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特許7497000情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/30 20180101AFI20240603BHJP
【FI】
G16H50/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023122064
(22)【出願日】2023-07-26
【審査請求日】2023-10-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517013771
【氏名又は名称】ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003546
【氏名又は名称】弁理士法人伊藤IP特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 空
(72)【発明者】
【氏名】白瀧 康人
【審査官】原 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-036409(JP,A)
【文献】特開2022-157474(JP,A)
【文献】石澤 哲郎,心療内科産業医と取り組むストレスチェック集団分析 職場改善への活用手順と実践例,初版,日本,第一法規株式会社,2020年03月30日,pp. 36-50
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザのストレスの度合いを評価する情報処理装置であって、
ストレスについての原因、反応、影響要因に関する3つの領域を含んだ簡易調査票に対する前記ユーザからの回答情報を取得することと、
前記回答情報に基づいて前記ユーザのストレスの度合いを評価することと、
を実行する制御部を備え、
前記制御部は、
所定の基準調査票における前記3つの領域の各領域についての所定の分析に基づいて生成された前記簡易調査票に対する前記回答情報を取得し、
前記簡易調査票における前記3つの領域のうちの前記原因の領域には、前記基準調査票での前記原因の領域において因子負荷量が所定値以上の質問を分類することで生成された、仕事の量的・質的な負担、働きがいの欠如・適正の不一致、人間関係の問題、コントロール感の欠如の4つの原因因子の中から選択された質問である第1質問群が含まれ、
前記第1質問群は、仕事の量的負担、及び仕事のコントロールに関する質問によって構成される
情報処理装置。
【請求項2】
ユーザのストレスの度合いを評価する情報処理装置であって、
ストレスについての原因、反応、影響要因に関する3つの領域を含んだ簡易調査票に対する前記ユーザからの回答情報を取得することと、
前記回答情報に基づいて前記ユーザのストレスの度合いを評価することと、
を実行する制御部を備え、
前記制御部は、
所定の基準調査票における前記3つの領域の各領域についての所定の分析に基づいて生成された前記簡易調査票に対する前記回答情報を取得し、
前記簡易調査票における前記3つの領域のうちの前記反応の領域には、前記基準調査票での前記反応の領域において因子負荷量が所定値以上の質問を分類することで生成された、抑うつ・不安、心身の疲労感の2つの反応因子の中から選択された質問である第2質問群が含まれ、
前記第2質問群は、不安、及び心身の疲労感に関する質問によって構成される
情報処理装置。
【請求項3】
ユーザのストレスの度合いを評価する情報処理装置であって、
ストレスについての原因、反応、影響要因に関する3つの領域を含んだ簡易調査票に対する前記ユーザからの回答情報を取得することと、
前記回答情報に基づいて前記ユーザのストレスの度合いを評価することと、
を実行する制御部を備え、
前記制御部は、
所定の基準調査票における前記3つの領域の各領域についての所定の分析に基づいて生成された前記簡易調査票に対する前記回答情報を取得し、
前記簡易調査票における前記3つの領域のうちの前記影響要因の領域には、前記基準調査票での前記影響要因の領域において因子負荷量が所定値以上の質問を分類することで生成された、上司・同僚からのサポート、家族・友人からのサポートの2つの影響要因因子の中から選択された質問である第3質問群が含まれ、
前記第3質問群は、職場からの支援、及び家族・友人からの支援に関する質問によって構成される
情報処理装置。
【請求項4】
ユーザのストレスの度合いを評価する情報処理装置であって、
ストレスについての原因、反応、影響要因に関する3つの領域を含んだ簡易調査票に対する前記ユーザからの回答情報を取得することと、
前記回答情報に基づいて前記ユーザのストレスの度合いを評価することと、
を実行する制御部を備え、
前記制御部は、
所定の基準調査票における前記3つの領域の各領域についての所定の分析に基づいて生成された前記簡易調査票に対する前記回答情報を取得し、
前記3つの領域のうちの前記反応の領域における評価結果である反応評価結果が所定の第1評価基準以上である場合、前記3つの領域のうちの前記原因の領域及び前記影響要因の領域の評価結果によらず、前記ユーザのストレスの度合いを高ストレス状態と評価するとともに、
前記反応評価結果が前記第1評価基準未満で且つ所定の第2評価基準以上である場合、前記3つの領域のうちの前記原因の領域及び前記影響要因の領域の評価結果の合計が所定の第3評価基準以上であると、前記ユーザのストレスの度合いを前記高ストレス状態と評価し、
前記第1評価基準は、前記反応の領域における満点の評価素点を合計した反応合計満点の85%以上の点数であって、
前記第2評価基準は、前記反応合計満点の65%以上の点数であって、
前記第3評価基準は、前記原因の領域における満点の評価素点及び前記影響要因の領域における満点の評価素点を合計した原因・影響要因合計満点の80%以上の点数である、
情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記反応評価結果が所定の第4評価基準以上である場合、前記3つの領域のうちの前記原因の領域及び前記影響要因の領域の評価結果によらず、前記ユーザのストレスの度合いを超高ストレス状態と評価するとともに、
前記反応評価結果が前記第4評価基準未満で且つ所定の第5評価基準以上である場合、前記3つの領域のうちの前記原因の領域及び前記影響要因の領域の評価結果の合計が所定の第6評価基準以上であると、前記ユーザのストレスの度合いを前記超高ストレス状態と評価し、
前記第4評価基準は、前記反応合計満点の95%以上の点数であって、
前記第5評価基準は、前記反応合計満点の75%以上の点数であって、
前記第6評価基準は、前記原因・影響要因合計満点の95%以上の点数である、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
ユーザのストレスの度合いを評価する情報処理方法であって、
コンピュータが、
