合わされて、アクチュエータ220の出力シャフト222の端部にボルト留めされた金属ディスク246及び絶縁ディスク248を含む積層突出アセンブリを取り囲む。上半分244が下半分242にしっかりとねじ留めされると、アクチュエータ220の出力シャフト222は、0バックラッシュカプラ240及びダイアクチュエータリンク機構252に効果的に接続される。
【0031】
0バックラッシュカプラ240は、アクチュエータアセンブリ200をスロットダイから熱的に分離するように機能する。具体的には、絶縁ディスク248は、アクチュエータ220の出力シャフト222とダイアクチュエータリンク機構252との間の金属間接触経路を著しく制限する。これは、スロットダイの損傷熱からアクチュエータアセンブリ200を保護するのに役立つ。例えば、スロットダイは、通常、300°F(149℃)を超える温度で動作する。これに対して、モータ210及びセンサ230を含むアクチュエータアセンブリ200の構成要素は、130°F(54℃)を超える温度に曝されたときに、機能の制限又は更には永久的な損傷を受ける可能性がある。このため、0バックラッシュカプラ240は、アクチュエータアセンブリ200の温度を130°F(54℃)以下に維持するように機能することができる。いくつかの実施例では、金属ディスク246はまた、アクチュエータ220の出力シャフト222とダイアクチュエータリンク機構252との間に金属間接触がないように、非金属材料から形成することができる。そのような特徴は、アクチュエータアセンブリ200をスロットダイハウジングから更に熱的に分離することができる。
【0032】
ここでは全体が記載されていないが、アクチュエータアセンブリ200は、米国特許第9,044,894号(Loukusaら)、同第9,216,535号(Triceら)、同第9,579,684号(Yapelら)、及び同第9,744,708号(Loukusaら)の他の場所に記載されているように、更なる選択肢及び利点を含むことができる。
【0033】
代替のアクチュエータ機構が可能である。他の実施形態では、アクチュエータ機構は、熱的に調整可能なボルト、差動ボルト、圧電アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、及び/又は油圧アクチュエータのうちの1つ以上を含む。一実施形態では、アクチュエータ機構は、熱的に調整可能なボルトを含み、スロットダイを熱的に調整可能なボルトで改造するための技術は、押出物がアプリケータスロットを出た後の押出物のクロスウェブプロファイルを評価することと、押出物がアプリケータスロットを出た後の押出物のクロスウェブプロファイルが予め選択されたクロスウェブプロファイルにより厳密に一致するように、アクチュエータ機構のうちの1つ以上の相対位置をそのそれぞれの熱的に調整可能なボルトで調整することとを含むことができる。
【0034】
例示的なアクチュエータ機構では、アプリケータスロットは、スロットダイの本体によって軸方向に変位させられる作動ロッドとともに、支点としての回転シャフトによって支持されたレバーを使用して、可撓性ダイリップに押圧荷重又は引張荷重を印加することによって調整することができる。レバーの回転力は、作動ロッドの軸方向に沿った力に変換することができ、この軸方向の力が可撓性ダイリップに作用する押圧荷重又は引張荷重となる。レバーは、レバーの作用点で作動ロッドに力を直接加えることができる。
【0035】
別の実施例では、熱的に調整可能なボルトが、可撓性ダイリップ上に配置されたそれぞれの熱電素子に結合された複数の調整ピンを使用して、アプリケータスロットを自動的に調整する。熱電素子は、熱電素子の膨張又は収縮を通じて対応する調整ピンによって可撓性ダイリップに加えられる機械的力の作用を通じてアプリケータスロットを調整するために、コントローラによって制御可能であってもよい。更なる選択肢として、アクチュエータ機構は、同時に調整される少なくとも2つの調整ピン及び/又は熱電素子を提供することを含むことができる。
【0036】
上記の更なる態様は、他の変形例と共に、米国特許第9,700,911号(Nakano)及びPCT特許公開第WO2019/219724号(Colellら)に記載されている。
【0037】
図4Aは、目標押出物厚さプロファイルを達成するために、押出プロセスにおいてスロットダイの複数のアクチュエータの各アクチュエータの位置を漸進的に調整するための例示的なワークフロー400を示すフローチャートである。限定することを意図するものではないが、ワークフロー400は、押出動作中のスロットダイ10(
図1及び
図2)、アクチュエータアセンブリ200(
図3)、及びコントローラ300(
図3)に関して記載されている。様々な実施例では、記載される技術は、ストリップコーティング、フィルムスロットダイ、多層スロットダイ、ホットメルト押出コーティングダイ、ドロップダイ、回転ロッドダイ、接着剤スロットダイ、溶媒コーティングスロットダイ、水性コーティングダイ、スロット供給ナイフダイ、押出複製ダイ、真空接触ダイ、又は他のスロットダイにも利用することができる。
【0038】
ワークフロー400の最初のステップは、スロットダイのアプリケータスロットから得られた押出物に対するプロファイル測定(ブロック402)を提供することである。既知の測定技術は、ベータゲージの使用を含む。ベータゲージは、放射性同位体源(例えば、プロメチウム、クリプトン、又はストロンチウムに基づく)から放出された放射線をウェブに透過させ、結果として生じるベータ粒子の減衰を検出することによって、ウェブの正規化質量を測定する。ベータゲージの測定フットプリントは小さいので、プロファイル測定は、ウェブの幅にわたって様々な位置で行われ、ウェブに沿って取られた測定間の時間差を考慮するために経時的に追跡される。完全なプロファイル測定は、統計的有意性を有するために、いくつかのスキャン(潜在的に、6つ以上のスキャン)の平均化を必要とすることがある。
【0039】
UV蛍光、レーザ三角測量などの直接厚さ測定、ガンマ後方散乱などの反射法、及び静電容量ベースのキャリパー(すなわち、ウェブ厚さ)感知に基づくものを含む、代替的な計測方法も利用可能である。これらの方法のいくつかは、ウェブの全幅にわたるウェブ厚さプロファイルを一度に捕捉することができる。コーティング厚さをその全幅に沿って一度に測定しながら、本明細書に記載されるワークフロー400を適用することにより、従来のスキャンベースの計測方法を使用するワークフローと比較して、サイクル時間に4倍~12倍の改善を提供することができると判定された。
【0040】
プロファイル測定からのデータは、一般に、各クロスウェブスキャンに対する多数の個別の測定値を含む。測定システムは、生の個別の測定値をより少数のデータ値に処理することができ、すなわち、以下の式1によって定義されるようなクロスウェブ及びダウンウェブ平均化の形態を本質的に利用することができる。
【0041】
【数1】
式中、粗粒度測定値M
iは、特定のクロスウェブゾーンΔx及びダウンウェブ距離Δzにわたる平均値を表し、tは、そのクロスウェブゾーンΔx及びダウンウェブ距離Δz内の厚さ測定値を表し、j及びkは、クロスウェブ方向及びダウンウェブ方向それぞれに沿った行列インデックスである。
【0042】
提供される技術は、連続フルウェブコーティング押出物及びストライプコーティング押出物の両方に使用することができる。フルウェブコーティングでは、多数の測定値は、コーティングされた幅全体を表す。ストライプコーティングの場合、測定された厚さ値は、クロスウェブ方向に沿って互いに離間した複数のコーティングされた領域に対応し、その結果、測定値は、コーティングされたストライプのみをカバーし、その間のコーティングされていないレーンをカバーしない。
【0043】
図4Aに戻って参照すると、次のステップは、これらのプロファイル測定のウェブからダイへのマッピング(ブロック404)を実行することである。ゲージ測定値をダイにマッピングするときに、特定の仮定を行うことができる。第1に、最新の計測システムはエッジ検出を有するので、プロファイル測定から受信されるデータはエッジからエッジへ取られると仮定することができる。第2に、ゲージデータは実際の押出物重量/厚さに直接対応すると仮定される。ウェブが剥離ライナー上に配置される場合、剥離ライナーの坪量が差し引かれ、データはコーティング重量のみを表すと仮定される。最後に、簡単にするために、押出ウェブの両縁部から対称なネックインがあると仮定する。
【0044】
粗粒度測定値の数及び位置は、ダイリップアクチュエータの数及び位置と異なる場合があり、したがって、測定値をアクチュエータ位置にマッピングする一般的な方法が望ましい。フィルムネックイン計算は、異なる流量、延伸距離、及びウェブ速度の影響を考慮することができる。一実施形態では、物理単位(例えば、ミリメートル)でのコーティングされたウェブ座標は、クロスウェブ単位での座標にマッピングされる(例えば、単純アクチュエータ座標では、アクチュエータ#1は1の座標を有し、アクチュエータ#2は2の座標を有するなど)。このプロセスは、コーティング測定アレイ番号から、物理的なコーティングされたウェブ位置へのマッピングを可能にし、次いで、ウェブからダイへのマッピング関数を介して物理的なダイ位置へのマッピングを可能にする。ここで、コーティング測定アレイは、例えば、移動するウェブをスキャナが横断するたびに生成される厚さ測定値の最新のアレイを表すことができる。
【0045】
同様のステップを逆の順序で含むように、プロセスを反転させること(すなわち、ダイからウェブへのマッピング)も可能である。直接マッピングの代わりに、逆の手順は、コーティング測定アレイの補間を含むことができる。すなわち、コーティングされたウェブ上の対応する位置へのダイアクチュエータ位置の直接マッピング(ダイからウェブへのマッピング関数、すなわちウェブからダイへのマッピング関数の逆を介した)、続いて、実際の測定アレイ値に対するこの直接マッピングの補間(連続関数及び一次導関数を特徴とするエルミート三次多項式などの低次多項式補間)である。
