(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】足踏み式スタンパ
(51)【国際特許分類】
B41K 3/04 20060101AFI20240603BHJP
B41K 1/52 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B41K3/04 Z
B41K1/52 A
(21)【出願番号】P 2020179758
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】森本 哲生
(72)【発明者】
【氏名】河内 孝司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏彰
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3230744(JP,U)
【文献】特開2012-30283(JP,A)
【文献】特開2005-96154(JP,A)
【文献】特開2015-182399(JP,A)
【文献】米国特許第5611984(US,A)
【文献】独国実用新案第202015000407(DE,U1)
【文献】中国実用新案第206030814(CN,U)
【文献】中国実用新案第209426388(CN,U)
【文献】中国実用新案第208180570(CN,U)
【文献】特開2000-94812(JP,A)
【文献】特開平6-8608(JP,A)
【文献】実開昭57-189788(JP,U)
【文献】実開昭50-33876(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41K 1/00-3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に昇降ロッドを備えた
中空の支柱と、
前記支柱の下部に設けられて
前記昇降ロッドを操作する足踏み部と、
前記支柱の上部に固定されたテーブルと、このテーブルよりも更に上方位置で
前記昇降ロッドに支持され、
前記テーブルに対して昇降可能なスタンプ支持部とを備え、
前記昇降ロッドの下端には、
前記昇降ロッドを常に上向きに付勢する第1スプリングが配置され、
前記昇降ロッドの上端と
、前記昇降ロッドにスライド自在に取り付けられた前記スタンプ支持部との間には、スタンプの印面にかかる荷重を緩和する第2スプリングが配置され
、
前記足踏み部には、最大踏み込み量を規制するストッパが設けられていることを特徴とする足踏み式スタンパ。
【請求項2】
スタンプ支持部に、インク自給式スタンプが装着されていることを特徴とする請求項1に記載の足踏み式スタンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンプに手を触れることなく捺印することができる足踏み式スタンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道駅、道の駅、市内や観光地などある一定のテーマの中でスタンプを集めるスタンプラリーには、多くのスタンプが用いられている。これらのスタンプは不特定多数の人が手で握って捺印するものであるため、新型コロナウイルス等の感染媒体となるリスクが想定される。
【0003】
この感染リスクをなくすためには、スタンプラリー用スタンパとして、特許文献1に示されるような電動式の捺印装置を利用することも考えられる。しかし、このような電動式の捺印装置はモータやその制御回路が必要となるため装置が高価となること、設置場所に電源が必要となること、小さい子供には危険であることなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
従って本発明の目的は、製作コストが安価であり、使用者が手を触れることなく安全に捺印することができる足踏み式スタンパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明の足踏み式スタンパは、内部に昇降ロッドを備えた中空の支柱と、前記支柱の下部に設けられて前記昇降ロッドを操作する足踏み部と、前記支柱の上部に固定されたテーブルと、このテーブルよりも更に上方位置で前記昇降ロッドに支持され、前記テーブルに対して昇降可能なスタンプ支持部とを備え、前記昇降ロッドの下端には、前記昇降ロッドを常に上向きに付勢する第1スプリングが配置され、前記昇降ロッドの上端と、前記昇降ロッドにスライド自在に取り付けられた前記スタンプ支持部との間には、スタンプの印面にかかる荷重を緩和する第2スプリングが配置され、前記足踏み部には、最大踏み込み量を規制するストッパが設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