ストレスについての原因、反応、影響要因に関する3つの領域を含んだ簡易調査票であって、所定の基準調査票における前記3つの領域の各領域についての所定の分析に基づいて生成された前記簡易調査票に対する前記ユーザからの回答情報を取得することと、
前記回答情報に基づいて前記ユーザのストレスの度合いを評価することと、
を実行し、
前記簡易調査票における前記3つの領域のうちの前記原因の領域には、前記基準調査票での前記原因の領域において因子負荷量が所定値以上の質問を分類することで生成された、仕事の量的・質的な負担、働きがいの欠如・適正の不一致、人間関係の問題、コントロール感の欠如の4つの原因因子の中から選択された質問である第1質問群が含まれ、
前記第1質問群は、仕事の量的負担、及び仕事のコントロールに関する質問によって構成される、
情報処理方法。
【請求項7】
ユーザのストレスの度合いを評価する情報処理方法であって、
コンピュータが、
ストレスについての原因、反応、影響要因に関する3つの領域を含んだ簡易調査票であって、所定の基準調査票における前記3つの領域の各領域についての所定の分析に基づいて生成された前記簡易調査票に対する前記ユーザからの回答情報を取得することと、
前記回答情報に基づいて前記ユーザのストレスの度合いを評価することと、を実行し、
前記コンピュータが、
前記3つの領域のうちの前記反応の領域における評価結果である反応評価結果が所定の第1評価基準以上である場合、前記3つの領域のうちの前記原因の領域及び前記影響要因の領域の評価結果によらず、前記ユーザのストレスの度合いを高ストレス状態と評価するとともに、
前記反応評価結果が前記第1評価基準未満で且つ所定の第2評価基準以上である場合、前記3つの領域のうちの前記原因の領域及び前記影響要因の領域の評価結果の合計が所定の第3評価基準以上であると、前記ユーザのストレスの度合いを前記高ストレス状態と評価することを、実行し、
前記第1評価基準は、前記反応の領域における満点の評価素点を合計した反応合計満点の85%以上の点数であって、
前記第2評価基準は、前記反応合計満点の65%以上の点数であって、
前記第3評価基準は、前記原因の領域における満点の評価素点及び前記影響要因の領域における満点の評価素点を合計した原因・影響要因合計満点の80%以上の点数である、
情報処理方法。
【請求項8】
ユーザのストレスの度合いを評価する情報処理プログラムであって、
コンピュータに、
ストレスについての原因、反応、影響要因に関する3つの領域を含んだ簡易調査票であって、所定の基準調査票における前記3つの領域の各領域についての所定の分析に基づいて生成された前記簡易調査票に対する前記ユーザからの回答情報を取得することと、
前記回答情報に基づいて前記ユーザのストレスの度合いを評価することと、
を実行させ
前記簡易調査票における前記3つの領域のうちの前記原因の領域には、前記基準調査票での前記原因の領域において因子負荷量が所定値以上の質問を分類することで生成された、仕事の量的・質的な負担、働きがいの欠如・適正の不一致、人間関係の問題、コントロール感の欠如の4つの原因因子の中から選択された質問である第1質問群が含まれ、
前記第1質問群は、仕事の量的負担、及び仕事のコントロールに関する質問によって構成される、
情報処理プログラム。
【請求項9】
ユーザのストレスの度合いを評価する情報処理プログラムであって、
コンピュータに、
ストレスについての原因、反応、影響要因に関する3つの領域を含んだ簡易調査票であって、所定の基準調査票における前記3つの領域の各領域についての所定の分析に基づいて生成された前記簡易調査票に対する前記ユーザからの回答情報を取得することと、
前記回答情報に基づいて前記ユーザのストレスの度合いを評価することと、を実行させ、
前記コンピュータに、
前記3つの領域のうちの前記反応の領域における評価結果である反応評価結果が所定の第1評価基準以上である場合、前記3つの領域のうちの前記原因の領域及び前記影響要因の領域の評価結果によらず、前記ユーザのストレスの度合いを高ストレス状態と評価するとともに、
前記反応評価結果が前記第1評価基準未満で且つ所定の第2評価基準以上である場合、前記3つの領域のうちの前記原因の領域及び前記影響要因の領域の評価結果の合計が所定の第3評価基準以上であると、前記ユーザのストレスの度合いを前記高ストレス状態と評価することを、実行させ
前記第1評価基準は、前記反応の領域における満点の評価素点を合計した反応合計満点の85%以上の点数であって、
前記第2評価基準は、前記反応合計満点の65%以上の点数であって、
前記第3評価基準は、前記原因の領域における満点の評価素点及び前記影響要因の領域における満点の評価素点を合計した原因・影響要因合計満点の80%以上の点数である、
情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザのストレスの度合いを評価する情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、職業性ストレスによって、精神疾患(心の病やうつ病など)、精神的負担、不適応行動、認知的問題等のストレス障害が誘発されることが問題となっており、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行うストレスチェック制度が導入されている。このストレスチェック制度では、ストレスチェックに係る調査票に基づき労働者の中から高ストレス者を選び、高ストレス者に対して医師による面接指導が実施される。
【0003】
そして、このようなストレスチェック制度は、一定企業の事業者に義務化され、近年ではIT技術を活用してストレスチェック制度を導入するシステムが種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、受検者端末にストレスチェックのための調査票に関する情報を通知し回答を依頼するとともに、未回答者の受検者端末に回答督促を通知するストレスチェックシステムが開示されている。このストレスチェックシステムでは、事業者が、受検者の回答概況を把握し回答督促を通知することで、職業性ストレスチェックおよびそれに伴う面接指導を適切に迅速に行うことを補助する技術が提供され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-97772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在のストレスチェック制度は、2015年12月に施行開始された改正労働安全衛生法に基づいて、50名以上の従業員が働く事業所において年1回の実施が義務化されている。これにより、ストレスチェックに係る調査票に基づき労働者の中から高ストレス者を選び、高ストレス者に対して医師による面接指導を行うことが可能になるが、ストレス要因を適切に把握するためには調査票における質問項目が多くなる傾向にあり、ユーザが質問に回答するのに要する負担が比較的大きくなってしまう問題があった。そして、このようにユーザの負担が大きくなると、ストレスチェックの受検を躊躇する労働者や、調査票における質問項目を十分思慮せず形式的にストレスチェックを受検する労働者が生じる虞がある。
