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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20240603BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B25J19/00 F
B25J15/08 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020091112
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2021186891
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】Orbray株式会社
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 全弘
(72)【発明者】
【氏名】古川 武志
(72)【発明者】
【氏名】安部 貴大
(72)【発明者】
【氏名】小林 保幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 一也
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-178968(JP,A)
【文献】実開平01-027812(JP,U)
【文献】特開昭53-051486(JP,A)
【文献】特表2003-516866(JP,A)
【文献】特開平07-024777(JP,A)
【文献】特開2007-017617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースユニットに支持された指部と、該指部を運動させる駆動源とを具備したロボットハンドであって、
前記駆動源につながるハーネスの一部分は、巻き回し径が段階的に異なるかたちで複数回巻き回した状態に成形されており、
前記ハーネスの成形された前記一部分が、前記指部の少なくとも一つの関節の近傍に位置するように配置されており、
前記一部分の長手軸と、前記近傍に位置する前記関節の回転中心軸と、が垂直であるが交わらない関係にあり、
サイズの異なる前記巻き回し径のうち、隣り合う巻き回し部分の直径を、一方に対して大きい方をD、小さい方をdとし、Dでの巻き回し回数をT、dでの巻き回し回数をt、ハーネスの外径をaとするとき、
D>(2a+d)且つT≦t<(T×(D -d )/(4×(d+a)×a))であることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記直径 D=7mm~13mm、d=2mm~5mm、且つ、
前記巻き回し回数 T=2~4、t=3~8 、且つ、
ハーネス外径a=0.45~1mmの範囲にあることを特徴とする請求項記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記ハーネスの成形された前記一部分が近傍に配置される前記関節は、前記ベースユニットに対して前記指部が角度90°以上の範囲で内外転運動するための回転軸部であることを特徴とする請求項1又は2記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記ハーネスの成形された前記一部分は、前記回転軸部に対して前記指部の内転側にあって、
前記一部分のうち前記巻き回し径の小さい方側の端部は、前記回転軸部を避けて前記指部の付け根から前記指部の内部に位置し、
前記一部分のうち前記巻き回し径の大きい方側の端部は、前記ベースユニットの内部に位置していることを特徴とする請求項記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のロボットハンドにおいて、駆動源への電源供給や信号を伝送するためのハーネスの一般的な配置方法としては、指の屈曲時に断線しないように、指の伸展時にある程度のたるみを持つように配置する。また、特に関節部分では、ハーネスの損傷を防止するために関節軸の軸柱に余長を持って巻き回すかたちでハーネスを配置する場合がある。更に、ロボットハンド全体を小型化するとともに、ハーネスの露出を無くして断線を防止するために、関節軸付近に弾性体を配置するなどして、ハーネスがこの弾性体に沿って可動するようにした構成などが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、同一の製造ライン上で、人とロボットが協働して作業を行うシステムの開発と実用化が進んでいる(例えば、特許文献2参照)。このようなシステムに用いられる協働ロボットには、省スペース性や、設置容易性等の観点より、小型・軽量であることと、一つのロボットハンドにより、多種多様なタスクをこなせるように、器用な指部の動きが求められる。このような要求に対して、本出願人は、小型・軽量であるとともに、広い可動域を持ち、器用で多彩な動作を行えるロボットハンドをすでに提案している(例えば、特願2018-190909号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-178968号公報
