(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】評価システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0639 20230101AFI20240603BHJP
【FI】
G06Q10/0639
(21)【出願番号】P 2019026775
(22)【出願日】2019-02-18
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】514306629
【氏名又は名称】株式会社DSi
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩志
【審査官】原 忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-056023(JP,A)
【文献】特開2010-097490(JP,A)
【文献】特開2009-230535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
従業員の位置を取得する位置検出部と、
前記従業員の位置を蓄積する位置情報記録部と、
業務と、前記業務が行われる位置と、を対応付けた位置・業務情報記憶部と、
前記業務と、前記業務の価値と、を対応付けた価値情報記憶部と、
前記位置情報記録部及び前記位置・業務情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務を特定する業務推定部と、
前記価値情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務の価値を算出する価値算出部と、を有し、
前記位置・業務情報記憶部においては、1つの前記位置に対し、複数の異なる前記業務が定義されて
おり、
前記位置・業務情報記憶部においては、1つの前記位置に対し、前記従業員の滞留時間に応じて複数の異なる前記業務が定義されている
評価システム。
【請求項2】
従業員の位置を取得する位置検出部と、
前記従業員の位置を蓄積する位置情報記録部と、
業務と、前記業務が行われる位置と、を対応付けた位置・業務情報記憶部と、
前記業務と、前記業務の価値と、を対応付けた価値情報記憶部と、
前記位置情報記録部及び前記位置・業務情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務を特定する業務推定部と、
前記価値情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務の価値を算出する価値算出部と、を有し、
前記位置・業務情報記憶部においては、1つの前記位置に対し、複数の異なる前記業務が定義されて
おり、
前記位置・業務情報記憶部においては、1つの前記位置に対し、前記位置に同時に滞留した前記従業員の数又は属性に応じて複数の異なる前記業務が定義されている
評価システム。
【請求項3】
従業員の位置を示す情報を蓄積する位置情報記録部と、
業務と、前記業務が行われる位置と、を対応付けた位置・業務情報記憶部と、
前記業務と、前記業務の価値と、を対応付けた価値情報記憶部と、
前記位置情報記録部及び前記位置・業務情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務を特定する業務推定部と、
前記価値情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務の価値を算出する価値算出部と、を有し、
前記位置・業務情報記憶部においては、1つの前記位置に対し、複数の異なる前記業務が定義されて
おり、
前記位置・業務情報記憶部においては、1つの前記位置に対し、前記従業員の滞留時間に応じて複数の異なる前記業務が定義されている
評価装置。
【請求項4】
従業員の位置を示す情報を蓄積する位置情報記録部と、
業務と、前記業務が行われる位置と、を対応付けた位置・業務情報記憶部と、
前記業務と、前記業務の価値と、を対応付けた価値情報記憶部と、
前記位置情報記録部及び前記位置・業務情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務を特定する業務推定部と、
前記価値情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務の価値を算出する価値算出部と、を有し、
前記位置・業務情報記憶部においては、1つの前記位置に対し、複数の異なる前記業務が定義されて
おり、
前記位置・業務情報記憶部においては、1つの前記位置に対し、前記位置に同時に滞留した前記従業員の数又は属性に応じて複数の異なる前記業務が定義されている
評価装置。
【請求項5】