【0007】
ここで、特許文献1に記載の技術によれば、IT技術を活用したストレスチェックシステムにより、職業性ストレスチェックを効率的に実施できるようにも思われる。しかしながら、当該技術は、事業者が、受検者の回答概況を把握し回答督促を通知することで、職業性ストレスチェックの迅速性を担保するものであって、職業性ストレスチェックを受検するユーザの負担を軽減できるものではない。そして、職業性ストレスチェックをより簡便且つ効率的に実施できる技術については、未だ改良の余地を残すものである。
【0008】
本開示の目的は、職業性ストレスチェックをより簡便且つ効率的に実施できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の情報処理装置は、ユーザのストレスの度合いを評価する情報処理装置である。この情報処理装置は、ストレスについての原因、反応、影響要因に関する3つの領域を含んだ簡易調査票に対する前記ユーザからの回答情報を取得することと、前記回答情報に基づいて前記ユーザのストレスの度合いを評価することと、を実行する制御部を備える。そして、前記制御部は、所定の基準調査票における前記3つの領域の各領域についての所定の分析に基づいて生成された前記簡易調査票に対する前記回答情報を取得する。
【0010】
上記の情報処理装置によれば、職業性ストレスチェックにおいて労働者(ユーザ)が回答するのに要する負担を大幅に低減することができる。そうすると、職業性ストレスチェックに対する労働者(ユーザ)からの回答率が向上し、更に、簡易調査票による効率的なチェックによる負担軽減により、月次などでの複数回の繰り返し実施が容易になるとともに、ストレスチェック以外の調査との併用が可能になる。
【0011】
ここで、上記の情報処理装置において、前記簡易調査票における前記3つの領域のうちの前記原因の領域には、4つの原因因子の中から選択された質問である第1質問群が含まれてもよい。そして、この場合、前記第1質問群には、仕事の量的負担、及び仕事のコントロールに関する質問が含まれ得る。または、前記簡易調査票における前記3つの領域のうちの前記反応の領域には、2つの反応因子の中から選択された質問である第2質問群が含まれてもよい。そして、この場合、前記第2質問群には、不安、及び心身の疲労感に関する質問が含まれ得る。または、前記簡易調査票における前記3つの領域のうちの前記影響要因の領域には、2つの影響要因因子の中から選択された質問である第3質問群が含まれてもよい。そして、この場合、前記第3質問群には、職場からの支援、及び家族・友人からの支援に関する質問が含まれ得る。
【0012】
また、本開示の情報処理装置において、前記簡易調査票は、前記3つの領域の各領域についての探索的因子分析において因子負荷量が所定値以上の因子の中から選択された質問、及び前記3つの領域のうちの前記原因の領域に含まれる因子の1つである仕事における負担のうち前記ユーザに対して否定的な影響を与え得る質問によって構成された調査票であってもよい。
【0013】
そして、以上に述べた情報処理装置において、前記制御部は、前記3つの領域のうちの前記反応の領域における評価結果である反応評価結果が所定の第1評価基準以上である場合、前記3つの領域のうちの前記原因の領域及び前記影響要因の領域の評価結果によらず、前記ユーザのストレスの度合いを高ストレス状態と評価するとともに、前記反応評価結果が前記第1評価基準未満で且つ所定の第2評価基準以上である場合、前記3つの領域のうちの前記原因の領域及び前記影響要因の領域の評価結果の合計が所定の第3評価基準以上であると、前記ユーザのストレスの度合いを前記高ストレス状態と評価してもよい。
【0014】
また、本開示は、コンピュータによる情報処理方法の側面から捉えることができる。すなわち、本開示の情報処理方法は、ユーザのストレスの度合いを評価する情報処理方法であって、コンピュータが、ストレスについての原因、反応、影響要因に関する3つの領域を含んだ簡易調査票であって、所定の基準調査票における前記3つの領域の各領域についての因子分析に基づいて生成された前記簡易調査票に対する前記ユーザからの回答情報を取得することと、前記回答情報に基づいて前記ユーザのストレスの度合いを評価することと、を実行する。そして、この場合、前記コンピュータが、前記3つの領域のうちの前記反応の領域における評価結果である反応評価結果が所定の第1評価基準以上である場合、前記3つの領域のうちの前記原因の領域及び前記影響要因の領域の評価結果によらず、前記ユーザのストレスの度合いを高ストレス状態と評価するとともに、前記反応評価結果が前記第1評価基準未満で且つ所定の第2評価基準以上である場合、前記3つの領域のうちの前記原因の領域及び前記影響要因の領域の評価結果の合計が所定の第3評価基準以上であると、前記ユーザのストレスの度合いを前記高ストレス状態と評価することを、実行してもよい。
【0015】
また、本開示は、情報処理プログラムの側面から捉えることができる。すなわち、本開示の情報処理プログラムは、ユーザのストレスの度合いを評価する情報処理プログラムであって、コンピュータに、ストレスについての原因、反応、影響要因に関する3つの領域を含んだ簡易調査票であって、所定の基準調査票における前記3つの領域の各領域についての因子分析に基づいて生成された前記簡易調査票に対する前記ユーザからの回答情報を取得することと、前記回答情報に基づいて前記ユーザのストレスの度合いを評価することと、を実行させる。そして、この場合、前記コンピュータに、前記3つの領域のうちの前記反応の領域における評価結果である反応評価結果が所定の第1評価基準以上である場合、前記3つの領域のうちの前記原因の領域及び前記影響要因の領域の評価結果によらず、前記ユーザのストレスの度合いを高ストレス状態と評価するとともに、前記反応評価結果が前記第1評価基準未満で且つ所定の第2評価基準以上である場合、前記3つの領域のうちの前記原因の領域及び前記影響要因の領域の評価結果の合計が所定の第3評価基準以上であると、前記ユーザのストレスの度合いを前記高ストレス状態と評価することを、実行させてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、職業性ストレスチェックをより簡便且つ効率的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態における情報処理システムの概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態における、情報処理システムに含まれるサーバの構成要素をより詳細に示すとともに、サーバと通信を行うユーザ端末の構成要素を示した図である。
図3】第1実施形態における情報処理システムの動作の流れを例示する図である。
