(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】複合不織布及びその製造方法並びに複合不織布製造装置
(51)【国際特許分類】
D04H 1/26 20120101AFI20240603BHJP
D04H 1/492 20120101ALI20240603BHJP
D04H 1/498 20120101ALI20240603BHJP
D04H 1/732 20120101ALI20240603BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
D04H1/26
D04H1/492
D04H1/498
D04H1/732
D04H3/16
(21)【出願番号】P 2020087396
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】508047738
【氏名又は名称】新和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000615
【氏名又は名称】弁理士法人Vesta国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安野 民雄
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-302619(JP,A)
【文献】特開平06-299452(JP,A)
【文献】特開2020-048680(JP,A)
【文献】特開平11-189959(JP,A)
【文献】特開2007-270364(JP,A)
【文献】特開2009-256856(JP,A)
【文献】特開2000-220069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/26
D04H 1/492
D04H 1/498
D04H 1/732
D04H 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維と、前記パルプ繊維よりも繊維長が長く、平均繊維径が0.5~10μmの範囲内である樹脂繊維とからなる複合不織布であって、
前記樹脂繊維は、不規則に蛇行して互いに絡み合い、
また、その長さ方向の一部で単繊維同士が複数本集束して融着している集束部を有し、かつ、厚み方向全体に分布する前記パルプ繊維と
接着することなく(但しエンボス接着は除く)絡み合っており、
前記パルプ繊維は、その平均繊維長が0.5~5mmの範囲内であり、
前記樹脂繊維及び前記パルプ繊維が3次元的に一体に交絡
しており、
前記複合不織布は、その目付量が30~80g/m
2
の範囲内、比容積が7~70cm
3
/gの範囲内、JIS P 8135により測定した湿潤強度が2N/25mm以上、50N/25mm以下の範囲内であることを特徴とする複合不織布。
【請求項2】
前記複合不織布の表裏面のうちの一方の面側で他方の面側よりも前記パルプ繊維が多く存在し、前記パルプ繊維が多く存在する前記一方の面側で前記他方の面側よりも前記樹脂繊維の前記蛇行が多く存在することを特徴とする請求項1に記載の複合不織布。
【請求項3】
樹脂繊維からなるメルトブロー不織布を形成するメルトブロー不織布製造工程と、
ネットコンベア上に載せた前記メルトブロー不織布の上に、エアレイド法によりパルプ繊維のウェブを形成するパルプ繊維ウェブ形成工程と、
前記メルトブロー不織布の前記樹脂繊維とその上に形成された前記パルプ繊維ウェブの前記パルプ繊維とを水流交絡によって一体化するスパンレース処理工程と、
前記一体に交絡された前記樹脂繊維及び前記パルプ繊維を乾燥する乾燥工程と
を具備することを特徴とする複合不織布の製造方法。
【請求項4】
前記パルプ繊維ウェブ形成工程と前記スパンレース処理工程との間で、前記メルトブロー不織布及びその上に形成された前記パルプ繊維ウェブに対し押圧するロール加工工程を有することを特徴とする請求項
3に記載の複合不織布の製造方法。
【請求項5】
前記スパンレース処理工程では、前記パルプ繊維ウェブの上からジェット水流を付与し前記水流交絡させることを特徴とする請求項
3または請求項
4に記載の複合不織布の製造方法。
【請求項6】
前記乾燥工程の前または後に、熱エンボス加工を施す熱エンボス加工工程を有することを特徴とする請求項
3乃至請求項
5の何れか1つに記載の複合不織布の製造方法。
【請求項7】
樹脂繊維からなるメルトブロー不織布を形成するメルトブロー不織布製造部と、
ネットコンベア上に載せた前記メルトブロー不織布の上に、エアレイド法によりパルプ繊維のウェブを形成するパルプ繊維ウェブ形成部と、
前記メルトブロー不織布の前記樹脂繊維とその上に形成された前記パルプ繊維ウェブの前記パルプ繊維とを水流交絡によって一体化するスパンレース処理部と、
前記一体に交絡された前記樹脂繊維及び前記パルプ繊維を乾燥する乾燥部と
を具備することを特徴とする複合不織布製造装置。
【請求項8】
前記パルプ繊維ウェブ形成部と前記スパンレース処理部との間で、前記メルトブロー不織布及びその上に形成された前記パルプ繊維ウェブに対し押圧するロール加工部を有することを特徴とする請求項
7に記載の複合不織布製造装置。
【請求項9】
前記スパンレース処理部では、前記パルプ繊維ウェブの上からジェット水流を付与し前記水流交絡させることを特徴とする請求項
7または請求項
8に記載の複合不織布製造装置。
【請求項10】
前記乾燥部の前または後に、熱エンボス加工を施す熱エンボス加工部を有することを特徴とする請求項
7乃至請求項
9の何れか1つに記載の複合不織布製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電化製品や床等の清掃、手入れ、保護、つや出し等に用いられる清掃シート(クリーニングシート)、ウエットティッシュ、お手拭き(おしぼり)、体拭き、化粧落し、フェイスマスク、防護服の生地、防水シーツ、枕カバー、介護シーツ、紙おむつ、ペット用シート、おしぼり、キッチンペーパー(キッチン用タオル)、化学雑巾、自動車の内装、土木建築資材等に使用される複合不織布及びその製造方法並びに複合不織布製造装置に関するものであり、特に、パルプ繊維と合成樹脂繊維からなる複合不織布及びその製造方法並びに複合不織布製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、不織布を構成する繊維として、例えば、ポリエステル(PEs)系やポリプロピレン(PP)系等の合成樹脂繊維や、レーヨン、パルプ等の植物性繊維が知られている。ポリエステル系やポリプロピレン系の合成樹脂繊維は、強度はあるが、一般に疎水性であることから吸水性に乏しい。一方で、レーヨン、パルプ等の植物性繊維は、一般に親水性であるため吸水性は良いが、強度に乏しく、特に、湿潤時には繊維間の接合力が脆くなり、強度が大きく低下する。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、スパンボンド法により形成された連続フィラメントの合成繊維ウェブに、パルプエアレイドでパルプ繊維を供給して積層し、ウォータージェットで合成繊維ウェブ層とパルプ繊維層とを水流絡合させて複合型不織布を得る技術が開示されている。このような複合型不織布では、合成繊維の不織布による強度及び紙シートによる吸収性を兼ね備えるものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の技術においては、合成繊維のウェブがスパンボンド法により形成された連続フィラメントであるから、パルプエアレイドでパルプ繊維を積層し、パルプ繊維層及び合成繊維層をスパレース処理しても、パルプ繊維の合成繊維への絡合が弱く、使用時に紙粉が発生し、パルプ繊維の脱落により剥がれや破れが生じやすい問題がある。特に、濡れると強度が極端に弱くなるものである。また、吸水性や保水性を向上させるためにパルプ繊維の含有量を多くすると、ますます使用時に紙粉が発生しやすくなることから、パルプ繊維による吸水性、保水量の向上にも限度がある。
【0006】
そこで、本発明は、乾燥時において紙粉が発生し難くて使用時にも破れ難く、また、湿潤時においても使用時に紙粉の剥がれ落ちが生じ難く、高い湿潤強度を有する複合不織布及びその製造方法並びに複合不織布製造装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明の複合不織布は、パルプ繊維と、前記パルプ繊維よりも繊維長が長く、平均繊維径が0.5~10μmの範囲内である樹脂繊維とからなり、前記樹脂繊維が、不規則に蛇行して互いに絡み合い、かつ、厚み方向全体に分布する前記パルプ繊維と絡み合い、前記樹脂繊維及び前記パルプ繊維が3次元的に一体に交絡してなるものである。
【0008】
上記パルプ繊維のパルプとしては、好ましくは、木材を原料とした木材パルプが使用されるが、木材以外の植物繊維、例えば、草、竹、綿、亜麻、エスパルト、ケナフ、ミルクウィード、藁、バガス等の非木材パルプであってもよい。一般的に、木材のパルプ繊維は、扁平なリボン状を成している。
このパルプ繊維は、樹脂繊維よりも短繊維、即ち、繊維長が短いものである。
【0009】
上記樹脂繊維の樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アラミド等の合成樹脂が使用される。
そして、上記樹脂繊維は、前記パルプ繊維よりも繊維長が長く、平均繊維径が、好ましくは、0.5μm以上、10μm以下、より好ましくは、0.5μm以上、5μm以下、更に好ましくは、1μm以上、3μm以下の範囲内である。なお、樹脂繊維の平均繊維径は、走査型電子顕微鏡を用いて、複合不織布の表面及び裏面のSEM画像(×700)を撮影し、各面のSEM画像から視野内の全ての繊維について、それぞれ1回ずつ繊維径を測定して平均値を求め、その平均値の10nmの位を四捨五入して、平均繊維径(μm)を算出したものである。
【0010】
そして、このような所定の平均繊維径の樹脂繊維は、その多数本が不規則(ランダム)に蛇行し、ときにループを形成して随所で相互に立体的に絡み合い、かつ、厚み方向全体に分布する前記パルプ繊維と随所で立体的に絡み合っているものである。
ここで、上記樹脂繊維が厚み方向全体に分布する前記パルプ繊維と絡み合いとは、パルプ繊維層と樹脂繊維層の積層構造ではないことを意味し、複合不織布の表面側から裏面側までの略厚み全体にパルプ繊維が分布し、それらパルプ繊維が、メルトブロー繊維である樹脂繊維と絡合していることを意味するものである。なお、パルプ繊維の分布量は、厚み方向で均一であることを要求するものではない。即ち、上記パルプ繊維及び樹脂繊維は、不規則(ランダム)な配向で互いに3次元的に交絡し一体化されているものである。
【0011】
請求項1の発明の複合不織布の前記パルプ繊維は、好ましくは、フィブリル化された叩解木材パルプであり、その平均繊維長は、好ましくは、500μm以上、5000μm以下の範囲内、より好ましくは、600μm以上、4000μm以下の範囲内、更に好ましくは、750μm以上、3500μm以下の範囲内であるものである。
【0012】
ここで、上記フィブリル(fibril)化とは、繊維内部のフィブリルが摩擦作用で表面に現れて毛羽立ち、ささくれる現象をいい、SEM画像で確認できる。また、「叩解」とは、『パルプスラリーを、リファイナー、ビーター等の回転する向かい合った凹凸の刃の間を通過させることにより、パルプに連続的な圧縮・開放を繰り返して作用させて、パルプ繊維に膨潤、フィブリル化、切断を起こさせること』(社団法人日本化学会・編『化学便覧 応用化学編(第6版)』250頁,平成15年1月30日,丸善株式会社発行)である。叩解方法は特に限定されず、パルパー、加圧水流の噴射(ウオータージェットパンチング)等によりフィブリル化されたものであっても良い。
なお、前記パルプ繊維の平均繊維長は、複合不織布の表面及び裏面の各面にセロハンテープ(登録商標)を接着し、それを剥がしたときに、パルプ繊維がテープの粘着面に接着するから、それに対し、走査型電子顕微鏡を用いてSEM画像(×250)の撮影をし、各面のSEM画像から視野内の全ての繊維について、それぞれ1回ずつ平均繊維長を測定して平均値を求め、その平均値の10nmの位を四捨五入して、平均繊維径(μm)を算出したものである。
【0013】
請求項1の発明の複合不織布の前記樹脂繊維は、その長さ方向の一部で単繊維同士が複数本集束して融着している集束部を形成しているものであり、集束部の両端部側または片端部側では、単繊維の非融着部分による枝分かれ構造が存在する。
ここで、上記集束部は、例えば、メルトブロー法で形成したメルトブロー繊維において、ダイスの口金から吐出した単繊維が隣りあう繊維同士で融着して結合することで形成される。