【0046】
ウェブからダイへ又はダイからウェブへのいずれかのマッピング関数評価が計算上非効率的又は非実用的である場合、著しく速い応答時間を可能にする傾向があるので、逆の手順が好ましい可能性がある。加えて、物理座標の使用を完全に回避することによってマッピングを簡略化することが有用であり得る。最も単純なマッピングは、ダイアクチュエータ座標からコーティング測定アレイ座標(測定アレイ番号と比較した相対位置に基づくコーティングされたウェブ座標)へ直接であってもよい。この論理拡張は、(例えば、三次多項式補間を使用して)最も計算効率がよい可能性が高いが、物理座標系が関与しないので、理解の透明性が損なわれる可能性がある。
【0047】
適切なダイからウェブへ又はウェブからダイへのマッピング関数では、プロファイル制御方式の他の場所でこの関数を利用することが有利であり得る。例えば、マッピングは、コーティングビード流れ場を通したコントローラ利得又はアクチュエータ相互作用などの制御パラメータにおけるクロスウェブ変動を組み込むことができる。これは、製造経験に基づいた特別な方法で、又はコーティングビード流れ場の流体機械モデルを使用したより科学的な方法で行うことができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、このマッピングは、測定システムに既に組み込まれている任意のスキャン位置からダイボルト位置へのマッピングを組み込む。NDC Infrared Engineering Inc.(Irwindale,CA)からのプロファイル制御ソリューションなどの様々な市販のシステムがウェブからダイへのマッピングを実行することができる。
【0049】
ウェブからダイへのマッピングステップに続いて、プロファイル制御戦略は、粗視化ステップと呼ばれることもあるデータ圧縮ステップ(ブロック406)に進む。通常、コーティング測定アレイは、リップアクチュエータよりも多くの要素を含む(20~40個のアクチュエータと比較して500~1000個の測定要素)。有利なことに、データ圧縮(ブロック406)は、特に複雑な機械的及び流体力学的相互作用を伴う場合、多次元プロファイルデータを処理する際に、計算効率を改善し、コントローラのより速い応答性を提供することができる。スケールの小さな変動をアクチュエータが影響を及ぼし得る変動のスケールに変換することができるため、データ圧縮は、「粗視化」と呼ばれることがある。
【0050】
アクチュエータゾーン及び測定ゾーンが共通座標系(一般にダイ位置に対応する)に沿って画定されると、2つの間の変換は、様々な方法を使用して実行することができる。
【0051】
1つの方法は、式2に従って定義される重なり行列OLの使用に基づく。
【0052】
【0053】
式中、S(a,x,l)は、クロスウェブ座標a、ゾーン位置x、及びゾーン幅lに依存する方形波関数である。上記の表記において、Aiは、i番目のアクチュエータゾーンのクロスウェブ座標であり、Gjは、j番目の測定ゾーンのクロスウェブ座標であり、wi
a及びwj
sは、それぞれ、クロスウェブ座標に沿って定義されるアクチュエータゾーンの幅及びスキャンベースのゾーンの幅である。
【0054】
この重なり行列は、影響のアクチュエータゾーンと測定ゾーンとの畳み込みを表す。この矩形行列は、各アクチュエータに対して1つの行を含み、各測定値に対して1つの列を含む。上記で使用される座標系(すなわち、座標a)は、アクチュエータ番号に基づくことができ、アクチュエータは、0からNact-1まで番号付けされ、ここで、Nactは、アクチュエータの総数である。アクチュエータ間の幅は、この座標系において1(unity)(すなわち、1)であり、各アクチュエータの影響ゾーンは、その位置から両方のクロスウェブ方向にアクチュエータ間隔の1/2だけ延びる。すなわち、アクチュエータjのゾーンは、j-1/2からj+1/2までである。これは、アクチュエータjについて上で定義された二乗関数S(a,j,1)によって表される。同様に、各測定値は、それに関連付けられたゾーンを有し、このゾーンは、通常、S(a,Mi,Dx)によって定義されるその値を構成するデータ点のクロスウェブゾーンDxである。
【0055】
ストライプをコーティングする場合、Dxは、測定値に関連付けられたストライプの幅を表すことができる。全幅コーティングでは、Dxは、コーティングのクロスウェブ幅全体を表すことができる。上記の式2を例示的なストライプコーティングに適用すると、アクチュエータゾーン幅
【0056】
【数3】
は、1であり得、w
j
sは、それぞれのストライプ幅であり得る。いずれの場合も、測定値M
jは、クロスウェブ座標aを基準とし、したがって、測定システムに固有の任意の位置マッピングを組み込む。
【0057】
ストライプ又は全幅コーティングについて上記の重なり行列を計算することによって、測定値を個々のアクチュエータに関連付けられた値に変換する一般的な方法を実現することができる。例えば、測定値Msの所与のアレイは、重なり行列によって単純に乗算して、以下の式3に従ってアクチュエータに関連付けられたアレイMaを作成することができる。
【0058】
【0059】
上記の式において、上付き文字aは、アクチュエータベースの値を示し、上付き文字sは、スキャンベースの値を示す。
【0060】
代替の方法も可能である。例えば、内挿法及び外挿法を使用して、測定ゾーンによる影響のアクチュエータゾーンを考慮することができる。例として、スプライン補間法を使用して、測定値を個々のアクチュエータにマッピングすることができる。
【0061】
表1(次のページ)は、2つの異なる方法を使用してストライプ位置とアクチュエータ位置との間でストライプ位置及びコーティング厚をどのように変換することができるかを示す。ここで、3番目の列は、測定されたコーティング厚さを表し、最後の列は、重なり行列マッピングデータを示す。このチャートは、各アクチュエータ位置に対するコーティング厚さの重なり行列マッピングを示す。5番目の列は、スプライン補間された値を示す。これらは、これらの値が2つの異なる方法を使用してマッピングされたという事実を反映して、重なり行列値と正確に一致しない。
【0062】
いくつかの実施形態では、厚さ値をスロットダイの幅に沿った対応する位置にマッピングすることは、押出物の1つ以上の横断縁部における位置変動を考慮するために、測定された厚さ値を拡張及び/又は調整することを含む。横断縁部は、押出物の全体的な最左縁部及び最右縁部だけでなく、ストライプコーティング押出プロセスにおける局所的縁部も含むことができる。
【0063】
一実装形態は、計測システムが、自動エッジ検出を使用して、押出プロセスの少なくともある部分の間にコーティングが存在しない結果として非物理的入力データを記録するときに適用される。この検出可能なコーティングの欠如は、コーティング縁部が経時的に左又は右に移動し、いくつかの位置に1つ以上の「0」厚さ値を記録させる場合に起こる傾向がある。これらの0を実際の厚さ値で平均化することを回避するために、任意の0値を、最も近い隣接する計測センサによって報告された最後の既知の厚さ値で自動的に置き換えることができる。
【0064】
押出物がスロットダイを出た後に長い延伸ゾーンが存在する場合に生じる傾向がある現象である、著しいダイネックインが存在する場合に、別の実装形態が適用される。これらの例では、ウェブからダイへのマッピングは、横幅の減少を反映するように厚さ値を再分配するだけでなく、測定された厚さ値を補間値で補うマッピング関数に従って実行することができる。これらの補間された厚さ値を含むための拡張により、横断方向に沿った厚さ測定値の十分な分解能が存在することを確実にすることができ、それによって、有意な押出物厚さデータが各アクチュエータゾーンに提供されることを可能にする。そのような拡張は、線形補間、台形マッピングルーチン、スプライン補間、又は測定ゾーンの幅にわたる厚さ測定値の均一な複製さえも含む、多くの形態をとることができる。
【0065】
【0066】
拡張の程度は、所与の押出プロセスに対する最小ゲージデータ分解能の計算に基づいて決定することができる。この有効ゲージ分解能は、例えば、ネックインの程度、マッピング関数、及び使用されるアクチュエータゾーンの幅に基づいて決定することができる。一般に、アクチュエータゾーンごとに少なくとも2つの厚さ測定値、より好ましくは3つ以上の厚さ測定値を有することが好ましい。
【0067】
次いで、ワークフロー400は、プロファイル偏差(ブロック408)を取得することに進む。1つの単純な技術は、コーティング重量測定値と所望のコーティング重量との間の差を用いた方形波畳み込みを使用する。方形波は、アクチュエータ位置の両側の1/2アクチュエータ間隔内で1の値を有し、他の場所では0の値を有する。アクチュエータ間の幅は、この座標系において1(unity)(つまり1)として定義される。この差は、以下の式4に従って各アクチュエータiについて計算することができる残差値Riのセットとして表すことができる。
Ri=∫Sq[Ai](tmeasured-tdesired)dX(式4)
式中、Sは、クロスウェブ座標Aiを中心とする一般化された方形波関数であり、tmeasured及びtdesiredは、測定されたコーティング重量及び所望のコーティング重量それぞれを表す。
【0068】
