(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】包装機
(51)【国際特許分類】
B65B 57/12 20060101AFI20240603BHJP
B65B 57/00 20060101ALI20240603BHJP
B65B 9/02 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B65B57/12
B65B57/00 C
B65B9/02
(21)【出願番号】P 2020086772
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000152125
【氏名又は名称】株式会社プレッシオ
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】石黒 琢也
(72)【発明者】
【氏名】染矢 丈
(72)【発明者】
【氏名】神戸 暢之
【審査官】西塚 祐斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-074976(JP,A)
【文献】特開2017-074975(JP,A)
【文献】特開2008-013225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 57/12
B65B 57/00
B65B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のロールから引き出した第1の包装材と第2のロールから引き出した第2の包装材の間に被包装物を挟んだ積層体を挟持拘束して前記第1及び第2の包装材の引き出し方向に搬送して所定位置で停止させる搬送機構と、
前記第1の包装材の引き出し
長さを検出する第1の検出部と、
前記第2の包装材の引き出し
長さを検出する第2の検出部と、
前記搬送機構によって前記所定位置で停止させた前記積層体の前記被包装物の前記引き出し方向の後端より前記引き出し方向の上流側で前記第1の包装材と前記第2の包装材を接着して切断する接着切断部と、
前記第1のロールの回転を止める第1の制動部と、
前記第2のロールの回転を止める第2の制動部と、
前記搬送機構によって前記積層体の搬送を開始してから前記所定位置で停止するまでの間の前記第1及び第2の包装材の引き出し
長さを前記第1及び第2の検出部を介して検出し、当該積層体を前記所定位置で停止させた後、引き出し
長さの
短い方の包装材を巻いたロールを停止させるタイミングを引き出し
長さの
長い方の包装材を巻いたロールを停止させるタイミングより遅くするように前記第1及び第2の制動部を制御する制御部と、
を有する包装機。
【請求項2】
前記制御部は、前記搬送機構によって前記積層体の搬送を開始してから前記所定位置で停止するまでの間に前記第1及び第2のロールから引き出された前記第1及び第2の包装材の引き出し
長さの差がゼロになるタイミングで前記第1及び第2のロールを停止させる、
請求項1の包装機。
【請求項3】
前記制御部は、前記引き出し方向に沿って前記搬送機構の上流側で前記第1及び第2の包装材の弛みが同じになるタイミングで前記第1及び第2の制動部を動作させる、
請求項1の包装機。
【請求項4】
前記制御部は、前記引き出し方向に沿って前記接着切断部の上流側で前記第1及び第2の包装材の弛みが同じになるタイミングで前記第1及び第2の制動部を動作させる、
請求項1の包装機。
【請求項5】
前記第1の検出部は、前記第1のロールに連れ回る第1のローラの回転量を検出し、
前記第2の検出部は、前記第2のロールに連れ回る第2のローラの回転量を検出する、
請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項の包装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、新聞をフィルムで包装する包装機に関する。
【背景技術】
【0002】
新聞をフィルムで包装する包装機は、一般に、2つのロールから引き出したフィルムの間に新聞を挟んで新聞の周りでフィルム同士を熱溶着する。そして、熱溶着した部分でフィルムを切断し、次の新聞の投入を待機する。フィルムのロールは、自由に回転可能に設けられており、フィルムを引き出すことにより回転し、引き出しを止めることにより停止する。
【0003】