【0014】
請求項1の発明の複合不織布の前記複合不織布は、その目付量(坪量)が、好ましくは、30g/m2以上、80g/m2以下、より好ましくは、35g/m2以上、75g/m2以下、更に好ましくは、40g/m2以上、70g/m2以下の範囲内であり、かつ、比容積が、好ましくは、7cm3/g以上、70cm3/g以下、より好ましくは、10cm3/g以上、65cm3/g以下、更に好ましくは、12cm3/g以上、60cm3/g以下の範囲内であるものである。
【0015】
請求項2の発明の複合不織布は、前記複合不織布の表裏面のうちの一方の面側で他方の面側よりも前記パルプ繊維が多く存在し、前記パルプ繊維が多く存在する前記一方の面側で前記他方の面側よりも、前記樹脂繊維の前記蛇行が多く存在するものである。
上記表裏とは、表または裏を追求、特定するものではなく、前記複合不織布の厚み方向に対して垂直な両面のうち、一方の面とその反対側である他方の面を特定するものである。そして、前記複合不織布の表裏面のうちの一方の面(表面または裏面)側で、その反対側である他方の面(裏面または表面)側よりも、前記パルプ繊維の存在割合、即ち、含有量が多いものであり、また、前記樹脂繊維の前記蛇行の数も多いものである。
【0016】
請求項3の複合不織布の製造方法は、メルトブロー不織布製造工程で樹脂繊維からなるメルトブロー不織布を形成し、パルプ繊維ウェブ形成工程でネットコンベア上に載せた前記メルトブロー不織布の上に、エアレイド法によりパルプ繊維のウェブを形成し、スパンレース処理工程で前記メルトブロー不織布の前記樹脂繊維とその上に形成された前記パルプウェブの前記パルプ繊維とを水流交絡によって一体化し、乾燥工程で前記一体に交絡された前記樹脂繊維及び前記パルプ繊維を乾燥するものである。
【0017】
ここで、上記メルトブロー不織布製造工程は、合成樹脂を溶融し、それを多数の口金を持つダイから紡出すると共に、紡糸の際に高速で高温の気流を吹き付けることで牽引細化し、牽引細化された極細樹脂繊維をネットコンベア上で捕集、シート状に集積、堆積するメルトブロー法によって不織布を形成する工程である。ブロー紡糸する際に吹き付ける気流(気体)は、通常、空気が用いられるが、窒素ガス等の不活性気体を使用することも可能である。
上記樹脂繊維の樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アラミド等の合成樹脂が使用される。
【0018】
上記パルプエアレイド工程は、解繊(開繊)したパルプ繊維を水を用いることなく空気の流れで分散させ、それを吐出して、ネットコンベアに載せたメルトブロー不織布の上で負圧により捕集、堆積、集積するパルプエアレイド法により、メルトブロー不織布の上にパルプ繊維のウェブを形成する工程であり、パルプ繊維ウェブ側を上面とする。上記エアレイド法としては、例えば、カールクロイヤー法、ダンウェブ法、J&J法、KC法、キノクロス法等の公知の方法が採用できる。
上記パルプ繊維のパルプとしては、好ましくは、木材を原料とした木材パルプが使用されるが、木材以外の植物繊維、例えば、草、竹、綿、亜麻、エスパルト、ケナフ、ミルクウィード、藁、バガス等の非木材パルプであってもよい。一般的に、木材のパルプ繊維は、扁平なリボン状を成している。
【0019】
上記スパンレース処理工程は、前記メルトブロー不織布及びその上に供給された前記パルプ繊維ウェブに対しウォータージェットを施すことにより、好ましくは、パルプ繊維ウェブの上面からメルトブロー不織布側にジェット水流を付与することにより、前記メルトブロー不織布の前記樹脂繊維と前記パルプ繊維ウェブの前記パルプ繊維を水流交絡によって一体化、結合するものである。
【0020】
上記乾燥工程は、前記メルトブロー不織布を構成していた前記樹脂繊維と前記パルプ繊維ウェブを構成していた前記パルプ繊維の前記水流交絡した水分を乾燥する工程であり、ヒータまたは熱ロールでも、乾燥高温空気であっても良い。
【0021】
請求項4の複合不織布の製造方法は、前記パルプ繊維ウェブ形成工程と前記スパンレース処理工程との間で、前記メルトブロー不織布及びその上に形成された前記パルプ繊維ウェブをロール加工で押圧するロール加工工程を有するものである。
上記熱ロール加工工程は、前記メルトブロー不織布及びその上に形成された前記パルプ繊維ウェブをロール間に通して押圧することにより、前記メルトブロー不織布の上に形成されたパルプ繊維ウェブの嵩高を落ち着かせ、パルプ繊維の定着を図る工程である。
【0022】
請求項5の複合不織布の製造方法は、前記メルトブロー不織布及びその上に形成された前記パルプ繊維ウェブに対し、前記スパンレース処理工程では、前記パルプ繊維ウェブの上面から前記メルトブロー不織布側にジェット水流を付与し前記水流交絡させるものである。
【0023】
請求項6の複合不織布の製造方法は、前記乾燥工程の前または後に熱エンボスロールの型押しにより熱エンボス加工工程を有するものである。
上記熱エンボス加工工程は、熱エンボスロールの型押しにより、部分的に繊維を融着、融合しエンボスパターンを形成する工程である。前記スパンレース処理工程と前記乾燥工程との間であってもよいし、前記乾燥工程の後であってもよい。
【0024】
請求項7の複合不織布製造装置は、メルトブロー不織布製造部で樹脂繊維からなるメルトブロー不織布を形成し、パルプ繊維ウェブ形成部でネットコンベア上に載せた前記メルトブロー不織布の上に、エアレイド法によりパルプ繊維のウェブを形成し、スパンレース処理部で前記メルトブロー不織布の前記樹脂繊維とその上に形成された前記パルプ繊維ウェブの前記パルプ繊維とを水流交絡によって一体化し、乾燥部で前記一体に交絡された前記樹脂繊維及び前記パルプ繊維を乾燥するものである。
【0025】
ここで、上記メルトブロー不織布製造部は、合成樹脂を溶融し、それを多数の口金を持つダイから糸状に押し出して紡糸すると共に、紡糸の際に高速で高温の気流を吹き付けることで極細樹脂繊維とし、それをネットコンベア上で捕集しシート状に集積するメルトブロー法によって不織布を形成するものである。ブロー紡糸する際に吹き付ける気流(気体)は、通常、空気が用いられるが、窒素ガス等の不活性気体を使用することも可能である。
上記樹脂繊維の樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アラミド等の合成樹脂が使用される。
【0026】
上記パルプエアレイド部は、解繊(開繊)したパルプ繊維を水を用いることなく空気の流れで分散させ、それを吐出して、ネットコンベアに載せたメルトブロー不織布の上で負圧により捕集、堆積、集積するパルプエアレイド法により、メルトブロー不織布の上にパルプ繊維のウェブを形成するものであり、パルプウェブ側を上面とする。上記エアレイド法としては、例えば、カールクロイヤー法、ダンウェブ法、J&J法、KC法、キノクロス法等の公知の方法が採用できる。
上記パルプ繊維のパルプとしては、好ましくは、木材を原料とした木材パルプが使用されるが、木材以外の植物繊維、例えば、草、竹、綿、亜麻、エスパルト、ケナフ、ミルクウィード、藁、バガス等の非木材パルプであってもよい。一般的に、木材のパルプ繊維は、扁平なリボン状を成している。
【0027】
上記スパンレース処理工部は、前記メルトブロー不織布及びその上に供給された前記パルプ繊維ウェブに対しウォータージェットを施すことにより、好ましくは、パルプ繊維ウェブの上面からメルトブロー不織布側にジェット水流を付与することにより、前記メルトブロー不織布の前記樹脂繊維と前記パルプ繊維ウェブの前記パルプ繊維を水流交絡によって一体化、結合するものである。
【0028】
上記乾燥部は、前記メルトブロー不織布を構成していた前記樹脂繊維と前記パルプ繊維ウェブを構成していた前記パルプ繊維の前記水流交絡した水分を乾燥するものであり、ヒータまたは熱ロールでも、乾燥高温空気であっても良い。
【0029】
請求項8の複合不織布製造装置は、前記パルプ繊維ウェブ形成部と前記スパンレース処理部との間で、前記メルトブロー不織布及びその上に形成された前記パルプ繊維ウェブをロール加工で押圧するロール加工部を有するものである。
上記熱ロール加工部は、前記メルトブロー不織布及びその上に形成された前記パルプ繊維ウェブをロール間に通して押圧することにより、前記メルトブロー不織布の上に形成されたパルプ繊維ウェブの嵩高を落ち着かせ、パルプ繊維の定着を図る工程である。
【0030】
請求項9の複合不織布製造装置は、前記メルトブロー不織布及びその上に形成された前記パルプ繊維ウェブに対し、前記スパンレース処理部では、前記パルプ繊維ウェブの上面から前記メルトブロー不織布側にジェット水流を付与し前記水流交絡させるものである。
【0031】
請求項10の複合不織布製造装置は前記乾燥部の前または後に熱エンボスロールの型押しにより熱エンボス加工部を有するものである。
上記熱エンボス加工部は、熱エンボスロールの型押しにより、部分的に繊維を融着、融合しエンボスパターンを形成するものである。前記乾燥部の前または後とは、前記スパンレース部の下流側であって前記乾燥部の上流側の間、または、前記乾燥部の下流側に熱エンボス加工部を配設することを意味する。
【発明の効果】
【0032】
請求項1の発明に係る複合不織布によれば、パルプ繊維と、前記パルプ繊維よりも繊維長が長く、平均単繊維径が好ましくは0.5~10μmの範囲内、より好ましくは、0.5~5μmの範囲内、更に好ましくは、1~3μmの範囲内である樹脂繊維とからなり、前記樹脂繊維が、不規則に蛇行して互いに絡み合い、かつ、厚み方向全体に分布する前記パルプ繊維と絡み合い、前記樹脂繊維及び前記パルプ繊維が3次元的に一体に交絡しているものである。
【0033】
この請求項1の発明に係る複合不織布によれば、極細の樹脂繊維が、不規則に蛇行して互いに絡み合っていることで、また、樹脂繊維が所定径の極細でありその表面積が大きいことで、樹脂繊維にパルプ繊維が捕捉された絡み合いが多く、パルプ繊維が強固に樹脂繊維に保持されているものである。したがって、パルプ繊維が脱落し難く、乾燥時(非湿潤時)において紙粉が生じ難くて使用時にも剥がれ、破れが生じ難い。また、湿潤時においても使用時に紙粉の剥がれ落ちが生じ難く、高い湿潤強度を有する。更に、極細の樹脂繊維でもそれらが互いに交絡し、更に、パルプ繊維とも交絡しているから、柔らかさと機械的強度が両立する。
【0034】
請求項1の発明の複合不織布によれば、前記パルプ繊維は、好ましくは、フィブリル化された叩解木材パルプであり、その平均繊維長は、好ましくは、500μm以上、5000μm以下の範囲内、より好ましくは、600μm以上、4000μm以下の範囲内、更に好ましくは、750μm以上、3500μm以下の範囲内であるから、前記樹脂繊維への絡合性が向上し、パルプ繊維の脱落がより生じ難くて紙粉の発生、剥がれ、破れをより防止できる。また、機械的強度の向上が可能である。
【0035】
請求項1の発明の複合不織布によれば、前記樹脂繊維は、その長さ方向の一部で単繊維同士が複数本集束して融着している集束部を有するから、繊維強度が向上し、かつ、集束部の端部では、単繊維同士が融着していない非融着部分の枝分かれ構造を有する。よって、その枝分かれ構造でもパルプ繊維の絡合性の向上が可能である。したがって、更に機械的強度の向上が可能である。また、パルプ繊維の脱落、紙粉の発生、剥がれ、破れをより一層防止できる。
【0036】
請求項1の発明の複合不織布によれば、その目付量(坪量)が、好ましくは、30~80g/m2の範囲内であり、かつ、比容積が、好ましくは、7~70cm3/gの範囲内である。
目付量が大きく、比容積が小さいものは、樹脂繊維間へのパルプ繊維の貫入が少なく、パルプ量が少なくなるものであるから、吸水性や保水性が小さいものとなる。一方で、目付量が少なく、比容積が大きいものは、パルプ繊維及び樹脂繊維の交絡が少ないから、機械的強度が小さいものとなる。
複合不織布の目付量(坪量)が、好ましくは、30~80g/m2、より好ましくは、35~75g/m2、更に好ましくは、40~70g/m2の範囲内であり、かつ、比容積が、好ましくは、7~70cm3/g、より好ましくは、10~65cm3/g、更に好ましくは、12~60cm3/gの範囲内であれば、吸水性、保水性と機械的強度とを両立できる。
【0037】
請求項2の発明に係る複合不織布によれば、前記複合不織布の表裏面のうちの一方の面側で他方の面側よりも前記パルプ繊維が多く存在し、前記パルプ繊維が多く存在する前記一方の面側で前記他方の面側よりも前記樹脂繊維の前記蛇行または前記ループが多く存在するから、一方の面側でパルプ繊維が多く存在していても、その面側で前記樹脂繊維の前記蛇行が多いことで、樹脂繊維へのパルプ繊維の絡合性を高くでき、湿潤強度を高くできる。よって、パルプ繊維が多く存在する面側で多くの吸水、保水が生じても、剥がれ落ちや破れが生じ難い。したがって、請求項1に記載の効果に加えて、使用時における方向性を特定しなくとも、使用時に剥がれ落ちや破れが生じ難いものである。