スタンプ支持部に、インク自給式スタンプが装着されていることが好ましい。インキ自給式スタンプとは、インク吸蔵体を内蔵し、連続気孔を備えた材質からなる印面にインクが自然に供給される構造のものの他に、表面に表布などが貼られたインキ吸蔵体を上部に、ゴム印、樹脂印などの非浸透素材を下部に備え、反転機構を用いて、捺印を行う構造のものが含まれる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の足踏み式スタンパは、手を使わずに捺印操作を行うことができるので、新型コロナウイルス等の感染媒体となるリスクをなくすことができる。また本発明の足踏み式スタンパは動力源を必要とせず、構造が簡単であり、安価に製作することができる。しかもスタンプの印面にかかる荷重を第2スプリングで調整し緩和することができるので、もし子供が指を挟んだとしても安全である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の足踏み式スタンパを示す一部切欠正面図である。
【
図2】実施形態の足踏み式スタンパを示す一部切欠側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態を示す。
図1は実施形態の足踏み式スタンパを示す一部切欠正面図、
図2は一部切欠側面図である。
【0011】
これらの図において、10は床面に置かれる基台、11はこの基台10の上方に立設された垂直な支柱である。この実施形態では支柱11は中空で断面円形のパイプであり、その中心に昇降ロッド12が設けられている。この昇降ロッド12の下部には昇降ロッド12を常に上向きに付勢する第1スプリング13が配置されている。昇降ロッド12の上部は、支柱11に固定された中空のガイド14によって支柱11の中心に昇降自在に支持されており、外力を加えられない状態では、昇降ロッド12は第1スプリング13によって
図2に示す上方位置に押し上げられている。
【0012】
支柱11の下部の基台10上には、足踏み部15が設けられている。この足踏み部15はペダル16の一端を水平なペダル回転軸17によって支持したもので、ペダル16の先端は
図2に示されるように第1スプリング13の上面に達している。そのためペダル16の先端は第1スプリング13により
図2の位置に押し上げられているが、利用者がペダル16を踏み込めば、昇降ロッド12は第1スプリング13を圧縮しつつ
図3、
図4のように下降する。
図1に示すようにペダル16の裏面にはストッパ18が取り付けられており、ペダル16の最大踏み込み量を規制している。基台10はペダル16を踏み込んでも全体が転倒しないサイズとしておくものとする。
【0013】
図2に示すように、支柱11の上部にはテーブル20が固定されている。テーブル20は片持ち式に支柱11の片側に張り出し、その上面に捺印台21が設けられている。捺印用紙はこの捺印台21の上に置かれ、以下に説明するスタンプ30によって捺印される。捺印台21は捺印に適した弾性材料で構成することが好ましい。なおテーブル20の高さは、子供でも使用できる高さとしておくことが望ましい。
【0014】
このテーブル20よりも更に上方位置には、テーブル20に対して昇降可能なスタンプ支持部31が設けられている。この実施形態のスタンプ支持部31は、水平腕板32と傾斜腕板33の先端に、スタンプ30を装着できる構造である。スタンプ30としては、インク自給式スタンプ、即ちインク吸蔵体を内蔵し、連続気孔を備えた材質からなる印面にインクが自然に供給される構造のもの、若しくは、表面に表布などが貼られたインキ吸蔵体を上部に、ゴム印、樹脂印などの非浸透素材を下部に備え、反転機構を用いて、捺印を行う構造のものが好ましい。スタンプ30はスタンプ支持部31に対して着脱自在とし、容易に交換できるようにしておくことが好ましい。
【0015】
スタンプ支持部31の水平腕板32と傾斜腕板33は、支柱11の前面に形成された縦長の開口34を通じて昇降ロッド12に達している。35は昇降ロッド12の外周にスライド自在に設けられた支持パイプであり、水平腕板32と傾斜腕板33の間隔を一定に維持している。水平腕板32は昇降ロッド12に固定された支持ナット36の上面で支持されている。このため、昇降ロッド12が
図2に示す上昇位置にあるときには、水平腕板32と傾斜腕板33も上昇位置にあり、スタンプ30と捺印台21との間に捺印用紙を差し込むことができる。
【0016】
昇降ロッド12の上端にはスプリング受け37が固定されており、スタンプ支持部31の傾斜腕板33との間に、第2スプリング40が配置されている。この第2スプリング40は
図2に示すように、スタンプ支持部31を常に支持ナット36に向けて下向きに弾発している。