ロールは、フィルムの残りの長さ、すなわちロール径の大きさにより、回転時の慣性モーメントが異なる。ロール径が大きいロールは、ロール径が小さいロールより重く、回転を開始してから回転速度が安定するまでにより多くの時間を必要とし、制動を開始してから停止するまでにより多くの時間を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したタイプの包装機では、少なくとも新聞の厚み分だけ、2つのロールから引き出されるフィルムの長さに差を生じることが知られている。このように、2つのロールから引き出されるフィルムの長さに差を生じると、フィルムの消費量に差を生じ、2つのロールのロール径にも差を生じる。また、このようなロール径の差は、包装する新聞の数が増えるに連れて徐々に大きくなる。この結果、2つのロールの交換時期がずれ、常にロール径が異なる状態で包装機を動作させなければならなくなる。
【0006】
2つのロールの径が異なると、上述したように、ロールの回転及び停止に要する時間に差を生じ、フィルムの弛みにバラつきを生じる。この結果、フィルムのシール位置(溶着部分)が新聞の端部に対向するセンター位置からずれたり、フィルムに皺が生じたりして、新聞をフィルムで包装した包装品の見栄えが悪くなる。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、包装品の見栄えを良くすることができる包装機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の包装機の一態様は、第1のロールから引き出した第1の包装材と第2のロールから引き出した第2の包装材の間に被包装物を挟んだ積層体を挟持拘束して第1及び第2の包装材の引き出し方向に搬送して所定位置で停止させる搬送機構と、第1の包装材の引き出し長さを検出する第1の検出部と、第2の包装材の引き出し長さを検出する第2の検出部と、搬送機構によって所定位置で停止させた積層体の被包装物の引き出し方向の後端より引き出し方向の上流側で第1の包装材と第2包装材を接着して切断する接着切断部と、第1のロールの回転を止める第1の制動部と、第2のロールの回転を止める第2の制動部と、搬送機構によって積層体の搬送を開始してから所定位置で停止するまでの間の第1及び第2の包装材の引き出し長さを第1及び第2の検出部を介して検出し、当該積層体を所定位置で停止させた後、引き出し長さの短い方の包装材を巻いたロールを停止させるタイミングを引き出し長さの長い方の包装材を巻いたロールを停止させるタイミングより遅くするように第1及び第2の制動部を制御する制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、包装品の見栄えを良くすることができる包装機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る包装機を示す概略図である。
【
図2】
図2は、
図1の包装機の動作を制御する制御系のブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1の包装機の動作タイミングを説明するためのタイミングチャートである。
【
図4】
図4は、
図1の包装機の動作制御に使用するデータテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る包装機10について図面を参照して説明する。
図1は、包装機10の構造を説明するための概略図である。
図2は、包装機10の動作を制御する制御系のブロック図である。
図3は、包装機10の動作タイミングを説明するためのタイミングチャートである。
図4は、包装機10の動作制御に使用するデータテーブルの一例を示す図である。
【0012】
図1に示すように、包装機10は、被包装物である新聞Pを投入する投入口1a、及び新聞PをフィルムF1、F2で包装した包装品W(図示省略)を排出する排出口1bを備えた筐体1を有する。筐体1は、略矩形箱状に形成され、重力方向の上方に天壁1cを有し、重力方向の下方に底壁1dを有する。投入口1aは
図1で紙面と垂直な方向に延びて天壁1cに設けられ、排出口1bは
図1で紙面と垂直な方向に延びて底壁1dに設けられている。本実施形態では、被包装物として複数枚の新聞紙を重ねて折り畳んだ新聞Pを例に挙げて説明するが、被包装物は新聞Pに限らず、冊子や扁平な箱などの他の物品であってもよい。
【0013】
包装機10は、軸S1に長尺な樹脂製のフィルムF1(第1の包装材)を巻回したロールR1(第1のロール)、及び軸S2に長尺な樹脂製のフィルムF2(第2の包装材)を巻回したロールR2(第2のロール)を有する。軸S1、S2は、
図1で紙面と垂直な方向に延設され、ロールR1、R2が互いに干渉しない距離だけ左右に離れた位置に配置されている。軸S1、S2の両端は、それぞれ、筐体1に対して回転可能に支持されており、ロールR1、R2は、それぞれ、自由に回転可能となっている。また、ロールR1、R2は、交換可能に筐体1に取り付けられている。