コンピュータが実行する評価方法であって、
従業員の位置を示す情報を蓄積する位置情報記録部、及び、業務と前記業務が行われる位置とを対応付けた位置・業務情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務を特定する業務推定ステップと、
前記業務と前記業務の価値とを対応付けた価値情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務の価値を算出する価値算出ステップと、を有し、
前記位置・業務情報記憶部においては、1つの前記位置に対し、複数の異なる前記業務が定義されて
おり、
前記位置・業務情報記憶部においては、1つの前記位置に対し、前記従業員の滞留時間に応じて複数の異なる前記業務が定義されている
評価方法。
【請求項6】
コンピュータが実行する評価方法であって、
従業員の位置を示す情報を蓄積する位置情報記録部、及び、業務と前記業務が行われる位置とを対応付けた位置・業務情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務を特定する業務推定ステップと、
前記業務と前記業務の価値とを対応付けた価値情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務の価値を算出する価値算出ステップと、を有し、
前記位置・業務情報記憶部においては、1つの前記位置に対し、複数の異なる前記業務が定義されて
おり、
前記位置・業務情報記憶部においては、1つの前記位置に対し、前記位置に同時に滞留した前記従業員の数又は属性に応じて複数の異なる前記業務が定義されている
評価方法。
【請求項7】
請求項
5又は6記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価システムに関し、特に働きぶりを適切に評価し、付加価値の高い仕事に対する動機づけを行うことが可能な評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従業員の働きぶりを適切に評価して給与に反映し、組織全体としての生産性を向上させるためのシステムが種々提供されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、社員が携わった業務の業績への寄与率を考慮して給与額を決定する給与額算出システムが開示されている。特許文献2には、社員の端末による作業量を測定し、これに基づいて給与を計算する作業管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-133049号公報
【文献】特開昭63-70375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
組織マネジメントの観点からは、より高い報酬を得ている人には、より付加価値の高い仕事をするよう促したいという要求がある。すなわち、各人の権限に応じて、より付加価値の高い仕事に時間を振り向けるよう従業員を動機づけることが望まれる。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2記載の技術は、予め与えられた仕事に関するパフォーマンスを測定するためのものであり、より付加価値の高い仕事に構成員を誘導するための動機づけを与える仕組みを有していない。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、働きぶりを適切に評価し、付加価値の高い仕事に対する動機づけを行うことができる評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の形態に係る評価システムは、従業員の位置を取得する位置検出部と、前記従業員の位置を蓄積する位置情報記録部と、業務と、前記業務が行われる位置と、を対応付けた位置・業務情報記憶部と、前記業務と、前記業務の価値と、を対応付けた価値情報記憶部と、前記位置情報記録部及び前記位置・業務情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務を特定する業務推定部と、前記価値情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務の価値を算出する価値算出部と、を有する。
本発明の一実施の形態に係る評価システムは、前記業務推定部は、前記従業員が前記業務に従事した時間をさらに特定し、前記価値算出部は、前記従業員が前記業務に従事した前記時間と、前記業務の前記価値と、に基づいて、前記従業員が前記業務に従事したことにより生じた価値の総和を算出する。
本発明の一実施の形態に係る評価システムは、前記位置・業務情報記憶部は、前記位置に対し、前記従業員の属性に応じて異なる前記業務を対応付ける。