図4】第1実施形態における簡易調査票の回答に対する評価素点を例示する図である。
図5】第1実施形態における簡易調査票に対する回答に基づいて評価される受検者ユーザのストレスの度合いの評価手法を説明するための第1の図である。
図6a】第1実施形態における簡易調査票に対する回答に基づいて評価される受検者ユーザのストレスの度合いの評価手法を説明するための第2の図である。
図6b】第1実施形態における簡易調査票に対する回答に基づいて評価される受検者ユーザのストレスの度合いの評価手法を説明するための第2の図である。
図6c】第1実施形態における簡易調査票に対する回答に基づいて評価される受検者ユーザのストレスの度合いの評価手法を説明するための第2の図である。
図7】第2実施形態における、情報処理システムに含まれるサーバの構成要素をより詳細に示すとともに、サーバと通信を行うユーザ端末の構成要素を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0019】
<第1実施形態>
第1実施形態における情報処理システムの概要について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における情報処理システムの概略構成を示す図である。本実施形態に係る情報処理システム100は、ネットワーク200と、サーバ300と、ユーザ端末400と、を含んで構成される。なお、本開示の情報処理システムは、ユーザのストレスの度合いを評価するシステムであって、該ストレスの度合いの評価がサーバ300によって実行される。また、以下の説明において、情報処理システム100を利用する利用者ユーザのうち職業性ストレスチェックを受検する労働者を受検者ユーザと称し、情報処理システム100を利用する利用者ユーザのうち職業性ストレスチェックを労働者に受検させる事業者を実施者ユーザと称するものとする。そして、受検者ユーザおよび実施者ユーザの夫々が、ユーザ端末400を所持し得る。
【0020】
ネットワーク200は、例えば、IPネットワークである。ネットワーク200は、IPネットワークであれば、無線であっても有線であっても無線と有線の組み合わせであってもよく、例えば、無線による通信であれば、ユーザ端末400は、無線LANアクセスポイント(不図示)にアクセスし、LANやWANを介してサーバ300と通信してもよい。また、ネットワーク200は、これらの例に限られず、例えば、公衆交換電話網や、光回線、ADSL回線、衛星通信網などであってもよい。
【0021】
サーバ300は、ネットワーク200を介して、ユーザ端末400と接続される。なお、図1において、説明を簡単にするために、サーバ300は1台、ユーザ端末400は4台示してあるが、これらに限定されないことは言うまでもない。
【0022】
サーバ300は、データの取得、生成、更新等の演算処理及び加工処理のための処理能力のあるコンピュータ機器であればどの様な電子機器でもよく、例えば、パーソナルコンピュータ、サーバ、メインフレーム、その他電子機器であってもよい。すなわち、サーバ300は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリ、あるいは、CDやDVDのようなディスク記録媒体であってもよい。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納されている。
【0023】
また、サーバ300は、本実施形態に係る情報処理システム100専用のソフトウェアやハードウェア、OS等を設けずに、クラウドサーバによるSaaS(Software as a Service)、Paas(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)を適宜用いてもよい。
【0024】
ユーザ端末400は、情報処理システム100を利用する利用者ユーザ(これは、受検者ユーザおよび実施者ユーザである。)が保有する携帯端末等の電子機器であればよく、例えば、携帯端末、タブレット端末、スマートフォン、ウェアラブル端末、パーソナルコンピュータ等、その他端末機器であってもよい。
【0025】
次に、図2に基づいて、主にサーバ300の構成要素の詳細な説明を行う。図2は、第1実施形態における、情報処理システム100に含まれるサーバ300の構成要素をより詳細に示すとともに、サーバ300と通信を行うユーザ端末400の構成要素を示した図である。
【0026】
サーバ300は、機能部として通信部301、記憶部302、制御部303を有しており、補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各機能部等が制御されることによって、各機能部における所定の目的に合致した各機能を実現することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0027】
ここで、通信部301は、サーバ300をネットワーク200に接続するための通信インタフェースである。通信部301は、例えば、ネットワークインタフェースボードや、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。サーバ300は、通信部301を介して、ユーザ端末400やその他の外部装置と通信可能に接続される。
【0028】
記憶部302は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。主記憶装置は、制御部303によって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置は、制御部303において実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される装置である。記憶部302には、後述する簡易調査票が予め記憶される。また、記憶部302は、ユーザ端末400等から送信されたデータを記憶し、記憶部302には、後述する回答情報が記憶され得る。なお、サーバ300は、通信部301を介してユーザ端末400等から送信されたデータを取得することができる。
【0029】
制御部303は、サーバ300が行う制御を司る機能部である。制御部303は、CPUなどの演算処理装置によって実現することができる。制御部303は、更に、取得部3031と、評価部3032と、の2つの機能部を有して構成される。各機能部は、記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0030】
取得部3031は、簡易調査票に対する受検者ユーザからの回答情報を取得する。ここで、上記の簡易調査票は、ストレスについての原因、反応、影響要因に関する3つの領域を含んだ調査票であって、所定の基準調査票における該3つの領域の各領域についての所定の分析に基づいて生成されたものである。後述するように、回答情報は、受検者ユーザのユーザ端末400から送信され得る。取得部3031は、受検者ユーザのユーザ端末400から送信された情報を取得することで回答情報を取得し、これをサーバ300の記憶部302に記憶させる。