【0014】
図1で左側のロールR1は、フィルムF1の引き出しにより時計回り方向に回転する姿勢で筐体1内に取り付けられている。右側のロールR2は、フィルムF2の引き出しにより反時計回り方向に回転する姿勢で筐体1内に取り付けられている。ロールR1、R2は、フィルムF1、F2を引き出す動作によって回転し、フィルムF1、F2の引き出しを止めた後もその慣性により暫く回転を継続しようとする。
【0015】
新聞Pの投入方向に沿って投入口1aの下流側には、2つのガイドローラ2a、2bが設けられている。新聞Pの投入方向は、
図1で上から下に向かう重力方向であり、以下、この方向を引き出し方向と称する場合もある。ガイドローラ2a、2bは、各ロールR1、R2から引き出されたフィルムF1、F2をそれぞれ掛け回して
図1で下方へ案内する。ガイドローラ2a、2bは、
図1で紙面と直交する方向に延設された軸を有する。ガイドローラ2a、2bは、新聞Pの厚みより大きく投入口1aの幅よりわずかに広い間隔で互いに左右に離間して投入口1aの近くに配置されている。ガイドローラ2a、2bの間を通って案内されたフィルムF1、F2は、重力方向に引き出される。投入口1aを介して筐体1内に投入された新聞Pは、2枚のフィルムF1、F2の間に通される。
【0016】
フィルムF1、F2の引き出し方向に沿ってガイドローラ2a、2bの下流側には、引き出し方向と略平行に延設したガイド板3a、3bが設けられている。
図1で左側のガイド板3aは、フィルムF1が新聞Pの通路に対向する面と反対の背面側に対向配置され、右側のガイド板3bは、フィルムF2が新聞Pの通路に対向する面と反対の背面側に対向配置されている。ガイド板3a、3bは、フィルムF1、F2の引き出し方向の先端を接着切断部4のカッタ4aとヒータ4bの間に指向させるとともに、フィルムF1、F2のばたつきを抑えるように機能する。
【0017】
フィルムF1、F2の引き出し方向に沿ってガイド板3a、3bのさらに下流側には、2枚のフィルムF1、F2を接着して切断する接着切断部4が設けられている。接着切断部4は、
図1で紙面と直交する方向に延びた刃を有するカッタ4a、及びカッタ4aの刃と同じ方向に延びたヒータ4bを有する。カッタ4aは、図示右側のフィルムF2の背面側に配置され、ヒータ4bは、左側のフィルムF1の背面側に配置されている。ヒータ4bは、カッタ4aの刃を受け入れる溝を有する。カッタ4a及びヒータ4bは、少なくともフィルムF1、F2の幅を超える長さを有する。
【0018】
カッタ4aを図示の位置からヒータ4bに向けて左方向へ移動すると、2枚のフィルムF1、F2がカッタ4aとヒータ4bの間に挟まれて互いに接触し、ヒータ4bの熱により2枚のフィルムF1、F2が溶着される。それと同時に、フィルムF1、F2の溶着部分が引き出し方向の略中央位置でカッタ4aによって切断される。この結果、接着切断部4を通過した2枚のフィルムF1、F2の引き出し方向の後端同士が溶着され、引き出し方向に沿って接着切断部4の上流側の2枚のフィルムF1、F2の引き出し方向の先端同士が溶着された状態となる。
【0019】
フィルムF1、F2の引き出し方向に沿って接着切断部4の上流側で且つガイド板3a、3bの下流側には、新聞Pの通過を検知するためのセンサ5が設けられている。また、フィルムF1、F2の引き出し方向に沿って接着切断部4の下流側には、新聞Pの通過を検知するためのセンサ6が設けられている。センサ5、6は、それぞれ、新聞Pの搬送経路を間に挟んだ左右両側に発光素子と受光素子を有する透過型の光電センサである。つまり、センサ5は、接着切断部4の上流側でその光線が新聞Pの搬送経路を横切る位置に配置され、センサ6は、接着切断部4の下流側でその光線が新聞Pの搬送経路を横切る位置に配置されている。なお、センサ5、6の光線は、フィルムF1、F2を透過するため、フィルムF1、F2の間に挟まれた新聞Pの通過を検知することができる。センサ5、6は、新聞Pで反射された反射光を検出する反射型の光電センサであってもよい。
【0020】
フィルムF1、F2の引き出し方向に沿ってセンサ6のさらに下流側には、2枚のフィルムF1、F2の間に新聞Pを挟んだ積層体Tを挟持拘束して引き出し方向に搬送する搬送機構8が配置されている。搬送機構8は、積層体Tの図示左右両側に略同じ構造の搬送ユニット8L、8Rを有する。図示左側の搬送ユニット8Lは、重力方向に互いに離間した駆動ローラ8aと従動ローラ8bに無端状の搬送ベルト8cを巻回した構造を有する。駆動ローラ8aと従動ローラ8bの回転軸は、紙面と直交する方向に延設されている。搬送ユニット8Lは、搬送ベルト8cが積層体Tの図示左側の表面(フィルムF1の背面)に接触して走行する位置に配置されている。