本発明の一実施の形態に係る評価システムは、前記価値情報記憶部は、前記業務に対し、前記従業員の属性に応じて異なる前記価値を対応付ける。
本発明の一実施の形態に係る評価システムは、前記位置検出部は、衛星又は他の発信源から放射される信号を検知し、前記信号に基づいて前記従業員の位置を特定する。
本発明の一実施の形態に係る評価システムは、前記位置、前記業務又は前記価値を修正するための情報を入力するための手段をさらに有する。
本発明の一実施の形態に係る評価装置は、従業員の位置を示す情報を蓄積する位置情報記録部と、業務と、前記業務が行われる位置と、を対応付けた位置・業務情報記憶部と、前記業務と、前記業務の価値と、を対応付けた価値情報記憶部と、前記位置情報記録部及び前記位置・業務情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務を特定する業務推定部と、前記価値情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務の価値を算出する価値算出部と、を有する。
本発明の一実施の形態に係る評価方法は、従業員の位置を示す情報を蓄積する位置情報記録部、及び、業務と前記業務が行われる位置とを対応付けた位置・業務情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務を特定する業務推定ステップと、前記業務と前記業務の価値とを対応付けた価値情報記憶部を参照して、前記従業員が従事した前記業務の価値を算出する価値算出ステップと、を有する。
本発明の一実施の形態に係るプログラムは、上記方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、働きぶりを適切に評価し、付加価値の高い仕事に対する動機づけを行うことができる評価システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】評価システム100のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】評価システム100の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】評価システム100の一構成例を示すブロック図である。
【
図4】位置情報記録部113が管理する情報の一例を示す図である。
【
図5】位置情報記録部113が管理する情報の一例を示す図である。
【
図6】従業員属性記憶部109が管理する情報の一例を示す図である。
【
図7】位置・業務情報記憶部107が管理する情報の一例を示す図である。
【
図8】位置・業務情報記憶部107が管理する情報の一例を示す図である。
【
図9】位置・業務情報記憶部107が管理する情報の一例を示す図である。
【
図10】価値情報記憶部111が管理する情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び
図2を用いて、本発明の実施の形態にかかる評価システム100の構成について説明する。
図1は、評価システム100のハードウェア構成の一例を示す図である。評価システム100は、CPU11、ROM12、RAM13、不揮発性メモリ14、バス10、インタフェース18、入出力装置60を有する。
【0012】
CPU11は、評価システム100を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、ROM12に格納されたシステム・プログラムをバス10を介して読み出し、システム・プログラムに従って評価システム100全体を制御する。
【0013】
ROM12は、各種処理を実行するためのシステム・プログラムを予め格納している。RAM13は、一時的な計算データや表示データ、入出力装置60を介してユーザが入力したデータやプログラム等を一時的に格納する。
【0014】
不揮発性メモリ14は、例えば図示しないバッテリでバックアップされており、評価システム100の電源が遮断されても記憶状態を保持する。不揮発性メモリ14は、入出力装置60から入力されるデータやプログラム等を格納する。不揮発性メモリ14に記憶されたプログラムやデータは、実行時及び利用時にはRAM13に展開されても良い。
【0015】
入出力装置60は、ディスプレイやキー入力インタフェース等を備えたデータ入出力装置である。入出力装置60は、インタフェース18を介してCPU11から受けた情報をディスプレイに表示する。入出力装置60は、キー入力インタフェース等から入力された指令やデータ等をインタフェース18を介してCPU11に渡す。
【0016】