【0038】
請求項3の発明に係る複合不織布の製造方法によれば、メルトブロー不織布製造工程にて樹脂繊維からなるメルトブロー不織布を形成し、また、パルプ繊維ウェブ形成工程にてネットコンベア上に載せた前記メルトブロー不織布の上にエアレイド法でパルプ繊維ウェブを形成し、そして、スパンレース処理工程にて、前記メルトブロー不織布の前記樹脂繊維とその上に形成された前記パルプ繊維ウェブの前記パルプ繊維とを水流交絡によって一体化し、乾燥工程にて前記スパンレース処理部で一体に交絡された前記樹脂繊維及び前記パルプ繊維を乾燥する。
【0039】
メルトブロー法によれば、樹脂繊維が極細で、不規則に蛇行して互いに絡み合う不織布の形成が可能であり、そのようなメルトブロー不織布に対し、エアレイド法により解繊されたパルプ繊維を空気で分散させ(空気流で吹き付けて)、メルトブロー不織布の上にパルプ繊維を堆積し、樹脂繊維及びパルプ繊維をスパンレース処理したものでは、エアレイド法により供給されたパルプ繊維が解繊された細かい粉状であり繊維同士の水素結合も弱いから、極細の樹脂繊維が密に絡み合うメルトブロー不織布であってもその樹脂繊維間に貫入させることができ、そして、樹脂繊維が蛇行して互いに絡み合っていることで、パルプ繊維が樹脂繊維間に捕捉されやすく絡み合いやすい。よって、樹脂繊維とパルプ繊維の絡合点を多くし、樹脂繊維にパルプ繊維を強固に保持できる。したがって、パルプ繊維の脱落が生じ難く、乾燥時(非湿潤時)において紙粉が生じ難くて使用時にも剥がれや破れが生じ難く、また、湿潤時においても使用時に紙粉の剥がれ落ち難く、高い湿潤強度を有する複合不織布を得ることができる。更に、極細の樹脂繊維でもそれらが互いに交絡し、更に、パルプ繊維とも交絡しているから、柔らかさと機械的強度が両立した複合不織布が得られる。
【0040】
請求項4の発明に係る複合不織布の製造方法によれば、前記パルプ繊維ウェブ形成工程と前記スパンレース処理工程との間に、前記メルトブロー不織布及びその上に形成された前記パルプ繊維ウェブに対しロールで押圧するロール加工工程を有するから、スパンレース処理工程の前で、パルプ繊維の定着を図ることができる。よって、請求項3に記載の効果に加えて、樹脂繊維へのパルプ繊維の絡合性を増大させ、パルプ繊維の脱落を一層生じ難くできる。また、ネットコンベアによる移送時や後のスパンレース処理工程でのウォータージェットの噴流の際に、パルプ繊維、紙粉の舞い上がり、流失を防止し、歩留まりをよくできる。
【0041】
請求項5の発明に係る複合不織布の製造方法によれば、前記スパンレース処理工程では、前記パルプ繊維ウェブの上面から前記メルトブロー不織布側にジェット水流を付与し前記水流交絡させるから、パルプ繊維ウェブ側からパルプ繊維をメルトブロー不織布側の樹脂繊維に巻き込んで交絡できる。よって、請求項3または請求項4に記載の効果に加えて、樹脂繊維へのパルプ繊維の絡合性を向上させ、パルプ繊維の脱落をより一層防止できる。また、機械的強度の向上が可能である。
【0042】
請求項6の発明に係る複合不織布の製造方法によれば、前記スパンレース処理工程と前記乾燥工程との間、または、前記乾燥工程の後に熱エンボスロールで型押しする熱エンボス加工工程を有するから、請求項3乃至請求項5の何れか1つに記載の効果に加えて、効果的に繊維の脱落を防止して機械的強度を高め、また、嵩高を可能とし、更に、伸びを抑制できる。
【0043】
請求項7の発明に係る複合不織布製造装置によれば、メルトブロー不織布製造部にて樹脂繊維からなるメルトブロー不織布を形成し、また、パルプ繊維ウェブ形成部にてネットコンベア上に載せたメルトブロー不織布の上にエアレイド法でパルプ繊維ウェブを形成し、そして、スパンレース処理部にて、前記メルトブロー不織布の前記樹脂繊維とその上に形成された前記パルプ繊維ウェブの前記パルプ繊維とを水流交絡によって一体化し、乾燥部にて前記スパンレース処理部で一体に交絡された前記樹脂繊維及び前記パルプ繊維を乾燥する。
【0044】
メルトブロー法によれば、樹脂繊維が極細で、不規則に蛇行して互いに絡み合う不織布の形成が可能であり、そのようなメルトブロー不織布に対し、エアレイド法により解繊されたパルプ繊維を空気で分散させ(空気流で吹き付けて)、メルトブロー不織布の上にパルプ繊維を堆積し、樹脂繊維及びパルプ繊維をスパンレース処理したものでは、エアレイド法により供給されたパルプ繊維が解繊された細かい粉状であり繊維同士の水素結合も弱いから、極細の樹脂繊維が密に絡み合うメルトブロー不織布であってもその樹脂繊維間に貫入させることができ、そして、樹脂繊維が蛇行して互いに絡み合っていることで、パルプ繊維が樹脂繊維間に捕捉されやすく絡み合いやすい。よって、樹脂繊維とパルプ繊維の絡合点を多くし、樹脂繊維にパルプ繊維を強固に保持できる。したがって、パルプ繊維の脱落が生じ難く、乾燥時(非湿潤時)において紙粉が生じ難くて使用時にも剥がれや破れが生じ難く、また、湿潤時においても使用時に紙粉の剥がれ落ち難く、高い湿潤強度を有する複合不織布を得ることができる。更に、極細の樹脂繊維でもそれらが互いに交絡し、更に、パルプ繊維とも交絡しているから、柔らかさと機械的強度が両立した複合不織布が得られる。
【0045】
請求項8の発明に係る複合不織布製造装置によれば、前記パルプ繊維ウェブ形成部と前記スパンレース処理部との間に、前記メルトブロー不織布及びその上に形成された前記パルプ繊維ウェブに対しロールで押圧するロール加工部を有するから、スパンレース処理部の前で、パルプ繊維の定着を図ることができる。よって、請求項7に記載の効果に加えて、樹脂繊維へのパルプ繊維の絡合性を増大させ、パルプ繊維の脱落を一層生じ難くできる。また、ネットコンベアによる移送時や後のスパンレース処理工程でのウォータージェットの噴流の際に、パルプ繊維、紙粉の舞い上がり、流失を防止し、歩留まりをよくできる。
【0046】
請求項9の発明に係る複合不織布製造装置によれば、前記スパンレース処理部では、前記パルプ繊維ウェブの上面から前記メルトブロー不織布側にジェット水流を付与し前記水流交絡させるから、パルプ繊維ウェブ側からパルプ繊維をメルトブロー不織布側のメルトブロー樹脂繊維に巻き込んで交絡できる。よって、請求項7または請求項8に記載の効果に加えて、樹脂繊維へのパルプ繊維の絡合性を向上させ、パルプ繊維の脱落をより一層防止できる。また、機械的強度の向上が可能である。
【0047】
請求項10の発明に係る複合不織布製造装置によれば、前記スパンレース処理部と前記乾燥部との間、または、前記乾燥部の後に熱エンボスロールで型押しする熱エンボス加工部を有するから、請求項7乃至請求項9の何れか1つに記載の効果に加えて、効果的に繊維の脱落を防止して機械的強度を高め、また、嵩高を可能とし、更に、伸びを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は本発明の実施の形態の複合不織布の表裏面のうちの一方の面(表面、上面)の走査型電子顕微鏡写真(×100)である。
【
図2】
図2は本発明の実施の形態の複合不織布の表裏面のうちの一方の面(表面、上面)の走査型電子顕微鏡写真(×250)である。
【
図3】
図3は本発明の実施の形態の複合不織布の表裏面のうちの一方の面(表面、上面)の走査型電子顕微鏡写真(×500)である。
【
図4】
図4は本発明の実施の形態の複合不織布の表裏面のうちの他方の面(裏面、下面)の走査型電子顕微鏡写真(×250)である。
【
図5】
図5は本発明の実施の形態の複合不織布の表裏面のうちの他方の面(裏面、下面)の走査型電子顕微鏡写真(×500)である。
【
図6】
図6は本発明の実施の形態の複合不織布の断面の走査型電子顕微鏡写真(×30)である。
【
図7】
図7は本発明の実施の形態の複合不織布の断面の走査型電子顕微鏡写真(×50)である。
【
図8】
図8は本発明の実施の形態の複合不織布の断面の走査型電子顕微鏡写真(×100)である。
【
図9】
図9は本発明の実施の形態の複合不織布の断面の走査型電子顕微鏡写真(×250)である。
【
図10】
図10は本発明の実施の形態の複合不織布のエンボス部の断面の走査型電子顕微鏡写真(×500)である。
【
図11】
図11は本発明の実施の形態の複合不織布のエンボス部の断面の走査型電子顕微鏡写真(×700)である。
【
図12】
図12は本発明の実施の形態の複合不織布の製造工程を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、実施の形態において、図示の同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分であるから、ここではその重複する説明を省略する。
【0050】
まず、本発明の実施の形態に係る複合不織布について、
図1乃至
図11の電子顕微鏡写真を参照して説明する。
本実施の形態の複合不織布1は、扁平のリボン状をした短繊維状のパルプ繊維2と極細長繊維状(フィラメント状)の合成樹脂繊維からなるメルトブロー樹脂繊維3が3次元的に一体に交絡されてなるものである。
【0051】
ここで、本実施の形態の複合不織布1を構成している樹脂繊維からなるメルトブロー樹脂繊維3は、後述するように、合成樹脂を溶融、紡糸し、紡出した繊維を高温の熱風により極細とするメルトブロー法により形成されたものであり、所定の繊維径を有する極細の繊維である。
【0052】
この本実施の形態のメルトブロー樹脂繊維3は、
図1乃至
図11に示すように、不規則(ランダム)に蛇行、湾曲し、または、ループを形成し、互いに3次元的に絡合している。
また、本実施の形態の複合不織布1では、メルトブロー樹脂繊維3の長さ方向の一部または全部で、単繊維同士が複数本集束して融着した集束部3aが存在する。特に、メルトブロー樹脂繊維3の長さ方向の一部で単繊維同士が複数本集束して融着した集束部3aを有すると、その集束部3aの両側または片側では、単繊維同士が相互に融着していないことで、枝分かれ構造を有することになる。
【0053】
メルトブロー樹脂繊維3としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、アラミド、アクリル、ポリスチレン等の合成樹脂が使用され、複合不織布1の用途、目的等によって選択される。原料の選択や製造工程での工夫で、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の複合タイプや、ポリ乳酸(PLA)ベースの生分解タイプ等としてもよく、また、複数の樹脂からなる芯鞘構造、並列構造、割繊構造の繊維としてもよい。繊維形状も一般的には丸形であるが、楕円形、菱形、三角形、T形、井形等であってもよい。
特に、ポリプロピレンは環境に優しい材料、柔らかい長繊維となることから、基材となる原材料にコポリマーのポリプロピレンを使用するのが望ましい。
【0054】
本実施の形態において、後述するように、紡糸及び高温の熱風の噴射により得られる長繊維状のメルトブロー樹脂繊維3は、その平均繊維径が、好ましくは、0.5~10μmである。
本発明者らの実験研究によれば、繊維径が太すぎるものでは、繊維密度の低下や繊維の高表面積により、パルプ繊維2の捕捉、絡合性が低下する。一方で、繊維径が細すぎるものでも、繊維の高密度化や繊維の湾曲性の低下により、パルプ繊維2の捕捉、交絡性が低下する。
好ましくは、メルトブロー樹脂繊維3の平均繊維径は、0.5~10μmの範囲内であれば、パルプ繊維2を不規則(ランダム)に交絡させるための蛇行、湾曲、ループを多く形成できて、パルプ繊維2の絡み合いを多く、強くできる。より好ましくは、0.5~8μm、更に好ましくは、0.5~5μmの範囲内である。
なお、メルトブロー樹脂繊維3の繊維径は、後述するように繊維を吐出するノズルダイ15のノズル口金の孔径、それらの間隔、樹脂の吐出量、ノズルダイ15の高さ等により制御される。
【0055】
そして、本実施の形態の複合不織布1では、これら不規則(ランダム)に蛇行、湾曲し、または、ループを形成して互いに3次元的に交絡している所定の平均繊維径を有するメルトブロー樹脂繊維3にパルプ繊維2が不規則(ランダム)に3次元的に交絡して、また、パルプ繊維2が3次元的に互いに交絡して、メルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2が一体化されている。
【0056】