【文献】特開2017-039170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小型であることに加え、広い可動域を持ち、器用で多彩な動作を行えるロボットハンドを、協働ロボットに適用する上では、ハーネスの断線の抑制など、耐久性との両立が重要となる。しかし、ハーネスについて従来の配置方法では、「ロボットハンドの小型化」と「ハーネスの断線に着目した高耐久性」の両立に限界があった。とりわけ、隣り合う指部同士、或いは、指部とベースユニットとの位置関係において、できる限り指部の付け根部分での干渉を避けて指部を広範囲で内外転運動させる場合、その内外転運動の回転軸となる関節部分の近傍では、ハーネスに対してストレスとなる応力が特にかかりやすかった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、広い可動域を持ち、多彩な動作を行えるロボットハンドにあっても、「小型化」と「高耐久性」の両立を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための一手段は、ベースユニットに支持された指部と、該指部を運動させる駆動源とを具備したロボットハンドであって、駆動源につながるハーネスの一部分は、巻き回し径が段階的に異なるかたちで複数回巻き回した状態に成形されており、この成形された一部分が、指部の少なくとも一部の関節の近傍に位置するように配置したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、「小型化」と「高耐久性」を両立したロボットハンドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るロボットハンドの一例を示す図であって、(a)指部を全て伸展した状態正面図、(b)同右側面図である。
図2】同ロボットハンドについて、(a)指部を屈曲等の動作をした状態の正面図、(b)同右側面図である。
図3】同ロボットハンドの斜視図である。
図4】同ロボットハンドについて、ハーネスを巻き回し成形(癖付け)した部分の状態を模式的に表した図である。
図5】同ロボットハンドの拡大図であって、拇指に対する他指が内外転の可動範囲の中で完全に内転側に位置している状態を示す図である。
図6】同ロボットハンドの拡大図であって、拇指に対する他指の一本が内外転の可動範囲の中で最大限外転側に移動した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態のロボットハンドは、ベースユニットに支持された指部と、該指部を運動させる駆動源とを具備したロボットハンドであって、前記駆動源につながるハーネスの一部分は、巻き回し径が段階的に異なるかたちで複数回巻き回した状態に成形されており、前記ハーネスの成形された前記一部分が、前記指部の少なくとも一つの関節の近傍に位置するように配置されており、前記一部分の長手軸と、前記近傍に位置する前記関節の回転中心軸と、が垂直であるが交わらない関係にあることを基本的な特徴の一つとしている。
この構成によれば、ハーネスに応力が特にかかりやすい関節の近傍において、ハーネスがアコーディオン状に展開されることによりハーネスにかかる応力が軽減されるため、ハーネスが繰り返しのストレスを受けて断線することを防ぎ、ロボットハンドとしての耐久性向上を図ることができる。また、相対的にハーネスの巻き回し径の大きいサイズの部分の内側に小さいサイズの巻き回し部分を収めることができるので、ロボットハンドとしても小型化を図ることができる。したがって、ロボットハンドの「高耐久」と「小型化」の両立を実現することができる。ここで、「関節の近傍に位置する」とは、同じ指部に複数の関節がある場合に、少なくとも、同じ指部における他のどの関節に対してよりも近い位置にあることを示す。
【0011】