図2は、評価システム100の機能構成の一例を示す図である。評価システム100は、位置検出部101、業務推定部103、価値算出部105、位置・業務情報記憶部107、従業員属性記憶部109、価値情報記憶部111、位置情報記録部113を有する。
【0017】
図2に示す各処理部は、
図1に示すハードウェアがソフトウェアを実行することにより論理的に実現されるものである。なお、評価システム100は、単一の情報処理装置により構成されても良く、複数の情報処理装置が連携することにより構成されても良い。例えば、
図3に示すように、従業員が携行する携帯端末に位置検出部101を設け、携帯端末と通信可能な評価装置(サーバ)に業務推定部103、価値算出部105、位置・業務情報記憶部107、従業員属性記憶部109、価値情報記憶部111及び位置情報記録部113を設けることができる。なお、
図3に示す例はあくまで一構成例にすぎず、各処理部をどのような装置に実装するかは任意である。
【0018】
位置検出部101は、従業員の位置を検出する。例えば、複数の衛星から送信される測位信号を受信及び解析して自己の位置を検出可能な装置を、位置検出部101として用いることができる。このような衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)には、例えばGPS(Global Positioning System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、Galileo、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)等がある。
【0019】
また、位置検出部101は、複数の電波発信源から放射される信号を受信及び解析し、三点測位等により自己の位置を検出しても良い。この場合、例えばWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)及び各種ビーコン等の信号を利用できる。また、特定エリア内に存在する無線タグを検出する技術を、従業員の位置検出に利用することもできる。例えば、従業員が携行する無線タグを、所定のエリア(建物や部屋の出入り口等)に配置された読み取り装置(位置検出部101)が読み取ることとしても良い。又は、読み取り装置(位置検出部101)を携行する従業員が、所定のエリアに配置された無線タグを読み取ることとしても良い。また、加速度センサ、ジャイロセンサ、磁気センサなどを利用した自律航法による測位が可能な装置を、位置検出部101として用いても良い。また、位置検出部101は、音波、可視光、地磁気等を用いた公知の測位技術を実行するものであっても良い。これらの技術によれば、測位衛星の電波を受信できない屋内等の環境であっても、従業員の位置を把握することが可能である。
【0020】
位置検出部101は、原則として常時すなわち一定時間ごとに従業員の位置を検出し、検出結果を位置情報記録部113に出力する。位置情報記録部113は、従業員の位置情報と、位置情報の検出時刻と、を対応付けてデータベースに記録していく。位置情報は、例えば最初に位置情報を検出してから、所定の時間おきに連続的に取得され、一定時間にわたり位置情報が検出できなくなったときに、連続的な取得が終了されるものとする。
【0021】
図4に、位置情報記録部113が管理する情報の一例を示す。位置検出部101は、従業員の位置を検出する毎に、従業員ID、位置情報、検出時刻を含むレコードを追加する。位置情報は、所定の座標系で表された座標値によって表現されうる。例えば、位置情報を衛星測位により求める場合、自律航法により求める場合、任意の基準点((Wi-Fi(登録商標))アクセスポイント等)からの相対位置を三角測量法で求める場合などにはこの形式が好適である。又は、位置情報として、所定の位置に設置された検出器等の識別子を用いることとしても良い。例えば、部屋の入口に設置された入退室管理装置やRFタグの機器ID、ビーコン信号の発信機の機器IDなどが含まれうる。なお、
図4に示す例はあくまで一例にすぎず、位置の特定に利用可能な任意の情報を位置情報として用いてよい。
【0022】
また、
図5に示すように、位置情報記録部113は、位置検出部101が検出した位置情報を業務管理の目的に即した粒度に変換するための、補助的な変換テーブルを有していても良い。例えば、業務に対応する価値を従業員がいた部屋の種類に応じて決定したい場合は、座標値の範囲と部屋名との対応関係を示す変換テーブルを設けることができる。又は、検出器の機器IDと、検出器が設置された部屋名との対応関係を示す変換テーブルを設けることとしてもよい。これにより、位置検出部101が取得した座標値や機器IDから、従業員がいた部屋名を特定することが可能となる。なお、
図5に示す例はあくまで一例にすぎず、座標値や機器ID等の位置情報と対応付けられる情報は任意である。
【0023】