パルプ繊維2としては、例えば、スギ、ヒノキ、カラマツ、ダグラスファー、サザンパイン、ラジアータパイン、スラッシュパイン、スプルース、ロッジボールパイン等の針葉樹や、ユーカリ、アカシア等の広葉樹の木材を、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイト法等で蒸解した化学パルプ、または、グランドパルプ(砕木パルプ)、サーモメカニカルパルプ等の機械パルプ、或いは、再生パルプ等が使用される。針葉樹パルプや広葉樹パルプは混合して用いてもよく、広葉樹由来のパルプの含有率が高いと、柔らかい風合いで地合いの良い複合不織布1を得ることができ、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒パルプ(NUKP)等の針葉樹由来のパルプの含有率が高いと、繊維の脱落が少なくて強度が高く歩留まりがよい複合不織布1を形成できる。バージンパルプまたは再生パルプの何れも使用できるが、再生パルプの方が短い繊維が多い傾向にあり、柔らかく地合いがより良好な複合不織布1の形成が可能である。
【0057】
また、本実施の形態のパルプ繊維2は、
図2及び
図3から分かるように、叩解によりフィブリル化したものであり、長繊維である樹脂繊維3よりも繊維長が短く、その平均繊維長は、好ましくは、0.5~5mmの範囲内である。
パルプ繊維2の平均繊維長が長すぎると、地合いが低下する。一方で、平均繊維長が短すぎると、パルプ繊維2の交絡性が低下し、紙粉の発生を抑制できる絡合性が得られず、また、機械的強度も低下する。
パルプ繊維2の平均繊維長が好ましくは、0.5~5mmの範囲内であれば、パルプ繊維2の交絡性も良好であり機械的強度が良好で、パルプ繊維2の脱落が生じ難く、かつ、地合いも良好なものとなる。より好ましくは、0.6~4mmの範囲内、更に好ましくは、0.75~3.5mmの範囲内である。
【0058】
ここで、本実施の形態の複合不織布1では、
図6及び
図7の複合不織布1の断面における顕微鏡写真に示したように、複合不織布1の厚み方向の略全体にパルプ繊維2が分布するも、それらの図における複合不織布1の上下の表裏面のうち、下方の面側よりも上方の面側でパルプ繊維2が密に存在し、パルプ繊維2の存在割合が高くなっている。
なお、ここでは、説明の便宜上、パルプ繊維2が密に存在する上側を表面側とし、その反対側を裏面側とするが、使用時の方向性を特定するものではない。本実施の形態の複合不織布1では、上側の表面側の方が、下側の裏面側の方よりもパルプ繊維2の存在割合が高くなっている。ここで、パルプ繊維2が密に存在する上側の表面側は、後述する複合不織布1の製造工程で、メルトブロー不織布110のメルトブロー樹脂繊維3に対し、パルプ繊維2が供給(積層)される面側であり、スパンレース処理の際に、ウォータージェットの噴流が付与される面側である。
【0059】
更に、本実施の形態の複合不織布1では、複合不織布1の表裏面のうちの一方の面の電子顕微鏡写真である
図2及び
図3と、反対側の他方の面の電子顕微鏡写真である
図4及び
図5との比較から分かるように、メルトブロー樹脂繊維3のランダムな蛇行、湾曲、または、ランダムなループは、複合不織布1の表裏面のうちの一方の面で他方の面よりも多く存在している。ここで、メルトブロー樹脂繊維3のランダムな蛇行、湾曲、または、ループが多く存在する方の面は、
図6及び
図7における上側、即ち、表面側であり、メルトブロー樹脂繊維3のランダムな蛇行、湾曲、または、ループの存在が少ない方の面は、
図6及び
図7における下側、即ち、裏面側である。
【0060】
つまり、本実施の形態の複合不織布1では、その表裏面のうちの一方の面側(表面側)で、その反対側の他方の面側(裏面側)よりもパルプ繊維2の存在割合が高く、かつ、メルトブロー樹脂繊維3の蛇行またはループの数が多くなっている。
【0061】
こうして、本実施の形態の複合不織布1は、メルトブロー樹脂繊維3の平均繊維径が、好ましくは、0.5~10μmの範囲内の極細の長繊維状で、集積したときの表面積が大きく、また、メルトブロー樹脂繊維3が不規則(ランダム)に蛇行、湾曲し、または、ループを形成し、互いに3次元的に絡合していることにより、メルトブロー樹脂繊維3同士が3次元的に複雑に交絡し、また、メルトブロー樹脂繊維3に対し、パルプ繊維2が不規則(ランダム)に3次元的に交絡し、更にパルプ繊維2も3次元的に互いに交絡して、メルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2が複雑に交絡して一体化されている。これより、メルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2が強固に保持され、乾燥状態(非湿潤状態)のときでも、また、湿潤状態のときでもパルプ繊維2の脱落、抜け落ちが生じ難く、紙粉が発生し難いものである。
【0062】
特に、本実施の形態の複合不織布1は、パルプ繊維2がフィブリル化された叩解木材パルプでその平均繊維長が、好ましくは、0.5~5mmの範囲内であり、また、メルトブロー樹脂繊維3は、その一部で、単繊維同士が複数本集束している集束部3aを有し、その集束部3aの端部では、単繊維同士が相互に融着していない枝分かれ構造を有することから、メルトブロー樹脂繊維3にパルプ繊維2が不規則(ランダム)に交絡する絡合点が多く、または、絡合性が強く、乾燥状態及び湿潤状態で使用時にパルプ繊維2が脱落し難くて、破れ、剥がれが生じ難く機械的強度も高いものである。
【0063】
また、本実施の形態の複合不織布1では、パルプ繊維2が裏面側よりも表面側の方で多く存在するが、メルトブロー樹脂繊維3の蛇行またはループが、裏面側よりも表面側の方で多く存在しているから、表面側でパルプ繊維2の存在割合が多くても、メルトブロー樹脂繊維3に対しパルプ繊維2が絡合しやすくパルプ繊維2が良好に絡み合っている。したがって、表裏面でパルプ繊維2の脱落の差がないから、使用時の方向性を特定しなくとも、紙粉の発生や破れ、剥がれが生じ高いものである。即ち、パルプ繊維2の存在割合が多い側(表面側)で多く吸水されても、メルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2の絡合が多いから、破れ、剥がれが生じ難い機械的強度となっている。
【0064】
このようなパルプ繊維2とメルトブロー樹脂繊維3が交絡してなる複合不織布1の目付量は、30~80g/m2の範囲内が好ましく、また、複合不織布1の比容積は、7~70cm3/gの範囲内が好ましい。
目付量が大き過ぎ、比容積が小さ過ぎると、メルトブロー樹脂繊維3間へのパルプ繊維2の貫入が少なく、パルプ繊維2量が少なく、吸水性や保水性が小さいものとなる。一方で、目付量が少な過ぎ、比容積が大き過ぎると、パルプ繊維2及びメルトブロー樹脂繊維3の交絡が少なく、機械的強度が損なわれる。
複合不織布1の目付量が、好ましくは、30~80g/m2の範囲内であり、かつ、比容積が、好ましくは、7~70cm3/gの範囲内であれば、柔軟性が高く、かつ、吸水性、保水性及び機械的強度が良好である。
複合不織布1の目付量は、35~75g/m2の範囲内がより好ましく、40~70g/m2の範囲内が更に好ましい。また、複合不織布1の比容積は、10~65cm3/gの範囲内がより好ましく、12~60cm3/gの範囲内が更に好ましい。
【0065】
こうして、本実施の形態の複合不織布1は、メルトブロー樹脂繊維3を含有しているうえ、パルプ繊維2同士、メルトブロー樹脂繊維3同士並びにパルプ繊維2及びメルトブロー樹脂繊維3が3次元的に複雑に交絡して一体化していることで、それら繊維の絡合が強いことにより、紙粉が発生し難く機械的強度に優れる。また、メルトブロー樹脂繊維3が極細であるから、繊維相互間の所定の狭い開孔パターンによる毛管圧及びパルプ繊維2の含有により、吸水性や保水性も高いものである。更に、極細のメルトブロー樹脂繊維3の含有による柔軟性も高いものである。
【0066】
したがって、このような本実施の形態の複合不織布1は、例えば、床材の保護、つや出し等の床材の清掃や、テレビ、パソコン、冷蔵庫等の家電機器、キッチン周り、眼鏡やレンズ等の光学機器、窓、車の清掃等として使用される清掃シート(クリーニングシート、使い捨て雑巾、ワイパー等の化学雑巾)、ウエットティッシュ、使い捨てお手拭き(おしぼり)、体拭き、化粧落し、フェイスマスク、手術衣、防護服の生地、防水シーツ、枕カバー、介護シーツ、紙おむつ、ペット用シート、おしぼり、キッチンペーパー(キッチン用タオル)、テーブルカバー、ディナー用マット等の雑貨用シート、ドリップ吸収材、包装材料、自動車の内装、土木建築資材、各種フィルタ、産業用マスク、ワイピングクロス等の用途に好適に使用できる。
中でも、極細のメルトブロー樹脂繊維3による柔軟性、高表面積や、繊維相互間の小さなポアサイズや、パルプ繊維による吸水性・保水性から、ワイパー、フィルタ、手術衣、防護服の生地、防水シーツ、枕カバー、介護シーツ、衛生材料に好適である。また、3次元的に複雑に交絡していているメルトブロー樹脂繊維3が極細であり、それにパルプ繊維2が3次元的に複雑に交絡していていることで、本実施の形態の複合不織布1によれば、気密性を高くして通気性を少なくできるから、医療マスクや空気清浄用等のフィルタとして微粉塵、バクテリア等の捕集、阻止にも好適である。
【0067】
そして、これらの用途では、所望に応じて、水やプロピレングリコールのような湿潤剤や、アルコール類、パラオキシ安息香酸エステル類や塩化ベンザルコニウム等の抗菌剤、防かび剤、香料等の薬剤や、化粧料等が付与されて使用されることもあるが、本実施の形態の複合不織布1では、パルプ繊維2とメルトブロー樹脂繊維3が強く交絡し一体化されていることで、それら液体が浸透しても、機械的強度の低下が少なく、作業時や使用時に破れ難いものである。
更に、本実施の形態の複合不織布1によれば、蛇行またはループを形成した所定径のメルトブロー樹脂繊維3の相互の3次元的な絡合、それらメルトブロー樹脂繊維3へのパルプ繊維2の3次元的絡合及びパルプ繊維2の相互の3次元的な絡合により、繊維が脱落し難い構造であるから、パルプ繊維2を多くしたときでも、紙粉が発生し難い。よって、パルプ繊維2が剥がれ落ちにくい耐脱落性を損なうことなく、パルプ繊維2の含有量の増大による吸水性、保水性の向上を可能とする。即ち、水、薬液、化粧料等が添加されウェットな状態で用いる用途であっても、繊維が脱落し難いことで、高い吸水性、保水性と強度、耐脱落性とを両立できる。加えて、本実施の形態の複合不織布1によれば、気密性を高くして通気性を少なくできるから、吸収した水分が蒸発を防止し乾燥し難いものとすることも可能である。
【0068】
また、使い捨て雑巾、ワイパー等の水分の拭き取りや、防水シーツ、枕カバー、介護シーツ、紙おむつ、ペット用シートの水分を吸収させる使途に供するものであっても、上述したように、水分、液分の吸収による強度の低下が少ないから、作業時や使用時に破れ難い。更に、パルプ繊維2の耐脱落性を損なうことなく、パルプ繊維2を多く配合して全体の吸水性、保水性を向上できる。加えて、樹脂繊維が極細のメルトブロー樹脂繊維3であるから、柔らかく、風合いもよくできる。
【0069】
更に、本実施の形態の複合不織布1は、
図6、
図10及び
図11に示したように、部分的に繊維が融合、融着したエンボス部5を有し、機械的強度を向上させ、また、嵩高さ、クッション性を付与できる。また、このようなエンボス部5における繊維同士の融着、融合により繊維の耐脱落性を向上している。更に、エンボス部5により意匠性、装飾性の付与や、塵埃等の掻き取り性、吸着性や、保水性等の機能性を向上できる。なお、エンボス部5以外では、パルプ繊維2とメルトブロー樹脂繊維3は互いに融着していないから、空隙を多くして、柔らかさ、嵩高さ、弾力性をだすことができる。本実施の形態の複合不織布1では、その表面側からみて凹状のエンボス部5が付与されている。しかし、本発明を実施する場合には、エンボスの形状、模様は特に問われない。
なお、エンボス部5では、繊維の融合、融着により、メルトブロー樹脂繊維3の繊維径を確認できないから、メルトブロー樹脂繊維3の平均繊維径は、エンボス部5を除いて算出している。
【0070】
次に、本実施の形態の複合不織布1の好適な製造について、
図12を参照して説明する。
本実施の形態の複合不織布1の製造に使用される好適な複合不織布製造装置100は、
図12で示すように、主として、メルトブロー不織布製造部10と、パルプエアレイド部20と、結合処理部30とを有する。
【0071】
本実施の形態の複合不織布製造装置100を構成しているメルトブロー不織布製造部10は、溶融樹脂を高温圧縮空気でダイスノズル15から紡出してシート状の樹脂繊維集積体であるメルトブロー不織布110を形成するものである。
【0072】
