(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】溝谷型土石流降雨閾値の計算方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20240603BHJP
E02B 1/00 20060101ALI20240603BHJP
G01D 21/00 20060101ALI20240603BHJP
G01W 1/00 20060101ALI20240603BHJP
G01W 1/10 20060101ALI20240603BHJP
G06Q 50/26 20240101ALI20240603BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20240603BHJP
G08B 31/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
E02D17/20 106
E02B1/00 Z
E02D17/20 101
G01D21/00 Z
G01W1/00 Z
G01W1/10 P
G06Q50/26
G08B21/00 A
G08B31/00
(21)【出願番号】P 2023117685
(22)【出願日】2023-07-19
【審査請求日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】202310824032.2
(32)【優先日】2023-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518398497
【氏名又は名称】成都理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】魏 振磊
(72)【発明者】
【氏名】範 宣梅
(72)【発明者】
【氏名】張 宗碩
(72)【発明者】
【氏名】楊 杰
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-200972(JP,A)
【文献】特開2001-208574(JP,A)
【文献】特開2010-049433(JP,A)
【文献】特開2013-221800(JP,A)
【文献】特開2023-029115(JP,A)
【文献】特開2004-244947(JP,A)
【文献】特開2002-070029(JP,A)
【文献】特開2003-184098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
E02B 1/00
G01D 21/00
G01W 1/10
G06Q 50/26
G08B 21/00
G08B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝谷型土石流降雨閾値の計算方法であって、以下のステップ:
S1、溝谷型土石流流域の極端な降雨特徴を得、溝谷型土石流の異なる降雨再現期の
各々の降雨強度を計算すること、
S2、S1ステップ
で得られた各々の降雨強度を入力とし、溝谷型土石流流域の異なる降雨再現期の
各々の降雨条件での流出量ハイドログラフを算出すること、
S3、S2ステップで得られた流出量ハイドログラフを入力とし、溝谷型土石流流域の異なる計算ユニット
毎に水動力条件を算出することによって、溝谷型土石流流域の異なる計算ユニット
毎の水動力強度を算出すること、
S4、溝谷型土石流流域の基本資料を得、溝谷型土石流の起動に必要な臨界水動力強度を算出すること、
S5、S3ステップで得られた溝谷型土石流流域の異なる計算ユニットの
各々の水動力強度とS4ステップで得られた溝谷型土石流の起動の臨界水動力強度を比較し、算出された水動力強度が臨界水動力強度以上の場合、この計算ユニットが不安定ユニットであり、算出された水動力強度が臨界水動力強度未満の場合、この計算ユニットが安定ユニットであり、不安定ユニットの総面積及び土石流流域全体の割合を計算することによって、異なる降雨再現期の
各々の降雨条件で溝谷型土石流が発生するか否かを判断すること、
を含み、
ステップS1における極端な降雨特徴は、溝谷型土石流流域の5年に一度、10年に一度、20年に一度及び100年に一度の極端な降雨データを含
み、