業務推定部103は、位置検出部101が検出し位置情報記録部113に記録された従業員の位置情報(以下、位置又は位置情報というときは、位置検出部101が検出した座標値や機器IDそのものだけでなく、これらの情報に基づいて求められる部屋名などの情報も含むものとする)に基づいて、従業員が従事している業務の内容を推定する。この推定には、位置・業務情報記憶部107及び従業員属性記憶部109が用いられる。
【0024】
従業員属性記憶部109は、従業員の属性(例えば役職、職掌など)を記憶するデータベースである。例えば、
図6に示すように、各従業員に対し「一般社員」「管理職」等の役職を割り当てることができる。
【0025】
位置・業務情報記憶部107は、業務の内容と、当該業務が実施される位置と、の対応関係を記憶するデータベースである。例えば、
図7に示すように、位置情報が「会議室」であれば業務内容は「会議」である、位置情報が「組立ライン」であれば業務内容は「組立工程」である、位置情報が「検査ライン」であれば業務内容は「検査工程」である、等の対応関係を定義する。
【0026】
位置・業務情報記憶部107は、位置情報に紐づく業務内容について、従業員の属性ごとに異なる定義をしても良い。例えば、
図8に示すように、役職が「一般社員」である従業員と、役職が「管理職」である従業員と、が同じ位置「執務室」にいる場合であっても、「一般社員」の業務内容は「事務作業」であり、「管理職」の業務内容は「部下の指導」でありうる。また、位置「会議室」に対して、役職が「一般社員」である従業員には業務内容「会議」を割り当てるが、役職が「アルバイト」である従業員には業務を割り当てないこととしても良い。
【0027】
位置・業務情報記憶部107は、所定の位置への滞留時間に応じて、異なる業務内容を定義しても良い。例えば、
図9に示すように、「客先」に相当する位置情報に一定時間以上滞留している場合には業務内容は「商談」、滞留時間が一定時間に満たない場合の業務内容は「配送」と定義できる。
【0028】
位置・業務情報記憶部107は、所定の位置に同時に滞在した従業員の数や属性に応じて、異なる業務内容を定義しても良い。例えば、位置情報「会議室」において、1人の従業員が検出された場合の業務内容は「事務作業」、複数の従業員が同時に検出された場合の業務内容は「会議」と定義できる。また、位置情報「会議室」において、属性「一般社員」の従業員と属性「管理職」の社員とが同時に検出された場合の業務内容は「面談」と定義できる。
【0029】
価値算出部105は、業務の内容に基づいて、その業務にかかる価値を算出する。算出にあたっては、価値情報記憶部111が参照される。
【0030】
価値情報記憶部111は、業務の内容と、価値と、の対応関係を記憶するデータベースである。ここでいう価値とは、業務の価値を定量的に表した指標であり、典型的には従業員に支払われる報酬の時間単価である。あるいは、報酬算定や人事評価等の基礎となるようなポイント等の数値であっても良い。例えば、
図10に示すように、業務「組立工程」については時間単価「xx円」、業務「検査工程」については時間単価「yy円」と定義できる。
【0031】
なお、価値情報記憶部111においても、位置・業務情報記憶部107と同様に、従業員の属性、滞留時間、同時に滞在した従業員の数や属性等に応じて異なる価値を任意に定義しても良い。
【0032】
価値算出部105は、位置情報記録部113を参照し、従業員の滞留位置を求める。このとき、滞留時間を計算することもできる。例えば、10時00分から10時20分にかけて位置情報Xが連続して記録されていれば、最後の検出時刻から最初の検出時刻を差し引いて得られる20分間を滞留時間とすることができる。
【0033】
また、価値算出部105は、位置・業務情報記憶部107を参照し、当該位置に対応付けられた業務内容を特定する。この際、必要に応じ従業員属性記憶部109を参照することもできる。また、価値算出部105は、価値情報記憶部111を参照し、特定された業務内容に対応付けられた価値を特定する。そして、滞留時間に価値(時間単価)を乗じることにより、従業員が行った業務の価値(総額)を算出する。最後に、価値算出部105は、算出した業務の価値(総額)を、ディスプレイに表示したり、ファイル等に記録したりして出力することができる。
【0034】
<実施例1:工場>
評価システム100を工場における業務に適用した例について説明する。
本実施例では、
図3に示すように、従業員が携行する携帯端末に位置検出部101を設ける。また、携帯端末と通信可能なサーバに業務推定部103、価値算出部105、位置・業務情報記憶部107、従業員属性記憶部109、価値情報記憶部111及び位置情報記録部113を設ける。
【0035】
(従業員の位置検出)