式4によれば、データ圧縮は、ダイで測定された押出物厚さの知識を、目標プロファイル(ブロック407)を定義する押出物厚さの所望のクロスウェブプロファイルに関する入力と組み合わせて、プロファイル偏差(ブロック408)を得る。したがって、残差ベクトルRは、現在のコーティング重量測定値が各アクチュエータ位置において目標プロファイル(ブロック407)からどのように逸脱するかの尺度を表す。
【0069】
目標プロファイル(ブロック407)は、オペレータによって手動で設定することができる、又は手近なアプリケーションのための制御アルゴリズムに従ってコントローラによって自動的に設定することができる。いくつかの用途では、平坦なプロファイルが望ましいが、他のプロファイルが好ましい状況もある。例えば、「ドッグボーン」形状の目標プロファイルは、ドローレゾナンス(draw resonance)又はエッジスカロッピング(edge scalloping)に関連するものなど、押出プロセスにおけるエッジ不安定性を制御するために望ましい場合がある。
【0070】
前述の方形波畳み込みは、実施するのが簡単であるが、流れ場物理学のいくつかの重要な態様を考慮しない。例えば、残差ベクトル要素と隣接するアクチュエータとの間に相互作用は存在しないが、流れ場の観点からは、広い影響ゾーンが存在し得る。一般に、単一のアクチュエータの移動は、相対的な流量を通じて全体的に流れ場に影響を及ぼし、他の例では、各アクチュエータの近傍において局所的に影響を及ぼす。
【0071】
アクチュエータ相互作用の強度及び範囲は、スロットダイの幾何形状及び構造、構成材料、コーティング液、コーティング方法、並びにコーティングビード流を含む様々な要因によって影響を受ける可能性がある。データ圧縮ステップにおいてアクチュエータ相互作用を捕捉する1つの方法は、流量感度畳み込みを使用して残差ベクトルを構築することであり、式5に示すように、∂tmeasured/∂DHiは、流量感度、すなわちスロット高さ(DH)の変化に対するコーティング重量t(押出物厚さ)の感度を示す。
【0072】
【0073】
この構成では、各残差ベクトル要素は、特定のアクチュエータのクロスウェブ位置におけるスロット高さに対するコーティング重量プロファイルのその部分の感度を表す。
【0074】
代替手法として、残差ベクトルは、フーリエ変換又はウェーブレット変換に基づくなど、フィルタリングの観点から提供することができる。その観点では、残差ベクトルは、コーティングプロファイルから除去されたときに所望の厚さプロファイルをもたらす特定のモードを含む。例えば、2つのパラメータ、ウェーブレット位置a、及びスケールσを有するウェーブレット変換は、以下の式6で与えられる。
Ri=Ψi(a,σ)=∫Ψi(a,σ)(tmeasured-tdesired)dX(式6)
【0075】
流量感度とウェーブレット変換畳み込みは、全く異なる可能性があるが、驚くべきことに、アクチュエータ移動に対する厚さ感度は、押出ダイのウェーブレット関数によって厳密に表すことができることが発見された。特に、Ricker Wavelet(その形状のために「メキシカンハットウェーブレット」と呼ばれることもある)は、スロットダイの側縁部に隣接しないアクチュエータのアクチュエータ移動に対する厚さ感度に非常に近い近似を提供する。
【0076】
Ricker Waveletの形状は、ウェーブレット全体が0の全体積分面積を有するようにx軸の上下両方に延びるので、独自の技術的利点を提供する。この形状は、特定のスロットダイについて、流体流が所与のアクチュエータ位置で増加するときに隣接するアクチュエータ位置で生じる流体流の減少を正確にシミュレートすることができる。
【0077】
ウェーブレット変換は、より局所化された情報を提供するので、フーリエ変換よりも潜在的により有用であり得る。フーリエ変換は、典型的には周波数情報のみを抽出するのに対して、ウェーブレット変換は、ウェーブレットスケール(波長に類似)及び位置の両方を抽出する。しかし、アクチュエータを用いてチョーカーバー又は可撓性ダイリップを制御する場合、特定のウェーブレット変換は、アクチュエータの近くで、かつアクチュエータ調整の規模と同じ一般的なスケールで調整を案内するのに特に有用である。有利なことに、ウェーブレットは、アクチュエータが仲介することができる厚さプロファイルの部分のみを捕捉するので、これは効率的な表現である。
【0078】
例示的なワークフローでは、所与のアクチュエータに対するウェーブレット位置は、アクチュエータを中心とし、ウェーブレットスケールは、計算された流量/アクチュエータ感度に基づき、その両方が、スロット高さプロファイルデータを変換する際に使用される。
【0079】
図4Aに戻って参照すると、残差ベクトルRが決定されると、次いで適切なスロット高さ調整を決定することができる(ブロック410)。目標プロファイル(ブロック407)を達成するのに適した可撓性ダイリップ又はチョーカーバーに係合された複数のアクチュエータに対する調整を予測するとき、ダイを通る流体流の影響を流体流が存在しないスロットダイに関する機械的影響から切り離すことを可能にする、圧力ダイたわみモデルを適用することが有利である。適切なモデルは、アプリケータスロットにわたる圧力プロファイルと、可撓性ダイリップ又はチョーカーバーにおける対応する圧力たわみ量とを予測することができる。場合によっては、この圧力に基づくたわみ(すなわち、圧力たわみD)を経験的に測定することが可能であり得る。
【0080】
圧力たわみは、それを計算されたスロット高さに加算することによって考慮することができ、合計は、アプリケータスロットを通して流れる流体による圧力たわみを含む、現在のスロット高さ(ブロック409)からの圧力補償されたスロット高さプロファイルと比較される。次に、たわみDの量の任意の変化(すなわち、DD)が小さいと仮定すると、流体のみに起因するたわみDを圧力補償されたスロット高さプロファイル(H+D)から減算して、0圧力スロット高さプロファイル(H)を得ることができ、それによって、目標アクチュエータ位置を計算するための関連(nexus)を提供する。
【0081】
例示的な方法では、圧力ダイたわみモデルは、スロット高さに対するコーティング厚さの局所依存性に基づく。これは、現在のスロット高さ付近のテイラー級数を導出することによってモデル化することができる。設定点からの小さな摂動のみが存在すると仮定すると、式7に示すように、線形項のみが保持される必要がある。
【0082】
【0083】
多くの小さなプロファイル補正が行われる場合、この線形化された形態で十分であり得る。しかしながら、迅速な制御のために、大きなプロファイル補正が必要とされる。残念ながら、これらの場合における線形化された形態の使用は、不安定な制御をもたらす可能性がある。
【0084】
一実施形態では、非線形制御方式は、相互作用しない状況で設定することができる。各アクチュエータについて、式8に従ってスロット高さに対する調整が行われる。
【0085】
【数7】
式中、ΔHは、スロット高さの変化であり、H
0は、現在のスロット高さであり、
【0086】
【0087】
【数9】
は、現在のコーティング厚さであり、Eは、流体のべき乗則指数に関する指数である。
【0088】
式8は、コーティングダイ幅にわたるD、又はダイたわみの予測を依然として必要とする。これは、式8Aを用いて得ることができる。
D=K0(1+K1x2+K2x4+K3x6)P (式8A)
式中、K1、K2、及びK3は、多項式係数であり、Pは、内部ダイキャビティ圧力であり、xは、ダイ中心から測定したときのアプリケータスロットに沿ったクロスウェブ位置である。
【0089】
式8Aを通して、圧力ダイたわみモデルは、ダイキャビティ圧力の影響を考慮するが、式8Aは、特定の仮定に基づいている。例えば、リップたわみは、ダイ中心線に関してほぼ対称であると仮定され、低次多項式で十分に近似される。多項式係数は、計算及び/又は測定によって提供することができる。可撓性ダイリップ又はチョーカーバーのたわみは、ダイキャビティ圧力に比例すると仮定することもできる。この仮定は、一般に、Pが実際のダイキャビティ圧力である場合には十分に正当化されるが、Pがダイのかなり上流で、例えば供給ホース又は配合機出口で測定される場合には、修正を必要とすることがある。更に、全てのダイが必ずしも対称的にたわむわけではなく(例えば、端部供給ダイはそうでない場合がある)、したがって、ダイたわみの異なる適切な相関モデルが、それらの事例において使用されることが認められる。
【0090】
可撓性ダイリップ構成の一実施形態では、ダイのたわみは、固定ダイリップ側及び可撓性ダイリップ側の両方のたわみを検出する測定インジケータのアレイを使用して特性化される。あるいは、テーパゲージを使用して、以下の複数の条件下:(1)流量及び圧力あり、(2)流量なし及び圧力なしでダイスロット高さを直接測定することができ、Dは、スロット高さ(1)からスロット高さ(2)を減算することによって計算される。
【0091】
有利なことに、この方式の非線形特性により、不安定な制御に遭遇することなく、比較的大きな補正を使用して迅速な制御が可能になる。しかし、流れ場を介して伝達されるアクチュエータ間の相互作用も組み込むことによって、制御ステップの数を更に低減することができる。
【0092】
好ましい実施形態では、上記の式6のウェーブレット関数によって表される厚さ感度を使用して、前の非線形関数形式と組み合わせることができ、式9に示すようなコーティング厚さの非線形相互作用形式を提供する。
【0093】
【0094】
通常のニュートン-ラフソンの状況では、アクチュエータ位置更新は、式10に反映されるように、流れ場アクチュエータ相互作用を組み込む以下の行列方程式の解を用いて進行する。
【0095】
【0096】
これは、ウェーブレット変換畳み込みが式11に示されるような流体流相互作用行列によって事前調整されていることを除いて、上記の非線形非相互作用形式と本質的に等価である。
【0097】
【0098】