具体的には、メルトブロー不織布製造部10は、直径3~5mm程度の米粒状の樹脂ペレットを供給するホッパー11と、ホッパー11に供給された原料の樹脂ペレットを溶融して押し出す押出機12と、押出機12から押し出された溶融樹脂を連続的に計量して送り出す計量ポンプ13と、加熱された高速圧縮空気を送る空気路14と、計量ポンプ13から送り出された溶融樹脂を紡出すると同時に、空気路14からの高速の熱風を吹きかけることにより、樹脂を極細繊維状の紡糸として、ネットコンベア(コレクター)NC1に吹き出すノズルダイ15とを有する。また、メルトブロー不織布製造部10のネットコンベアNC1では、ノズルダイ15の下方に、減圧手段により内部に空気を吸い込む吸引部(サクション部)16が配設され、外部に配設されたエアーポンプによってネットコンベアNC1の上面から下面方向に吸引し、紡糸されたメルトブロー樹脂繊維3をネットコンベアNC1上面に集まりやすくしている。
【0073】
なお、このときの紡糸条件は、複合不織布1の用途、所望とする特性等に応じ適宜設定され、例えば、ノズルダイ15の直線配置型のノズル口金の径は、0.05mm~0.4mm、好ましくは、0.1mm~0.3mmの範囲内に設定され、また、複数の小孔の間隔は、0.01~6mm、好ましくは、0.1~3mm、より好ましくは、0.15~2mmの範囲内であり、単孔の吐出量は、0.2g/分~1g/分、好ましくは0.3g/分~0.6g/分である。紡糸時に吹きかける空気の温度は、例えば、200~500℃、好ましくは、250~450℃の範囲内であり、空気の圧力は、0.1~6kgf/cm2、好ましくは、0.2~5kgf/cm2の範囲内である。
【0074】
このようなメルトブロー不織布製造部10では、押出機12から押し出されて計量ポンプ13で送り出された溶融樹脂をノズルダイ15から紡出すると共に、紡出したフィラメントを空気路14からの高温高速の空気流で吹き飛ばすことで、極細繊維状に延伸されたフィラメントがネットコンベアNC1の上で集積すると共に、互いに絡み合い、また、一部では単繊維の融着が生じ、自己接着によりメルトブロー樹脂繊維3のシート状の集積体、即ち、メルトブロー不織布110が形成される。
【0075】
つまり、メルトブロー不織布製造部10により、ノズルダイ15から連続噴出された極細の樹脂繊維は、ネットコンベアNC1の上面に捕集、ウェブ状に堆積、集積され、また、繊維同士の絡み合い及び融着が生じて、メルトブロー樹脂繊維3がシート状に集積し自己接着してなるメルトブロー不織布110が形成される。このような本実施の形態のメルトブロー不織布製造部10では、紡糸から、直接、不織布を製造する装置であり、紡糸から不織布の形成まで一貫して加工し、生産が高速化している。
このように、本実施の形態では、初めに、原料の樹脂チップを溶融・紡糸し、また、高速高温の空気流で極細化した長繊維をネットコンベアNC1上に堆積させるメルトブロー不織布製造工程の実施によってメルトブロー不織布110を得る。
【0076】
そして、本実施の形態では、このようにしてネットコンベアNC1の上面に形成されたメルトブロー不織布110は、ネットコンベアNC1の搬送により下流側のネットコンベアNC2に載せられて、次のパルプエアレイド部20に送られる。
【0077】
ここで、本実施の形態において、このようなメルトブロー法による紡糸したメルトブロー不織布110のメルトブロー樹脂繊維3は、その平均繊維径が好ましくは、0.5~10μmの範囲内である。当該範囲内であれば、メルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2をランダムに交絡させるための蛇行、湾曲、ループを多く形成できて、メルトブロー樹脂繊維3同士、パルプ繊維2同士及びメルトブロー樹脂繊維3とのパルプ繊維2の絡み合いを多くまた強くできる。より好ましくは、0.5~5μm、更に好ましくは、1~3μmの範囲内である。
なお、メルトブロー樹脂繊維3の繊維径は、繊維を吐出するノズルダイ15のノズル口金の孔径やそれらの間隔、繊維の吐出量、ノズルダイ15の高さ等により制御される。また、メルトブロー樹脂繊維3の繊維径のコントロールで複合不織布1の各種特性の調整も可能である。
【0078】
そして、このようして形成された本実施の形態のメルトブロー不織布110では、それを構成する所定の平均繊維径を有するメルトブロー樹脂繊維3が、不規則に蛇行、湾曲しまたはループを形成して、互いに3次元的に絡み合った状態で集積されている。
特に、本実施の形態では、ノズルダイ15から連続して吐出したフィラメント状の樹脂繊維が、ネットコンベアNC1の支持網体上に堆積し、シート状のメルトブロー不織布110が形成されるが、ネットコンベアNC1の支持網体側に近いところよりも、即ち、メルトブロー不織布110の表裏面のうちネットコンベアNC1の支持網体側の面側(裏面側)よりも、その反対側の面側(表面側)でメルトブロー樹脂繊維3の不規則に蛇行、湾曲、ループが多く存在している。
【0079】
このような本実施の形態のメルトブロー不織布110は、好ましくは、5~90g/m2の目付量(坪量)とされる。
本発明者らの実験研究によれば、目付量が大きすぎると、パルプ繊維2がメルトブロー樹脂繊維3間に貫入、交絡し難く、脱落しやすいものとなる。一方で、目付量が低すぎる、スパンレース処理でメルトブロー不織布110からパルプ繊維2が通過、流失しやすくなり、パルプ繊維2の絡合が少なく歩留まりも悪くなる。また、機械的強度も不足する。
メルトブロー不織布110の目付量を、好ましくは、5~90g/m2の範囲内とすることにより、機械的強度を確保しつつ、パルプ繊維2の交絡を多く、強くできて、繊維の脱落が生じ難いものとし、また、高い湿潤強度を得ることができる。より好ましくは、15~75g/m2の目付量(坪量)である。
なお、メルトブロー不織布110の目付量は、原材料の樹脂の種類や、紡糸時の空気の温度、圧力、速度や、ダイスノズル15のノズル孔径、ノズル間隔や、吸引部16の吸引力や、ネットコンベアNC1の速度等で決定される。
【0080】
メルトブロー不織布製造部10の下流側に配設したパルプエアレイド部20は、解繊されたパルプ繊維2をパルプエアレイド機23から空気流で吹き出して、ネットコンベアNC2に載せられているメルトブロー不織布110に対し、その表裏面のうちの一方の面側、から、つまり、上面側(表面側)からパルプ繊維2を供給し、メルトブロー不織布110の上にパルプ繊維2を堆積させてパルプ繊維ウェブを形成するものである。
【0081】
具体的には、パルプエアレイド部20は、ブロック状の原料パルプをローター、攪拌羽根車、筒状スクリーンとニードルロール、ピッカーローター、ハンマーミル、ディスクミル等により解繊(開繊)する公知の解繊手段21と、解繊されたパルプ繊維2を送付する送付機等のダクト22と、ダクト22から送付された解繊パルプ繊維2を空気流で均一に分散させ、平面状スクリーンまたは回転円筒状スクリーン(フォーミングドラム)の表面の小孔スクリーンから空気流でネットコンベア(コレクター)NC2に吹き出すパルプエアレイド機23とを有する。また、パルプエアレイド部20のネットコンベアNC2では、パルプエアレイド機23の下方に、減圧手段により内部に空気を吸い込む吸引部(サクション部)24が配設され、外部に配設されたエアーポンプによってネットコンベアNC2の上面から下面方向に吸引し、パルプエアレイド機23から吹き出されたパルプ繊維2をネットコンベアNC1の上面に載せられたメルトブロー不織布110の上に集まりやすくし、解繊パルプ繊維2の舞い上がりによる脱落、流出を防止している。
【0082】
このパルプエアレイド部20では、木材、古紙等の原料を機械的、化学的に処理してパルプ化したブロック状の原料パルプが解繊手段21により解繊(開繊)され、送付機等のダクト22を介してエアレイド機23に送付された解繊パルプ繊維2が、パルプエアレイド機23内において乾燥状態でダクト22からの空気流で分散されながら下降してネットコンベア(コレクター)NC2に向けて吹き出される。そして、パルプエアレイド機23から吹き出されたパルプ繊維2は、吸引部(サクション部)24で吸引されながら下降し、ネットコンベアNC2の上面に載っているメルトブロー不織布110の上に積み重ねられる。
なお、このときのパルプ繊維2は叩解パルプが好ましい。叩解パルプであると、フィブリル化した繊維が極細のメルトブロー樹脂繊維3に絡みやすくて、絡合性、強度を高めることができ、パルプ繊維2の脱落を一層防止できる。
【0083】
つまり、パルプエアレイド部20により、ダクト22からの空気流でパルプエアレイド機23にて乾燥状態で空気流に載せて分散し、噴出された解繊(開繊)パルプ繊維2は、ネットコンベアNC2の上面に載せられていたメルトブロー不織布110の上に、吸引部24による負圧で捕集され、ウェブ状に堆積、集積する。こうして、パルプエアレイド部20では、ネットコンベアNC2上に載せられたメルトブロー不織布110の上にエアレイド法により空気流で分散された解繊パルプ繊維2を供給して、メルトブロー不織布110の上に乾燥状態(非湿潤状態)で解繊パルプ繊維2を堆積させてパルプ繊維ウェブを形成する。
【0084】
これよりメルトブロー樹脂繊維31からなるメルトブロー不織布110の上に解繊パルプ繊維2の粉体が堆積、集積したパルプ繊維ウェブが形成されてなるウェブ状の積層体120が形成される。即ち、ネットコンベアNC2上に載せられたメルトブロー不織布110の上にエアレイド法により空気流で分散された解繊パルプ繊維2を堆積、集積してパルプ繊維ウェブを形成するパルプ繊維ウェブ形成工程の実施によってメルトブロー不織布110の上にパルプ繊維ウェブが積層された積層体120が得られる。
【0085】
そして、本実施の形態では、このようにネットコンベアNC2上でメルトブロー不織布110にパルプ繊維2が堆積、集積することにより形成されたメルトブロー不織布110の層及びパルプ繊維ウェブの層からなる積層体120は、ネットコンベアNC2で更に下流側の結合処理部30に送られる。なお、メルトブロー不織布110のメルトブロー樹脂繊維3及びその上に積み重ねられたパルプ繊維2は非湿潤状態、即ち、乾燥状態にある乾式のウェブ状の積層体120である。
【0086】
本実施の形態において、パルプエアレイド部20の下流側に配設する結合処理部30は、ウェブ状の積層体120を平滑ローラ31A,31Bに通すことによりパルプ繊維2を押圧し定着させるローラ加工部31と、ロール加工部31の下流に配設し、ロール31A,31Bを通過したウェブ状の積層体120のメルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2を水流交絡させるスパンレース処理部32と、スパンレース処理された湿潤状態にある交絡集積繊維体(複合不織布)を乾燥する乾燥部33と、乾燥された交絡集積繊維体(複合不織布)を熱エンボスローラ34A,34Bによって熱エンボス加工する熱エンボス加工部34を構成している。
【0087】
ローラ加工部31は、特定曲率面からなる平滑ローラ31A,31Bで構成され、これら平滑ローラ31A,31Bによって、メルトブロー不織布110の上に堆積しているパルプ繊維2の粉体がメルトブロー不織布110のメルトブロー樹脂繊維3間に入り込むように押圧される。
【0088】
即ち、このローラ加工部31の平滑ローラ31A,31Bの間を積層体120が通過することにより、積層体120が平滑ローラ31A,31Bで押圧されるから、メルトブロー不織布110の上に形成されたパルプ繊維ウェブのパルプ繊維2の粉体が、メルトブロー不織布110のメルトブロー樹脂繊維間3に多く、または、深く入り込み、メルトブロー不織布110のへのパルプ繊維2の定着性が向上、安定化する。
そして、平滑ローラ31A,31Bの間を通過した積層体120は、下流側のネットコンベアNC3に送り出され、ネットコンベアNC3上に載せられ、スパンレース処理部32へと搬送される。
【0089】
スパンレース処理部32では、ネットコンベアNC3の搬送方向に沿って、多段階的に、複数のスパンレースノズル(N1,N2,・・Nn)が配設されており、それらスパンレースノズル(N1,N2,・・Nn)から、ネットコンベアNC3に向かってウォータージェットが施される。特に、本実施の形態では、メルトブロー不織布110に対しパルプ繊維2を堆積した側から、即ち、パルプ繊維ウェブの形成側の上方からメルトブロー不織布110側に向かってそれらを貫通するようにウォータージェットのジェット噴流を噴射する。なお、スパンレースノズル(N1,N2,・・Nn)から噴出される水柱流は、ネットコンベアNC3の進行方向に対して垂直である。ウォータージェットのノズル(N1,N2,・・Nn)は、例えば、ノズル径(φ)が0.01mm~3mm、好ましくは、0.5mm~1.5mm、より好ましくは、0.75~1.25mmの範囲内のノズル孔(オリフィス)を複数有し、複数のオリフィスが、例えば、0.3~10mmの間隔、好ましくは、0.5~2mmの間隔で設けられている。このときの搬送方向に沿うノズル(N1,N2,・・Nn)の個数(1,2・・・n)や、ノズル(N1,N2,・・Nn)の能力等は、複合不織布1の用途、所望とする特性に合わせて適宜設定される。