屋根が簡素化されている中小規模の工場では、衛星が送信する測位信号を工場内で受信できる場合がある。この場合、位置検出部101は、測位信号を受信及び解析して自己の位置を検出できる。例えば、GPSによる位置検出機能を備えたスマートフォン等の携帯端末を位置検出部101として利用できる。
【0036】
精密機械工場などの堅牢な建屋を備えた工場では、衛星が送信する測位信号を工場内で受信できない場合がある。この場合、位置検出部101は、屋内で放射されているWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)及び各種ビーコン等の電波を受信及び解析して自己の位置を検出できる。例えば、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)信号等の受信機能を備えた小型コンピュータやスマートフォン等の携帯端末を位置検出部101として利用できる。
【0037】
あるいは、入退室や工場設備の使用のための認証システムを導入している工場においては、認証システムの構成要素の一部を位置検出部101として利用しても良い。例えば、建屋や部屋の出入り口、又は工場設備の制御装置等に配置された読み取り装置(位置検出部101)が、従業員が携行するICカードや無線タグ等に記録された識別子を電子的に読み取ることにより、従業員の位置を特定することとしても良い。又は、従業員が携行するスマートフォン等が備える読み取り装置(位置検出部101)が、建屋や部屋の出入り口、又は工場設備の制御装置等に配置された無線タグ等の情報を読み取ることにより、従業員の位置を特定しても良い。
【0038】
これらの構成を組み合わせて、従業員の位置を連続的に把握することもできる。例えば、建屋の出入り口に配置された入退室管理装置、所定の室内で使用可能なWi-Fi(登録商標)信号、当該室内の特定の装置の近傍でのみ使用可能なBluetooth(登録商標)信号、室外の廊下等の要所で受信可能なビーコン信号を用いることで、従業員の位置をより精緻に特定できる。例えば、入退室管理装置による入構ログがあるがWi-Fi(登録商標)信号が受信不能であれば、従業員は建屋内の上記室外にいるものと推定できる。Bluetooth(登録商標)信号が受信不能でWi-Fi(登録商標)信号が受信可能であれば、従業員は特定の装置の近傍からは離れて室内を歩き回っているものと推定できる。かつ、ビーコン信号を受信した場合は、室外の廊下を歩いているものと推定できる。
【0039】
こうして取得された位置情報は、通信回線等を介して位置検出部101からサーバの位置情報記録部113へ随時転送され、従業員固有の識別情報及び検出時刻等の情報と対応付けられて蓄積される。
【0040】
(業務内容の特定)
業務推定部103は、位置情報記録部113を参照して、従業員の位置情報の履歴(一定時間おきに記録された、位置情報と検出時刻とのセット)を取得する。また、位置・業務情報記憶部107を参照して、位置情報に紐付けられた業務内容を特定する。業務内容に従業員の属性が紐付けられている場合は、従業員属性記憶部109を参照して従業員の属性を取得することで、さらにきめ細かに業務内容を特定できる。また、業務内容に滞留時間が紐付けられている場合は、業務推定部103は、従業員の位置情報の履歴に基づいて所定の位置への滞留時間を算出することで、さらにきめ細かに業務内容を特定できる。また、業務内容に同時に滞在した従業員の数や属性が紐付けられている場合は、位置情報記録部113を参照して、同時間帯に同じ位置に滞在した他の従業員を抽出し、従業員属性記憶部109を参照して当該他の従業員の属性を特定することで、さらにきめ細かに業務内容を特定できる。
【0041】
これにより、例えば従業員が組立ラインにいたのか、その後段の検査ラインにいたのかなどを特定できる。また、他のどのような属性の従業員と、何人で作業していたのかを特定することもできる。また、それぞれに業務にどれほどの時間を費やしたのかを特定することもできる。
【0042】
(価値の算出)
価値算出部105は、業務推定部103が特定した業務に対応する価値(時間単価)を、価値情報記憶部111を参照して特定する。また、業務推定部103が特定した業務に費やした時間を、当該業務の価値(時間単価)に乗ずることにより、価値の総額を算出する。例えば、従業員が工場内作業員であって、実行した業務の内容に応じて報酬が支払われるものとする。この場合、価値情報記憶部111には、組立工程における報酬単価、検査工程における報酬単価をそれぞれ定義しておくことができる。この際、例えば検査工程の付加価値が高いならば、検査工程には組立工程に比べて高額な報酬単価を設定できる。価値算出部105は、従業員が検査工程、組立工程など業務内容毎に作業時間を累計し、それぞれに報酬単価を乗ずることによって報酬の総額を決定することができる。