【0021】
図示右側の搬送ユニット8Rは、搬送ユニット8Lに対して積層体Tの反対側で、搬送ベルト8cが積層体Tの図示右側の表面(フィルムF2の背面)に接触して走行する位置に配置されている。この搬送ユニット8Rは、図示しないプーリやタイミングベルトを介して搬送ユニット8Lの駆動軸に接続されてもよく、搬送ユニット8Lに同期して駆動されるようになっている。搬送ユニット8Lの搬送ベルト8cの走行方向は
図1で時計回り方向であり、搬送ユニット8Rの搬送ベルト8cの走行方向は反時計回り方向である。搬送機構8を介して搬送されてフィルムF1、F2によって包装された包装品Wは、一旦停止した搬送機構8を再び駆動させることにより、筐体1の排出口1bを介して包装機10から排出される。
【0022】
図2に示すように、包装機10は、各部の動作を制御する制御部20を有する。
制御部20には、2つのロールR1、R2から引き出されるフィルムF1、F2の引き出し量をそれぞれ検出するためのエンコーダ11a、11bが接続されている。一方のフィルムF1の引き出し量を検出するためのエンコーダ11aは、第1の検出部として機能し、他方のフィルムF2の引き出し量を検出するためのエンコーダ11bは第2の検出部として機能する。
【0023】
エンコーダ11a、11bは、ロールR1、R2の外周面にそれぞれ外周面を接触せしめて従動回転可能に配置したローラ9a、9b(
図1)の回転軸にそれぞれ取り付けられている。ローラ9aは、第1のローラとして機能し、ローラ9bは、第2のローラとして機能する。ローラ9a、9bは、それぞれ、ロールR1、R2を下方から支える支持部材としても機能する。言い換えると、各ロールR1、R2は、その軸S1、S2の両端を筐体1に対して上下に移動可能に支持されており、対応するローラ9a、9bに対して自重により押し付けられている。
【0024】
エンコーダ11a、11bは、例えば、ローラ9a、9bの回転軸にそれぞれ固定した図示しないディスクを有する。エンコーダ11a、11bは、各ディスクの全周に設けた複数の切欠きを図示しない光電センサによって検出し、切欠きが光軸を間欠的に遮るパルス信号を出力する。つまり、エンコーダ11a、11bは、ロールR1、R2から引き出されるフィルムF1、F2の引き出し量をパルス数として出力する。
【0025】
また、制御部20には、2つのロールR1、R2の回転をそれぞれ止めるブレーキ12a、12bが接続されている。一方のロールR1の回転を止めるブレーキ12aは、第1の制動部として機能し、他方のロールR2の回転を止めるブレーキ12bは、第2の制動部として機能する。ブレーキ12a、12bは、それぞれ、ローラ9a、9bの回転軸に押し付けて摩擦により回転を停止させるブレーキシュー13a、13b、及びブレーキシュー13a、13bをローラ9a、9bの回転軸に押し付けるアクチュエータ14a、14bを備える。ブレーキ12a、12bを動作させてローラ9a、9bの回転を止めると、ローラ9a、9bの外周面に接触したロールR1、R2の回転も止められる。
【0026】
また、制御部20には、接着切断部4のカッタ4aをヒータ4bに向けて駆動するアクチュエータ15が接続されている。また、制御部20には、接着切断部4のヒータ4bに通電するとともにサイドヒータ16に通電するための電源装置17に接続されている。サイドヒータ16は、2枚のフィルムF1、F2の幅方向の両端縁をシールする。また、制御部20には、搬送機構8の駆動ローラ8aを回転させるためのモータ18が接続されている。さらに、制御部20には、包装機10の動作プログラムを記憶するとともに
図4に示すデータテーブルを格納した記憶部19が接続されている。記憶部19は、各エンコーダ11a、11bを介して検出したパルス数を一時的に記憶する。
【0027】
以下、主に
図3及び
図4を参照して、上述した包装機10を用いた処理動作について説明する。
【0028】
(準備作業)
作業員は、まず、包装機10の図示しないカバーを開けて、筐体1内の所定位置にロールR1、R2を取り付け、各ロールR1、R2からフィルムF1、F2を引き出す。そして、作業員は、各ロールR1、R2から引き出したフィルムF1、F2をガイドローラ2a、2bの上方で弛ませて互いに重ね合わせる。その後、作業員は、カバーを閉じて包装機10の電源を入れる。
【0029】
(前処理)