ステップS3における溝谷型土石流流域の異なる計算ユニットの各々の水動力条件は以
式(4)、(5)、(6)、(7)と(8)において、hは水深で、mであり、uはx方向での流出速度で、m/sであり、vはy方向での流出速度で、m/sであり、ρは水密度で、kg/m
3
であり、gは重力加速度であり、θは溝床の勾配で、°であり、μ
x
は水流と地面との摩擦応力のx方向の成分で、Paであり、μ
y
は水流と地面との摩擦応力のy方向の成分で、Paであり、
【請求項2】
は溝谷型土石流流域の平均値降雨量で、mmである、ことを特徴とする請求項1に記載の溝谷型土石流降雨閾値の計算方法。
【請求項3】
ステップS2において、溝谷型土石流流域の異なる降雨再現期の降雨条件での流出量ハイドログラフは以下の式で計算し、
式において、Qは土石流流域の地表流出深さで、mmであり、Cは降雨量で、mmであり、Aは土石流流域の含水量で、mmであり、A
maxは土石流流域の最大含水量mmであり、Dは土石流流域の地表流出係数であり、Bは土石流流域の地表流出閾値である、ことを特徴とする請求項1に記載の溝谷型土石流降雨閾値の計算方法。
【請求項4】
【請求項5】
ステップS5において、不安定ユニットの総面積の占める割合が10%以上の場合、この降雨イベントが土石流の発生につながると判断し、不安定ユニットの総面積の占める割合が10%未満の場合、この降雨イベントが土石流の発生につながらないと判断し、溝谷型土石流を誘発する降雨イベントと土石流を誘発できない降雨イベントを区別することにより、溝谷型土石流の降雨閾値を決定する、ことを特徴とする請求項1に記載の溝谷型土石流降雨閾値の計算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土石流防除工事の技術分野に関し、特に溝谷型土石流降雨閾値の計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溝谷型土石流とは、通常坂道侵食を主とする土石流であり、南西山岳地帯の流域でよく発生するものであり、応用が簡単で必要なパラメータが少ないため、現在最も広い降雨閾値モデルを使用しているのは、経験統計に基づく降雨閾値モデルである。経験統計に基づく溝谷型土石流降雨閾値の決定は、一般的に溝谷型土石流を誘発する歴史的降雨イベントを統計し、その降雨強度、経時的条件を両対数座標にプロットし、関連統計分析ソフトウェアを用いてこれらのデータポイントの下限百分水平線をフィッティングし、このベキ指数曲線又は線形線が対応する降雨閾値である。その中で最もよく使われるのはI-Dモデルで、Iは平均降雨強度を表し、Dは降雨経時時間を表している。経験統計に基づく降雨閾値であるI-D閾値モデルは応用が簡単であるが、土石流の誘発は降雨量だけで決まるわけではないため、地形、物質源条件の違いなどはすべて閾値モデルの予測結果に影響する。経験統計に基づく降雨閾値は岩土体と外界環境の作用メカニズムを考慮しないため、多くの誤判定が発生する。
【0003】
溝谷型土石流の誘発に対して、溝内の超強力な水動力条件は根本的な制御要素であるため、現在、いくつかの研究は、水文過程と溝谷型土石流の降雨閾値を結び付けて、水文モデルで異なる降雨条件又は異なる降雨イベントでの溝谷ピーク流量を計算し、そして、算出された溝谷ピーク流量と溝谷型土石流を誘発する臨界流量を比較する。即ち、算出された溝谷ピーク流量が溝谷型土石流を誘発するピーク流量以上であれば、この降雨イベントは溝谷型土石流を誘発すると考え、算出された溝谷ピーク流量が溝谷型土石流を誘発するピーク流量未満であれば、この降雨イベントは溝谷型土石流を誘発しないと考え、溝谷型土石流が発生する降雨閾値を決定する。しかし、現在溝谷ピーク流出量に基づく溝谷型土石流降雨閾値の計算方法は、溝谷型土石流が発生したか否かしか判断できなく、溝谷型土石流の発生規模、どこで発生するかについては判断できないため、限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来の技術の欠点を克服し、溝谷型土石流降雨閾値の計算方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、以下の技術案によって実現され、溝谷型土石流降雨閾値の計算方法であって、以下のステップを含み、