【0017】
使用者は
図2に示された状態で捺印台21の上に捺印用紙を差し込み、ペダル16を踏み込む。すると
図3に示すように昇降ロッド12が下降し、昇降ロッド12に固定された支持ナット36も下降するので、支持ナット36に支持されているスタンプ支持部31及びスタンプ30も下がり、スタンプ30の下面である印面が捺印台21の上に置かれた捺印用紙と接触する。
【0018】
この状態から更にペダル16を踏み込むと昇降ロッド12は
図4に示すように更に下降する。しかしスタンプ30の印面は捺印台21により下降を妨げられるのでスタンプ支持部31及びスタンプ30はその位置にとどまり、昇降ロッド12のみが更に下降する。このため第2スプリング40の上端は昇降ロッド12の上端に固定されたスプリング受け37により押し下げられ、スタンプ支持部31に下向きの力を加える。その結果、スタンプ30の印面は第2スプリング40の弾発力によって捺印用紙に押し付けられ、捺印が行われる。
【0019】
このペダル16の最大踏み込み量はストッパ18により規制され、昇降ロッド12の下降ストロークが決定される。昇降ロッド12が最も下降したときに捺印に適した弾発力が作用するように第2スプリング40のストロークと弾発力(ばね定数)を設定しておけば、使用者はペダル16をストッパ18により規制される位置まで踏み込むだけで、常に最適な捺印力で捺印することができる。
【0020】
また、スタンプ支持部31を昇降ロッド12に直接固定した場合(図示しない)にはペダル16の踏み込み力がそのままスタンプ30の印面に作用する為、子供が誤って指を挟んだ際にけが等をする危険性があったが、スタンプ支持部31が昇降ロッド12にスライド自在に固定されている本発明の実施形態では、昇降ロッド12の上端とスタンプ支持部31との間に第2スプリング40を配置されており、スタンプ30の印面にかかる荷重が、直接の踏み込み力から、バネの弾性力に置き換えられることにより緩和される為、万一子供が指先をスタンプ30の下に入れたとしても、安全である。なお、スタンプ30と捺印台21との隙間を小さくし、指先を挿入できないようにしておけば更に安全である。
【0021】
その後ペダル16から足を上げれば、ペダル16は第1スプリング13により持ち上げられ、昇降ロッド12も上昇して
図1の初期状態に復帰する。一般に、第1スプリング13は昇降ロッド12、スタンプ支持部31、スタンプ30の総重量を持ち上げる必要があるため強いバネ力を必要とするが、第2スプリング40はスタンプ30の印面に所定の捺印力を作用させるものであるから、第1スプリング13よりも弱いバネ力でよい。このため、本発明の実施形態では、第1スプリング13を第2スプリング40よりも強いスプリングとし、そのストロークも第1スプリング13を踏み込んだ際に、第2スプリング40が縮みきらないように第2スプリング40のストロークや、支持ナット36、捺印台21の高さなどを調整しておく。
なお、第1スプリングと第2スプリングとの反発力の強さ関係は限定されず、捺印対象者及び、設置する捺印治具、用いる支柱の大きさなどにより適宜に設置することが出来る。
【0022】
上記したように、本発明の足踏み式スタンパによれば、使用者は自分の捺印紙や捺印帳をスタンプ30と捺印台21との間に差し込み、ペダル16を踏み込むだけで捺印が可能となる。このため不特定多数の人が使用しても、新型コロナウイルス等の感染媒体となるリスクを避けることができる。
【0023】
また本発明の足踏み式スタンパは、モータなどの動力源を必要としないので、電源のない場所にも設置することができるうえ、安価に製作することができ、スタンプラリー以外の用途にも広く用いることができる。
【0024】
更に本発明の足踏み式スタンパは、スタンプ30の印面にかかる荷重を第2スプリング40により調整し、緩和しているため、鮮明な捺印が可能であるうえ、仮に指先を挟んだとしても安全である。
【0025】
以上に本発明の好ましい実施形態を説明したが、スタンプ支持部31を水平腕板32と傾斜腕板33とによって構成せず、単一の部材により構成することも可能である。また、支柱11を角柱とすることも可能である。このように、本発明は上記した実施形態の構造に限定されるものではなく、その具体的な形状や構造については適宜変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0026】
10 基台
11 支柱
12 昇降ロッド
13 第1スプリング
14 ガイド
15 足踏み部
16 ペダル
17 ペダル回転軸
18 ストッパ
20 テーブル
21 捺印台
30 スタンプ
31 スタンプ支持部
32 水平腕板
33 傾斜腕板
34 開口
35 支持パイプ
36 支持ナット
37 スプリング受け
40 第2スプリング