他の特徴としては、上記の特徴のより具体的な態様として、前記サイズの異なる前記巻き回し径のうち、隣り合う巻き回し部分の直径を、一方に対して大きい方をD、小さい方をdとし、Dでの巻き回し回数をT、dでの巻き回し回数をt、ハーネスの外径をaとするとき、D>(2a+d)且つT≦t<(T×(D-d)/(4×(d+a)×a))となるようにした。ここで、ハーネスの巻き回し径は、例えば、ハーネスを円筒状の棒材に巻き付けて成形した場合に、この棒材の外径に一致する径である。
この構成によれば、相対的にハーネスの巻き回し径の大きいサイズの部分の内側に小さいサイズの巻き回し部分の全部又は大部分を収めることができる。
【0012】
他の特徴としては、上記の特徴の好適な態様として、前記直径 D=7mm~13mm、d=2mm~5mm、且つ、前記巻き回し回数 T=2~4、t=3~8 、且つ、ハーネス外径a=0.45~1mmの範囲とした。
この構成によれば、協働ロボット等に適用される小型のロボットハンドに好適な大きさで効果的にハーネスを配線することができる。
【0013】
他の特徴としては、前記ハーネスの成形された前記一部分が近傍に配置される前記関節は、前記ベースユニットに対して前記指部が角度90°以上の範囲で内外転運動するための回転軸部であることにある。
この構成によれば、指部の内外転運動について特に広い可動域を有するとともに、内外転運動の回転軸部近傍におけるハーネスへのストレスが軽減されることで、器用な動作を行えるとともに耐久性に優れるロボットハンドとなる。
【0014】
他の特徴としては、上記の特徴のより具体的な態様として、前記ハーネスの成形された前記一部分は、前記回転軸部に対して前記指部の内転側にあって、前記一部分のうち前記巻き回し径の小さい方側の端部は、前記回転軸部を避けて前記付け根から前記指部の内部に位置し、前記一部分のうち前記巻き回し径の大きい方側の端部は、前記ベースユニットの内部に位置に位置することとした。
この構成によれば、特に拇指に対する他指を、より広範囲で内外転させることが可能になるとともに、耐久性を確保できる。
【0015】
次に、上記特徴を有する具体的な実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例
【0016】
まず、図1図2を用いて、本実施例のロボットハンドH の全体的な構成を説明する。
図1及び 図2 は、本実施例のロボットハンドH を示している。図1は、ロボットハンドHの指部が全て伸展している状態であり、(a)の正面図に対して、(b)は右側面図を示している。図2は、ロボットハンドHの指部が屈曲或いは内外転の動作をさせた状態であり、(a)の正面図に対して、(b)は右側面図を示している。
【0017】
このロボットハンドHは、ベースユニット10と、ベースユニット10に支持された第一~第三の指部20,30,40とで構成されている。また、ベースユニット10又は指部20,30,40は、各指部を屈伸運動及び内外転運動させる複数のサーボモータを駆動源として具備している。
【0018】
ここで、屈伸運動とは、各指部の関節部分を屈曲させたり伸展させたりする運動である。また、内外転運動とは、前記屈伸運動に対し略直交する方向の運動であって、各指部を、その指元側を支点にして、隣接する指部に近づけるように回動(内転)させたり、隣接する指部から遠ざけるように回動(外転)させたりする運動である。
【0019】
第一の指部20は、複数の節部を、関節毎に対応するように内在する駆動源の動力によって屈伸運動させる。また、ベースユニット10に支持された駆動源51の動力によって角度180度以上の範囲で内外転運動することができる。
【0020】
第二の指部30は、複数の節部を、単一の駆動源53の動力をリンク機構により指元側から順次に屈伸運動させる。また、ベースユニット10に支持された駆動源52の動力によって角度90度以上120度以下の範囲で内外転運動することができる。
【0021】
第三の指部40は、複数の節部を、単一の駆動源55の動力をリンク機構により指元側から順次に屈伸運動させる。また、ベースユニット10に支持された駆動源54の動力によって角度90度以上120度以下の範囲で内外転運動することができる。
【0022】
各駆動源は、回転角や回転速度等が適宜に制御されるようにした電動のサーボモータであり、内蔵するモータの回転力を、歯車及びクラッチ機構等を介して出力軸に伝達するように構成される。駆動源であるサーボモータには、電力供給や信号を伝送するためのハーネスがつながっている。
【0023】
第一~第三の指部20,30,40が屈伸運動或いは内外転運動を行う際、ハーネスが受けるストレスを軽減できるように、ハーネスの長さと配置には余裕を持たせている。
【0024】
以下では、ロボットハンドHにおけるハーネスの形態の一例について、特に第三の指部40の付け根部分の構成を例に挙げ、図3図5を用いて具体的に説明する。