【0031】
ここで、本実施形態におけるユーザ端末400は、機能部として通信部401、入出力部402、記憶部403を有している。通信部401は、ユーザ端末400をネットワーク200に接続するための通信インタフェースであり、例えば、ネットワークインタフェースボードや、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。入出力部402は、通信部401を介して外部から送信されてきた情報等を表示させたり、通信部401を介して外部に情報を送信する際に当該情報を入力したりするための機能部である。記憶部403は、サーバ300の記憶部302と同様に主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。
【0032】
入出力部402は、更に、表示部4021、操作入力部4022、画像・音声入出力部4023を有している。表示部4021は、各種情報を表示する機能を有し、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)ディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等により実現される。操作入力部4022は、ユーザからの操作入力を受け付ける機能を有し、具体的には、タッチパネル等のソフトキーあるいはハードキーにより実現される。画像・音声入出力部4023は、静止画や動画等の画像の入力を受け付ける機能を有し、具体的には、Charged-Coupled Devices(CCD)、Metal-oxide-semiconductor(MOS)あるいはComplementary Metal-Oxide-Semiconductor(CMOS)等のイメージセンサを用いたカメラにより実現される。また、画像・音声入出力部4023は、音声の入出力を受け付ける機能を有し、具体的には、マイクやスピーカーにより実現される。
【0033】
そうすると、受検者ユーザは、このように構成されたユーザ端末400を用いて、回答情報をサーバ300に送信することができる。ここで、サーバ300は、回答情報を入力するためのインタフェースを受検者ユーザのユーザ端末400に提供してもよい。そうすると、受検者ユーザは、ユーザ端末400を介して上記のインタフェースに情報を入力することで、回答情報をサーバ300に送信することができる。
【0034】
評価部3032は、上記の回答情報に基づいて、受検者ユーザのストレスの度合いを評価する。なお、評価部3032が実行する処理の詳細は、後述する図3に基づいて説明する。
【0035】
なお、制御部303が、取得部3031、および評価部3032の処理を実行することで、本開示に係る制御部として機能する。
【0036】
ここで、本実施形態における情報処理システム100の動作の流れについて説明する。図3は、本実施形態における情報処理システム100の動作の流れを例示する図である。図3では、本実施形態における情報処理システム100におけるサーバ300とユーザ端末400との間の動作の流れ、およびサーバ300とユーザ端末400とが実行する処理を説明する。なお、図3に例示するフローは、サーバ300と、受検者ユーザおよび実施者ユーザのユーザ端末400と、の間の動作の流れ、およびサーバ300と、受検者ユーザおよび実施者ユーザのユーザ端末400と、が実行する処理を説明するものである。
【0037】
本実施形態では、先ず、実施者ユーザのユーザ端末400に受検者ユーザ情報が入力される(S101)。ここで、上記の受検者ユーザ情報は、受検者ユーザの氏名や識別情報、連絡先等を含んだ情報であって、実施者ユーザは、所定のインタフェースを用いてこのような受検者ユーザ情報を入力することができる。そして、受検者ユーザ情報は、実施者ユーザのユーザ端末400からサーバ300に送信される。そうすると、サーバ300が、実施者ユーザのユーザ端末400から送信された情報を取得する(S102)。
【0038】
次に、サーバ300は、簡易調査票の呼出し処理を実行する(S103)。なお、簡易調査票は、上述したように、ストレスについての原因、反応、影響要因に関する3つの領域を含んだ調査票であって、所定の基準調査票における該3つの領域の各領域についての所定の分析に基づいて生成されたものである。
【0039】
ここで、従来までの職業性ストレスチェックでは、厚生労働省が提供する57の質問項目を有する調査票が用いられることが多かった。なお、この調査票が、上記の基準調査票に相当する。
【0040】
そして、この基準調査票(57の質問項目を有する調査票)には、下記表1に示す原因の領域に属する質問項目が含まれる。
【表1】
【0041】
また、基準調査票(57の質問項目を有する調査票)には、下記表2に示す反応の領域に属する質問項目が含まれる。
【表2】
【0042】
また、基準調査票(57の質問項目を有する調査票)には、下記表3に示す影響要因の領域に属する質問項目が含まれる。
【表3】
【0043】
更に、基準調査票(57の質問項目を有する調査票)には、下記表4に示す質問項目も含まれる。
【表4】
【0044】
そして、このような基準調査票を用いて職業性ストレスチェックを実施することで、労働者の中から高ストレス者を選び、高ストレス者に対して医師による面接指導を行うことが可能になる。
【0045】
しかしながら、上記の基準調査票では、労働者のストレス要因を適切に把握するために、質問項目が57項目と比較的多く、受検者ユーザが質問に回答するのに要する負担が比較的大きくなってしまう問題があった。そして、このように受検者ユーザの負担が大きくなると、ストレスチェックの受検を躊躇する労働者や、調査票における質問項目を十分思慮せず形式的にストレスチェックを受検する労働者が生じる虞がある。
【0046】
そこで、本開示人は、鋭意検討の結果、上記の基準調査票における原因、反応、影響要因の3つの領域の各領域について以下の分析により生成された簡易調査票と、該簡易調査票に対する特定の評価手法と、に基づいて、受検者ユーザのストレスの度合いを簡便且つ適切に評価できることを新たに見出した。
【0047】
ここで、簡易調査票における原因の領域に含まれる質問項目である第1質問群を下記表5に示す。
【表5】
【0048】
上記表5に示した第1質問群は、仕事の量的負担、及び仕事のコントロールに関する質問であって、上記の基準調査票の原因の領域に含まれる4つの原因因子(仕事の量的・質的な負担、働きがいの欠如・適正の不一致、人間関係の問題、コントロール感の欠如)の中から選択され得る。
【0049】
また、簡易調査票における反応の領域に含まれる質問項目である第2質問群を下記表6に示す。
【表6】
【0050】
上記表6に示した第2質問群は、不安、及び心身の疲労感に関する質問であって、上記の基準調査票の反応の領域に含まれる2つの反応因子(抑うつ・不安、心身の疲労感)の中から選択され得る。