【0090】
また、ウォータージェットのノズル(N1,N2,・・Nn)からは、例えば、1×106~1.5×107Pa程度の水圧の水を吐出できる。なお、スパンレース処理部32の管路にマ二ホールドを配置し、マ二ホールドでノズル(N1,N2,・・Nn)の圧力を調整することで、メルトブロー樹脂繊維3に絡合させるパルプ繊維2のスパンレースのエネルギー調整を行うことも可能である。また、ノズルの孔径によっても調節可能である。更に、複数のスパンレースノズル(N1,N2,・・Nn)によるスパンレース処理では、上流側から下流側に向かって、同一の水圧で水柱流を施してもよいが、好ましくは、上流側から下流側に向かって徐々に水圧を高くするようにする。特に、最初のウォータージェットのノズルN1では、好ましくは、1×106~2×106Pa程度の低水圧の水とすることで、ウォータージェットのジェット噴射によるパルプ繊維2の粉体の飛散、舞い上がりを防止し、地合い及び歩留まりを良くできる。より好ましくは、ウォータージェットの噴流の前に、積層体120にパルプ繊維2の堆積側から水分を噴霧するようにしてもよい。これにより、ウォータージェットの噴流によるパルプ繊維2、紙粉の舞い上がりをより効果的に防止し、地合い及び歩止まりを向上させることができる。このときの水分も後述する吸引排水部36により吸引排水するようにしてもよい。
【0091】
そして、スパンレース処理部32のネットコンベアNC3の下方には、水を吸引除去する吸引排水部(サクション部)36が設置されており、メルトブロー不織布110の表裏のうちの一方の面側、即ち、上面側から供給されたパルプ繊維2をメルトブロー樹脂繊維3間に巻き込み、入りやすくしている。また、ウォータージェットで落下した水を容易に回収できるようにしている。
特に、本実施の形態では、積層体120を平滑ロール31,32の間に通過させることでパルプ繊維2の定着を促し、更に、メルトブロー樹脂繊維3の蛇行、湾曲、ループの存在により、メルトブロー樹脂繊維3間にパルプ繊維2が捕捉、交絡されやすいから、ウォータージェットの水柱流を施した際に、パルプ繊維2の紙粉の舞上がり、飛散、流出が少ないものである。このため、ウォータージェットの使用後の水を回収し、フィルタ濾過して、ウォータージェットに再利用するときでも、その回収した水に繊維の混入が少なく、フィルタの目詰まりや、フィルタメンテナンスの負荷を少なくできる。更に、連続作業性もよくできる。また、回収せずに排水する場合でも、繊維の混入が少ないことで環境負荷が少ないものである。
【0092】
こうして、スパンレース処理部32では、メルトブロー不織布110のメルトブロー樹脂繊維3及びその上に堆積されたパルプ繊維2に対し、それらを貫通するようにパルプ繊維2側の上方からウォータージェットのジェット噴流を噴射することで、ウォータージェットの水柱流によってパルプ繊維2が運動してメルトブロー不織布110のメルトブロー繊維3に絡合し、また、パルプ繊維2同士も互いに絡合し、メルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2が3次元的に複雑に一体に交絡する。即ち、ウォータージェットのジェット噴流を上から下に噴射させながら、パルプ繊維2及びメルトブロー樹脂繊維3の繊維同士を絡み合わせる。
【0093】
こうしたウォータージェット処理により一体に交絡されたメルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2の濡れた複合集積体(不織布)は、ネットコンベアNC3によって、更に下流側の乾燥部33へと搬送される。即ち、ネットコンベアNC3の搬送によりスパンレース処理部32を通過し一体に交絡されたメルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2からなるシート状の複合集積体(不織布)は、水に濡れた湿潤状態(ウエットな状態)にあるから、スパンレース処理部32の下流側(出口側)に配設された乾燥部33で乾燥させ、水分を除去する。
【0094】
乾燥部33での乾燥方法としては、エアースルードライヤ(熱風通気方式)等のドライヤ、ヒータ(空気中乾燥処理)、赤外線放射法、蒸気缶、真空脱水法、超音エネルギー法、超短波エネルギー法等の非接触型(非圧縮型)乾燥であってもよいし、乾燥ローラやヤンキードライヤ(熱板圧着方式)等の接触型(圧縮型)乾燥であってもよく、複合不織布1の用途等に応じて選択できる。例えば、エアースルードライヤでは、筒状体の回転ローラの周表面に多数の貫通孔が設けられて、その貫通孔から熱風が噴き出すことにより乾燥を行うことから、嵩高な仕上げが可能である。
【0095】
このような乾燥部33での乾燥を終えたところで、メルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2が一体に交絡された乾燥状態の複合集積体である複合不織布1が得られる。
更に、本実施の形態では、乾燥後の複合不織布1は、熱エンボス加工部34に送られ、熱エンボス加工される。
【0096】
熱エンボス加工部34は、形状、模様の凸部を形成した熱エンボス凸部ローラ34A及び特定曲率面からなる熱平滑ローラ34Bで構成される。
この熱エンボス加工部34のエンボスの熱ローラ34A,34bによって型押しされることで、本実施の形態では、複合不織布1において、熱ローラ34A,34bのエンボス型に対応して、部分的に繊維の融着、熱圧着による融合が生じ、凹凸が付与され、例えば、その表面側からみて凹状のエンボス部5(
図6参照)が付与され、エンボス加工された複合不織布1が得られる。
【0097】
そして、本実施の形態の複合不織布製造装置100では、その終端でエンボス加工された複合不織布1が巻取りロッド部にて巻き取られて一連の工程が完了する。
なお、上述したネットコンベアNC1、NC2、NC3の各支持網体は、特に問われないが、一般的には、合成樹脂製または金属製の縦糸と横糸からなる平織り等の20~100メッシュのワイヤー等の網状の支持体やパンチングプレート等の多孔質支持体である。ネットコンベアNC3の支持網体では、縦糸と横糸の模様、形状で複合不織布1にパターンを付与する構成としてもよい。
【0098】
こうして、本実施の形態の結合処理部30では、メルトブロー不織布110及びその上に形成されたエアレイド法で形成されたパルプ繊維ウェブからなる積層体120をローラ加工部31の平滑ローラ31A,31Bに通した後、スパンレース処理部32にてウォータージェットを施すことにより、メルトブロー樹脂繊維3とパルプ繊維2を水流絡合させ、そして、乾燥部33にて、水流絡合した水分を除去し、更に、熱エンボス加工部34にて熱エンボス加工することで、メルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2が3次元的に一体交絡してなる複合不織布1が形成される。
【0099】
即ち、本実施の形態では、上述したメルトブロー不織布製造工程及びパルプ繊維ウェブ形成工程の実施の後、ネットコンベアNC2上に載せられたメルトブロー不織布110の層及びパルプ繊維ウェブの層からなる積層体120をローラ31A,31Bにより押圧することによりパスプ繊維2を定着させるローラ加工工程と、ローラ31A,31Bを通した後、積層体120におけるメルトブロー不織布110のメルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維ウェブのパルプ繊維2を水流交絡によって一体化するスパンレース処理工程と、一体に交絡したメルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2を乾燥する乾燥工程と、乾燥後に、熱エンボス加工する熱エンボス加工工程の実施によって複合不織布1が得られる。
【0100】
このように、本実施の形態の複合不織布1は、原料の樹脂チップを溶融・紡糸し、高速の熱風により極細繊維化したメルトブロー樹脂繊維3を網状(例えば、プラスチックまたはステンレス製)のベルトコンベアであるネットコンベアNC1に堆積させてメルトブロー不織布110を形成するメルトブロー不織布製造工程と、ネットコンベアNC2上に載せられたメルトブロー不織布110の上にエアレイド法で分散させた解繊パルプ繊維2を堆積しパルプ繊維ウェブを形成するパルプ繊維ウェブ形成工程と、メルトブロー不織布110及びその上に形成されたパルプ繊維ウェブからなる積層体120に対しローラ加工を施すローラ加工部と、ローラ加工後に、ネットコンベアNC2上でメルトブロー不織布110のメルトブロー樹脂繊維3とパルプ繊維ウェブのパルプ繊維2とを水流交絡処理によって一体化するスパンレース処理工程と、ネットコンベアNC2上で一体に交絡されたメルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2を乾燥する乾燥工程と、乾燥後に熱エンボス加工する熱エンボス加工工程とによって製造することができる。
【0101】
また、本実施の形態の複合不織布1は、原料の樹脂チップを溶融・紡糸し、高速の熱風により極細繊維化したメルトブロー樹脂繊維3を網状のベルトコンベアであるネットコンベアNC1に堆積させてメルトブロー不織布110を形成するメルトブロー不織布製造部10と、ネットコンベアNC2上に載せられたメルトブロー不織布110の上にエアレイド法で分散させた解繊パルプ繊維2を堆積しパルプ繊維ウェブを形成するパルプ繊維ウェブ形成部としてのパルプエアレイド部20と、メルトブロー不織布110及びその上に形成されたパルプ繊維ウェブからなる積層体120に対しローラ加工を施すローラ加工部31と、ローラ加工後に、ネットコンベアNC2上でメルトブロー不織布110のメルトブロー樹脂繊維3とパルプ繊維ウェブのパルプ繊維2とを水流交絡処理によって一体化するスパンレース処理部32と、ネットコンベアNC2上で一体に交絡されたメルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2を乾燥する乾燥部33と、乾燥後に熱エンボス加工する熱エンボス加工部34とによって製造することができる。
【0102】
このようにして得られた本実施の形態の複合不織布1では、
図1乃至
図11で示したように、所定の繊維径である極細のメルトブロー樹脂繊維3が不規則に蛇行、湾曲し、または、ループを形成して相互に絡み合うと共に、厚み方向の略全体に分布して扁平のリボン状をした所定長のパルプ繊維2とも絡み合い、また、パルプ繊維2同士も相互に絡み合い、メルトブロー樹脂繊維3とパルプ繊維2が3次元的に一体に交絡している。なお、一般的な製造工程では、メルトブロー樹脂繊維3は、不連続(有限の長さの)フィラメントで形成される。
【0103】
そして、このようにして得られた本実施の形態の複合不織布1では、
図6及び
図7における複合不織布1の断面の顕微鏡写真に示したように、複合不織布1の厚み方向の略全体にパルプ繊維2が分布するも、
図6及び
図7において上側の表面側の方が、下側の裏面側の方よりもパルプ繊維2の存在割合が高くなっている。また、
図2、
図3と
図4、
図5との比較から、複合不織布1の表面側で、その反対側の裏面側よりもメルトブロー樹脂繊維3の蛇行、ループの数が多くなっている。なお、このときの複合不織布1の表面側は、ネットコンベアNC2上でメルトブロー不織布110の上に供給されたパルプ繊維2側であり、スパンレース処理の際にウォータージェットの噴流が付与された側である。
【0104】
こうして本実施の形態の複合不織布1は、メルトブロー法により得たメルトブロー樹脂繊維3からなるメルトブロー不織布110に対し、パルプエアレイド法により解繊パルプ繊維2を空気で吹き付けて積層し、更に、それらメルトブロー樹脂繊維3とパルプ繊維2とをスパンレース法による水流交絡によって一体化してなるものである。
【0105】
このようにメルトブロー法により得られる不織布、即ち、メルトブロー不織布110では、紡糸の際に、高温の圧縮空気が高速で吹き付けられることにより、極細の長繊維が不規則(ランダム)に集積される。特に、本実施の形態では、所定径のダイス15のノズル孔から、或いは、所定の高さからの紡出により、紡糸した長繊維に所定の重さ、慣性力が付与され、ネットコンベアNC1上でメルトブロー樹脂繊維3は、不規則に蛇行し、または、ループを形成して不規則(ランダム)に集積され、その平均繊維径が、0.5μm~10μmである。なお、このとき、集積された上面側ほど蛇行、湾曲、ループの数が多く、ネットコンベアNC1の支持体に近い下面側の樹脂繊維3ほど曲率が小さかったりストレートな長さ距離が大きくなっていたりする。更に、本実施の形態では、ダイス15のノズル孔が所定間隔により、長繊維であるメルトブロー樹脂繊維の一部では、繊維の長さ方向の一部または全部で、1つのノズル孔から吐出した単繊維が隣の別のノズル孔から吐出した単繊維と互いに融着して集束した集束部3aを形成する。特に、繊維の長さ方向の一部でこのように単繊維が集束した集束部3aの端部では、繊維が融着していない非融着部分3bによる枝分かれ構造を有する。