その最終形態では、アクチュエータ更新は、式12に従ってスロット高さ調整を得るように進行することができる。
【0099】
【0100】
このプロファイル制御アルゴリズムの実際の流体の流体力学への依存性を完全にするために、指数Eは、スロット高さ変化に対する厚さ感度を正確に反映すべきである。市販の計算ソフトウェアによって与えられるマニホールド流量計算は、この情報を得ることができる。異なる規模のギャップ変化に対する流れ感度の計算を使用して、最も物理的に関連する指数Eを決定することができる。これは、異なるスロット高さの範囲にわたってコーティング厚さを測定し、式12Aの一般的なべき乗則流体関係を適用することによって得ることができる。
【0101】
【数14】
式中、所与のアクチュエータ位置について、h
1及びt
1は、スロット高さへの小さな摂動(又は「バンプ」)後のそれぞれのスロット高さ及びコーティング厚さであり、h
0及びt
0は、スロット高さへの小さな摂動(又は「バンプ」)前のそれぞれのスロット高さ及びコーティング厚さである(これらは、ワークフロー400から生じるスロット高さ及びコーティング厚さの変化を表さないことに留意されたい)。
【0102】
指数Eは、式8の関係に基づく曲線当てはめ法を使用して推定することができ、式8は、以下の式12Bに示すように再表現することができる。
【0103】
【0104】
曲線当てはめの実施例は、異なるスロットダイが異なるように挙動することができ、異なる指数をもたらすことを示す。このようにして、プロファイル制御アルゴリズムは、ダイ設計及び使用モードに応じて最適に実行するようにカスタマイズすることができる。
【0105】
次に、上記で得られたプロファイル偏差(ブロック408)及び現在のスロット高さ(ブロック409)の知識が与えられると、適切なスロット高さ調整(ブロック410)が決定される。ここで、現在のスロット高さ(ブロック409)は、圧力補正されたスロットプロファイルを作成するために、元のスロット高さプロファイル(圧力補正なし)及び圧力補正の両方を組み込む。スロット高さ調整(ブロック410)は、現在のスロット高さ(ブロック409)に対応する予測された0圧力スロット高さプロファイルを決定するために、式8及び式12の適用、並びに圧力補正の減算を伴う。
【0106】
上記で得られた0圧力スロット高さプロファイルを用いて、コントローラ300は、次いで、所望のスロット高さプロファイルを達成するために好適な個別アクチュエータ設定のセットを予測することができる。好ましい実施形態では、個別アクチュエータ設定のこのセットは、予め選択されたクロスウェブプロファイルに対応する複数のアクチュエータ設定に基づく。以下に説明するように、複数の個別アクチュエータ設定は、一連の予め選択されたクロスウェブプロファイルに対して決定することができ、それによって、アクチュエータ調整(ブロック412)を決定するために後で使用される予測モデルを提供する。
【0107】
様々な実施形態では、コントローラ300は、予め選択されたクロスウェブプロファイルを非一時的コンピュータ可読媒体から取り出してもよく、又は予め選択されたクロスウェブプロファイルをユーザ入力から受信してもよい。
【0108】
好ましい実施形態では、複数の個別設定及び/又は0圧力現在スロット高さ(ブロック409)からの個別設定の予測は、剛性行列と呼ばれる数学的構成を通じて得ることができる。
【0109】
剛性行列は、アクチュエータ位置プロファイルをスロット高さプロファイルに変換し、スロット高さプロファイルは、アプリケータスロットを通る流体流に起因するたわみの影響を除外する。調整可能なギャップが最終ダイスロット若しくはチョーカーバースロット、ナイフコータ、又はその他であるかにかかわらず、スロット高さプロファイルは、式13によって表される多数のクロスウェブ位置での経験的測定によって決定することができる。
hi≡h(xi)、iは1からNmまでの範囲である(式13)
式中、hiは、アクチュエータiの位置におけるスロット高さであり、xiは、クロスウェブ座標であり、Nmは、測定点の数である。
【0110】
これらの測定点におけるスロット高さの値は、ダイリップアクチュエータの位置に依存する。一般に、この依存性の関数形式は、式14のテイラー級数によって表すことができる。
【0111】
【数16】
式中、hは、スロット高さ測定値のベクトルであり、Aは、(アクチュエータ単位での)アクチュエータ設定のベクトルであり、h
0及びA
0は、スロット高さ測定値及びアクチュエータ設定それぞれの初期セットを指す。ベクトルhの長さは、N
mであり、ベクトルAの長さは、アクチュエータの総数N
aである。場合によっては、アクチュエータ単位は、実際の変位と本質的に同等である(例えば、1アクチュエータ単位=0.2マイクロメートル)。
【0112】
剛性行列Kは、上記の
【0113】
【数17】
として定義され、階数2のN
m×N
a行列であり、ヘッセ行列
【0114】
【数18】
は、階数3のN
a×N
m×N
a行列である。いくつかの実施例では、リップ移動の範囲は、一般に、ヘッセ行列成分及び高次項からの寄与が実質的に0であるように、線形弾性によって支配される範囲内にある。結果として、アクチュエータ位置の変化によるスロット高さの変化は、式15によって表されるように、剛性行列のみによって厳密に表すことができる。
【0115】
【0116】
剛性行列Kは、Nm×Naの成分を有し、j番目のアクチュエータ位置Ajの変化に起因する測定点xiにおけるスロット高さの変化を物理的に表す。ダイリップが無限に可撓性であった場合、剛性行列成分のほとんど全ては、アクチュエータ位置が測定点と一致する場合のみ0であり、剛性行列成分は、0ではない。測定点がアクチュエータと同じ位置にある場合、このシナリオでは、式16によって表されるように、剛性行列は、対角行列になる。
【0117】
【数20】
式中、Iは、単位行列であり、kは、アクチュエータ位置の変化をスロット高さの変化に変換する比例定数であり、各アクチュエータについて同じであり、δ
ijは、クロネッカーのデルタである。
【0118】
実際には、ダイリップ及びチョーカーバーは、無限に可撓性であるわけではなく、個々のアクチュエータにおける変化は、アクチュエータ位置の周りの領域におけるスロット高さを変化させる。この影響領域がどれだけ遠くまで延びるかは、対角線の非ゼロ成分からどれだけ遠くまで剛性行列に現れるかに反映される。このようにして、リップ剛性行列は、ダイの全幅にわたるアクチュエータ移動とスロット高さ変化との間の全ての相互作用をその成分に組み込む。
【0119】
ダイリップの剛性行列を経験的に測定することは、有限差分によって達成することができる。各アクチュエータが独立して変位されるときのダイスロット幅にわたるスロット高さ測定値間の差は、剛性行列の行を提供する。例えば、中心差分は、式17に示すように進行する。
【0120】
【0121】
式17においてΔjは、距離Δだけ、まず正方向に、続いて負方向に同様の変位だけ変位されたj番目のアクチュエータを除いて、全てのアクチュエータがそれらの初期位置にあることを意味する。変位の規模に対するこれら2つの設定でのスロット高さ測定値間の差は、剛性行列成分に対する中心差近似を提供する。この方法における中心差分は、順方向差分又は逆方向差分よりも高い精度を提供するが、2倍の測定を必要とする。異なる変位での追加の測定は、より高次の差分技術の使用を可能にするが、中心差分は、限られた労力で妥当な精度を与える。
【0122】
数値差分理論は、最も正確な剛性行列エントリを生成するために中心差分において使用されるべき最適な変位の規模があることを示唆している(Richard L.Burdenら、Numerical Analysis 131-133(2nd ed.)1981)。中心差分に内在する誤差は、変位サイズにおいて二次精度であり、すなわち、変位の二乗に比例する。しかし、スロット高さ測定は、それらに関連付けられた不確実性を有し、したがって、これらの誤差の両方が考慮されるとき、最適化されたアクチュエータ単位変位Δoptは、式18で与えられる。
【0123】
【0124】
式中、eは、スロット高さ測定誤差であり、Mは、ギャップ-アクチュエータ関係の3次導関数
【0125】
【0126】
典型的なバンプ試験では、スロット高さにおける約1ミル(25マイクロメートル)の変化のアクチュエータ変位が使用された。一般に、アクチュエータ間で著しい相互作用が発生し、アクチュエータ位置の変化は、2つ又は3つのアクチュエータだけ離れたスロット高さの変化をもたらした。いくつかの実施形態では、これは、帯剛性行列によって表される。多くの場合、帯剛性行列は、対称であると仮定することができる。例えば、行列は、行列の5つの対角線(主対角線+両側の2つの対角線)に沿ってのみ有意な非0成分を有することができる。国際特許公開第WO2012/170713号(Secorら)は、「バンプ試験」データをどのように使用して剛性行列を得ることができるかの例をより詳細に記載している。
【0127】
有利には、アプリケータスロットを通る流体流に起因するたわみの影響を除外して、アクチュエータ位置プロファイルをスロット高さプロファイルに変換する逆剛性行列も決定することができる。好都合なことに、逆剛性行列の当てはめは、剛性行列を当てはめるために使用されるものと同じバンプ試験測定値を使用して得ることができる。剛性行列及び逆剛性行列の両方を使用する直接変換を組み込むデュアルフィット法を実行することによって、リンギングを更に低減することができる。これは
図12に示されており、
図12は、剛性行列のみを含むシングルフィット法に対するデュアルフィット法を使用して達成された低減されたリンギングを示している。
図12には、式17に基づく直接生差分手法を使用して達成されたリンギングの低減も示されている。