S1、溝谷型土石流流域の極端な降雨特徴を得、溝谷型土石流の異なる降雨再現期の降雨強度を計算し、
S2、S1ステップにおける異なる降雨再現期の降雨強度を入力とし、溝谷型土石流流域の異なる再現期の降雨条件での流出量ハイドログラフを算出し、
S3、S2ステップで得られた流出量ハイドログラフを入力とし、溝谷型土石流流域の異なる計算ユニットの水動力条件を算出することによって、溝谷型土石流流域の異なる計算ユニットの水動力強度を算出し、
S4、溝谷型土石流流域の基本資料を得、溝谷型土石流の起動に必要な臨界水動力強度を算出し、
S5、S3ステップで得られた溝谷型土石流流域の異なる計算ユニットの水動力強度とS4ステップで得られた溝谷型土石流の起動の臨界水動力強度を比較し、算出された水動力強度が臨界水動力強度以上の場合、この計算ユニットが不安定ユニットであり、算出された水動力強度が臨界水動力強度未満の場合、この計算ユニットが安定ユニットであり、不安定ユニットの総面積及び土石流流域全体の割合を計算することによって、異なる再現期の降雨条件での溝谷型土石流の発生規模を判断する。
【0006】
具体的には、ステップS1における極端な降雨特徴は、溝谷型土石流流域の5年に一度、10年に一度、20年に一度及び100年に一度の極端な降雨を含む。
【0007】
具体的には、ステップS1における溝谷型土石流の異なる降雨再現期の降雨強度は以下の式で計算でき、
は溝谷型土石流流域の平均値降雨量で、mmである。
【0008】
具体的には、ステップS2において、溝谷型土石流流域の異なる再現期の降雨条件での流出量ハイドログラフは以下の式で計算し、
式において、Qは土石流流域の地表流出深さで、mmであり、Cは降雨量で、mmであり、Aは土石流流域の含水量で、mmであり、A
maxは土石流流域の最大含水量mmであり、Dは土石流流域の地表流出係数であり、Bは土石流流域の地表流出閾値である。
【0009】
具体的には、ステップS3における溝谷型土石流流域の異なる計算ユニットの水動力条件は以下の式で求められ、
式においてtは時間を表し、aは流量変数を含むベクトルであり、bとcはxとy方向の流量ベクトルであり、E
1とE
2はそれぞれ床面勾配と摩擦効果源項ベクトルであり、
ここで、aは以下の式で求められ、
bは以下の式で求められ、
cは以下の式で求められ、
E
1は以下の式で求められ、
E
2は以下の式で求められ、
式(4)、(5)、(6)、(7)と(8)において、hは水深で、mであり、uはx方向での流出速度で、m/sであり、vはy方向での流出速度で、m/sであり、ρは水密度で、kg/m
3であり、gは重力加速度であり、θは溝床の勾配で、°であり、μ
xは水流と地面との摩擦応力のx方向の成分で、Paであり、μ
yは水流と地面との摩擦応力のy方向の成分で、Paである。
【0010】
具体的には、ステップS3におけるμ
xは以下の式で求められ、
μ
yは以下の式で求められ、
式(9)と(10)におけるδは粗さ係数であり、以下の式で求められ、
式においてηはマニング係数を表す。
【0011】
具体的には、ステップS3における溝谷型土石流流域の異なる計算ユニットの水動力強度F
*は以下の式で計算し、
式において、d
50は溝谷型土石流の物質源土質量の累計含有量が50%に達する時に対応する粒径を表し、ρ
sは物質源土の密度を表し、g/cm
3である。
【0012】
具体的には、ステップS4において、溝谷型土石流の起動に必要な臨界水動力強度Fcは以下の式で求められ、
ここで、X=0.407ln(142tanθ)であり、θは土石流流域の溝床勾配を表す。
【0013】
具体的には、ステップS5において、不安定ユニットの総面積の占める割合が10%以上の場合、即ちこの降雨イベントが土石流の発生につながると考え、不安定ユニットの総面積の占める割合が10%未満の場合、この降雨イベントが土石流の発生につながらないと考え、溝谷型土石流を誘発する降雨イベントと土石流を誘発できない降雨イベントを区別することにより、溝谷型土石流の降雨閾値を決定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以下の利点を有する。
【0015】