上述した(準備作業)の後、作業員により、前処理用の新聞Pが投入口1aを介して投入されると、ガイドローラ2a、2bの上方で重ねられたフィルムF1、F2が新聞Pの投入方向の先端(以下、単に先端と称する)によって下方へ押し込まれる。このようにして投入された新聞Pは、その自重により、フィルムF1、F2を伴って、搬送機構8へ送り込まれる。このとき、制御部20は、センサ5、6の出力を監視し、新聞Pの投入方向の先端がセンサ5の光線を遮った時点(
図3;タイミングt1)でモータ18を駆動し、搬送機構8の動作を開始させる。
【0030】
搬送機構8へ送り込まれた新聞Pは、その両面にフィルムF1、F2をそれぞれ重ねた状態(ここでは、この状態のものを積層体Tと称する)で、2つの搬送ユニット8L、8Rの間に送り込まれ、走行している一対の搬送ベルト8cの間に挟まれて拘束された状態で搬送を開始される。このように、搬送機構8によって積層体Tの搬送が開始されると、フィルムF1、F2も新聞Pと一緒に搬送機構8によって下方へ引っ張られる。
【0031】
なお、搬送機構8による積層体Tの搬送を開始した時点で、上述した(準備作業)の際に重ねたフィルムF1、F2が搬送機構8の上流側で弛んでいる場合、フィルムF1、F2の弛み部分から先に搬送され、弛みが無くなった後、ロールR1、R2からフィルムF1、F2が新たに引き出される。搬送機構8による積層体Tの搬送を開始した時点で、搬送機構8の上流側にフィルムF1、F2の弛みが無い場合、ロールR1、R2からフィルムF1、F2が引き出され、ロールR1、R2が回転される。
【0032】
制御部20は、搬送機構8による積層体Tの搬送を開始した後、積層体Tに含まれる新聞Pの先端をセンサ6により検知した時点(タイミングt2)で各エンコーダ11a、11bから出力されるパルス数のカウントを開始する。そして、制御部20は、新聞Pの投入方向の後端(以下、単に後端と称する)をセンサ6により検知した時点(タイミングt3)でパルス数のカウントを終了し、タイミングt2からタイミングt3の間に各エンコーダ11a、11bを介してカウントしたパルス数を記憶部19に書き込む。
【0033】
また、制御部20は、新聞Pの後端をセンサ6により検知した時点(t3)でモータ18を停止し、搬送機構8による積層体Tの搬送を停止させる。この状態で、積層体Tは、一対の搬送ベルト8cによって挟持拘束されて所定位置に停止された状態となる。一方、搬送機構8によって積層体Tを搬送している間にフィルムF1、F2がロールR1、R2から引き出されていた場合、ロールR1、R2は、積層体Tを停止した後も、その慣性により回り続け、ロールR1、R2が停止するまでフィルムF1、F2がロールR1、R2から送り出される。ここでは、説明を分かり易くするため、積層体Tを停止させた時点でロールR1、R2が回転しているものとする。
【0034】
制御部20は、搬送機構8によって積層体Tを搬送して所定位置で停止した後(t3)、所定のタイミングでブレーキ12a、12bを作動させる。すなわち、制御部20は、モータ18の駆動を停止した後、記憶部19に書き込んだ各エンコーダ11a、11bのパルス数の差を演算し、記憶部19に予め格納してある
図4に示すデータテーブルから該当するブレーキタイミングを取得する。そして、制御部20は、取得したタイミングで各ブレーキ12a、12bを作動させてロールR1、R2を停止させる。
【0035】
例えば、エンコーダ11aを介して検出したパルス数がエンコーダ11bを介して検出したパルス数より20パルス少ない場合、ロールR1を停止させるタイミングをロールR2を停止させるタイミングより10msec遅らせる。また、例えば、エンコーダ11bを介して検出したパルス数がエンコーダ11aを介して検出したパルス数より8パルス少ない場合、ロールR2を停止させるタイミングをロールR1を停止させるタイミングより5msec遅らせる。
【0036】
つまり、本実施形態では、積層体Tの搬送中におけるフィルムの引き出し量が少ないロールを停止させるタイミングを引き出し量の多いロールを停止させるタイミングより遅くするようにした。また、本実施形態では、フィルムF1、F2の引き出し量の差に応じてロールR1、R2の停止タイミングをずらす時間を変えるようにした。これにより、積層体Tを停止させた後、搬送機構8の上流側でフィルムF1、F2の弛みを略同じ量に制御することができる。なお、
図4のデータテーブルは一例であり、包装機10の機種や顧客の要望などに合わせて適宜用意すればよい。
【0037】
積層体Tを停止させてロールR1、R2を停止させた後、制御部20は、接着切断部4のカッタ4aを動作させ、2枚のフィルムF1、F2を溶着して切断する。このとき、2枚のフィルムF1、F2は、搬送機構8の上流側で弛みの長さを揃えられているため、接着切断部4の上流側及び下流側のそれぞれで、2枚のフィルムF1、F2の弛みを同じ長さにすることができる。