【0051】
また、簡易調査票における影響要因の領域に含まれる質問項目である第3質問群を下記表7に示す。
【表7】
【0052】
上記表7に示した第3質問群は、職場からの支援、及び家族・友人からの支援に関する質問であって、上記の基準調査票の影響要因の領域に含まれる2つの影響要因因子(上司・同僚からのサポート、家族・友人からのサポート)の中から選択され得る。
【0053】
そして、図3に戻って、サーバ300は、上述した簡易調査票を受検者ユーザのユーザ端末400に送信する(S104)。そうすると、受検者ユーザのユーザ端末400が、サーバ300から送信された情報を取得する(S105)。
【0054】
そして、受検者ユーザのユーザ端末400には、簡易調査票に対する回答情報が入力される(S106)。ここで、上記の回答情報は、簡易調査票に含まれる質問項目に対する受検者ユーザの回答を含んだ情報である。受検者ユーザは、所定のインタフェースを用いてこのような回答情報を入力することができる。そして、回答情報は、受検者ユーザのユーザ端末400からサーバ300に送信される。
【0055】
サーバ300は、受検者ユーザのユーザ端末400から送信された回答情報を取得すると(S107)、次に、該回答情報に基づいて受検者ユーザのストレスの度合いを評価する評価処理を実行する(S108)。この評価処理について、図4および図5に基づいて以下に説明する。
【0056】
図4は、本実施形態における簡易調査票の回答に対する評価素点を例示する図である。そして、図5は、本実施形態における簡易調査票に対する回答に基づいて評価される受検者ユーザのストレスの度合いの評価手法を説明するための第1の図である。
【0057】
図5に例示する評価手法のフローチャートでは、先ず、ストレスについての原因、反応、影響要因の各領域について、評価素点が合計される(S1081)。ここで、本実施形態では、図4に示すように、簡易調査票の各質問項目への回答に対して、1~4点の評価素点が付けられる。例えば、ストレスについての原因の領域における質問事項「時間内に仕事が処理しきれない」への回答の選択肢は、「そうだ」、「まあそうだ」、「ややちがう」、「ちがう」であって、受検者ユーザの回答が、「そうだ」の場合は4点、「まあそうだ」の場合は3点、「ややちがう」の場合は2点、「ちがう」の場合は1点の評価素点が付けられる。一方、質問事項「自分のペースで仕事ができる」に対する受検者ユーザの回答が、「そうだ」の場合は1点、「まあそうだ」の場合は2点、「ややちがう」の場合は3点、「ちがう」の場合は4点の評価素点が付けられる。
【0058】
また、例えば、ストレスについての反応の領域における質問事項「ひどく疲れた」への回答の選択肢は、「ほとんどなかった」、「ときどきあった」、「しばしばあった」、「ほとんどいつも」であって、受検者ユーザの回答が、「ほとんどなかった」の場合は1点、「ときどきあった」の場合は2点、「しばしばあった」の場合は3点、「ほとんどいつも」の場合は4点の評価素点が付けられる。また、例えば、ストレスについての影響要因の領域における質問事項「上司とどのくらい気軽に話ができますか」への回答の選択肢は、「非常に」、「かなり」、「多少」、「まったくない」であって、受検者ユーザの回答が、「非常に」の場合は1点、「かなり」の場合は2点、「多少」の場合は3点、「まったくない」の場合は4点の評価素点が付けられる。
【0059】
そして、サーバ300は、S1081の処理において、ストレスについての原因、反応、影響要因の各領域について、該領域に含まれる各質問項目に対する上記のような評価素点の合計点を算出する。
【0060】
図5に示すフローでは、次に、サーバ300は、S1082において、ストレスについての反応の領域の合計点(本開示の反応評価結果に相当する。)が17点(本開示の第1評価基準に相当する。)以上であるか否かを判別する。S1082において肯定判定された場合、サーバ300はS1085の処理へ進み、S1082において否定判定された場合、サーバ300はS1083の処理へ進む。
【0061】
S1082において否定判定された場合、次に、S1083において、サーバ300は、ストレスについての原因の領域と影響要因の領域とを合わせた合計点が16点(本開示の第3評価基準に相当する。)以上であるか否かを判別する。S1083において肯定判定された場合、サーバ300はS1084の処理へ進み、S1083において否定判定された場合、サーバ300はS1086の処理へ進む。
【0062】
S1083において肯定判定された場合、次に、S1084において、サーバ300は、ストレスについての反応の領域の合計点が13点(本開示の第2評価基準に相当する。)以上であるか否かを判別する。S1084において肯定判定された場合、サーバ300はS1085の処理へ進み、S1084において否定判定された場合、サーバ300はS1086の処理へ進む。
【0063】
そして、S1082において肯定判定された場合、またはS1084において肯定判定された場合、次に、S1085おいて、このような回答情報を有する受検者ユーザのストレスの度合いの評価として、高ストレス状態と判定する。そして、S1085の処理の後、本フローの実行が終了される。
【0064】
一方、S1083において否定判定された場合、またはS1084において否定判定された場合、次に、S1086おいて、このような回答情報を有する受検者ユーザのストレスの度合いの評価として、問題なしと判定する。そして、S1086の処理の後、本フローの実行が終了される。
【0065】
つまり、本実施形態では、サーバ300は、原因、反応、影響要因の3つの領域のうちの反応の領域における評価結果が17点(第1評価基準)以上である場合、該3つの領域のうちの原因の領域及び影響要因の領域の評価結果によらず、受検者ユーザのストレスの度合いを高ストレス状態と評価するとともに、反応の領域における評価結果が17点(第1評価基準)未満で且つ13点(第2評価基準)以上である場合、該3つの領域のうちの原因の領域及び影響要因の領域の評価結果の合計が16点(第3評価基準)以上であると、受検者ユーザのストレスの度合いを高ストレス状態と評価する。
【0066】
なお、本開示人は、以上に述べた簡易調査票、および該簡易調査票に対する上記の評価手法に基づく、受検者ユーザのストレスの度合いの評価について、基準調査票を用いた職業性ストレスチェックと比較することで、その妥当性を検証した。
【0067】
詳しくは、18155人に対する職業性ストレスチェックを、基準調査票を用いた場合と、本開示の簡易調査票およびその評価手法を用いた場合と、で比較した結果、ストレス度合いが高ストレス状態と判定される受検者ユーザの一致数が16581となり、本開示の簡易調査票およびその評価手法を用いた場合において、基準調査票を用いた場合に対する再現率が91.3%となることが確認された。これにより、本開示の簡易調査票およびその評価手法を用いることの妥当性が示された。
【0068】