【0128】
帯行列構造を得るために経験的バンプ試験データへの当てはめを実行する主な利点としては、計算効率、コンピュータメモリ記憶要件の低減、データ入力における外れ値及びエラーの影響を軽減することによる精度の改善、並びにPLCコードの動作におけるロバスト性の改善が挙げられる。加えて、剛性行列のパラメータ化されたモデル表現は、制御システムの安全性の利点のために非常に望ましい。少数のパラメータが正しい値を有し、破損していないことを検証することは、400から1000を超える要素を含むことができる剛性行列全体の値を検証することよりもはるかに容易な作業である。これらの当てはめに関する更なる詳細は、後で説明する。
【0129】
剛性行列が決定されると、スロット高さ測定値を2つの方法で使用することができる。第1に、アクチュエータ設定の任意のセットについて、結果として生じるスロット高さプロファイルは、剛性行列をアクチュエータ変位で乗算することによって計算することができる。次に、指定されたスロット高さプロファイルをもたらすアクチュエータ設定は、剛性行列の逆数にスロット高さの所望の変化を乗算することによって計算される。これらの計算は、式19及び式20それぞれによって表される。
(h-h0)=K・(A-A0)(式19)
(A-A0)=K-1・(h-h0)(式20)
【0130】
ここで、
図4Aのアクチュエータ調整(ブロック412)に戻って参照すると、所望の0圧力スロット高さ調整(ブロック410)が既知である場合、逆剛性行列K
-1を最終的に式20に従って使用して、目標プロファイル(ブロック407)を達成するためのアクチュエータ調整(ブロック412)を得ることができる。
【0131】
上記は、
図3のアクチュエータアセンブリ200を使用してリアルタイムで有利に実行することができる。ここで、コントローラ300は、センサ230及び動作モータ210からの測定値に基づいて少なくとも1つのアクチュエータアセンブリ200の設定を予測して、予測されたアクチュエータ調整(ブロック412)に対応する位置に出力シャフト222を配置する。コントローラ300がこのようにして予め選択されたクロスウェブプロファイルに対応するスロットダイ10のアクチュエータアセンブリ200の設定を決定すると、スロットダイ10は、アクチュエータアセンブリ200がアクチュエータ調整(ブロック412)に従って位置決めされた状態で、押出物を流体流路に通してアプリケータスロット6から出すことによって動作される。
【0132】
リンギング制約(ブロック411)を適用して、リンギングの程度が重要であると考えられる場合に異なる解に到達することができる。これは、なんらそのような制約がなくアクチュエータ調整(ブロック412)を計算するときになされた発見に基づく。この幾分驚くべき発見は、剛性行列Kの異なるモデル表現を比較したときに生じた。剛性行列の正確な表現が、逆剛性行列K-1の良好な表現に必ずしも変換されないことが観察された。
【0133】
物理的に、逆剛性行列は、1つの位置のみでスロットギャップを変更するために行われなければならないアクチュエータの動きの組み合わせを表す。1つの位置のみでギャップを変化させるために、複数のアクチュエータは、望ましくないアクチュエータ相互作用を打ち消すように調整されなければならない。
図5はまた、「リンギング」と呼ばれているものの図である。特定のギャッププロファイルを達成するために、隣接するアクチュエータは、大きな規模で反対方向に移動する傾向がある。すなわち、隣接するアクチュエータは、互いに大きく反対に働く傾向がある。
図5の目標スロット高さ及びアクチュエータ設定(後者は任意単位)のプロファイルに示される過剰なリンギングは、アクチュエータを不必要にそれらの力及び曲げ限界に到達させ、それによって制御システムで達成することができるコーティング均一性の程度を制限することがあるので、望ましくない。
【0134】
剛性行列及び逆システムが線形システムである場合、スロットギャップ位置の特定のセットに対応するアクチュエータ設定の1つの固有のセットが存在する。実質的なリンギングを有するアクチュエータ設定のセットは、何らかの点で欠陥があるわけではなく、特定の剛性行列が与えられた場合に所望のスロットギャッププロファイルをもたらす唯一の設定のセットである。しかし、以下に示すように、リンギングの程度を低減する代わりに、スロットギャッププロファイルにおけるいくらかの追加の不確実性は受け入れられることができる。
【0135】
第1に、リンギングの程度を定量化することができる。好都合なリンギング尺度は、アクチュエータ曲率の二乗平均平方根であり(式21)、以下ではRvalue又はリング値と略記される。
【0136】
【数24】
式中、N
actは、アクチュエータの総数である。場合によっては、より狭いウェブを押し出すためにアプリケータスロットの一部分が1つ以上のデッケルによって意図的に遮断される場合など、N
actがアクチュエータの総数よりも少ないことが有利であり得る。
【0137】
リング値には、曲率がアクチュエータスケール(すなわち、アクチュエータ間の距離が1である座標系)で計算されているという事実が内在している。いくつかの実施形態では、式20は、アクチュエータ設定Aの各インスタンスを、基準点値からのその偏差を表す(A-Ao)で置き換えることによって一般化することができる。更に、各Aは、アクチュエータ設定に対応し、かつ距離単位(例えば、mm)を有する、アクチュエータ位置として定義することができる。
【0138】
適切なペナルティ関数は、上記のリング値に基づくことができるが、以下の式22で提供されるような平均絶対リンギング鋸歯振幅(Sawtooth Amplitude)などの他のメトリックも考慮することができる。
【0139】
【0140】
この定量化ステップに続いて、スロットギャップ精度における何らかの小さな偏差を受け入れる代わりに、リンギングが何らかの値未満になるように、アクチュエータの動きにペナルティを課すことが望ましい。アクチュエータアセンブリのバックラッシュは一般に小さく、動きは反復性が非常に高いが、アクチュエータ位置の不確実性は、2~3マイクロメートル程度である。この変動を考慮すると、それがリンギングの低減及び制御方式の拡張などの利点を提供する場合、小さなスロットギャップ偏差(例えば、少なくとも2~3マイクロメートル)を受け入れることができる。
【0141】
このような制約を適用する一般的な方法は、ラグランジュ乗数法である。本質的に、一組のアクチュエータの動きに対する元の連立方程式は、ラグランジュ乗数と呼ばれるペナルティパラメータを用いて拡張され、制約によって乗算される。物理的に、ラグランジュ乗数は、制約条件に従う代わりに受け入れられる方程式系の解における不確実性を表す。提供される制御方式では、制約は、上記のリンギング尺度が、本明細書でリング定数(「Rmax」)と呼ばれる、距離単位又はアクチュエータ単位のいずれかの単位であり得る、特定の値未満に保たれることである。数学的には、これは、g(x,y)=cという条件に従う関数f(x,y)を最大化するものとして表すことができ、f及びgのいずれも、連続偏導関数を有すると仮定される。
【0142】
これを解くために、ラグランジュ関数Lを定義し、式23に従って解くことができる。
L(x,y,l)=f(x,y)-l(g(x,y)-c)(式23)
式中、lは、ラグランジュ乗数であり、次に、式24に基づいて解く。
【数26】
【0143】
次に、ラグランジュ乗数の値が解くべき追加の未知数である、拡張された方程式セットに対する解が求められる。拡張システムに対しては様々な解決手法が可能であり、ラグランジュ境界アルゴリズムが好都合な選択である。このアルゴリズムは、方程式系の解が、リンギング制約がない場合と同じ方法で進行することを可能にするが、次に、制約された解を生成するためにいくつかの行列乗算演算を用いてそれに従う。ラグランジュ境界アルゴリズムの基本的な適用は、例えば、以下の式24Aから導出することができる。
【0144】
【数27】
式中、Aは、剛性行列であり、xは、アクチュエータ設定を表し、ξは、ラグランジュ乗数である。
【0145】
リング定数の適用を一般化する際に、2つの観察がなされた。第1に、ダイリップ又はチョーカーバーの曲率/屈曲に関して、隣接するアクチュエータが更に離間している場合、リング定数を増加させることが予期されるであろう。これはまた、可撓性ダイリップ又はチョーカーバーを操作する際にアクチュエータに提供される、てこの作用の関数であり得る。このてこの作用又は機械的利点は、アクチュエータ移動とダイリップ移動との比として計算され、本明細書ではその動き増幅(Motion Amplification)と呼ばれる。以下の式25を参照されたい。
【0146】
【0147】
第2に、ダイリップ又はチョーカーバーの曲率又は屈曲に関して、動き増幅が増加される場合、すなわち、所与のダイスロット変化に対して各アクチュエータをより多く移動させる場合、リング定数を増加させることができる。
【0148】
これにより、以下の式26によって定義される、リング係数(Ring Factor)と呼ばれる単位のないメトリックの作成が可能になる。
【0149】
【0150】
リング係数は、可撓性ダイリップ(屈曲)又はチョーカーバーの移動を介したダイスロットの変化に対するアクチュエータの移動によるアクチュエータ間隔及び動き増幅を考慮する、リング定数の一般化された形態である。この関係の適用を例示するために、ダイリップの曲率たわみを一定に保ちながら、アクチュエータ間隔を2倍にし、またリング定数(Rmax)を2倍にすることが可能である。同様に、例えば、可撓性ダイリップのモーメントアーム長を2倍にすることによって、動き増幅が2倍にされる場合、リング定数(Rmax)もまた、同じ程度のダイリップたわみを提供するために2倍にすることができる。