【0106】
そして、本実施の形態では、こうして平均繊維径が0.5~10μmの範囲内であり、不規則に蛇行し、または、ループを形成したメルトブロー樹脂繊維3が不規則(ランダム)に絡み合って集積されたメルトブロー不織布110に対し、パルプエアレイド法により解繊されたパルプ繊維2が空気で吹き付けられて堆積、積層しメルトブロー不織布110の上にパルプ繊維ウェブを形成する。なお、本実施の形態では、メルトブロー不織布110においてメルトブロー樹脂繊維3の蛇行、湾曲、ループが多い上面側に解繊パルプ繊維2が供給される。このようなパルプエアレイド法により形成されるパルプ繊維ウェブによれば、解繊されたパルプ繊維2が細かい粉状であり、パルプ繊維2の向きが互いに不規則、非配向性で集積され、繊維同士の水素結合も弱いから、ウォータージェットのジェット水柱流でパルプ繊維2が容易に運動し、メルトブロー不織布110のメルトブロー樹脂繊維3間に入り込みやすい。加えて、メルトブロー不織布110のメルトブロー樹脂繊維3が蛇行し、ループを形成して、更には、枝分かれを有し、互いに絡み合っていることで、パルプ繊維2がメルトブロー樹脂繊維3間に捕捉されやすくて絡み合いやすい。特に、メルトブロー不織布110の上に堆積させたパルプ繊維2はエアレイド法によるものであり、解繊された細かい粉状であるから、メルトブロー不織布110のメルトブロー樹脂繊維3が細くて互いに密に絡み合っていても、その樹脂繊維3間に解繊された細かい粉状のパルプ繊維2が貫入して絡み合いやすいものである。また、メルトブロー樹脂繊維3に交絡したパルプ繊維2同士も絡み合いやすくなっている。よって、メルトブロー樹脂繊維3にパルプ繊維2が複雑に不規則(ランダム)に絡みあうことで、絡合点を多く有して強く絡合し、メルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2が強固に保持される。
【0107】
こうして、本実施の形態の複合不織布1の製造方法によれば、メルトブロー繊維3が所定の平均繊維径を有して、不規則に蛇行し、また、ループを形成したメルトブロー不織布110に対し、その上に、エアレイド法で解繊されたパルプ繊維2を空気流で分散させて供給、堆積し、そして、それらメルトブロー繊維3及びパルプ繊維2をウォータージェットにより水流絡合させることにより複合不織布1を得るものである。
【0108】
このような本実施の形態の複合不織布1の製造方法によれば、メルトブロー法により、所定の平均繊維径を有して、不規則に蛇行し、また、ループを形成したメルトブロー樹脂繊維3の3次元的な絡み合いを形成することができる。また、そのようなメルトブロー樹脂繊維3からなるメルトブロー不織布110の上に堆積させたパルプ繊維2がエアレイド法により供給されたものであり、解繊された細かい粉状であるから、メルトブロー樹脂繊維3が細くて互いに密に絡み合っていても、そのメルトブロー樹脂繊維3間に解繊された細かい粉状のパルプ繊維2を貫入させることができる。そして、メルトブロー樹脂繊維3が、不規則に蛇行し、また、ループを形成していることで、更に、所定の平均繊維径であり高表面積を有することで、パルプ繊維2がメルトブロー樹脂繊維3に絡みやすい。加えて、メルトブロー樹脂繊維3に交絡したパルプ繊維2同士も絡み合いやすい。よって、メルトブロー樹脂繊維3同士、パルプ繊維2同士、及び、メルトブロー樹脂繊維3とパルプ繊維2の複雑に3次元的に絡みあう絡合が多く、パルプ繊維2の脱落が生じ難いものとなる。これより、乾燥時において紙粉が発生し難くて使用時にも破れ難く、また、湿潤時においても使用時に紙粉の剥がれが生じ難く高い湿潤強度の複合不織布1が得られる。
【0109】
特に、本実施の形態では、パルプエアレイド法により解繊されたパルプ繊維2をメルトブロー不織布110の上に集積させたことでウォータージェットのジェット水柱流でパルプ繊維2が容易に運動するから、即ち、水柱流のエネルギーの多くがパルプ繊維2を解繊するのに消費されず、水柱流のエネルギーを効率的にパルプ繊維2の運動、移動及びパルプ繊維2とメルトブロー樹脂繊維3の交絡に使用できるようになるから、メルトブロー樹脂繊維3にパルプ繊維2を多く絡み合わせて絡合量、絡合点を多くすることができ、また、パルプ繊維2の地合い形成も良好にできる。そして、パルプ繊維2の含有量を多くしてもパルプ繊維2がメルトブロー樹脂繊維3に絡合しやすいから、パルプ繊維2の脱落、紙粉の発生の増大を招くことなく、パルプ繊維2の含有量の増大による保水性、吸水性の向上効果を得ることができる。加えて、パルプ繊維2がウォータージェットの水柱流で移動しやすいから、加工スピードを速くしても、良好な地合いにでき、生産性も高くできる。
【0110】
更に、本実施の形態では、メルトブロー不織布110の上に形成されたパルプ繊維ウェブの上面からメルトブロー不織布110側に向かってジェット水流を付与するから、パルプ繊維ウェブ側からパルプ繊維2をメルトブロー不織布110側のメルトブロー樹脂繊維3に巻き込んで交絡、固定できるから、パルプ繊維2を多くメルトブロー樹脂繊維3に絡合させて絡合量、絡合点を多くでき、また、パルプ繊維2の地合い形成も良好にできる。そして、パルプ繊維2の含有量を多くしてもパルプ繊維2がメルトブロー樹脂繊維3に絡合しやすいから、パルプ繊維2の脱落、紙粉の発生を抑制しつつ、パルプ繊維2の含有量の増大による保水性、吸水性の向上効果を得ることができる。
【0111】
加えて、本実施の形態では、スパンレース処理の前に、メルトブロー不織布110及びその上に形成されたパルプ繊維ウェブからなる積層体120をロール31A,31Bに通すから、パルプ繊維2の定着が向上する。よって、メルトブロー樹脂繊維3へのパルプ繊維2の絡合量、絡合点を多くできるから、パルプ繊維2の脱落、紙粉の発生を抑制する効果を高くでき、また、複合不織布1の保水性、吸水性の向上を可能とする。更に、ネットコンベアNC2,NC3による移送時や後のスパンレース処理工程でのウォータージェットの噴流の際に、パルプ繊維2の飛散、紙粉の舞い上がり、流失を防止し、歩留まりをよくできる。よって、低コストで製造できる。
【0112】
また、本実施の形態では、メルトブロー不織布110においてメルトブロー樹脂繊維3の蛇行、ループが多い上側(表面側)にパルプ繊維2が堆積され、そのパルプ繊維2の上面側からメルトブロー不織布110側に向かってジェット水流を施しており、ジェット水流が施されたその上面側(表面側)で、下面側(裏面側)よりもパルプ繊維2の存在割合が高く、また、メルトブロー樹脂繊維3の蛇行、ループが多い。したがって、裏面側よりも表面側でパルプ繊維2の存在割合が多くても、メルトブロー樹脂繊維3の蛇行またはループが、裏面側よりも表面側で多く存在しているから、メルトブロー樹脂繊維3に対しパルプ繊維2が絡合しやすくパルプ繊維2が多く絡み合う。また、パルプ繊維2が多く存在し、パルプ繊維2の絡合点が多くなっている。したがって、パルプ繊維2が多く存在する表面側で多く吸水、保水しても、パルプ繊維2がメルトブロー樹脂繊維3と良好に絡み合っているから、パルプ繊維2が脱落し難く、高い湿潤強度を有する。よって、使用時における方向性を特定しなくとも、使用時に紙粉の発生、剥がれ落ちが生じ難いものである。
【0113】
更に、本実施の形態の複合不織布1の製造方法または複合不織布製造装置100によれば、メルトブロー不織布110の上にパルプエアレイド法でパルプ繊維2を集積し、それらをスパンレース処理するものであるから、パルプ繊維2の濃度の調節が容易であり、メルトブロー不織布110に積層するパルプ繊維2の濃度、目付量を容易に、かつ、低コストで調節できる。よって、複合不織布1の目的、用途に応じて目付量、機械的強度、保水性、吸水性、嵩高加工等の特性の任意の設定を容易とする。複合不織布1の用途等に応じ、樹脂繊維3とパルプ繊維2の配合比や材料変更を行うときの切り替えが容易にできる。
また、パルプエアレイドの装置も小型であるから省スペース化でき、湿式のように多量の水を使用しないから、省エネである。よって、低コストでの製造を可能とする。
【0114】
こうして本実施の形態の複合不織布1によれば、メルトブロー樹脂繊維3が不規則に蛇行し、または、ループを形成していることで、また、所定の平均繊維径を有し高表面できあることで、不規則に絡み合うメルトブロー樹脂繊維3に対しパルプ繊維2が絡み合いやすく、パルプ繊維2がメルトブロー樹脂繊維3に多く絡合してパルプ繊維2の脱落が生じ難いものとなっている。即ち、不規則に蛇行し、または、ループを形成しているメルトブロー樹脂繊維3にパルプ繊維2が3次元的に複雑に交絡して一体化されてパルプ繊維2とメルトブロー樹脂繊維3の絡合点が多く、強く絡み合っている。このため、乾燥時(非湿潤状態時)に紙粉が発生し難く、また、使用時に紙粉が出たり破れたりし難くなる。更に、湿潤時でも剥がれが生じ難く、高い湿潤強度が得られる。即ち、水、薬剤、化粧量等の液体が浸み込んだときでも湿潤強度を満足でき、液体を吸収した湿潤時の状態でも強度の低下が少なく、剥がれや破れが難いものである。よって、使用時の強度及び形態安定性に優れる。
【0115】
そして、本実施の形態の複合不織布1は、パルプ繊維2の親水性によって、吸水性も良く、更に、ポリプロピレン等の合成樹脂繊維及びその極細化による毛管圧によっても、吸油性、吸水性が良いものである。即ち、樹脂繊維3間の小さなポアサイズにより毛管圧が高く、吸水性、吸水速度を高くできる。また、樹脂繊維3が所定の平均繊維径、即ち、極細のメルトブロー繊維であるから、使用時に柔らかいものである。加えて、樹脂繊維3の配合により、更には、パルプ繊維2と樹脂繊維3の多絡合により、水や油等の液体を吸収した際でも強度、剛性の低下が抑制され、適度な硬さ、形態安定性を有し、使用しやすい。パルプ繊維2が樹脂繊維3に多く絡合するから、吸水速度(吸油速度)の向上や、吸水性(吸油性)や保水性(保持性)も高い。よって、フィルタ性能を持たせる用途であれば、濾過速度の向上も可能とする。
【0116】
また、本実施の形態では、メルトブロー不織布110のメルトブロー樹脂繊維3とエアレイド法で集積したパルプ繊維2とを水流交絡によって一体化するものであるから、接着剤を付与することなく、繊維の絡合によって所定の強度が得られ、接着剤による接合よりも吸収性が良いものである。加えて、樹脂繊維3が極細のメルトブロー繊維であるから、使用時にやわらかく、非湿潤状態または湿潤状態においても柔軟でソフトな感触、風合いが良好な複合不織布1を形成できる。よって、それを把持したときには柔らかいソフトな感触であり、また、人体等の柔らかいものに使用されたりする用途では肌触りが柔らかい、肌当たりがよく、毛羽立ちがなく低刺激でソフトな感触を得ることができる。また、床上のほこり、髪の毛、固形ゴミ、しみ汚れ、付着液体等の異物の除去を行う清掃や、床の保護、つや出し等の床の手入れに用いられる用途においては、清掃や手入れの対象物の凹凸形状等にも追従、密着し軽い力で拭き取り、手入れの高い効果を得ることが可能となる
【0117】
更に、樹脂繊維3で形成されるメルトブロー不織布110では縦方向及び横方向の繊維の配向性が小さいうえ、その上にエアレイド法で集積したパルプ繊維2においてもその配向性が小さいものである。したがって、得られる複合不織布1においては、不規則にメルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2が絡み合い、自然の縦伸び(Y軸方向)や横縮(X軸方向)をすることなく乾燥引張強度の縦横比差も極めて小さい。
【0118】
このような本実施の形態の複合不織布1によれば、メルトブロー樹脂繊維3とパルプ繊維2の絡合が多いことで、JIS P 8135により測定した湿潤強度が、好ましくは、2N/25mm以上、50N/25mm以下、より好ましくは、3N/25mm以上、50N/25mm以下、更に好ましくは、5N/25mm以上、50N/25mm以下の範囲内の高い湿潤強度が得られる。当該範囲内のものであれば、極細のメルトブロー樹脂繊維3に対しパルプ繊維2が多く、強く絡合していることになるから、柔らかさと、濡れたときでも破れ難い強度が両立し、また、湿潤強度と吸水性、保水性も両立でき、多用途で扱いやすいものである。
【0119】