【0038】
さらにこの後、制御部20は、モータ18を駆動して搬送機構8による積層体Tの搬送を再開し、排出口1bを介して排出する。このようにして排出された積層体Tは、新聞Pの先端側でフィルムF1、F2が溶着されておらず開いている。このため、作業員は、排出した積層体Tから新聞Pだけを取り出して再処理に供する。
【0039】
一方、前処理用の積層体Tを排出した後、上述したように、接着切断部4の上流側のフィルムF1、F2は、略同じ長さで弛んでおり、フィルムF1、F2の引き出し方向の下流側の端部同士が溶着された状態となっている。このため、フィルムF1、F2の溶着部分は、左右のいずれかにずれることなく、接着切断部4と搬送機構8の間に位置することになる。この状態で、包装機10は、被包装物としての新聞Pの投入を待機する待機状態となる。
【0040】
なお、ここでは、説明を分かり易くするため、搬送機構8による積層体Tの搬送を停止させた時点(タイミングt3)でロールR1、R2が回転している場合を想定したが、上述した(準備作業)においてガイドローラ2a、2bの上方で重ね合わせたフィルムF1、F2が大きく弛んでいると、積層体Tを停止させた時点(t3)でロールR1、R2の少なくとも一方が回転していない状態となる可能性がある。つまり、この場合、積層体Tの搬送によってフィルムの弛み部分だけが搬送機構8に引き込まれ、そのフィルムを巻いたロールR1及び/或いはR2から新たにフィルムが引き出されることがなく、当該ロールは停止したままの状態となる。
【0041】
積層体Tを停止させた時点で2つのロールR1、R2が両方とも停止している場合、記憶部19で記憶したエンコーダ11a、11bのパルス数は両方ともゼロとなる。この場合、搬送機構8の上流側でフィルムF1、F2が両方とも弛んでいる可能性が高い。また、積層体Tを停止させた時点で2つのロールR1、R2のうち一方が停止している場合、停止したロールに取り付けたエンコーダを介して検出されるパルス数だけがゼロとなる。この場合も、停止したままのロールから引き出されているフィルムは搬送機構8の上流側で弛んでいる可能性が高く、回転しているロールから引き出されているフィルムはロールが停止するまで弛みが増える。
【0042】
つまり、搬送機構8によって積層体Tの搬送を開始してから停止するまでの間に2つのエンコーダ11a、11bを介して検出したパルス数の少なくとも一方がゼロである場合であっても、搬送機構8の上流側でフィルムF1、F2に弛みが形成されている可能性が高い。よって、この場合、接着切断部4にてフィルムF1、F2を溶着して切断した後、切断位置の上流側のフィルムF1、F2にも弛みが残り、溶着部分が左右にずれることなく、接着切断部4と搬送機構8の間に位置することになる。
【0043】
しかし、搬送機構8による積層体Tの搬送を停止した時点で、極稀に、搬送機構8の上流側でフィルムF1、F2に弛みを生じない状況が発生し得る。つまり、積層体Tの搬送を開始する時点で搬送機構8の上流側にあったフィルムの弛みが当該積層体Tの搬送を停止した時点でちょうど無くなる場合がこれに該当する。この場合、積層体Tを停止した時点でフィルムが突っ張った状態となり、このままフィルムを溶着して切断すると、接着切断部4の上流側のフィルムが突っ張った状態になり易く、この後の新聞Pの包装処理に悪影響を及ぼし、包装品Wの見栄えが悪くなる可能性がある。
【0044】
よって、本実施形態では、制御部20は、搬送機構8による積層体Tの搬送を開始してから停止するまでの間に2つのエンコーダ11a、11bを介して検出されるパルス数の差を演算する前に、パルス数の少なくとも一方がゼロであるか否かを判断し、少なくとも一方のパルス数がゼロである場合には、積層体Tを停止した40msec後に各ロールR1、R2が停止するようにブレーキ12a、12bを制御するようにした。
【0045】
例えば、積層体Tの搬送を停止した時点で、エンコーダ11aを介して検出したパルス数がゼロであり、もう一方のエンコーダ11bを介して検出したパルス数がゼロではなかった場合、ロールR2の回転を停止するタイミングを40msec後にすることにより、フィルムF2をより多く弛ませることができる。これにより、フィルムF1が突っ張った状態のまま接着切断部4にてフィルムF1、F2を溶着及び切断した後、もう一方のフィルムF2の弛みによってフィルムF1の突っ張りを解消することができ、この後の新聞Pの包装処理に与える悪影響を少なくすることができる。
【0046】
(包装動作)