【0151】
図7~
図11は、可撓性ダイリップを備えて構成されたスロットダイについて、本明細書で説明されるようなリンギング制約を用いて計算されたスロットプロファイルの例示的な推移を示す。これらの棒グラフのY軸値は、以下に示すように、スロット高さ又はコーティング厚さ寸法のいずれかを表し、アプリケータスロットに沿ったクロスウェブ変動を示すように自動的にスケーリングされている。
【0152】
図7は、アクチュエータ単位での現在のアクチュエータ位置と基準点アクチュエータ位置との間の差を示す。基準点からの偏差は、「基準点」又は「平坦スロット」位置からのアクチュエータ単位変位を表し、これを剛性行列とともに使用して、スロット位置(圧力たわみ効果がない)、及び最終的には、このスロット位置に対応するアクチュエータ位置を計算する。
図7の挿入図において、「SP」は、リング定数を指し、「前」は上述のようなラグランジュ境界アルゴリズムの適用前のリング値を指し、「後」はラグランジュ境界アルゴリズムの適用後のリング値を指す。
【0153】
図8は、中立スロット高さプロファイルに対するアプリケータスロットの片側の位置を表す、計算された可撓性ダイリッププロファイルを示す。このプロファイルは、可撓性ダイリップがアプリケータスロットの幅に沿った様々な位置でその静止状態から離れるように偏向される程度を示す。
【0154】
図9は、中立(すなわち、静止)スロット高さプロファイルを示すことを示し、可撓性ダイリップの屈曲がないときに得られる設計ダイスロットを示す。
【0155】
図10は、このダイスロット調整プロセスから得られたコーティングの厚さプロファイルを示す。
【0156】
図11は、基準点スロット位置及び基準点アクチュエータ位置と組み合わされた現在のアクチュエータ位置に剛性行列法を適用することによって得られた計算されたダイスロットを示す。基準点スロット位置及び基準点アクチュエータ位置は、上記の式19及び式20それぞれから決定することができることに留意されたい。
【0157】
様々なスロットダイについて計算されたリング係数の例示的な値を以下の表2に示す。この表に示すように、無次元リング係数は、0.0018(ダイN)から0.0096(ダイH)の範囲であり、考慮される全てのダイにわたって平均0.0041である。
【0158】
【0159】
以下は、この技術によってリンギングをどのように低減することができるかを示すシミュレーションの2つの実例である。以下の表3は、様々なR
maxについて、チョーカーバーを有する回転ロッドダイの実施例において達成されたリンギングの低減を示す。これはまた、基準点プロファイルに対してプロットされたアクチュエータ設定プロファイル間の比較を示す
図6にも示されている。この図は、1000のR
maxを使用してリンギング制約を課すことの利益を示し、これにより、リング値を2800(リンギング制約なし)から852(リンギング制約あり)に低減した。
【0160】
【0161】
したがって、高レベルでは、残差ベクトルを使用して、提案されたアクチュエータ位置(又はアクチュエータ設定)のセットについて予測されるリンギングの程度を決定することができ、次いで、リンギング制約を適用して、予測されるリンギングの程度に対してリンギングの程度を低減する修正されたアクチュエータ位置のセットを取得する。
【0162】
集合的に、これらの技術は、ダイ制御方法において著しく高い効率を提供することができる。効率の向上は、例えば、最良の達成可能なコーティング厚さプロファイルを達成するために、
図4Aのワークフロー400における繰り返しサイクルの数を低減することから導出することができる。有利なことに、これは、大規模製造プロセスにおいて廃棄物を少なくすることができる。より正確かつより速い収束はまた、そうでない場合に可能であるよりも、製造作業におけるコーティング厚さに対するより高い周波数外乱を排除するのに役立つことができる。
【0163】
アクチュエータ調整(ブロック412)の実行に続いて、ワークフロー400は、更新されたプロファイル測定(ブロック402)で再開し、プロセスは再び開始することができる。このプロファイル測定(ブロック402)は、ある時間が経過した後に行われ、アクチュエータの反復調整を可能にする。多くの反復の過程にわたって、押出物プロファイルが目標プロファイル(ブロック407)に収束し、厳密に一致するように、個別アクチュエータ設定に対して連続的な改善を行うことができる。
【0164】
ワークフロー400は、予測された設定のセットを改善することができないとコントローラ300が判定するまで、及び/又は所望のクロスウェブプロファイルを維持するために周期的間隔で、繰り返すことができる。個別設定のセットは、同様の材料、押出又はコーティング特性、及び処理条件が必要とされる将来の取り出し、及び数分後、数時間後、又は数年後の将来の使用のためのレシピとして保存することができる。
【0165】
先に示唆したように、逆剛性行列K-1の良好な表現を得ることは困難であり得る。物理的に、逆剛性行列は、1つの位置のみでスロットギャップを変更するために行われなければならないアクチュエータの動きの組み合わせを表す。したがって、Kの選択は、アクチュエータ位置のリンギング(すなわち、より大きいリング値)を生成する傾向を明示することができる。剛性行列Kの要素は、バンプ試験及び式17などの差分式によって決定することができる。差分(すなわち、生の差分行列)からのこの「生の」剛性行列をダイ制御のために使用することができるが、モデル表現への生の行列の統計的当てはめ法は、Kに対する実験誤差の影響を緩和することができるとともに、隣接するアクチュエータの影響の限られた範囲に起因して予想される帯行列を考慮することができることが発見された。
【0166】
剛性行列K及び/又は逆剛性行列K-1を当てはめる有利な方法は、入れ子サンプリング及び/又はモンテカルロマルコフ連鎖アルゴリズムなどのベイズ統計法を使用することであることが発見されている。剛性行列の微小な変化が、その逆行列に異常に大きな変化をもたらすことが発見された。好ましい手順は、式19及び式20の演算が良好に作用することを確実にするために、剛性行列及びその逆行列の両方のモデル表現を当てはめることを含むことができる。モデル比較のためのベイズ入れ子サンプリング手順は、John Skillingの「Nested Sampling for General Bayesian Computation」(Bayesian Analysis,Vol.1,Number 4,pp.833-860(2006))に見出すことができる。
【0167】
ベイズ入れ子サンプリングフレームワークでは、アクチュエータ設定が与えられた場合のスロットギャップ測定値の尤度が、スロットギャップ測定値が与えられた場合のアクチュエータ設定の尤度と同様に計算される。このようにして、剛性行列及び逆行列の乗算演算の両方がサンプリングされる。加えて、バンプ試験データは、調整された動きからの測定値を含み、全てのアクチュエータは、単一のアクチュエータの動きとともに同時に移動する。このようにして、剛性行列及びその逆行列の行又は列の和の挙動が、剛性行列対角線に近い値に加えて問い合わせられる。更なる利点として、これらの入れ子サンプリング方法は、測定不確実性及び事前知識を組み込むことができる、パラメータ空間にわたるパラメータ確率分布を決定することができる。生の剛性行列の異なるモデル表現を比較し、モデルデータ尤度又はモデル証拠に基づいてランク付けすることができる。いくつかの実施形態では、最も可能性の高いパラメータ値(モード又は平均)を有する最も高い証拠モデルが、アクチュエータ設定を計算するために使用される。最も高い証拠の剛性行列モデルのパラメータ値推定は、例えば、モンテカルロマルコフ連鎖アルゴリズムを使用して得ることができる。
【0168】
別の有用なパラメータは、式27に示すように、動き増幅と剛性行列の帯にわたるKijの和との積である無次元剛性動き数である。
【0169】
【0170】
この場合、ダイスロット内への測定距離だけ低減された可撓性ダイリップ長さによって表される調整された可撓性ダイリップ長さを使用して動き増幅を考慮することが有用である。
【0171】
剛性動き数は、ダイタイプの動き増幅の知識と組み合わせて剛性行列
【0172】
【数31】
の行にわたるK
ijの合計のスケーリングを予測するのを助けることができる無次元数である。帯剛性行列の場合、
【0173】
【数32】
であり、式中、dは、主対角線の両側に沿った対角線の数であり、1≦j≦N
actである(アプリケータスロットの端部における境界を考慮するため)。剛性動き数の例示的な値は、以下の表4に見られる。
【0174】
【0175】
いくつかの実施形態では、Kijの相対値は、同様のダイ構成に対する正規化剛性パラメータから予測することができる。正規化剛性パラメータ
【0176】
【数33】
の一例は、式28で定義され、その値は、様々な例示的なスロットダイについて
図13に示されている。
【0177】
【数34】
式中、dは、主対角線の両側に沿った対角線の数である。剛性パラメータとは異なり、正規化剛性パラメータは、無単位である。
【0178】
正規化あり及び正規化なしの両方の例示的な剛性パラメータを、流体ベアリングコーティングダイ「A」(
図13から)について以下の表5に列挙する。
【0179】
このチャートは、アクチュエータ位置がその近傍に及ぼす特徴的な相対的影響を示し実証する。これらの特定の実施例におけるダイリップ又はチョーカーバーの機械的詳細に依存して、Kiiがスロット位置に対する影響の約39%~80%を占めることが観察される。例示的な制御方法では、剛性行列及び/又は逆剛性行列は、所定の正規化された剛性から計算される。
【0180】
【0181】