そして、図3に戻って、サーバ300は、上述した評価処理による評価結果を実施者ユーザのユーザ端末400に送信する(S109)。そうすると、実施者ユーザのユーザ端末400が、サーバ300から送信された情報を取得する(S110)。
【0069】
以上に述べた処理によれば、IT技術を活用したストレスチェックシステムにおいて、簡易調査票を用いることで、言い換えれば、質問が簡便化されることで、受検者ユーザが質問に回答するのに要する負担を大幅に低減することができる。そうすると、職業性ストレスチェックに対する労働者からの回答率が向上し、更に、簡易調査票による効率的なチェックによる負担軽減により、月次などでの複数回の繰り返し実施が容易になるとともに、ストレスチェック以外の調査との併用が可能になる。このように、本開示の技術は、ストレスチェックの活用方法の新たな可能性を示唆するものである。また、ストレスチェックの実施者の立場からみると、ストレスチェックに係る調査票に基づき労働者の中から高ストレス者を選び、高ストレス者に対して医師による面接指導を行う際に、労働者からの回答率の向上や、その回答にあたって労働者が質問項目を十分思慮できること等の簡易調査票による効果や、上述した本開示の簡易調査票およびその評価手法を用いることの妥当性によって、職業性ストレスチェックをより効率的に実施することが可能になる。
【0070】
なお、本開示の簡易調査票の回答情報に基づく評価処理について、以下に説明する評価手法が用いられてもよい。図6a~図6cは、本実施形態における簡易調査票に対する回答に基づいて評価される受検者ユーザのストレスの度合いの評価手法を説明するための第2の図である。
【0071】
図6aに例示する評価手法のフローチャートにおいて、先ず、ストレスについての原因、反応、影響要因の各領域について、評価素点が合計される(S2081)。このS2081の処理は、上記の図5に示したS1081の処理と同様である。
【0072】
図6aに示すフローでは、次に、サーバ300は、S2082において、ストレスについての反応の領域の合計点が19点以上であるか否かを判別する。S2082において肯定判定された場合、サーバ300はS2085の処理へ進み、S2082において否定判定された場合、サーバ300はS2083の処理へ進む。
【0073】
S2082において否定判定された場合、次に、S2083において、サーバ300は、ストレスについての原因の領域と影響要因の領域とを合わせた合計点が19点以上であるか否かを判別する。S2083において肯定判定された場合、サーバ300はS2084の処理へ進み、S2083において否定判定された場合、サーバ300は図6bに示すフローへ進む。
【0074】
S2083において肯定判定された場合、次に、S2084において、サーバ300は、ストレスについての反応の領域の合計点が15点以上であるか否かを判別する。S2084において肯定判定された場合、サーバ300はS2085の処理へ進み、S2084において否定判定された場合、サーバ300は図6bに示すフローへ進む。
【0075】
そして、S2082において肯定判定された場合、またはS2084において肯定判定された場合、次に、S2085おいて、このような回答情報を有する受検者ユーザのストレスの度合いの評価として、超高ストレス状態と判定する。そして、S2085の処理の後、本フローの実行が終了される。
【0076】
一方、S2083において否定判定された場合、またはS2084において否定判定された場合、次に、サーバ300は、図6bに示すフローのS3082おいて、ストレスについての反応の領域の合計点が17点以上であるか否かを判別する。S3082において肯定判定された場合、サーバ300はS3085の処理へ進み、S3082において否定判定された場合、サーバ300はS3083の処理へ進む。
【0077】
S3082において否定判定された場合、次に、S3083において、サーバ300は、ストレスについての原因の領域と影響要因の領域とを合わせた合計点が16点以上であるか否かを判別する。S3083において肯定判定された場合、サーバ300はS3084の処理へ進み、S3083において否定判定された場合、サーバ300は図6cに示すフローへ進む。
【0078】
S3083において肯定判定された場合、次に、S3084において、サーバ300は、ストレスについての反応の領域の合計点が13点以上であるか否かを判別する。S3084において肯定判定された場合、サーバ300はS3085の処理へ進み、S3084において否定判定された場合、サーバ300は図6cに示すフローへ進む。
【0079】
そして、S3082において肯定判定された場合、またはS3084において肯定判定された場合、次に、S3085おいて、このような回答情報を有する受検者ユーザのストレスの度合いの評価として、高ストレス状態と判定する。そして、S3085の処理の後、本フローの実行が終了される。
【0080】
一方、S3083において否定判定された場合、またはS3084において否定判定された場合、次に、サーバ300は、図6cに示すフローのS4082おいて、ストレスについての反応の領域の合計点が15点以上であるか否かを判別する。S4082において肯定判定された場合、サーバ300はS4085の処理へ進み、S4082において否定判定された場合、サーバ300はS4083の処理へ進む。
【0081】
S4082において否定判定された場合、次に、S4083において、サーバ300は、ストレスについての原因の領域と影響要因の領域とを合わせた合計点が14点以上であるか否かを判別する。S4083において肯定判定された場合、サーバ300はS4084の処理へ進み、S4083において否定判定された場合、サーバ300はS4086の処理へ進む。
【0082】
S4083において肯定判定された場合、次に、S4084において、サーバ300は、ストレスについての反応の領域の合計点が11点以上であるか否かを判別する。S4084において肯定判定された場合、サーバ300はS4085の処理へ進み、S4084において否定判定された場合、サーバ300はS4086の処理へ進む。
【0083】
そして、S4082において肯定判定された場合、またはS4084において肯定判定された場合、次に、S4085おいて、このような回答情報を有する受検者ユーザのストレスの度合いの評価として、準高ストレス状態と判定する。そして、S4085の処理の後、本フローの実行が終了される。
【0084】
一方、S4083において否定判定された場合、またはS4084において否定判定された場合、次に、S4086おいて、このような回答情報を有する受検者ユーザのストレスの度合いの評価として、問題なしと判定する。そして、S4086の処理の後、本フローの実行が終了される。
【0085】
ここで、上記の超高ストレス状態とは、上記の図5に示した高ストレス状態よりも高いストレス状態であって、このように判定される受検者ユーザに対して早急な対応が必要であると判断できる。また、上記の準高ストレス状態とは、上記の図5に示した高ストレス状態よりも低いストレス状態ではあるが平均よりも評価点が高い状態であって、このように判定される受検者ユーザに対しても注意が必要であると判断できる。