上述した(前処理)の後、作業員により、被包装物としての新聞Pが投入口1aを介して投入されると、新聞Pの先端が2枚のフィルムF1、F2の溶着部分を下方へ押し込む。このようにして投入された新聞Pは、その自重により、フィルムF1、F2を伴って、搬送機構8へ送り込まれる。このとき、制御部20は、センサ5、6の出力を監視し、新聞Pの投入方向の先端がセンサ5の光線を遮った時点(
図3;タイミングt1)でモータ18を駆動し、搬送機構8の動作を開始させる。
【0047】
搬送機構8へ送り込まれた新聞Pは、その両面にフィルムF1、F2をそれぞれ重ねた状態で、2つの搬送ユニット8L、8Rの間に送り込まれ、走行している一対の搬送ベルト8cの間に挟まれて拘束された状態で搬送を開始される。このように、搬送機構8によって積層体Tの搬送が開始されると、フィルムF1、F2も新聞Pと一緒に搬送機構8によって下方へ引っ張られる。そして、積層体Tの搬送により、フィルムF1、F2が各ロールR1、R2から引き出され、ロールR1、R2が回転する。
【0048】
制御部20は、搬送機構8による積層体Tの搬送を開始した後、積層体Tに含まれる新聞Pの先端をセンサ6により検知した時点(タイミングt2)で各エンコーダ11a、11bから出力されるパルス数のカウントを開始する。そして、制御部20は、新聞Pの後端をセンサ6により検知した時点(タイミングt3)でパルス数のカウントを終了し、タイミングt2からタイミングt3の間に各エンコーダ11a、11bを介してカウントしたパルス数を記憶部19に書き込む。
【0049】
また、制御部20は、新聞Pの後端をセンサ6により検知した時点(t3)でモータ18を停止し、搬送機構8による積層体Tの搬送を停止させる。この状態で、積層体Tは、一対の搬送ベルト8cによって挟持拘束されて所定位置に停止された状態となる。一方、搬送機構8によって積層体Tを搬送している間にフィルムF1、F2が引き出されていたロールR1、R2は、積層体Tを停止した後も、その慣性により回り続ける。つまり、積層体Tを停止した後、ロールR1、R2が停止するまで、フィルムF1、F2がロールR1、R2から送り出される。
【0050】
制御部20は、搬送機構8によって積層体Tを搬送して所定位置で停止した後(t3)、所定のタイミングでブレーキ12a、12bを作動させる。すなわち、制御部20は、モータ18の駆動を停止した後、記憶部19に書き込んだ各エンコーダ11a、11bのパルス数の差を演算し、記憶部19に予め格納してある
図4に示すデータテーブルから該当するブレーキタイミングを取得する。そして、制御部20は、取得したタイミングで各ブレーキ12a、12bを作動させてロールR1、R2を停止させる。
【0051】
例えば、エンコーダ11aを介して検出したパルス数がエンコーダ11bを介して検出したパルス数より20パルス少ない場合、ロールR1を停止させるタイミングをロールR2を停止させるタイミングより10msec遅らせる。また、例えば、エンコーダ11bを介して検出したパルス数がエンコーダ11aを介して検出したパルス数より8パルス少ない場合、ロールR2を停止させるタイミングをロールR1を停止させるタイミングより5msec遅らせる。
【0052】
つまり、本実施形態では、積層体Tの搬送中におけるフィルムの引き出し量が少ないロールを停止させるタイミングを引き出し量の多いロールを停止させるタイミングより遅くするようにした。また、本実施形態では、フィルムF1、F2の引き出し量の差に応じてロールR1、R2の停止タイミングをずらす時間を変えるようにした。これにより、積層体Tを停止させた後、搬送機構8の上流側でフィルムF1、F2の弛みを略同じ量に制御することができる。
【0053】
積層体Tを停止させてロールR1、R2を停止させた後、制御部20は、接着切断部4のカッタ4aを動作させ、搬送機構8の上流側で弛みの長さを揃えられた2枚のフィルムF1、F2を溶着して切断する。さらにこの後、制御部20は、モータ18を駆動して搬送機構8による積層体Tの搬送を再開し、排出口1bを介して包装品W(図示せず)を排出する。
【0054】
一方、積層体Tを排出した後、接着切断部4の上流側のフィルムF1、F2は、略同じ長さで弛んでおり、フィルムF1、F2の引き出し方向の下流側の端部同士が溶着された状態となっている。このため、フィルムF1、F2の溶着部分は、左右のいずれかにずれることなく、接着切断部4と搬送機構8の間に位置することになる。この状態で、包装機10は、次の新聞Pの投入を待機する待機状態となる。
【0055】
包装機10は、以上の動作を繰り返して、複数部の新聞PをフィルムF1、F2によって包装する。
【0056】