そして、このような本実施の形態の複合不織布1によれば、メルトブロー樹脂繊維3が、不規則に蛇行したりループを形成したりしていることで、また、所定の平均繊維径であり高表面積を有することで、メルトブロー樹脂繊維3にパルプ繊維2が絡み合いやすいから、パルプ繊維2の含有量が多くても、メルトブロー樹脂繊維3にパルプ繊維2が良好に絡合する。よって、パルプ繊維2の保持性、耐脱落性を維持しつつ、パルプ繊維2の含有量の増大による吸水性、保水性の向上を可能とする。
【0120】
例えば、本実施の形態では、複合不織布1におけるパルプ繊維2の含有量が、好ましくは、30~70質量%の範囲内、より好ましくは、35~65質量%の範囲内、更に好ましは、40~60質量%の範囲内とされ、メルトブロー樹脂繊維3の含有量が、30質量%~70質量%の範囲内、より好ましくは、35~65質量%の範囲内、更に好ましは、40~60質量%の範囲内とされる。パルプ繊維2の含有量が少なくメルトブロー樹脂繊維3の含有量が多くなると、所望とする保水性、吸水性が得られない一方で、パルプ繊維2の含有量が多くメルトブロー樹脂3の含有量が少なくなると、所望の強度が得られない。本実施の形態では、パルプ繊維2がメルトブロー樹脂3に絡み合いやすく、絡合点を多くできるから、パルプ繊維2の少ない含有量で所定の強度を確保できる。特に濡れたときでも所定の湿潤強度を確保できる。
そして、本実施の形態では、パルプ繊維2がメルトブロー樹脂3と多く絡み合っていることで紙粉が発生し難いから、パルプ繊維2の配合量を少なく限定されることなくパルプ繊維2の割合を広範囲に設定できるようになり、幅広い特性の付与が可能となる。
【0121】
また、本実施の形態の複合不織布1によれば、エンボス加工を施しているから、そのエンボス部5では繊維が融着、融合していることで、全体の機械的強度を上げることができる。また、パルプ繊維2の脱落、紙粉の発生も一層防止される。更に、嵩高さを増すことも可能である。
【0122】
以上説明してきたように、本実施の形態の複合不織布1は、パルプ繊維2と、パルプ繊維2よりも繊維長が長く、平均繊維径が0.5~10μmの範囲内である樹脂繊維3とからなる複合不織布1であって、樹脂繊維3は、不規則に蛇行して互いに絡み合い、かつ、厚み方向全体に分布するパルプ繊維2と絡み合い樹脂繊維3及びパルプ繊維2が3次元的に一体に交絡しているものである。
【0123】
したがって、本実施の形態の複合不織布1によれば、極細の樹脂繊維3が、不規則に蛇行し、ときにループを形成して互いに絡み合っていることで、パルプ繊維2が樹脂繊維3に捕捉されて絡み合い、樹脂繊維3に絡んだパルプ繊維2同士が互いに絡み合い、樹脂繊維3とパルプ繊維2の絡合点が多いから、パルプ繊維2が強固に樹脂繊維3に保持されている。したがって、パルプ繊維2が脱落し難いものである。よって、乾燥時(非湿潤時)において紙粉が生じ難くて使用時に紙粉の剥がれ落ちや破れ難が生じ難い。また、湿潤時においても使用時に紙粉の剥がれ落ちや破れが生じ難く、高い湿潤強度を有する。そして、樹脂繊維3が極細であるから、使用時には柔らかく、そのうえ、樹脂繊維3が極細でもそれらが互いに交絡し、更に、パルプ繊維2とも交絡しているから、良好な機械的強度を有し、柔らかさと機械的強度が両立する。
【0124】
特に、本実施の形態の複合不織布1は、樹脂繊維3において、その長さ方向の一部で単繊維同士が複数本集束して融着している集束部3aを有するから、繊維強度が向上し、かつ、集束部3aの端部では、単繊維同士が融着していない非融着部分3bによる枝分かれ構造を有するため、パルプ繊維2の絡合性を高めることができる。よって、パルプ繊維2の脱落がより生じ難いものとなり、機械的強度の向上も可能である。
【0125】
また、本実施の形態において、複合不織布1のパルプ繊維2が、フィブリル化された叩解木材パルプであり、その平均繊維長が、好ましくは、0.5~5mmの範囲内であると、パルプ繊維2の樹脂繊維3への絡合性が向上し、パルプ繊維2の脱落がより生じ難いものとなる。また、機械的強度の向上が可能となる。しかし、本発明を実施する場合には、未叩解パルプであっても好適な絡合性が得られるため、未叩解パルプでもよい。
【0126】
また、本実施の形態の複合不織布1は、その表裏面のうちの一方の面側(上記説明では表面側)で、その反対側である他方の面側(上記説明では裏面側)よりもパルプ繊維2が多く存在し、パルプ繊維2が多く存在する一方の面側(表面側)で他方の面側(裏面側)よりも樹脂繊維3の蛇行、ループが多く存在するから、パルプ繊維2が多く存在する面側(表面側)で多く吸水、保水しても、樹脂繊維3の蛇行、ループが多いことで、パルプ繊維2の絡合が多く、高い湿潤強度を得ることができる。よって、使用時における方向性を特定しなくとも、使用時に紙粉の脱落、剥がれ落ちや破れが生じ難いものである。
【0127】
さらに、本実施の形態において、複合不織布1の目付量(坪量)が、好ましくは、30~80g/m2、より好ましくは、35~75g/m2、更に好ましくは、40~70g/m2の範囲内であり、かつ、比容積が、好ましくは、7~70cm3/g、より好ましくは、10~65cm3/gの範囲内、更に好ましくは、12~60cm3/gの範囲内であると、吸水性、保水性及び強度が良好である。
【0128】
また、本実施の形態において、複合不織布1のJIS P 8135により測定した湿潤強度が好ましくは、2N/25mm以上、50N/25mm以下、より好ましくは、3N/25mm以上、50N/25mm以下、更に好ましくは、5N/25mm以上、50N/25mm以下の範囲内であると、極細の樹脂繊維3にパルプ繊維2が多く強く絡合しているから、柔らかさと、濡れたときでも破れ難い強度が両立し多用途で扱いやすいものとなる。
【0129】
また、上記実施の形態は、メルトブロー樹脂繊維3からなるメルトブロー不織布110を形成するメルトブロー不織布製造工程と、ネットコンベアNC2上に載せたメルトブロー不織布110の上に、エアレイド法によりパルプ繊維2のウェブを形成するパルプ繊維ウェブ形成工程と、メルトブロー不織布110のメルトブロー樹脂繊維3とその上に形成されたたパルプ繊維ウェブのパルプ繊維2とを水流交絡によって一体化するスパンレース処理工程と、一体に交絡された樹脂繊維3及びパルプ繊維2を乾燥する乾燥工程とを具備する複合不織布1の製造方法の発明と捉えることもできる。
【0130】
更に、上記実施の形態は、メルトブロー樹脂繊維3からなるメルトブロー不織布110を形成するメルトブロー不織布製造部10と、ネットコンベアNC2上に載せたメルトブロー不織布110の上に、エアレイド法によりパルプ繊維2のウェブを形成するパルプ繊維ウェブ形成部としてのパルプエアレイド20と、メルトブロー不織布110のメルトブロー樹脂繊維3とその上に形成されたたパルプ繊維ウェブのパルプ繊維2とを水流交絡によって一体化するスパンレース処理部32と、スパンレース処理部32で一体に交絡されたメルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2を乾燥する乾燥部33とを具備する複合不織布製造装置100の発明と捉えることもできる。
【0131】
上記実施の形態の複合不織布製造装置100、複合不織布1の製造方法によれば、メルトブロー法によってメルトブロー樹脂繊維3が、不規則に蛇行し、またループを形成して互いに絡み合う不織布、即ち、メルトブロー不織布110の形成が可能であり、そのようなメルトブロー不織布110に対し、エアレイド法により解繊されたパルプ繊維2を空気で分散させ(空気流で吹き付けて)メルトブロー不織布110の上にパルプ繊維2を堆積して、それらメルトブロー樹脂繊維3及びパルプ繊維2をスパンレース処理するから、エアレイド法により供給されたパルプ繊維2が解繊された細かい粉状であり、繊維同士の水素結合も弱いことで、メルトブロー不織布110のメルトブロー樹脂繊維3間に入り込みしやすいうえ、メルトブロー不織布110のメルトブロー樹脂繊維3が蛇行し、ループを形成して互いに絡み合っていることで、パルプ繊維2がメルトブロー樹脂繊維3間に捕捉されやすくて絡み合いやすい。よって、樹脂繊維3とパルプ繊維2の絡合性を高くでき、樹脂繊維3にパルプ繊維2を強固に保持できる。したがって、パルプ繊維2の脱落が生じ難く、乾燥時(非湿潤時)において紙粉が生じ難くて、使用時にも破れや剥がれが生じ難く、また、湿潤時においても使用時に紙粉の剥がれ落ちが生じ難く、高い湿潤強度を有する複合不織布1を得ることができる。
【0132】
特に、上記実施の形態の複合不織布製造方法によれば、パルプ繊維ウェブ形成工程とスパンレース処理工程との間に、メルトブロー不織布110及びその上に形成されたパルプ繊維ウェブからなる積層体120をロール31A,31Bにより押圧するロール加工工程を有する。
また、上記実施の形態の複合不織布製造装置100によれば、パルプ繊維ウェブ形成部(パルプエアレイド部)20とスパンレース処理部32との間に、メルトブロー不織布110及びその上に形成されたパルプ繊維ウェブからなる積層体120をロール31A,31Bにより押圧するロール加工部31を有する。
よって、スパンレース処理の前で、パルプ繊維2の定着を図り、メルトブロー樹脂繊維3にパルプ繊維2を入りませて絡合しやすできる。よって、メルトブロー樹脂繊維3へのパルプ繊維2の絡合性を増大させ、パルプ繊維2の脱落を一層生じ難くできる。また、機械的強度の向上を可能とする。更に、ネットコンベアNC1,NC2による移送時や後のスパンレース処理工程でのウォータージェットの噴流の際に、パルプ繊維2、紙粉の舞い上がり、流失を防止し、歩留まりをよくできる。
【0133】
更に、上記実施の形態の複合不織布の製造方法によれば、スパンレース処理工程では、積層体120におけるパルプ繊維ウェブの上面からメルトブロー不織布110側にジェット水流を付与し水流交絡させる。
また、上記実施の形態の複合不織布製造装置100によれば、スパンレース処理部32では、積層体120におけるパルプ繊維ウェブの上面からメルトブロー不織布110側にジェット水流を付与し水流交絡させる。
よって、パルプ繊維ウェブ側からパルプ繊維2をメルトブロー不織布110側のメルトブロー樹脂繊維3に巻き込んで交絡できるから、メルトブロー樹脂繊維3へのパルプ繊維2の絡合性を向上でき、パルプ繊維2の脱落をより一層生じ難くできる。また、機械的強度の向上を可能とする。
【0134】
加えて、上記実施の形態の複合不織布の製造方法によれば、乾燥工程の後に熱エンボスロールで型押しする熱エンボス加工工程を有する。
また、上記実施の形態の複合不織布製造装置100によれば、乾燥部33の下流側に熱エンボスロールで型押しする熱エンボス加工部34を有する。
よって、効果的に繊維の脱落を防止して機械的強度を高め、また、厚手感や嵩高感を出すことができ、更に、伸びを抑制できる。
【0135】
なお、本発明を実施する場合には、乾燥部33で熱エンボスロールによる乾燥を行ってエンボス加工を施してもよいし、乾燥部33の前に熱エンボス加工部34を設けてもよい。本実施の形態のように、乾燥部33の後に熱エンボスした場合には、エンボスの形状保持性がよいものとなる。また、より効果的に繊維の脱落を防ぎ、加工適性が良い状態になり伸びを抑えること可能となる。
【0136】
ところで、
図12の概略図においては、メルトブロー不織布製造部10で製造したメルトブロー不織布110は、連続してパルプエアレイド部20に搬送される連続式で処理する説明としているが、本発明を実施する場合には、例えば、メルトブロー不織布製造部10で製造したメルトブロー不織布110を一度ロール状に巻き取り、ロール状の形態でパルプエアレイド部20のあるところまで搬送し、そこで巻き取ったメルトブロー不織布110を展開してパルプエアレイド部20に供給するようにしてもよい。
【0137】
また、本発明を実施する場合には、メルトブロー樹脂繊維3は熱可塑性の樹脂繊維に限定されず、エラストマー樹脂等の異種の樹脂を混合した混合の樹脂繊維とすることも可能であるし、各ノズルで異種の樹脂を吐出させることで複数種の繊維で構成することも可能である。
【0138】
なお、本発明を実施するに際しては、複合不織布1のその他の部分の構成、成分、配合、製造方法等についても、上記実施例に限定されるものではない。
また、本発明の実施の形態で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は製造コスト、製造が容易な形態等から決定した値であり、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を許容値内で若干変更してもその実施を否定するものではない。
【符号の説明】
【0139】
1 複合不織布
2 パルプ繊維
3 メルトブロー樹脂繊維
3a 集束部
10 メルトブロー不織布製造部
20 パルプエアレイド部(パルプ繊維ウェブ形成部)
31 ローラ加工部
32 スパンレース処理部
33 乾燥部
34 熱エンボス加工部
100 複合不織布製造装置
110 メルトブロー不織布
120 積層体