Ki,iは、0.35~0.8の範囲であり、Ki,i±1は、0.1~0.3の範囲であり、Ki,i±2は、0.0~0.1の範囲であり、Ki,i±3は、0.0~0.03又は0.0~0.05の範囲であり、Ki,i±4は、0.0~0.02の範囲である。
【0182】
加えて、剛性行列K及び逆剛性行列K-1は、式19及び式20に従って、物理的アクチュエータ移動をスロット高さ変化に正確に変換しなければならず、逆もまた同様である。この全体的なパワーは、剛性行列の帯にわたるKijの和
【0183】
【数35】
であり、式中、Nは、アクチュエータの数である。上記の流体ベアリングコーティングダイ「A」に関して、ダイ「A」に関する中間行剛性パラメータの合計は、1.40E-01(アクチュエータ単位当たりのマイクロメートル)である。
【0184】
いくつかの実施形態では、ウェーブレットベースの技術を含む、本明細書に説明される技術を他の方法と組み合わせて使用して、コーティング厚さを制御することができる。例として、これらの技術に基づいて行われるアクチュエータ調整により、国際特許第WO2006/130141号(Kargら)、同第WO2006/130142号(Kargら)、及び同第WO2006/130143号(Kargら)に記載されているようなクロスウェブ熱分配システムを使用して更に最適化又は洗練された押出物プロファイルを提供することができる。各変換のウェーブレットスケール及び位置は、使用されているアクチュエータの感度及びタイプに合わせて調整して、より効率的な制御システムをもたらすことができる。
【0185】
代替のワークフロー500が、
図4Bに記載されている。ワークフロー500は、プロファイル測定(ブロック502)、ウェブからダイへのマッピング(ブロック504)、データ圧縮(ブロック506)、目標プロファイル(ブロック507)に基づくプロファイル偏差(ブロック508)の取得、スロット高さ調整(ブロック510)、及びアクチュエータ調整(ブロック512)を含む、
図4Aのワークフロー400のステップと本質的に類似する多くのステップを含む。更に、ワークフロー400と同様に、スロット高さ調整(ブロック510)は、任意選択的に、リンギング制約(ブロック511)及び現在のスロット高さ(ブロック509)を表すデータを組み込む。これらの動作については既に上述したので、ここでは再度説明しないものとする。
【0186】
ワークフロー500は、スロット高さ制約(ブロック513)が、現在のスロット高さ(ブロック509)の決定の後に、アプリケータスロットの少なくともある部分にわたって適用されるという点で、以前のワークフローと異なる。この動作モードでは、この制約は、計算されたスロット高さプロファイルが、式8及び式12に基づいて通常要求される任意の計算された調整に関係なく、本質的に「凍結」されるべきであることを規定する。スロット高さは、アプリケータスロットのある部分にわたって「凍結」することができるが、これは、必ずしも、対応するアクチュエータ設定(すなわち、Ai)が凍結されるであろうことを意味しない。流体力学効果の変動により、一定のスロット高さを維持するために、反復アクチュエータ調整を必要とすることがある。
【0187】
いくつかの実施形態では、ワークフロー500は、最初に平均アクチュエータ設定を決定し、この平均アクチュエータ設定がワークフロー500の後続の反復毎に一定に保持されることを確実にする。これは、平均アクチュエータ設定が経時的に変化するのを防止するために、必要に応じて、アクチュエータ設定のプロファイルを調和して上方又は下方にオフセットすることによって達成することができる。実際には、この動作は、以下のサブルーチンを用いて達成することができる。
1)NON-FROZEN AVERAGE NEW SETPOINT ACTUATOR SETTINGS{スロット高さ制約(ブロック513)がないアクチュエータ設定を表す}を計算する。
2)(AVERAGE_DIFFERENCE)=(NON-FROZEN AVERAGE NEW SETPOINT ACTUATOR SETTINGS)-(NON-FROZEN AVERAGE ACTUAL ACTUATOR SETTINGS)と定義する。
3)以下のアルゴリズムを実行する。
FOR i=1 to(アクチュエータの数)
IFアクチュエータ[i]が凍結されていない
ACTUATOR_SP[i]=ACTUATOR_SP_NEW[i]-AVERAGE_DIFFERENCEと定義する
END_IF
END_FOR{それによって、NON-FROZEN AVERAGE NEW SETPOINT ACTUATOR SETTINGSを復元する}。
【0188】
修正されたワークフロー500は、繰り返される反復の過程の間の平均スロット高さにおける、クリープとしても知られる望ましくないドリフトを回避する際に非常に有利であり得る。そのようなドリフトは、通常のワークフローの数学的構成によって考慮されない状況の結果として発生する可能性がある。例えば、アクチュエータが物理的制限のためにそれらの所望の設定/位置に達することができない状況が生じることがある。そのような制限は、ダイに損傷を与えることなく安全に加えることができる許容可能な力の量を超える予測された力の値に基づくことができる。アクチュエータはまた、可撓性ダイリップ又はチョーカーバーの連続性に起因する曲げ限界に達する可能性があり、これにより、隣接するアクチュエータが互いに離れすぎた設定点を有することを防止する。更に別の制限は、1つ以上のデッケルがアプリケータスロットに挿入されたときに、特にアプリケータスロットの遮断ゾーンと非遮断ゾーンとが一緒になるときに形成されるスロット高さプロファイルの不連続性から生じることがある。有利なことに、ワークフロー500は、これらの状況のそれぞれにおいて、スロット高さプロファイルを、対応する押出物厚さプロファイルと共に安定させるのを助けることができる。
【0189】
コントローラ300に関して説明される技術などの本開示で説明される技術は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせに少なくとも部分的に実装してもよい。例えば、技術のさまざまな実施例は、コントローラ、ユーザインターフェース、又は他のデバイスに具現化された、1つ以上のマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processors、DSP)、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuits、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate arrays、FPGA)、又は他の任意の等価集積回路若しくは個別論理回路、並びにそのような構成要素の任意の組み合わせ内に実装することができる。用語「コントローラ」は、一般的に、前述の論理回路単独、又は他の論理回路との組み合わせ、あるいは任意の他の等価回路、のいずれかを指してもよい。
【0190】
ソフトウェアで実装される場合、本開示で説明されるシステム及びコントローラに帰する機能は、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、読み出し専用メモリ(read-only memory、ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(non-volatile random access memory、NVRAM)、電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(electrically erasable programmable read-only memory、EEPROM)、フラッシュメモリ、磁気媒体、光学媒体などのコンピュータ可読記憶媒体上の命令として具体化されてもよい。命令は、1つ以上のプロセッサに、本開示に記載される機能の1つ以上の実施例をサポートさせるために実行されてもよい。
【0191】
様々な実施例を前述の節で説明してきた。これら及び他の実施例は、以下の特許請求の範囲内である。
【0192】
上記特許出願において引用された全ての文献、特許文献又は特許出願は、一貫した形でそれらの全容が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参照文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先するものとする。前述の記載は、当業者が、特許請求の範囲に記載の開示を実践することを可能にするためのものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本開示の範囲は特許請求の範囲及びその全ての等価物によって定義される。
なお、以上の各実施形態に加えて以下の態様について付記する。
(付記1)
スロットダイを調整する方法であって、前記スロットダイは、前記スロットダイの幅に沿って延びるアプリケータスロットであって、前記スロットダイを通る流体流路と流体連通しているアプリケータスロットと、チョーカーバー及び可撓性ダイリップからなる群のうちの少なくとも1つと、前記スロットダイの前記幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップに動作可能に結合されて、各アクチュエータのそれぞれの位置でスロット又はチョーカーバーの高さプロファイルを調整し、前記アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、を備え、前記方法は、
前記アプリケータスロットから提供される押出物の厚さ値を測定することと、
前記測定された厚さ値を前記スロットダイの前記幅に沿った対応する位置にマッピングすることと、