【0086】
以上に述べた情報処理システム100によれば、職業性ストレスチェックをより簡便且つ効率的に実施することができる。
【0087】
<第2実施形態>
第2実施形態について、説明する。図7は、第2実施形態における、情報処理システム100に含まれるサーバ300の構成要素をより詳細に示すとともに、サーバ300と通信を行うユーザ端末400の構成要素を示した図である。本実施形態において、制御部303は、取得部3031と、評価部3032と、生成部3033と、の3つの機能部を有して構成される。
【0088】
生成部3033は、上記の第1実施形態の説明で述べた簡易調査票を生成するための機能部であって、原因、反応、影響要因の3つの領域の各領域についての探索的因子分析において因子負荷量が所定値以上の因子の中から選択された質問、及び該3つの領域のうちの原因の領域に含まれる因子の1つである仕事における負担のうち労働者(受検者ユーザ)に対して否定的な影響を与え得る質問によって構成された調査票を簡易調査票として生成する。これについて、以下に詳しく説明する。
【0089】
生成部3033は、先ず、基準調査票(57の質問項目を有する調査票)におけるストレスについての原因、反応、影響要因の3つの領域の各領域について、探索的因子分析を行う。このとき、例えば、因子抽出法を最尤法とし、因子回転法はプロマックス回転とし、因子負荷量0.4以上で単純構造である質問項目を採用することができる。
【0090】
そして、上記の探索的因子分析の結果、基準調査票(57の質問項目を有する調査票)におけるストレスについての原因の領域では、下記表8に示す、仕事の量的・質的な負担、働きがいの欠如・適正の不一致、人間関係の問題、コントロール感の欠如の4つの原因因子が含まれることがわかる。
【表8】
【0091】
同様に、上記の探索的因子分析の結果、基準調査票(57の質問項目を有する調査票)におけるストレスについての反応の領域では、下記表9に示す、抑うつ・不安、心身の疲労感の2つの反応因子が含まれることがわかる。
【表9】
【0092】
また、同様に、上記の探索的因子分析の結果、基準調査票(57の質問項目を有する調査票)におけるストレスについての影響要因の領域では、下記表10に示す、上司・同僚からのサポート、家族・友人からのサポートの2つの影響要因因子が含まれることがわかる。
【表10】
【0093】
そして、生成部3033は、原因の領域における上記の4つの因子、反応の領域における上記の2つの因子、および影響要因の領域における上記の2つの因子の中から質問項目を選択するとき、原因の領域においては、これに含まれる因子の1つである仕事の量的・質的な負担のうち労働者(受検者ユーザ)に対して否定的な影響を与え得る質問項目(例えば、「時間内に仕事が処理しきれない」という質問項目)を選択する。これは、例えば、「勤務中はいつも仕事のことを考えていなければならない」という質問項目は、たとえその状況を否定的(ストレスフル)にとらえていなくても自分に当てはまると解釈される場合も含まれ、評価する内容が明確になり難いのに対して、例えば、「時間内に仕事が処理しきれない」という質問項目は、当事者の「仕事における負担」が明確に反映されるからである。
【0094】
また、生成部3033は、仕事におけるストレスが労働者の健康に与える影響の大きさを評価した統計データ、具体的には、「仕事の量・コントロール」と「職場の支援」が健康リスクへの影響が大きいというデータに基づいて、原因の領域においては、これに含まれる因子の1つである「コントロール感の欠如」に含まれる質問項目(例えば、「自分のペースで仕事ができる」という質問項目)を選択する。また、影響要因の領域においては、これに含まれる因子の1つである「上司・同僚からのサポート」に含まれる質問項目を選択する。
【0095】
なお、生成部3033は、反応の領域においては、これに含まれる2つの因子の中から各質問項目を選択する。
【0096】
このように、生成部3033が、原因、反応、影響要因の3つの領域の各領域についての探索的因子分析に基づいて簡易調査票を生成し、サーバ300が、該簡易調査票とこれに対する評価手法とを用いることで、受検者ユーザのストレスの度合いを簡便且つ適切に評価することができる。
【0097】
<第2実施形態の変形例>
第2実施形態の変形例について、説明する。上述した第2実施形態では、生成部3033が、原因、反応、影響要因の3つの領域の各領域についての探索的因子分析に基づいて簡易調査票を生成する例について説明した。これに対して、本変形例では、生成部3033は、基準調査票(57の質問項目を有する調査票)の中から、理論的、臨床的経験などをもとに演繹的に質問項目を選択することで、簡易調査票を生成する。
【0098】
このとき、生成部3033は、過去の類似した概念を測定している先行研究を参考に質問項目を選択してもよいし、測定する概念の背景に想定される理論に基づいて質問項目を選択してもよいし、現場(産業領域、医療領域)での経験を踏まえて質問項目を選択してもよい。
【0099】
また、生成部3033は、このような理論的、臨床的経験などに基づく演繹的な選択と併せて、探索的因子分析を行ってもよい。
【0100】
<その他の変形例>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0101】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。例えば、取得部3031と評価部3032とを別の演算処理装置に形成してもよい。このときこれらの演算処理装置は好適に協働可能に構成される。また、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0102】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0103】
100・・・情報処理システム
200・・・ネットワーク
300・・・サーバ
301・・・通信部
302・・・記憶部
303・・・制御部
400・・・ユーザ端末
【要約】
【課題】職業性ストレスチェックをより簡便且つ効率的に実施できる技術を提供する。
【解決手段】本開示の情報処理装置は、ユーザのストレスの度合いを評価する情報処理装置である。この情報処理装置は、ストレスについての原因、反応、影響要因に関する3つの領域を含んだ簡易調査票に対するユーザからの回答情報を取得することと、回答情報に基づいてユーザのストレスの度合いを評価することと、を実行する制御部を備える。そして、制御部は、所定の基準調査票における3つの領域の各領域についての所定の分析に基づいて生成された簡易調査票に対する回答情報を取得する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7