1、本発明は、溝谷型土石流領域の極端な降雨分布特徴、溝谷型土石流集水域の降雨流出関係、及び溝谷型土石流形成領域の水動力条件を結び付けている。従来の土石流降雨閾値の計算方法より、溝谷型土石流形成領域の地形、下敷層及び物質源条件の差異の影響を考えるため、降雨閾値計算の精度を向上させ、誤判定の発生を減少させ、溝谷型土石流災害の危険性評価により合理的かつ正確な根拠を提供することができ、良好なユビキタス性を有する。
【0016】
2、本発明で確立された溝谷型土石流降雨閾値の計算方法は、溝谷型土石流が発生したか否かだけではなく、土石流の発生規模も判断できるため、より良い適用性を有する。
【0017】
3、本発明の計算に必要なパラメータが少なく、且つパラメータの取得が容易で、計算精度が高く、前期の大量調査作業が不足している場合の溝谷型土石流降雨閾値の迅速な確立に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の溝谷型土石流降雨閾値の計算方法の原理概略図である。
【
図2】本発明の実施例における降雨経時が1時間の異なる降雨再現期条件での流出量ハイドログラフである。
【
図3】本発明の実施例における降雨経時が3時間の異なる降雨再現期条件での流出量ハイドログラフである。
【
図4】本発明の実施例における降雨経時が6時間の異なる降雨再現期条件での流出量ハイドログラフである。
【
図5】本発明の実施例における降雨経時が24時間の異なる降雨再現期条件での流出量ハイドログラフである。
【
図6】本発明の実施例における降雨経時が1時間の異なる降雨再現期条件での土石流流域の水動力強度F*の分布概略図である。
【
図7】本発明の実施例における降雨経時が3時間の異なる降雨再現期条件での土石流流域の水動力強度F*の分布概略図である。
【
図8】本発明の実施例における降雨経時が6時間の異なる降雨再現期条件での土石流流域の水動力強度F*の分布概略図である。
【
図9】本発明の実施例における降雨経時が24時間の異なる降雨再現期条件での土石流流域の水動力強度F*の分布概略図である。
【
図10】本発明の実施例における溝谷型土石流の降雨閾値の大きさの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、溝谷型土石流降雨閾値の計算方法であって、以下のステップを含み、
S1、溝谷型土石流流域の極端な降雨特徴を得、極端な降雨特徴は、溝谷型土石流流域の5年に一度、10年に一度、20年に一度及び100年に一度の極端な降雨を含み、以下の式によって溝谷型土石流の異なる降雨再現期の降雨強度を計算し、
S2、S1ステップにおける異なる降雨再現期の降雨強度を入力とし、以下の式によって溝谷型土石流流域の異なる再現期の降雨条件での流出量ハイドログラフを算出し、
式において、Qは土石流流域の地表流出深さで、mmであり、Cは降雨量で、mmであり、Aは土石流流域の含水量で、mmであり、A
maxは土石流流域の最大含水量mmであり、Dは土石流流域の地表流出係数であり、Bは土石流流域の地表流出閾値であり、
S3、S2ステップで得られた溝谷型土石流流域の異なる再現期の降雨条件での流出量ハイドログラフを入力とし、以下の式によって溝谷型土石流流域の異なる計算ユニットの水動力条件を算出し、水動力条件は流出深さと流出流速を含み、
式においてtは時間を表し、aは流量変数を含むベクトルであり、bとcはそれぞれxとy方向の流量ベクトルであり、E
1とE
2はそれぞれ床面勾配と摩擦効果源項ベクトルであり、
ここで、aは以下の式で求められ、
bは以下の式で求められ、
cは以下の式で求められ、
E
1は以下の式で求められ、
E
2は以下の式で求められ、
式(4)、(5)、(6)、(7)と(8)において、hは水深で、mであり、現場監視で収集するか、又は基礎データで決定し、uはx方向での流出速度で、m/sであり、現場監視で収集するか、又は基礎データで決定し、vはy方向での流出速度で、m/sであり、現場監視で収集するか、又は基礎データで決定し、ρは水密度で、kg/m
3であり、gは重力加速度であり、θは溝床の勾配で、°であり、基礎データで決定し、μ
xは水流と地面との摩擦応力のx方向の成分で、Paであり、μ
yは水流と地面との摩擦応力のy方向の成分で、Paであり、
μ
xは以下の式で求められ、
μ
yは以下の式で求められ、
式(9)と(10)において、δは粗さ係数であり、以下の式で求められ、