前記測定された厚さ値のデータ圧縮を実行して、前記測定された厚さ値の所望の厚さ値からの偏差を表す残差ベクトルを取得することと、
前記残差ベクトルに基づいて前記複数のアクチュエータのうちの1つ以上の位置を調整して、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップのための補正された形状を得ることと、を含み、前記調整することは、
前記残差ベクトルを使用して、提案されたアクチュエータ位置のセットについて予測されるリンギングの程度を決定することと、
次いでリンギング制約を適用して、前記予測されるリンギングの程度に対して前記リンギングの程度を低減する修正されたアクチュエータ位置のセットを取得することと、
を含む、方法。
(付記2)
前記リンギングの程度が、前記スロット又はチョーカーバーの高さプロファイルの計算された曲率に従って予測される、付記1に記載の方法。
(付記3)
前記リンギングの程度が、前記リンギングの程度を閾値未満に低減することと引き換えに、前記修正されたアクチュエータ位置のセットにおけるある程度の不正確さを許容することによって低減される、付記1又は2に記載の方法。
(付記4)
前記閾値が、アクチュエータ位置プロファイルにおける曲率と相関している、付記3に記載の方法。
(付記5)
前記曲率が、0~0.01のリング係数に対応する、付記4に記載の方法。
(付記6)
前記曲率が、0~0.006のリング係数に対応する、付記5に記載の方法。
(付記7)
前記リンギングの程度を前記閾値未満に低減することと引き換えに前記補正された形状におけるいくらかの不正確さを許容する条件が、ラグランジュ乗数法を通して適用される、付記3~6のいずれか一項に記載の方法。
(付記8)
前記ラグランジュ乗数法が、前記閾値に基づいてラグランジュ乗数について解くことを含む、付記7に記載の方法。
(付記9)
前記ラグランジュ乗数について解くことが、拡張されたシステムのための境界アルゴリズムを使用することを含む、付記8に記載の方法。
(付記10)
1つ以上のアクチュエータが、アクチュエータ位置プロファイルをスロット又はチョーカーバーの高さプロファイルに変換する剛性行列に基づく個別アクチュエータ設定のセットに基づいて調整され、前記スロット又はチョーカーバーの高さプロファイルが、前記アプリケータスロットを通る流体流に起因するたわみの影響を除外する、付記1~9のいずれか一項に記載の方法。
(付記11)
バンプ試験データを使用して前記剛性行列のモデル表現を当てはめることを更に含み、前記個別設定のセットが、前記剛性行列、及びアクチュエータ位置プロファイルをスロット又はチョーカーバーの高さプロファイルに変換する逆剛性行列の両方から決定され、前記スロット又はチョーカーバーの高さプロファイルが、前記アプリケータスロットを通る流体流に起因するたわみの影響を除外する、付記10に記載の方法。
(付記12)
前記剛性行列のモデル表現を当てはめるために使用される同じバンプ試験データを使用して、逆剛性行列を当てはめることを更に含む、付記11に記載の方法。
(付記13)
前記剛性行列モデル表現及び/又は前記剛性行列モデル表現の逆数のパラメータが、入れ子サンプリングアルゴリズム、モンテカルロマルコフ連鎖アルゴリズム、又はその両方を使用して推定される、付記11又は12に記載の方法。
(付記14)
前記剛性行列が、正規化されたとき、0.35~0.8の範囲のK
i,i
値と、0.1~0.3の範囲のK
i,i±1
値と、0~0.1の範囲のK
i,i±2
値と、0.0~0.03の範囲、又は任意選択的に0.0~0.05の範囲のK
i,i±3
値と、0.0~0.02の範囲のK
i,i±4
値とを含む、付記10~13のいずれか一項に記載の方法。
(付記15)
スロットダイを調整する方法であって、前記スロットダイは、前記スロットダイの幅に沿って延びるアプリケータスロットであって、前記スロットダイを通る流体流路と流体連通しているアプリケータスロットと、チョーカーバー及び可撓性ダイリップからなる群のうちの少なくとも1つと、前記スロットダイの前記幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップに動作可能に結合されて、各アクチュエータのそれぞれの位置でスロット又はチョーカーバーの高さプロファイルを調整し、前記アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、を備え、前記方法は、
前記アプリケータスロットから提供される押出物の厚さ値を測定することと、
前記測定された厚さ値を前記スロットダイの前記幅に沿った対応する位置にマッピングすることと、
前記測定された厚さ値のデータ圧縮を実行して、前記測定された厚さ値の所望の厚さ値からの偏差を表す残差ベクトルを取得することと、
前記残差ベクトルに基づいて前記複数のアクチュエータのうちの1つ以上の位置を調整して、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップの補正された形状を得ることと、を含み、前記調整することは、スロット又はチョーカーバーの高さ制約を適用して、それによって、1つ以上の調整されたアクチュエータ位置が、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップの対応する部分に沿って平均現在スロット又はチョーカーバー高さを維持するように予測されることを含む、方法。
(付記16)
前記スロット又はチョーカーバーの高さ制約が適用され、それによって、1つ以上の調整されたアクチュエータ位置が、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップの前記対応する部分に沿って1つ以上の現在のスロット又はチョーカーバー高さを一定に保持するように予測される、付記15に記載の方法。
(付記17)
付記15又は16に記載の方法を繰り返し実行して、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップの前記それぞれの部分に沿った平均スロット又はチョーカーバー高さの経時的なドリフトを低減することを含む、スロットダイを調整する方法。
(付記18)
スロットダイを調整する方法であって、前記スロットダイは、前記スロットダイの幅に沿って延びるアプリケータスロットであって、前記スロットダイを通る流体流路と流体連通しているアプリケータスロットと、チョーカーバー及び可撓性ダイリップからなる群のうちの少なくとも1つと、前記スロットダイの前記幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップに動作可能に結合されて、各アクチュエータのそれぞれの位置でスロット又はチョーカーバーの高さプロファイルを調整し、前記アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、を備え、前記方法は、
前記アプリケータスロットから提供される押出物の厚さ値を測定することと、
前記測定された厚さ値を前記スロットダイの前記幅に沿った対応する位置にマッピングすることと、
前記測定された厚さ値のデータ圧縮を実行して、前記測定された厚さ値の所望の厚さ値からの偏差を表す残差ベクトルを取得することと、
前記残差ベクトルに基づいて前記複数のアクチュエータのうちの1つ以上の位置を調整して、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップの補正された形状を得ることと、を含み、
前記厚さ値を前記スロットダイの前記幅に沿った対応する位置にマッピングすることが、前記押出物の1つ以上の横断縁部における位置変動を考慮するために、測定された厚さ値を拡張及び/又は調整することを含む、
方法。
(付記19)
押出物品の製造方法であって、
付記1~18のいずれか一項に記載の方法に従ってスロットダイを調整することと、
前記スロットダイの前記アプリケータスロットを通して、前記調整されたスロットダイに基づいて押出物を押出して、前記押出物品を得ることと、
を含む、製造方法。
(付記20)
スロットダイであって、
前記スロットダイの幅に沿って延びるアプリケータスロットであって、前記スロットダイを通る流体流路と流体連通しているアプリケータスロットと、
チョーカーバー及び可撓性ダイリップからなる群のうちの少なくとも1つと、
前記スロットダイの前記幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップに動作可能に結合されて、各アクチュエータのそれぞれの位置でスロット又はチョーカーバーの高さプロファイルを調整し、前記アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、
を含むスロットダイと、
前記アプリケータスロットから提供される押出物の厚さ値を受信し、前記受信した厚さ値を前記スロットダイの前記幅に沿った対応する位置にマッピングし、前記受信した厚さ値のデータ圧縮を実行して、前記受信した厚さ値の所望の厚さ値からの偏差を表す残差ベクトルを取得し、前記残差ベクトルに基づいて前記複数のアクチュエータのうちの1つ以上の位置を調整して、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップの補正された形状を得るように構成されたコントローラであって、前記調整が、前記残差ベクトルを使用して、提案されたアクチュエータ位置のセットについて予測されるリンギングの程度を決定することと、次いでリンギング制約を適用して、前記予測されるリンギングの程度に対して前記リンギングの程度を低減する修正されたアクチュエータ位置のセットを取得することと、を含む、コントローラと、
を備える、システム。