【0025】
図3は、ロボットハンドHの斜視図である。第三の指部40の付け根部分の状態を示すために、ベースユニット10の一部を断面で表している。
【0026】
ベースユニット10には第三の指部40を内外転運動させる駆動源54が備わる。駆動源54は、関節44の回転軸44aを支軸として、第三の指部40を内外転運動させる。回転軸44aは、第三の指部40のベースユニット10への付け根付近にあって、且つ、第三の指部40の付け根の幅中心位置から外側に配置されている。
【0027】
同様に、ベースユニット10には第二の指部30を内外転運動させる駆動源52(図1参照)が備わり、駆動源52が第二の指部30を内外転運動させる。第二の指部30を内外転運動させる駆動源52及び回転軸は、ベースユニット10を掌側正面からみて、駆動源54及び回転軸44aと、各々対称となる位置に配置されている。
【0028】
第三の指部40を屈伸運動させるサーボモータである駆動源55には、3本の電線を一組としたハーネス55hがつながっている。ハーネス55hは、一方がベースユニット10の内部に延びて配線されている。
【0029】
ハーネス55hは、一部分を予め、巻き回し径が段階的に異なるかたちでスパイラル状に巻き回した状態で所定の温度にて加熱→急冷することにより成形(癖付け)されている。この巻き回し成形(癖付け)された部分は、関節44の近傍にあって、回転軸44aに対して第三の指部40の内転側に位置するように配置されている。
【0030】
具体的な一例として、ハーネス55hの巻き回し成形(癖付け)部分は、巻き回し径8mmで2回巻き回し、巻き回し径3.5mmで4回巻き回した状態で成形する。このように巻き回し成形された部分は、関節44の近傍であって、回転軸44aよりも内転側に位置するように配置する。ハーネス55hの巻き回し成形(癖付け)部分の長手軸(本巻き回し径8mmの部分の略中心と巻き回し径3.5mmの部分の略中心と、を通るような軸)と、関節44の回転軸44aと、が垂直であるが交わらない関係にある。巻き回し径8mm側で巻き回し成形されていない部分は、ベースユニット10の内部に延びて配線される。一方、巻き回し径3.5mmで巻き回し成形されていない部分は、第三の指部40の駆動源55につながる。第二の指部30も同様に、駆動源53につながるハーネスが処理されている。
【0031】
図4は、ハーネス55hの巻き回し成形(癖付け)された部分の状態を説明するために、模式的に表した図である。ハーネス55hは3本の電線を一組としたものであるが、図4では簡易的に1本の線で表している。図4(a)が上方から見た状態であるのに対して、図4(b)は正面から見た状態を示す。
【0032】
また、図4は、外径aのハーネスを、サイズの異なる巻き回し径のうち、一方に対して大きい方をD、小さい方をdとして、各々複数回(図示上ではDで2回、dで4回)巻き回し成形した状態を示している。図4に示す通り、ハーネスの巻き回し径は、ハーネス自体の外径aは含まない。例えば、ハーネスを円筒状の棒材に巻き付けて加熱成形(癖付け)する場合、ハーネスの巻き回し径は、このときの棒材の外径に一致する。
【0033】
巻き回し成形(癖付け)された部分は、Dでの巻き回し回数をT、dでの巻き回し回数をt、ハーネスの外径をaとするとき、以下の条件が成立するように設定している。
D>(2a+d)且つT≦t<(T×(D-d)/(4×(d+a)×a))
【0034】
上記の設定条件により、指部の内外転運動の回転軸となる関節部分の近傍における、ハーネスにかかる応力を効率よく軽減しながら、必要となるスペースを抑えることを可能にしている。
下記において、この設定条件について説明する。
【0035】
ハーネスの巻き回し径dの部分は、巻き回し径Dの部分の内側に余裕を持って収まることができるように設定する。すなわち、このとき D>(2a+d) となる。
【0036】
dでの巻き回し回数tの最小回数は、Dでの巻き回し回数Tと等しくしている(T≦t)。
これは、巻き回し径Dの部分の内側に収める上では、tをTよりも少なくしても成立するが、小さい巻き回しを設けながら、ねじり長さを最低限確保するための条件設定である。
【0037】
dでの巻き回し回数tの最大回数は、巻き回し部分を「外径=大きい巻き回しの内径」、「内径=小さい巻き回しの内径」、「高さ=大きい巻き回し数の場合の高さ」の円筒形状に押し込むことができる巻き回し数としている。
【0038】
上記円筒形状の体積をVとすると、Vは次のように表せる。
V=(π/4)×(D-d)×a×T
【0039】
小さい巻き回し1巻き分の体積をVd1とすると、Vd1は次のように表せる。