式においてηはマニング係数を表し、基礎データで決定することができ、gは重力加速度であり、hは水深で、mであり、現場監視で収集するか、又は基礎データで決定し、
そして以下の式によって溝谷型土石流流域の異なる計算ユニットの水動力強度F
*を算出し、
式において、d
50は溝谷型土石流の物質源土質量の累計含有量が50%に達する時に対応する粒径を表し、基礎データで決定し、ρ
sは物質源土の密度を表し、g/cm
3であり、基礎データで決定し、
S4、土石流流域の溝床勾配、土石流流域物質源の粒度分布と容積重量を含む溝谷型土石流流域の基本資料を得、以下の式によって溝谷型土石流の起動に必要な臨界水動力強度Fcを算出し、
ここで、X=0.407ln(142tanθ)であり、θは土石流流域の溝床勾配を表し、°である、基礎データで決定し、
S5、S3ステップで得られた異なる再現期の降雨条件での土石流流域の異なる計算ユニットの水動力強度F*と土石流の起動に必要な臨界水動力強度Fcを比較し、土石流が発生するか否かを判断し、一つの計算ユニットに対応するF*がFc以上の場合、この計算ユニットは不安定ユニットと判定され、即ち土石流がこの計算ユニットで発生し、一つの計算ユニットに対応するF*値がFc未満の場合、この計算ユニットは安定ユニットと判定され、即ち土石流がこの計算ユニットで発生せず、不安定ユニットの総面積又は土石流流域全体の面積に対する不安定ユニットの総面積の割合を統計することにより、溝谷型土石流が発生するか否か及び発生規模を判定することができ、不安定ユニットの総面積の占める割合が10%以上の場合、この降雨イベントが土石流の発生につながると判断し、不安定ユニットの総面積の占める割合が10%未満の場合、この降雨イベントが土石流の発生につながらないと判断し、溝谷型土石流を誘発する降雨イベントと土石流を誘発できない降雨イベントを区別することにより、溝谷型土石流の降雨閾値を決定する。現場調査で取得されたデータを総称して本技術案の基礎データとする。
【0020】
中国XX省FD市RR省道のある溝谷型土石流が発生しやすい小流域を例にして、その溝谷型土石流流域の物質源粒度分布と溝谷型土石流流域の地形条件を表1、表2に示す。
【0021】
【0022】
【0023】
土石流形成領域の物質源の粒径分布と溝谷地形の特徴を結び付けて、以下の式によって、
【0024】
この土石流流域の起動の臨界水動力強度Fcは0.14であると計算でき、
降雨再現期の理論に基づいて、その異なる降雨再現期条件での降雨分布を表3に示す。
【0025】
【0026】
式(2)によって異なる降雨再現期条件での流出量ハイドログラフを得ることができ、
図2-
図5に示すように、
得られた流出量ハイドログラフを入力とし、(4)-(12)によって求め、各計算ユニットの水動力強度F
*を得、算出された水動力強度F
*が土石流の起動の臨界水動力強度F
c以上の場合、このユニットが不安定ユニットであり、算出されたF
*が土石流の起動の臨界水動力強度F
c未満の場合、このユニットが安定ユニットであり、
図6-
図9は異なる降雨再現期条件での土石流形成領域の水動力強度F
*の分布状況を表し、
土石流流域面積に対する不安定ユニットの総面積の割合が10%以上の場合、この降雨イベントが溝谷型土石流の発生につながると判断し、土石流流域面積に対する不安定ユニットの総面積の割合が10%未満の場合、この降雨イベントが溝谷型土石流の発生につながらないと判断し、溝谷型土石流を誘発する降雨イベントと土石流を誘発できない降雨イベントを区別することにより、溝谷型土石流の降雨閾値が大きいと判断し、
図10に示す。
【要約】 (修正有)
【課題】溝谷型土石流降雨閾値の計算方法を提供する。
【解決手段】異なる再現期の降雨条件での流出量ハイドログラフ、異なる計算ユニットの水動力強度を算出した上で、溝谷型土石流の起動に必要な臨界水動力強度を算出し、土石流形成領域の異なる計算ユニットの水動力強度と溝谷型土石流の起動の臨界水動力強度を比較して、計算ユニットの安定性を判定し、不安定ユニットがある面積の割合を計算し、該当する降雨イベントが土石流につながるか否かを判定する。本発明の利点は、溝谷型土石流が発生したか否かだけではなく、土石流の発生規模も判断できるため、より良い適用性を有することである。
【選択図】
図1