【0043】
<実施例2:オフィス>
評価システム100を、複数のフロアを有するオフィスにおける事務作業に適用した例について説明する。なお、本実施例では、実施例1との相違点に主に着目して説明を行う。特に言及のない構成については、実施例1と同様である。
【0044】
(従業員の位置検出)
複数のフロアを有する建物においては、衛星が送信する測位信号だけを用いて、高さ(フロア)情報を含む位置を特定することは難しい場合が少なくない。したがって、位置検出部101は、屋内で放射されているWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)及び各種ビーコン等の電波を受信及び解析して自己の位置を検出することが好ましい。例えば、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)信号等の受信機能を備えた小型コンピュータやスマートフォン等の携帯端末を位置検出部101として利用できる。
【0045】
あるいは、入退室や情報処理装置の使用のための認証システムを導入している工場においては、認証システムの構成要素の一部を位置検出部101として利用しても良い。例えば、社屋や部屋の出入り口、又は情報処理装置等に配置された読み取り装置(位置検出部101)が、従業員が携行するICカードや無線タグ等に記録された識別子を電子的に読み取ることにより、従業員の位置を特定することとしても良い。又は、従業員が携行するスマートフォン等が備える読み取り装置(位置検出部101)が、社屋や部屋の出入り口、又は情報処理装置等に配置された読み取り装置等に配置された無線タグ等の情報を読み取ることにより、従業員の位置を特定しても良い。
【0046】
実施例1と同様に、これらの構成を組み合わせて、従業員の位置をよりきめ細かにかつ連続的に把握することもできる。
【0047】
(業務内容の特定)
業務推定部103は、実施例1と同様に、位置情報記録部113を参照して、従業員の位置情報の履歴を取得する。また、位置・業務情報記憶部107を参照して、位置情報に紐付けられた業務内容を特定する。この際、従業員属性記憶部109等を参照し、さらにきめ細かに業務内容を特定しても良い。
【0048】
これにより、例えば時間帯ごとに、従業員がどのフロア、どの部屋、どの情報処理装置が設置された席にいたのかを特定することができる。
【0049】
(価値の算出)
価値算出部105は、実施例1と同様に、価値情報記憶部111を参照し、業務推定部103が特定した業務内容及び時間に応じた価値の総額を算出する。価値情報記憶部111では、例えばフロア、部屋、席ごとに時間単価を定義することができる。
【0050】
<実施例3:ルート営業>
評価システム100を、客先を訪問して配送や商談等の業務を行う従業員に適用した例について説明する。なお、本実施例も、実施例1との相違点に主に着目して説明を行う。特に言及のない構成については、実施例1と同様である。
【0051】
(従業員の位置検出)
屋外を移動することが多い業務においては、測位信号を受信及び解析して自己の位置を検出する手法が有効である。例えば、GPSによる位置検出機能を備えたスマートフォン等の携帯端末又は車載端末等を位置検出部101として利用できる。
【0052】
(業務内容の特定)
業務推定部103は、実施例1と同様に、位置情報記録部113を参照して、従業員の位置情報の履歴を取得する。また、位置・業務情報記憶部107を参照して、位置情報に紐付けられた業務内容を特定する。
【0053】
ここで位置・業務情報記憶部107では、客先における滞留時間に応じて、異なる業務内容が定義されていても良い。例えば、客先として予め登録された位置に一定時間以上滞留している場合には業務内容は「商談」、客先における滞留時間が一定時間に満たない場合の業務内容は「配送」、客先以外における滞留時間は「移動」又は「休憩」等と定義できる。
【0054】
また、業務推定部103は、従業員の位置情報の履歴に加え、営業管理ツールなどの外部のツールが保有する情報を用いて、業務内容をよりきめ細かに特定しても良い。例えば、位置・業務情報記憶部107により特定される業務内容が「商談」である場合、業務推定部103は営業管理ツールを参照し、同時間帯に実施された商談のステージ、成果、提案内容等を取得する。業務推定部103は、取得した商談の内容等に応じて、業務内容を「商談(レベル1)」「商談(レベル2)」・・・などとより細分化して特定することができる。
【0055】