以上のように、本実施形態によると、ロールR1、R2の径が異なる状態で包装機10を動作させた場合であっても、フィルムF1、F2の弛みを均一に制御することができ、包装品Wの見栄えをよくすることができる。
【0057】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0058】
例えば、上述した実施形態では、搬送機構8による積層体Tの搬送を停止してロールR1、R2を適切なタイミングで停止させた後に、接着切断部4のカッタ4aを動作させてフィルムF1、F2を溶着及び切断するようにしたが、これに限らず、積層体Tの搬送を停止した後で且つロールR1、R2を停止する前のタイミングで接着切断部4を作動させてもよい。この場合であっても、少なくとも接着切断部4の上流側でフィルムF1、F2に弛みを生じさせることができ、包装品質の低下を抑えることができる。
【0059】
また、上述した実施形態では、予め用意したデータテーブルを参照してロールR1、R2の停止タイミングを段階的に制御する場合について説明したが、これに限らず、搬送機構8によって積層体Tの搬送を開始してから停止するまでの間にロールR1、R2から引き出されたフィルムF1、F2の引き出し量の差がゼロになるタイミングでロールR1、R2を停止させるようにしてもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では、エンコーダ11a、11bを介してパルス数をカウントしてロールR1、R2を停止制御する場合について説明したが、これに限らず、例えば各ロールR1、R2から単位時間に引き出されるフィルムF1、F2の引き出し速度を検出してロールR1、R2を停止制御するようにしてもよい。
【0061】
さらに、上述した実施形態では、筐体1の天壁1cに投入口1aを設け、底壁1dに排出口1bを設けた縦搬送タイプの包装機10について説明したが、これに限らず、筐体1の一方の側壁に投入口1aを設けて、対向する他方の側壁に排出口1bを設けた横搬送タイプの包装機にも本発明を適用することができる。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
第1のロールから引き出した第1の包装材と第2のロールから引き出した第2の包装材の間に被包装物を挟んだ積層体を挟持拘束して前記第1及び第2の包装材の引き出し方向に搬送して所定位置で停止させる搬送機構と、
前記第1の包装材の引き出し量を検出する第1の検出部と、
前記第2の包装材の引き出し量を検出する第2の検出部と、
前記搬送機構によって前記所定位置で停止させた前記積層体の前記被包装物の前記引き出し方向の後端より前記引き出し方向の上流側で前記第1の包装材と前記第2の包装材を接着して切断する接着切断部と、
前記第1のロールの回転を止める第1の制動部と、
前記第2のロールの回転を止める第2の制動部と、
前記搬送機構によって前記積層体の搬送を開始してから前記所定位置で停止するまでの間の前記第1及び第2の包装材の引き出し量を前記第1及び第2の検出部を介して検出し、当該積層体を前記所定位置で停止させた後、引き出し量の少ない方の包装材を巻いたロールを停止させるタイミングを引き出し量の多い方の包装材を巻いたロールを停止させるタイミングより遅くするように前記第1及び第2の制動部を制御する制御部と、
を有する包装機。
[2]
前記制御部は、前記搬送機構によって前記積層体の搬送を開始してから前記所定位置で停止するまでの間に前記第1及び第2のロールから引き出された前記第1及び第2の包装材の引き出し量の差がゼロになるタイミングで前記第1及び第2のロールを停止させる、
[1]の包装機。
[3]
前記制御部は、前記引き出し方向に沿って前記搬送機構の上流側で前記第1及び第2の包装材の弛みが同じになるタイミングで前記第1及び第2の制動部を動作させる、
[1]の包装機。
[4]
前記制御部は、前記引き出し方向に沿って前記接着切断部の上流側で前記第1及び第2の包装材の弛みが同じになるタイミングで前記第1及び第2の制動部を動作させる、
[1]の包装機。
[5]
前記第1の検出部は、前記第1のロールに連れ回る第1のローラの回転量を検出し、
前記第2の検出部は、前記第2のロールに連れ回る第2のローラの回転量を検出する、
[1]~[4]のうちいずれかの包装機。
【符号の説明】
【0062】
1…筐体、 2a、2b…ガイドローラ、 3a、3b…ガイド板、 4…接着切断部、 4a…カッタ、 4b…ヒータ、 5、6…センサ、 8…搬送機構、 9a、9b…ローラ、 10…包装機、 11a、11b…エンコーダ、 12a、12b…ブレーキ、 20…制御部、 F1、F2…フィルム、 P…新聞、 R1、R2…ロール、 T…積層体。