Vd1=π×(d+a)×a
【0040】
dでの巻き回し回数tの最大回数をtmaxとすると、tmaxは、VをVd1で割った値で定義され、次のようになる。
tmax=V/Vd1=〔(π/4)×(D-d)×a×T〕/〔π×(d+a)×a〕=(T×(D-d)/(4×(d+a)×a)
【0041】
上記を整理すると、dでの巻き回し回数をtの範囲は、以下ように設定される。
T≦t<(T×(D-d)/(4×(d+a)×a))
【0042】
D>(2a+d)且つT≦t<(T×(D-d)/(4×(d+a)×a)) の条件設定を満たす中で、小型のロボットハンドに適用する場合、巻き回し径 D=7mm~13mm、d=2mm~5mm、且つ、巻き回し回数 T=2~4、t=3~8 、且つ、ハーネス外径a=0.45~1mmの範囲とするのが適している。
【0043】
図5及び図6は、ロボットハンドHのベースユニット10付近を拡大した正面図である。第三の指部40の付け根部分の状態を示すために、ベースユニット10の一部を断面で表している。図5は第三の指部40が内外転の可動範囲の中で完全に内転側に位置している状態示しているのに対して、図6は、第三の指部40を最大限外転側に移動した状態を示している。
【0044】
図5に示す第三の指部40が内外転の可動範囲の中で完全に内転側に位置している状態〔指内外転(閉)時〕では、ハーネス55hのスパイラル状に成形(癖付け)した部分が、よじれることなく安定したかたちでおさまる。このとき、ハーネス55hのサイズの異なる巻き回し径のうち、一方に対して大きい方の径Dの部分の内側に、小さい方の径dで成形された部分が収まっている。
【0045】
第三の指部40を外転運動させて、図5に示す状態〔指内外転(閉)時〕から図6に示す第三の指部40を最大限外転側に移動した状態〔指内外転(開)時〕になるとき、ハーネス55hのスパイラル状に成形(癖付け)した部分がアコーディオン状に展開される。ここで、図5に示す状態におけるハーネス55hのスパイラル状に成形した部分の全ての巻き回し径の略中心を通るような軸(長手軸)は、第三の指部40の回転軸44aとは、垂直であるが交わることはない。図6に示す状態では外転運動がされているが、ハーネス55hのスパイラル状に成形した部分が、第三の指部40の回転軸44aと交わることはない。





【0046】
次に上記構成のロボットハンドHについて、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
【0047】
ハーネスに応力が特にかかりやすい内外転運動のための関節の近傍において、指部の内外転運動に合わせてハーネスのスパイラル状に成形した部分がアコーディオン状に開閉するので、ハーネスにかかる応力を軽減することができる。
【0048】
また、ハーネスを同じサイズの巻き回し径のみで複数回巻き回した場合(例えば、巻き回し径3.5mmで6回巻き回し成形した場合等)には、指部が内転側にいくほど、巻き回し成形した部分がよじれる場合がある。それに伴いハーネスには局所的に極小半径での曲げが発生し、これが断線の原因となることが考えられる。これに対して、本発明の構成によれば、図5に示すように指部が閉じた時〔指内外転(閉)時〕のハーネスのスパイラル状に成形した部分の据わりがよく、局所的に極小半径での曲げも発生しない。さらに、この時、スパイラル状に成形した部分のサイズの異なる巻き回し径のうち、一方に対して大きい方の径の部分の内側に、小さい方の径で成形された部分が収まるので、指部が閉じた時に狭隘空間となる場所に適用できる。
【0049】
また、本発明の構成は、拇指(第一の指部20)に対する他指(第二の指部30/第三の指部40)に適用し、ハーネスを巻き回し成形した部分を、指部の内外転回転軸部に対して、各々の他指の内転側に配置し、且つ内外転回転軸を指部付け根の幅中心位置から外側寄りに配置した場合に、より効果的に作用する。この場合には、隣り合う他指同士の間隔が狭い状態から、他指同士或いは他指とベースユニットとが干渉することなく広範囲で内外転運動をさせることができる。すなわち、関節の回転軸近傍に配置したハーネスの巻き回し成形部分との組み合わせにより、より「小型化」と「高耐久性」を両立したロボットハンドを実現することができる。
【0050】
本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0051】
H:ロボットハンド
10:ベースユニット
20:第一の指部
44:関節
44a:回転軸
30:第二の指部
40:第三の指部
51,52,53,54,55:駆動源
55h:ハーネス


図1
図2
図3
図4
図5
図6