また、業務推定部103は、従業員の位置情報の履歴に加え、営業管理ツールなどの外部のツールが保有する情報を用いて、業務内容を修正しても良い。例えば、検出された位置情報が「作業場」であり、位置・業務情報記憶部107により特定される業務内容が「技工物製作」であっても、営業管理ツールに保持されている同時間帯の作業日報の内容が「企画」である場合は、作業日報の内容を優先し、業務内容を「企画」と特定できる。よって、実際の業務内容が位置との関係においてイレギュラーであった場合でも、例えば業務の実施後に正しい業務内容を作業日報に入力するなどのステップを従業員が踏むことにより、業務推定部103は正しい業務内容を出力できる。
【0056】
これらの構成により、例えば時間帯ごとに、従業員が配送を行っていたのか、商談していたのか、他の何らかの作業をしていたのかを特定することができる。
【0057】
(価値の算出)
価値算出部105は、実施例1と同様に、価値情報記憶部111を参照し、業務推定部103が特定した業務内容及び時間に応じた価値の総額を算出する。例えば、比較的単純な作業である配送に比べて、クリエイティブな要素が強い商談の付加価値が高いとするならば、価値情報記憶部111では、商談には配送に比べて高額な報酬単価を設定できる。
【0058】
上述の実施の形態によれば、評価システム100は、予め位置情報と紐付けて定義された業務内容と、業務内容に紐付けて提示された価値と、従業員の実際の位置情報と、に基づいて、従業員の業務内容に応じた価値を算出できる。換言すれば、業務内容に応じて時間単価を変動させ、報酬等に反映することができる。これにより、雇用者は従業員に対し、業務内容に応じたインセンティブを与えることが可能となる。雇用者が、付加価値の高い業務に対しては高いインセンティブを設定することにより、従業員は、よりインセンティブの高い、すなわち付加価値が高く、比較優位性のある業務に時間を費やすよう動機づけられる。
【0059】
また、上述の実施の形態によれば、社員の属性に応じて業務内容を定義できる。これにより、より能力や権限のある従業員に対しては、付加価値すなわち時間単価がより高い業務に時間を用いるよう動機づけを与えることができる。例えば、比較的給与の高い管理職を、単純業務ではなく、よりクリエイティブな業務に誘導することが可能である。
【0060】
また、上述の実施の形態によれば、従業員の行った業務内容の特定及びその価値の算定を、位置情報の履歴という事実をベースに、一定の基準に従って自動的に行うことができるので、従業員の働き方を客観的に評価できる。従来、従業員の評価は人による報告ベースで行われており、行った業務の価値の判断基準はあいまいであった。しかしながら、本発明によれば働き方を可視化、数値化できるので、能力のある従業員に適切に報いることが可能となる。また、評価結果を従業員自身に対してフィードバックすることにより、どんな社員でも自己チェックにより業務を改善できるツールとなる。
【0061】
本発明は、例えば従業員のいる場所と業務内容とには一定の関連性があるという知見、及び、従業員のいる場所に応じて時間単価を変動させうるという構成において、従来技術にない特徴を有するものである。そして、業務の価値を可視化することで、従業員の意識を自然と、組織全体から見て価値の高い仕事のほうに向けられるという卓越した効果は、従来技術には見られない特異なものである。
【0062】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の趣旨を損なわない限りにおいて任意に変更されて良い。例えば、位置・業務情報記憶部107又は価値情報記憶部111においては、様々なファクターに応じて多様な業務及び価値を定義することが可能である。一例として、時間帯に応じて業務の価値を変動させるよう構成しても良い。具体的には、朝に事務作業を実施し、午後に客先訪問を行うことが望ましいとされる企業であれば、午前中の事務作業の価値を午後よりも高く定義し、午後の客先訪問の価値を午前より高く設定するなどして、よりきめ細かな誘導を行うこともできる。
【0063】
また、位置検出部101、業務推定部103又は価値算出部105は、営業管理ツールなどの外部のツールが保有する情報を用いて、業務内容のみならず位置又は価値を修正しても良い。例えば、作業日報から、従業員が訪問した位置情報、一緒に作業を行った他の従業員の情報、特殊な業務内容等が取得されたならば、取得された情報に応じて、位置、業務又は価値にかかる情報を修正することができる。また、評価システム100は、これらの情報を外部のツールから取得する代わりに、従業員が評価システム100に直接入力するためのインタフェースを提供しても良い。
【符号の説明】
【0064】
100 評価システム
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 不揮発性メモリ
18 インタフェース
10 バス
60 入出力装置
101 位置検出部
103 業務推定部
105 価値算出部
107 位置・業務情報記憶部
109 従業員属性記憶部
111 価値情報記憶部
113 位置情報記録部